JP2012129475A - 薄膜太陽電池用透明導電膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 第一層および第三層に酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜を、第二層および第四層に酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜を配した四層積層構造体を有し、第一層および第三層の膜厚が50nm以上、第二層の膜厚が1750nm以下、第四層の膜厚が50nm以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜である。
【選択図】図1
Description
さらに、山間部、離島、僻地等、発電施設から距離があり、送電設備を設置しにくい場所でも、利用地域近接部に設置すれば、必要最低限の付帯設備で送電可能となる。しかも、送電設備が短くなる事から、送電による電気損失も減少し、トータル的な電気使用量の減少につながり、また、設備が少なくなる事から、メンテナンス等ランニングコスト削減にもつながると考えられている。
このシリコン系太陽電池については、禁制帯幅と変換効率の効率が良く、理論変換効率29%と高変換効率を有すると共に、他の太陽電池の材料と比べると、その材料確保が容易であり、比較的安価での入手が可能である。更に、シリコンについては無害の為、廃棄処分も容易である利点を有している。
結晶シリコン系太陽電池は、現在最も普及しており、太陽電池全体の9割のシェアを占めている。この太陽電池は、その普及量が多いために、その開発も進んでいて、実質的な変換効率も、単結晶シリコンタイプについては、理論値近くの24.7%まで、その変換効率が上がっている。
しかし、その反面、薄いが故に光吸収層が狭まり、それを補うために、裏面に反射板、入射光側にはスパッタ装置にて透明導電膜を施し、膜表面は凹凸構造にし、光閉じ込め効果を上げて、吸収量を補う施策が必要となる。
最大の課題としては、透明導電膜自体の導電率を落とさずに、吸収された光を電気として導き出す必要性があり、且つ光を半導体層に導きやすいように、光透過性が高い事であり、いうなれば、低抵抗、高透過率の膜が要求される。しかしながら、一般的に厚い導電膜で得られる低抵抗と、薄い膜で得られる高透過率とは対極の関係にあり、実現が非常に困難である。
また、特許文献2に示される光閉じ込め効果を上げるために施した凹凸形状は、あまりにも第一層の起伏形状が大きいと、第一層表面のバリア層である第二層が無くなり、第一層のインジウム系透明導電膜が露出し、耐還元性能が著しく低下してしまう恐れがあった。
図1において、10は透明導電膜、20は基板(ガラス基板)、1〜4は、四層積層構造体を示すもので、1は第一層、2は第二層、3は第三層、4は第四層である。
以下に、本発明の四層積層構造体の各層の作用について説明する。
第一層1は基板20上に設けられるもので、チタン又は錫を含有し、酸化インジウムを主成分とした透明導電膜は、その組成から低抵抗特性となり、最終的に積層された膜全体の導電率を向上させる効果がある。第一層1の膜厚は、50nm以上とする必要がある。この膜厚が、50nm未満である場合は、所定のヘイズ値が得られない。
1−1.第一層、および第三層の組成
1−1−1.第一層および第三層は、酸化インジウムを主成分とし、チタンを含有する透明導電膜である。
チタンの添加により、可視光域から1200nmを超える近赤外域までにかけて80%以上の高い透過率が得られ、その総重量に対するチタンの配合成分比は、0.1〜10質量%である。配合成分比が0.1質量%未満では、近赤外域での透過率が低下しFTOと比較した場合の優位性が消失する。一方、10質量%を超えると組成により体積抵抗率が増加するため、必要な導電率を確保するためには、その膜厚を大きくする必要を生じて、結果として透過率が低下する問題が生じてしまう。
錫の添加によって、キャリア増加による導電率の向上、およびヘイズ値の向上が得られる。その総質量に対する錫の配合成分比は、0.001〜10質量%である。その配合成分比が0.001質量%未満では、透過率や導電率の面では問題無いがヘイズ値の向上への効果が期待できない。一方、10質量%を超える場合には、過剰なキャリア生成により透過率の低下を招いてしまう結果となり望ましくない。
1−2−1.第二層および第四層は、酸化亜鉛を主成分とし、ガリウムを含有する透明導電膜である。
ガリウムの添加は、透過率や導電率といった基本特性には影響はないが、ターゲット使用時に発生するノジュールを抑制できるという効果が得られる。その総質量に対するガリウムの配合成分比は0.1〜7質量%である。その配合成分比が、0.1質量%未満では、その効果は殆ど発揮されず、7質量%を超える場合には、過剰なキャリアが生成され透過率が低下してしまう。
アルミニウムの添加は、添加しない場合に比べて高い導電率が得られる。その総質量に対するアルミニウムの配合成分比は0.1〜10質量%である。その配合成分比が0.1質量%未満では、その効果は殆ど発揮されず、10質量%を超える場合には、過剰なキャリアが生成され透過率の低下を招くことになる。
2.膜厚
2−1.第一層の膜厚
第一層は、酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜で、その膜厚は、50〜300nmが好ましい。その膜厚が、50nm未満では、十分なヘイズ値及び導電率が得られず、300nmを超える膜厚では、他の層の膜厚を減膜しなければならない問題が生じてくる。より好ましくは、200〜300nmの膜厚が、ヘイズ値、導電率の両者、及び他層との膜厚の兼ね合いを満足するものである。
第三層は、酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜で、その膜厚は、50〜1500nmが好ましい。膜厚が50nm未満では、十分なヘイズ値と導電率が得られず、1500nmを超える膜厚では、全光透過率が低下するという不具合が生じる。より好ましくは50〜100nmである。
第二層は、酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜である。その膜厚は、400〜1750nmが好ましい。膜厚が400nm未満では、ヘイズ値が減少するという不具合が生じ、1750nmを超える膜厚では、全光透過率が不十分となる。なお、この膜厚は、かかる範囲でヘイズ値と抵抗、透過率の兼ね合いで決定するのが望ましい。
第四層は、酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜である。その膜厚は、50〜1400nmが望ましい。膜厚が50nm未満では、耐還元性に弱い膜質となり、1400nmを超えると、全光透過率が不十分となる。なお、第四層の膜厚は、かかる範囲で薄い方が第四層の全光透過率と、全層の導電率の見地からより望ましい。
スパッタリングターゲットの仕様は、外径152mm、厚み5mmである。
表1に、各実施例、比較例で使用したターゲット材の組成、およびスパッタ条件を示す。なお、ここでのターゲットの組成は、原料粉組成の質量混合比で表している。
スパッタリング装置は、ULVAC製SBH−2206Dを各層の成膜に共通で使用し、マグネトロンスパッタリング法(以下スパッタ法)により成膜した。
スパッタパワーは、第一層と第三層の成膜時には、DC80W、第二層と第四層の成膜時には、DC100Wとした。
スパッタ時間は、表1に記載の時間で実施した。
表2に、各実施例、比較例で作製した膜の各層の構成、および評価した各特性の結果を示す。
[表面抵抗値の評価]
表面抵抗値は、評価機器にMITSUBISHI CHEMICAL Laresta−EP MCP−T360 PROBE TYPE PSPを用いて、ガラス基板上の透明導電膜の表面抵抗を測定して評価した。
表面抵抗値は、12Ω/□を超えるものは、本発明の目的とする効果が得られていない。12Ω/□以下であれば使用可能であるが、10Ω/□以下であることが望ましく、さらに7Ω/□以下であることが望ましい。表2において、これらの水準を次のような記号で示す。7Ω/□以下は「◎」(優)、7Ω/□を超え10Ω/□以下は「○」(良)、10Ω/□を超え12Ω/□以下は「△」(可)、12Ω/□を超えるものは×(不可)。
光透過率、ヘイズ値は、株式会社村上色彩技術研究所製HazeMeter HM−150を用い、D65光源を使用してガラス基板を含めた透明導電膜の光学特性を測定した。ガラス基板にはソーダライムガラスを用い、ガラス基板単体での透過率は90.7%であった。
光透過率が75%未満のものは、本発明の目的とする効果が得られていない。75%以上であれば使用可能であるが、80%以上であることが望ましく、さらに83%以上であることが望ましい。表2において、これらの水準を次のような記号で示す。83%以上は「◎」(優)、82%未満80%以上は「○」(良)、80%未満75%以上は「△」(可)、75%を下回るものは「×」(不可)である。
ヘイズ抵抗値が7%を下回るものは、本発明の目的とする効果が得られていない。7%以上であれば使用可能であるが、10%以上であることが望ましく、さらに15%以上であることが望ましい。表2において、これらの水準を次のような記号で示す。15%以上は「◎」(優)、15%未満10%以上は「○」(良)、10%未満7%以上は「△」(可)、7%を下回るものは「×」(不可)である。
耐還元性評価の基準は、200℃1時間、減圧環境0.1Pa〜0.0001Pa、水素濃度6.25%の環境にて、導電率、および全光線透過率の変化率が5%以内を本発明の効果の範囲とし、5%を越える場合を本発明の効果の範囲外とする。表2において、本発明の効果の範囲内のものを「○」で示し、本発明の効果の範囲外のものを「×」で示している。なお、比較例2では、他の特性全てが劣っていたために、この耐還元性評価を行わなかったので、「−」で示している。
透明導電膜を構成する層数の影響について、実施例1、比較例1、2を用いて説明する。
実施例1は、本願第1の発明が特定する四層を備え、その第一層および第三層を構成する酸化インジウム膜(IO膜)は、その総質量に対し、酸化チタン(TiO2)が1.0質量%含まれている。また第二層および第四層を構成する酸化亜鉛膜(ZnO膜)は、その総質量に対し、酸化ガリウム(Ga2O3)を0.6質量%含むものである。
第一層、第二層、第三層、第四層の膜厚は、それぞれ、300nm、400nm、100nm、50nmである。
その第一層および第三層を構成する酸化インジウム膜(IO膜)は、チタン(Ti)を含まず、また第二層および第四層を構成する酸化亜鉛膜(ZO膜)は、酸化ガリウム(Ga2O3)あるいは酸化アルミニウム(Al2O3)のどちらも含んでおらず、第1の発明の範囲外である。
透明導電膜を構成する膜組成の影響について説明する。
実施例2、3、4、5には、第一層と第三層に酸化チタン(TiO2)を含む酸化インジウム膜(ITiO膜)を形成し、第2層と第4層に、酸化ガリウム(Ga2O3)を0.32質量%を含む酸化亜鉛膜(ZO膜)を形成した。その酸化チタン(TiO2)の含有量は、実施例2、3、4、5において、総質量に対する酸化チタン(TiO2)の含有量が、それぞれ、0.09質量%、0.1質量%、10.0質量%、11.0質量%である。
第一層、第二層、第三層、第四層の膜厚は、それぞれ300nm、400nm、100nm、50nmである。
また、実施例2および実施例5においても、十分な効果を示しているのがわかる。
第一層、第二層、第三層、第四層の膜厚は、それぞれ300nm、400nm、100nm、50nmである。
第一層、第二層、第三層、第四層の膜厚は、それぞれ300nm、400nm、100nm、50nmである。
総質量に対する酸化ガリウムの配合成分比が0.01〜1質量%の範囲にある実施例11、12は、四層構造体の膜厚は同じであるが酸化ガリウムの含有量が0.07質量%とやや少ない実施例10、および11.0質量%とやや多い実施例13に比べて優れたヘイズ値と耐還元性を有していることがわかる。一方、実施例10、13においても十分な効果を示していることがわかる。
第一層、第二層、第三層、第四層の膜厚は、それぞれ300nm、400nm、100nm、50nmである。
透明導電膜を構成する膜厚の影響について説明する。
比較例3、実施例18、19、20では、第一層と第三層に、総質量に対して酸化チタン(TiO2)を1.0質量%含む酸化インジウム膜(ITiTO膜)を形成し、第二層と第四層に、酸化ガリウム(Ga2O3)を0.32質量%を含む酸化亜鉛膜(ZnO膜)を形成した。
第一層の膜厚は、比較例3、実施例18、19、20では、それぞれ30nm、50nm、300nm、500nmである。
第二層、第三層、第四層の膜厚は、共通で、それぞれ400nm、100nm、50nmである。
第二層の膜厚は、実施例21、22、23、比較例4では、それぞれ300nm、400nm、1750nm、1800nmである。
第一層、第三層、第四層の膜厚は、共通で、それぞれ300nm、100nm、50nmである。
第三層の膜厚は、実施例24、25、26、27、28では、それぞれ30nm、50nm、100nm、1500nm、1550nmである。第一層、第二層、第四層の膜厚は、共通で、それぞれ300nm、400nm、50nmである。
第四層の膜厚は、比較例5、実施例29、30、31では、それぞれ40nm、50nm、1400nm、1500nmである。
第一層、第二層、第三層の膜厚は、共通で、それぞれ300nm、400nm、100nmである。
第一層〜第四層の膜厚は、実施例32では、それぞれ50nm、300nm、50nm、50nmで、合計膜厚450nmとし、実施例33では、それぞれ500nm、1300nm、100nm、50nmで、合計膜厚1950nmである。
2 第二層
3 第三層
4 第四層
10 透明導電膜(四層積層構造体)
20 基板(ガラス基板)
Claims (14)
- 第一層および第三層に酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜を、
第二層および第四層に酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜を、
配した四層積層構造体を有し、
第一層および第三層の膜厚が50nm以上、
第二層の膜厚が1750nm以下、
第四層の膜厚が50nm以上で
あることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜。 - 第一層および第三層の酸化インジウムを主成分とし、チタンを含有する透明導電膜の総質量に占める酸化チタンの配合成分比が、0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第一層および第三層の酸化インジウムを主成分とし、酸化錫を含有する透明導電膜の総質量に占める酸化錫の配合成分比が、0.001〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第二層および第四層の酸化亜鉛を主成分とし、ガリウムを含有する透明導電膜の総質量に占める酸化ガリウムの配合成分比が、0.1〜7質量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第二層および第四層の酸化亜鉛を主成分とし、酸化アルミニウムを含有する透明導電膜の総質量に占める酸化アルミニウムの配合成分比が、0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第一層の、酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜の膜厚が、50〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第三層の、酸化インジウムを主成分とし、チタン又は錫を含有する透明導電膜の膜厚が、50〜1500nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第二層の酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜の膜厚が、400〜1750nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 第四層の、酸化亜鉛を主成分とし、ガリウム又は酸化アルミニウムを含有する透明導電膜の膜厚が、50〜1400nmであることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜。
- 前記四層積層構造体である透明導電膜の総膜厚が、2000nm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の透明導電膜。
- 請求項10記載の四層積層構造体からなる透明導電膜を用いた表面抵抗値が、7Ω/□以下であることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜。
- 請求項10記載の四層積層構造体からなる透明導電膜を用いたヘイズ値が、11%以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜。
- 請求項10記載の四層積層構造体からなる透明導電膜を用いた全光透過率が、80%以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜。
- 請求項10記載の四層積層構造体からなる透明導電膜を用いた耐還元性評価環境における導電率および全光線透過率の変化率が、5%以内であることを特徴とする薄膜太陽電池用透明導電膜。
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