JP2012135979A - 積層体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを接着剤を使用せずに接着した積層体であって、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気絶縁性、難燃性等に優れた積層体を提供する。
【解決手段】金属箔およびポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも一部で、前記金属箔中のアルミニウム原子と、前記ポリオレフィン樹脂フィルム中の炭素原子とが、直接または酸素原子を介して、結合が形成されており、前記金属箔および前記ポリオレフィン樹脂フィルムとが接着剤を介さずに接着されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、積層体に関し、さらに詳細には、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを、接着剤を介さずに接着した積層体およびその製造方法に関する。
フィルム等を袋状に加工した包装体が使用されている。このような包装体は、充填される内容物に応じて所望される機能を発現させるために、使用するフィルムとして種々の材料を積層した多機能フィルム等が使用されている。このような多機能フィルムとして、内容物の紫外線等による劣化を抑止するために、紫外線吸収機能を有するフィルムを用いたり、また、内容物が酸素により変質してしまうのを防ぐために、ガス非透過性のフィルムや酸素吸収機能を有するフィルム等が用いられており、例えば、ポリオレフィンフィルムにアルミ箔を積層した積層フィルム等が広く使用されている。
包装体は、一般的に長尺状のフィルムを加工することより行われているが、袋状に加工するには、フィルムどうしを重ね合わせてその端部を接着することが行われている。フィルムどうしを接着する方法としては、ラミネート樹脂(接着剤)を接着しようとするフィルムの端部に塗布してフィルムどうしを押圧してシールしたり、フィルムどうしを重ね合わせて、その端部に熱を加えて融着させるいわゆるヒートシール加工が行われるのが一般的である。また、包装体の材料となる積層フィルムも、溶融押出加工により2種以上のフィルムを積層したり、また、アルミ箔を積層したポリオレフィンフィルムのように、ラミネート樹脂を介して2種以上のフィルムを積層することが行われている。
しかしながら、異種材料からなるフィルムどうしをラミネート樹脂を介して接着し包装体としたものは、ラミネート樹脂成分が徐々に包装体内に溶出または揮発し、内容物を変質させる場合があり、特に、安全性やクリーン性が重視される医療用分野においては、ラミネート樹脂による内容物の汚染が問題となることがあった。また、包装体の長期使用によりラミネート樹脂自体が劣化することもあり、特に屋外等で使用される外装用途においては、ラミネート加工した包装体の耐候性が問題となることもあった。また、接着剤を用いたラミネート技術においては、一般的に溶剤に希釈した樹脂成分を塗布することが行われるため、ラミネートして包装体等のような最終製品となった後にも溶剤が残留してしまうことがあった。
ところで、放射線や電子線を用いて材料の表面改質を行うことが従来から行われている。例えば、特開2003−119293号公報(特許文献1)には、フッ素系樹脂に放射線を照射することにより架橋複合フッ素系樹脂が得られることが提案されている。また、Journal of Photopolymer Science and Technology Vol.19, No. 1 (2006), pp123-127(非特許文献1)には、ポリテトラフルオロエチレンフィルムとポリイミドフィルムとを積層させて高温下で電子線(以下、EBと略す場合もある)を照射することにより、互いを接着することが提案されている。また、Material Transactions Vol.50, No.7 (2009), pp1859-1863(非特許文献2)には、ポリカーボネート樹脂の表面をナイロンフィルムで覆い、その上から電子線(以下、EBと略す場合もある)を照射することにより、ポリカーボネート樹脂表面にナイロンフィルムを接着する技術が提案されている。さらに、日本金属学会誌第72巻第7号(2008)、pp526−531(非特許文献3)には、シリコーンゴム上に置いたナイロンフィルムの上からEBを照射することにより、互いを接着できることが記載されている。
特開2003−119293号公報
Journal of Photopolymer Science and Technology Vol.19, No. 1 (2006), pp123-127 Material Transactions Vol.50, No. 7(2009), pp1859-1863 日本金属学会誌第72巻第7号(2008)、pp526−531
本発明者らは、今般、アルミ箔を積層したポリオレフィン樹脂フィルムの製造において、アルミ箔および/またはポリオレフィン樹脂フィルムに電子線を照射することにより、ラミネート樹脂等を用いることなく、互いを強固に接着できることを見いだした。本発明はかかる知見によるものである。
したがって、本発明の目的は、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを接着剤を使用せずに接着した積層体であって、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、かつ、光遮光性やガス非透過性にも優れる積層体を提供することである。
本発明による積層体は、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが積層した積層体であって、
前記金属箔および前記ポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも一部で、前記金属箔中の金属原子と、前記ポリオレフィン樹脂フィルム中の炭素原子とが、直接または酸素原子を介して、結合が形成されており、前記金属箔および前記ポリオレフィン樹脂フィルムとが接着剤を介さずに接着されていることを特徴とするものである。
また、本発明の態様として、前記金属箔表面の金属原子に、酸素原子および/または水酸基が結合しており、
前記ポリオレフィン樹脂フィルム表面の炭素原子に、酸素原子および/または水酸基が結合しており、
前記金属箔の酸素原子および/または水酸基と、前記ポリオレフィン樹脂フィルムの酸素原子または水酸基との間で結合が形成されていることが好ましい。
また、本発明の態様として、前記ポリオレフィン樹脂フィルムがポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
また、本発明の態様として、前記金属箔がアルミ箔であることが好ましい。
また、本発明の別の態様としての製造方法は、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが積層した積層体を製造する方法であって、
金属箔および/またはポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも一方の面、に電子線を照射し、
前記電子線が照射された前記金属箔面および/またはポリオレフィン樹脂フィルム面を重ね合わせて接着する、ことを含んでなることを特徴とするものである。
また、本発明の態様として、前記金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを重ね合わせる前および/または重ね合わせた後に電子線照射を行うことが好ましい。
また、本発明の別の態様として、前記接着を加圧して行うことが好ましく、また、前記接着を加熱して行うことが好ましい。
本発明によれば、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが積層した積層体において、金属箔中の金属原子と、ポリオレフィン樹脂フィルム中の炭素原子とが、直接または酸素原子を介して、結合が形成されているため、接着剤を介して接着していなくても、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが強固に接着した積層体が得られる。その結果、異物や残留溶剤等が滲出することがなく、かつ、光遮光性やガス非透過性にも優れる積層体を実現することができる。
本発明の積層体の一実施形態を示した概略断面図である。 積層体の界面(接着面)を拡大した模式断面図である。 本発明による積層体の製造方法の一実施形態を示した概略模式図である。 製造工程の一部を拡大した概略模式図である。 本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。 本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。 本発明による積層体の製造方法の別の実施形態を示した概略模式図である。
以下、本発明による積層体を、図面を参照しながら説明する。本発明による積層体は、図1に示すように、金属箔1がポリオレフィン樹脂フィルム2の少なくとも一方の表面に、接着剤を介さずに積層した構造を有する。
本発明による積層体は、金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2の接着面の少なくとも一部で、金属箔中の金属原子と、ポリオレフィン樹脂フィルム中の炭素原子との間に、直接または酸素原子を介して、介して結合が形成されることにより、金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とが強固に接着されている。通常、金属箔の表面は不動態被膜、すなわち金属酸化物(例えば、アルミニウムの場合は、Al)の膜が形成されているが、この金属箔の表面にポリオレフィン樹脂フィルムを積層しても、両者の間に水素結合や共有結合が形成されないため接着剤を使用しなければ両者を接着することはできない。本発明においては、後記するように、金属箔1および/またはポリオレフィン樹脂フィルム2の表面に電子線を照射してラジカルを発生させて、図2に示すように、金属箔1表面の金属原子(アルミニウム原子)とポリオレフィン樹脂フィルム2表面の炭素原子との間に、直接または酸素原子を介して結合を形成する、ないしは金属箔1表面の金属酸化物(酸化アルミニウム)と、ポリオレフィン樹脂フィルム2表面の炭素原子との間に結合を形成することにより、接着剤を介することなく金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを強固に接着したものである。また、金属箔だけでなく、ポリオレフィン樹脂フィルムの表面も、その表面が酸化されてO原子が存在する場合もあり、この場合、電子線を照射して両フィルムを接着すると、その界面には、例えば、Al−O−C、Al−O−O−Cなどの共有結合が形成される場合もある。さらに、電子線照射により発生したラジカルと空気中の酸素とが結合して、金属箔1および/またはポリオレフィン樹脂フィルム2の表面にはOH基が存在することがあり、その場合、金属箔1側のOH基とポリオレフィン樹脂フィルム2側のOH基とが水素結合を形成したり、ポリオレフィン樹脂フィルム2の表面に形成されたOH基と、金属箔1表面に存在するO原子との間で水素結合を形成する場合もある。なお、電子線照射によりラジカルの発生は、電子スピン共鳴装置(以下、ESRともいう。)を用いて、電子線照射後のフィルムに存在するフリーラジカル種を同定することにより、その発生を確認することができる。
金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとの間に、原子間で結合が形成されていることは、X線光電子分析装置(以下、XPSともいう。)やフーリエ変換赤外分光装置(以下、FTIRともいう。)により確認することができる。例えば、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを接着する前に、それぞれのフィルムの表面状態をXPSにより測定することにより、接着前に、各材料表面にどのような原子が存在するか確認しておき、両者を電子線照射により接着して積層体とした後に積層体を強制的に剥離して金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとに分離し、再度、両者の表面状態をXPSにより測定してどのような原子が存在するか確認する。その結果、ポリオレフィン樹脂フィルム側に金属箔由来の原子(すなわち、Al原子)が存在することを確認することで、両フィルム間に結合が形成されているかどうかの確認ができる。また、FTIRを用いて、剥離後のアルミ箔の表面に、ポリオレフィン由来のピークが存在するかを確認してもよい。
また、電子線照射により金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを接着した積層体は、図2に示すような原子間の結合が形成されているため、接着剤を全く使用しなくても、剥離を生じない積層体とすることができる。水素結合の存在の確認は、積層体を水またはアルコール溶液中に浸積して剥離の有無を確認することにより行うことができる。水素結合のみによって金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが接着している場合、積層体を水またはアルコール溶液中に浸積すると、両者の間に形成されていた水素結合が破壊されて水またはアルコールの水素原子または酸素原子と水素結合が再形成されるため、接着力がなくなり両フィルムが剥離する。よって、接着が、共有結合および水素結合によるものなのか、水素結合のみによるものなのかを、確認することができる。
以下、本発明による積層体を構成するポリオレフィン樹脂フィルムおよび金属箔について、説明する。
<ポリオレフィン樹脂フィルム>
本発明の積層体を構成するポリオレフィン樹脂フィルムとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の単体、または、ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物や、ポリプロピレンと高密度ポリエチレンとの混合物からなるフィルムを用いることができる。また、フィルムの厚みは、使用用途に応じて適宜決定できるが、概ね20〜300μm程度である。
ポリオレフィン樹脂フィルムには、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤等、従来公知の各種添加剤を適宜添加することができる。光安定剤、紫外線吸収剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、フェノール系、リン系、ヒンダードアミン系の光吸収剤や、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系の紫外線吸収剤が使用できる。
<金属箔>
本発明の金属箔積層フィルムに用いられる金属箔は、光、酸素及び水蒸気を遮断するものであり、アルミニウム、銅、鉄、鉛等の金属を圧延したものである。金属箔は、容易に圧延できるアルミニウム箔が好ましく使用できる。積層される金属箔の厚みは、概ね6〜200μm程度である。
上記したような金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを重ね合わせて接着した積層体は、積層体を使用する際にも異物や残留溶剤等が滲出することがなく、かつ、光遮光性やガス非透過性にも優れるものである。したがって、食品分野はいうまでもなく、医療分野で使用されている包装体、例えばシリンジ包装袋や粉末あるいは顆粒状の医薬品を充填包装するための包装体等に好適に使用することができる。
<積層体の製造方法>
次に、上記したような積層体を製造する方法を、図面を参照しながら説明する。先ず、上記した金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを準備し(図3(1))、両者のいずれか一方または両方の、接着しようとする部分に電子線を照射する(図3(2))。その結果、図3(3)に示すように、電子線が照射された部分のみ、金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とが接着される。
本発明においては、フィルムに電子線を照射した直後に、図4に示すようにローラー6等を用いて、重ね合わせたフィルム1,2を押圧することが好ましい。フィルム1,2の表面は、図4に示すようにミクロレベルで凹凸があるため、互いのフィルムを重ね合わせても完全に密着しておらず、両フィルムの接触界面での接触面積が小さい。本発明においては、電子線を照射した直後にローラー6等でフィルム1,2を押圧することにより、両フィルムの接着面での接触面積が増加するため、密着性が向上する。
金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを重ね合わせた後、両者1,2を押圧する際には、加熱しながら両者1,2を押圧することが好ましい。加熱しながら押圧することにより、ポリオレフィン樹脂フィルム2の柔軟性が向上し、金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2との界面(接着面)での接触面積をより増加させることができるため、密着性がより向上する。加熱する温度は、使用するフィルムの種類にもよるが、フィルムが熱変形できる温度であればよく、例えば、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度以上に加熱することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂フィルムとしてポリエチレンフィルムを用いる場合には、加熱温度は80〜180℃、好ましくは100〜160℃である。加熱温度を高くしすぎると、発生したラジカルが失活してしまい、強固な結合を実現できなくなる。なお、押圧の力(接圧)を高くしてもよく、接圧を高くすることにより、加熱温度を低くすることができる。
金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを重ね合わせて押圧するには、上記したようにヒートローラ6等を好適に使用できる。また、図4に示すように、重ね合わせたフィルムがヒートローラ6と支持ローラー7との間で圧接可能となるように、ヒートローラ6と対向する位置に支持ローラー7を載置してもよい。このようにヒートローラ6と対向する位置に支持ローラー7を載置することにより、積層体(金属箔1とフィルム2の積層物)とヒートローラ6との接触を線接触に近づけて、ヒートローラ6からの熱により積層体に発生する変形を最小限に抑えることができる。
図5は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを重ね合わせて接着する工程において、それぞれの材料1,2をガイドローラにより電子線照射位置3まで導き、電子線4を両者1,2に照射した後にヒートローラ6により両者1,2を押圧する工程を連続的に行うものである。それぞれの材料1,2はロール状形態として供給されてもよい。
電子線照射装置3からそれぞれの材料1,2に電子線4を照射する場合、ポリオレフィン樹脂2側から電子線4を照射することが好ましい。金属箔側から電子線を照射すると、金属箔で電子線が遮られるため、ポリオレフィン樹脂フィルム2の表面まで電子線が届かない場合がある。
図6は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。この実施態様においては、電子線の照射が、金属箔1とポリオレフィン樹脂フィルム2とを重ね合わせる前に行われる。先ず、供給されてきた一対の材料(金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2)は、両者1,2が重ね合わされる前に、電子線照射装置3(3’)により、それぞれの材料1(2)へ電子線4(4’)が照射される。図5に示した実施形態では、金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2の電子線照射側と反対側の面どうしが対向するように両者1,2を重ね合わせたのに対し、図6に示す実施態様では、金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2の電子線照射側の面どうしが対向するように両者1,2を重ね合わせる点が相違している。このように、ポリオレフィン樹脂フィルム2へ電子線を照射した側の面に金属箔1を重ね合わせることにより、電子線が金属箔に遮蔽されることがないため電子線の照射エネルギーをより小さくすることができ、その結果、フィルムの電子線照射による劣化をより低減することができる。
また、図6に示した実施態様においても、一対の電子線照射装置3,3’を設けて、図5に示した実施態様と同様に、金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2のそれぞれへ電子線4,4’を照射してもよい。これらの組み合わせにより、よりフィルムの劣化を少なくして接着強度を向上させることができる。
図7は、本発明による別の製造方法の実施形態を示した概略図である。この実施形態においては、金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2を重ね合わせてヒートローラ6により押圧した後に電子線照射を行うものである。先ず、供給されてきた一対の材料1,2は、ガイドローラに導かれて重ね合わされる。続いて、ヒートローラ6と支持ローラー7とにより両材料1,2が押圧されるとともに、ヒートローラ6により加熱が行われる。その後、電子線照射装置3により金属箔1およびポリオレフィン樹脂フィルム2の表面に電子線4が照射されて両者1,2の接着が連続的に行われる。また、図7に示した実施形態においても、一対の電子線照射装置3,3’を設けて、図5及び6に示した実施態様と同様に両方の材料1,2へそれぞれ電子線4,4’を照射してもよい。これらの組み合わせにより、よりフィルムの劣化を少なくして接着強度を向上させることができる。
電子線の照射エネルギーは、上記したようにフィルム厚み等に応じて適宜調整する必要がある。本発明においては、20〜750kV、好ましくは25〜400kV、より好ましくは30〜300kV程度の照射エネルギー範囲で電子線を照射するが、より低い照射エネルギーとすることが好ましく、40〜200kVとすることができる。このように低い照射エネルギーとすることにより、フィルムの劣化を抑制できるだけでなく、フィルム表面のラジカル発生がより効率的におこるため、より強固な結合を実現することができる。また、電子線の吸収線量は、10〜800kGy、好ましくは25〜600kGyの範囲で行う。
このような電子線照射装置としては、従来公知のものを使用でき、例えばカーテン型電子照射装置(LB1023、株式会社アイ・エレクトロンビーム社製)やライン照射型低エネルギー電子線照射装置(EB−ENGINE、浜松ホトニクス株式会社製)等を好適に使用することができる。
電子線を照射する際には、酸素濃度を100ppm以下とすることが好ましい。酸素存在下で電子線を照射するとオゾンが発生するため環境に悪影響を及ぼす場合があるからである。酸素濃度を100ppm以下とするには、真空下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、フィルムに電子線を照射すればよく、例えば、電子線照射装置内を窒素充填することにより、酸素濃度100ppm以下を達成することができる。
上記した接着方法によって得られた、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムと積層した積層体は、従来のラミネート樹脂を用いて接着した場合と同等またはそれ以上の接着強度を実現できる。また、ラミネート樹脂等を全く用いていないため、積層体を使用する際にも異物や残留溶剤等が滲出することがなく、かつ、光遮光性やガス非透過性にも優れるものとなる。
<金属箔およびポリオレフィン樹脂フィルムの準備>
金属箔として、厚み25μmのアルミ箔(東洋アルミ製)を準備した。また、ポリオレフィン樹脂フィルムとして、下記の2種類のフィルムを準備した。
A:エチレン−プロピレンブロック共重合タイプポリプロピレン(PF380A、サン アロマー株式会社製)を厚み70μmに製膜したフィルム
B:直鎖状低密度ポリエチレン(エボリューSP2020、プライムポリマー製)を厚み70μmに製膜したフィルム
実施例1
<積層体の作製>
上記したアルミ箔およびAの樹脂フィルムを、それぞれ150mm×75mmの大きさに切り出した試料を準備し、電子線照射装置(ライン照射型低エネルギー電子線照射装置EES−L−DP01、浜松ホトニクス株式会社製)のサンプル台に並置した。この際、電子線が試料に照射されない部分を設けるために、両試料の一方の端部5〜10mm程度にマスキングしておいた。
次いで、電子照射線装置のチャンバー内の酸素濃度が100ppm以下となるように窒素ガスでパージした後、下記の電子線照射条件により、試料の表面に電子線を照射した。
電圧:40kV
照射線量:200kGy
装置内酸素濃度:100ppm以下
電子線を照射した後、試料を装置内から取り出し、すぐに両フィルムの電子線照射面側が対向するようにして重ね合わせ、熱ラミネート法により、両フィルムを接着して積層体を得た。
実施例2
使用する樹脂フィルムをAの樹脂フィルムに代えてBの樹脂フィルムとした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
比較例1
電子照射を行わなかった以外は実施例1と同様にして積層体を得た。しかしながら、得られた積層体は、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとは接着していなかった。
比較例2
実施例1で用いたアルミ箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを用いて、2液硬化型芳香族エステル系接着剤(タケラックA−3、三井化学株式会社製)を介して貼り合わせるドライラミネート法により積層体を得た。しかしながら、得られた積層体は、アルミ箔とポリオレフィン樹脂フィルムとは接着していなかった。
<積層体の接着強度の評価>
得られた積層体を幅15mmの短冊状になるように切り出し、引張試験機(テンシロン万能材料試験機RTC−1310A、ORIENTEC社製)を用いて、50mm/分の速度で、90度剥離試験を行った。なお、上記したように比較例1の積層体は、金属箔と樹脂フィルムとが接着しておらず、積層体の接着強度を測定することができなかった。評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
また、実施例1〜3の積層体の接着が共有結合によるものかどうかと間接的に調べるために、得られた積層体を水中で保管し、その後、上記と同様にして積層体の接着強度を測定した。評価結果は、下記の表1に示される通りであった。
Figure 2012135979
表1の評価結果からも明らかなように、実施例1および2の積層体は、水中保管後も、空気中で測定した接着強度と同様の接着強度を有している。この結果から、実施例1および2の積層体は、アルミ箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが水素結合や分子間力のみによって接着しているものではないことが、間接的に示された。また、本発明による積層体は、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとの貼り合わせに接着剤を使用していないにもかかわらず、接着接着剤によりラミネート加工した従来の積層体と同程度の接着強度を有している。
1 ポリオレフィン樹脂フィルム
2 金属箔
3、3’ 電子線照射装置
4、4’ 電子線
5 フィルム基材接触界面
6 ヒートローラ
7 支持ローラー

Claims (8)

  1. 金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが積層した積層体であって、
    前記金属箔および前記ポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも一部で、前記金属箔中のアルミニウム原子と、前記ポリオレフィン樹脂フィルム中の炭素原子とが、直接または酸素原子を介して、結合が形成されており、前記金属箔および前記ポリオレフィン樹脂フィルムとが接着剤を介さずに接着されていることを特徴とする、積層体。
  2. 前記金属箔表面のアルミニウム原子に、酸素原子および/または水酸基が結合しており、
    前記ポリオレフィン樹脂フィルム表面の炭素原子に、酸素原子および/または水酸基が結合しており、
    前記金属箔の酸素原子および/または水酸基と、前記ポリオレフィン樹脂フィルムの酸素原子または水酸基との間で結合が形成されている、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記ポリオレフィン樹脂フィルムがポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムである、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記金属箔がアルミ箔である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の、金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとが積層した積層体を製造する方法であって、
    金属箔および/またはポリオレフィン樹脂フィルムの少なくとも一方の面、に電子線を照射し、
    前記電子線が照射された前記金属箔面および/またはポリオレフィン樹脂フィルム面を重ね合わせて接着する、ことを含んでなることを特徴とする、方法。
  6. 前記金属箔とポリオレフィン樹脂フィルムとを重ね合わせる前および/または重ね合わせた後に電子線照射を行う、請求項5に記載の方法。
  7. 前記接着を加圧して行う、請求項5または6に記載の方法。
  8. 前記接着を加熱して行う、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
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