JP2012138235A - リチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、抄紙網のパターン転写がなく、ピンホールがなく、電解液の濡れ性が良く、耐デンドライト性に優れるリチウム二次電池用セパレータ及び該セパレータを用いてなるリチウム二次電池を提供することにある。
【解決手段】ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるリチウム二次電池用セパレータ及びそれを用いてなるリチウム二次電池。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウム二次電池用セパレータ及びリチウム二次電池に関する。
近年の携帯電子機器の普及及びその高性能化に伴い、高エネルギー密度を有する二次電池が望まれている。この種の電池として、有機電解液を使用するリチウムイオン電池が注目されてきた。このリチウムイオン電池は、平均電圧として従来の二次電池であるアルカリ二次電池の約3倍である3.7V程度が得られることから高エネルギー密度となるが、アルカリ二次電池のように水系の電解液を用いることができないため、十分な耐酸化還元性を有する非水電解液を用いている。非水電解液は可燃性であるため発火等の危険性があり、その使用において安全性には細心の注意が払われている。発火等の危険に曝されるケースとしていくつか考えられるが、特に過充電が危険である。
過充電を防止するために、現状の非水系二次電池では定電圧・定電流充電が行われ、電池に精密なIC(保護回路)が装備されている。この保護回路にかかるコストは大きく、非水系二次電池をコスト高にしている要因にもなっている。
保護回路で過充電を防止する場合、当然保護回路がうまく作動しないことも想定され、本質的に安全であるとは言い難い。現状の非水系二次電池には、過充電時に保護回路が壊れ、過充電されたときに安全に電池を破壊する目的で、安全弁・PTC素子の装備がなされており、リチウム二次電池用セパレータには、熱ヒューズ機能を有する工夫がなされている。しかし、上記のような手段を装備していても、過充電される条件によっては、確実に過充電時の安全性が保証されているわけではなく、実際には非水系二次電池の発火事故は現在でも起こっている。
リチウム二次電池用セパレータとしては、ポリエチレン等のポリオレフィンからなるフィルム状の多孔質フィルムが多く使用されており、電池内部の温度が130℃近傍になった場合、溶融して微多孔を塞ぐことで、リチウムイオンの移動を防ぎ、電流を遮断させる熱ヒューズ機能(シャットダウン機能)があるが、何らかの状況により、さらに温度が上昇した場合、ポリオレフィン自体が溶融してショートし、熱暴走する可能性が示唆されている。そこで、現在、200℃近くの温度でも溶融及び収縮しない耐熱性セパレータが求められている。
耐熱性セパレータとして、不織布からなるセパレータがあり、ポリエステル不織布(例えば、特許文献1及び2参照)が開示されている。水分存在下で加熱することによってゲル化しうる湿熱ゲル化樹脂と、他の繊維を含む不織布で構成されたセパレータ(例えば、特許文献3〜6参照)が開示されている。ビニルアルコール単位を含むポリマーを含む多孔質体(エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの分割型複合繊維を含む不織布)をセパレータとして内蔵するリチウムイオン二次電池(例えば、特許文献7〜8参照)、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンの分割型複合繊維を含む不織布をポリシロキサンで処理したセパレータ(例えば、特許文献9〜10参照)、セルロース100%からなるセパレータを用いた非水系電池(例えば、特許文献11参照)が開示されている。
しかしながら、特許文献1及び2のセパレータは、ピンホールの形成因子である繊維断面形状について全く考慮されていないため、抄紙網のパターンが湿式不織布に転写し、繊維密度の疎密斑ができる問題と、網を構成するワイヤーの交点に繊維が乗らず、その部分がピンホールになってしまう問題があった。さらに、ピンホールの存在により、リチウムデンドライトがセパレータを貫通して導通する問題があった。リチウムデンドライトとは、充放電を繰り返し行ったときや、過充電したときに負極表面に析出する金属リチウムをいう。リチウムデンドライトは徐々に成長し、セパレータを貫通して正極に達し、内部短絡の原因になる場合がある。特許文献3〜6のセパレータは、湿熱ゲル化樹脂の皮膜があるため、電解液をはじき、電解液の濡れ性が悪い問題があった。皮膜を少なくすると、ピンホールができやすいため、リチウムデンドライトがセパレータを貫通する問題があった。また、湿熱ゲル化の方法が複雑であるため、湿熱ゲル化樹脂の皮膜面積とセパレータの空隙率のバランスを取ることが難しい問題があった。
特許文献7〜8は、ビニルアルコール単位を含むポリマーをリチウム二次電池に内蔵することによって、電池電圧を下げることができ、高温に曝された後の電池が再度充電できないようにして安全性を高めるという効果を達成している。実施例には、ビニルアルコール単位を含むポリマーとして、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンからなる分割型複合繊維を使用したセパレータがリチウム二次電池に内蔵された場合が記載されてはいるが、このセパレータは繊維同士の接着力が不十分で、取り扱い時に毛羽立ちやすい問題があった。さらに、特許文献8のエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンからなる分割型複合繊維を含有するセパレータは、非常に密度が高いため、電解液保持率が悪い問題があった。
特許文献9〜10のセパレータは、分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維を含有しているものの、ポリシロキサンの担持量が少ない場合には、最大細孔径が依然として大きく、ピンホールができる場合があった。また、熱カレンダー処理されてなるため、熱処理温度や樹脂の種類によっては、エチレン−ビニルアルコール共重合体やその他の樹脂が皮膜を形成し、電解液の濡れ性が悪くなる場合があり、熱処理条件を最適化する余地が残っていた。特許文献11の非水系電池に用いられるセルロース100%からなるセパレータは、水分を吸着しやすいため、電池を組み立てる前に長時間の予備乾燥が必要な問題、予備乾燥しても水分が残った場合には、セパレータの絶縁性が不十分になり、電池が正常に充電できない問題や、水が電気分解されて、電解液中のフッ化物塩と反応してフッ酸を生成させ、電池を劣化させてしまう問題があった。
特開2003−123728号公報 国際公開第2008/130020号パンフレット 特開2005−317215号公報 特開2005−317216号公報 特開2005−317217号公報 国際公開第2004/038833号パンフレット 国際公開第2009/025332号パンフレット 特開2010−192248号公報 特開2000−285895号公報 特開2000−340205号公報 特許第3661104号公報
本発明の課題は、抄紙網のパターン転写がなく、ピンホールがなく、電解液の濡れ性が良く、耐リチウムデンドライト性に優れるリチウム二次電池用セパレータを提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリエステルとポリエチレンからなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有してなる湿式不織布からなることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータを見出した。
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と合成短繊維とを含有してなる湿式不織布からなるため、抄紙網のパターン転写がなく、ピンホールがなく、耐リチウムデンドライト性に優れ、水分率が低く優れる。また、セパレータ表面及び内部を皮膜で覆うことがないため、電解液の濡れ性が良い。
本発明におけるリチウム二次電池とは、リチウムイオン電池やリチウムイオンポリマー電池を意味する。リチウム二次電池の負極活物質としては、黒鉛やコークスなどの炭素材料、金属リチウム、アルミニウム、シリカ、スズ、ニッケル、鉛から選ばれる1種以上の金属とリチウムとの合金、SiO、SnO、Fe、WO、Nb、Li4/3Ti5/3等の金属酸化物、Li0.4CoNなどの窒化物が用いられる。正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸鉄リチウムが用いられる。リン酸鉄リチウムは、さらに、マンガン、クロム、コバルト、銅、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、ホウ素、ニオブから選ばれる1種以上の金属との複合物でも良い。
リチウム二次電池の電解液には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、これらの混合溶媒などの有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものが用いられる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウムが挙げられる。固体電解質としては、ポリエチレングリコールやその誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、ポリシロキサンやその誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのゲル状ポリマーにリチウム塩を溶解させたものが用いられる。
本発明のリチウム二次電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と表記することもある)は、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接して配置されてなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなる。ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾエート、ポリエステル誘導体が挙げられる。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンが挙げられる。
分割型複合繊維の断面形状は、放射状型、層状型、櫛型、碁盤型などが挙げられる。分割型複合繊維は、パルパーやミキサーなどで攪拌する方法や高圧水流を当てる方法により、ポリエステルからなる極細繊維と、ポリエチレンからなる極細繊維とに分割させることができるものが好ましい。分割型複合繊維をパルパーやミキサーで攪拌して分割させる際には、必要に応じて分散助剤や消泡剤を使用しても良い。分割型複合繊維の平均繊維径は3〜18μmが好ましく、6〜16μmがより好ましい。3μm未満だと、分割しにくくなる場合がある。18μmより太いと、分割後の極細繊維断面の長軸が長くなるため、セパレータの空隙を閉塞する場合がある。
分割して得られる極細繊維は、断面の短軸長さが1.00〜5.00μmであることが好ましく、1.00〜3.50μmであることがより好ましい。例えば、特許文献9(特開2000−285895号公報)や特許文献10(特開2000−340205号公報)のように、この断面の短軸長さを考慮していない場合、ピンホールが発生する場合がある。断面の短軸長さが1.00μm未満だと、断面の理論扁平度が大きくなりすぎて湿式不織布の空隙を閉塞する場合や、極細繊維同士の交点、極細繊維と合成短繊維の交点、合成短繊維同士の交点の接着が不十分になる場合がある。5.00μmを超えると、湿式不織布の厚みを薄くしにくくなる場合がある。短軸長さとは、極細繊維断面の短軸方向の最大長さを意味する。極細繊維の長さは0.5〜10mmが好ましく、1〜6mmがより好ましく、1〜4mmがさらに好ましい。0.5mm未満だと、湿式抄紙の際に漉き網から抜け落ちて排水に流出する割合が多くなる場合がある。10mmより長いと、極細繊維同士が拠れて塊ができる場合がある。極細繊維の理論扁平度は、1.00〜5.00が好ましく、1.00〜3.00がより好ましい。理論扁平度とは極細繊維の長軸の最大長さを短軸長さで除した値を意味し、分割型複合繊維の繊維径と分割数から計算することができる。理論扁平度が5.00より大きいと、湿式不織布の空隙を閉塞する場合や、極細繊維同士の交点、極細繊維と合成短繊維の交点、合成短繊維同士の交点の接着が不十分になる場合がある。
合成短繊維を構成する樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、ポリエステル、アクリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ジエン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン、これらの誘導体などの樹脂等が挙げられる。合成短繊維は、単繊維であっても良く、2種類以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。
本発明におけるアクリルとは、アクリロニトリル100%の重合体からなるもの、アクリロニトリルに対して、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体、酢酸ビニルなどを共重合させたものを指す。ポリアミドとは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドを指す。半芳香族ポリアミドとは、主鎖の一部に脂肪鎖などを有する芳香族ポリアミドを指す。
合成短繊維の断面形状は、円形、楕円形、扁平、三角形、四角形、多角形の何れでも良いが、セパレータの空隙を閉塞しにくいことから円形、楕円形、三角形、四角形、多角形が好ましい。平均繊維径は、0.1〜12.0μmが好ましく、0.5〜8.0μmがより好ましく、1.0〜5.0μmがさらに好ましい。合成短繊維の平均繊維径が12.0μmを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、ピンホールができる場合や厚みを薄くしにくくなる場合がある。0.1μm未満だと、合成短繊維の添加効果が現れにくい場合がある。断面形状が円形以外の場合の平均繊維径は、同面積の円形に換算したときの平均繊維径を意味する。
合成短繊維の繊維長としては、0.1〜10mmが好ましく、0.3〜6mmがより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、繊維同士が絡まり、地合不良となることがある。一方、繊維長が0.1mm未満の場合には、セパレータの機械的強度が低くなって、取り扱い時に切断や破れる場合がある。
本発明のリチウム二次電池用セパレータにおいて、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維と、合成短繊維の質量比率は、8:2〜2:8が好ましく、7:3〜3:7がより好ましい。分割型複合繊維の比率が8:2より多いと、セパレータの空隙が閉塞される場合や、電解液の濡れ性が悪くなる場合があり、2:8より少ないと抄紙網のパターン転写が生じる場合がある。
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、湿式抄紙法で製造される。具体的には、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割させて得られる極細繊維と、合成短繊維を水に分散して均一なスラリーとし、このスラリーを抄紙機で漉きあげて湿式不織布を作製する。スラリーには、必要に応じて分散助剤、消泡剤、増粘剤、剥離剤などの薬品を添加しても良い。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらを組み合わせた複合抄紙機が挙げられる。
本発明においては、湿式不織布を135〜160℃で熱処理して、ポリエチレンを溶融させ、ポリエステルからなる極細繊維同士の交点、該極細繊維と合成短繊維の交点、合成短繊維同士の交点を接着させることが好ましい。本発明における熱処理は、非加圧下で135〜160℃の温度範囲に加熱したロールに湿式不織布の片面又は両面を所定時間接触させる方法、135〜160℃の温度範囲に加熱したロール間に湿式不織布を通して加圧する方法、135〜160℃の温度範囲でホットプレス機を用いて所定時間加圧処理する方法、これらを組み合わせた方法等で行うことができる。加熱するロールは樹脂製、金属製の何れでも良い。135℃未満だと、極細繊維同士の交点、極細繊維と合成短繊維の交点、合成短繊維同士の交点の接着が弱く、毛羽立ちやすくなる場合があり、160℃を超えると、熱量が過剰となり、セパレータの収縮が大きくなり、厚み斑やしわが発生する場合がある。熱処理の有無に関係なく、必要に応じて湿式不織布をカレンダー処理して厚みを調整する。
本発明における湿式不織布が、合成短繊維の一部に芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型の何れかの複合繊維を含有し、複合繊維の成分の1つがポリエチレンと同じ融点か、それ以下の融点を有する場合は、極細繊維と複合繊維の交点及び/又は複合繊維同士の交点は複合繊維の該成分によっても接着される。複合繊維を含有する場合も、135〜160℃で熱処理することが好ましく、この温度範囲で熱処理すれば皮膜の生成を抑制することができる。
本発明のリチウム二次電池用セパレータの厚みは、4〜50μmが好ましく、8〜40μmがより好ましく、10〜35μmがさらに好ましい。50μmを超えると、セパレータの抵抗値が高くなる場合がある。4μm未満であると、セパレータの強度が弱くなりすぎて、セパレータの取り扱い時に破損する恐れがある。
本発明のリチウム二次電池用セパレータの密度は、0.250〜0.700g/cmが好ましく、0.300〜0.650g/cmがより好ましく、0.400〜0.600g/cmがさらに好ましい。密度が0.250g/cm未満だと、厚みを薄くしにくくなる場合がある。0.700g/cm超だと、セパレータの抵抗値が高くなる場合がある。
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、ASTM−F316−86で規定される最大孔径3〜15μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましく、3〜8μmであることがさらに好ましい。3μm未満だと、極細繊維によってセパレータの空隙が閉塞され、電解液の濡れ性が悪くなる場合がある。15μmより大きいと、ピンホールができる場合がある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。表1に本発明の実施例及び比較例で使用した分割型複合繊維、合成短繊維を示した。表1中の分割型複合繊維の断面形状は、分割型複合繊維全体の断面が円形で、ポリエステルとポリエチレンの配置が放射状型であることを意味する。表1中の「PP」はポリプロピレン、「EVOH」はエチレン−ビニルアルコール共重合体、「PET」はポリエチレンテレフタレート、「PE」は高密度ポリエチレンを意味する。F10、F11、F12の芯鞘型複合繊維の芯部と鞘部の断面積比は50:50である。表2に、本発明の実施例及び比較例で調製したスラリーの配合率を示した。表2中の原料の記号は、表1の記号に該当する。表3に、実施例及び比較例とスラリーとの対応を示した。
Figure 2012138235
実施例1
スラリー1の配合率になるように、B1とF3を計量した。B1とF3を一緒にパルパーで水に分散させたスラリー1を調製した。B1の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー1を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、160℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ10秒ずつ接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、実施例1のセパレータを作製した。
実施例2
スラリー1を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、140℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ15秒ずつ接触させて予備加熱し、引き続き、140℃に加熱した金属ロール間に線圧400N/cmで通して熱処理し、実施例2のセパレータを作製した。
実施例3、4、7、9、11、13、16
スラリー2、3、6、8、9、11、14をスラリー1と同様にして調製した。何れのスラリーにおいても、分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー2、3、6、8、9、11、14を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って、実施例1と同様にして熱処理し、実施例3、4、7、9、11、13、16のセパレータを作製した。
実施例5
スラリー4をスラリー1と同様にして調製した。分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。実施例1と同様にしてスラリー4を湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、155℃に加熱した金属ロール間に線圧300N/cmで通して熱処理し、実施例5のセパレータを作製した。
実施例8、12、15
スラリー7、10、13をスラリー1と同様にして調製した。何れのスラリーにおいても、分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。実施例1と同様にしてスラリー7、10、13を湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理線圧に従って、実施例5と同様にして熱処理し、実施例8、12、15のセパレータを作製した。
実施例6
スラリー5をスラリー1と同様にして調製した。分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。実施例1と同様にしてスラリー5を湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、150℃に加熱した金属ロールに湿式不織布の表裏面をそれぞれ10秒ずつ接触させて予備加熱した後、引き続き、150℃に加熱した金属ロール間に線圧300N/cmで通して熱処理し、実施例6のセパレータを作製した。
実施例10、14、17
スラリー8、12、15をスラリー1と同様にして調製した。何れのスラリーにおいても、分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。実施例1と同様にしてスラリー8、12、15を湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度、熱処理時間、熱処理線圧に従って、実施例6と同様にして熱処理し、実施例10、14、17のセパレータを作製した。
実施例18
スラリー1を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理線圧にした以外は、実施例5と同様にして熱処理し、実施例18のセパレータを作製した。
実施例19
熱処理温度と熱処理時間を表3に示した条件にした以外は、実施例1と同様にして、実施例19のセパレータを作製した。
(比較例1)
B1を所定量計量し、パルパーで水に分散させたスラリー16を調製した。B1の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー16を傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を140℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、表3に示した熱処理温度と熱処理時間に従って金属ロールに湿式不織布の表裏面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、比較例1のセパレータを作製した。
(比較例2)
スラリー17の配合率になるようにF4、F5、F11を計量した。F4、F5、F11を一緒にパルパーで水に分散させたスラリー17を調製し、傾斜型抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を130℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、130℃、線圧500N/cmで熱カレンダー処理し、比較例2のセパレータを作製した。
(比較例3)
スラリー18の配合率になるように、B1、F12を計量した。B1とF12を一緒にパルパーで水に分散させたスラリー18を調製した。B1の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー18を円網抄紙機と短網抄紙機の複合抄紙機に送液して湿式抄紙し、シリンダードライヤー温度を135℃にして乾燥させて湿式不織布を作製した。次いで、湿式不織布を体積比率でフッ素:酸素:窒素=1:73:26の混合ガス中に1分間曝した。その後、60℃の湯で洗浄し、熱風乾燥機で70℃雰囲気に通して乾燥させた。この湿式不織布に水分を噴霧して100質量%含浸させ、130℃に加熱した一対の金属ロールに線圧500N/cm、速度3.3m/minで通してエチレン−ビニルアルコール共重合体をゲル皮膜化し、比較例3のセパレータを作製した。
(比較例4)
スラリー19の配合率になるように、B7、F12を計量した。B7とF12をパルパーで水に分散させてスラリー19を調製した。B7の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー19を円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、130℃に加熱した金属ロール間に線圧500N/cmで通した後、さらにカレンダー処理して厚み調整し、比較例4のセパレータを作製した。
(比較例5)
スラリー20の配合率になるように、B7、F12を計量した。B7とF12をパルパーで水に分散させてスラリー20を調製した。B7の分割型複合繊維は、ほぼ分割していることを確認した。スラリー20を円網抄紙機に送液して湿式抄紙し、120℃に加熱した金属ロール間に線圧500N/cmで通して、厚み25μmの湿式不織布を作製した。次いで、1分子中にメトキシ基を3個有するポリアルキレンオキサイド変性ポリシロキサンの5質量%水溶液を該不織布に含浸させ、120℃で乾燥させて、該ポリシロキサンを10.5質量%担持させた後、カレンダー処理して厚みを再調整し、比較例5のセパレータを作製した。
(比較例6)
厚み25μm、空隙率43%のポリプロピレン製多孔質フィルムを比較例6のセパレータとして用いた。
(比較例7)
叩解されてなる溶剤紡糸セルロース繊維100%からなるシートを比較例7のセパレータとして用いた。
Figure 2012138235
[評価]
実施例及び比較例のセパレータについて、下記の評価を行い、結果を表3に示した。
<厚み>
JIS P8118に準拠して厚みを測定し、その平均値を算出した。
<密度>
JIS P8124に準拠してセパレータの坪量を測定し、坪量を厚みで除して100倍した値を密度とした。
<網パターン転写>
基材を目視確認し、抄紙網のパターン転写があるかどうかを判定した。パターン転写がある場合を「あり」、ない場合を「なし」とした。
<ピンホール>
セパレータの裏側から光を当て、セパレータにピンホールがあるかどうかを目視で判定した。ピンホールがある場合を「あり」、ない場合を「なし」とした。
<熱処理>
セパレータの作製において、湿式不織布を熱処理したときの湿式不織布の状態を観察した。収縮がほとんどなく、切断もなかった場合を◎、若干の収縮があるが、湿式不織布の切断が起こらず順調に熱処理できた場合を○、切断はしなかったが、収縮が大きく、湿式不織布の厚み斑や、ロールに一部張り付きが生じた場合を△、著しく収縮し、湿式不織布が切断した場合、又は、ロールに張り付いて層間剥離し、均一な熱処理ができなかった場合を×とした。
<毛羽立ち>
セパレータ表面を指で擦ったとき、毛羽立ちがなかった場合を「なし」、毛羽立ちがあった場合を「あり」とした。
<耐熱性>
セパレータの上下2辺をガラス板にセロハンテープで固定した。このとき、セパレータは、多孔質フィルム側をガラス板に接触させ、セパレータ面の40mm×50mmの領域が露出するようにした。これを180℃の乾燥機中に10分間静置した後のセパレータの状態を観察した。セパレータが全く収縮しなかったか、若干の収縮はあるが、形状を保持している場合を○、形状は保持したが、表面がぼこついた場合を△、セパレータが大幅に収縮し、元の形状を保持できなかった場合を×とした。
<水分率>
100mm×100mmのセパレータを110℃で24時間真空乾燥した後のセパレータ質量W0を計測し、次いで、25℃、湿度60%の雰囲気に24時間静置した後のセパレータ質量W1を計測し、W1からW0を差し引いて得られる値をW0で除して100倍した値を水分率(%)とした。
<濡れ性>
セパレータに電解液を1滴滴下したときの濡れ性を評価した。電解液がセパレータに速やかに均一にしみ込んだ場合を○、電解液がセパレータに均一にしみ込んだが、しみ込むまでに時間がかかった場合を△、セパレータ表面が電解液をはじいて均一にしみ込まなかった場合を×とした。電解液としては、LiPFを1mol/l溶解させた混合溶液を使用した。混合溶液は、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比率で3:7としたものである。
<耐デンドライト性>
セパレータの片面に金属リチウム箔を、セパレータの反対側に正極を配置して積層し、電解液を注入してラミネートセルを100個ずつ作製した。0.5mA/cmで3.6Vまで定電流充電し、さらに3.6Vを24時間印加し、過充電した。この過充電中に異常電流が流れた場合を内部短絡したと見なし、過充電を中止し、ラミネートセルを開封してリチウムデンドライトの発生状態を確認した。過充電により、リチウムデンドライトが発生して基材を貫通したセルの割合を耐デンドライト性とした。この割合が少ないほど、耐デンドライト性に優れることを意味する。正極には、活物質のコバルト酸リチウム、導電助剤のアセチレンブラック、結着剤のポリフッ化ビニリデンを質量比率で90:5:5に混合したスラリーをアルミニウム集電体の両面に塗布したものを用いた。電解液は、<濡れ性>の評価に記載したものと同様である。
Figure 2012138235
実施例1〜17のリチウム二次電池用セパレータは、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンが転写せず、ピンホールがなく、耐デンドライト性に優れ、水分率が低かった。また、極細繊維同士の交点、該極細繊維と合成短繊維の交点、合成短繊維同士の交点がポリエチレン及び/又は芯鞘型複合繊維の成分で接着されていて、セパレータ表面及び内部を皮膜で覆うことがないため、電解液の濡れ性が良かった。実施例1〜17のリチウム二次電池用セパレータは、湿式不織布が135〜160℃で熱処理されてなるため、均一に熱処理でき、ポリエステルからなる極細繊維が溶融せず繊維形状を維持しており、それが骨組みを形成するため、毛羽立ちが発生しにくく、耐熱性に優れていた。
実施例18のリチウム二次電池用セパレータは、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンが転写せず、ピンホールがなく、耐デンドライト性に優れ、水分率が低かった。熱処理温度が135℃未満だったため、均一に熱処理できたが、極細繊維同士の交点、該極細繊維と合成繊維の交点、合成繊維同士の交点の接着が不十分な箇所があり、電解液の濡れ性は良かったが、実施例1〜17と比較して毛羽立ちやすく、耐熱性がやや悪かった。
実施例19のリチウム二次電池用セパレータは、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンの転写がなく、ピンホールがなく、耐デンドライト性に優れ、水分率が低かった。熱処理温度が160℃を超えていたため、熱量が過剰になり、セパレータが著しく収縮し、厚み斑が生じ、熱処理は均一にできなかった。毛羽立ちが発生しにくかったが、電解液をはじき、電解液の濡れ性が悪かった。165℃で熱処理した後の耐熱性は良かった。
一方、比較例1のリチウム二次電池用セパレータは、ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維のみで構成される湿式不織布からなるため、抄紙網パターンが転写せず、ピンホールがなく、耐デンドライト性に優れ、毛羽立ちが発生しにくく、耐熱性は良く、水分率は低く、均一に熱処理できたが、電解液をはじき、電解液の濡れ性が悪かった。
比較例2のリチウム二次電池用セパレータは、合成短繊維で構成される湿式不織布からなるため、毛羽立ちが発生しにくく、耐熱性は良く、水分率が低く、電解液の濡れ性は良かった。熱処理温度が130℃であったため、均一に熱処理できたが、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維を含有しないため、抄紙網パターンが転写し、ピンホールが多数存在し、耐デンドライト性が悪かった。
比較例3のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンが転写しなかった。エチレン−ビニルアルコール共重合体のゲル皮膜を形成させるための熱処理において、金属ロールに張り付き、層間剥離が生じたため、安定して均一なセパレータを得ることができなかった。ゲル皮膜がセパレータ表面及び内部に形成されているため、毛羽立ちが発生しにくく、水分率が低く、耐熱性は良かったが、電解液をはじき、電解液の濡れ性が悪かった。また、ピンホールがあり、耐デンドライト性が劣っていた。
比較例4のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンの転写がなく、水分率が低かった。熱処理温度が130℃だったため、均一に熱処理できたが、繊維同士の接着が不十分なため、毛羽立ちやすく、耐熱性はやや悪かった。合成短繊維の繊維径が太いため、ピンホールがあり、耐デンドライト性が悪かった。また、セパレータの密度が著しく高いため、電解液の濡れ性がやや悪かった。
比較例5のリチウム二次電池用セパレータは、エチレン−ビニルアルコール共重合体とポリプロピレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維が分割されてなる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなるため、抄紙網パターンの転写がなく、水分率が低く、電解液の濡れ性が良かった。熱処理温度が120℃であったため、均一に熱処理できたが、繊維同士の接着が不十分なため、毛羽立ちやすく、耐熱性がやや悪かった。合成短繊維の繊維径が太いため、ピンホールがあり、耐デンドライト性が悪かった。
比較例6で用いたポリプロピレン製多孔質フィルムは、電解液の濡れ性と耐熱性が悪かった。
比較例7で用いたセルロース100%からなるセパレータは、抄紙網パターンの転写がなく、ピンホールがなく、電解液の濡れ性が良かったが、毛羽立ちやすく、水分率が高く、耐デンドライト性がやや悪かった。
本発明のリチウム二次電池用セパレータは、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池等のリチウムイオン二次電池に好適に使用できる。

Claims (2)

  1. ポリエステルとポリエチレンが相互に隣接してなる分割型複合繊維を分割して得られる極細繊維と、合成短繊維とを含有する湿式不織布からなることを特徴とするリチウム二次電池用セパレータ。
  2. 請求項1記載のリチウム二次電池用セパレータを用いてなるリチウム二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2023528395A (ja) * 2020-06-12 2023-07-04 シェンチェン シニア テクノロジー マテリアル カンパニー リミテッド 不織布、その作製方法、リチウム電池用セパレータおよびリチウム電池用セパレータベースフィルム

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