JP2012117011A - タイヤ用ゴム組成物、その製造方法及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】低燃費性、ゴム強度及び加工性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、その製造方法、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
[化1]
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。R4は不飽和結合を有する炭素数2〜18の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。R5及びR6は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基又は炭素数6〜30のアリール基を表す。Zはハロゲン原子を表す。)
【選択図】なし
【解決手段】リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
[化1]
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。R4は不飽和結合を有する炭素数2〜18の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。R5及びR6は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基又は炭素数6〜30のアリール基を表す。Zはハロゲン原子を表す。)
【選択図】なし
Description
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、その製造方法、及び該ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
近年、自動車の低燃費化の要請に対応して、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められている。特に、タイヤの部材のなかでもタイヤにおける占有比率の高いトレッドに対して、優れた低発熱性(低燃費性)が要求されている。
低燃費性を向上させるために、タイヤのトレッドに使用されるゴム組成物(トレッド用ゴム組成物)において、充填剤を減量する方法や、補強性の高いカーボンブラックの一部を補強性の低いシリカに置換する方法が知られている。しかし、これらの方法では、ゴム強度が低下する傾向があり、低燃費性及びゴム強度を両立することは困難であった。
そこで、シリカの補強性をカーボンブラックと同程度にすることを目的として、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、シリカの分散性を向上させたり、ゴムとシリカを化学的に結合させる検討がなされてきた。例えば、シリカと共にメルカプト基を有するシランカップリング剤を用いることにより、低燃費性及びゴム強度を向上できることが知られている。しかし、この場合、ゴムとシリカがシランカップリング剤を介して化学的に結合する反応(スコーチ)が加硫前(ゴムの混練中)に起こるため、加工性が悪化する傾向がある。
また、天然ゴムを使用することにより、低燃費性及びゴム強度が向上することが知られている。しかし、天然ゴムは他の合成ゴムに比べて加工性が悪いため、通常、しゃっ解剤を添加して素練りを行ってから使用される。そのため、天然ゴムを使用する場合、このようなプロセスが必要となるため生産性が低下してしまうおそれがある。また、素練りによって天然ゴムの分子鎖を切断してしまうため、天然ゴムが本来有する高分子量ポリマーの特性(例えば、低燃費性、ゴム強度など)が失われてしまうという問題もある。
このように、低燃費性及びゴム強度を両立しながら良好な加工性を確保することは困難であり、これらの性能をバランス良く改善する方法が望まれていた。
天然ゴムラテックスはヘビア樹の樹液として採取され、ゴム成分の他に水、タンパク質、脂質、無機塩類などを含んでいる。天然ゴム中に含まれるタンパク質を除去することにより、加工性が改善されるとの報告がある。天然ゴム中に含まれるタンパク質などを低減する方法として、特許文献1、2には天然ゴムラテックスにタンパク分解酵素と界面活性剤を加えて熟成する方法が、特許文献3には溶剤で膨潤した固形天然ゴムを水酸化アルカリに浸漬する方法が、特許文献4には天然ゴムラテックスにリン酸塩を添加してリン酸マグネシウムを除去する方法が、特許文献5には天然ゴムラテックスに界面活性剤を加えて洗浄処理する方法がそれぞれ開示されている。
しかしながら、これらの方法では、低燃費性、ゴム強度及び加工性をバランス良く改善するという点について未だ改善の余地がある。
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ゴム強度及び加工性をバランス良く改善できるタイヤ用ゴム組成物、その製造方法、及び該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、リン含有量が200ppm以下である改質天然ゴムと、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。R4は不飽和結合を有する炭素数2〜18の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。R5及びR6は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基又は炭素数6〜30のアリール基を表す。Zはハロゲン原子を表す。)
ゴム成分100質量%中の上記改質天然ゴムの含有量が5質量%以上であることが好ましい。
上記改質天然ゴムの窒素含有量が0.3質量%以下であることが好ましい。
上記改質天然ゴムのトルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下であることが好ましい。
上記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものであることが好ましい。
本発明はまた、上記改質天然ゴムを素練りする工程を含まない上記ゴム組成物の製造方法に関する。
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
本発明によれば、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴムと、シリカと、特定のシランカップリング剤とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、該ゴム組成物をトレッドなどのタイヤ部材に使用することにより、低燃費性及びゴム強度を良好に両立した空気入りタイヤを提供できる。
また、上記ゴム組成物は加工性にも優れているため、該ゴム組成物の製造において、予め素練り工程を行わなくても良好な加工性が得られる。そのため、素練りしない場合においては、素練りにより天然ゴムの分子鎖が切断されないため、本来有する高分子量ポリマーの特性が維持され、より優れた低燃費性及びゴム強度を得ることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、リン含有量が200ppm以下の改質天然ゴム(HPNR)と、シリカと、特定のシランカップリング剤(式(1)で表されるシランカップリング剤)とを含む。上記特定のシランカップリング剤を用いることで、優れたカップリング作用が発揮され、低燃費性及びゴム強度を改善できる。また、従来使用されていたメルカプト基を有するシランカップリング剤と異なり、良好な加工性も得られる。更に、上記特定のシランカップリング剤をHPNRと併用することにより、低燃費性、ゴム強度及び加工性を相乗的に改善することができる。そして、HPNRを配合した未加硫ゴム組成物は加工性に優れており、特段素練り工程を行わなくても充分な混練りが可能であるため、素練りに伴う天然ゴムの特性の低下も抑制でき、上記性能を効果的に高められる。
上記改質天然ゴムは、リン含有量が200ppm以下である。200ppmを超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪化する傾向があり、また、優れた低燃費性及びゴム強度が得られない傾向がある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、例えばICP発光分析など、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.15質量%以下がより好ましい。窒素含有量が0.3質量%を超えると、貯蔵中にムーニー粘度が上昇して加工性が悪化する傾向があり、また、優れた低燃費性及びゴム強度が得られない傾向がある。窒素含有量は、例えばケルダール法など、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。20質量%を超えると、ムーニー粘度が上昇して加工性が悪化する傾向がある。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×105rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
改質天然ゴムの製造方法としては、例えば、特開2010−138359号公報に記載の製法、すなわち、天然ゴムラテックスをケン化処理し、ケン化天然ゴムラテックスを得る工程(A)、及び得られたケン化天然ゴムラテックスをゴム中に含まれるリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄する工程(B)を含む製法などが挙げられる。具体的には、先ず天然ゴムラテックスをアルカリでケン化処理してケン化天然ゴムラテックスを調製し、次いで、該ケン化天然ゴムラテックスを凝集させて得られた凝集ゴムを、ゴム分に対するリン含有率が200ppm以下になるまで繰り返し水で洗浄し、乾燥する方法などにより改質天然ゴム(ケン化天然ゴム)を製造できる。
上記製造方法によれば、ケン化により分離したリン化合物が洗浄除去されるので、天然ゴムのリン含有量を抑えることができる。また、ケン化処理により、天然ゴム中の蛋白質が分解されるので、天然ゴムの窒素含有量を抑えることができる。
本発明のゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の改質天然ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。5質量%未満であると、改質天然ゴムによる改善効果が充分に得られないおそれがある。該含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
本発明のゴム組成物は改質天然ゴム以外のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴムが挙げられる。
本発明ではシリカが使用される。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカのチッ素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは50m2/g以上、更に好ましくは120m2/g以上である。30m2/g未満では、補強効果が小さく、ゴム強度を充分に向上できないおそれがある。シリカのN2SAは、好ましくは500m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下、更に好ましくは190m2/g以下である。500m2/gを超えると、シリカの分散性が悪化し、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは60質量部以上である。5質量部未満であると、シリカ配合による効果が充分に得られない傾向がある。シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、加工性が悪化する傾向がある。
本発明では、シリカとともに、下記式(1)で表されるシランカップリング剤を使用する。該シランカップリング剤を用いることで、シリカとゴムとが良好にカップリングされ、低燃費性及びゴム強度を改善でき、また、良好な加工性も得られる。
(式中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。R4は不飽和結合を有する炭素数2〜18の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよい。R5及びR6は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基又は炭素数6〜30のアリール基を表す。Zはハロゲン原子を表す。)
R1〜R3のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルキル基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜12である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルキル基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜12である。
R1〜R3のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルコキシ基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜5である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルコキシ基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜5である。
R1〜R3のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ビフェニル基、ナフタレニル基などが挙げられるがこれらには限定されない。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アリール基の炭素数は6〜18であり、好ましくは6〜12である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アリール基の炭素数は6〜18であり、好ましくは6〜12である。
低燃費性、ゴム強度及び加工性の改善効果が大きいという点から、R1〜R3はアルコキシ基であることが好ましい。
R4の不飽和結合を有する炭化水素基は、少なくとも1個の不飽和結合を有する2価以上の炭化水素基であればよく、例えば、ビニレン基などのアルケニレン基;エチニレン基などのアルキニレン基;フェニレン基などのアリーレン基;などが挙げられる。また、該炭化水素基は、これらの基と不飽和結合を有しない基との組み合わせであってもよく、例えば、下記式(2)で表される基が挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該炭化水素基の炭素数は2〜18であり、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜10である。
R4はヘテロ原子を含んでいてもよく、該ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。ヘテロ原子を有するR4としては、例えば、「−NH−」、「−NR−」、「−O−」、「−S−」が結合した炭化水素基や、ヘテロ原子を有する置換基で置換された炭化水素基などが挙げられる。ヘテロ原子を有する置換基としては、例えば、ピリジル基、チアゾリル基、チエニル基、オキソ基などが挙げられる。
低燃費性、ゴム強度及び加工性の改善効果が大きいという点から、R4は、アルケニレン基、アルキニレン基、上記式(2)で表される基であることが好ましい。
R5及びR6のアルキル基としては、上述のR1〜R3が表すアルキル基と同様のものが挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルキル基の炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜20である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルキル基の炭素数は1〜30であり、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜20である。
R5及びR6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、メタリル基、エチリデニルノルボルナン基、エチリデンノルボルニル基などが挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルケニル基の炭素数は2〜30であり、好ましくは2〜25、より好ましくは2〜20である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アルケニル基の炭素数は2〜30であり、好ましくは2〜25、より好ましくは2〜20である。
R5及びR6のアリール基としては、上述のR1〜R3が表すアリール基と同様のものが挙げられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アリール基の炭素数は6〜30であり、好ましくは6〜25である。
本発明の効果が良好に得られるという点から、該アリール基の炭素数は6〜30であり、好ましくは6〜25である。
低燃費性、ゴム強度及び加工性の改善効果が大きいという点から、R5及びR6は、水素原子であることが好ましい。
Zが表すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。なかでも、低燃費性、ゴム強度及び加工性の改善効果が大きいという点から、Zは、塩素原子であることが好ましい。
上記式(1)で表されるシランカップリング剤は一般的な方法で合成することができ、例えば、トリエトキシシランなどの有機ケイ素化合物と、塩化ビニルベンジルや塩化プロパルギルなどの不飽和結合を有する化合物とを公知の触媒の存在化で反応させることにより、合成することができる。該シランカップリング剤の具体例としては、例えば、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される化合物などが挙げられる。
上記式(1)で表されるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上である。1質量部未満であると、該シランカップリング剤による改善効果が充分に得られない傾向がある。該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
本発明のゴム組成物には、上記の材料以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられているカーボンブラック、オイルなどの軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などの各種材料が適宜配合されていてもよい。
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。5質量部未満であると、加工性が悪化するおそれがある。オイルの含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、充分な低燃費性及びゴム強度が得られないおそれがある。
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。ここで、天然ゴムを含むゴム組成物を製造する場合、ゴム成分、充填剤などの各成分の混練り工程前に、通常、天然ゴムの素練り工程が行われる。本発明では、改質天然ゴムが使用されているため、該素練り工程を行わなくても良好に混練り工程を実施でき、所望のゴム組成物を作製できる。
本発明のゴム組成物は、トレッド、サイドウォールなどのタイヤ部材に好適に使用できる。
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
本発明の空気入りタイヤは、乗用車、トラック、バスに好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、製造例1〜2で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
天然ゴムラテックス:タイテックス社から入手したフィールドラテックス
界面活性剤:花王(株)製のEmal−E(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
(製造例1:ケン化天然ゴム1(HPNR1)の調製)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整して凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム1(HPNR1))を得た。
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整して凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム1(HPNR1))を得た。
(製造例2:ケン化天然ゴム2(HPNR2)の調製)
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH15gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整して凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム2(HPNR2))を得た。
天然ゴムラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal−E10gとNaOH15gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加しpHを4.0〜4.5に調整して凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mlで洗浄を繰り返し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(ケン化天然ゴム2(HPNR2))を得た。
上記製造例により得られたHPNR1、2と、後述するゴム組成物の評価で使用したTSRとについて、以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量及びゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業(株)製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、天然ゴム約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
窒素含有量は、CHN CORDER MT−5(ヤナコ分析工業(株)製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、天然ゴム約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDCl3に溶解して測定した。
ICP発光分析装置(ICPS−8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
また、リンの31P−NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー社製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDCl3に溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
表1に示すように、HPNR1、2は、TSRに比べて、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率が低減していた。また、31P−NMR測定において、HPNR1、2は、−3ppm〜1ppmにリン脂質によるピークが存在しなかった。
以下、製造例3〜4で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
塩化ビニルベンジル(クロロメチルスチレン):和光純薬工業(株)製
白金−テトラビニルテトラメチル−シクロテトラシロキサン錯体:Sigma Aldrich社製
トリエトキシシラン:モメンティブ社製
塩化プロパルギル:和光純薬工業(株)製
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体:Sigma Aldrich社製
塩化ビニルベンジル(クロロメチルスチレン):和光純薬工業(株)製
白金−テトラビニルテトラメチル−シクロテトラシロキサン錯体:Sigma Aldrich社製
トリエトキシシラン:モメンティブ社製
塩化プロパルギル:和光純薬工業(株)製
1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体:Sigma Aldrich社製
(製造例3:シランカップリング剤2の製造例)
250mlの3口丸底フラスコに塩化ビニルベンジル0.5mol(76g)と0.1Mの白金−テトラビニルテトラメチル−シクロテトラシロキサン錯体0.15gとを添加し、95℃に加熱した後、トリエトキシシラン0.5mol(82g)を滴下した。その後、100℃で1時間保持し、蒸留後、上記式(3)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物の混合物を82g得た。
250mlの3口丸底フラスコに塩化ビニルベンジル0.5mol(76g)と0.1Mの白金−テトラビニルテトラメチル−シクロテトラシロキサン錯体0.15gとを添加し、95℃に加熱した後、トリエトキシシラン0.5mol(82g)を滴下した。その後、100℃で1時間保持し、蒸留後、上記式(3)で表される化合物と下記式(5)で表される化合物の混合物を82g得た。
(製造例4:シランカップリング剤3の製造例)
250mlの3口丸底フラスコに塩化プロパルギル0.67mol(50g)と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体0.15gとを添加し、95℃に加熱した後、トリエトキシシラン0.7mol(115g)を滴下した。その後、100℃で1時間保持し、蒸留後、上記式(4)で表される化合物を異性体の混合物として100g得た。
250mlの3口丸底フラスコに塩化プロパルギル0.67mol(50g)と1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金錯体0.15gとを添加し、95℃に加熱した後、トリエトキシシラン0.7mol(115g)を滴下した。その後、100℃で1時間保持し、蒸留後、上記式(4)で表される化合物を異性体の混合物として100g得た。
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
HPNR1:上記製造例1で調製
HPNR2:上記製造例2で調製
NR:TSR20
しゃっ解剤:大内新興化学工業(株)製のノクタイザーSD
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のUltrasil VN3(N2SA:175m2/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
シランカップリング剤1:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69
シランカップリング剤2:上記製造例3で調製した式(3)で表される化合物
シランカップリング剤3:上記製造例4で調製した式(4)で表される化合物
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
HPNR1:上記製造例1で調製
HPNR2:上記製造例2で調製
NR:TSR20
しゃっ解剤:大内新興化学工業(株)製のノクタイザーSD
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のUltrasil VN3(N2SA:175m2/g)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
シランカップリング剤1:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69
シランカップリング剤2:上記製造例3で調製した式(3)で表される化合物
シランカップリング剤3:上記製造例4で調製した式(4)で表される化合物
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
実施例及び比較例
表2に示す配合に従って、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して加硫物を得た。なお、TSRを使用した比較例1及び2では、予め、TSRにしゃっ解剤を添加して素練りを行った。
表2に示す配合に従って、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、オープンロールを用いて、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で30分間プレス加硫して加硫物を得た。なお、TSRを使用した比較例1及び2では、予め、TSRにしゃっ解剤を添加して素練りを行った。
得られた未加硫ゴム組成物及び加硫物について下記の評価を行った。結果を表2に示す。
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)の損失正接(tanδ)を測定し、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度70℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(加硫物)の損失正接(tanδ)を測定し、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
(ゴム強度)
得られた加硫物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。そして、下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した(ゴム強度指数)。指数が大きいほどゴム強度に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/(比較例1のTB×EB)×100
得られた加硫物を用いて、3号ダンベル型ゴム試験片を作製し、JIS K6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて引張試験を行い、破断強度(TB)及び破断時伸び(EB)を測定し、その積(TB×EB)を算出した。そして、下記計算式により、各配合(加硫物)のゴム強度(TB×EB)を指数表示した(ゴム強度指数)。指数が大きいほどゴム強度に優れることを示す。
(ゴム強度指数)=(各配合のTB×EB)/(比較例1のTB×EB)×100
(ムーニー粘度)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定し、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定し、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れることを示す。
(ムーニー粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
HPNRを用いた実施例は、素練りしていないにもかかわらず、素練りしたTSRを用いた比較例に比べて加工性が優れていた(例えば、実施例1と比較例2)。また、HPNRとシランカップリング剤2又は3とを併用することで、各性能が相乗的に改善された。
Claims (7)
- ゴム成分100質量%中の前記改質天然ゴムの含有量が5質量%以上である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムの窒素含有量が0.3質量%以下である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムのトルエン不溶分として測定されるゲル含有率が20質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムは、天然ゴムラテックスをケン化処理して得られたものである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記改質天然ゴムを素練りする工程を含まない請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2010270488A JP2012117011A (ja) | 2010-12-03 | 2010-12-03 | タイヤ用ゴム組成物、その製造方法及び空気入りタイヤ |
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JP2021091632A (ja) * | 2019-12-10 | 2021-06-17 | 横浜ゴム株式会社 | 化合物、及び、化合物の製造方法 |
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- 2010-12-03 JP JP2010270488A patent/JP2012117011A/ja active Pending
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