JP2012133896A - 燃料電池用触媒層の製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】個体毎のバラツキが小さく、かつ特性に所望の傾斜構造を有する触媒層を容易に製造可能にする。
【解決手段】実施例の製造装置は、触媒ペースト30と保水材ペースト50と、第1、2貯留タンク3、5と、第1、2ノズル7、9と、ボンベ11と、作業テーブル13と、制御装置15とを備えている。第1、2貯留タンク3、5にはそれぞれ触媒ペースト30及び保水材ペースト50が貯留されている。第1、2ノズル7、9は、それぞれ第1、2貯留タンク3、5と接続され、加圧されたN2ガスによって触媒ペースト30及び保水材ペースト50を噴霧可能である。作業テーブル13には基材70が設置される。この製造装置では、制御手段15により、第1、2ノズル7、9から触媒ペースト30及び保水材ペースト50がそれぞれ調整された噴霧量で同時に基材70に対して噴霧することで触媒層71を製造する。
【選択図】図1
【解決手段】実施例の製造装置は、触媒ペースト30と保水材ペースト50と、第1、2貯留タンク3、5と、第1、2ノズル7、9と、ボンベ11と、作業テーブル13と、制御装置15とを備えている。第1、2貯留タンク3、5にはそれぞれ触媒ペースト30及び保水材ペースト50が貯留されている。第1、2ノズル7、9は、それぞれ第1、2貯留タンク3、5と接続され、加圧されたN2ガスによって触媒ペースト30及び保水材ペースト50を噴霧可能である。作業テーブル13には基材70が設置される。この製造装置では、制御手段15により、第1、2ノズル7、9から触媒ペースト30及び保水材ペースト50がそれぞれ調整された噴霧量で同時に基材70に対して噴霧することで触媒層71を製造する。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池用触媒層の製造装置に関する。
燃料電池のカソード極やアノード極といった電極は、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等の導電性及びガス透過性のある基材と、この基材の一面に形成された触媒層とを有している。これらカソード極やアノード極の各触媒層が電解質層の一面及び他面にそれぞれ接合されることにより、膜電極接合体(MEA)が形成される。
触媒層は、触媒と高分子電解質と溶媒とを含むペーストが基材の一面側に塗布等されることにより形成される。特に、特性が異なる複数のペーストによって触媒層が構成される場合がある。例えば、触媒と高分子電解質とを含有する触媒ペーストと、保水材と高分子電解質とを含有する保水材ペーストとを混合して混合ペーストとし、基材に対してこの混合ペーストを塗布等すれば、特許文献1に開示された電極を得ることが可能である。触媒は、カーボンブラック等の導電性のある担体に白金(Pt)等の触媒金属微粒子を担持させてなる。こうして得られた触媒層を有する電極を備えたMEAでは、保水材によってフラッディングが防止され、高い発電性能を発揮可能である。
しかし、混合ペーストで触媒層を構成すると、電極が優れた発電性能を発揮し難い場合があり得る。この原因としては、混合ペースト内に各ペーストの偏りが存在し、触媒層に部分的な特性差が生じていることが考えられる。電極を大量に製造しようとする場合、このような個体毎のバラツキは可及的に小さくされる必要がある。
また、混合ペーストで触媒層を構成すると、混合ペーストに各ペーストの偏りがなく、乾燥時に何ら問題がないとしても、面内及び厚み内で同一の特性を有する触媒層しか製造できない。そのために複数の混合ペーストを予め調製し、各混合ペーストを用いて触媒層を構成するとしても、各混合ペーストの管理が面倒であるとともに、製造工程が複雑になり、触媒層の製造コストの高騰化を招いてしまう。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、個体毎のバラツキが小さく、かつ特性に所望の傾斜構造を有する触媒層を容易に製造可能にすることを解決すべき課題としている。
本発明の燃料電池用触媒層の製造装置は、基材上に特性が異なる複数のペーストを用いて触媒層を形成する燃料電池用触媒層の製造装置において、
各該ペーストの少なくとも一つには触媒と高分子電解質とが含有され、
各該ペーストを貯留する複数の貯留タンクと、
各該貯留タンクとそれぞれ接続され、各該ペーストをそれぞれ個別に噴霧可能な噴霧手段と、
各該ペーストがそれぞれ調整された噴霧量で同時に前記基材に対して噴霧されるように該噴霧手段を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
各該ペーストの少なくとも一つには触媒と高分子電解質とが含有され、
各該ペーストを貯留する複数の貯留タンクと、
各該貯留タンクとそれぞれ接続され、各該ペーストをそれぞれ個別に噴霧可能な噴霧手段と、
各該ペーストがそれぞれ調整された噴霧量で同時に前記基材に対して噴霧されるように該噴霧手段を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする(請求項1)。
本発明の製造装置によれば、特性が異なる複数のペーストがそれぞれ調整された噴霧量で同時に、かつ、個別に基材に対して噴霧される。このため、基材には、霧状態で混合された各ペーストが吹きつけられ、これによって形成される触媒層に部分的な特性差が生じ難い。このため、触媒層を大量に製造しても、個体毎のバラツキが生じ難い。
また、この製造装置によれば、複数の混合ペーストを予め調製しなくても、また各混合ペーストを用いなくても、面内又は厚み内で異なる特性を有する触媒層を製造することが可能である。この際、ペースト毎に噴霧量を調整可能であることから、触媒層における各ペーストの構成比率を任意に変更することが可能である。
したがって、本発明の製造装置によれば、個体毎のバラツキが小さい触媒層を製造することができる。このため、高い品質の触媒層を有する電極を大量に製造することが可能である。また、この製造装置によれば、特性に所望の傾斜構造を有する触媒層を容易に製造することができる。
噴霧手段は、例えば、各ペーストを噴霧可能な複数の2流体ノズルと、各2流体ノズルに対し、各ペーストを供給可能なペースト供給手段と、各2流体ノズルに対し、加圧されたガスを供給可能なガス供給手段とで構成することができる。また、他の噴霧手段として、例えば、複数のノズルと、各ノズルに向けて、各貯留タンク内の各ペーストを圧力により押出し可能な押出装置とで噴霧手段を構成することもできる。押出装置は、ピエゾ素子や伸縮機構等で構成され、変形又は伸縮等により、各貯留タンク内の各ペーストを加圧可能なものであっても良い。また、各貯留タンク自体が押出装置として機能するものであっても良い。
各ペーストの噴霧量の調整は、例えば、上記のような各2流体ノズルに供給されるガスの圧力変化の他、各貯留タンクから各2流体ノズルに供給される各ペーストの供給量を変化させることによって行うことができる。また、ピエゾ素子等の変形や伸縮機構の伸縮制御等によってもペーストの噴霧量を調整することができる。さらに、これらを組み合わせることで、各ペーストの噴霧量の調整を行っても良い。
本発明の製造装置は、基材と、噴霧手段から噴霧された各ペーストとを相対的に走査させる走査手段を備えていることが好ましい(請求項2)。この場合には、所望の傾斜構造を有する触媒層を構成し易い。また、基材の一面に各ペーストをより均一に分散し易いとともに、触媒層の厚みを均一にし易い。このため、この製造装置によれば、より安定的に高性能の触媒層を製造することが可能となる。
複数のペーストは、触媒と高分子電解質とを含有する触媒ペーストと、保水材と高分子電解質とを含有する保水材ペーストとからなることが好ましい(請求項3)。触媒ペースト及び保水材ペーストを用いれば、得られた電極では、保水材によってフラッディングが防止され、高い発電性能を発揮可能である。さらに、発明者らの試験によれば、これらの各ペーストを用いた触媒層が本発明の製造装置によって得られることで、そのような触媒層を有する電極は、これらの各ペーストが混合された混合ペーストを基材に塗布することで得られた触媒層を有する電極と比較して、高い電圧特性、すなわち高い発電性能を発揮できることが判明した。
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
(実施例)
実施例の製造装置は、図1に示すように、第1貯留タンク3と、第2貯留タンク5と、第1ノズル7と、第2ノズル9と、ボンベ11と、作業テーブル13と、制御装置15とを備えている。なお、第1ノズル7及び第2ノズル9には2流体ノズルが採用されている。
実施例の製造装置は、図1に示すように、第1貯留タンク3と、第2貯留タンク5と、第1ノズル7と、第2ノズル9と、ボンベ11と、作業テーブル13と、制御装置15とを備えている。なお、第1ノズル7及び第2ノズル9には2流体ノズルが採用されている。
第1貯留タンク3には、触媒ペースト30が貯留されている。この触媒ペースト30は、図2に示すように、触媒90と高分子電解質91とを含有している。触媒90は、カーボンブラックからなる担体92にPtからなる触媒金属微粒子93が担持されて形成されている。この触媒ペースト30は、50gの触媒90に対して水500gを加えて撹拌した後、高分子電解質91と、担体92との重量比(E/C比)が0.15となるように、所定量の高分子電解質91の水溶液を加えて撹拌することによって得られている。
一方、図1に示すように、第2貯留タンク5には、保水材ペースト50が貯留されている。この保水材ペースト50は、図2に示すように、カーボンブラックからなる保水材94と高分子電解質91とを含有している。この触媒ペースト30は、50gの保水材94に対して水500gを加えて撹拌した後、高分子電解質91と、保水材94とのE/C比が0.5となるように、所定量の高分子電解質91の水溶液を加えて撹拌することによって得られている。なお、触媒ペースト30及び保水材ペースト50を得る際における撹拌時には、自転/公転式遠心攪拌機(キーエンス社製、商品名「ハイブリッドミキサーHM−500」)を用いており、撹拌と同時に脱泡処理も行なわれている。
第1ノズル7は、図1に示すように、流入口7a、7bを有している。流入口7aには配管17の一端側が接続されている。配管17の他端側は第1貯留タンク3と接続されている。また、配管17には、第1電動ポンプP1が設けられている。第1電動ポンプP1は、回路19を介して制御装置15と電気的に接続されている。また、第1ノズル7には、公知のモータ21a等で構成される第1ノズル走査手段23aが設けられている。モータ21aは、回路25を介して制御装置15と電気的に接続されている。
第2ノズル9は、流入口9a、9bを有している。流入口9aには配管27の一端側が接続されている。配管27の他端側は第2貯留タンク5と接続されている。また、配管27には、第2電動ポンプP2が設けられている。第2電動ポンプP2は、回路29を介して制御装置15と電気的に接続されている。また、第2ノズル7には、モータ21b等で構成される第2ノズル走査手段23bが設けられている。第2ノズル走査手段23bと上記の第1ノズル走査手段23aとは同じ構成である。モータ21bは、回路31を介して制御装置15と電気的に接続されている。
ボンベ11には、高圧のN2ガスが充填されている。ボンベ11は、配管33及び配管35を介して第1ノズル7及び第2ノズル9と接続されている。配管33は一端側でボンベ11と接続されており、他端側で第1ノズル7の流入口7bと接続されている。配管35は一端側で配管33と接続されており、他端側で第2ノズル9の流入口9bと接続されている。また、配管33には公知の圧力調整弁Vが設けられている。圧力調整弁Vは回路37を介して制御装置15と電気的に接続されている。なお、第1、2ノズル7、9、第1、2電動ポンプP1、P2、ボンベ11、圧力調整弁V及び配管17、27、33、35が噴霧手段に相当する。
作業テーブル13には、上面70aを第1、2ノズル7、9方向に向けた状態で基材70が設置されるようになっている。この基材70は、公知のカーボンペーパーを公知の方法で加工することにより得られている。なお、公知の高分子電解質膜を基材70として採用することも可能である。
また、作業テーブル13には、公知のモータ39等で構成された作業テーブル走査手段41が設けられている。モータ39は、回路43を介して制御装置15と電気的に接続されている。上記の第1ノズル走査手段23a、第2ノズル走査手段23b及び作業テーブル走査手段41が走査手段に相当する。なお、作業テーブル13は、一つの基材70のみを設置可能に構成されても良く、複数の基材70を設置可能に構成されても良い。また、基材70を供給するローラ等を設け、作業テーブル13に基材70が順次設置されるように構成しても良い。
制御装置15は、第1電動ポンプP1の作動を制御することで、第1ノズル7に供給される触媒ペースト30の供給圧力や供給量の制御を行う。同様に、制御装置15は、第2電動ポンプP2の作動を制御することで、第2ノズル9に供給される保水材ペースト50の供給圧力や供給量の制御を行う。これら第1、2電動ポンプP1、P2は、個々に制御可能になっている。また、制御装置15は圧力調整弁Vの開度を調整することで、第1ノズル7及び第2ノズル9に対するN2ガスの供給圧力を制御する。これらの第1、2電動ポンプP1、P2の制御と圧力調整弁Vの制御とにより、制御装置15は、各ノズル7、9から噴霧される触媒ペースト30及び保水材ペースト50の各噴霧量の制御を行う。
さらに、制御装置15は、モータ23a、23bをそれぞれ作動させることで、第1ノズル7及び第2ノズル9について、図1中の実線矢印で示すように、基材70に対してそれぞれ水平方向で相対的に走査させる。この際、制御装置15は、第1ノズル7及び第2ノズル9の走査量の制御も同時に行う。また、制御装置15は、モータ39を作動させることで、同図中の破線矢印で示すように、作業テーブル13を水平に走査させる。この際、制御装置15は、作業テーブル13の走査量の制御も同時に行う。こうして、制御装置15は、第1ノズル7及び第2ノズル9に対し、基材70を水平方向で相対的に走査させる。
以上のように構成されたこの製造装置では、図2に示すように、基材70に対し、触媒ペースト30と保水材ペースト50とを同時に、かつ、個別に噴霧することにより、基材70の一面70aに触媒層71を形成し、ひいては、電極80を得ることができる。
具体的には、この製造装置では、基材70における触媒金属微粒子93の担持量が0.1mg/cm2となるように、制御装置15が第1、2電動ポンプP1、P2及び圧力調整弁Vの制御を行う。こうして、基材70に対して噴霧される触媒ペースト30及び保水材ペースト50のそれぞれの噴霧量を調整し、第1、2ノズル7、9は基材70に対して触媒ペースト30及び保水材ペースト50をそれぞれ同時に噴霧する。このため、基材70には、霧状態で混合された触媒ペースト30及び保水材ペースト50が吹きつけられ、これによって形成される触媒層71に部分的な特性差が生じ難くなっている。このため、この製造装置では、触媒層71を大量に製造しても、個体毎のバラツキが生じ難くなっている。また、このような触媒層71を有する電極80も個体毎のバラツキが生じ難くなっている。
また、この製造装置によれば、触媒ペースト30及び保水材ペースト50からなる複数の混合ペーストを予め調製しなくても、また各混合ペーストを用いなくても、面内又は厚み内で異なる特性を有する触媒層71を製造することが可能になっている。この際、触媒ペースト30及び保水材ペースト50毎に噴霧量を調整可能であることから、触媒層71における触媒ペースト30及び保水材ペースト50の構成比率を任意に変更することが可能になっている。
さらに、この製造装置では、触媒ペースト30及び保水材ペースト50の噴霧中に基材70と、第1、2ノズル7、9とが相対的に走査可能となっていることから、所望の傾斜構造を有する触媒層71を構成し易い。触媒層71の傾斜構造は、例えば、基材70の中央部分では、基材70や第1、2ノズル7、9の各走査量を小さくして、触媒層71における触媒ペースト30と保水材ペースト50との分布を密の状態とする一方、基材70の両端部分では、基材70や第1、2ノズル7、9の各走査量を大きくして、触媒層71における触媒ペースト30と保水材ペースト50との分布を粗の状態とする等により形成される。また、例えば、基材70の中央部分では、基材70や第1、2ノズル7、9の各走査量を小さくして、触媒層71の厚みを厚くする一方、基材70の両端部分では、基材70や第1、2ノズル7、9の各走査量を大きくして、触媒層71の厚みを薄くすることによっても触媒層71の傾斜構造が形成される。さらに、第1ノズル7と第2ノズル9とで走査量を変更し、触媒ペースト30が密に噴霧された部分と保水材ペースト50が密に噴霧された部分とにより触媒層71の傾斜構造を形成することもできる。
また、基材70と、第1、2ノズル7、9とが相対的に走査可能であることから、この製造装置によれば、基材70の上面70aに触媒ペースト30及び保水材ペースト50をより均一に分散し易くなるとともに、触媒層71の厚みを均一にし易くなる。このため、この製造装置によれば、より安定的に高性能の触媒層71を製造することが可能となる。
したがって、この製造装置によれば、個体毎のバラツキが小さい触媒層71を製造することができる。このため、この製造装置によれば、高い品質の触媒層71を大量に製造することが可能であり、ひいては、高い品質の電極80を大量に製造することが可能である。また、この製造装置によれば、特性に所望の傾斜構造を有する触媒層71を容易に製造することができる。
特に、この製造装置では、触媒90と高分子電解質91とを含有し、E/C比が0.15とされた触媒ペースト30と、保水材94と高分子電解質91とを含有し、E/C比が0.15とされた保水材ペースト50とが同時に基材71に対して噴霧されることで電極80を形成している。発明者等の研究により、触媒層ペースト30のE/C比を小さくすることで、図2に示すように、触媒90の周囲に形成される高分子電解質91による層を薄く保つことができる。反対に、E/C比を大きくすることで、保水材ペースト50では、保水材94の周囲に形成される高分子電解質91による層を厚く保つことができる。これらのため、電極80における触媒層71では、電気化学反応時に酸素が充分に供給され、低電流領域における電気化学反応が円滑に進行されて燃料電池の性能が高くなっている。さらに、E/C比が高い保水材ペースト50により、この触媒層71は、高電流領域においてフラッディングが生じ難く、電気化学反応の円滑な進行が妨げられ難くなっている。また、保水材ペースト50中の保水材94により、この触媒層71は、低加湿環境下での電気化学反応時に触媒層71が乾き難くなり、低加湿環境下においても電気化学反応の円滑な進行が妨げられ難くなっている。これらにより、この製造装置によって得られた触媒層71やこの触媒層71を有する電極80は、高い発電性能を発揮可能となっている。
{検証}
実施例の製造装置で得られた触媒層71を有する電極80の電圧特性を検証するため、2種類のセル(以下、試料1のセル及び試料2のセルという。)による比較実験を行った。試料1のセルが備えているMEA(以下、試料1のMEAという。)と、試料2のセルが備えているMEA(以下、試料2のMEAという。)とは、以下の方法で得られている。なお、各セルの構成及び製造方法は公知のセルの構成及び製造方法と同様である。
実施例の製造装置で得られた触媒層71を有する電極80の電圧特性を検証するため、2種類のセル(以下、試料1のセル及び試料2のセルという。)による比較実験を行った。試料1のセルが備えているMEA(以下、試料1のMEAという。)と、試料2のセルが備えているMEA(以下、試料2のMEAという。)とは、以下の方法で得られている。なお、各セルの構成及び製造方法は公知のセルの構成及び製造方法と同様である。
試料1のMEAを得るに当たっては、まず、上記の製造装置によって得られた触媒層71を有する電極80をカソード極として用意し、上記の触媒ペースト30と保水材ペースト50とを混合した混合ペーストを基材70に噴霧して得られた電極をアノード極として用意した。そして、公知の固体高分子電解質膜をこれらのカソード極とアノード極とで挟持した状態で、温度140°C、圧力40kgf/cm2でホットプレスすることでこれらを接合し、試料1のMEAを得た。
試料2のMEAを得るに当たっては、上記の触媒ペースト30と保水材ペースト50とを混合した混合ペーストを基材70に噴霧して得られた電極をカソード極及びアノード極として用意した。そして、試料1のMEAと同じ温度及び圧力で、これらのカソード極、アノード極及び固体高分子電解質膜を接合し、試料2のMEAを得た。
これら各MEAを備えた各セルを温度50°Cに加熱し、加湿装置の温度50°C、カソード極及びアノード極が常圧の測定環境の下、インピーダンス測定を行い、各セルの発電評価実験を行った。実験結果を図3に示す。
図3のグラフでは、電流値を1.5A/cm2に設定した際の試料2のセルの電圧を1.0とすることにより、試料1のセルと試料2のセルとの電圧比の相違を示している。同図が示すように、試料1のセルは試料2のセルに対して、約1.4倍大きい電圧特性を示している。この実験結果より、試料1のセルは試料2のセルよりも発電性能が高いことが証明された。
このように、試料1のセルと試料2のセルとで電圧特性に差が生じた要因について、発明者等は以下のように考察している。すなわち、試料2のMEAにおける各電極の触媒層では、E/C比が異なる触媒ペースト30と保水材ペースト50とが混合されることで、混合ペースト内では各E/C比の制御が好適に行われず、触媒ペースト30のE/C比は目標値より高く、保水材ペースト50のE/C比は目標値より低くなってしまう。このため、混合ペーストによって得られた触媒層を有するMEAでは、触媒90への酸素供給が妨げられ、さらに、保水材94の保水能力が低いためにフラッディングが生じやすい。このため、試料2のセルでは、発電性能が高くなり難くなっていると考えられる。
一方、試料1のMEAにおけるカソード極では、基材70に対して触媒ペースト30及び保水材ペーストが同時にかつ個別に同時に噴霧されたことで、触媒層71においてE/C比の偏りが生じ難く、試料1のMEAでは、触媒層71に部分的な特性差が生じ難くなっている。このため、カソード極が優れた発電性能を発揮し、試料1のセルでは、発電性能が高くなっていると考えられる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、触媒ペースト30において、担体92には、少なくとも一部の細孔径が4nm以上である低比表面積カーボン担体を採用することができる。これにより触媒金属微粒子93の使用量を低減しつつ、高電流領域や低加湿環境下において、好適に電気化学反応を行い得る触媒層71やこの触媒層71を有する電極80を得ることができる。
また、実施例の製造装置には、触媒ペースト30及び保湿材ペースト50に替えて、他の特性を有するペーストを採用することもできる。また、特性が異なる3種類以上のペーストを採用することもできる。この場合、貯留タンク及びノズルは採用されるペーストの種類に応じて複数備えられる。
さらに、第1、2ノズル走査手段23a、23bにおけるモータ21a、21b及び作業テーブル走査手段41におけるモータ39に替えて、伸縮ロッド等によって、第1、2ノズル走査手段23a、23b及び作業テーブル走査手段41を構成することもできる。また、各モータ23a、23b、39と伸縮ロッドとを組み合わせることもできる。
なお、実施例の製造装置は、以下の製造方法で表現され得る。すなわち、この製造方法は、基材上に特性が異なる複数のペーストを用いて触媒層を形成する燃料電池用触媒層の製造方法において、
担体92に触媒金属微粒子93が担持された触媒90と高分子電解質91とを混合して触媒ペースト30を調製する触媒ペースト調製工程と、
保水材94と高分子電解質91とを含有する保水材ペースト50を調製する保水材ペースト調製工程と、
触媒ペースト30及び保水材ペースト50を調整された噴霧量で同時に基材70に対して噴霧する噴霧工程とを備えている。
担体92に触媒金属微粒子93が担持された触媒90と高分子電解質91とを混合して触媒ペースト30を調製する触媒ペースト調製工程と、
保水材94と高分子電解質91とを含有する保水材ペースト50を調製する保水材ペースト調製工程と、
触媒ペースト30及び保水材ペースト50を調整された噴霧量で同時に基材70に対して噴霧する噴霧工程とを備えている。
本発明は、電気自動車等の移動用電源、屋外据え置き用電源、ポータブル電源等に用いる燃料電池の触媒層の製造装置に利用可能である。
70…基材
71…触媒層
80…電極
30、50…ペースト(30…触媒ペースト、50…保水材ペースト)
90…触媒
91…高分子電解質
3、5…貯留タンク(3…第1貯留タンク、5…第2貯留タンク)
7、9、P1、P2、11、V、17、27、33、35…噴霧手段(7…第1ノズル、9…第2ノズル、P1…第1電動ポンプ、P2…第2電動ポンプ、11…ボンベ、V…圧力調整弁、17、27、33、35…配管)
15…制御装置
23a、23b、41…走査手段(23a…第1ノズル走査手段、23b…第2ノズル走査手段、41…作業テーブル走査手段)
94…保水材
71…触媒層
80…電極
30、50…ペースト(30…触媒ペースト、50…保水材ペースト)
90…触媒
91…高分子電解質
3、5…貯留タンク(3…第1貯留タンク、5…第2貯留タンク)
7、9、P1、P2、11、V、17、27、33、35…噴霧手段(7…第1ノズル、9…第2ノズル、P1…第1電動ポンプ、P2…第2電動ポンプ、11…ボンベ、V…圧力調整弁、17、27、33、35…配管)
15…制御装置
23a、23b、41…走査手段(23a…第1ノズル走査手段、23b…第2ノズル走査手段、41…作業テーブル走査手段)
94…保水材
Claims (3)
- 基材上に特性が異なる複数のペーストを用いて触媒層を形成する燃料電池用触媒層の製造装置において、
各該ペーストの少なくとも一つには触媒と高分子電解質とが含有され、
各該ペーストを貯留する複数の貯留タンクと、
各該貯留タンクとそれぞれ接続され、各該ペーストをそれぞれ個別に噴霧可能な噴霧手段と、
各該ペーストがそれぞれ調整された噴霧量で同時に前記基材に対して噴霧されるように該噴霧手段を制御する制御装置とを備えていることを特徴とする燃料電池用触媒層の製造装置。 - 前記基材と、前記噴霧手段から噴霧された各前記ペーストとを相対的に走査させる走査手段を備えている請求項1記載の燃料電池用触媒層の製造装置。
- 複数の前記ペーストは、前記触媒と前記高分子電解質とを含有する触媒ペーストと、保水材と該高分子電解質とを含有する保水材ペーストとからなる請求項1又は2記載の燃料電池用触媒層の製造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010282468A JP2012133896A (ja) | 2010-12-18 | 2010-12-18 | 燃料電池用触媒層の製造装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010282468A JP2012133896A (ja) | 2010-12-18 | 2010-12-18 | 燃料電池用触媒層の製造装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012133896A true JP2012133896A (ja) | 2012-07-12 |
Family
ID=46649301
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010282468A Pending JP2012133896A (ja) | 2010-12-18 | 2010-12-18 | 燃料電池用触媒層の製造装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012133896A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102020106082A1 (de) | 2020-03-06 | 2021-09-09 | Audi Aktiengesellschaft | Verfahren zur Herstellung einer Brennstoffzelle, Vorrichtung zur Herstellung einer Membranelektrodenanordnung für eine Brennstoffzelle, Brennstoffzelle sowie Brennstoffzellenstapel |
-
2010
- 2010-12-18 JP JP2010282468A patent/JP2012133896A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE102020106082A1 (de) | 2020-03-06 | 2021-09-09 | Audi Aktiengesellschaft | Verfahren zur Herstellung einer Brennstoffzelle, Vorrichtung zur Herstellung einer Membranelektrodenanordnung für eine Brennstoffzelle, Brennstoffzelle sowie Brennstoffzellenstapel |
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