JP2012117895A - 金属検出用センサ、金属吸着方法、及び金属濃度定量方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】公定法に準拠し抽出した液、または、それに準拠し抽出した被検査液、さらに濃縮して、対象とする元素の濃度を濃縮した液、もしくは、検査対象としない元素の濃度を相対的に下げる、元素(イオン物質)を選択およびまたは濃縮した液を被検査液として用いて、ラボ分析や現場分析にも使用可能な、検出検体を得る金属検出用センサを提供する。
【解決手段】ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴とする金属検出用センサである。
【選択図】図1
【解決手段】ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴とする金属検出用センサである。
【選択図】図1
Description
本発明は、環境現場で抽出した溶液を多孔性交互積層膜に吸着させるための金属検出用センサに関し、金属を効率よく吸着させるための活性化処理およびまたは電位印加工程を含み、エネルギー分散型蛍光X線及び/又はTOF−SIMS、電気化学的操作で定性定量する方法である。
大気汚染、水質汚染、土壌汚染などにより、我々を取り巻く環境が受ける影響が懸念されている。このため、環境改善、維持に寄与できる技術開発は重要になり、なかでも微量成分の簡易・迅速分析のニーズは高まりつつある。これまでの環境に配慮した歴史を振り返ると、1967年(昭和42年)に公害対策基本法が制定され、この理念に基づいて、1991年(平成3年)に土壌の環境基準(環境庁告示第46号)、1999年(平成11年)には重金属等に係る土壌汚染調査・対策指針および運用基準、2002年(平成14年)には、土壌汚染対策法が制定された。
これ以降、工場跡地などの土壌汚染調査において、対策費用の低減と分析期間の短縮の要求が高まりつつある(例えば、非特許文献1参照)。このため、従来ラボ分析で用いられてきた原子吸光光度計やICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer;高周波誘導結合プラズマ質量分析計)といった高額な装置ではなく、コスト低減が可能で、しかもオンサイトで測定を可能とする卓上蛍光X線法、ボルタンメトリーやなかでもストリッピングといった電気化学測定手法(特許文献1参照)、比色や吸光光度計などの光学的分析手法が開発され、簡易分析手法として広く知られるようになりつつある。いずれにおいても、その試料の前処理は、公定法に準拠することが望ましいが、必ずしも、各種測定手法が適合できるとは限らない現状にある。
これ以降、工場跡地などの土壌汚染調査において、対策費用の低減と分析期間の短縮の要求が高まりつつある(例えば、非特許文献1参照)。このため、従来ラボ分析で用いられてきた原子吸光光度計やICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer;高周波誘導結合プラズマ質量分析計)といった高額な装置ではなく、コスト低減が可能で、しかもオンサイトで測定を可能とする卓上蛍光X線法、ボルタンメトリーやなかでもストリッピングといった電気化学測定手法(特許文献1参照)、比色や吸光光度計などの光学的分析手法が開発され、簡易分析手法として広く知られるようになりつつある。いずれにおいても、その試料の前処理は、公定法に準拠することが望ましいが、必ずしも、各種測定手法が適合できるとは限らない現状にある。
折角の簡易分析で、オンサイトで使用可能であるのに、例えば、土壌から重金属を溶出する前処理抽出では、6時間振盪(しんとう)が求められることから、結局ラボ分析に頼らざるを得ないため、たとえばボーリング作業の中断など、現場での調査進捗が改善できない状況が発生する。このため、その改善方法として、マイクロ波や超音波振動といった電磁的機械的方法(例えば、特許文献2参照)、薬液添加による方法(例えば特許文献3参照)が提案されている。
また、分解能が得られない場合は、試料の濃縮技術が必要となるが、その場合は、溶媒抽出法、共沈法、固相抽出法が有効であり、なかでも固抽出法が、試料の濃縮率を上げやすいとして、ディスクタイプの濃縮方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。その方法は、非常に優れた方法ではあるが、現場で抽出液を濃縮するには、キレートディスクのコンディショニング作業の他、薬品の準備、pHメータ、減圧装置などを準備する必要があり、また充分な知識も必要である。誰もが現場に持ち込んで実施するのは困難である。
中條邦英:土壌中重金属等の簡易測定技術の活用範囲と活用事例、第10回効率的環境汚染測定・評価技術フォーラムセミナ(平成21年9月)
栗山清治:キレートディスクを用いた固相抽出法による環境水中の微量元素の抽出、(社)日本環境測定分析協会発行『環境と測定技術』、vol.31、No.5、(2004年5月)
Wiley-VCM 出版:Multilayer Thin Films, pp134-137.
土壌汚染対策として、重金属の微量分析を現場で迅速に定量分析するための簡易分析法が開発されている。その普及を図るには、公定法に準拠した分析方法に基づくラボ分析、分析感度が得られない場合においては、広く用いられる濃縮方法にも対応しつつ、現場でも、簡易分析に使用可能な検出検体を得る必要がある。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、公定法に準拠し抽出した液、それに準拠して抽出した被検査液、さらに濃縮して対象とする元素の濃度を濃縮した液、又は検査対象としない元素の濃度を相対的に下げる、元素(イオン物質)を選択及び/又は濃縮した液を被検査液として用いて、ラボ分析や現場分析にも使用可能な、検出検体を得る金属検出用センサ、該金属検出用センサに金属を吸着させるための金属吸着方法、並びに該金属検出用センサを用いて金属濃度を定量する金属濃度定量方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極の最外層を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴とする金属検出用センサ。
(1)ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極の最外層を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴とする金属検出用センサ。
(2)作用電極として、導電性を有する粒子を含むペーストが被覆もしくは単独で形成されたことを特徴とする前記(1)に記載の金属検出用センサ。
(3)参照電極として、導電性を有する粒子を含むペーストが被覆もしくは単独で形成されたことを特徴とする前記(1)に記載の金属検出用センサ。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、金属吸着直前に、前記金属検出用センサを活性化液に浸漬し、少なくとも作用電極上に被覆された交互積層膜に修飾された官能基を活性化させた状態とした後に、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
(6)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、被検査液に浸漬し、かつ作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
(7)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属をエネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
(8)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属をTOF−SIMSで分析し、精密質量とそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
(9)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属を電気化学的操作で分析し、酸化電位及び/又は還元電位とその検出電流値およびまたは微分およびまたは積分量から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
(10)前記(7)〜(9)のいずれかに記載の金属濃度定量方法をそれぞれ組み合わせて、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
本発明によれば、公定法に準拠し抽出した液、それに準拠して抽出した被検査液、さらに濃縮して対象とする元素の濃度を濃縮した液、又は検査対象としない元素の濃度を相対的に下げる、元素(イオン物質)を選択及び/又は濃縮した液を被検査液として用いて、ラボ分析や現場分析にも使用可能な、検出検体を得る金属検出用センサ、該金属検出用センサに金属を吸着させるための金属吸着方法、並びに該金属検出用センサを用いて金属濃度を定量する金属濃度定量方法を提供することができる。
<金属検出用センサ>
本発明の金属検出用センサは、ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極の最外層を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴としている。
以下に、本発明の金属検出用センサについて詳述する。
本発明の金属検出用センサは、ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極の最外層を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴としている。
以下に、本発明の金属検出用センサについて詳述する。
本発明の金属検出用センサの構造を図1に示す。図1(a)は断面図であり、同図(b)は電極および端子部を含む外層の上面図である。また、同図(c)は、電極および端子部を、内層の配線引き回し層と電気的に接続するためのビアパターンを示す上面図であり、同図(d)は、電極および端子部を内層で電気的に接続するための引き回し配線層の配線パターン図である。なお、同図(a)の断面図においては、同図(b)に示す破線に沿って切断したときの断面を示している。
金属検出用センサ10は、ベース絶縁基材11上に、電極12及び端子部13からなる外層を有し、電極12及び端子部13が形成されていない領域には保護膜15が形成されている。電極12の一部は導電性ペースト層17により被覆されており、さらにその一部は交互積層膜18で被覆されている。
ベース絶縁基材11の内部には引き出し配線16が形成されており、各電極12及び端子部13は、それぞれ、ビア導通接続部14を介して引き出し配線16と導通している。これら、電極12及び端子部13と、引き出し配線16との接続状態を示したのが図1(d)であり、同図においては、電極12及び端子部13と、引き出し配線16とがそれぞれ同一面内に位置することを示すものではない。
ベース絶縁基材11の内部には引き出し配線16が形成されており、各電極12及び端子部13は、それぞれ、ビア導通接続部14を介して引き出し配線16と導通している。これら、電極12及び端子部13と、引き出し配線16との接続状態を示したのが図1(d)であり、同図においては、電極12及び端子部13と、引き出し配線16とがそれぞれ同一面内に位置することを示すものではない。
また、本発明の金属検出用センサは、図1(b)において「ABC」で示すように必要に応じてロゴ等を入れることができる。このような領域を設けることができるのは、上述のように、電極直下から、ビア導通接続部14により、導通をとって内層につなげる構造としたからである。外層上に、電極を開口させた保護膜15を形成した場合に、引き出し配線が同一面にあると、保護膜の位置ずれによって電極面積が一定にならないことがあるが、上記にように、導通を直下から引き出すようにすればそのような問題を回避することができる。また、図1(d)に示すように、引き回し配線16を内層にもってくることによって、引き出し配線を太くして、電流の印加許容量を増大することもできる。同図(d)で示す内層パターンと、同図(a)で示す外層パターンを接続するには、通常、内層回路を形成してから後に、絶縁層を形成し、所定の箇所に穴あけをするビルドアップ工法が広く一般に知られているが、この工法であると電極が平滑にならないケースが多い。そこで、本発明では、Bステージの基材に穴あけをして銅などを含む導電ペーストを充填し、その基材を介して銅箔をプレスした後回路加工をする工程を経る。また、反りを吸収することや、導通抵抗を低く保ち、接続を確かなものとするために、電極あたりに複数の穴を設けることが好ましい。また、電極間での接続抵抗の著しい差を緩和することができる。
以上のようなベース絶縁基材を製造する材料としては、プリント基板製造で一般に用いられる、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は熱可塑性樹脂などからなる基材や、または樹脂硬化物の両面もしくは、片面に銅などの金属層が設けられた基板を適宜組み合わせて用いることが好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、シアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート樹脂、フラン樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、などのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを加熱し半硬化状にしたもの、あるいは、硬化したものが使用できる。中でも、E679シリーズ(配線板用材料、日立化成工業株式会社製)が好適に使用することができる。
前記光硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、シリコーンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、などのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その光開始剤、硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを露光あるいは加熱し半硬化状にしたもの、あるいは硬化したものが使用できる。
前記熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、六フッ化ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシベンゾエート樹脂、液晶ポリマなどのうちから選択された1種以上と、必要な場合に、その硬化剤、硬化促進剤などを混合したものを加熱し半硬化状にしたもの、あるいは硬化したものが使用できる。
以上の絶縁樹脂は、異種の樹脂の混合体からなる絶縁樹脂組成物であってもよく、さらに、絶縁樹脂組成物は充填剤としてシリカや金属酸化物などの無機フィラーを含むものでもよい。無機フィラーはニッケル、金、銀などの導電粒子、あるいはこれらの金属をめっきした樹脂粒子であってもよい。
なお、熱可塑性液晶ポリマとしては、ジャパンゴアテックス株式会社製、BIAC−Cが好適に用いることができる。
なお、熱可塑性液晶ポリマとしては、ジャパンゴアテックス株式会社製、BIAC−Cが好適に用いることができる。
また、引き出し配線に使用する金属としては、銅の他、アルミ、鉄、ニッケルその他金属、これらの合金が使用可能であるが、本発明による埋め込みビアで電気的に層間接続して使用する以外にも、スルーホールめっきやレーザビアを用いる場合もあるので、電解銅や圧延銅のいずれかの銅箔がよい。
上記の材料を用い、フォトリソ法で図1(d)に示す所定のパターンをエッチングで形成したのち、同図(c)に示すパターンを埋め込みビアとする半硬化の基材を介して、電解銅箔もしくは圧延銅箔をプレスする。銅箔の厚さは、通常、12μm、18μm、35μmから、適宜選択する。この銅層を同図(b)に示すパターンにエッチング加工して、その後、予め電極部に対応して、ドリルやルータで開口させた接着材つき基材もしくは接着性基材をプレスして、保護層を形成することができる。この電極部の開口は、電極より大きくして、クリアランスとよばれる間隙を設けることが望ましい。後に導電性ペーストを塗布する際に、適量を塗布することが容易となるからである。この後に、電極表面および端子部表面には、無電解めっき法および/または電解めっき法によりダイレクト金めっき、ニッケル金めっき、ニッケルパラジウム金めっき、銀めっき、および/または真空蒸着法により、純度の高い金の層を形成することが可能である。これにより、銅表面よりも酸化がしにくい表面を得ることができる。その他の方法では、ベンゾトリアゾールなどの防錆剤で、電極表面を処理してもよく、あるいは、図1(a)に示すように、導電性ペースト層17を形成してもよい。これには、導電性カーボンペーストや銀ペースト等を塗布乾燥することが望ましい。なかでも、導電性カーボンペーストや銀ペーストは、参照電極として用いることができるので適宜使い分けるほうが望ましい。本発明では、交互積層膜を形成する際に、表面電位が負の方向に大きいカーボンペーストの使用が望ましい。また、交互積層する前に、UV処理、プラズマ処理をして、表面を清浄および粗化することにより、交互積層の密着力を確実なものにすることが望ましい。プラズマ処理の条件は酸素供給下で、300w出力、30秒から60秒が望ましい。参照電極、対極電極、作用電極の位置は、任意に選定してよいが、交互積層では、後述するようにポリカチオン溶液、ポリアニオン溶液に交互に浸漬するので、端子部が濡れないように、端子部から遠いところに、極力作用電極を配置するようにすることが望ましい。
なお、端子部の基材厚さは、使用するコネクタに合わせて設計することができる。その厚さは、0.3mm±0.05mmとすることが好ましい。
なお、端子部の基材厚さは、使用するコネクタに合わせて設計することができる。その厚さは、0.3mm±0.05mmとすることが好ましい。
[交互積層膜]
金属検出用センサとするために、所定の電極の最外層を覆うように、多孔質構造を有する交互積層膜を形成する。図1(a)の交互積層膜18は、参照電極や対極電極になる電極表面に形成してもよいが、参照電極は、交互積層膜での吸着があると表面電位が変化するので、作用電極となる電極部のみに形成することが望ましい。このとき複数の電極だけでなく、保護層の表面にも、交互積層膜が形成されることがあるが、基本的に、浸漬時に複数の電極が同時に交互積層膜に被覆されても、各電極の絶縁性は保たれる。もっとも、電極間の距離は充分に離しておく必要があり、沿面距離にして、0.5mm以上離せばよい。
金属検出用センサとするために、所定の電極の最外層を覆うように、多孔質構造を有する交互積層膜を形成する。図1(a)の交互積層膜18は、参照電極や対極電極になる電極表面に形成してもよいが、参照電極は、交互積層膜での吸着があると表面電位が変化するので、作用電極となる電極部のみに形成することが望ましい。このとき複数の電極だけでなく、保護層の表面にも、交互積層膜が形成されることがあるが、基本的に、浸漬時に複数の電極が同時に交互積層膜に被覆されても、各電極の絶縁性は保たれる。もっとも、電極間の距離は充分に離しておく必要があり、沿面距離にして、0.5mm以上離せばよい。
多孔質構造たる交互積層膜は、交互積層法により、ポリマのみ、あるいは、微粒子とポリマとを交互に積層して電極上に形成することが可能である。なお、ポリマのみを、ポリカチオン、ポリアニオンから選択して、ゲル状かつ多孔質層が得られることが知られている(特開2006−341475号公報参照)。このような方法で、pHを2〜4の間で調整して、内部にわたってカルボキシル基が修飾された、ゲル状かつ多孔質層も得られる(例えば非特許文献3参照)。また、この内部には、カルボキシル基の他に、アミノ基が形成されるものと推察される。これらの官能基は、金属を捕獲する能力が比較的高いと思われる。
本発明の一形態として、少なくとも表面に導電性カーボンを含む導電性電極表面に、カルボキシル基が修飾されたゲル状の多孔質層を交互積層にて形成した作用電極と、作用電極と参照電極に電圧を印加するための端子を設けた、ディスポーザルで使用するが挙げられる。
ポリアニオンとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負電荷を帯びることのできる官能基を有するものであり、たとえば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などが用いられる。また、ポリカチオンとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基などの正荷電を帯びることのできる官能基を有するもの、たとえば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリアクリルアミドおよびそれらを少なくとも1種以上を含む共重合体などを用いることができる。
微粒子としては、無機系の微粒子を用いることができる。例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、シリカ(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化ニオブ(Nb2O5)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、セリア(CeO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を混合して使用することができる。
電極表面に、多孔質構造を有する交互積層膜を形成する方法としては、例えば、ポリカチオンの溶液に浸漬する工程と、ポリアニオンの溶液に浸漬する工程を交互に繰り返す方法などがある。また、電極表面に多孔質構造を有する交互積層膜を形成する方法としては、例えば、微粒子分散液に浸漬する工程と、その微粒子の表面電荷と反対電荷のイオン性を有するポリマ溶液に浸漬する工程とを交互に繰り返す方法などがある。このように工程を繰り返す繰り返し回数は、20〜200とすることが好ましい。さらには、密着強度確保や製造コスト等から50回前後が好ましい。
電極表面に形成する交互積層膜の厚みとしては、10〜1000nmが好ましく、50nm以上であれば、電極表面へのめっきやアマルガム化を防止できるという効果があり、500nm以下であれば、外部電力によりイオン吸脱着ができるという効果がある。
以上の交互積層膜を形成した金属検出用センサの外観は青光りしているよう視認される。
電極表面に形成する交互積層膜の厚みとしては、10〜1000nmが好ましく、50nm以上であれば、電極表面へのめっきやアマルガム化を防止できるという効果があり、500nm以下であれば、外部電力によりイオン吸脱着ができるという効果がある。
以上の交互積層膜を形成した金属検出用センサの外観は青光りしているよう視認される。
<金属吸着方法>
本発明の金属吸着方法は、以上の本発明の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、(1)前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様、(2)金属吸着直前に、前記金属検出用センサを活性化液に浸漬し、少なくとも作用電極上に被覆された交互積層膜に修飾された官能基を活性化させた状態とした後に、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様、(3)被検査液に浸漬し、かつ作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様とがある。
本発明の金属吸着方法は、以上の本発明の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、(1)前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様、(2)金属吸着直前に、前記金属検出用センサを活性化液に浸漬し、少なくとも作用電極上に被覆された交互積層膜に修飾された官能基を活性化させた状態とした後に、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様、(3)被検査液に浸漬し、かつ作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して、金属を交互積層膜に吸着させた状態とする態様とがある。
前記(1)の態様においては、金属検出センサをそのまま被検査液に浸漬して金属を交互積層膜に吸着させればよい。
前記(2)の態様においては、金属検出センサを被検査液に浸漬する直前に(金属吸着直前に)、活性液に浸漬し、交互積層膜を活性化する。ここで、「金属吸着直前」とは、被検査液に浸漬する 0 〜 60分前のことを意味する。この時間内で、活性液に浸漬するとともに、活性液の染み込んだ交互積層膜が被検査液に浸漬する前に乾燥しない時間を考慮する必要がある。活性液及び活性化の詳細については後述する。
前記(3)の態様においては、作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して金属の吸着を図るが、印加する電位としては−1.23〜1.23Vとすることが好ましく、−1.0〜1.0Vとすることがより好ましい。この範囲で、検出したい重金属の酸化電位もしくは還元電位を含むように掃引電圧方向と範囲を決めることが好ましい。
いずれの態様であっても、交互積層膜に金属が吸着するが、積極的に吸着を促進する(2)及び(3)の態様が好ましい。
前記(2)の態様においては、金属検出センサを被検査液に浸漬する直前に(金属吸着直前に)、活性液に浸漬し、交互積層膜を活性化する。ここで、「金属吸着直前」とは、被検査液に浸漬する 0 〜 60分前のことを意味する。この時間内で、活性液に浸漬するとともに、活性液の染み込んだ交互積層膜が被検査液に浸漬する前に乾燥しない時間を考慮する必要がある。活性液及び活性化の詳細については後述する。
前記(3)の態様においては、作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して金属の吸着を図るが、印加する電位としては−1.23〜1.23Vとすることが好ましく、−1.0〜1.0Vとすることがより好ましい。この範囲で、検出したい重金属の酸化電位もしくは還元電位を含むように掃引電圧方向と範囲を決めることが好ましい。
いずれの態様であっても、交互積層膜に金属が吸着するが、積極的に吸着を促進する(2)及び(3)の態様が好ましい。
[交互積層膜の活性化方法]
金属検出用サンサの作用電極上に、前述の交互積層膜が形成された後、使用するまでは、ケースに保管もしくは、減圧シールされた状態にしておくが、被検査液を作用電極上に、添加もしくは、浸漬しても本来有する吸着能が発現しないことがある。これは、乾燥状態にあり、官能基が活性化していない場合である。そこで、カルボキシル基の水素イオンが脱離した状態、及び/又は、アミノ基に水素イオンが結合した状態にして交互積層膜を活性化することが望ましい。このために、活性液として、pHが弱アルカリpH7.5〜弱酸性pH6.5までの間にpHを調整した0.1Nの酢酸アンモニウム溶液を用意し、これに少なくとも1分以上浸漬することが望ましい。その後、被検査液に浸漬すると、金属イオンの吸着が促進される。図2は、活性化前の交互積層膜を示し、輪郭のはっきりした多孔表面が支配的であるが、活性化後には、わずかに表面が膨潤したような性状が発現すると考えられる。活性化処理をしないで直接被検査液に浸漬した後、純水でドラックアウトして得た像も図3のような状況であるから金属は付着していない。一方、図4は、活性化処理後に、同様の条件で、直接被検査液に浸漬した後、純水でドラックアウトした像である。活性化後に、付着物が多いことが分かる。
なお、活性液としては、酢酸アンモニウム溶液の他、酢酸ナトリウム、アセトン、イソプロビルアルコール等も使用することができる。
金属検出用サンサの作用電極上に、前述の交互積層膜が形成された後、使用するまでは、ケースに保管もしくは、減圧シールされた状態にしておくが、被検査液を作用電極上に、添加もしくは、浸漬しても本来有する吸着能が発現しないことがある。これは、乾燥状態にあり、官能基が活性化していない場合である。そこで、カルボキシル基の水素イオンが脱離した状態、及び/又は、アミノ基に水素イオンが結合した状態にして交互積層膜を活性化することが望ましい。このために、活性液として、pHが弱アルカリpH7.5〜弱酸性pH6.5までの間にpHを調整した0.1Nの酢酸アンモニウム溶液を用意し、これに少なくとも1分以上浸漬することが望ましい。その後、被検査液に浸漬すると、金属イオンの吸着が促進される。図2は、活性化前の交互積層膜を示し、輪郭のはっきりした多孔表面が支配的であるが、活性化後には、わずかに表面が膨潤したような性状が発現すると考えられる。活性化処理をしないで直接被検査液に浸漬した後、純水でドラックアウトして得た像も図3のような状況であるから金属は付着していない。一方、図4は、活性化処理後に、同様の条件で、直接被検査液に浸漬した後、純水でドラックアウトした像である。活性化後に、付着物が多いことが分かる。
なお、活性液としては、酢酸アンモニウム溶液の他、酢酸ナトリウム、アセトン、イソプロビルアルコール等も使用することができる。
<金属濃度定量方法>
本発明の金属濃度定量化方法は、既述の本発明の金属検出用センサを用いて、(1)少なくとも作用電極上に吸着した金属をエネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様、(2)少なくとも作用電極上に吸着した金属をTOF−SIMSで分析し、精密質量とそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様、(3)少なくとも作用電極上に吸着した金属を電気化学的操作で分析し、酸化電位およびまたは還元電位とその検出電流値およびまたは微分およびまたは積分量から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様とがある。
また、以上の(1)〜(3)の態様の金属濃度定量方法をそれぞれ組み合わせて、被検査液に含まれる金属濃度を定量することもできる。
本発明の金属濃度定量化方法は、既述の本発明の金属検出用センサを用いて、(1)少なくとも作用電極上に吸着した金属をエネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様、(2)少なくとも作用電極上に吸着した金属をTOF−SIMSで分析し、精密質量とそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様、(3)少なくとも作用電極上に吸着した金属を電気化学的操作で分析し、酸化電位およびまたは還元電位とその検出電流値およびまたは微分およびまたは積分量から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する態様とがある。
また、以上の(1)〜(3)の態様の金属濃度定量方法をそれぞれ組み合わせて、被検査液に含まれる金属濃度を定量することもできる。
以上のいずれの態様においても、本発明の金属検出用センサの少なくとも作用電極に吸着した金属を分析するのであるが、それぞれの態様において分析方法が異なる。
前記(1)の態様においては、エネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する。
ここで、被検査液に存在する元素の種類、pHによって吸着する元素の種類、吸着量が変化する。このため、本来目的とする、現場測定向きのポテンシオスタット単独では、予めデータベースなくして定量はできないと考えられる。そこで、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較するのである。データベースの構築においては、エネルギー分散型蛍光X線分析のデータ及びTOF−SIMS分析のデータが不可欠であると考えられる。
また、エネルギー分散型蛍光X線分析では、低濃度での定量が困難であるので、例えば、予めキレートディスクに、諸元素を含む標準液を調製し、濃度、pHを調整して、通液量を変化させてディスク内に濃縮後、乾燥して真空モードでデータを蓄積することが好ましい。また、透過液をICP−MSによって、透過元素濃度を測定して、ディスク内に捕獲された元素量を測定する。そして、各元素の捕獲量に対応したX線強度(cps/μA)を測定する。一方、交互積層膜に吸着された元素のX線強度から、被検査液に本来あった元素の濃度が推察される。ただし、これは、各元素の吸着確率がそれぞれの元素で同じであると仮定している。このため、TOF-SIMS分析による精密質量に対する、カウンタ値のデータにおける、各元素での値の比が、交互積層膜への吸着確率比となる。このような、考察から、交互積層膜に吸着された元素のX線強度を吸着確率で除算することによって被検査液の濃度を特定することができる。
前記(1)の態様においては、エネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する。
ここで、被検査液に存在する元素の種類、pHによって吸着する元素の種類、吸着量が変化する。このため、本来目的とする、現場測定向きのポテンシオスタット単独では、予めデータベースなくして定量はできないと考えられる。そこで、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較するのである。データベースの構築においては、エネルギー分散型蛍光X線分析のデータ及びTOF−SIMS分析のデータが不可欠であると考えられる。
また、エネルギー分散型蛍光X線分析では、低濃度での定量が困難であるので、例えば、予めキレートディスクに、諸元素を含む標準液を調製し、濃度、pHを調整して、通液量を変化させてディスク内に濃縮後、乾燥して真空モードでデータを蓄積することが好ましい。また、透過液をICP−MSによって、透過元素濃度を測定して、ディスク内に捕獲された元素量を測定する。そして、各元素の捕獲量に対応したX線強度(cps/μA)を測定する。一方、交互積層膜に吸着された元素のX線強度から、被検査液に本来あった元素の濃度が推察される。ただし、これは、各元素の吸着確率がそれぞれの元素で同じであると仮定している。このため、TOF-SIMS分析による精密質量に対する、カウンタ値のデータにおける、各元素での値の比が、交互積層膜への吸着確率比となる。このような、考察から、交互積層膜に吸着された元素のX線強度を吸着確率で除算することによって被検査液の濃度を特定することができる。
前記(2)の態様においては、TOF−SIMSで分析し、精密質量とそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する。本態様においても、TOF−SIMSによる分析後、(1)と同様にして定量することができる。
前記(3)の態様においては、電気化学的操作で分析し、酸化電位及び/又は還元電位とその検出電流値およびまたは微分およびまたは積分量から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量する。
ここで、電気化学的操作は、例えば、ストリッピング法やパルスボルタンメトリ法が挙げられる。ストリッピング法は、前電解とストリッピングの二つの段階に分けて分析を行う方法である。例えば被検査液中に溶解している金属イオンの定量分析を行う場合、前電解では、参照電極の電位を基準として、金属イオンの還元が充分に行われる一定の電位を作用電極に与え、これにより作用電極上にその金属を析出付着させる。そして、この後、ストリッピングにおいて、参照電極の電位を基準として、作用電極に印加する電位を検出金属の酸化(溶解)が発生する電位の方へ電位を掃引する。この電位の掃引により、作用電極の電位が金属の酸化還元電位となると、作用電極上に付着していた金属が急激に酸化して溶解し始める。このとき、作用電極には大きな電流がながれ、この電流値を測定することにより被測定電解質溶液中に溶解していた金属の量を分析することができる。
一方、パルスボルタンメトリ法は、作用電極電位を直線的に掃引するのではなく、例えば電位を数mVから数十mVずつ階段状にステップし、電位のステップ印加直後に流れる充電電流が減衰してから、目的物質の電気化学反応により作用電極に流れる電流を測定する方法である。このパルスボルタンメトリ法は、前述したストリッピング法で電極上へ濃縮できない物質の分析を高感度で行いたいときに用いられる。パルスボルタンメトリ法は、サブμMの感度が得られているが、pMの感度を有するストリッピング法に比較すると感度は2桁以上小さい。
ここで、電気化学的操作は、例えば、ストリッピング法やパルスボルタンメトリ法が挙げられる。ストリッピング法は、前電解とストリッピングの二つの段階に分けて分析を行う方法である。例えば被検査液中に溶解している金属イオンの定量分析を行う場合、前電解では、参照電極の電位を基準として、金属イオンの還元が充分に行われる一定の電位を作用電極に与え、これにより作用電極上にその金属を析出付着させる。そして、この後、ストリッピングにおいて、参照電極の電位を基準として、作用電極に印加する電位を検出金属の酸化(溶解)が発生する電位の方へ電位を掃引する。この電位の掃引により、作用電極の電位が金属の酸化還元電位となると、作用電極上に付着していた金属が急激に酸化して溶解し始める。このとき、作用電極には大きな電流がながれ、この電流値を測定することにより被測定電解質溶液中に溶解していた金属の量を分析することができる。
一方、パルスボルタンメトリ法は、作用電極電位を直線的に掃引するのではなく、例えば電位を数mVから数十mVずつ階段状にステップし、電位のステップ印加直後に流れる充電電流が減衰してから、目的物質の電気化学反応により作用電極に流れる電流を測定する方法である。このパルスボルタンメトリ法は、前述したストリッピング法で電極上へ濃縮できない物質の分析を高感度で行いたいときに用いられる。パルスボルタンメトリ法は、サブμMの感度が得られているが、pMの感度を有するストリッピング法に比較すると感度は2桁以上小さい。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(金属検出用センサの作製)
日立化成工業株式会社製E679シリーズ銅張積層板(基材厚さ:0.2mm、銅箔厚み12μm)を使用し、エッチング法により引き出し配線層を形成した。この後、半硬化のE679-FGの所定の箇所に貫通レーザ穴あけをした後、導電性銅ペーストを形成した穴に充填した。このとき、穴あけ面には保護層があり、銅ペースト充填後に、保護層を剥離することによって、導電性ペーストが突出したシートが得られる。得られたシートを、前述の引き出し配線層上に配置して、銅箔をプレスした。電極および端子パターンをエッチング法によって形成した後、電極部と端子部を開口させた保護層として、感光性レジストもしくは、接着材つき保護基材をプレスにより形成した。端子部の基材厚さは、0.3mmとした。さらにその後、無電解めっきにより、厚み0.1μmの金層を形成した。次いで、参照電極となる箇所を被覆するように、藤倉化成製のカーボンペーストXC-223を同社製Pシンナー10部で希釈し、ASYMTEC社のDJ-9000ディスペンスジェットにて塗布した。なお、塗布前には、積水化学工業製の大気プラズマによって、表面処理を施し、親水性を向上させ、カーボンペーストの密着性を向上させた。カーボンペーストの塗布後に、150℃30分の熱硬化をおこなった。このときの熱の履歴は、室温から昇温させ所定温度で保持後、100℃以下になるまで冷却した。この後、ヤマト科学製のプラズマ装置によって300W10分の酸素プラズマを照射した。
日立化成工業株式会社製E679シリーズ銅張積層板(基材厚さ:0.2mm、銅箔厚み12μm)を使用し、エッチング法により引き出し配線層を形成した。この後、半硬化のE679-FGの所定の箇所に貫通レーザ穴あけをした後、導電性銅ペーストを形成した穴に充填した。このとき、穴あけ面には保護層があり、銅ペースト充填後に、保護層を剥離することによって、導電性ペーストが突出したシートが得られる。得られたシートを、前述の引き出し配線層上に配置して、銅箔をプレスした。電極および端子パターンをエッチング法によって形成した後、電極部と端子部を開口させた保護層として、感光性レジストもしくは、接着材つき保護基材をプレスにより形成した。端子部の基材厚さは、0.3mmとした。さらにその後、無電解めっきにより、厚み0.1μmの金層を形成した。次いで、参照電極となる箇所を被覆するように、藤倉化成製のカーボンペーストXC-223を同社製Pシンナー10部で希釈し、ASYMTEC社のDJ-9000ディスペンスジェットにて塗布した。なお、塗布前には、積水化学工業製の大気プラズマによって、表面処理を施し、親水性を向上させ、カーボンペーストの密着性を向上させた。カーボンペーストの塗布後に、150℃30分の熱硬化をおこなった。このときの熱の履歴は、室温から昇温させ所定温度で保持後、100℃以下になるまで冷却した。この後、ヤマト科学製のプラズマ装置によって300W10分の酸素プラズマを照射した。
交互積層膜を、前記無電解めっき法の金層表面に形成する場合には、金属層への形成は、密着が弱いので、形成後に100℃前後で1時間の熱処理を加えた。また、金層表面ではなく、金めっき前の銅表面もしくは、めっき後に、導電性カーボンペーストを塗布してから、交互積層膜を形成する場合は、前述のようにプラズマ処理を行った。いずれの場合も、ポリカチオンとしては、ポリアリルアミン塩酸塩を選び、ポリアニオンとしてはポリアクリル酸を選び交互積層膜を成膜した。pHを2.5程度に調整することにより、リンスを含む一連の浸漬10サイクルで約50nmの膜厚を得た。実評価では、50サイクルを実施した。このときの、ポリアリルアミン塩酸塩は、平均分子量(M)70000の粉末を1.08g秤量し、1Lの超純水に溶解、約0.1wt%に調整した。ポリアクリル酸は、35wt%水溶液を3.24g秤量し、1Lの超純水に溶解した。ともに、pH調整は、硝酸を用いた。本来は、モルユニットで調整する必要がある。しかし、浸漬のたびに液の持ち込みを防ぐために、超純水によるドラックアウト工程をいれるので、不要なポリアニオン、ポリカチオンは除去される。
(被検査液の調製と吸着分析)
被検査液の原液として、SCPサイエンス社製PlasmaCALキレートミクスAを用いた。これは、20種類の金属等の各元素がそれぞれ、10、50、100ppmの3濃度レベルに調整された5%硝酸マトリックス溶液である。含まれる金属類の元素は、Be,Mg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Sr,Cd,In,Ba,Pb,Biであり、陽イオンとして存在すると思われる。これら3種類の中から主としてCdを選択して、これを超純水で1000倍に希釈し、各金属を等濃度に含む被検査液を調製した。あるいは、これらの中から元素を選択して別途単独元素、もしくは、複数の元素を選択的に含む溶液を別途準備し、これを模擬濃縮抽出液とし、これに上記金属検出用センサを浸漬し、作用電極および参照電極間に、電圧(−1V)を20分印加した。あるいは、所定時間(10分)浸漬することも行った。いずれも、活性化処理をしない場合は、吸着能が低下する傾向が明らかであったことから、浸漬の前には、0.1Mの酢酸アンモニウム溶液に所定時間浸漬して、交互積層膜を活性化しておくことが有効であることが確かめられた。
被検査液の原液として、SCPサイエンス社製PlasmaCALキレートミクスAを用いた。これは、20種類の金属等の各元素がそれぞれ、10、50、100ppmの3濃度レベルに調整された5%硝酸マトリックス溶液である。含まれる金属類の元素は、Be,Mg,Al,Ca,Sc,Ti,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Sr,Cd,In,Ba,Pb,Biであり、陽イオンとして存在すると思われる。これら3種類の中から主としてCdを選択して、これを超純水で1000倍に希釈し、各金属を等濃度に含む被検査液を調製した。あるいは、これらの中から元素を選択して別途単独元素、もしくは、複数の元素を選択的に含む溶液を別途準備し、これを模擬濃縮抽出液とし、これに上記金属検出用センサを浸漬し、作用電極および参照電極間に、電圧(−1V)を20分印加した。あるいは、所定時間(10分)浸漬することも行った。いずれも、活性化処理をしない場合は、吸着能が低下する傾向が明らかであったことから、浸漬の前には、0.1Mの酢酸アンモニウム溶液に所定時間浸漬して、交互積層膜を活性化しておくことが有効であることが確かめられた。
以上の金属検出用センサの電極表面をエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)、もしくはTOF-SIMSにより分析した結果、金属の吸着が確かめられた。さらには、オランダPalmsense社製の小型ポテンシオスタットEMstatにて、還元波、微分法、パルスウエーブ法で分析した結果、所定の金属の検出ができることが分かった。それぞれの検出においては、定性方法および定量方法は、密接な関係があることも分かった。
Cdの検出電位位置は、参照電極の種類によって変化するが、参照電極にBAS社製の銀塩化銀ペーストを塗布120℃で5分乾燥した場合は、約710mVのところに、銅は325mVのあたりに、さらには、別途鉛も検討したところ、515mVのあたりにピークを得た。参照電極にカーボンペーストを塗布した場合は、そのカーボンペーストの種類によって、10mV〜100mV電位位置が左にシフトする傾向が見られた。このように、電位位置で所定金属を定性し、定量方法は、そのピーク高さである電流値によって求めることができた。このとき、ピーク高さが充分でない場合は、既知濃度のものを追加することにより、相対的に濃度を求めることが望ましい。
Cdの検出電位位置は、参照電極の種類によって変化するが、参照電極にBAS社製の銀塩化銀ペーストを塗布120℃で5分乾燥した場合は、約710mVのところに、銅は325mVのあたりに、さらには、別途鉛も検討したところ、515mVのあたりにピークを得た。参照電極にカーボンペーストを塗布した場合は、そのカーボンペーストの種類によって、10mV〜100mV電位位置が左にシフトする傾向が見られた。このように、電位位置で所定金属を定性し、定量方法は、そのピーク高さである電流値によって求めることができた。このとき、ピーク高さが充分でない場合は、既知濃度のものを追加することにより、相対的に濃度を求めることが望ましい。
また、エネルギー分散型蛍光X線分析において、予め3M社製のキレートディスクに、20元素を含む標準液を調製し、濃度、pHを調整して、通液量を変化させて、ディスク内に濃縮後、乾燥して真空モードでデータを蓄積した。
キレートディスクへの濃縮と、X線強度を測定したデータの一部を図5に示す。この例では、100ppm溶液を1000倍希釈し、pHを4.21に調整した被検査模擬液である。通液量が増大するにつれ、すべての元素でX線強度が比例的増大している。このpH4.21から10.55まで、強度変化はあるものの比例関係はほぼ保たれていることが確認された。また、透過液を分析すると90%以上が回収されていることも確認できた。これらから、単位面積あたりの吸着量に対するX線強度が得られた。なお、X強度のバックグランドとして、下の金属配線のX線強度がでてくるが、これに近い元素を定量する場合には、X線分析装置にフィルターを入れる工夫をすればよいが、金属検出用センサの電極自身を、導電性カーボンペースト単独で形成することが望ましい。本発明では、電極を引き回し配線とし、この配線を被覆し、かつX線を照射する部分のみを単独で導電性カーボンペーストにより電極を形成してもよい。
キレートディスクへの濃縮と、X線強度を測定したデータの一部を図5に示す。この例では、100ppm溶液を1000倍希釈し、pHを4.21に調整した被検査模擬液である。通液量が増大するにつれ、すべての元素でX線強度が比例的増大している。このpH4.21から10.55まで、強度変化はあるものの比例関係はほぼ保たれていることが確認された。また、透過液を分析すると90%以上が回収されていることも確認できた。これらから、単位面積あたりの吸着量に対するX線強度が得られた。なお、X強度のバックグランドとして、下の金属配線のX線強度がでてくるが、これに近い元素を定量する場合には、X線分析装置にフィルターを入れる工夫をすればよいが、金属検出用センサの電極自身を、導電性カーボンペースト単独で形成することが望ましい。本発明では、電極を引き回し配線とし、この配線を被覆し、かつX線を照射する部分のみを単独で導電性カーボンペーストにより電極を形成してもよい。
一方、交互積層膜上に吸着された元素のTOF−SIMSによる分析を行った。当該分析は、下記表1に示す条件のサンプルを測定した。分析装置は、アルバック・ファイ社製TRIFT IIIを利用し、一次イオンAu+、但し、測定中の試料表面の帯電抑制のために中和銃を使用した。測定領域は、400μm角、測定時間は15分とした。測定は、それぞれ、同じ位置関係にある電極の中央を一箇所測定した。
試料No.(1)のスペクトルからは、含まれる金属元素すべてを検出することができた。試料No.Nについては、スペクトルで確認できたのは、Mg,Fe,Cuだけである。結果を図6に示す。横軸は、精密質量を記載した元素である。縦軸は、金属イオンのカウント値である。これらの結果から、前処理条件、抽出液濃度、浸漬時間、試料No.(1)にみられるように直接被検査液を塗布乾燥した場合を含め、条件を変えて、各元素の吸着確率が定量的に求められることが分かった。
11 ベース絶縁基材、
12 電極
13 端子部
14 ビア導通接続部
15 保護層
16 引き回し配線
17 導電性ペースト層
18 交互積層膜
12 電極
13 端子部
14 ビア導通接続部
15 保護層
16 引き回し配線
17 導電性ペースト層
18 交互積層膜
Claims (10)
- ベース絶縁基板上に、参照電極、対極電極、及び作用電極を備え、各電極と電気的に接続された端子部を備え、前記各電極のうち、少なくとも作用電極の最外層を覆うように、多孔性の交互積層膜が形成されたことを特徴とする金属検出用センサ。
- 作用電極として、導電性を有する粒子を含むペーストが被覆もしくは単独で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の金属検出用センサ。
- 参照電極として、導電性を有する粒子を含むペーストが被覆もしくは単独で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の金属検出用センサ。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、金属吸着直前に、前記金属検出用センサを活性化液に浸漬し、少なくとも作用電極上に被覆された交互積層膜に修飾された官能基を活性化させた状態とした後に、前記金属検出用センサを、金属を含む被検査液に浸漬し、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いた金属吸着方法であって、被検査液に浸漬し、かつ作用電極および参照電極間に所定の電位を印加して、金属を交互積層膜に吸着させた状態とすることを特徴とする金属吸着方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属をエネルギー分散型蛍光X線分析法で分析し、エネルギーとそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属をTOF−SIMSで分析し、精密質量とそのカウント値から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属検出用センサを用いて、少なくとも作用電極上に吸着した金属を電気化学的操作で分析し、酸化電位及び/又は還元電位とその検出電流値およびまたは微分およびまたは積分量から、金属の定性・定量を測定して、予め既知濃度の被検査液で分析したデータと比較して、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
- 請求項7〜9のいずれか1項に記載の金属濃度定量方法をそれぞれ組み合わせて、被検査液に含まれる金属濃度を定量することを特徴とする金属濃度定量方法。
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