JP2012117759A - 熱交換器及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱交換器の製造方法は、Mgが0.3〜2.0mass%と、Siが1.5〜3.5mass%、または、Cuが1.5〜14mass%とを含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板をその板の厚さ方向に複数枚積層する積層工程と、積層されたアルミニウム合金板を加熱して接合する接合工程と、を備えている。積層工程では、その表面に微細な溝が形成された前記アルミニウム合金板を少なくとも1枚配置する。接合工程では、積層されたアルミニウム合金板の全質量に対するアルミニウム合金板内に生成する液相の質量の比が5%を超え35%以下となる温度で接合する。
【選択図】なし
Description
更に拡散接合では高温で加圧がなされる。金属は、一般に、絶対温度で融点の1/2程度以上の所謂クリープ温度領域では、それ以下の温度と比較して塑性変形が非常に容易に起きるようになる。拡散接合は、このクリープ温度域で行われるので、弱い加圧であっても容易に塑性変形が起き得る。特に、微細な流路となる溝が形成されたような面を接合面とした場合、溝の間の柱が加圧により変形し、元の溝の形を保つことが困難となる。このため、微細な流路が形成された熱交換器を精度良く容易に製造できないという問題がある。
Mgを0.3〜2.0mass%と、Siを1.5〜3.5mass%、または、Cuを1.5〜14.0mass%とを含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、断面積1mm2以下の流路であり、外壁からの間隔が0.1mm以上であり、流路間隔が0.1mm以上である、ことを特徴とする。
前記アルミニウム合金には、長径3μm以上の球状の共晶組織が10個〜3000個/mm2存在することが好ましい。
前記流路の内壁面には継ぎ目がないことが好ましい。
Mgが0.3〜2.0mass%と、Siが1.5〜3.5mass%、または、Cuが1.5〜14.0mass%とを含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板をその板の厚さ方向に複数枚積層する積層工程と、
積層されたアルミニウム合金板を加熱して接合する接合工程と、を備え、
前記積層工程では、その表面に微細な溝が形成された前記アルミニウム合金板を少なくとも1枚配置し、
前記接合工程では、接合温度をアルミニウム合金板の全質量に対するアルミニウム合金板内に生成する液相の質量の比が5%を超え35%以下となる温度とし、前記アルミニウム合金板の寸法変化が5%以下である、ことを特徴とする。
前記接合工程では、例えば、長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で10個〜3000個/mm2存在するように接合する。
前記接合工程では、例えば、前記アルミニウム合金板が固相線温度以上となる時間を20分以内とする。
前記接合工程では、例えば、前記アルミニウム合金が液相率5%以上の温度域にある時間を10秒以上とする。
また、流路4の流路間隔は0.1mm以上である。流路間隔とは、流路内壁面と、その流路4にもっとも近い流路4の内壁面との最短距離である。流路間隔が0.1mm未満の場合は隣接する流路4と短絡して流路4が正常に形成されず、規定の断面積と異なる虞がある。
さらに、流路4の外壁からの間隔は0.1mm以上である。外壁からの間隔とは、外壁と最外側の流路4の内壁との最短距離である。外壁からの間隔が0.1mm未満の場合は、外縁部の流路4の接合が十分に行われない虞があり、流路4から流体が漏れる場合がある。
図4にAl−Cu合金の2元系状態図を模式的に示す。Cu濃度がc2である一方のアルミニウム合金材と他方の被接合部材を組合せて加熱すると、共晶温度(固相線温度)Teを超えた付近の温度T3で液相の生成が始まる。共晶温度Te以下では、図5(a)に示すように、結晶粒界で区分されるマトリクス中に晶析出物が分布している。ここで液相の生成が始まると、図5(b)に示すように、晶析出物分布の偏析の多い結晶粒界が溶融して液相となる。次いで、図5(c)に示すように、アルミニウム合金のマトリクス中に分散するAl−Cu化合物の周辺が球状に溶融して液相となる。更に図5(d)に示すように、マトリクス中に生成したこの球状の液相は、界面エネルギーにより小さなものからマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。従って、時間の経過や温度上昇と共に球状液相の数は少なくなっていき、また残った球状液相のサイズは大きいものとなる。次いで、図4に示すように温度がT4に上昇すると、状態図より液相量は増加する。図4に示すように、アルミニウム合金材のCu濃度が最大固溶限濃度より小さいc3の場合には、固相線温度Ts3を超えた付近で液相の生成が始まる。ただし、c2の場合と異なり、溶融直前の組織は図6(a)に示すように、マトリクス中に小析出物粒子が存在しない場合がある。この場合、図6(b)に示すように粒界でまず溶融が溶融し液相となった後、図6(c)に示すようにマトリクス中の局所的に溶質元素濃度が高い場所より液相が発生する。マトリクス中に生成したこの球状の液相は、図6(d)に示すようにc2の場合と同様に、界面エネルギーにより時間の経過や温度上昇と共にマトリクスに再固溶し、固相内拡散によって結晶粒界や表面に移動する。温度がT3に上昇すると、状態図より液相量は増加する。また、液相の生成が進むにつれて固相拡散による液相の移動が進展する為、マトリクス中の球状の液相の個数は減少する。
このようにCuはAl−Cuの液相を生成し、接合に機能する。
また、接合には大きく寄与しないが、熱交換器の性能向上のため、アルミニウム合金板2に、Mn、Cr、Ni、Ti、Zrの元素を1種または2種以上添加することが好ましい。
Mnはアルミマトリックス中にAl−Cu−Mn系の化合物を形成し、接合後の結晶粒を微細化する効果がある。このように、結晶粒が微細化することにより、接合後のアルミニウム合金板の強度を向上させる。また、前述の化合物の形成により、時効熱処理時に強度に寄与する析出物が主に化合物上に析出し、強度を高めることができる。Mnは0.02〜2.0mass%添加することが好ましい。Mnを2.0mass%を超えて添加すると、化合物が多くなり、液相発生箇所が多くなるため、接合加熱中に形状変化が起こるためである。また、0.02mass%未満の添加では有意な効果が得られないためである。
Crはアルミマトリックス中にCu−Cr−Al系の化合物を形成し、再結晶粒の成長を妨げ、接合後の結晶粒を微細化する効果がある。Crは0.02mass%〜0.2mass%添加することが好ましい。Crを0.2mass%を超えて添加してもその効果は変わらないためである。また、0.02mass%未満の添加では有意な効果が得られないためである。
Niはアルミマトリックス中にAl3Niを形成し、時効熱処理時の強度を高める。また、Niを添加することで高温強度にも優れ、接合時に粒界に液相がしみ出している状態での変形を抑制する。Niは0.02mass%〜2.3mass%添加することが好ましい。Niを2.3mass%を超えて添加してもその効果は変わらないためである。また、0.02mass%未満の添加では有意な効果が得られないためである。
Tiはアルミマトリックス中にAl3Tiを形成し、再結晶粒の成長を妨げ、結晶粒を微細化する効果がある。Tiは0.02mass%〜0.3mass%添加することが好ましい。Tiを0.3mass%を超えて添加すると鋳塊製造時に巨大な晶出物が形成されるためである。また、0.02mass%未満では有意な効果が得られないためである。
Zrはアルミマトリックス中にAl3Zrを形成し、再結晶粒の成長を妨げ、結晶粒を微細化する効果がある。Zrは0.02mass%〜0.5mass%添加することが好ましい。Zrを0.5mass%を超えて添加すると鋳塊製造時に巨大な晶出物が形成されるためである。また、0.02mass%未満の添加では有意な効果が得られないためである。
このため、本発明の熱交換器1は、接合の前後で流路寸法や形状の変化が殆どない。
更に、本発明熱交換器1の製造方法では、接合加熱の際、接合を確実に行うために、アルミニウム合金板2が液相率5%以上の温度域に少なくとも10秒以上あることが望ましい。液相率が5%以上になると液相のしみ出しが効果的に起こり始める。液相率5%以上の時間が10秒より短いと、しみ出しが起こるのに十分な時間が得られない虞がある。例えば、Al−2.0mass%Siは581℃で液相率5%となる。従って、Al−2.0Siの部材を本発明熱交換器1の製造方法で接合する場合、昇温して接合温度に至り冷却するまでの過程で、Al−2.0Siを用いた部材が581℃を超えている時間が少なくとも10秒以上あることが望ましい。なお、接合を更に確実にする為に、構造部材が液相率5%以上となる温度域に少なくとも30秒以上あることがより望ましい。
以下の実施例1〜33、及び、比較例1〜11では、本発明の効果を簡単に確認するため、表1に示す成分のアルミニウム合金から図8(a)に示す試験片を作成し、表1に示す接合条件で接合した場合について、接合率及び変形率から試験片の接合状態の確認を行った。
接合のための加熱は、真空或いは窒素雰囲気の炉中で所定の温度まで昇温後、5分間保持した後、冷却した。なお、昇温速度は、520℃以上で10℃/分とした。また、保持中の温度は接合温度±1℃以内となるよう制御した。実施例13、14、15、16においては保持時間を5分より長くした。なお、実施例13〜15では固相線温度828K(555℃)から600℃まで4.5分、冷却含めて固相線温度以上は(保持時間+6分)、実施例16では固相線温度790K(517℃)から600℃まで8.3分、冷却含めて固相線温度以上は(保持時間+11分)とし、それぞれ固相線温度以上の時間が14分(840秒)、19分(1140秒)、24分(1440秒)、29分(1740秒)となるようにした。また、表1に、アルミニウム合金板が固相線温度以上にあった時間及び液相率5%以上の温度にあった時間を記載した。
比較例9〜11については、接合温度での保持中に所定の加圧を行った。
接合率=(4箇所での接合部長さ合計)/(4箇所での接合されるべき長さ合計)
(変形率)={(a´1+a´2)/2a−1}×100%
a:試験片の天井部の接合前の幅
a´1:試験片の天井部の上側の接合加熱後長さ
a´2:試験片の天井部の下側の接合加熱後長さ
比較例3は、Siの含有量が少なく、液相が十分に生成せず、接合が不十分であった。比較例5は、Cuの含有量が少なく、液相が生成せず、接合が全くなされなかった。比較例4、6は、SiまたはCuの含有量が多く、試験片に大きな変形が発生してしまった。
比較例7、8はフッ化物系フラックスとアルミニウム合金中のMgが反応し、フラックスの酸化皮膜破壊作用とMgのゲッター作用のいずれも十分に働かず、接合が不十分であった。
比較例9、10は固相拡散接合法による接合である。この方法では、接合率が不十分であった。また、材料の変形も大きかった。
比較例11は加圧を行いながら接合したものであるが、接合はなされたものの大きく変形してしまった。
実施例34〜39では、実施例6、10の成分及び接合条件で、切削によって溝を形成した20×20mmの板を5枚積層して接合した。
実施例34、37、比較例12、13、15〜17では、0.1×0.1mmの溝を0.1mmの流路間隔で形成した。
実施例35、38では、0.3×0.3mmの溝を0.3mmの流路間隔で形成した。
実施例36、39では、切削によって1×1mmの溝を1mmの流路間隔で形成した。
比較例14、19では、0.1×0.1mmの溝を0.05mmの流路間隔で形成した。
比較例18では、0.1×0.1mmの溝を0.1mmの流路間隔で形成した。
また、比較例12、14、15、16ではアルミニウム合金の接合面にフッ化物系フラックスを塗布し、比較例13、14、17〜19では、接合温度での保持中に所定の加圧を行った。
それぞれの実施例及び比較例ごとに板を5枚ずつ積層し、表2に示す接合条件で接合した後、断面観察を実施し、流路の状態を観察した。評価は、前述と同様に接合率と変形率による評価とした。更に、外縁部の流路の断面を観察し、形状および接合状態を観察した。結果を表2に示す。
比較例12、15、16では、フッ化物系フラックスとアルミニウム合金中のMgが反応し、フラックスの酸化皮膜破壊作用とMgのゲッター作用のいずれも十分に働かず、流路欠陥が生じて接合されなかった。また、比較例14、17では流路間隔が狭すぎて、流路欠陥が生じて適切な接合がなされなかった。比較例13、17では、接合はなされたものの接合欠陥が生じてしまい、流路が形成されなかった。また、外縁部の流路形状は、比較例14、19では、外壁との間隔が0.1mm未満であったため流路形状が変形し、正常な流路形状が形成できなかった。
実施例40、41、及び、比較例20〜23では、表3の成分及び接合条件で図9に示す様な熱交換器を作製し、耐圧試験および熱性能試験を実施した。熱交換器の作製方法は、表3に示す成分で、厚さ0.5mmで□50×50mmの大きさの板に□5×35mmの穴を2箇所開け、その間に溝幅0.3mmで、溝深さ0.3mmの流路用の溝を、0.3mm間隔で切削により加工した。この板を、90度方向に互い違いに20枚積層させ、その上下には厚さ5mmで□50×50mmの平坦な板で挟み込み、表3に示す接合条件で接合した。その後、20×50mmの四面に、M10×P0.75の内ねじを機械加工し、流路用配管にφ10mmで肉厚1mmのSUS304管にM10×P0.75のねじを加工したものをねじ込んだ。耐圧試験の評価は以下の通りである。
作製した熱交換器を利用し、微細な流路に熱交換用の流体を模した窒素ガスを流し、水中で5分間、ガス圧の漏れ有無の確認を行った。加圧した窒素ガス圧力は0.1MPa、1MPa、5MPa、10MPaの4条件である。これらの条件で、実施例40、41、比較例20〜23の熱交換器を3個ずつ作製し、それぞれのガス圧で漏れ無しを○、漏れ有りを×として評価した。全てのガス圧で漏れのない熱交換器を判定○として、漏れがあった熱交換器を×と判定した。
これに対し、比較例20の拡散接合法による製造方法では、1MPa以上の高ガス圧力になると接合部分からガスの漏れが生じ、また、比較例21の拡散接合による製造方法では、0.1MPaの低圧力でもガス漏れが生じていた。
図12(c)は比較例22の冷却水流量と熱交換量の関係を示すグラフであり、図12(d)は比較例23の冷却水流量と熱交換量の関係を示すグラフである。図に示すように溝の断面積が4mm2と大きい場合、熱交換量が著しく低くなっていた。
2 アルミニウム合金板
3 溝
4 流路
5 熱交換装置
6 冷却側流路用口金
7 加熱側流路用口金
8 冷却側流路
9 加熱側流路
10 フタ
11 流路用溝板
Claims (9)
- Mgを0.3〜2.0mass%と、Siを1.5〜3.5mass%、または、Cuを1.5〜14.0mass%とを含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金からなり、断面積1mm2以下の流路であり、外壁からの間隔が0.1mm以上であり、流路間隔が0.1mm以上である、ことを特徴とする熱交換器。
- 前記アルミニウム合金は、さらにMnを0.02〜2.0mass%、Crを0.02〜0.2mass%、Niを0.02〜2.3mass%、Tiを0.02〜0.3mass%、Zrを0.02〜0.5mass%のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記アルミニウム合金には、長径3μm以上の球状の共晶組織が10個〜3000個/mm2存在する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器。
- 前記流路の内壁面には継ぎ目がない、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器。
- Mgが0.3〜2.0mass%と、Siが1.5〜3.5mass%、または、Cuが1.5〜14.0mass%とを含有し、残部Al及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板をその板の厚さ方向に複数枚積層する積層工程と、
積層されたアルミニウム合金板を加熱して接合する接合工程と、を備え、
前記積層工程では、その表面に微細な溝が形成された前記アルミニウム合金板を少なくとも1枚配置し、
前記接合工程では、接合温度をアルミニウム合金板の全質量に対するアルミニウム合金板内に生成する液相の質量の比が5%を超え35%以下となる温度とし、前記アルミニウム合金板の寸法変化が5%以下である、ことを特徴とする熱交換器の製造方法。 - 前記アルミニウム合金に、さらにMnを0.02〜2.0mass%、Crを0.02〜0.2mass%、Niを0.02〜2.3mass%、Tiを0.02〜0.3mass%、Zrを0.02〜0.5mass%のうち1種または2種以上を含有する合金を用いることを特徴とする請求項5に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記接合工程では、長径3μm以上の球状の共晶組織が断面で10個〜3000個/mm2存在するように接合する、ことを特徴とする請求項5または6に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記接合工程では、前記アルミニウム合金板が固相線温度以上となる時間を20分以内とする、ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
- 前記接合工程では、前記アルミニウム合金が液相率5%以上の温度域にある時間を10秒以上とする、ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の熱交換器の製造方法。
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