JP2012116824A - 新規のルテニウム錯体及びそれを用いた光電部品 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ルテニウム錯体及びそれを用いた光電部品に関するものであり、さらに詳しくは色素増感太陽電池(DSC)に使用されるルテニウム錯体及びそれを用いた光電部品に関する。
産業技術の進歩に伴って、全世界は今日、エネルギー危機と環境汚染という2つの非常に深刻な問題に直面している。世界的なエネルギー危機を解決し、環境汚染を軽減する有効な手段の1つが太陽電池であり、それは太陽エネルギーを電気に変換することができる。色素増感太陽電池は、低い製造コスト、大規模な製造、大きな柔軟性、光の透過性、及び建造物への組み入れが可能であるという長所を有するので、色素増感太陽電池の応用はますます魅力的になっている。
最近、Graetzelらは、色素増感太陽電池の実用性を示す一連の出版物を開示した(たとえば、O'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737)。色素増感太陽電池の一般的構造は、陽極、陰極、ナノ多孔性二酸化チタン層、色素及び電解質を含み、色素は色素増感太陽電池の変換効率で決定的な役割を担う。色素増感太陽電池に好適な色素は、広い吸収スペクトル、高いモル吸収係数、熱安定性及び光安定性の特徴を有さなければならない。
Graetzelの研究室は、色素増感太陽電池の色素として一連のルテニウム錯体を公表している。1993年、Graetzelの研究室は、N3色素と共に調製された色素増感太陽電池を公表したが、AM1.5の励起光の照明下で色素増感太陽電池の変換効率は10.0%である。N3色素の外部量子収率(IPCE)は、400〜600nmの範囲内で80%である。何百というルテニウム錯体が開発されているが、それら色素錯体の変換効率はN3色素ほど良好ではない。N3色素の構造は下記式(a)によって表される。
2003年、Graetzelの研究室は、N719色素を用いて調製された色素増感太陽電池の詳細を公表したが、AM1.5の励起光の照明下で色素増感太陽電池の変換効率は10.85%に改善されており、N719色素の構造は下記式(b)によって表される。
Graetzelの研究室はまた、2004年に黒色色素を用いて調製された色素増感太陽電池の詳細を公表したが、AM1.5の励起光の照明下で色素増感太陽電池の変換効率は11.04%である。黒色色素は、赤色及び近IRの領域でスペクトル応答を高めることができるので、色素増感太陽電池の変換効率を改善することができる。黒色色素の構造は下記式(c)によって表される。
N3色素、N719色素及び黒色色素のようなルテニウム錯体を除いて、色素増感太陽電池で使用することができるそのほかの化合物は、白金錯体、オスミウム錯体、鉄錯体及び銅錯体である。しかしながら、種々の研究の結果は、ルテニウム錯体の変換効率がほかの型の色素化合物よりも依然として良好であることを示している。
色素増感太陽電池の色素は変換効率に大きく影響する。従って、色素増感太陽電池の変換効率を改善することができる色素化合物を提供することが望ましい。
O'Regan, B.; Graetzel, M. Nature 1991, 353, 737
本発明は、色素増感太陽電池に用いて色素増感太陽電池の光電効率を改善する新規のルテニウム錯体を提供することである。
本発明はまた、優れた光電特性を有する色素増感太陽電池も提供することである。
従って、本発明は、下記式(I)によって表されるルテニウム錯体を提供する
式中、L1は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジスルホン酸又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジホスホン酸であり;
L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジトリデシルであり;
Aは、X+R1R2R3R4、
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルであり;
mは1又は2である。
L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジトリデシルであり;
Aは、X+R1R2R3R4、
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルであり;
mは1又は2である。
上記式(I)において、L1は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジスルホン酸又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジホスホン酸であってもよい。好ましくは、L1は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸である。
上記式(I)において、L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジトリデシルであってもよい。好ましくは、L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニルである。
上記式(I)において、Aは、X+R1R2R3R4、
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルである。好ましくは、Aは、P+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。より好ましくは、Aは、N+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。最も好ましくは、Aは、N+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルである。好ましくは、Aは、P+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。より好ましくは、Aは、N+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。最も好ましくは、Aは、N+R1R2R3R4であり、式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである。
上記式(I)において、mは1又は2であってもよい。好ましくは、mは1である。
本発明はまた、前述のルテニウム錯体を含む色素増感太陽電池も提供する。
さらに、本発明の色素増感太陽電池は、(a)前述のルテニウム錯体を含む光陽極と、(b)陰極と、(c)光陽極と陰極の間に配置される電解質層を含む。
本発明の色素増感太陽電池では、光陽極は、透明な基材と、透明な導電層と、多孔性の半導体層と、ルテニウム錯体の色素を含む。
本発明の色素増感太陽電池では、光陽極のための透明な基材の材料は、基材の材料が透明な材料である限り、特に限定されない。好ましくは、透明な基材の材料は、良好な耐湿性、溶媒耐性及び耐候性を持つ透明な材料である。従って、色素増感太陽電池は、透明な基材によって、外側からの水分又は気体に耐えることができる。透明な基材の具体例には、たとえば、石英やガラスのような透明な無機基材;たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明なプラスチック基材が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過性及びその特性に対する要求に従って変更することができる。好ましくは、透明な基材の材料はガラスである。
さらに、本発明の色素増感太陽電池では、透明な導電層の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga2O3、ZnO−Al2O3、又はスズ系酸化物であることができる。
加えて、本発明の色素増感太陽電池では、多孔性の半導体層は半導体粒子から作られることができる。好適な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3、及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。好ましくは、半導体粒子はTiO2粒子である。半導体粒子の平均直径は5〜500nmであってもよい。好ましくは、半導体粒子の平均直径は10〜50nmである。さらに、多孔性半導体層の厚さは5〜25μmである。
本発明の色素増感太陽電池では、ルテニウム錯体は前述のルテニウム錯体である。
その上、色素増感太陽電池の陰極の材料は特に限定されることはなく、導電性を持ついかなる材料が挙げられてもよい。さもなければ、陰極の材料は、光陽極に向いた陰極の表面に形成される導電層がある限り、絶縁材料であることができる。陰極の材料は電気化学的な安定性を持つ材料であることができる。陰極の材料に好適な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
さらに、色素増感太陽電池の電解質層で使用される材料は特に限定されることはなく、電子及び/又は正孔を移送することができるいかなる材料でもあることができる。
加えて、本発明はさらに、前述のルテニウム錯体を含む色素溶液を提供する。
本発明の色素溶液は、(A)0.01〜1重量%の前述のルテニウム錯体と、(B)99〜99.99重量%の、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリジノンから成る群から選択される有機溶媒とを含む。
本発明のそのほかの目的、利点及び新規の特徴は以下の詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
本発明のルテニウム錯体は以下の方法によって合成することができる。
Nature Material,2003,2,402−407に記載された方法に従って、シス−ジ(チオシシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(Z907色素)を合成する。
シス−ジ(チオシシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)を蒸留水に分散し、10%水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液をそれに加え、この反応溶液のpH値を11に調整する。次いでルテニウムが完全に水に溶解するまで反応溶液を撹拌する。最終的に、0.1Mの硝酸(水溶液)で反応溶液のpH値を4.6に調整して式(I−1)によって表されるルテニウム錯体を得る。
本発明の色素増感太陽電池を製造する方法は特に限定されるものではなく、当該技術で既知の従来の方法によって本発明の色素増感太陽電池を製造することができる。
透明な基材の材料は、基材の材料が透明な材料である限り、特に限定されない。好ましくは、透明な基材の材料は、良好な耐湿性、溶媒耐性及び耐候性を持つ透明な材料である。従って、色素増感太陽電池は、透明な基材によって、外側からの水分又は気体に耐えることができる。透明な基材の具体例には、たとえば、石英やガラスのような透明な無機基材;たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明なプラスチック基材が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過性及びその特性に対する要求に従って変更することができる。具体的な実施態様では、透明な基材の材料はガラス基材である。
さらに、透明な導電層の材料は、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga2O3、ZnO−Al2O3、又はスズ系酸化物であることができる。具体的な実施態様では、透明な導電層には、フッ素をドープした酸化スズが使用される。
加えて、多孔性の半導体層は半導体粒子から作られる。好適な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3、及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。先ず、ペースト形態の半導体粒子を調製し、次いで透明な導電性基材をこのペーストで被覆する。本明細書で使用されるコーティング法は、ブレードコーティング、スクリーン印刷、スピンコーティング、スプレーコーティング又は湿式コーティングであることができる。さらに、好適な厚さの多孔性半導体層を得るために、1回又は何回もコーティングを持続する。半導体層は単層又は多層であることができ、多層の各層は異なった直径を持つ半導体粒子によって形成される。たとえば、直径5〜50nmの半導体粒子を5〜20μmの厚さに被覆し、次いでその上に、直径200〜400nmの半導体粒子を3〜5μmの厚さに被覆する。被覆した基材を50〜100℃にて乾燥させた後、被覆した基材を400〜500℃にて30分間焼結して多層の半導体層を得る。
ルテニウム錯体を好適な溶媒に溶解して色素溶液を調製することができる。好適な溶媒には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリジノン、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書では、半導体層で被覆した透明な基材を色素溶液に浸して色素溶液における色素を半導体層に完全に吸収させる。色素の吸収が完了した後、半導体層で被覆した透明な基材を取り出し、乾燥させて色素増感太陽電池用の光陽極を得る。
さらに、色素増感太陽電池用の陰極の材料は特に限定されることはなく、導電性を持ついかなる材料が挙げられてもよい。さもなければ、陰極の材料は、光陽極に向いた陰極の表面に形成される導電層がある限り、絶縁材料であることができる。陰極の材料は電気化学的な安定性を持つ材料であることができる。陰極の材料に好適な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
さらに、色素増感太陽電池の電解質層で使用される材料は特に限定されることはなく、電子及び/又は正孔を移送することができる材料であることができる。加えて、液体電解質は、ヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液、ヨウ素を含有するN−メチル−2−ピロリジノンの溶液、又はヨウ素を含有する3−メトキシプロピオニトリルの溶液であることができる。具体的な実施態様では、液体電解質はヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液であることができる。
本発明の色素増感太陽電池を製造する具体的な方法の1つを以下のように提示する。
先ず、スクリーン印刷法により、20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストによってフッ素ドープの酸化スズで覆ったガラス基材を1回又は数回被覆する。次いで、被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結する。
アセトニトリルとt−ブタノール(1:1、v/v)の混合物にルテニウム錯体を溶解してルテニウム錯体の色素溶液を作成する。次いで、多孔性のTiO2層を伴った前述のガラス基材を色素溶液に浸す。多孔性のTiO2層が色素溶液の色素を吸収した後、得られたガラス基材を取り出し、乾燥させて光陽極を得る。
フッ素ドープの酸化スズで覆ったガラス基材にドリルで穴を開けて0.75μmの直径を持つ注入口を形成し、電解質を注入するために注入口を使用する。次いで、フッ素ドープの酸化スズで覆ったガラス基材にH2PtCl6の溶液を被覆し、ガラス基材を400℃で15分間加熱して陰極を得る。
順次、60μmの厚さを持つ熱可塑性のポリマー層を光陽極と陰極の間に配置する。120〜140℃にてこれら2つの電極を圧迫して互いに接着させる。
次いで電解質を注入するが、電解質は、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチルピリジンを含有するアセトニトリルの溶液である。熱可塑性のポリマー層で注入口を封止した後、本発明の色素増感太陽電池が得られる。
以下の実施例は本発明の説明を目的に意図される。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲で定義されるべきであり、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。具体的な説明がない場合、実施例で使用される部分及び比率の単位は重量によって計算され、温度は摂氏度(℃)で表される。重量部と体積部の間の関係はキログラムとリットルの間の関係と同様である。
実施態様1
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(テトラブチルアンモニウム)(I−1)の合成
Nature Material,2003,2,402−407に記載された方法に従って調製されたシス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(Z907色素)1部と脱イオン水10部を反応フラスコに加え、この反応溶液を撹拌してルテニウム錯体を分散した。次いで、10%の水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を一滴ずつ反応溶液に加え、反応溶液のpH値を11に調整した。ルテニウム複合体が水に完全に溶解するまで連続的に反応溶液を撹拌した。次いで、0.1Mの硝酸(水溶液)を用いて反応溶液のpH値を4.6に調整した。反応溶液を18時間撹拌した後、焼結したガラスフィルターを用いて生成物を濾別した後、pH4.1の蒸留水5部を用いて生成物を洗浄した。最終的に0.43部の黒色の固形生成物(I−1)が得られ、生成物(I−1)の収率は85%であった。
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(テトラブチルアンモニウム)(I−1)の合成
Nature Material,2003,2,402−407に記載された方法に従って調製されたシス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(Z907色素)1部と脱イオン水10部を反応フラスコに加え、この反応溶液を撹拌してルテニウム錯体を分散した。次いで、10%の水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を一滴ずつ反応溶液に加え、反応溶液のpH値を11に調整した。ルテニウム複合体が水に完全に溶解するまで連続的に反応溶液を撹拌した。次いで、0.1Mの硝酸(水溶液)を用いて反応溶液のpH値を4.6に調整した。反応溶液を18時間撹拌した後、焼結したガラスフィルターを用いて生成物を濾別した後、pH4.1の蒸留水5部を用いて生成物を洗浄した。最終的に0.43部の黒色の固形生成物(I−1)が得られ、生成物(I−1)の収率は85%であった。
実施態様2
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)ビス(テトラブチルアンモニウム)(I−2)の合成
Nature Material,2003,2,402−407に記載された方法に従って調製されたシス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(Z907色素)1部と脱イオン水10部を反応フラスコに加え、この反応溶液を撹拌してルテニウム錯体を分散した。次いで、10%の水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を一滴ずつ反応溶液に加え、反応溶液のpH値を11に調整した。ルテニウム複合体が水に完全に溶解するまで連続的に反応溶液を撹拌した。次いで、0.1Mの硝酸(水溶液)を用いて反応溶液のpH値を5.5に調整した。反応溶液を18時間撹拌した後、焼結したガラスフィルターを用いて生成物を濾別した後、pH4.1の蒸留水5部を用いて生成物を洗浄した。最終的に0.44部の黒色の固形生成物(I−2)が得られ、生成物(I−2)の収率は70%であった。
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)ビス(テトラブチルアンモニウム)(I−2)の合成
Nature Material,2003,2,402−407に記載された方法に従って調製されたシス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(Z907色素)1部と脱イオン水10部を反応フラスコに加え、この反応溶液を撹拌してルテニウム錯体を分散した。次いで、10%の水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液を一滴ずつ反応溶液に加え、反応溶液のpH値を11に調整した。ルテニウム複合体が水に完全に溶解するまで連続的に反応溶液を撹拌した。次いで、0.1Mの硝酸(水溶液)を用いて反応溶液のpH値を5.5に調整した。反応溶液を18時間撹拌した後、焼結したガラスフィルターを用いて生成物を濾別した後、pH4.1の蒸留水5部を用いて生成物を洗浄した。最終的に0.44部の黒色の固形生成物(I−2)が得られ、生成物(I−2)の収率は70%であった。
実施態様3
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(ベンジルトリエチルアンモニウム)(I−3)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム(TCI社)の水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.35部の黒色の固形生成物(I−3)が得られ、生成物(I−3)の収率は71%であった。
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(ベンジルトリエチルアンモニウム)(I−3)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム(TCI社)の水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.35部の黒色の固形生成物(I−3)が得られ、生成物(I−3)の収率は71%であった。
実施態様4
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(テトラブチルホスホニウム)(I−4)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を水酸化テトラブチルホスホニウムの水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.42部の黒色の固形生成物(I−4)が得られ、生成物(I−4)の収率は81%であった。
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(テトラブチルホスホニウム)(I−4)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を水酸化テトラブチルホスホニウムの水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.42部の黒色の固形生成物(I−4)が得られ、生成物(I−4)の収率は81%であった。
実施態様5
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(1−ドデシルピリジニウム)(I−5)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を、98%の塩化1−ドデシルピリジニウム試薬(アルドリッチ)によって作成した水酸化1−ドデシルピリジニウムの水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.32部の黒色の固形生成物(I−5)が得られ、生成物(I−5)の収率は63%であった。
シス−ジ(チオシアナート)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル)ルテニウム(II)(1−ドデシルピリジニウム)(I−5)の合成
10部の脱イオン水を5部の脱イオン水と5部のメタノールで置き換え、水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液を、98%の塩化1−ドデシルピリジニウム試薬(アルドリッチ)によって作成した水酸化1−ドデシルピリジニウムの水溶液で置き換えた以外は、実施態様1で説明した同じ方法によって本実施態様の化合物を合成した。最終的に0.32部の黒色の固形生成物(I−5)が得られ、生成物(I−5)の収率は63%であった。
実施態様6
色素増感太陽電池の調製
フッ素ドープの酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基材を、20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストで1回又は数回被覆した。ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結したが、焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmだった。
色素増感太陽電池の調製
フッ素ドープの酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基材を、20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストで1回又は数回被覆した。ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結したが、焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmだった。
実施態様1で調製したルテニウム錯体をアセトニトリルとt−ブタノール(1:1、v/v)の混合物に溶解し、0.5Mのルテニウム錯体を含有する色素溶液を得た。次いで、多孔性TiO2層で覆った前述のガラス基材を色素溶液に浸し、多孔性のTiO2層に色素を付着させた。16〜24時間後、得られたガラス基材を取り出し、乾燥させ、その結果、光陽極が得られた。
フッ素ドープの酸化スズで覆ったガラス基材にドリルで穴を開け0.75μmの直径を持つ注入口を形成した。この注入口は電解質を注入するのに使用された。次いで、フッ素ドープの酸化スズで覆ったガラス基材上にH2PtCl6の溶液(1mLのエタノールに2mgのPt)を被覆し、得られたガラス基材を400℃にて15分間加熱して陰極を得た。
順次、60μmの厚さを持つ熱可塑性ポリマー層を光陽極と陰極の間に配置した。これら2つの電極を120〜140℃で圧迫して互いに接着させた。
次いで電解質を注入したが、それは、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチルピリジンを含有するアセトニトリルの溶液であった。熱可塑性のポリマー層で注入口を封止した後、本実施態様の色素増感太陽電池が得られた。
実施態様7
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様2によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様2によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
実施態様8
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様3によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様3によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
実施態様9
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様4によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体を実施態様4によって調製されたルテニウム錯体で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
比較実施態様10
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体をZ907で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
色素増感太陽電池の調製
実施態様1によって調製されたルテニウム錯体をZ907で置き換えた以外、本実施態様の色素増感太陽電池を調製する方法は、実施態様6に記載されたものと同一である。
試験方法及び結果
光電特性についての試験
実施態様6〜9及び比較実施態様によって調製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、充填比(FF)、光電変換効率(η)及び外部量子効率(IPCE)をAM1.5の励起光の照明下で測定した。試験結果を以下の表1に示す。
光電特性についての試験
実施態様6〜9及び比較実施態様によって調製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、充填比(FF)、光電変換効率(η)及び外部量子効率(IPCE)をAM1.5の励起光の照明下で測定した。試験結果を以下の表1に示す。
表1の試験結果は、本発明のルテニウム錯体によって調製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、及び充填比(FF)は、Z907色素によって調製された色素増感太陽電池に比べて改善されることを示している。それは、本発明のルテニウム錯体が色素増感太陽電池の光電変換効率を改善することができることを意味する。
結論として、本発明は、幾つかの方向で、たとえば、目的、方法及び効率、又はさらに技術及び研究及び設計において従来技術とは異なる。好ましい実施態様に関して本発明を説明してきたが、以下で請求されるような本発明の範囲を逸脱することなく多数のほかの可能な改変や変更を行い得ることが理解されるべきである。従って、本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲にて定義されるべきであり、前述の実施例は、本発明の範囲を限定するとは決して解釈すべきではない。
好ましい実施態様に関して本発明を説明してきたが、以下で請求されるような本発明の範囲を逸脱することなく多数のほかの可能な改変や変更を行い得ることが理解されるべきである。
Claims (18)
- L1が2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸である請求項1に記載のルテニウム錯体。
- L1が2,2’−ビピリジル−4,4’−ジスルホン酸である請求項1に記載のルテニウム錯体。
- L1が2,2’−ビピリジル−4,4’−ジホスホン酸である請求項1に記載のルテニウム錯体。
- L2が2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニルである請求項1に記載のルテニウム錯体。
- L2が2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニルである請求項2に記載のルテニウム錯体。
- AがN+R1R2R3R4であり、R1、R2、R3及びR4がそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである請求項2に記載のルテニウム錯体。
- mが1である請求項2に記載のルテニウム錯体。
- AがN+R1R2R3R4であり、R1、R2、R3及びR4がそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルである請求項6に記載のルテニウム錯体。
- mが1である請求項6に記載のルテニウム錯体。
- mが1である請求項11に記載のルテニウム錯体。
- ルテニウム錯体が色素増感太陽電池用の色素化合物である請求項1に記載のルテニウム錯体。
- ルテニウム錯体が色素増感太陽電池用の色素化合物である請求項15に記載のルテニウム錯体。
- 色素増感太陽電池であって、
(a)下記式(I)で表されるルテニウム錯体を含む光陽極と、
L1は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジスルホン酸又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジホスホン酸であり;
L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジトリデシルであり;
Aは、X+R1R2R3R4、
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルであり;mは1又は2である)
(b)陰極と
(c)光陽極と陰極の間に配置される電解質層とを含む色素増感太陽電池。 - 色素溶液であって、
(A)ルテニウム錯体の含量が0.01〜1重量%である、下記式(I)によって表されるルテニウム錯体と、
L1は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジスルホン酸又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジホスホン酸であり;
L2は、2,2’−ビピリジル−4,4’−ジノニル又は2,2’−ビピリジル−4,4’−ジトリデシルであり;
Aは、X+R1R2R3R4、
であり、式中、XはN又はPであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してC1〜20のアルキル、フェニル又はベンジルであり、R5、R6、R7はそれぞれ独立してC1〜20のアルキルであり;mは1又は2である)
(B)有機溶媒とを含み、有機溶媒の含量が99.99〜99重量%であり、有機溶媒が、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリジノンから成る群から選択される色素溶液。
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JP2011006660A JP2012116824A (ja) | 2010-11-12 | 2011-01-17 | 新規のルテニウム錯体及びそれを用いた光電部品 |
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KR101569098B1 (ko) | 2013-04-17 | 2015-11-17 | 주식회사 엠비케이 | 헤테로렙틱 루테늄 착화합물의 합성방법 |
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JP2007063266A (ja) * | 2005-08-03 | 2007-03-15 | Sumitomo Chemical Co Ltd | 化合物、光電変換素子及び光電気化学電池 |
WO2010055471A1 (en) * | 2008-11-11 | 2010-05-20 | Ecole Polytechnique Federale De Lausanne (Epfl) | Novel anchoring ligands for sensitizers of dye-sensitized photovoltaic devices |
WO2010059498A2 (en) * | 2008-11-18 | 2010-05-27 | Konarka Technologies, Inc. | Dye sensitized photovoltaic cell |
-
2011
- 2011-01-17 JP JP2011006660A patent/JP2012116824A/ja active Pending
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