JP2012135291A - 酒かす発酵エキスおよびその粉末品とそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】遊離アミノ酸及びペプチドを含み、飲食品、医薬品の分野で適用できる多様な生理機能を有する優れた新規な発酵機能性素材としての酒かす発酵エキスを提供する。
【解決手段】酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理し、酵母による発酵を行った後、固液分離を行って液体成分の取得およびその粉末品を取得するものである。
【選択図】なし
【解決手段】酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理し、酵母による発酵を行った後、固液分離を行って液体成分の取得およびその粉末品を取得するものである。
【選択図】なし
Description
本発明は、酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理し、それを酵母で発酵させ、次いで、固液分離を行って固体成分を除去することを特徴とする遊離アミノ酸およびペプチドを高含有した酒かす発酵エキスおよびその粉末品の製造方法、該方法により得られる素材、ならびに該素材の利用に関するものである。
酒かすは、酵母や麹菌の成分を含むことから、人が生きていく上で必要な必須アミノ酸、ビタミン類等の栄養素が豊富に含まれている。発酵に用いられる酵母や麹菌は、血圧降下、コレステロール代謝の改善、免疫賦活作用等を示す機能性成分も含まれており、さらにその多くは、利用されず廃棄されるか、もしくは市場で売買されることがあるが,この場合は安価に取引されている。
したがって、酒かすは優れた健康機能を有する食品素材として応用が期待できるものである。
これまで、酒かす中に含まれる酵母を使用することにより酵母エキスを得ることが試みられている(特許文献1)。具体的には、酒かす中の酵母を自己消化や酵素により分解し、調味料として得ることがいくつか検討されている(特許文献2)。
これらの方法は、酒かすを自己消化や酵素処理により旨味成分を含有させる効果を果たしていると考えられる。
また、同じく酒かすを酵素処理によりアンジオテンシン変換酵素阻害ペプチドの混合物を提供することで抗高血圧に働く効果の検討(特許文献3)や酒かす中のタンパク質に脂質代謝改善効果があることを示している(特許文献4)。
また、酒かすを発酵させることで、プレバイオティクス素材を提供する方法(特許文献5)、同じく発酵により肝機能改善(特許文献6)、血圧降下作用(特許文献6、7)、脂質代謝改善作用(特許文献8)を示す報告がある。
その他、酒かすについては、酒かすが低分子であり、抗酸化作用を示すグルタチオンを含有していることが記載されている(特許文献9)。この文献によれば、酒かすを40%エタノールで抽出したエキス中には21.5ppmのグルタチオンを含有していることが記載されている。
これらの技術は、酒かすを単に酵素処理するのみで酒かすに含まれる旨味成分を引き出し調味料として応用すること、また、発酵時の菌株に腸内環境を改善する可能性のある酵母や乳酸菌を用いることで効果を示すこと、酒かす以外の醸造副産物を利用すること、酒かすの固形成分を含有することで機能性を示すこと等、本発明とは、その製造方法、機能性において、大きく異なるものである。
本発明は、酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理し、それを酵母で発酵させ、次いで、固液分離を行って固体成分を除去したエキスに、種々の生理作用、特に脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、血圧降下作用が顕著な遊離アミノ酸・ペプチド高含有素材が、大量かつ安価に得られることを特徴とする酒かす発酵エキスおよびその粉末品とそれらの製造方法、該方法により得られる素材、ならびに該素材の利用に関するものである。
人々の健康維持は、多様な食品からバランスのとれた栄養を摂ることが重要である。特にタンパク質は身体を構成する栄養成分であるため、不足してはならない栄養素である。しかしながら、高齢による消化酵素の減退により、タンパク質の消化が効率よくなされず、未消化物として排泄されてしまい、栄養が偏ってしまうことが懸念された。そのため、タンパク質を分解してアミノ酸やペプチドを含有させた食品の製品化は数多くあるものの、その多くは調味料で、栄養機能や生理機能を検証したものは少なく、ほとんどは、その機能や効果が不十分なもの、疑問視されるものが多く、また製造コストの高いものが多い。
一方、一部の大学や企業では、酒かすに含まれる成分の血圧降下作用や脂質代謝改善効果等の機能性を利用した研究が行われているが、酒かすを酵母で発酵することで、有効成分の含有量を高めたエキスおよびその粉末化を目指した食品開発は例がない。
したがって、本発明の課題は、遊離アミノ酸及びペプチドを高含有し、飲食品、医薬品の分野で適用できる多様な生理機能を有する優れた新規機能性発酵素材を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決せんと鋭意研究を重ねた。すなわち、本発明者らは、上記目的を達成するために発酵法による機能性高アミノ酸・ペプチド素材開発に着目した。これらの成分の原材料となる酒かすは、清酒醸造において多量に得られ、かつ普遍的に含まれる成分からなり発酵することで高濃度化が可能である。さらに本発明者らは鋭意研究を続けた結果、酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理した後、酵母で発酵させ、固液分離して得られた上清に、生理機能を有する遊離アミノ酸やペプチドを多く含むことを見出し、さらに、この新規な素材は、脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用などの多様な生理機能を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、
本発明にかかる酒かす発酵エキスの製造方法は、酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理した後、この処理したものを酵母で発酵させ、次いで、固液分離をおこなって不溶性成分を除去することを特徴としている。
本発明にかかる酒かす発酵エキスの製造方法は、酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理した後、この処理したものを酵母で発酵させ、次いで、固液分離をおこなって不溶性成分を除去することを特徴としている。
本発明の製造方法によれば,酒かすを酵母で発酵させることにより高濃度化が図れ、より高い粗タンパク質濃度のものが得られ、例えば表1に示すように、水抽出物(水抽出エキス)および発酵エキス中の遊離アミノ酸含量を測定した結果、酒かすに比べて1.5倍以上の遊離アミノ酸含量が認められ、また、各エキス中に含まれるタンパク質もしくはペプチドについては、酒かすに比べて4倍以上のタンパク質もしくはペプチドを含有していることが認められた。さらに、種々の生理作用、特に脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用が顕著な遊離アミノ酸・ペプチド高含有素材が、廃棄もしくは極めて安価に売買されている酒かすから大量かつ安価に得られる。
請求項2に記載のように、前記酒かすに残存するデンプンをデンプン分解酵素、タンパク質をタンパク質分解酵素でそれぞれ分解することができる。
このようにすれば,酒かすに残存するデンプンやタンパク質を酵母の栄養源とし発酵させることができる。
請求項3に記載のように、前記酵素と並行して、前記酵母による発酵処理を行うことができる。
このようにすれば、遊離アミノ酸、低分子ペプチドおよびグルタチオンをそれぞれ発酵エキス中に高濃度に含有させることができる。
請求項4に記載の酒かす発酵エキスの粉末品の製造方法は、前記酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理したものを酵母で発酵させ、次いで、固液分離をおこなって不溶性成分を除去した後、乾燥することを特徴とするものである。
請求項4の製造方法によれば、高濃度化が容易に図れ,股製品としての取扱が容易になる。
請求項5に記載の酒かす発酵エキスは、酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理したものを酵母で発酵させた後、固液分離をおこなって不溶性成分を除去することにより得られることを特徴としている。
請求項6に記載の発酵エキスの粉末品は、請求項5記載の酒かす発酵エキスを乾燥することに得られるものである。
請求項5に記載の酒かす発酵エキスまたは請求項6記載の粉末品によれば、酒かすに比べて1.5倍以上の遊離アミノ酸含量が認められ、また、各エキス中に含まれるタンパク質もしくはペプチドについては、酒かすに比べて4倍以上のタンパク質もしくはペプチドを含有していることが認められる。また、脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用が顕著に奏する。
請求項7に記載の飲食物は、請求項5記載の酒かす発酵エキス又は請求項6記載の酒かす発酵エキス粉末品を含有させたことを特徴とするものである。
請求項8記載の健康食品は、脂肪肝抑制、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減効果、抗ストレス効果、血圧降下作用のための、請求項5記載の酒かす発酵エキス又は請求項6記載の酒かす発酵エキス粉末品を含有させたことを特徴とするものである。
本発明によれば、種々の生理作用、特に脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用が顕著な遊離アミノ酸・ペプチド高含有素材が、廃棄もしくは極めて安価に売買されている酒かすから大量かつ安価に得られる。
以下、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
本発明にかかる酒かす発酵エキスの製造方法は、酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理後、酵母にて発酵し、次いで、固液分離を行って液体成分を取得することを特徴とする、遊離アミノ酸・ペプチド高含有素材(以下、「本発明の素材」または単に「素材」と称することがある)の製造方法に関するものである。
本発明の製造方法により得られる素材は、遊離アミノ酸およびペプチドを多く含むものであり、脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用などの多様な生理機能を有するものである。しかも、本発明の素材は、安価な原料から大量に得ることができ、特に、清酒醸造において得られる副産物を原料としているので、資源の有効利用にもつながる。
本発明の素材の原料は、いずれの造りの清酒醸造で得られる酒かすであってもよい。とりわけ、液化仕込で得られる酒かすが好ましい。
本発明にかかる製造方法において、酒かすをデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理する。デンプン分解酵素処理とタンパク質分解酵素処理はいずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。デンプン分解酵素処理とタンパク質分解酵素処理を同時に行うことによって、素材の発酵時間を短縮し、工程や設備を簡略化することもできる。
本発明に使用するデンプン分解酵素はいずれのものであってもよく、例えば、糸状菌由来、細菌由来のデンプン分解酵素等、いずれを用いてもよい。本発明の素材の製造に使用できるデンプン分解酵素としては、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ等のアミラーゼ、α−グルコシダーゼ、トランスグルコシダーゼ等のグルコシダーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ等の枝切り酵素等があり、市販のデンプン分解酵素剤を本発明に使用することもできる。市販のデンプン分解酵素剤としては、グルク100(アマノエンザイム社製)、グルクSB(アマノエンザイム社製)、グルクザイムAF6(アマノエンザイム社製)、コクゲンL(大和化成社製)、スピターゼCP−40FG(ナガセケムテックス社製)、スミチームS(新日本化学工業社製)、ビオザイムA(アマノエンザイム社製)、クライスターゼL1(大和化成社製)、コクラーゼ-G2(三共ライフテック社製)等がある。本発明の素材の製造に用いるデンプン分解酵素または酵素剤は併用して用いてもよい。これらのデンプン分解酵素および市販のデンプン分解酵素剤は例示であり、上記以外のものを適宜選択して用いることができる。
本発明に使用するタンパク質分解酵素はいずれのものであってもよく、例えば、糸状菌由来のタンパク質分解酵素、細菌由来のタンパク質分解酵素、植物由来のパパイン、動物由来のペプシン、トリプシン等を用いてもよい。本発明の素材の製造に使用できるタンパク質分解酵素としては、ペプチダーゼなども挙げられる。市販のタンパク質分解酵素剤を本発明に使用することもできる。市販のタンパク質分解酵素剤としては、ペプシン(和光純薬社製)、オリエンターゼ20A(エイチビィアイ社製)、オリエンターゼ90N(エイチビィアイ社製)、オリエンターゼONS(エイチビィアイ社製)、ニューラーゼF3G(アマノエンザイム社製)、プロテアーゼA「アマノ」G(アマノエンザイム社製)、プロテアーゼM「アマノ」G(アマノエンザイム社製)、スミチームAP(新日本化学工業社製)、スミチームLP(新日本化学工業社製)等がある。本発明の素材の製造に用いるタンパク質分解酵素または酵素剤は併用して用いてもよい。これらのタンパク質分解酵素および市販のタンパク質分解酵素剤は例示であり、上記以外のものを適宜選択して用いることができる。
上述のようにしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理を行った後、酵母により発酵し、発酵物を固液分離して取得した液体およびその粉末品を本発明の素材として得る。発酵に用いる酵母はいずれの菌種であってもよいが、清酒醸造で用いられるサッカロミセス属の酵母が好ましい。固液分離方法は、遠心分離、ろ過、デカンテーション等、残渣と液体に分けることができればいずれの方法でもよい。液体の鮮明度に応じて上記固液分離方法、あるいは上記以外の固液分離方法を、適宜選択し、あるいは組み合わせて用いることができる。
本発明は、液体をそのまま使用してもよく、乾燥させて粉末状あるいは顆粒状として用いてもよい。乾燥方法、粉末化方法、顆粒化方法等は公知のいずれの方法であってよい。得られた素材が着色している場合には活性炭処理等により脱色してもよい。得られた素材をさらに有機溶媒抽出、膜処理、樹脂等で精製してもよい。これらの後処理および他の後処理は、目的に応じて適宜行うことができる。上述のごとく、本発明の素材は脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用等の多様な生理機能を有するものである。しかも、本発明の素材は、安価な原料である酒かすから大量に得ることができるので、資源の有効利用に資するものである。
本発明の素材をあらゆる飲食物に含有させることもできる。本発明の素材を含む飲食物は、脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用等の様々な生理機能を発揮する。したがって、本発明の素材を飲食物に含ませることにより健康食品(いわゆる特定保健用食品を含む)を製造することができる。
本発明の素材を含むサプリメントを作成することもできる。本発明のサプリメントは脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用等の様々な薬理効果を発揮する。本発明のサプリメントは粉剤、顆粒、錠剤、カプセル剤、懸濁液、シロップなどの摂食可能な形状にすることができる。これらのサプリメントの形状は当業者に公知の方法を用いて作成することができる。
本発明の素材を有効成分として含有する医薬組成物を製造することもできる。本発明の医薬組成物は、脂肪肝抑制作用、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減作用、抗ストレス効果、血圧降下作用等の様々な薬理効果を発揮する。本発明の医薬組成物は様々な剤形に処方することができ、経口処方が好ましい。例えば、粉剤、顆粒、錠剤、カプセル剤、懸濁液、シロップなどに処方することができる。これらの剤形の処方は製薬分野において公知の方法および材料を用いて作成することができる。
以下に、実施例を示して本発明をより詳細かつ具体的に説明するが、実施例は単なる例示説明であり、本発明を限定するものではない。
実施例1
吟醸酒かすと液化酒かすとの成分比較では、吟醸酒かすには粗たんぱく質が14.7%、.全糖が39.1%、液化酒かすには粗たんぱく質が20.8%、全糖21.6%含まれており、液化酒かすに特に粗たんぱく質が多く含まれていることが認められた。
吟醸酒かすと液化酒かすとの成分比較では、吟醸酒かすには粗たんぱく質が14.7%、.全糖が39.1%、液化酒かすには粗たんぱく質が20.8%、全糖21.6%含まれており、液化酒かすに特に粗たんぱく質が多く含まれていることが認められた。
粗たんぱく質含量の高い液化酒かすを用いて、エキスの調製をおこなった。まず、比較のために液化酒かす1kgに2kgの水を加え、室温で4時間抽出を行った。その後、ろ過し、清澄なエキスを得た。
次に、液化酒かすの、酵母を用いた発酵によるエキスの調整をおこなった。液化酒かす10kgと酵母懸濁液(5.0×107個/ml)20Lをステンレス製タンクに混合した。これに5.0gの糖化酵素(グルク100:アマノエンザイム社製)と12.5gのプロテアーゼ剤(オリエンターゼ20A:エイチビィアイ社製)を加え、攪拌して、25℃、3日間発酵させた。発酵終了後、ろ過し、22Lの発酵エキスを得た。
得られた各エキスの固形分を測定し、粗タンパク質をケルダール法にて分析した。その結果、水抽出エキス中の固形分は4.71%、粗たんぱく質濃度は2.18%であり、固形分にしめる粗タンパク質の割合が50%以下であることが分かった。
また、発酵エキス中の固形分、粗タンパク質濃度を測定した結果、固形分濃度5.92%、粗タンパク質濃度4.39%であり、固形分にしめる粗たんぱく質濃度が70%以上と、発酵することによってより高い粗タンパク質濃度のものが得られることが分かった。
さらに水抽出物(水抽出エキス)および発酵エキス中の遊離アミノ酸含量を測定した結果、水抽出物で1.81%、発酵エキスで2.74%と1.5倍以上の遊離アミノ酸含量(表1参照)があることが分かった。
また、各エキス中に含まれるタンパク質もしくはペプチドでは、粗たんぱく質から遊離アミノ酸量を差し引いた値として、水抽出エキスには0.37%含まれており、発酵エキスには1.65%と4倍以上のタンパク質もしくはペプチドを含有していることがわかった。
発酵エキスに含まれるタンパク質またはペプチドの分子量の解析として、分画分子量3000の遠心フィルターにて通過液と元液との比較を行うことによって遂行した。その結果、98%以上が分子量3000以下の低分子ペプチドであることが確認された。
酒かす発酵エキスは低分子ペプチドを高含有していることが上記で示された。酒かすは低分子であり、抗酸化作用を示すグルタチオンを含有していることが示されている(特許文献9参照)。その文献によれば、酒かすの40%エタノールで抽出エキス中には21.5ppmのグルタチオンを含有していることが記載されている。発酵エキスのグルタチオン含量を測定した結果、36.9ppmであることが示され、発酵エキスには、酒かすに比べてアルコールを用いて効率よく抽出された場合の、約1.7倍程度のグルタチオンを含有していることがわかった。
実施例2
実施例1で得られた酒かす発酵エキスの粉末化について検討した。粉末化はスプレードライヤー(L−8型、大河原工業製)を用いて実施した。粉末化条件として入り口温度160℃、出口温度90℃、回転数13,000rpm、流量30ml/minとした。水抽出エキスは吸湿性が強く、固形物が回収不可能であるために粉末化できなかったが、発酵エキスは22Lから836gの良好な粉末品を得ることができた。
実施例1で得られた酒かす発酵エキスの粉末化について検討した。粉末化はスプレードライヤー(L−8型、大河原工業製)を用いて実施した。粉末化条件として入り口温度160℃、出口温度90℃、回転数13,000rpm、流量30ml/minとした。水抽出エキスは吸湿性が強く、固形物が回収不可能であるために粉末化できなかったが、発酵エキスは22Lから836gの良好な粉末品を得ることができた。
スプレードライした発酵エキス(発酵エキス粉末品)の成分分析結果では、粗たんぱく質含量は72%と高く、粉末化することでの成分損失はみられなかった。また、乾燥・粉末化の方法としてスプレードライ以外に、凍結乾燥(−50℃冷却:ALPHA−4LD、クリスト製)でも同様に乾燥でき、次いで粉砕機(ハンマー式ミル:KIIW、不二パウ
ダル製)を用いることでスプレードライと同程度の粉末品が得られた。さらに、より安定的な粉末品を得るために賦形剤を添加することもできる。賦形剤としてはデキストリンやトレハロースなどが使用でき、エキス固形分に対して20−60%添加すると良い、具体的には、エキス固形分1kgに対して賦形剤を200g−600g添加することでより安定的な粉末品1.2−1.6kgを得た。
ダル製)を用いることでスプレードライと同程度の粉末品が得られた。さらに、より安定的な粉末品を得るために賦形剤を添加することもできる。賦形剤としてはデキストリンやトレハロースなどが使用でき、エキス固形分に対して20−60%添加すると良い、具体的には、エキス固形分1kgに対して賦形剤を200g−600g添加することでより安定的な粉末品1.2−1.6kgを得た。
続いて、上記実施例2で得られた発酵エキス粉末品を使用して効果を確認するための各種試験を行った。
持久力向上試験
日本クレア(株)より購入したICRマウス(5週齢)を、数日間予備飼育した後、試験に用
いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、市販の固形飼料CE−2(日本クレア(株)製)の摂取及び飲水は自由
にさせた。
日本クレア(株)より購入したICRマウス(5週齢)を、数日間予備飼育した後、試験に用
いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、市販の固形飼料CE−2(日本クレア(株)製)の摂取及び飲水は自由
にさせた。
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を使用した。
予備飼育後、体重に対して5%の重さの錘をつけて10分間予備遊泳させた。その2日後、7%の錘をつけて遊泳させ、遊泳時間を測定し、遊泳時間が平均化するように対照群と発酵エキス粉末品群の2群(n=13)に分けた。その後、1週間に1度遊泳試験を実施した。サンプルは群分け後より対照群には水を、発酵エキス粉末品群には発酵エキス粉末品を経口投与(1g/kg体重)した。遊泳日は、2時間絶食後に経口投与し、その30分後に遊泳を行った。尚、遊泳試験は水温32±2℃に設定した水槽にて実施し、遊泳時間は遊泳開始から頭部が7秒間沈むまでの時間とした。
遊泳時間の結果を図1に示す。対照群では、図1に示すように試験開始時と終了時で遊泳時間に変化は見られなかったが、発酵エキス粉末品群では1週目、2週目と遊泳時間の延長が見られ、特に2週目においては0週と比較して有意に遊泳時間が延長していることが確認され、持久力が向上していることが示された。
脂肪肝抑制試験
Wistarラット(5週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、試
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取及び飲水は自由にさせた。
Wistarラット(5週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、試
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取及び飲水は自由にさせた。
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を使用した。
飼料には脂肪肝を誘導するため、対照群、発酵エキス粉末品群にオロチン酸を0.4%添加した。また、発酵エキス粉末品群には発酵エキス粉末品を5%添加した。
予備飼育後、体重が平均化するように陰性対照群、対照群、発酵エキス粉末品群の3群(n=3)に分け、調整した飼料を与えた。10日後、エーテル麻酔下で腹部大動脈採血により脱血死させ、肝臓を摘出した。摘出した肝臓は重量を測定した後、−20℃で保管し、後日中性脂肪量の測定に供した。
肝臓中に蓄積された中性脂肪量を測定した結果、図2に示すように陰性対照群と比較して対照群で明らかに増加していることが確認された。一方で、発酵エキス粉末品群では、対照群と比較して中性脂肪の蓄積を抑制している事が確認され、発酵エキス粉末品が肝臓への中性脂肪の蓄積を抑制し、脂肪肝を軽減する効果を有していることが示された。
胃炎抑制試験
Wistarラット(5週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、実
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取および飲水は自由にさせた。
Wistarラット(5週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、実
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取および飲水は自由にさせた。
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を使用した。
予備飼育した後、一晩絶食させ、翌日対照群には水を、200mg/kg投与群には発酵エキス粉末品を体重1kgあたり200mg、100mg/kg投与群には体重1kgあたり発酵エキス粉末品を100mg経口投与した。投与30分後にエタノール(99.5%)を経口投与(5g/kg体重)した。投与60分後に、エーテル麻酔下で脱血死させ、胃を摘出した。摘出した胃は噴門部を結索し、幽門部よりホルマリン緩衝液10mlを注入し、15分間固定した。固定後、大彎部に沿って開き、胃内部をデジタルカメラにて撮影した。撮影した画像をパソコンに取り込み、炎症部位面積を画像解析ソフトimageJにて解析した。
炎症部位面積をimageJで解析した結果を図3に示す。炎症面積は、図3に示すように発酵エキス粉末品の投与量依存的に小さくなっており、発酵エキス粉末品にはアルコールによる胃粘膜障害を抑制する作用を有することが明らかとなった。
アンジオテンシン変換酵素阻害試験
サンプル25μlを96ウェルプレートに入れ、そこに調整したアンジオテンシン変換酵素(SIGMA社製:50mU/ml)25μlを加え、次いで基質としてAbz−Gly−p−nitro−Phe−Pro−OH trinitroacetate(Bachem AG社製:0.45mM)を100μl加え、37℃で15分間保持した。保持後、生成したAbz−Glyの蛍光強度(励起波長:355nm/検出波長:405nm)を測定し、酵素活性とした。阻害率は次式により算出した。
阻害率(%)=(1−B/A)×100
A:サンプルを含まない時の値
B:サンプルを含む時の値
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を各濃度に溶解して使用した。
サンプル25μlを96ウェルプレートに入れ、そこに調整したアンジオテンシン変換酵素(SIGMA社製:50mU/ml)25μlを加え、次いで基質としてAbz−Gly−p−nitro−Phe−Pro−OH trinitroacetate(Bachem AG社製:0.45mM)を100μl加え、37℃で15分間保持した。保持後、生成したAbz−Glyの蛍光強度(励起波長:355nm/検出波長:405nm)を測定し、酵素活性とした。阻害率は次式により算出した。
阻害率(%)=(1−B/A)×100
A:サンプルを含まない時の値
B:サンプルを含む時の値
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を各濃度に溶解して使用した。
発酵エキス粉末品の各濃度での阻害率を求め、そこからIC50(50%阻害率)を算出した。その結果、IC50=7.98μg/mlであり、発酵エキス粉末品がアンジオテンシン変換酵素の阻害活性を有していることが確認された。
ストレス抑制試験
Wistarラット(7週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、実
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取及び飲水は自由にさせた。
Wistarラット(7週齢)を日本クレア(株)より購入し、数日間予備飼育した後、実
験に用いた。飼育環境は、室温22±2℃、明暗サイクル12時間(明7:00am〜7:00pm)とし、飼育期間中、飼料(CE−2)の摂取及び飲水は自由にさせた。
実施例2で得られた発酵エキス粉末品を使用した。
拘束ストレスは、毎日11時から13時30分の2.5時間、円筒状の容器にラットを閉じ込め、2.5時間放置する事によって行った。
予備飼育後、ラットを平均体重が等しくなるように3群に分け、試験開始日より拘束ストレスを7日間連続でかけた。拘束ストレス実施2.5時間前には絶食し、30分前に対照群には水を、発酵エキス粉末品群には発酵エキス粉末品を体重1kgあたり1g経口投与した。陰性対照群には水のみを投与し、拘束ストレスをかけなかった。試験開始日と終了日には拘束ストレス直後に採血し、血中のコルチコステロンと血中グルコースの測定に供した
拘束ストレス初日では各群の血中コルチコステロン量に大きな差は見られなかったが、試験7日目には対照群で血中コルチコステロン濃度が有意に増加しており、ストレスがかかっていることが確認された(図4参照)。
拘束ストレス初日では各群の血中コルチコステロン量に大きな差は見られなかったが、試験7日目には対照群で血中コルチコステロン濃度が有意に増加しており、ストレスがかかっていることが確認された(図4参照)。
一方で、発酵エキス粉末品群では、試験初日と比較して7日目においても大きな変化は見られず、ストレスの増加を抑制していることが示された。また試験終了時の血中グルコース濃度においても対照群と比較して発酵エキス粉末品群では有意に上昇を抑制していることが確認された(図5参照)。
Claims (8)
- 酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理した後、この処理したものを酵母で発酵させ、次いで、固液分離をおこなって不溶性成分を除去することを特徴とする酒かす発酵エキスの製造方法。
- 前記酒かすに残存するデンプンをデンプン分解酵素、タンパク質をタンパク質分解酵素でそれぞれ分解することにより前記酵母の栄養源とし発酵させることを特徴とする請求項1記載の発酵エキスの製造方法。
- 前記酵素と並行して、前記酵母による発酵処理を行うことにより、遊離アミノ酸、低分子ペプチドおよびグルタチオンを高濃度に含有させることを特徴とする請求項1記載の発酵エキスの製造方法。
- 前記酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理したものを酵母で発酵させ、次いで、固液分離をおこなって不溶性成分を除去した後、乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の酒かす発酵エキスの粉末品の製造方法。
- 酒かすを原料にしてデンプン分解酵素処理およびタンパク質分解酵素処理したものを酵母で発酵させた後、固液分離をおこなって不溶性成分を除去することにより得られることを特徴とする酒かす発酵エキス。
- 前記酒かす発酵エキスを乾燥した請求項5に記載の酒かす発酵エキスの粉末品。
- 請求項5記載の酒かす発酵エキス又は請求項6記載の酒かす発酵エキス粉末品を含有させたことを特徴とする飲食物。
- 脂肪肝抑制、持久力向上作用、アルコール性胃炎軽減効果、抗ストレス効果、血圧降下作用のための、請求項5記載の酒かす発酵エキス又は請求項6記載の酒かす発酵エキス粉末品を含有させたことを特徴とする健康食品。
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JP2017143766A (ja) * | 2016-02-16 | 2017-08-24 | 大関株式会社 | 乳酸菌、およびそれを使用した乳酸発酵酒粕発酵エキスの製造方法 |
JP2020065490A (ja) * | 2018-10-24 | 2020-04-30 | 株式会社アンチエイジング・プロ | Lps高含有組成物の製造方法 |
JP2022001589A (ja) * | 2017-06-23 | 2022-01-06 | 丸善製薬株式会社 | 抗肥満剤、化粧料、及び飲食品 |
-
2010
- 2010-12-28 JP JP2010291456A patent/JP2012135291A/ja active Pending
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