JP2012125194A - 腫瘍血管新生制御遺伝子 - Google Patents

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Abstract

【課題】
腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を同定する方法を提供すること。
【解決手段】
試験物質を細胞と接触させ、細胞におけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定し、そして、試験物質と接触させたときに接触させていないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されている場合に、その試験物質を腫瘍血管新生抑制剤の候補物質として選択することにより、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を選択する方法が開示される。好ましくは、試験物質と細胞との接触は、ゼブラフィッシュに試験物質を投与することにより行う。この方法により同定された物質は、腫瘍血管新生の抑制剤の有効成分として有用である。
【選択図】図1

Description

本発明は、腫瘍血管新生抑制剤のスクリーニング方法に関する。
従来、悪性腫瘍の進行や転移、アテローム性動脈硬化、水晶体後方線維増殖症、血管腫、慢性炎症、眼新血管新生症候群の疾患は、血管(特に末梢毛細血管)の異常増殖に起因することが知られている。そのため、これらの疾患に対する予防または治療薬として、血管新生促進性因子および抗血管新生因子を標的とした種々の血管新生抑制剤が開発されている。
現在の抗腫瘍血管新生治療は、腫瘍血管の新生を促進する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの血管新生因子の活性を拮抗作用することに主に焦点を当てられている。しかし、血管新生は多数の血管新生促進性因子および抗血管新生因子により調節される複雑な過程であり、血管新生因子である1遺伝子の活性のみを標的とする薬剤は、多くの状況において血管新生を予防するために十分ではない。そのため、複数の血管新生因子の活性を調節することにより血管新生を抑制することができる治療が望ましく、新たな抗血管新生遺伝子が必要である。
その発現を抑制することにより腫瘍血管新生を抑制することができるということが発見されている遺伝子としては、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)がある。また、腫瘍血管新生に関連した遺伝子として、PDGF、MMP、FGF、TP(Thymidine Phosphorylase; PD-ECGF, Platelet-derived Endothelial Cell
Growth Factor)などが報告されている。
特許公表2001−501471 特許公開2008−000003
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本発明は、腫瘍血管新生抑制剤開発におけるスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、腫瘍血管新生とTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現との間に相関があること、およびその発現機能を抑制することにより、腫瘍血管新生の重要な病態指標である腫瘍における血管新生を抑制することを見出した。
すなわち、本発明は、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を選択する方法であって、
試験物質を細胞と接触させ、細胞におけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定し、そして、試験物質と接触させたときに接触させていないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されている場合に、その試験物質を腫瘍血管新生抑制剤の候補物質として選択する、
の各工程を含む方法を提供する。
別の観点においては、本発明は、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を選択する方法であって、癌移植ゼブラフィッシュに試験物質を投与し、ゼブラフィッシュ由来TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定し、そして、試験物質を投与したときに投与していないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されている場合に、その試験物質を腫瘍血管新生抑制剤の候補物質として選択する、
の各工程を含む方法を提供する。
さらに別の観点においては、本発明は、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するリボザイム、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するsiRNAからなる群より選択される物質を有効成分として含有する腫瘍血管新生抑制剤を提供する。
本発明のスクリーニング方法により選択された物質は、腫瘍血管新生の抑制を有する薬剤の候補物質として有用である。
腫瘍血管新生誘導した癌移植ゼブラフィッシュにおけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現量を示す。縦軸はハウスキーピング遺伝子であるACTIN,BETAの発現量と比較した際の各遺伝子(TRIB2・ZMYND8)の相対的発現量である。 癌移植モデルゼブラフィッシュに対し、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した時の画像を示す。 癌移植モデルゼブラフィッシュに対し、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した時の、腫瘍血管新生の発生割合を示す。 通常の(癌移植をしていない)ゼブラフィッシュに対し、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的アンチセンスオリゴヌクレオチドのみを投与した時の血管構造を示す。
本発明では、ゼブラフィッシュに癌細胞の移植を行い腫瘍血管新生が認められた個体においてTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現量が増加することが見いだされた。また、下記の実施例に示されるように、癌細胞移植したゼブラフィッシュにTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを癌細胞と同時投与すると、腫瘍血管新生が抑制されることが見いだされた。これらの結果から、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子は腫瘍血管新生の治療標的となりうること、およびTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現の抑制を指標として、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を同定しうることが明らかとなった。なお、図4に示すように、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現の抑制は正常血管新生を阻害しない。
ZMYND8(zinc finger, MYND-type
containing 8)は、RACK7とも称され、C−キナーゼのための受容体タンパク質である。ヒトのZMYND8の遺伝子および蛋白質の配列はNCBI:NM_0183047.1に記載されている。この蛋白質は、プロテインキナーゼCβIと結合する。このタンパク質はブロモドメインと2つのジンクフィンガーをもち、転写調節因子であると考えられている(非特許文献1)。
TRIB2(tribbles homolog 2 (Drosophila))は、TRB2とも称され、Tribblesファミリーに属しているタンパク質である。Tribblesはショウジョウバエにおいて単離されたキナーゼ様ドメインを持つ分子であり、哺乳類TribblesオルソログとしてTRB1、TRB2、TRB3が同定されている。哺乳類では、TribblesオルソログがAktやMAPキナーゼ経路を制御することが報告されており、細胞内シグナル伝達系の調節因子としての機能が明らかになりつつある(非特許文献2)。ヒトのTRIB2の遺伝子および蛋白質の配列はNCBI:NM_021643.3に記載されている。この蛋白質は、相互作用して、いくつかの生理的で病理学的プロセスにおいてシグナル形質導入経路の活動を調整し、主に造血器官の細胞のアポトーシスを誘発することが報告されている(非特許文献3)。
これまで、TRIB2、ZMYND8の両遺伝子またはこれら蛋白質の発現と腫瘍血管新生との関連性についての報告はない。
スクリーニング方法
1つの観点においては、本発明は、多様な試験物質から、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、試験物質が試験管内または細胞内でTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を抑制する能力を測定することにより評価することができる。試験物質がTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を抑制する能力は、試験物質をTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子を発現する細胞と接触させて、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子のmRNA量または蛋白質量を測定することにより評価することができる。試験物質と接触させたときに、接触させないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されれば、その試験物質は腫瘍血管新生抑制剤の候補物質であると考えられる。
試験物質は、種々の合成または天然の化合物ライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、オリゴヌクレオチドライブラリー、ペプチドライブラリー等のライブラリーから得ることができる。また、細菌、真菌類、藻類、植物、動物等の天然物からの抽出物やその部分精製物を試験物質として用いてもよい。
TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定するためには、RT−PCR法、RNA増幅法、ISH(in situ hybridization)法、ISP(in situ PCR)法、レーザーマイクロダイセクション法、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法(LCM)などの、当該技術分野においてよく知られる遺伝子発現分析法を用いることができる。また、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の蛋白質量は、抗TRIB2抗体または抗ZMYND8抗体を用いるELISA法やウエスタンブロット法などにより測定することができる。ヒト、ラット、マウス、ゼブラフィッシュなどのTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子およびこれをコードする遺伝子の配列は公表されている。
TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子を発現する細胞としては、各種の組織に由来する初代培養組織や培養細胞株などの任意のものを用いることができる。TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子を強制発現させるよう遺伝子組換えされた細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等を用いてもよい。
1つの好ましい態様においては、試験物質をゼブラフィッシュに投与して、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を調べる。ゼブラフィッシュ(属名Danio,例えばDanio rerio)とはインド原産の小型の熱帯魚である。主要臓器・組織の発生・構造などがヒトと良く似ているうえ、身体が透明であるため各種臓器および血管の形態を肉眼で観察することができるため、モデル動物として新薬候補化合物のスクリーニングに用いるのに適している。
本発明の方法には、基本的に癌細胞を移植したゼブラフィッシュを用いるが、より大型のモデル動物や、遺伝子組換や化学物質による発癌モデル動物(含むゼブラフィッシュ)を用いてもよい。試験物質をゼブラフィッシュに投与する方法としては、候補物質が水溶性である場合には飼育水中に溶解すればよく、水不溶性である場合には適当な界面活性剤との複合体またはエマルジョンの形で飼育水中に懸濁すればよい。あるいは、ゼブラフィッシュの餌に混ぜて経口投与してもよく、注射などにより非経口投与してもよい。
本発明のスクリーニング方法にゼブラフィッシュを用いることの利点は、試験物質がTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現に及ぼす影響を測定できると同時に、毒性試験も行うことができることである。さらに、体重の変化、血管形成の変化、心臓などの各種臓器の形態や機能の変化、各種マーカー遺伝子の発現量も測定することができる。
このようにして、本発明のスクリーニング方法により選択された物質は、腫瘍血管新生の抑制を有する薬剤の候補物質として有用である。
腫瘍血管新生抑制剤
別の観点においては、本発明は、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を抑制する物質を有効成分として含有する腫瘍血管新生抑制剤を提供する。遺伝子の発現を抑制しうる抑制剤としては、例えば、
アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、RNA干渉(RNAi)を引き起こす分子(例えば、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNA)等の、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現(転写および/または翻訳)の抑制剤を挙げることができる。このような核酸は、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の既知のヌクレオチド配列情報に基づいて容易に設計し製造することができ、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子をコードするmRNAに結合しその発現を抑制することができる。アンチセンス、リボザイム技術およびRNAi技術を用いて遺伝子発現を制御する一般的方法、またはこのようにして外因性遺伝子を発現させる遺伝子治療方法は当該技術分野においてよく知られている。
アンチセンスオリゴヌクレオチドとは、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子をコードするmRNAと相補的な配列を有する核酸分子またはその誘導体を表す。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、mRNAと特異的に結合し、転写および/または翻訳を抑制することにより蛋白質の発現を抑制する。結合はワトソン・クリックまたはフーグスティーン型の塩基対相補性によるものでもよく、トリプレックス形成によるものでもよい。
リボザイムとは、標的とする核酸配列を切断しうる触媒的特性を有するRNA分子を表す。リボザイムは、一般に、エンドヌクレアーゼ、リガーゼまたはポリメラーゼ活性を示す。種々の二次構造のリボザイム、例えばハンマーヘッドタイプおよびヘアピンタイプのリボザイムが知られている。RNA干渉(RNAi)とは、二本鎖RNA分子を用いて標的遺伝子をサイレンシングする手法をいう。
本発明の腫瘍血管新生抑制剤は、被験者にそのまま投与することも可能であるが、通常、医薬で用いられる担体を用いて製剤して投与する。製剤に用いる担体としては、製剤分野で常用されるいずれのものをも用いることができ、例えば、滅菌水、生理食塩水、賦形剤、安定剤、酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、結合剤等が好ましく用いられる。さらに、本発明の腫瘍血管新生抑制剤をマイクロカプセルや高分子ゲル中に封入して、徐放性製剤としてもよい。本発明の腫瘍血管新生抑制剤の投与経路としては、経口投与、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、体腔内投与等が挙げられる。投与量は、腫瘍血管新生抑制剤の種類や投与経路、疾患の程度等に応じて適宜選択されるが、通常、0.1μg〜1000mg/kg、好ましくは、1μg〜10mg/kgである。
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1 腫瘍血管新生誘導ゼブラフィッシュにおけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現
ゼブラフィッシュ稚魚(AB系統、受精後2日齢)に、蛍光色素でラべルしたヒト癌細胞(前立腺癌:DU145)を移植し(腫瘍血管新生誘導)、2日後に回収した。回収した個体からRNeasy Lipid Tissue Mini Kit(キアゲン社)を用いて、total RNAを精製、Super Script III(インビトロジェン社)を用いて、cDNAを合成し、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現量を定量的PCR法にて測定した。
ゼブラフィッシュTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオタイドの配列は、National Center for Biotechnology Informationに掲載されている、LOCUS NM_021643.3(TRIB2)、LOCUS NM_012408.3(ZMYND8)を使用し、プライマーをデザインし、PCR実験に使用した。
TRIB2プライマーの配列情報
フォワードプライマー:(配列番号1)GACGTGTGGAGCTTAGGAGTGA
リバースプライマー:(配列番号2)GTGTTAGCGTCTCTGGGATGCTA
ZMYND8プライマーの配列情報
フォワードプライマー:(配列番号3)TTTCGCACGCCCTACACA
リバースプライマー:(配列番号4)CCCACTGGACACCATGCTTT
結果を図1に示す。腫瘍血管新生誘導、および非誘導群におけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現量を、ハウスキーピング遺伝子であるACTIN,BETAの発現量で正規化した相対値で示した。TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現量は、腫瘍血管新生誘導群では、腫瘍血管新生誘導を行っていない群に比較し、TRIB2では約2倍、ZMYND8では約3倍の有意な増加(P<0.01)を認めた。
以上の結果から、腫瘍血管新生を誘導した動物群では、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現量は増加することが明らかとなった。
実施例2 TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現抑制が腫瘍血管新生に及ぼす影響
血管内皮細胞が特異的に蛍光(EGFP)を発するゼブラフィッシュ稚魚(AB系統あるいはNacre系統に、受精後2日齢)にヒト癌細胞(前立腺癌:DU145)を移植し4〜8ng量の、ゼブラフィッシュTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを同時投与した。
ゼブラフィッシュTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列は、National Center for Biotechnology Informationに掲載されている、LOCUS NM_021643.3(TRIB2)、LOCUS NM_012408.3(ZMYND8)、mRNAの転写開始点に結合する相補的配列とした。TRIB2モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドとZMYND8モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列情報は下記のとおりである。
TRIB2(配列番号5)GCCATCTTGGCCTCCTCATGTCCAT
ZMYND8(配列番号6)TGGGACTGGATCTGGTATGTTCAT
ネガティブコントロール群として、ゼブラフィッシュには存在しない遺伝子(ヘモグロビン異常症であるサラセミアにおける赤血球β−グロビンpre−mRNA中705番目の部位のスプライシング異常により生じた配列)を標的としたコントロールモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド(std MO)と、ポジティブコントロール群として、VEGF(LOCUS NM_131408)のmRNAの転写開始点に結合する相補的配列としたVEGFモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを癌細胞と同時投与した。コントロールモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドとVEGFモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列情報は下記のとおりである。
コントロールモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド;CCTCTTACCTCAGTTACAATTTATA(配列番号7)
VEGFモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド;TAAGAAAGCGAAGCTGCTGGGTATG(配列番号8)
2日後、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現抑制群(TRIB2 MO、ZMYND8 MO)における腫瘍血管新生が、コントロールモルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチド投与群(Std MO)に比べて抑制された(図2)。
2日後の腫瘍血管新生の発生頻度を測定した結果、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現抑制群(TRIB2 MO、ZMYND8 MO)では、Std MO投与群に比べて、有意に抑制された。なお、ポジティブコントロールであるVEGF MO投与群は、腫瘍血管新生を有意に抑制した(図3、P<0.01)。
実施例3 通常ゼブラフィッシュ(癌細胞移植なし)におけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子発現抑制
血管内皮細胞が特異的に蛍光(EGFP)を発するゼブラフィッシュ稚魚(AB系統あるいはNacre系統に、受精後2日齢)に、4〜8ng量の、ゼブラフィッシュTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した。
2日後、TRIB2 遺伝子またはZMYND8遺伝子特異的モルフォリノアンチセンスオリゴヌクレオチドによる血管構造の異常は検出されなかった(図4)。
以上の結果から、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現抑制は、正常血管新生阻害は阻害せず、腫瘍血管新生を特異的に抑制することが明らかとなった。また、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現抑制は、血管新生以外の影響も認められず、毒性はクリアできているものと考えられた。
本発明は、腫瘍血管新生抑制剤の候補物質のスクリーニングならびに腫瘍血管新生の治療に有用である。

Claims (3)

  1. 腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を選択する方法であって、
    試験物質を細胞と接触させ、
    細胞におけるTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定し、そして、
    試験物質と接触させたときに接触させていないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されている場合に、その試験物質を腫瘍血管新生抑制剤の候補物質として選択する、
    の各工程を含む方法。
  2. 腫瘍血管新生抑制剤の候補物質を選択する方法であって、
    ゼブラフィッシュに試験物質を投与し、
    TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現を測定し、そして、
    試験物質を投与したときに投与していないときと比較してTRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子の発現が抑制されている場合に、その試験物質を腫瘍血管新生抑制剤の候補物質として選択する、
    の各工程を含む方法。
  3. TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するリボザイム、TRIB2遺伝子またはZMYND8遺伝子に対するsiRNAからなる群より選択される物質を有効成分として含有する腫瘍血管新生抑制剤。
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