JP2012127689A - レーダ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】空間平均された共分散行列を小規模な構成でかつ高速に算出することができるレーダ装置を得る。
【解決手段】レーダ装置の平均共分散行列算出手段12は、複素ベクトルVを保持する複素データレジスタ20と、複素ベクトルVの要素から複素スペクトラム成分VとVを逐次選択する複素データセレクタ21と、VとV との複素乗算値Wijを逐次算出する複素乗算器22と、Wijを逐次遅延させてWij 〜Wij −2τを逐次出力する多段シフトレジスタ23と、Wij 〜Wij −2τの複素加算を行って空間平均された共分散行列Sの各要素Sklを逐次算出する複素加算器24手段とを備え、複素スペクトラム成分V〜Vから共分散行列Wの各要素Wijを逐次算出しつつ、算出した各要素Wijから空間平均された共分散行列Sの各要素Sklを逐次算出するパイプライン構成を有している。
【選択図】図2

Description

この発明は、対象物体(以下、「ターゲット」という)からの反射信号を複数の受信手段で受信した際に、それら受信信号に基づいてターゲット情報を算出するレーダ装置に関する。
従来から、連続的に周波数変調した送信信号をターゲットに対して送信し、ターゲットからの反射信号を受信してターゲットの方向等を算出するレーダ装置が知られている。
従来の周波数変調レーダ装置としては、特許文献1に示すようなものがある。特許文献1における電子走査型レーダ装置は、送信部から送信波を出力し、ターゲットからの反射波をアレイアンテナで受信する。その後、送信波と反射波とから生成されたビート信号を周波数分解して複素スペクトラム(複素データ)を求め、ビート周波数の強度からターゲットを検知し、検出されたビート周波数における複素スペクトラム成分から共分散行列(相関行列)を算出する。共分散行列は空間平均もしくは時間平均され、超分解アルゴリズムであるMUSIC法によるターゲット方向の算出に用いられる。
特開2009−156582号公報
上記の特許文献1には、9素子のアンテナを3つのサブアレイに分割して各サブアレイの共分散行列を算出し、それらの共分散行列の対応する各要素を加算することによって空間平均された共分散行列を算出することが記載されている。
しかしながら、上記の処理を専用回路で構成しようとする場合、各サブアレイの共分散行列を一時的に保存するためのメモリ領域を必要とするため、回路規模が大きくなるという問題がある。
また、各共分散行列の要素が全て揃うまで空間平均の処理を開始することができず、レイテンシ(処理遅延)が遅くなるという問題がある。これは、ソフトウェアで処理する場合には大きな問題とはならないが、専用回路で構成する場合にはパイプライン処理の妨げとなり、演算のボトルネックとなる。
上記のような問題を回避するために、各サブアレイの共分散行列を算出する手段を個別に用意してそれらを並列実行させ、各共分散行列算出手段の対応する出力を加算することによって空間平均をとる構成とすることも可能である。しかしながら、共分散行列算出手段を個別に設けるために回路規模が大きくなり、製造コストや消費電力が増大するという問題がある。
この発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、空間平均された共分散行列を小規模な構成でかつ高速に算出することができるレーダ装置を得ることを目的とする。
この発明に係るレーダ装置は、周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、送信信号がターゲットで反射された信号を複数のアンテナ素子で受信して複数チャネルの受信信号を得る受信手段と、送信信号と複数チャネルの受信信号とをそれぞれミキシングして複数チャネルのビート信号を生成するミキシング手段と、複数チャネルのビート信号をそれぞれ周波数解析して複数チャネルのビート周波数スペクトラムを生成する周波数解析手段と、複数チャネルのビート周波数スペクトラムからピーク周波数を検出するピーク検出手段と、ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分に基づいて、空間平均された共分散行列を算出する平均共分散行列算出手段と、空間平均された共分散行列に基づいてターゲットの方向を算出する方向算出手段とを備え、平均共分散行列算出手段は、ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分から共分散行列の各要素を逐次算出しつつ、算出した共分散行列の各要素から空間平均された共分散行列の各要素を逐次算出する。
この発明に係るレーダ装置によれば、空間平均された共分散行列を小規模な構成でかつ高速に算出することができる。
この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係るレーダ装置における平均共分散行列算出手段の内部構成を示すブロック図である。 この発明の実施の形態1に係るレーダ装置が行う処理の概略を示すフローチャートである。 この発明の実施の形態1において、平均共分散行列算出手段内部の主要なデータ及び制御信号がサイクル毎に伝播していく様子を示すタイミングチャートである。 この発明の実施の形態1において、平均共分散行列算出手段の動作を行列の演算として示す図である。 この発明の実施の形態1において、並べ替え器による書き込みアドレスの生成を示す図である。 この発明の実施の形態1において、並べ替え器により生成される書き込みアドレスと行列要素との対応を示す図である。 この発明の実施の形態2に係るレーダ装置における平均共分散行列算出手段の内部構成を示すブロック図である。
以下、この発明の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の構成を示すブロック図である。レーダ装置は、ターゲットの距離、相対速度、及び方向を算出してターゲット情報として出力する信号処理部1と、信号処理部1の制御下で制御電圧を出力する制御電圧発生器2と、制御電圧に基づいて周波数がUP/DOWN変調された送信信号を出力するVCO(Voltage Controlled Oscillator)3と、送信信号を分配する分配器4と、送信信号を出射する送信アンテナ5(送信手段)とを備えている。
また、レーダ装置は、送信信号がターゲットで反射された信号を複数(図1ではM=6個)のアンテナ素子6a〜6fで受信して6チャネルの受信信号を得るアレイアンテナ6(受信手段)と、分配器4で分配された送信信号と各チャネルの受信信号とをそれぞれミキシングして6チャネルのビート信号を生成するミキサ7a〜7f(ミキシング手段)と、各チャネルのビート信号をそれぞれA/D変換するA/Dコンバータ8a〜8fとを備えており、A/D変換された各チャネルのビート信号は信号処理部1に入力される。
信号処理部1の内部には、周波数解析手段9と、ピーク検出手段10と、距離速度算出手段11と、平均共分散行列算出手段12と、方向算出手段13とが備えられている。
周波数解析手段9は、A/Dコンバータ8a〜8fによってA/D変換された各チャネルのビート信号をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)等によって周波数解析し、6チャネルのビート周波数スペクトラムを生成する。
ピーク検出手段10は、6チャネルのビート周波数スペクラムからピーク周波数を検出する。
距離速度算出手段11は、ピーク周波数に基づいてターゲットの距離及び相対速度を算出する。
平均共分散行列算出手段12は、ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分に基づいて、空間平均された共分散行列を算出する。この平均共分散行列算出手段12の詳細については後述する。
方向算出手段13は、空間平均された共分散行列に基づいてMUSIC法等の超分解能到来方向推定処理を行うことにより、ターゲットの方向を算出する。
なお、図1には記載されていないが、実際にはレーダ装置全体を制御する制御手段があり、制御手段は信号処理部1やその内部の手段にシステムバスや制御信号線を介して接続されている。ただし、以下においては説明を簡潔にするために、信号処理部1が自らデータ処理を実行するものとして説明する。
次に、この発明に係るレーダ装置の特徴である平均共分散行列算出手段12の詳細について図2を用いて説明する。
図2は、平均共分散行列算出手段12の内部構成を示すブロック図である。平均共分散行列算出手段12は、アレイアンテナ6におけるM=6個のアンテナ素子からN=3個のサブアレイを取り出して各サブアレイの共分散行列R〜Rの対応する要素をそれぞれ加算することによって、空間平均された共分散行列Sを算出する。これは、M=6個の複素スペクトラム成分V〜Vからサイズ6×6の共分散行列Wを算出してそこから3個の共分散行列R〜Rを取り出し、各共分散行列R〜Rの対応する要素をそれぞれ加算することに相当する。
平均共分散行列算出手段12は、複素データレジスタ20(保持手段)と、複素データセレクタ21(選択手段)と、複素乗算器22(乗算手段)と、多段シフトレジスタ23(多段シフト手段)と、複素加算器24(加算手段)と、並べ替え器25(並べ替え手段)とを備えており、複素スペクトラム成分V〜Vから共分散行列Wの各要素Wijを逐次算出しつつ、算出した各要素Wijから空間平均された共分散行列Sの各要素Sklを逐次算出するパイプライン構成を有している。
複素データレジスタ20は、前述したピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分V〜Vを要素とする複素ベクトルVを保持する。
複素データセレクタ21は、複素データレジスタ20に保持されている複素ベクトルVの要素から第1の複素スペクトラム成分V(i=0〜5)と第2の複素スペクトラム成分V(j=0〜5)とを後述する所定の規則に従って1サイクルごとに逐次選択して出力する。
複素乗算器22は、複素データセレクタ21により選択された第1の複素スペクトラム成分Vと第2の複素スペクトラム成分Vの複素共役V との複素乗算を行うことによって、共分散行列Wの各要素Wij=V・V に相当する複素乗算値を逐次算出する。
多段シフトレジスタ23は、N=3個の出力ポートを有しており、複素乗算器22によって算出された複素乗算値Wijを1サイクルごとに逐次遅延させて第1から第3の複素データを各出力ポートに逐次出力する。図2の例では、共分散行列Rの要素に相当する遅延なしの第1の複素データWij と、共分散行列Rの要素に相当する1サイクル遅延された第2の複素データWij −τと、共分散行列Rの要素に相当する2サイクル遅延された第3の複素データWij −2τとが各サイクルにおいて出力される。
複素加算器24は、多段シフトレジスタ23の各出力ポートから出力された複素データWij 〜Wij −2τの複素加算を行うことによって、空間平均された共分散行列Sの各要素Skl(k,l=0〜4)を逐次算出する。
並べ替え器25は、複素加算器24により算出された行列Sの各要素を後述する所定の規則に従って並べ替えて出力する。
次に、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置の全体の動作について説明する。
図3は、レーダ装置が行う処理の概略を示すフローチャートである。まず、図1に示される信号処理部1から制御電圧発生器2に対して変調開始命令が出力されると、制御電圧発生器2から変調区間(たとえば、三角波信号)の制御電圧が出力されてVCO3に印加され、VCO3からは制御電圧に従って周波数変調された送信信号が出力される。送信信号は、分配器4により送信アンテナ5とミキサ7a〜7fとに分配された後、送信アンテナ5からターゲットに向けて出射される(ステップST1)。
送信アンテナ5から出射されてターゲットで反射された信号は、アレイアンテナ6の各アンテナ素子6a〜6fによって受信されて6チャネル(CH1〜CH6)の受信信号が得られる(ステップST2)。各受信信号は、個別のミキサ7a〜7fによってそれぞれ送信信号とミキシングされて6チャネルのビート信号が生成される(ステップST3)。
各ビート信号は、A/Dコンバータ8a〜8fによってそれぞれディジタルデータに変換され、信号処理部1に入力される。信号処理部1の内部では、まず周波数解析手段9によってFFTを用いた周波数解析が行われ、各チャネルのビート周波数スペクトラムが生成される(ステップST4)。各チャネルのビート周波数スペクトラムはピーク検出手段10に渡され、ピーク周波数が検出される(ステップST5)。次に、ピーク周波数は距離速度算出手段11に渡され、ピーク周波数に基づいてターゲットの距離及び相対速度が算出される(ステップST6)。また、算出されたターゲットの個数Kが記憶される(ステップST7)。このとき、明らかに異常値である距離又は相対速度は、ターゲットの情報とは見なされずに除外される。
次に、平均共分散行列算出手段12は、距離及び相対速度の算出に用いたピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分を周波数解析手段9から受け取り、空間平均された共分散行列Sを算出する(ステップST8)。以下、この処理を詳細に説明する。
まず、平均共分散行列算出手段12の図示しない制御手段は、距離速度算出手段11に対して、先に算出されたK個のターゲット情報のうちの一つを取り出してそのピーク周波数と距離及び相対速度の情報を渡すように要求し、渡されたターゲット情報のピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分V〜Vを周波数解析手段9から受け取る。図2に示される平均共分散行列算出手段12の複素データレジスタ20は、ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分V〜Vを要素とする複素ベクトルVを保持する。
複素データセレクタ21は、複素データレジスタ20に保持されている6個の複素スペクトラム成分V〜Vから、第1の複素スペクトラム成分Vと第2の複素スペクトラム成分Vとを次の式(1)に従って1サイクルごとに逐次選択し、データ線30aと30bに出力する。
Figure 2012127689
ただし、
Figure 2012127689
である。
上記において、i、jはmサイクル目に選択される2つの複素スペクトラム成分V、Vの添え字であり、Mはアレイアンテナの素子数(すなわち、チャネル数)である。
図4は、平均共分散行列算出手段12内部の主要なデータ及び制御信号がサイクル毎に伝播していく様子を示すタイミングチャートである。図4ではデータや制御信号が同期クロックに同期して伝播されるものとしており、同期クロックの周波数の逆数が1サイクルに相当する。また、複素乗算器22や複素加算器24は、1サイクルで演算を実行するものとする。
図4の例では、6個の複素スペクトラム成分V〜Vから、2個の複素スペクトラム成分がデータ線30aと30bの項に記載された順序で選択されて出力される。また、複素データセレクタ21は、図4において有効信号31で示される信号を多段シフトレジスタ23に出力する。
第1の複素スペクトラム成分Vと第2のスペクトラム成分Vは、データ線30aと30bを介して複素乗算器22に入力される。複素乗算器22では、第1の複素スペクトラム成分Vと第2の複素スペクトラム成分Vの複素共役V との複素乗算が行われ、共分散行列Wの各要素Wijが次の式(5)に従って1サイクルごとに逐次算出される。
Figure 2012127689
次に、共分散行列Wの各要素は、多段シフトレジスタ23に入力される。多段シフトレジスタ23からは、各サイクルにおいて、第1のサブアレイの共分散行列Rの要素に相当する遅延なしの第1の複素データWij がデータ線32aに、第2のサブアレイの共分散行列Rの要素に相当する1サイクル遅延された第2の複素データWij −τがデータ線32bに、第3のサブアレイの共分散行列Rの要素に相当する2サイクル遅延された第3の複素データWij −2τがデータ線32cに出力される。これらのデータの出力タイミングは図4のデータ線32a〜32cの項に対応する。また、有効信号31は、多段シフトレジスタ23において4サイクル遅延されて、図4に示されるような有効信号34として複素加算器24に入力される。
共分散行列R〜Rの要素に相当する第1〜第3の複素データWij 〜Wij −2τは、データ線32a〜32cを介して複素加算器24に入力される。複素加算器24では、これらのデータの複素加算が行われ、空間平均された共分散行列Sの各要素Sklがデータ線33から逐次出力される。
上記の動作を行列の演算として示すと図5のようになる。図5において、複素ベクトルVの各要素をV〜Vとし、Hは複素共役転置を表す。共分散行列Wの要素はW00〜W55であり、対角線上の矢印に示したような順序でW00→W11→・・・→W55が複素乗算器22から出力され、その後W01→W12→というように出力される。また、空間平均された共分散行列Sの要素S00はW00,W11,W22を加算することによって求められるため、複素乗算器22からの出力を多段シフトレジスタ23で逐次遅延させることによって、空間平均を行うための要素をそろえることができる。同様に、要素S11は次のサイクルにおいて多段シフトレジスタ23から出力されるW11,W22,W33を加算することによって求められる。このようにして、空間平均された共分散行列Sの要素も、図5の対角線上の矢印に示したような順序で出力されることになる。このとき、行列Sの左下側の黒丸で示した要素は出力されないが、行列Sはエルミート行列であるため、次の式(6)に示すように、行列Sの右上側の要素の複素共役をとることによって容易に求めることができる。そのため、後段の並べ替え器25においてそれらの要素を求める。なお、式(6)において、*は複素共役を示す。
Figure 2012127689
複素加算器24から出力された行列Sの各要素Sklは、データ線33を介して並べ替え器25に入力される。並べ替え器25は、複素加算器24から図4のデータ線33の順序で出力される行列Sの各要素を、有効信号34が「有効」を示す場合にのみ16ワードのメモリに保存する。図4では、有効信号34がHighの場合は有効、Lowの場合は無効を表す。有効信号34が「無効」の場合には、共分散行列R〜Rの無意味な要素同士を加算したものが複素加算器24から出力され、これは行列Sの要素とはならないため破棄される。また、この際に次の式(7)に従う順序で書き込みアドレスを生成して書き込みを行う。
Figure 2012127689
ただし、
Figure 2012127689
であり、
Figure 2012127689
である。
上記において、ADRはn番目に生成される書き込みアドレスであり、Mはアレイアンテナの素子数(すなわち、チャネル数)、Nはサブアレイの数である。
式(7)従って図6に示されるような順序で書き込みアドレスを生成することは、図7に示されるように行列Sの各要素に対してラスター操作のような順序でアドレスを割り当てることに相当し、これはデータ線33での行列Sの各要素の出力順序に対応している。
行列Sの各要素のメモリへの保存が完了すると、並べ替え器25は、0〜15までの単純なカウントアップの読み出しアドレスを生成し、メモリに保存した行列Sの各要素をその順序で読み出して出力する。この際、図7の行列の左下の領域のアドレスにはデータが存在しないため、式(6)に従って右上の領域のデータを読み出し、その複素共役を算出して出力する。これは、次の規則1に示すような単純な規則で処理できる。
[規則1]
y=[ADR/(M−N+1)];
x=mod(ADR,M−N+1);
if(y>x)
DAT=Mem(x×(M−N+1)+y)
else
DAT=Mem(ADR);
上記において、DATは読み出しアドレスADRに対応するデータであり、Mはアレイアンテナの素子数(すなわちチャネル数)、Nはサブアレイの数であり、[]は床関数(ガウス記号)、mod(ADR,M−N+1)はM−N+1を法とするADRの剰余をとることを示し、Mem(ADR)はメモリのアドレスADRに保存されている値を読み出すことを示し、*は複素共役を示す。また、x、yは一時変数である。
なお、上記の平均共分散行列算出手段12の動作は、図4に示されるようにパイプライン処理されるため、複素データセレクタ21から並べ替え器25までの各部の処理は同時に実行される。
図2のフローチャートに戻って、並べ替え器25から出力された空間平均された共分散行列Sは、方向算出手段26に入力されて固有値、固有ベクトル等が算出され、MUSIC法によりターゲットの方向が算出される(ステップST9〜ステップST11)。その後、ターゲット個数K回分の処理が行われたか否かを判定し(ステップST12)、K回分の処理が完了するまで、ステップST8〜ST11の処理を繰り返し実行する。
以上説明したように、この発明の実施の形態1に係るレーダ装置において、平均共分散行列算出手段12は、複素スペクトラム成分V〜Vから共分散行列Wの各要素Wijを逐次算出しつつ、算出し終えた対応する要素を逐次加算することによって空間平均された共分散行列Sの各要素Sklを逐次算出するパイプライン構成を有している。これにより、ターゲット方向の算出を行うための空間平均された共分散行列Sを小規模な回路構成でかつ高速に算出することができる。
なお、上記のステップST5におけるピーク検出の手法や、ステップST6におけるターゲットの距離及び相対速度の算出方法については、一般的なFMCW(Frequency Modulation Continuous Wave)レーダと同様のものを用いることができる。これらは、特許文献1にも記載されている。また、ステップST8〜ST11の処理についても、MUSIC法の基本的な処理であり、特許文献1等にも記載されている。そのため、これらの処理の詳細な説明は省略する。
また、上記では行列Sの各要素を求める際に、共分散行列R〜Rの対応する要素を単純に加算したのみであり、3で割る処理を行っていない。そのため、行列Sの全体に3をかけたものが算出されることになるが、方向算出手段26における固有値の算出には影響はなく、MUSIC法における方向算出の問題とはならない。
また、並べ替え器25における行列Sの各要素の並べ替えの処理では、メモリに書き込む際に並べ替えを行ったが、書き込みの際はそのままの順序で書き込み、読み出しの際に並べ替えを行ってもよい。また、並べ替え器25において行列Sの左下側を補う処理を行ったが、並べ替え器25からは行列の右上側のみを出力し、方向算出手段26における固有値の算出の際に左下側を補ってもよい。さらに、行列Sの各要素の並べ替えの処理は、方向算出手段26における固有値の算出の際に行ってもよい。この場合には、方向算出手段26内部にある共分散行列保存用のメモリと並べ替え器25内部のメモリとを共用することができるため、システム全体のメモリを削減することができる。
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、共分散行列の空間平均処理のみを行っていた。これに対して、共分散行列の時間平均処理と空間平均処理を共に行うような場合にも、同様の構成で処理を行うことができる。
この発明の実施の形態2に係るレーダ装置の構成については、実施の形態1の図1に示した構成と同様である。また、処理の概略を示すフローチャートも、実施の形態1の図3に示したものと同じである。図8は、実施の形態2に係るレーダ装置における平均共分散行列算出手段212の内部構成を示すブロック図である。
図8において、平均共分散行列算出手段212には、複数の受信時刻における各受信信号(スナップショット)からそれぞれ生成された複数の複素ベクトルVt0、Vt1、Vt2・・・が逐次入力され、時間平均並べ替え器26(時間平均並べ替え手段)は、複素加算器24により算出された各受信時刻における空間平均された行列Sの対応する各要素を累積加算する。具体的には、図4のデータ線33で示す順序で行列Sの各要素が入力されると、実施の形態1の並べ替え器25と同様の手法で並べ替えを行い、メモリに保存されている1スナップショット前までの累積加算された各要素に加算してメモリに上書きする。この場合、行列要素の並べ替えのためのメモリと、時間平均処理のためのメモリとを共通化することができるため、時間平均処理を追加することによる回路規模の増大を最小限に抑えることができる。
以上説明したように、この発明の実施の形態2に係るレーダ装置では、平均共分散行列算出手段212は、共分散行列の時間平均処理と空間平均処理とを共に行いながら回路規模の増大を最小限に抑えることができる。
1 信号処理部、2 制御電圧発生器、3 VCO、4 分配器、5 送信アンテナ、6a〜6f アンテナ素子、6 アレイアンテナ、7a〜7b ミキサ、9 周波数解析手段、10 ピーク検出手段、12,212 平均共分散行列算出手段、13 方向算出手段、20 複素データレジスタ、21 複素データセレクタ、22 複素乗算器、23 多段シフトレジスタ、24 複素加算器、25 並べ替え器、26 時間平均並べ替え器、S 空間平均された共分散行列、V 複素ベクトル、V〜V 複素スペクトラム成分、W 共分散行列、Wij 第1の複素データ、Wij −τ 第2の複素データ、Wij −2τ 第3の複素データ。

Claims (4)

  1. 周波数変調された送信信号を送信する送信手段と、
    前記送信信号がターゲットで反射された信号を複数のアンテナ素子で受信して複数チャネルの受信信号を得る受信手段と、
    前記送信信号と前記複数チャネルの受信信号とをそれぞれミキシングして複数チャネルのビート信号を生成するミキシング手段と、
    前記複数チャネルのビート信号をそれぞれ周波数解析して複数チャネルのビート周波数スペクトラムを生成する周波数解析手段と、
    前記複数チャネルのビート周波数スペクトラムからピーク周波数を検出するピーク検出手段と、
    前記ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分に基づいて、空間平均された共分散行列を算出する平均共分散行列算出手段と、
    前記空間平均された共分散行列に基づいて前記ターゲットの方向を算出する方向算出手段と
    を備え、
    前記平均共分散行列算出手段は、前記ピーク周波数における各チャネルの複素スペクトラム成分から共分散行列の各要素を逐次算出しつつ、該算出した共分散行列の各要素から空間平均された共分散行列の各要素を逐次算出する、レーダ装置。
  2. 前記平均共分散行列算出手段は、
    前記複数の複素スペクトラム成分を要素とする複素ベクトルを保持する保持手段と、
    前記保持手段に保持されている前記複素ベクトルの要素から、第1の複素スペクトラム成分と第2の複素スペクトラム成分とを逐次選択する選択手段と、
    前記選択手段により選択された前記第1の複素スペクトラム成分と前記第2の複素スペクトラム成分の複素共役との複素乗算を行って複素乗算値を逐次算出する乗算手段と、
    前記乗算手段により算出された前記複素乗算値を逐次遅延させて第1〜第Nの複素データを逐次出力する多段シフト手段と、
    前記多段シフト手段により出力された前記第1〜第Nの複素データの複素加算を行って前記空間平均された共分散行列の各要素を逐次算出する加算手段と
    を有する、請求項1に記載のレーダ装置。
  3. 前記平均共分散行列算出手段は、前記加算手段により算出された前記空間平均された共分散行列の各要素を並べ替える並べ替え手段をさらに有する、請求項2に記載のレーダ装置。
  4. 前記平均共分散行列算出手段は、複数の受信時刻における各受信信号からそれぞれ生成される複数の複素ベクトルを逐次入力として受け取ると共に、
    前記加算手段により逐次算出される各受信時刻における前記空間平均された共分散行列の各要素を並べ替えて累積加算する時間平均並べ替え手段をさらに有する、請求項2に記載のレーダ装置。
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