日本国では、法規制によりDC/DCコンバータの出力電圧(モータの駆動電圧)が定常で規定電圧(例えば48V)を越える場合には、絶縁対策を施すことが義務付けられる。絶縁対策を施す場合、コストや手間がかかる上にDC/DCコンバータやモータの体格が大きくなるという問題が発生する。このため、DC/DCコンバータの出力電圧が定常で規定電圧(例えば48V)を越えないように、DC/DCコンバータの出力電圧が調整される。この場合、出力電圧を検出するためのセンサの検出誤差や出力電圧の変動を考慮して、DC/DCコンバータの出力電圧の基準値(目標値)は、規定電圧よりもかなり低い電圧(例えば46V)に設定される。
図15は、アクティブサスペンション装置の電動アクチュエータの作動速度(電動アクチュエータの伸縮速度あるいはモータの回転速度)とその電動アクチュエータに用いられるモータの出力荷重との関係を示すグラフである。図の横軸が電動アクチュエータの作動速度(m/s)、縦軸がモータの出力荷重(N)である。また、図中の線Aはモータの駆動電圧が36Vである場合、線A’は駆動電圧が36Vであり且つ弱め界磁処理を行った場合における、電動アクチュエータの作動速度とモータの出力荷重との関係をそれぞれ表すグラフである。図中の線Bはモータの駆動電圧が48Vである場合、線B’は駆動電圧が48Vであり且つ弱め界磁処理を行った場合における、電動アクチュエータの作動速度とモータの出力荷重との関係をそれぞれ表すグラフである。
図15に示すように、モータの駆動電圧が高ければ高いほど、モータの出力荷重の制御範囲が広いことがわかる。また、モータの駆動電圧が高ければ高いほど、モータの出力荷重の追従性が良く、さらに駆動電流を小さくすることができる。このような観点からすれば、モータの駆動電圧、すなわちDC/DCコンバータの出力電圧は高い方が良い。
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、アクティブサスペンション装置において、電動アクチュエータのモータに供給する電力を変圧するDC/DCコンバータ等の変圧器の出力電圧(モータの駆動電圧)を所定の電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができるサスペンション装置を提供することを目的とする。
本発明は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装され、車両に搭載されたバッテリからの電力供給により作動して、バネ上部材とバネ下部材との間の間隔を変化させる電動アクチュエータと、前記バッテリの電圧を変圧し、変圧した電力を前記電動アクチュエータに出力する変圧器と、前記変圧器の出力電圧を取得する出力電圧取得部と、前記出力電圧取得部により取得された出力電圧を前記電動アクチュエータの作動状態に応じて補正する出力電圧補正部と、前記出力電圧補正部により補正された出力電圧が予め定められた基準電圧に近づくように前記変圧器の出力電圧を調整する出力電圧調整部と、を備えるサスペンション装置を提供する。この場合において、前記出力電圧補正部は、前記出力電圧取得部により取得された出力電圧から、前記電動アクチュエータの作動状態に応じて前記出力電圧の変動分(変動電圧)を除くように、前記出力電圧を補正するのがよい。
本発明のサスペンション装置によれば、バッテリの電圧は変圧器により変圧され、変圧された電力が電動アクチュエータに出力されることにより電動アクチュエータが作動する。また、変圧器の出力電圧は出力電圧取得部により取得される。この出力電圧は電動アクチュエータの作動状態に応じて補正され、補正された出力電圧が基準電圧に近づくように、変圧器の出力電圧が調整される。
変圧器の出力電圧は、その出力電圧が印加されることにより作動する電動アクチュエータの作動状態によって変動する。従来ではセンサの検出誤差や電圧の変動を考慮して変圧器の出力電圧を管理していたので、法規制により定められた規定電圧(48V)よりもかなり低い電圧(例えば46V)が変圧器(DC/DCコンバータ)の出力電圧の目標値(基準電圧)として設定されていた。そして、変圧器の出力電圧が基準電圧に近づくように出力電圧を調整していた。しかし、上記の規定電圧は定常状態での変圧器の出力電圧であり、出力電圧の変動分は加味しなくてもよい。本発明はこの点に着目し、電動アクチュエータの作動状態に応じて、出力電圧から変動分の電圧(変動電圧)が除去されるように出力電圧を適切に補正し、補正した電圧が基準電圧に近づくように出力電圧を調整する。こうした出力電圧の補正により出力電圧から変動電圧が除かれるので、変動電圧が除かれた分だけ基準電圧を高めに設定することができる。このような高めに設定された基準電圧に近づくように出力電圧が調整されるので、変圧器の出力電圧(モータの駆動電圧)を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
前記電動アクチュエータは、前記バッテリからの電力供給により回転駆動するモータと、前記モータの回転運動を直線運動に変換する変換機構(ボールネジ機構など)を備えるのがよい。また、前記変圧器は、前記バッテリの電圧を変圧し、変圧した電力を前記電動アクチュエータに出力するとともに、前記電動アクチュエータの作動により生じた回生電力を変圧し、変圧した回生電力を前記バッテリに出力するものであるとよい。また、本発明のサスペンション装置は、前記電動アクチュエータの作動を制御する制御部をさらに備えるとよい。前記制御部は、少なくともバネ上部材の上下動作(例えばバネ上速度)に基づいて、バネ上部材を制振させるために前記電動アクチュエータが発生すべき制御力を演算する制御力演算部を備えるとよい。さらに、本発明のサスペンション装置は、前記電動アクチュエータを駆動させる駆動部(駆動ユニット)を備え、前記制御部にて演算された前記制御力を表す信号が前記駆動部に出力されるものであるとよい。前記バッテリからの電力は、前記駆動部を介して前記電動アクチュエータに供給されるものであるとよい。
また、本発明のサスペンション装置は、前記電動アクチュエータの作動状態に応じて、前記出力電圧の変動量である変動電圧を取得する変動電圧取得部を備えるのがよい。そして、前記出力電圧補正部は、前記出力電圧取得部により取得された出力電圧から前記変動電圧取得部により取得された前記変動電圧を差し引くことにより、前記出力電圧を補正するのがよい。
これによれば、変動電圧取得部により電動アクチュエータの作動状態に応じた変圧器の出力電圧の変動分(変動電圧)が取得される。こうして取得された変動電圧を出力電圧取得部により取得された出力電圧から差し引くことにより、出力電圧の正味の定常値(定常電圧)が得られる。得られた定常電圧が基準電圧に近づくように、出力電圧が調整される。
前記変動電圧取得部は、前記電動アクチュエータを作動させるために前記バッテリの電力が消費され、且つ前記バッテリの消費電力が予め定められた閾値を超える場合に、前記バッテリの電力が消費されることによって生じる前記変動電圧を取得するのがよい。変動電圧は、電動アクチュエータの作動により電力が消費されたときに発生する。変動電圧は、消費電力が大きいときに発生する可能性が高い。よって、消費電力が閾値を越えたときに変動電圧を取得し、取得した変動電圧を出力電圧から差し引くことにより出力電圧の変動分がほぼ除外される。こうして変動分が除外された出力電圧が基準電圧に近づくように、出力電圧が調整される。これによれば、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定できる。それ故、バッテリの電力消費時に変圧器の出力電圧を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
上記閾値は、消費電力がその閾値を越えたときに変圧器の出力電圧が変動する(変動電圧が発生する)可能性が高く、消費電力がその閾値以下であるときに変圧器の出力電圧が変動する(変動電圧が発生する)可能性が低くなるような電力の値として予め定められるのがよい。また、変動電圧の取得方法は適宜選択され得る。例えば変動電圧の大きさと消費電力との大きさとの間に相関関係がある場合は、変動電圧と消費電圧との関係を表した関数あるいはマップを参照することにより、その消費電力に応じた変動電圧を求めることができる。また、消費電力の大きさにかかわらずに変動電圧の大きさがほぼ一定である場合には、その一定値を変動電圧とみなすことができる。
また、前記変動電圧取得部は、前記電動アクチュエータが作動させられることにより電力が回生されている場合に、電力が回生されることによって生じる前記変動電圧を取得するのがよい。路面入力等によって電動アクチュエータが作動させられたときには、電動アクチュエータにて回生電力が発生し、発生した回生電力がバッテリ等に回生される。変動電圧は電力の回生時にも発生する。本発明では、電力の回生時に生じる変動電圧が取得され、取得された変動電圧を出力電圧から差し引くことにより出力電圧の変動分がほぼ除外される。こうして変動分が除外された出力電圧が基準電圧に近づくように出力電圧が調整される。これによれば、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので、基準電圧を高めに設定できる。それ故、バッテリ等への電力回生時に変圧器の出力電圧を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
また、本発明は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装され、車両に搭載されたバッテリからの電力供給により作動して、バネ上部材とバネ下部材との間の間隔を変化させる電動アクチュエータと、前記バッテリの電圧を変圧し、変圧した電力を前記電動アクチュエータに出力する変圧器と、前記変圧器の出力電圧を取得する出力電圧取得部と、前記電動アクチュエータの作動の大きさを表す量を取得するアクチュエータ作動量取得部と、前記変圧器の出力電圧を調整する出力電圧調整部と、を備え、前記出力電圧調整部は、前記アクチュエータ作動量取得部により取得された前記電動アクチュエータの作動の大きさを表す量が予め定められた閾値以下であるときに、前記出力電圧取得部により取得された出力電圧が予め定められた基準電圧に近づくように前記出力電圧を調整し、前記アクチュエータ作動量取得部により取得された前記電動アクチュエータの作動の大きさを表す量が前記閾値を越えるときには、前記出力電圧を調整しない、サスペンション装置を提供する。
変圧器の出力電圧は、電動アクチュエータの作動量が大きいときに変動する可能性が高い。上記発明によれば、アクチュエータ作動量取得部により取得された電動アクチュエータの作動量の大きさを表す量が所定の閾値以下であるときのみ、出力電圧取得部により取得された変圧器の出力電圧が基準電圧に近づくように、変圧器の出力電圧が調整される。つまり、変圧器の出力電圧が変動する可能性が低いとき(電動アクチュエータの作動量が小さいとき)のみに、変圧器の出力電圧が基準電圧に近づくように変圧器の出力電圧が調整され、変圧器の出力電圧が変動する可能性が高いとき(電動アクチュエータの作動量が大きいとき)は、そのときに取得された変圧器の出力電圧が無効にされる。このように変圧器の出力電圧が変動する可能性が低いときのみに出力電圧を調整するように構成したので、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分が除外される。よって、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定できる。その結果、変圧器の出力電圧を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
上記閾値は、電動アクチュエータの作動量の大きさを表す量がその閾値を越えたときに変圧器の出力電圧が変動する(変動電圧が発生する)可能性が高く、電動アクチュエータの作動量の大きさを表す量がその閾値以下であるときに変圧器の出力電圧が変動する(変動電圧が発生する)可能性が低くなるような値として予め定められるのがよい。
上記「電動アクチュエータの作動量の大きさを表す量」は、例えば、電動アクチュエータの伸縮量(ストローク量)、電動アクチュエータに用いられるモータの回転数など、直接的に電動アクチュエータの作動量の大きさを表すものでもよいし、間接的に電動アクチュエータの作動量の大きさを表すもの(例えば、バネ上部材の上下加速度(バネ上加速度)、車体ロール角、車体ピッチ角等)でも良い。この場合、前記電動アクチュエータの作動量の大きさを表す量は、前記電動アクチュエータを作動させるために消費された電力の大きさであるのがよい。
電動アクチュエータを作動させるための消費電力が大きいときに変圧器の出力電圧が変動する可能性が高い。よって、消費電力が所定の閾値以下のときのみに、そのときに取得された変圧器の出力電圧に基づいて変圧器の出力電圧を調整し、それ以外(消費電力が所定の閾値を越えるとき)ではそのときに取得された変圧器の出力電圧に基づいて変圧器の出力電圧を調整しないことにより、出力電圧の調整時に出力電圧の変動量が除外される。よって、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定できる。その結果、変圧器の出力電圧を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
さらに、本発明は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装され、車両に搭載されたバッテリからの電力供給により作動して、バネ上部材とバネ下部材との間の間隔を変化させる複数の電動アクチュエータと、前記バッテリの電圧を変圧するとともに変圧した電力を複数の前記電動アクチュエータに出力する変圧器と、前記変圧器から複数の前記電動アクチュエータに印加された電圧である各輪電圧をそれぞれ取得する各輪電圧取得部と、前記各輪電圧取得部により取得された複数の前記各輪電圧を平均することにより前記変圧器の出力電圧を取得する出力電圧取得部と、前記出力電圧取得部により取得された前記変圧器の出力電圧が予め定められた基準電圧に近づくように前記変圧器の出力電圧を調整する出力電圧調整部と、を備える、サスペンション装置を提供する。
上記発明によれば、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装される複数(主に4個)の電動アクチュエータに、変圧器によりバッテリ電圧が変圧された電圧が印加される。また、変圧器の出力電圧は、各電動アクチュエータに印加された電圧(各輪電圧)を平均することにより取得される。こうして取得された出力電圧が基準電圧に近づくように変圧器の出力電圧が調整される。
各輪電圧は、その電圧を取得するためのセンサの誤差や、各電動アクチュエータの作動状況によって変動するが、この変動量(変動電圧)は、各輪電圧を平均することにより丸められて小さくなる。本発明では、変動電圧が小さくされた各輪電圧の平均値が基準電圧に近づくように変圧器の出力電圧を調整するので、変圧器の出力電圧の調整時に変動電圧が除外される。よって、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定できる。その結果、出力電圧を規定電圧以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
この場合、本発明のサスペンション装置は、前記各輪電圧をそれぞれ検出する複数の各輪電圧検出装置をさらに備えるのがよい。そして、前記各輪電圧取得部は、複数の前記各輪電圧検出装置から前記各輪電圧をそれぞれ取得するとともに、取得した複数の前記各輪電圧に、前記変圧器と前記電動アクチュエータとを電気的にそれぞれ接続する電気配線の電気抵抗に基づく電圧降下分を加算することにより、前記各輪電圧をそれぞれ補正し、前記出力電圧取得部は、前記各輪電圧取得部によりそれぞれ補正された前記各輪電圧を平均することにより、前記出力電圧を取得するものであるとよい。
変圧器により変圧された電力を電動アクチュエータに供給するために変圧器と電動アクチュエータとを電気的に接続する電気配線は電気抵抗を持つので、変圧器の出力電圧はこの電気配線の電気抵抗により電圧降下する。この電圧降下により変圧器の出力電圧と電動アクチュエータへの印加電圧(各輪電圧)との間に差が生じる。上記発明によれば、この差をなくすため、斯かる電気配線の電気抵抗による電圧降下分を電動アクチュエータに印加される電圧に加えることにより、各輪電圧検出装置により検出された電圧を補正する。こうして補正された各輪電圧を平均することにより変圧器の出力電圧が得られる。得られた出力電圧が基準電圧に近づくように変圧器の出力電圧を補正することにより、より正確に、変圧器の出力電圧を基準電圧に近づけることができる。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るサスペンション装置のシステム構成を示す全体概略図である。
図1に示すように、サスペンション装置は、4組のサスペンション本体10(右前輪サスペンション本体10FR、左前輪サスペンション本体10FL、右後輪サスペンション本体10RR、左後輪サスペンション本体10RL)と、各サスペンション本体10に対応した駆動ユニット20(右前輪駆動ユニット20FR、左前輪駆動ユニット20FL、右後輪駆動ユニット20RR、左後輪駆動ユニット20RL)と、本発明の変圧器に相当するDC/DCコンバータ30と、高圧バッテリ40と、ECU50とを備える。4組のサスペンション本体10FR,10FL,10RR,10RLは、各車輪WFR,WFL,WRR,WRLと車体Bとの間にそれぞれ設けられる。以下、4組のサスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RR、駆動ユニット(EDU)20FL,20FR,20RL,20RRおよび車輪WFL,WFR,WRL,WRRについて、特に前後左右を区別する場合を除いて、単にサスペンション本体10、駆動ユニット20および車輪Wと総称する。駆動ユニット20が本発明の駆動部に相当する。
図2は、サスペンション本体10の部分概略断面図である。このサスペンション本体10は、電動アクチュエータ11とコイルスプリング12とを有する。
電動アクチュエータ11は、モータ111とボールネジ機構112とを備える。モータ111は、モータケーシング111aと、中空状の回転軸111bと、永久磁石111cと、極体111dとを備える。モータケーシング111aはモータ111の外郭を構成する。回転軸111bはモータケーシング111a内に配設され、軸受111e,111fによりモータケーシング111aに回転可能に支持される。この回転軸111bの外周面に永久磁石111cが固定される。回転軸111bおよび永久磁石111cによりモータ111のロータが構成される。永久磁石111cに対向するように極体(コアにコイルが巻回されたもの)111dが、モータケーシング111aの内壁に固定される。極体111dによりモータ111のステータが構成される。
ボールネジ機構112は、モータ111に連結しており、モータ111の回転運動を直線運動に変換する変換機構としての機能を有する。ボールネジ機構112は、ネジ溝が形成されたボールネジ軸112aと、このボールネジ軸112aのネジ溝にボール(図示省略)を介して螺合するボールネジナット112bとを備える。ボールネジナット112bはモータケーシング111a内に配設され、回転軸111bの下端部分に接続されるとともに、軸受111gを介して回転可能且つ軸方向移動不能にモータケーシング111aに支持される。したがって、回転軸111bが回転すると、それに伴いボールネジナット112bも回転する。
ボールネジ軸112aは、図に示されるようにモータケーシング111a内にてボールネジナット112bを螺合するとともに、その上方部分にて回転軸111bの内周側に挿入される。また、ボールネジ軸112aの下方部分はモータケーシング111aの下端面を突き抜けてさらに下方に延在する。そして、その下端にて車輪Wに連結したロアアームLA(バネ下部材)に接続される。なお、ボールネジ軸112aには図示しない回転止めが取り付けられており、それ自身が回転しないように構成されている。
また、モータケーシング111aの側周には樹脂製のアッパーサポート13が取り付けられている。このアッパーサポート13を介してサスペンション本体10が車体Bに弾性的に取り付けられる。
ボールネジ軸112aの下方部分の側周にリング状の第1リテーナ14が取り付けられる。また、車体Bの下面であってモータ111の外周側にリング状の第2リテーナ15が取り付けられる。第1リテーナ14にコイルスプリング12の下端が係止され、第2リテーナ15にコイルスプリング12の上端が係止される。したがって、コイルスプリング12は、電動アクチュエータ11と並列的に、車体Bと車輪(ロアアームLA)との間に介装される。コイルスプリング12により支えられる車体B側の部材はバネ上部材と呼ばれ、コイルスプリング12を支える車輪側(ロアアームLA側)の部材はバネ下部材と呼ばれる。
このような構成のサスペンション本体10において、電動アクチュエータ11のモータ111が回転すると、その回転運動がボールネジ機構112により直線運動に変換され、ボールネジ軸112bが伸縮する。つまり、モータ111の回転に伴い電動アクチュエータ11が伸縮する。電動アクチュエータ11が伸縮することにより、車体B(バネ上部材)と車輪(バネ下部材)との間の間隔(上下間隔)が変化させられる。上下間隔の変化に伴い発生する振動によるショックがコイルスプリング12により緩衝される。モータ111は、高圧バッテリ40の電力が供給されることにより駆動する。
図1に示すように、車両に搭載された高圧バッテリ40とDC/DCコンバータ30は電気的に接続される。DC/DCコンバータ30は高圧バッテリ40から直流の電力が供給された場合、高圧バッテリ40の電圧(例えば288V)を変圧し、変圧した電力を出力する。またDC/DCコンバータ30は各駆動ユニット20に電気的に接続されており、DC/DCコンバータ30によって変圧された電力が各駆動ユニット20に出力される。なお、電動アクチュエータ11が路面入力等により作動させられることによって回生電力が生じ、この回生電力が各駆動ユニット20側からDC/DCコンバータ30に入力された場合、DC/DCコンバータ30は入力された電力を高圧バッテリ40の電圧よりも高い電圧に昇圧し、昇圧した電力を高圧バッテリ40に供給する。この高圧バッテリ40は、車輪Wを駆動させるための電動機に電力を供給することができるように構成されていてもよい。
駆動ユニット20は、DC/DCコンバータ30から供給された電力によりサスペンション本体10の電動アクチュエータ11のモータ111を駆動させる。つまり、DC/DCコンバータ30は、高圧バッテリ40の電圧を変圧し、変圧した電力を駆動ユニット20を介して電動アクチュエータ11に出力する。駆動ユニット20は、例えばインバータ回路とそのインバータ回路を制御する制御部等を備えて構成され、DC/DCコンバータ30から供給された直流の電力を例えば3相交流に変換してモータ111に供給する。
また、車両には、バネ上加速度センサ61、ストロークセンサ62、バネ下加速度センサ63、横加速度センサ64が取り付けられている。バネ上加速度センサ61は、バネ上部材(車体B)の各サスペンション本体10が取り付けられている近傍位置(各輪位置)に配設されていて、各輪位置におけるバネ上部材の上下方向加速度(バネ上加速度)Gbをそれぞれ検出する。ストロークセンサ62は各サスペンション本体10の近傍に取り付けられていて、各サスペンション本体10のストローク変位量(バネ上部材とバネ下部材との間の間隔の変化量、すなわち電動アクチュエータ11の伸縮量)Xsをそれぞれ検出する。バネ下加速度センサ63は、各車輪Wに連結されたバネ下部材に取り付けられていて、各バネ下部材の上下方向加速度(バネ下加速度)GWをそれぞれ検出する。横加速度センサ64はバネ上部材に取り付けられていて、バネ上部材に作用する横加速度GYを検出する。
DC/DCコンバータ30と各駆動ユニット20とを電気的に連結する電気配線のうち、DC/DCコンバータ30の近傍位置に電力モニタ装置65が設けられている。電力モニタ装置65は、DC/DCコンバータ30の出力電圧(モータ駆動電圧)Vおよび出力電流Iを検出する。なお、検出した出力電流Iが正であるときは、高圧バッテリ40の電力が電動アクチュエータ11により消費されている。検出した出力電流Iが負であるときは、電動アクチュエータ11にて発生した回生電力が高圧バッテリ40に回生されている。
各バネ上加速度センサ61により検出されたバネ上加速度GB、各ストロークセンサ62により検出されたストローク変位量XS、各バネ下加速度センサ63により検出されたバネ下加速度GW、横加速度センサ64により検出された横加速度GY、電力モニタ装置65により検出された出力電圧Vおよび出力電流Iは、ECU(電子制御ユニット)50に入力される。
ECU50は、図1に示すように、CAN通信等によって、各駆動ユニット20およびDC/DCコンバータ30と通信可能に構成されている。ECU50は、ROM、RAM、CPUを備えるマイクロコンピュータにより構成され、各センサからの検出情報に基づいて、各サスペンション本体10の電動アクチュエータ11のモータ111を各駆動ユニット20を介して制御するとともに、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する。図3は、ECU50の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように、ECU50は、バネ上制御力演算部51、バネ下制御力演算部52、操安性制御力演算部53、目標制御力演算部54、出力電圧取得部55、出力電圧補正部56および出力電圧調整部57を備える。
バネ上制御力演算部51は、バネ上加速度センサ61からバネ上加速度GBを、ストロークセンサ62からストローク変位量XSを、それぞれ入力する。そして、入力したこれらの情報を基に、バネ上部材が制振するような制御力(バネ上制御力)FBを演算する。例えばバネ上制御力FBは下記式により求めることができる。
FB=CB・VB
上式において、CBは予め定められたバネ上スカイフックゲインである。VBはバネ上部材の上下方向速度(バネ上速度)であり、バネ上加速度GBを時間積分することにより求められる。なお、バネ上速度VBと、ストローク変位量XSを時間微分したストローク速度VSとに基づいてCBを決定してもよい。
バネ下制御力演算部52は、バネ下加速度センサ63からバネ下加速度GWを、ストロークセンサ62からストローク変位量XSを、それぞれ入力する。そして、入力したこれらの情報を基に、バネ下部材が制振するような制御力(バネ下制御力)FWを演算する。例えばバネ下制御力FWは下記式により求めることができる。
FW=CW・VW
上式において、CWは予め定められたバネ下スカイフックゲインである。VWはバネ下部材の上下方向速度(バネ下速度)であり、バネ下加速度GWを時間積分することにより求められる。なお、バネ下制御力FWを求めるにあたり、バネ上部材とバネ下部材との間に介在されるモータやボールネジ機構などの中間部材の等価慣性質量や、伝達特性などを考慮して、バネ下制御力FWを求めてもよい。また、バネ下速度VWとストローク速度VSとに基づいてCWを決定してもよい。
操安性制御力演算部53は、横加速度センサ64から横加速度GYを、ストロークセンサ62からストローク変位量XSを、それぞれ入力する。そして、入力したこれらの情報を基に、バネ上部材に作用する横加速度を抑えるような制御力FYを演算する。例えば操安性制御力FYは下記式により求めることができる。
FY=CY・GY’
上式において、CYは予め定められた横加速度ゲインである。GY’は、横加速度GYや車両の操舵ハンドルの操舵角、車速等に基づいて取得される制御横加速度である。なお、ストローク速度VSに基づいてCBを決定してもよい。
目標制御力演算部54は、バネ上制御力演算部51からバネ上制御力FBを、バネ下制御力演算部52からバネ下制御力FWを、操安性制御力演算部53から操安性制御力FYを、それぞれ入力する。そして、これらの制御力を加算することにより、モータ111に発生させるべき目標制御力F(=FB+FW+FY)を算出し、算出した目標制御力F(または目標制御力Fに対応する目標電流)を表す制御信号を駆動ユニット20に出力する。駆動ユニット20は入力した制御信号に基づき作動する。これによりモータ111が目標制御力Fを発生するように制御される。目標制御力演算部54は、各サスペンション本体10のモータ111のそれぞれについての目標制御力Fを演算するように構成されているのがよい。
出力電圧取得部55は、電力モニタ装置65から出力電圧Vおよび出力電流Iを入力することにより、これらの電圧および電流を取得する。そして、取得した出力電圧Vおよび出力電流Iを出力電圧補正部56に出力する。
出力電圧補正部56は、出力電圧取得部55から出力電圧Vおよび出力電流Iを入力するとともに、これらの入力値に基づいて補正電圧V1を演算する。そして、演算した補正電圧V1を出力電圧調整部57に出力する。
図4は、出力電圧補正部56が補正電圧V1を演算するために実行するルーチンを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、出力電圧補正部56は、まず出力電圧取得部55から出力電圧Vおよび出力電流Iを入力し(S10)、次いで、入力した出力電流Iの正負の符号に基づいて、高圧バッテリ40の電力が電動アクチュエータ11により消費されているか否かを判断する(S11)。高圧バッテリ40の電力が消費されていない場合(S11:No)、出力電圧補正部56はこのルーチンを終了する。高圧バッテリ40の電力が消費されている場合(S11:Yes)、入力された出力電圧Vと出力電流Iとの積により、電動アクチュエータ11を作動させるための消費電力Wconを演算する(S12)。この消費電力Wcomにより電動アクチュエータ11の作動状態が表わされる。
次に、演算した消費電力Wconが閾値電力Wthよりも大きいか否かを判断する(S13)。この場合において、DC/DCコンバータ30の出力電圧は、高圧バッテリ40の消費電力Wconが大きいときに変動する可能性が高い。つまり、高圧バッテリ40の消費電力Wconが大きいときに、DC/DCコンバータ30の出力電圧の定常値(定常電圧)からの変動分の電圧を表す変動電圧ΔVが発生する可能性が高い。閾値電力Wthは、それ以上の電力が消費されたときに変動電圧ΔVが発生する可能性が高く、それ以下の電力が消費されたときに変動電圧ΔVが発生する可能性が低くなるような、変動電圧ΔVの発生可否の境界値として、予め設定される。
消費電力Wconが閾値電力Wth以下である場合(S13:No)、つまり変動電圧ΔVが発生する可能性が低い場合、出力電圧補正部56は、補正電圧V1をS10で入力した出力電圧Vに設定する(S16)。つまり、変動電圧ΔVが発生する可能性が低い場合は、出力電圧Vは補正されない。
一方、消費電力Wconが閾値電力Wthよりも大きい場合(S13:Yes)、つまり変動電圧ΔVが発生する可能性が高い場合は、出力電圧補正部56は、高圧バッテリ40の電力消費により生じる変動電圧ΔVを取得する(S14)。
変動電圧ΔVを取得するに際し、変動電圧ΔVが消費電力Wconの大きさに応じて変化する場合は、出力電圧補正部56は、S14にて、変動電圧ΔVと消費電力Wconとの関係を表すマップ等を参照することにより、変動電圧ΔVを取得することができる。この場合、変動電圧ΔVと消費電力Wconとの関係が予め調査されており、調査された変動電圧ΔVと消費電力Wconとの関係を表すマップがECU50の記憶領域内に格納されているのがよい。また、変動電圧ΔVが消費電力Wconの大きさにかかわらずほぼ一定の値(例えば2V)である場合は、出力電圧補正部56は、S14にて、変動電圧ΔVをその一定値に設定することによって、変動電圧ΔVを取得することができる。
変動電圧ΔVを取得した後に、出力電圧補正部56は、出力電圧Vから変動電圧ΔVを差し引くことにより補正電圧V1を演算する(S15)。出力電圧Vは、定常電圧と変動電圧ΔVとの和により表わされるから、出力電圧Vから変動電圧ΔVを差し引くことにより、定常電圧が得られる。すなわち、S15にて演算された補正電圧V1はDC/DCコンバータ30の定常電圧を表す。
S15またはS16にて補正電圧V1を演算または設定した後は、出力電圧補正部56は、その補正電圧V1を出力電圧調整部57に出力する(S17)。その後、出力電圧補正部56はこのルーチンを終了する。出力電圧補正部56が図4のルーチンを繰り返し実行することにより、高圧バッテリ40の電力消費中に補正電圧V1が逐次出力される。
出力電圧調整部57は、出力電圧補正部56から補正電圧V1を入力するとともに、入力した補正電圧V1に基づいて、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する。図5は、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整するために出力電圧調整部57が実行するルーチンを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、出力電圧調整部57は、まず、補正電圧V1を入力し(S20)、次いで、補正電圧V1が基準電圧である47.5(V)よりも大きいか否かを判断する(S21)。補正電圧V1が基準電圧よりも大きい場合(S21:Yes)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が減少するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S22)。これにより、例えばDC/DCコンバータ30の変圧比(出力電圧/(高圧バッテリ40の電圧))が小さくされて、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ減少する。その後、出力電圧調整部57はこのルーチンを終了する。一方、補正電圧V1が基準電圧以下である場合(S21:No)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が増加するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S23)。これにより、例えばDC/DCコンバータ30の変圧比(出力電圧/(高圧バッテリ40の電圧))が大きくされて、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ増加する。その後、出力電圧調整部57はこのルーチンを終了する。出力電圧調整部57がこのルーチンを繰り返し実行することにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が基準電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。
このように、本実施形態のサスペンション装置は、車両のバネ上部材とバネ下部材との間に介装され、車両に搭載された高圧バッテリ40からの電力供給により作動して、バネ上部材とバネ下部材との間の間隔を変化させる電動アクチュエータ11と、高圧バッテリ40の電圧を変圧し、変圧した電力を電動アクチュエータ11に出力するDC/DCコンバータ30と、DC/DCコンバータ30の出力電圧Vを取得する出力電圧取得部55と、出力電圧取得部55により取得された出力電圧Vを電動アクチュエータの作動状態を表す消費電力Wcomに応じて補正する出力電圧補正部56と、出力電圧補正部56により補正された補正電圧V1が基準電圧(47.5V)に近づくようにDC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する出力電圧調整部57と、を備える。
また、本実施形態のサスペンション装置は、電動アクチュエータ11の作動状態(消費電力Wcomの大きさ)に応じて変動電圧ΔVを取得する変動電圧取得部(S14)を備える。そして、出力電圧補正部56は、出力電圧取得部55により取得された出力電圧Vから変動電圧取得部(S14)により取得された変動電圧ΔVを差し引くことによりDC/DCコンバータ30の出力電圧を補正する。
本実施形態のサスペンション装置によれば、高圧バッテリ40の電圧はDC/DCコンバータ30により変圧され、変圧された電力が電動アクチュエータ11のモータ111に駆動ユニット20を介して供給されることにより電動アクチュエータ11が作動する。また、DC/DCコンバータ30の出力電圧は、電力モニタ装置65により検出されて、その検出電圧が出力電圧取得部55に取得される。取得された出力電圧は、電動アクチュエータの作動状態を表す消費電力Wcomに応じて取得される変動電圧ΔVを差し引くことにより補正され、補正された補正電圧V1が基準電圧(47.5V)に近づくように、DC/DCコンバータ30の出力電圧が調整される。
DC/DCコンバータ30の出力電圧を補正することにより、電動アクチュエータ11の作動状態に応じて発生する変動電圧ΔVが除かれるので、変動電圧ΔVが除かれた分だけ基準電圧を高めに設定することができる。例えば、変動電圧ΔVが±1.5Vの範囲で生じると仮定すると、従来ではこの変動電圧ΔVを考慮して、DC/DCコンバータ30の出力電圧の目標値(基準電圧)を規定電圧(48V)よりも2V低い電圧(46V)に設定していた。これに対し、本実施形態では変動電圧ΔVを考慮しなくても良いので、基準電圧を規定電圧(48V)よりも0.5Vだけ低い電圧(47.5V)に設定することができる。このような高めに設定された基準電圧に近づくように出力電圧が調整されるので、DC/DCコンバータ30の出力電圧(モータ111の駆動電圧)を規定電圧(48V)以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
また、変動電圧取得部(S14)は、高圧バッテリ40の電力消費中であり(S11:Yes)、且つ高圧バッテリ40の消費電力Wcomが閾値電力Wthを超える場合(S13:Yes)に、高圧バッテリ40の電力消費によって生じる変動電圧ΔVを取得する。変動電圧ΔVは、消費電力Wcomが閾値電力Wthを越えている場合に発生する可能性が高い。したがって、消費電力Wcomが閾値電力Wthを越えたときに変動電圧ΔVを取得し、取得した変動電圧ΔVを出力電圧から差し引いて出力電圧を補正することで、出力電圧の変動分がほぼ除外される。こうして変動分が除外された出力電圧が基準電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。よって、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定でき、それ故、電力消費時にDC/DCコンバータ30の出力電圧を規定電圧(48V)以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
(変形例)
本実施形態において、出力電圧補正部56は、図4に示すルーチンと共に、あるいは図4に示すルーチンに代えて、図6に示すルーチンを実行してもよい。図6に示すルーチンが起動すると、出力電圧補正部56は、まず、出力電圧取得部55から出力電圧Vおよび出力電流Iを入力し(S30)、次いで、入力した出力電流Iの正負の符号に基づいて、現在、電動アクチュエータ11が路面入力等によって作動させられることにより電力が回生されているか否かを判断する(S31)。電力が回生されていない場合(S31:No)、出力電圧補正部56はこのルーチンを終了する。電力回生中である場合(S31:Yes)、入力された出力電圧Vと出力電流Iの絶対値|I|との積により、回生電力Wregを演算する(S32)。なお、駆動ユニット20側にてモータ111のq軸電流Iq、q軸電圧Vq、d軸電流Id、d軸電圧Vdを演算している場合には、次式により回生電力を演算してもよい。
Wreg=Iq×Vq+Id×Vd
電力が回生されているときには、その電力の回生によってDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い。つまり、電力回生時には、その電力の回生によって変動電圧ΔVが発生している可能性が高い。本例では、電力回生時に、以下のようにして、その電力の回生により生じる変動電圧ΔVを取得する。
出力電圧補正部56は、S32にて回生電力Wregを演算した後に、演算した回生電力Wregが基準電力Wrfよりも大きいか否かを判断する(S33)。本例では、回生電力Wregが基準電力Wrf以下であるときは、回生電力Wregがコンデンサ(電気容量C)に充電される。回生電力Wregが基準電力Wrf以上のときは、回生電力Wregが高圧バッテリ40に充電される。
回生電力Wregが基準電力Wrfよりも大きい場合(S33:Yes)、すなわち回生電力Wregが高圧バッテリ40に充電される場合、変動電圧ΔVは2Vに設定される(S34)。一方、回生電力Wregが基準電力Wrf以下である場合(S33:No)、すなわち回生電力Wregがコンデンサ(電気容量C)に充電される場合、変動電圧ΔVは次式により求められる(S35)。
ΔV=(2Wreg/C)0.5
S34およびS35の処理が本発明の変動電圧取得部に相当する。
S34またはS35にて変動電圧ΔVを設定または演算した後は、出力電圧補正部56は、S30にて入力した出力電圧Vから変動電圧ΔVを差し引くことにより補正電圧V1を演算する(S36)。こうして得られた補正電圧V1が出力電圧調整部57に出力される(S37)。その後、出力電圧補正部56はこのルーチンを終了する。出力電圧補正部56が図6のルーチンを繰り返し実行することにより、電力回生時に補正電圧V1が逐次出力される。
この例によれば、変動電圧取得部(S34,S35)は、電動アクチュエータ11が作動させられることにより電力が回生している場合(S31:Yes)に、電力が回生されることによって生じる変動電圧ΔVを取得する。そして、取得した変動電圧ΔVを出力電圧から差し引いくことにより、出力電圧の変動分がほぼ除外される。こうして変動分が除外された出力電圧が基準電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。よって、出力電圧の調整時に出力電圧の変動分を考慮しなくてもよいので基準電圧を高めに設定でき、それ故、電力回生時にDC/DCコンバータ30の出力電圧を規定電圧(48V)以下の範囲でできるだけ高くすることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態においては、ECU50が図7に示すように出力電圧調整部157を備える。この出力電圧調整部157は、出力電圧取得部55からDC/DCコンバータ30の出力電圧Vおよび出力電流Iを入力する。また、出力電圧調整部157は、図8に示すルーチンを実行することによって、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する。それ以外の構成は上記第1実施形態にて説明した構成と同一であるので、それらの具体的な説明は省略する。
図8に示すルーチンが起動すると、出力電圧調整部157は、まず、出力電圧取得部55からDC/DCコンバータ30の出力電圧Vを入力する(S40)。次いで、電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表す量αを取得する(S41)。量αは、電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表す量であれば、どのようなものでもよい。例えば、量αは、電動アクチュエータ11の伸縮量(ストローク量)、電動アクチュエータ11に用いられるモータ111の回転数など、直接的に電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表すものでもよいし、間接的に電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表すもの(例えば、バネ上部材の上下加速度(バネ上加速度)、車体ロール角、車体ピッチ角等)でも良い。量αは、センサにより検出されてもよいし、演算により求めてもよい。また、量αが直接的に電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表すものである場合は、量αは、それぞれの電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表す量の合計値でも良いし、最大値でもよい。S41が本発明のアクチュエータ作動量取得部に相当する。
続いて、量αが予め設定された閾値αthよりも大きいか否かを判断する(S42)。ここで、電動アクチュエータ11の作動量が大きいとき、すなわち量αが大きいときは、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い。閾値αthは、量αがそれ以上であるときにDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高く、量αがそれ以下であるときにDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低くなるような、出力電圧の変動の可否の境界値として予め設定される。
量αが閾値αthよりも大きい場合(S42:Yes)、すなわちDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い場合、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。このため量αが閾値αthよりも大きい場合はDC/DCコンバータ30の出力電圧は調整されない。
一方、量αが閾値αth以下である場合(S42:No)、つまり車両が安定していてDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低い場合、出力電圧調整部157は、S40にて入力した出力電圧Vが基準電圧(47.5V)よりも大きいか否かを判断する(S43)。出力電圧Vが47.5Vよりも大きい場合(S43:Yes)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が減少するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S44)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ減少する。その後、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。一方、出力電圧Vが47.5V以下である場合(S43:No)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が増加するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S45)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ増加する。その後、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。出力電圧調整部157が図8のルーチンを繰り返し実行することにより、量αが閾値αth以下であるときに、DC/DCコンバータ30の出力電圧が基準電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。
本実施形態によれば、出力電圧調整部157は、アクチュエータ作動量取得部(S41)により取得された電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表す量αが予め定められた閾値αth以下であるとき(42:No)に、出力電圧取得部55により取得された出力電圧Vが予め定められた基準電圧(47.5V)に近づくように出力電圧を調整し、アクチュエータ作動量取得部(S41)により取得された量αが閾値αthを越えるときには、出力電圧を調整しない。
電動アクチュエータ11の作動量が大きいとき(車両が安定していないとき)には、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い。一方、電動アクチュエータ11の作動量が小さいとき(車両が安定しているとき)には、DC/DCコンバータ30の出力電圧はさほど変動しない。本実施形態ではこの点に着目し、電動アクチュエータ作動量取得部(S41)により取得された電動アクチュエータ11の作動量の大きさを表す量αが所定の閾値αth以下であるときのみ、出力電圧取得部55により取得されたDC/DCコンバータ30の出力電圧Vが基準電圧(47.5V)に近づくように、DC/DCコンバータ30の出力電圧が調整される。つまり、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低いとき(電動アクチュエータ11の作動量が小さいとき)のみに、DC/DCコンバータ30の出力電圧が基準電圧に近づくようにDC/DCコンバータ30の出力電圧が調整され、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高いとき(電動アクチュエータ11の作動量が大きいとき)は、そのときに取得されたDC/DCコンバータ30の出力電圧が、DC/DCコンバータ30の出力電圧の調整に対して無効にされる。このようにDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低いときのみに出力電圧を調整するように構成したので、出力電圧の調整時に出力電圧の変動量が除外される。このため出力電圧調整時に出力電圧の変動量を考慮しなくてもよい。よって、出力電圧の目標値(基準電圧)をより高く設定でき、その結果、DC/DCコンバータ30の出力電圧を規定電圧を越えない範囲内でより大きくすることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、図7に示す出力電圧調整部157が、図8のルーチンに代えて図9のルーチンを実行する。その他の構成については上記第2実施形態と同一であるので、その具体的説明は省略する。
図9に示すルーチンが起動すると、出力電圧調整部157は、まず、出力電圧取得部55からDC/DCコンバータ30の出力電圧Vおよび出力電流Iを入力する(S50)。次いで、入力した出力電流Iの正負の符号に基づいて、高圧バッテリ40の電力が電動アクチュエータ11により消費されているか否かを判断する(S51)。高圧バッテリ40の電力が消費されていない場合(S51:No)、出力電圧補正部56はこのルーチンを終了する。高圧バッテリ40の電力が消費されている場合(S51:Yes)、入力された出力電圧Vと出力電流Iとの積により、電動アクチュエータ11を作動させるための消費電力Wconを演算する(S52)。この消費電力Wcomにより電動アクチュエータ11の作動量の大きさが表わされる。
消費電力Wconを取得した後は、出力電圧調整部157は、消費電力Wconが予め設定された閾値電力Wthよりも大きいか否かを判断する(S53)。ここで、消費電力Wconが大きいときは、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い。閾値電力Wthは、消費電力Wconがそれ以上であるときにDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高く、消費電力Wconがそれ以下であるときにDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低い境界を表す値として予め設定される。
消費電力Wconが閾値電力Wthよりも大きい場合(S53:Yes)、つまりDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い場合、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。このため、DC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高い場合はDC/DCコンバータ30の出力電圧は調整されない。
一方、消費電力Wconが閾値電力Wth以下である場合(S53:No)、つまりDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低い場合、出力電圧調整部157は、S50にて入力した出力電圧Vが基準電圧(47.5V)よりも大きいか否かを判断する(S54)。出力電圧Vが47.5Vよりも大きい場合(S54:Yes)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が減少するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S55)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ減少する。その後、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。一方、出力電圧Vが47.5V以下である場合(S54:No)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が増加するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S56)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ増加する。その後、出力電圧調整部157はこのルーチンを終了する。出力電圧調整部157が図9のルーチンを繰り返し実行することにより、消費電力Wconが閾値電力Wth以下であるときに、DC/DCコンバータ30の出力電圧が規定電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。
本実施形態によれば、出力電圧調整部157は、電動アクチュエータ11が作動することにより消費される電力Wconが予め定められた閾値電力Wth以下であるとき(S53:No)、つまりDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が低いときに、出力電圧取得部55により取得された出力電圧Vが予め定められた基準電圧(47.5V)に近づくように出力電圧を調整し、消費電力Wconが閾値電力Wthを越えるとき(S53:Yes)、つまりDC/DCコンバータ30の出力電圧が変動する可能性が高いときには、出力電圧を調整しない。このため、出力電圧の調整時に出力電圧の変動量が除外される。出力電圧調整時に出力電圧の変動量を考慮しなくてもよいので出力電圧の目標値(基準電圧)をより高く設定でき、その結果、DC/DCコンバータ30の出力電圧を規定電圧を越えない範囲内でより大きくすることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係るサスペンション装置のシステム構成の概略図である。図10に示すように、本実施形態のサスペンション装置のシステム構成は、図1に示すシステム構成に酷似する。図1に示すシステム構成は、電力モニタ装置65が、DC/DCコンバータ30と各駆動ユニット20とを連結する電気配線のうちDC/DCコンバータ30の近傍位置に設けられていたが、図10に示すシステム構成は、DC/DCコンバータ30の近傍位置に電力モニタ装置65が設けられていない。その代わり、図10に示すシステム構成は、各駆動ユニット20の近傍位置に各輪電力モニタ装置66(66FR,66FL,66RR,66RL)が設けられている。
図10に示すように、DC/DCコンバータ30と右前輪駆動ユニット20FRが右前輪電気配線L_FRにより、DC/DCコンバータ30と左前輪駆動ユニット20FLが左前輪電気配線L_FLにより、DC/DCコンバータ30と右後輪駆動ユニット20RRが右後輪電気配線L_RRにより、DC/DCコンバータ30と左後輪駆動ユニット20RLが左後輪電気配線L_RLにより、それぞれ電気的に連結される。
右前輪電気配線L_FRのうち右前輪駆動ユニット20FRの近傍位置に右前輪電力モニタ装置66FRが設けられ、左前輪電気配線L_FLのうち左前輪駆動ユニット20FLの近傍位置に左前輪電力モニタ装置66FLが設けられ、右後輪電気配線L_RRのうち右後輪駆動ユニット20RRの近傍位置に右後輪電力モニタ装置66RRが設けられ、左後輪電気配線L_RLのうち左後輪駆動ユニット20RLの近傍位置に左後輪電力モニタ装置66RLが設けられる。各輪電力モニタ装置66は、それが取り付けられている位置における電圧である各輪電圧V(右前輪電圧V_FR、左前輪電圧V_FL、右後輪電圧V_RR、左後輪電圧V_RL)および、それが取り付けられている位置に流れる電流である各輪電流I(右前輪電流I_FR、左前輪電流I_FL、右後輪電流I_RR、左後輪電流I_RL)をそれぞれ検出する。これ以外の構成については上記第1実施形態で説明した構成と同一であるので、その具体的な説明は省略する。
図11は、本実施形態に係るECU50の機能構成を示すブロック図である。図11に示すように、ECU50は、バネ上制御力演算部51と、バネ下制御力演算部52と、操安性制御力演算部53と、目標制御力演算部54と、各輪電圧取得部58と、出力電圧取得部155と、出力電圧調整部257とを備える。
バネ上制御力演算部51、バネ下制御力演算部52、操安性制御力演算部53、目標制御力演算部54の機能構成は、上記第1実施形態にて説明した機能構成と同一であるので、その具体的説明は省略する。
各輪電圧取得部58は、各輪電力モニタ装置66にて検出された各輪電圧V(V_FR,V_FL,V_RR,V_RL)および各輪電流I(I_FR,I_FL,I_RR,I_RL)を入力するとともに、これらの各輪電圧V(V_FR,V_FL,V_RR,V_RL)および各輪電流I(I_FR,I_FL,I_RR,I_RL)に基づいて、各輪補正電圧V1(V1_FR,V1_FL,V1_RR,V1_RL)を演算する。各輪補正電圧V1は、各輪電力モニタ装置66により検出された各輪電圧Vを、DC/DCコンバータ30と各電動アクチュエータ11とを電気的に連結する電気配線の電気抵抗による電圧降下分を補正した電圧である。図12は、各輪電圧取得部58が各輪補正電圧V1を演算するために実行するルーチンを示すフローチャートである。
図12に示すルーチンが起動すると、まず、各輪電圧取得部58は、右前輪電力モニタ装置66FRから右前輪電圧V_FRを、左前輪電力モニタ装置66FLから左前輪電圧V_FLを、右後輪電力モニタ装置66RRから右後輪電圧V_RRを、左後輪電力モニタ装置66RLから左後輪電圧V_RLを、それぞれ入力する(S60)。これらの各輪電圧は、DC/DCコンバータ30から駆動ユニット20を介して各電動アクチュエータ11に印加される電圧を表す。次いで、各輪電圧取得部58は、右前輪電力モニタ装置66FRから右前輪電流I_FRを、左前輪電力モニタ装置66FLから左前輪電流I_FLを、右後輪電力モニタ装置66RRから右後輪電流I_RRを、左後輪電力モニタ装置66RLから左後輪電流I_RLを、それぞれ入力する(S61)。続いて、右前輪電気配線L_FRの電気抵抗(右前輪電気抵抗)R_FR、左前輪電気配線L_FLの電気抵抗(左前輪電気抵抗)R_FL、右後輪電気配線L_RRの電気抵抗(右後輪電気抵抗)R_RR、左後輪電気配線L_RLの電気抵抗(左後輪電気抵抗)R_RLをそれぞれ入力する(S62)。この場合において、各電気配線の電気抵抗は予め調査されており、調査された各電気配線の電気抵抗値が予めECU50の記憶領域に記憶されている。各輪電圧取得部58は、S62にて、ECU50の記憶領域に記憶された電気抵抗を読み出しすことにより、各電気抵抗R(R_FR,R_FL,R_RR,R_RL)を入力する。なお、各電気抵抗Rは、DC/DCコンバータ30からそれぞれの各輪電力モニタ装置66までを結ぶ電気配線の抵抗であるのがよい。
続いて各輪電圧取得部58は、右前輪電流I_FRと右前輪電気抵抗R_FRとの積により右前輪電気抵抗R_FRによる降下電圧(右前輪降下電圧)VDROP_FRを演算し、左前輪電流I_FLと左前輪電気抵抗R_FLとの積により左前輪電気抵抗R_FLによる降下電圧(左前輪降下電圧)VDROP_FLを演算し、右後輪電流I_RRと右後輪電気抵抗R_RRとの積により右後輪電気抵抗R_RRによる降下電圧(右後輪降下電圧)VDROP_RRを演算し、左後輪電流I_RLと左後輪電気抵抗R_RLとの積により左後輪電気抵抗R_RLによる降下電圧(左後輪降下電圧)VDROP_RLを演算する(S63)。
次いで、各輪電圧取得部58は、右前輪電圧V_FRと右前輪降下電圧VDROP_FRとを加算することにより右前輪補正電圧V1_FRを演算し、左前輪電圧V_FLと左前輪降下電圧VDROP_FLとを加算することにより左前輪補正電圧V1_FLを演算し、右後輪電圧V_RRと右後輪降下電圧VDROP_RRとを加算することにより右後輪補正電圧V1_RRを演算し、左後輪電圧V_RLと左後輪降下電圧VDROP_RLとを加算することにより左後輪補正電圧V1_RLを演算する(S64)。そして、演算した各輪補正電圧V1(V1_FR,V1_FL,V1_RR,V1_RL)を出力する。その後、このルーチンを終了する。各輪電圧取得部58が図12のルーチンを繰り返し実行することにより、各輪補正電圧V1が逐次出力される。
出力電圧取得部155は、各輪電圧取得部58から各輪補正電圧V1(V1_FR,V1_FL,V1_RR,V1_RL)を入力するとともに、入力した各輪補正電圧V1(V1_FR,V1_FL,V1_RR,V1_RL)を平均することにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧を取得する。図13は、出力電圧取得部155が出力電圧を取得するために実行するルーチンを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、まず、出力電圧取得部155は、各輪電圧取得部58から各輪補正電圧V1(V1_FR,V1_FL,V1_RR,V1_RL)を入力する(S70)。次いで、次式に基づいて平均電圧Vaveを算出する(S71)。
Vave=(V1_FR+V1_FL+V1_RR+V1_RL)/4
上式により求められる平均電圧Vaveが、DC/DCコンバータ30の出力電圧である。
続いて、出力電圧取得部155は、S71にて演算した出力電圧(平均電圧Vave)を出力する(S72)。その後、このルーチンを終了する。出力電圧取得部155が図13のルーチンを繰り返し実行することにより、出力電圧(平均電圧Vave)が逐次出力される。
出力電圧調整部257は、平均電圧Vaveを入力するとともに、入力した平均電圧Vaveに基づいて、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する。図14は、DC/DCコンバータ30の出力電圧を調整するために本実施形態の出力電圧調整部257が実行するルーチンを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、出力電圧調整部257は、まず、平均電圧Vaveを入力し(S80)、次いで、平均電圧Vaveが基準電圧である47.5(V)よりも大きいか否かを判断する(S81)。平均電圧Vaveが基準電圧よりも大きい場合(S81:Yes)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が減少するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S82)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ減少する。その後、出力電圧調整部257はこのルーチンを終了する。一方、平均電圧Vaveが基準電圧以下である場合(S81:No)、DC/DCコンバータ30の出力電圧が増加するように、DC/DCコンバータ30に指令信号を出力する(S83)。これにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が微小量だけ増加する。その後、出力電圧調整部257はこのルーチンを終了する。出力電圧調整部257が図14のルーチンを繰り返し実行することにより、DC/DCコンバータ30の出力電圧が基準電圧(47.5V)に近づくように、出力電圧が調整される。
本実施形態のサスペンション装置は、DC/DCコンバータ30から複数の電動アクチュエータに印加された電圧である各輪電圧V(V_FR,V_FL,V_RR,V_RL)をそれぞれ取得する各輪電圧取得部58と、各輪電圧取得部58により取得された複数の各輪電圧V(V_FR,V_FL,V_RR,V_RL)を平均することによりDC/DCコンバータ30の出力電圧を取得する出力電圧取得部155と、出力電圧取得部155により取得されたDC/DCコンバータ30の出力電圧が予め定められた基準電圧(47.5V)に近づくようにDC/DCコンバータ30の出力電圧を調整する出力電圧調整部257と、を備える。
本実施形態によれば、各輪電圧Vを平均することにより、各輪電圧Vを検出する各輪電力モニタ装置66の検出誤差や電圧の変動が丸められて小さくなる。例えば、1つの各輪電力モニタ装置66により検出された電圧が定常電圧を中心とした正規分布関数により表わされ、3σ(σ:分散)の範囲が±0.5Vである場合、1つの各輪電力モニタ装置66により検出された電圧が3σの範囲を越えて変動する確率は約0.3%である。一方、4つの各輪電力モニタ装置66により検出された電圧の平均値が上記した3σの範囲を越えて変動する確率は、0.3%の4乗(8.1×10−9%)である。すなわち、上記平均値が定常電圧を中心とした正規分布関数により表わされた場合、その正規分布の3σの範囲は極めて小さい。換言すれば、各輪電圧Vを平均した場合、変動電圧が丸められて極めて小さくなる。このように変動電圧が小さくされた各輪出力電圧Vの平均値Vaveが基準電圧(47.5V)に近づくようにDC/DCコンバータ30の出力電圧が調整されるので、出力電圧の調整時に変動電圧がほぼ除外される。よって、出力電圧の目標値(基準電圧)をより高く設定でき、その結果、DC/DCコンバータ30の出力電圧を規定電圧(例えば48V)を越えない範囲内でより大きくすることができる。
また、本実施形態のサスペンション装置は、複数の電動アクチュエータ11に印加される電圧を各輪電圧V(V_FR,V_FL,V_RR,V_RL)として検出する各輪電力モニタ装置66を備える。また、各輪電圧取得部58は、各輪電力モニタ装置66により検出された各輪電圧Vを取得するとともに、取得した各輪電圧Vに、DC/DCコンバータ30と電動アクチュエータ11とを電気的に接続する電気配線L(L_FR,L_FL,L_RR,L_RL)の電気抵抗R(R_FR,R_FL,R_RR,R_RL)に基づく電圧降下分VDROP(VDROP_FR,VDROP_FL,VDROP_RR,VDROP_RL)を加算することにより各輪出力電圧Vを補正する。
これによれば、DC/DCコンバータ30と電動アクチュエータ11とを電気的に接続する配線の電気抵抗により生じる電圧降下分を補正した各輪電圧(各輪補正電圧V1)の平均値が基準電圧に近づくようにDC/DCコンバータ30の出力電圧を調整するので、より正確に、DC/DCコンバータ30の出力電圧を基準電圧に近づけることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記第4実施形態では、各輪電圧に、DC/DCコンバータ30と各電動アクチュエータ11とを電気的に接続する電気配線の電気抵抗による電圧降下分を加算することにより各輪電圧を補正した例を示したが、電圧降下分が小さい場合は、このような補正を省くこともできる。また、上記実施形態では、高圧バッテリ40から各電動アクチュエータ11に電力を供給する例について説明したが、通常のバッテリから各電動アクチュエータ11に電力を供給するように構成してもよい。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。