以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
<溶融亜鉛めっきラインについて>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る溶融亜鉛めっきラインの概略について説明する。図1は、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきラインの概略を示した説明図である。
図1に示したように、焼鈍炉から搬送されてきた鋼板Sは、溶融亜鉛及び各種の添加物を含む亜鉛浴10に浸漬される。鋼板Sは、亜鉛浴10内に設置されたシンクロール11によって方向転換し、略鉛直方向へと搬送される。
亜鉛浴10から出た鋼板Sは、その表面に、溶融亜鉛めっき層(以下、単にめっき層ともいう。)が形成されている。表面にめっき層が形成された鋼板Sは、インダクションヒーター等の合金化炉20へと搬送され、所定の鋼板温度まで加熱される。合金化炉20を出た鋼板S(表面にめっき層の形成された鋼板S)は、続いて、保熱帯30へと搬送される。
表面にめっき層に形成された鋼板Sは、保熱帯30内のいずれかの位置でめっき層の合金化が起こる。保熱帯30を出た鋼板Sは冷却帯40で冷却され、常温近くまで冷却されることとなる。
ここで、亜鉛浴10は、ほぼ一定の温度(例えば約450℃)に制御されており、亜鉛浴10中では、鋼板Sの温度は、ほぼ亜鉛浴10の温度となる。亜鉛浴10を出た鋼板Sは、合金化炉20に入るまでの間に温度の低下が起きるものの、インダクションヒーター等が用いられた合金化炉20に搬入されることで、鋼板温度が上昇していく。その結果、合金化炉20を出て保熱帯30に入る時点では、鋼板温度は、約520℃程度まで上昇することとなる。
ここで、近年導入が進んでいる溶融亜鉛めっきプロセスでは、保熱帯30内では鋼板温度が一定ではなく、鋼板温度が徐々に低下していることが明らかとなってきている。表面にめっき層の形成された鋼板は、保熱帯30中で徐々に温度が低下しながら、保熱帯30内のある場所で合金化が起こる。合金化の起こっためっき鋼板は、保熱帯30を出ると冷却帯40に搬入され、常温近くまで更に冷却される。
また、溶融亜鉛めっきライン1において、保熱帯30に高温ガスを吹き込む装置(図示せず。)を設けることで、保熱帯30内の温度を高く維持することも可能となる。これにより、保熱帯30内の温度を高く維持して合金化を進めることが求められる鋼種を製造することができる。
ここで、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、めっき層の形成された鋼板Sの分光放射率(以下、単に、放射率ともいう。)を特定するために、保熱帯30の近傍に少なくとも4つの合金化センサ50が設置されている。これらの合金化センサ50は、放射率測定装置の一例である。合金化センサ50は、溶融亜鉛めっきライン1を搬送される鋼板の放射率又は放射率を算出するために利用される物理量等を測定可能なものであればよい。鋼板の放射率を算出するために利用される物理量の一例として、鋼板の温度(放射温度)や放射輝度等を挙げることができる。また、鋼板Sの放射率を特定するための補助として、保熱帯30の壁面等に対して、例えば熱電対のような保熱帯の壁面温度を測定可能な温度計(図示せず。)が更に設けられていてもよい。
なお、保熱帯30の近傍とは、溶融亜鉛めっきライン1の保熱帯30、合金化炉20と保熱帯30との間からなるエリアを指すものである。また、少なくとも4つの放射温度計50のうち、最も亜鉛浴10に近い位置の合金化センサ50は、保熱帯30の近傍ではなく合金化炉20内に設置されていてもよい。
少なくとも4つの合金化センサ50等による測定結果は、本実施形態に係る合金化制御装置100に出力される。合金化制御装置100は、合金化センサ50から出力された測定結果を利用して、溶融亜鉛めっきライン1を搬送される鋼板Sに形成されためっき層の放射率を算出し、めっき層の合金化の度合いを判定する。また、合金化制御装置100は、合金化の度合いの判定結果に応じて、めっき層の合金化を制御する。具体的には、合金化制御装置100は、合金化炉20の制御を行うことが可能な各種の合金化炉制御手段60に対して制御信号等を出力し、合金化炉20の制御を行う。
この合金化制御装置100については、以下で改めて詳細に説明する。
<合金化の進行に伴う放射率の変化について>
次に、合金化の進行に伴う放射率の変化について、簡単に説明する。
めっき表面の亜鉛が地鉄と合金化すると、急激な放射率(又は反射率)変化が起こることが知られている。めっき直後の鋼板表面は鏡面的であり、放射率が低い。しかし、合金化により亜鉛層に鉄が拡散する過程で、鋼板の表面粗度が急激に増大し、その結果、放射率が上昇する。例えば、めっき直後の放射率は0.2程度であるが、鋼種によって異なるものの、合金化によって放射率が0.6〜0.8まで上昇することが知られている。従って、合金化センサによって測定した放射率の変化に着目することによって、めっき層の合金化が完了したか否かを判断することができる。
<合金化制御装置の構成について>
続いて、図2を参照しながら、本実施形態に係る合金化制御装置100の構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る合金化制御装置の構成を示したブロック図である。
なお、以下の説明では、溶融亜鉛めっきライン1に設けられた合金化センサ50から出力された測定結果を利用して、以下で説明する合金化制御装置100が鋼板Sの放射率を算出する場合について説明するが、本発明は、かかる例に限定されるわけではない。すなわち、溶融亜鉛めっきライン1に設けられた合金化センサ50が、鋼板Sの放射率を直接出力することが可能であるならば、合金化センサ50が出力した放射率そのものを利用して、以下で説明するような処理を実施することも可能である。
本実施形態に係る合金化制御装置100は、図2に示したように、鋼板測定情報取得制御部101と、放射率演算部103と、放射率差分算出部105と、合金化位置特定部107と、合金化炉制御部109と、表示制御部111と、記憶部113と、を主に備える。
鋼板測定情報取得制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。鋼板測定情報取得制御部101は、保熱帯30の近傍に設置された合金化センサ50から出力された鋼板の測定結果に関する鋼板測定情報を取得する制御を行う。また、鋼板測定情報取得制御部101は、保熱帯30の近傍に、保熱帯30の壁面温度を測定するための壁面温度計が設置されている場合には、かかる壁面温度計から出力される出力データについても取得する。
ここで、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、図3に示したように、少なくとも4カ所の放射率を測定するために、少なくとも4台の合金化センサ50が設置されている。これらの合金化センサ50は、図3に示したように、保熱帯30の前半部分に設置されることが好ましい。
これら少なくとも4台の合金化センサ50の設置位置(すなわち、放射率の測定位置)を、図3に示したように、合金化炉20に近い側から順にS1、S2、S3、S4・・・としたとき、測定位置S1に対応する合金化センサ50は、図3に示したように、保熱帯30の入側に設けられていてもよく、合金化炉20と保熱帯30との間に設置されていてもよく、合金化炉20の内部や合金化炉20の出側に設けられていてもよい。また、測定位置S2に対応する合金化センサ50は、図3に示したように、保熱帯30の内部に設けることが好ましい。
更に、測定位置S3に対応する合金化センサ50は、図3に示したように、保熱帯30の内部に設けられるものであるが、この測定位置S3に対応する合金化センサ50の設置位置は、測定位置S2に対応する合金化センサ50の位置に応じて決定される。
すなわち、本実施形態に係る合金化制御装置100は、以下で説明するように、鋼板Sに形成されためっき層が、測定位置S2−測定位置S3間の領域(図3における領域A2)で合金化するように合金化炉20の設定や出力を制御する。従って、測定位置S3に対応する合金化センサ50の設置位置が、適切な合金化制御を実施するうえで重要となる。鋼板Sに形成されためっき層の合金化は、母材である鋼板Sの鉄原子がめっき層に拡散していくことで進行する。そこで、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、過去の操業実績データ、実験室における実験結果、文献の記載等の各種の情報に基づいて、めっき層が合金化する合金化速度や放射率の変化速度等の速度情報を予め特定しておく。めっき厚み方向の合金化速度は同一鋼種の鋼板においてはほぼ一定となると考えられるので、時間単位でのめっき表面の放射率の変化パターンは、同一の鋼板であればほぼ一定であり、同一の通板速度では放射率の変化は合金化の程度によって長手方向の位置が変化すると考えられるため、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、かかる速度情報と、鋼板Sの搬送速度と、に基づいて、測定位置S3の位置を決定する。例えば、後述する図4Aのように、放射率の変化が大きい部分が、測定位置S2と測定位置S3との間に位置するように、測定位置S3と合金化センサ50の設置間隔とを決定する。
具体的には、一定の速度で操業している時に、保熱帯30の壁面に多数の穴をあけておき、各々の穴から内部(放射室)を測定して、放射率の変化パターンとして急激に放射率が変化し始める位置と放射率の変化が緩やかになる位置とを予め特定しておき、かかる位置が含まれる前後の直近の穴の位置から、測定位置S2及び測定位置S3を決定すればよい。
なお、上記の急激に放射率が変化し始める位置を特定するには、予め設定した放射率の変化率以上となる部位を特定すればよい。例えば、予め設定した放射率の変化率として、10%等の値を用いることが可能である。また、放射率の変化が緩やかになる位置を特定する際も、同様にして、予め設定した放射率の変化率以下となる部位を特定すればよい。例えば、予め設定した放射率の変化として、10%等の値を用いることが可能である。
また、定常速度が変わる別の鋼種を合金化処理する際には、予め特定しておいた位置まで手動または自動で合金化センサ50を移動させる。
また、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1に、5台目以降の合金化センサ50を設置する場合には、測定位置S1−測定位置S2間や、測定位置S2−測定位置S3間(すなわち、図3における領域A1や領域A3)に設置することが好ましい。以下で説明するように、本実施形態に係る合金化制御装置100では、めっき層の合金化が起こった位置(合金化位置とも称する。)が領域A1、領域A2、領域A3のどの場所かに応じて、めっき層の合金化が適正なものであるか、過合金や未合金といった現象が生じているかの判断を行う。ここで、領域A1が合金化位置である場合が過合金に該当し、領域A3が合金化位置である場合が未合金に該当する。従って、過合金が生じているか否かをより詳細に判断したい場合には、領域A1に5台目以降の合金化センサ50を設置すればよく、未合金が生じているか否かをより詳細に判断したい場合には、領域A3に5台目以降の合金化センサ50を設置すればよい。また、過合金及び未合金についてより詳細に判断したい場合には、領域A1及び領域A3の双方に、更に合金化センサ50を設置すればよい。
なお、隣り合う合金化センサ50の間隔は、等間隔であっても良く、場所毎に異なっていても良い。
本実施形態に係る鋼板測定情報取得制御部101は、このように設置された各合金化センサ50から、測定結果に対応する鋼板測定情報を取得して、後述する放射率演算部103に取得した鋼板測定情報を出力する。また、鋼板測定情報取得制御部101は、保熱帯30の壁面温度を測定するための壁面温度計から出力される出力データを取得した場合には、かかる出力データを鋼板測定情報に含めて、放射率演算部103に出力する。
なお、鋼板測定情報取得制御部101は、取得した鋼板測定情報に、かかる情報を取得した日時等に関する時刻情報を関連付けて、記憶部113に履歴情報として格納してもよい。
放射率演算部103は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。放射率演算部103は、鋼板測定情報取得制御部101から出力された鋼板測定情報に基づいて、溶融亜鉛めっきライン1を搬送される鋼板Sの放射率を、合金化センサ50が設置された位置のそれぞれで算出する。かかる放射率の算出処理により、各測定位置における鋼板Sの放射率が測定されたこととなる。放射率演算部103は、鋼板測定情報取得制御部101から出力される鋼板測定情報の内容に応じて、各種の演算方法を適宜利用して放射率を算出することができる。
放射率演算部103は、各測定位置における鋼板Sの放射率を算出すると、算出した放射率に関する情報を、後述する放射率差分算出部105に出力する。放射率演算部103は、算出した放射率に関する情報を、後述する合金化位置特定部107に出力してもよい。また、放射率演算部103は、算出した放射率に関する情報を、後述する表示制御部111に出力して、ディスプレイ等の表示部(図示せず。)に算出結果を表示させるようにしてもよい。また、放射率演算部103は、算出した放射率に関する情報に、かかる情報を算出した日時等に関する時刻情報を関連付けて、記憶部113に履歴情報として格納してもよい。
放射率差分算出部105は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。放射率差分算出部105は、放射率演算部103から出力された放射率に関する情報に基づいて、互いに隣り合う測定位置間での放射率の差分を算出する。例えば図3に示したように、溶融亜鉛めっきライン1に4台の合金化センサ50が設置されており、各測定位置における放射率がそれぞれε1、ε2、ε3及びε4であるとする。かかる場合に、放射率差分算出部105は、ε2−ε1、ε3−ε2、ε4−ε3の3種類の差分を算出する。
放射率差分算出部105は、放射率の差分の算出が終了すると、得られた算出結果を後述する合金化位置特定部107に出力する。また、放射率差分算出部105は、算出した放射率の差分に関する情報を表示制御部111に出力して、ディスプレイ等の表示部(図示せず。)に算出結果を表示させるようにしてもよい。放射率差分算出部105は、算出した放射率の差分に関する情報に、かかる情報を算出した日時等に関する時刻情報を関連付けて、記憶部113に履歴情報として格納してもよい。
合金化位置特定部107は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。合金化位置特定部107は、放射率差分算出部105が算出した放射率の差分に基づいて、鋼板に形成されためっき層が合金化したかを判定し、このめっき層が保熱帯において合金化した合金化領域の位置(合金化位置)を特定する。
先に説明したように、亜鉛めっき層の表面に存在する亜鉛が地鉄と合金化すると、急激な放射率の増加が起こる。従って、合金化位置特定部107は、放射率差分算出部105により算出された放射率の差分が、鋼種毎に設定されている所定の閾値以上となったか否かに基づいて、めっき層が合金化したか否かを判定することができる。
以下では、図4A〜図4Cを参照しながら、溶融亜鉛めっきライン1に4台の合金化センサ50が設置されている場合を例にとって、具体的に説明する。
ここで、図4Aに示したように、ε3−ε2で規定される放射率の差分が所定の閾値以上となった場合に、合金化位置特定部107は、図3に示した領域A2(測定位置S2−測定位置S3間)でめっき層に合金化が生じたと判断する。また、以下で説明するように、本実施形態に係る合金化制御装置100では、領域A2で合金化が生じている場合に、適正な合金化が進行していると判断する。
また、図4Bに示したように、ε2−ε1で規定される放射率の差分が所定の閾値以上となった場合に、合金化位置特定部107は、図3に示した領域A1(測定位置S2−測定位置S1間)でめっき層に合金化が生じたと判断する。また、以下で説明するように、本実施形態に係る合金化制御装置100では、領域A1で合金化が生じている場合に、溶融亜鉛めっきライン1で製造されるめっき鋼板は過合金状態になると判断する。
また、図4Cに示したように、ε4−ε3で規定される放射率の差分が所定の閾値以上となった場合に、合金化位置特定部107は、図3に示した領域A3(測定位置S4−測定位置S3間)でめっき層に合金化が生じたと判断する。また、以下で説明するように、本実施形態に係る合金化制御装置100では、領域A3で合金化が生じている場合に、溶融亜鉛めっきライン1で製造されるめっき鋼板は未合金状態になると判断する。
ここで、合金化位置特定部107は、合金化したか否かの判定に用いる閾値を、図5に示したような合金化関連データベースを参照することで算出する。この合金化関連データベースは、記憶部113等に格納されており、合金化位置特定部107が随時参照することが可能なものである。この合金化関連データベースには、図5に示したように、鋼種毎に、適正な合金化が生じる場合における測定位置S2及び測定位置S3での放射率やその差分(S3−S2)、更に、合金化しためっき層の最終的な放射率の値と、測定位置S3での放射率との差分β(S4−S3)が記載されている。
なお、差分βの値は、めっき相がほぼ安定化して固相化(S3)してから、ゆっくり鉄が拡散して最終的に相が固定するまで(S4)の間の値であり、0.1〜0.2程度の値を示し、鋼板種によってほぼ一定となる。従って、本実施形態での合金化制御に関しては、後述のとおり(S3−S2)で表される放射率の変化を指標として使用するが、更に合金化制御精度の向上、特に過合金を防止する手段として、例えば以下のような制御を行うことも可能である。すなわち、差分βに関する閾値を所定の値(例えば、0.1)に設定し、差分(S3−S2)が閾値以上であっても、差分βの値がβに関する閾値を下回った場合には、S3−S2で行う出力低下の半分程度の出力低下を行う等の制御を実施する。これにより、よりきめ細かな制御が可能となる。
また、かかる合金化関連データベースは、データベースの形式に限定されるわけではなく、ルックアップテーブルのような形式で記憶部113等に格納されていてもよい。
なお、上述の説明では、領域A1〜領域A3の何れかで放射率の急峻な増加が生じる場合について示したが、未合金又は過合金の判定は、上述の方法以外にも行うことが可能である。すなわち、測定位置S1において、合金化が進んでいると判断しうる程の高い放射率が観測された場合には、溶融亜鉛めっきライン1で製造されるめっき鋼板は過合金状態になると判断することができる。また、測定位置S4においても、合金化が進んでいると判断しうる程の放射率が観測されなかった場合には、溶融亜鉛めっきライン1で製造されるめっき鋼板は未合金状態になると判断することができる。
合金化位置特定部107は、以上のような方法で合金化位置を特定すると、合金化位置の特定結果を表す情報を、合金化炉制御部109に出力する。また、合金化位置特定部107は、特定した合金化位置に関する情報を表示制御部111に出力して、ディスプレイ等の表示部(図示せず。)に特定結果を表示させるようにしてもよい。合金化位置特定部107は、特定した合金化位置に関する情報に、かかる情報を生成した日時等に関する時刻情報を関連付けて、記憶部113に履歴情報として格納してもよい。
合金化炉制御部109は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。合金化炉制御部109は、合金化位置特定部107により特定された合金化領域の位置(合金化位置)に応じて、所定の領域でめっき層が合金化するように合金化炉を制御する。
本実施形態では、鋼板Sに形成されためっき層が領域A2(測定位置S2−測定位置S3間)で合金化することが適正である場合について着目している。従って、合金化炉制御部109は、合金化位置特定部107により特定された合金化位置に関する情報を参照して、合金化位置が領域A2ではない場合に、合金化炉20の制御を実施する。
具体的には、合金化位置が領域A2よりも前段に位置する場合、すなわち、合金化位置が領域A1である場合には、合金化炉制御部109は、過合金状態となることを回避し、領域A2で合金化が生じるようにするために、合金化炉の出力を低減させる。また、合金化位置が領域A2よりも後段に位置する場合、すなわち、合金化位置が領域A3である場合には、合金化炉制御部109は、未合金状態となることを回避し、領域A2で合金化が生じるようにするために、合金化炉の出力を増加させる。
ここで、合金化炉の出力を増加させたり低減させたりするための制御は、用いる合金化炉の種別等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、合金化炉の最高温度設定値THを増加/低減させたり、合金化炉を加熱するための加熱装置の出力(例えば、ヒータに流れる電流量等)を増加/低減させたりすればよい。
また、合金化炉の出力を増加/低減させる程度についても、用いる合金化炉の種別や設備の大きさ、鋼種等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、合金化炉の最高温度設定値THを5℃増加/低下させたり、ヒータに流れる電流量を2.5%増加/低下させたりすればよい。
合金化炉制御部109は、合金化位置に応じて上述のような制御方法を選択すると、選択した制御方法に対応する制御信号を生成して、合金化炉制御手段60に出力する。合金化炉制御手段60は、合金化炉制御部109から出力された制御信号に基づいて合金化炉20の制御を実施することとなる。これにより、合金化位置が領域A2となるように、合金化炉20が制御されることとなる。
表示制御部111は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。表示制御部111は、合金化位置特定部107から伝送された合金化位置に関する情報を、合金化制御装置100の備えるディスプレイ等の表示部や、合金化制御装置100の外部に設けられた他の装置のディスプレイ等の表示部に表示する際の表示制御を行う。また、表示制御部111は、合金化位置に関する情報以外にも、算出した放射率等の値や、これらの値の推移を示したグラフ図など、各種の情報を表示部に表示させることができる。表示制御部111が表示部に合金化位置に関する結果等を表示させることで、合金化制御装置100の利用者は、搬送されている鋼板Sの合金化位置に関する情報等を、その場で把握することが可能となる。
記憶部113は、本実施形態に係る合金化制御装置100が備える記憶装置の一例である。記憶部113には、合金化位置特定部107が合金化位置を特定する際に利用するデータベースが格納されている。また、記憶部111には、放射率演算部103が放射率を算出する際に利用する各種のデータベースやプログラム、複数の合金化センサ50の設置順序及び設置位置に関する情報等が格納されていてもよい。また、記憶部113には、本実施形態に係る合金化制御装置100が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベース等が、適宜格納される。この記憶部113には、合金化制御装置100が備える各処理部が、自由に読み書きを行うことが可能である。
以上、本実施形態に係る合金化制御装置100について、詳細に説明した。
なお、本実施形態に係る合金化制御装置100は、放射率を連続的に測定しておき、合金化に関する各種の判定についても連続的に実施してもよいし、放射率を連続的に測定しておき、合金化に関する各種の判定を、所定の時間間隔毎に間歇的に実施してもよい。また、本実施形態に係る合金化制御装置100は、放射率の測定及び合金化に関する各種の判定を、所定の時間間隔毎に間歇的に実施してもよい。
また、本実施形態に係る合金化炉制御手段60は、合金化炉の最高温度設定値や合金化炉を加熱するための加熱装置の出力を、1秒程度の時間間隔毎に、常時変動させてもよい。この場合、合金化炉の最高温度設定値の変動幅は±2℃程度とし、加熱装置の出力の変動幅は±1%程度とすることが好ましい。合金化炉の設定をこのように変動させることによって、未合金状態や過合金状態の判定精度を向上させることができる。
以上、本実施形態に係る合金化制御装置100の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る合金化制御装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<合金化制御方法について>
続いて、図6を参照しながら、本実施形態に係る合金化制御方法の流れについて説明する。図6は、本実施形態に係る合金化制御方法の流れの一例を示した流れ図である。
まず、溶融亜鉛めっきライン1の近傍に設けられた少なくとも4台の合金化センサ50は、少なくとも4カ所における鋼板Sの放射率を測定し(ステップS101)、合金化制御装置100に出力する。ここで、合金化センサ50が鋼板の放射率ではなく、放射率の算出に利用可能な物理量を測定するセンサである場合には、先だって説明したように、合金化制御装置100の放射率演算部103により、測定の結果得られた情報に基づいて、鋼板の放射率を算出すればよい。
合金化制御装置100の放射率差分算出部105は、測定された鋼板の放射率に基づいて、隣り合う測定位置間での放射率の差分を算出し(ステップS103)、得られた算出結果を、合金化位置特定部107に出力する。
合金化位置特定部107は、放射率差分算出部105が算出した放射率の差分に基づいて、鋼板に形成されためっき層が合金化した位置(合金化位置)を特定し(ステップS105)、得られた特定結果を、合金化炉制御部109に出力する。
合金化炉制御部109は、合金化位置特定部107における合金化位置の特定結果を参照して、どのような制御を行うかを判断する(ステップS107)。すなわち、合金化位置が所望の領域(例えば、図3における領域A2)である場合には、合金化炉制御部109は、適正な合金化が進行しているとして、合金化炉の設定を変更しない。また、合金化炉制御部109は、合金化位置が所望の領域の前段(例えば、図3における領域A1)である場合には、過合金状態を回避し、所望の領域で合金化が生じるように、合金化炉の出力を低減させる制御を実施する(ステップS109)。また、合金化炉制御部109は、合金化位置が所望の領域の後段(例えば、図3における領域A3)である場合には、未合金状態を回避し、所望の領域で合金化が生じるように、合金化炉の出力を増加させる制御を実施する(ステップS111)。
このような制御を実施したのちに、合金化炉制御部109は、合金化炉の制御を終了するかを判断する(ステップS113)。合金化制御装置100の使用者等により制御終了の操作がなされていない場合には、合金化制御装置100はステップS101に戻って処理を継続する。また、制御終了の操作がなされていた場合には、合金化制御装置100は、合金化炉の制御を終了する。
以上説明したような流れで処理を実施することにより、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する操業の変動に追随し、めっき層の合金化を安定して制御することが可能となる。
(第2の実施形態)
以上説明した本発明の第1の実施形態は、溶融亜鉛めっきラインを搬送される鋼板の互いに異なる少なくとも4カ所以上の場所の放射率に基づいて、鋼板に形成されためっき層の合金化を制御するものであった。以下で説明する本発明の第2の実施形態は、溶融亜鉛めっきラインを搬送される鋼板の同一箇所を測定した放射率に基づいて、鋼板に形成されためっき層の合金化を制御するものである。
<溶融亜鉛めっきラインについて>
まず、図7及び図8を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る溶融亜鉛めっきラインの概略について説明する。図7は、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきラインの概略を示した説明図である。図8は、本実施形態に係る放射率の測定方法を説明するための説明図である。
本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1に設けられた亜鉛浴10、合金化炉20、保熱帯30、冷却帯40、合金化炉制御手段60については、第1の実施形態に係る亜鉛浴10、合金化炉20、保熱帯30、冷却帯40、合金化炉制御手段60と同様の構成を有し同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、1台の合金化センサ50が保熱帯30の近傍に設置されている。また、この合金化センサ50は、図8に示したように、ベルトコンベアのようなセンサ位置変更手段70に接続されており、鋼板Sの搬送速度に合わせてその位置が変更可能なようになっている。これにより、本実施形態に係る合金化センサ50は、保熱帯30の所定区間を鋼板Sと共に移動しながら、鋼板の同じ位置を測定することができる。本実施形態に係る合金化センサ50は、図8に示したように、測定開始位置SA−測定終了位置SB間の区間について、鋼板Sを連続的に測定し、得られた測定結果を合金化制御装置100に出力する。
ここで、図8に示した合金化センサ50の測定開始位置SAは、保熱帯30の入側近傍にすることが好ましく、更に好ましくは、保熱帯の入り口〜入り口から5m程度である。合金化センサ50の測定終了位置SBは、保熱帯30の前半部分に収まるように、測定開始位置SAから数m程度後段(測定開始位置SAを通過してから、1秒程度後の位置)に設定することが好ましい。
本実施形態に係る合金化制御装置100は、合金化センサ50から出力された鋼板測定情報と、センサ位置変更手段70から出力された合金化センサ50の存在位置(すなわち、合金化センサが現在測定を実施している位置)に関する情報を取得する。その上で、合金化制御装置100は、鋼板Sに形成されためっき層の合金化について判断を行い、適切な合金化が進行していない場合には、合金化炉20の出力を制御して、適切な合金化が進行するようにする。
なお、図8に示したセンサ位置変更手段70はあくまでも一例であって、鋼板Sの搬送速度に合わせて位置を変更可能なものであれば、任意のものを使用することができる。
<合金化制御装置の構成について>
続いて、図9を参照しながら、本実施形態に係る合金化制御装置100の構成について、詳細に説明する。図9は、本実施形態に係る合金化制御装置の構成を示したブロック図である。
本実施形態に係る合金化制御装置100は、図9に示したように、例えば、鋼板測定情報取得制御部101、放射率演算部103、表示制御部111、記憶部113、放射率差分算出部151、合金化判定部153、及び、合金化炉制御部155を主に備える。
本実施形態に係る鋼板測定情報取得制御部101は、センサ位置変更手段70から合金化センサ50の現在位置に関する情報を取得しながら、合金化センサ50から鋼板測定情報を取得し、合金化センサ50の現在位置と取得した鋼板測定情報とを関連付けて出力する以外は、第1の実施形態に係る鋼板測定情報取得制御部101と同様の構成を有する。従って、以下では詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る放射率演算部103は、算出した放射率に関する情報を、放射率差分算出部151及び合金化判定部153に出力する以外は、第1の実施形態に係る放射率演算部103と同様の構成を有し、同様の効果を奏するものである。従って、以下では詳細な説明は省略する。
また、本実施形態に係る表示制御部111及び記憶部113については、第1の実施形態に係る表示制御部111及び記憶部113と同様の構成を有するため、以下では詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る放射率差分算出部151は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。放射率差分算出部151は、放射率演算部103が算出した測定開始位置SA及び測定終了位置SBでの放射率に基づいて、測定終了位置SB−測定開始位置SA間での放射率の差分を算出する。放射率差分算出部151は、算出した放射率の差分を、後述する合金化判定部153に出力する。
合金化判定部153は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。合金化判定部153は、放射率演算部103が算出した測定区間内での放射率、及び、放射率差分算出部151が算出した放射率の差分に基づいて、鋼板に形成されためっき層が合金化したか否かを判定する。
より詳細には、合金化判定部153は、図10の(i)に示したように、測定開始位置SAにおける放射率εAが第1の閾値超過であり、かつ、測定終了位置SBにおける放射率εBが第2の閾値未満である場合には、合金化は適正であると判断する。
また、合金化判定部153は、図10の(ii)に示したように、測定開始位置SAにおける放射率εAが第3の閾値以上であり、測定開始位置SAにおいて既に合金化が疑われる高い値を有している場合には、合金化判定部153は、過合金状態にあると判断する。
また、合金化判定部153は、図10の(iii)に示したように、測定終了位置SBにおける放射率εBが第4の閾値以下であり、測定終了位置SBにおいても合金化が生じていないと疑われる低い値を有している場合には、合金化判定部153は、未合金状態にあると判断する。
なお、上記4種類の閾値は鋼種毎に規定される値であり、合金化判定部153は、記憶部113等に格納された合金化関連データベースを参照して、かかる閾値がどのような値であるかを特定する。
更に、上記判定基準以外にも、合金化判定部153は、放射率差分算出部151が算出した放射率の差分が経時的に増加しており、その増加量が所定の閾値以上である場合(すなわち、時刻t1において算出された放射率の差分に比べて、時刻t2において算出された放射率の差分が所定の閾値以上の大きな値となっている場合)には、溶融亜鉛めっきライン1は過合金化傾向にあると判断する。
合金化判定部153は、上述のような判定結果を表す情報を、合金化炉制御部155に出力する。また、合金化判定部153は、判定結果に関する情報を表示制御部111に出力して、ディスプレイ等の表示部(図示せず。)に特定結果を表示させるようにしてもよい。合金化判定部153は、判定結果に関する情報に、かかる情報を生成した日時等に関する時刻情報を関連付けて、記憶部113に履歴情報として格納してもよい。
合金化炉制御部155は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。合金化炉制御部155は、合金化判定部153による合金化の判定結果に応じて、所望の領域でめっき層が合金化するように合金化炉を制御する。
具体的には、合金化判定部153により過合金状態にあると判定された場合には、合金化炉制御部155は、過合金状態となることを回避し、所望の領域で合金化が生じるようにするために、合金化炉の出力を低減させる。また、合金化判定部153により未合金状態にあると判定された場合には、合金化炉制御部155は、未合金状態となることを回避し、所望の領域で合金化が生じるようにするために、合金化炉の出力を増加させる。更に、合金化判定部153により過合金傾向にあると判定された場合には、合金化炉制御部155は、過合金状態となることを回避するために、合金化炉の出力を低減させる。
ここで、合金化炉の出力を増加させたり低減させたりするための制御は、用いる合金化炉の種別等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、合金化炉の最高温度設定値THを増加/低減させたり、合金化炉を加熱するための加熱装置の出力(例えば、ヒータに流れる電流量等)を増加/低減させたりすればよい。
また、合金化炉の出力を増加/低減させる程度についても、用いる合金化炉の種別や設備の大きさ、鋼種等に応じて適宜選択すればよいが、例えば、過合金状態/未合金状態にある場合には、合金化炉の最高温度設定値THを5℃増加/低下させたり、ヒータに流れる電流量を2.5%増加/低下させたりすればよい。また、過合金傾向にある場合には,合金化炉の最高温度設定値THを3℃低下させたり、ヒータに流れる電流量を1.5%低下させたりすればよい。
合金化炉制御部155は、判定結果に応じて上述のような制御方法を選択すると、選択した制御方法に対応する制御信号を生成して、合金化炉制御手段60に出力する。合金化炉制御手段60は、合金化炉制御部155から出力された制御信号に基づいて合金化炉20の制御を実施することとなる。これにより、合金化位置が所望の領域となるように、合金化炉20が制御されることとなる。
以上、本実施形態に係る合金化制御装置100について、詳細に説明した。
なお、本実施形態に係る合金化制御装置100は、合金化に関する各種の判定を連続的に実施してもよいし、合金化に関する各種の判定を所定の時間間隔毎に間歇的に実施してもよい。
また、本実施形態に係る合金化制御装置100は、測定開始位置及び測定終了位置の2カ所(かかる2カ所は可動とする。)のみで放射率を測定し、測定開始位置−測定終了位置間で合金化が生じるように合金化炉を制御してもよい。
以上、本実施形態に係る合金化制御装置100の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る合金化制御装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<合金化制御方法について>
続いて、図11を参照しながら、本実施形態に係る合金化制御方法の流れについて説明する。図11は、本実施形態に係る合金化制御方法の流れの一例を示した流れ図である。
まず、溶融亜鉛めっきライン1の近傍に設けられた1台の合金化センサ50は、保熱帯30の所定区間において鋼板Sの同一箇所の放射率を測定し(ステップS151)、合金化制御装置100に出力する。ここで、合金化センサ50が鋼板の放射率ではなく、放射率の算出に利用可能な物理量を測定するセンサである場合には、先だって説明したように、合金化制御装置100の放射率演算部103により、測定の結果得られた情報に基づいて、鋼板の放射率を算出すればよい。
合金化制御装置100の放射率差分算出部151は、測定された鋼板の放射率に基づいて、測定開始位置と測定終了位置との間での放射率の差分を算出し(ステップS153)、得られた算出結果を、合金化判定部153に出力する。
合金化判定部153は、放射率演算部103が算出した放射率、及び、放射率差分算出部151が算出した放射率の差分に基づいて、鋼板に形成されためっき層が合金化したか否かを判定し(ステップS155)、得られた判定結果を、合金化炉制御部155に出力する。
合金化炉制御部155は、合金化判定部153における判定結果を参照して、どのような制御を行うかを判断する(ステップS157)。すなわち、合金化炉制御部155は、判定結果が過合金状態である場合及び過合金傾向にある場合には、過合金状態を回避し、所望の領域で合金化が生じるように、合金化炉の出力を低減させる制御を実施する(ステップS159)。また、合金化炉制御部155は、判定結果が未合金状態である場合には、未合金状態を回避し、所望の領域で合金化が生じるように、合金化炉の出力を増加させる制御を実施する(ステップS161)。また、合金化炉制御部155は、放射率の差分が所定の条件を満たしており、適正な合金化が進行している場合には、合金化炉の設定を変更しない。
このような制御を実施したのちに、合金化炉制御部155は、合金化炉の制御を終了するかを判断する(ステップS163)。合金化制御装置100の使用者等により制御終了の操作がなされていない場合には、合金化制御装置100はステップS151に戻って処理を継続する。また、制御終了の操作がなされていた場合には、合金化制御装置100は、合金化炉の制御を終了する。
以上説明したような流れで処理を実施することにより、本実施形態に係る溶融亜鉛めっきライン1では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する操業の変動に追随し、めっき層の合金化を安定して制御することが可能となる。
(ハードウェア構成について)
次に、図12を参照しながら、本発明の実施形態に係る合金化制御装置100のハードウェア構成について、詳細に説明する。図12は、本発明の実施形態に係る合金化制御装置100のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
合金化制御装置100は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、合金化制御装置100は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、合金化制御装置100内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、合金化制御装置100の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。合金化制御装置100のユーザは、この入力装置909を操作することにより、合金化制御装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、合金化制御装置100が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、合金化制御装置100が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、合金化制御装置100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、合金化制御装置100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を合金化制御装置100に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、合金化制御装置100は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る合金化制御装置100の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
<合金化センサ及び放射率の算出方法について>
本発明の実施例について説明するに先立ち、まず、以下で説明する第1実施例及び第2実施例で利用した合金化センサ、及び、合金化センサの出力データを利用した放射率の算出方法について説明する。
以下で説明する実施例では、合金化センサとして、放射温度計を利用する。この放射温度計は、溶融亜鉛めっきラインを搬送される鋼板の放射輝度を測定するものである。以下では、放射率演算部103が実施する、測定された放射輝度に基づく放射率の算出方法について、その概略を説明する。
なお、以下の説明では、z軸正方向を鋼板Sの搬送方向にとるものとし、保熱帯30の内部では、鋼板温度がTp(z)[℃]であり、放射率がε(z)である鋼板Sが搬送されているものとする。また、保熱帯30の内壁(断熱材)は、高温で搬送される鋼板Sの熱放射等により加熱されて、その内壁温度は、TW(z)[℃]に達しているものとする。
ここで、保熱帯30の近傍に設置された合金化センサ50である放射温度計は、鋼板Sが発する熱放射(すなわち自発光)を測定する。また、保熱帯の内壁(断熱材)も熱を持っているため、保熱帯の内壁も熱放射を放出する。この熱放射が鋼板Sによって反射し、迷光として同時に放射温度計に観測されることとなる。このように、放射温度計が観測する放射輝度L(z)は、以下の式101に示したように、鋼板の自発光による放射輝度と、内壁の熱放射による放射輝度の和となる。
ここで、上記式101において、ε(z)は、鋼板の真の放射率を表しており、L(z)は、放射温度計によって測定される放射輝度である。また、右辺第1項は、位置zにおける鋼板Sからの自発光による放射輝度を表し、右辺第2項は、保熱帯の内壁からの熱放射が鋼板に反射して混入する放射輝度(すなわち、迷光雑音)を表している。
ここで、上記式101におけるLp(z)及びLw(z)は、それぞれ、以下の式102及び式103のように表される。下記式102及び式103において、定数c1は、真空中の光の速度cと、プランク定数hとを利用して表される値であり、定数c2は、真空中の光の速度cと、プランク定数hと、ボルツマン定数kとを用いて表される値である。これらの値の詳細を、以下の式104及び式105に示す。また、λは、放射温度計の観察波長であり、赤外領域(より詳細には近赤外領域、例えば、1.5μmなど)に設定される値である。
・・・(式102)
・・・(式103)
・・・(式104)
・・・(式105)
ここで、式102中に存在する鋼板温度Tp(z)、及び、式103中に存在する壁面温度Tw(z)は、以下で概略を説明するような方法で特定することが可能である。放射率演算部103は、このような温度の値と、定数c1、c2及びλとを利用して、上記式102及び式103で表される放射輝度を算出する。
放射率演算部103は、上記式102及び式103に基づく放射輝度の算出が終了すると、鋼板測定情報取得制御部101から出力された放射温度計の実測値を利用して、以下の式106に基づいて、放射率ε(z)を算出する。なお、本実施形態で着目しているような、近年導入が進められた合金化プロセスでは、壁面温度は鋼板温度よりも低い状態にあり、Lp(z)≠Lw(z)が成立している。
放射率演算部103は、以上説明したような方法を利用することで、放射温度計から得られた放射輝度に関する測定値に基づいて、放射率を精確に算出することができる。
なお、近年導入が進んだ合金化プロセスでは、鋼板温度と壁面温度との差が大きくなる場合も生じうる。かかる場合では、式102で表されるLp(z)に比べて式103で表されるLw(z)の値が十分に小さくなるため、上記式106において、Lw(z)を無視した以下の式107を利用してもよい。
[鋼板温度Tp(z)]
鋼板温度Tp(z)は、鋼板の搬送方向位置の変化に伴う鋼板の温度低下パターンに関する情報と、放射温度計の設置位置に関する情報とを利用することで、保熱帯30の所定位置での鋼板温度の推定値として算出することができる。
ここで、上記鋼板温度低下パターンに関する情報(以下、単に「鋼板温度低下パターン」ともいう。)は、過去の操業実績データから、製造条件、すなわち、鋼板の鋼種、厚み、搬送速度などの条件毎に、予め記憶部113に格納しておく。あるいは、鋼板温度低下パターンは、炉内雰囲気と内壁による鋼板の抜熱の伝熱モデルシミュレーション結果等から算出することができる。この場合、伝熱モデルによるシミュレーションは、保熱帯30の内部における鋼板の搬送の時間経過に対する温度低下の形で計算されるので、その場合には、搬送速度の情報と組み合わせることで、鋼板の搬送方向位置の変化に伴う鋼板の温度低下パターンを算出する。
このような鋼板温度低下パターンは、例えば、記憶部113に格納されている。鋼板温度低下パターンは、鋼板の種別毎にデータベースの形式で記憶部113に格納されていてもよく、鋼板の種別毎にルックアップテーブルの形式で記憶部113に格納されていてもよい。
このような鋼板温度低下パターンとして、保熱帯30内部における鋼板温度の低下の度合いを示した直線の傾きを利用することができる。この鋼板温度の低下の度合いを示した直線は、保熱帯入側からの距離及び鋼板温度(℃)によって規定される座標系での直線として表すことができる。すなわち、保熱帯入側からの距離が、放射温度計の設置位置に対応している。
かかる直線を利用することで、放射率演算部103は、放射温度計の設置位置(z座標)に基づいて、鋼板の温度低下量を算出する。例えば、鋼板温度低下パターンが、鋼板温度の低下の度合いを表す傾きとしてわかっているのであれば、放射率演算部103は、まず、保熱帯入側からの距離を用いて、温度低下量ΔTを算出する。次に、放射率演算部103は、測定位置S1又は測定開始位置SAにおける放射温度計の放射輝度L0を利用して算出した保熱帯30に搬入される直前の鋼板温度T0から、算出した温度低下量ΔTを差し引く。これにより、保熱帯内の位置zにおける推定鋼板温度Tp(z)を算出することができる。すなわち、推定鋼板温度は、Tp(z)=T0−ΔTで表される量である。なお、温度T0は、この位置では合金化が始まる前であるため放射率が0.2(または、より正確に0.17としても良い。)であるものとして、観測される放射輝度L0を温度に変換して求めることができる。
[壁面温度Tw(z)]
鋼板温度Tp(z)は、例えば保熱帯30に設置された壁面温度計からの出力(壁面温度)と、記憶部113等に格納されている壁面温度計の設置位置に関する情報とを利用して、必要な位置での壁面温度を線形補間により算出することができる。
すなわち、少なくとも2カ所における壁面温度、例えば、z=z1における壁面温度Tw(z1)、及び、z=z2における壁面温度Tw(z2)、が測定されていれば、壁面温度の推移を表す直線を規定することができる。そこで、放射率演算部103は、取得できた壁面温度を利用して、任意の位置(z座標位置)での壁面温度を与える式を算出し、かかる式を利用して、必要とする位置での壁面温度を算出する。
ここで、放射率演算部103は、線形補間による壁面温度の算出ではなく、非線形補間による壁面温度の算出を実施してもよい。
<第1実施例>
以下に示す実施例では、板幅1100mm、0.7mm厚の軟鋼を用い、かかる軟鋼を溶融亜鉛めっきライン1で、通板速度120mpmで搬送させた。ここで、亜鉛浴の温度は450℃であり、合金化炉の最高温度は、515℃であった。
また、本実施例における溶融亜鉛めっきライン1での合金化炉20は、図13に示したように、9mの高さを有しており、保熱帯30は、図13に示したように、50mの高さを有していた。また、図13に示したように、放射率を算出するために4台の放射温度計を利用し、隣り合う放射温度計間の離隔距離は、それぞれ8mとした。
[安定操業時]
計測時間中(約1600分/コイル40本:非連続)の測定位置S3及び測定位置S2での放射率の差分平均は0.55であり、軟鋼の適正合金として安定した値を示した。ここで、放射温度計の測定は連続して実施しているが、合金化の判定は1分毎に実施し、約1700点の値を利用して放射率の差分平均を算出した。この際の過合金率は0%であり、未合金率は0%であった。
なお、過合金率とは、過合金長さ(溶融亜鉛めっきライン1の後段において、冷却後の判定処理により過合金判定となり、除去された長さ)/有効全長(コイル40本分 約200km:溶接部除く。)×100、で表される数値とする。また、未合金率とは、未合金長さ(溶融亜鉛めっきライン1の後段において、冷却後の判定処理により未合金判定となり、除去された長さ)/有効全長(コイル40本分 約200km:溶接部除く。)×100、で表される数値とする。
[未合金判定時]
計測時間中(約40分/コイル1本)において、測定位置S3と測定位置S4との間の放射率の差分が、0.25となった。ここで、本実施例では、きめ細かな判定を行うために、0.20未満が適正領域、0.20以上0.25未満が注意領域、0.25を閾値としてかかる値以上を調整実施領域、と設定していた。そのため合金化炉20におけるインダクションヒーター電流を、+2.5%とする出力調整を、1回実施した。
出力調整後の次の測定における放射率の差分は0.25未満に戻ったが、測定位置S3と測定位置S4との間の差分が0.20未満となるまでに15分間を要し、このコイルの未合金率は1%であった。
[過合金判定時]
計測時間中(約40分/コイル1本)において、測定位置S1と測定位置S2との間の放射率の差分が、0.29となった。上述のように、本実施例では、きめ細かな判定を行うために、0.20未満が適正領域、0.20以上0.25未満が注意領域、0.25を閾値としてかかる値以上を調整実施領域、と設定していた。そのため合金化炉20におけるインダクションヒーター電流を、−2.5%とする出力調整を、1回実施した。
出力調整後の次の測定における放射率の差分は0.25未満に戻ったが、測定位置S1と測定位置S2との間の差分が0.20未満となるまでに20分間を要し、このコイルの過合金率は2%であった。
<第2実施例>
以下に示す実施例では、板幅1100mm、0.7mm厚の軟鋼を用い、かかる軟鋼を溶融亜鉛めっきライン1で、通板速度120mpmで搬送させた。ここで、亜鉛浴の温度は450℃であり、合金化炉の最高温度は、515℃であった。
また、本実施例における溶融亜鉛めっきライン1での合金化炉20は、図14に示したように、9mの高さを有しており、保熱帯30は、図14に示したように、50mの高さを有していた。また、図14に示したように、保熱帯30の入側から2mの位置から1mの区間で、1台の放射温度計により鋼板の測定を行った。
本実施例では、鋼板Sの一点を連続して計測するために、鋼板と並行に移動する放射温度計をベルトコンベアに設置した。この際、放射温度計の位置が戻るまでの時間帯の空白を回避するために、ベルトコンベアにおいて互いに対向する位置に2台の放射温度計を設置した。設置空間や放熱の制限から、並行区間(すなわち、測定区間)を1mとしたが、より長い区間を測定可能であれば、測定精度をより向上させることが可能である。
[安定操業時]
計測時間中(約400分/コイル10本:非連続)における測定開始位置SAと測定終了位置SBとの間の放射率の差分平均は0.54であり、軟鋼の適正合金として安定した値を示した。ここで、1回の測定に要する時間は、0.5秒であった。この際の過合金率は0%であり、未合金率は0%であった。なお、過合金率及び未合金率は、第1実施例における定義と同様である。
[未合金判定時]
計測時間中(約40分/コイル1本)に3回、測定開始位置SAでの放射率が0.25未満、かつ、測定終了位置SBでの放射率が0.35以下という状況が発生した。そこで、合金化炉20におけるインダクションヒーター電流を、+2.5%とする出力調整を、それぞれ実施した。出力調整後の次の測定において、測定終了位置SBでの放射率は0.35超過に戻った。このコイルの未合金率は、0.1%であった。なお、本実施例における制御条件(放射率の閾値に関する条件)については、以下でまとめて記載する。
[過合金判定時]
計測時間中(約40分/コイル1本)に1回、測定開始位置SAでの放射率が、0.40以上となる状況が発生した。ここで、本実施例では、きめ細かな判定を行うために、0.35未満が適正領域、0.35以上0.40未満が注意領域、0.40を閾値としてかかる値以上を調整実施領域、と設定していた。そこで、合金化炉20におけるインダクションヒーター電流を、−2.5%とする出力調整を、1回実施した。出力調整後の次の測定において、測定終了位置SAでの放射率は0.40未満に戻ったが、測定開始位置SAでの放射率が0.35未満になるまで7分間を要し、このコイルの過合金率は、0.1%であった。
なお、本実施例における放射率の閾値に関する条件は、以下の通りである。
SAでの第1の閾値(この値未満であれば、合金化は適正):0.25
SBでの第2の閾値(この値超過であれば、合金化は適正):0.35
SAでの第3の閾値(この値以上では、過合金化):0.40
SBでの第4の閾値(この値以下では、未合金化):0.20
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。