JP2012104428A - 色素増感太陽電池及びその光陽極 - Google Patents
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Abstract
【課題】2種類を超える増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調整される光陽極、該電極を用いた色素増感太陽電池及び該電池の製造方法を提供する。
【解決手段】色素増感太陽電池の光陽極は、2種類の有機増感色素を吸収する多孔性の半導体層によって調製される。一方の有機増感色素は下式(I)で示される。
これら2種類の有機増感色素は、各色素間の最大吸収波長の差は50nmより大きい。これにより該光陽極はさらに大きな波長範囲で太陽のスペクトルを吸収することができ、該光陽極を用いた色素増感太陽電池は優れた光電変換効率を有する。
【選択図】なし
【解決手段】色素増感太陽電池の光陽極は、2種類の有機増感色素を吸収する多孔性の半導体層によって調製される。一方の有機増感色素は下式(I)で示される。
これら2種類の有機増感色素は、各色素間の最大吸収波長の差は50nmより大きい。これにより該光陽極はさらに大きな波長範囲で太陽のスペクトルを吸収することができ、該光陽極を用いた色素増感太陽電池は優れた光電変換効率を有する。
【選択図】なし
Description
本発明は、種々の増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、色素増感太陽電池用(Dye-sensitized Solar Cell: DSC)の新規の光陽極に関するものであり、さらに詳しくは種々の有機増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、DSC用の光陽極に関する。
産業技術の進歩に伴って、全世界は今日、エネルギー危機と環境汚染という2つの非常に深刻な問題に直面している。世界的なエネルギー危機を解決し、環境汚染を軽減する有効な手段の1つが太陽電池であり、それは太陽エネルギーを電気に変換することができる。色素増感太陽電池は、低い製造コスト、大規模な製造、大きな柔軟性、光の透過性、及び建造物への組み入れが可能であるという長所を有するので、色素増感太陽電池の応用はますます魅力的になっている。
最近、Gratzelらは、色素増感太陽電池の実用性を示す一連の出版物を開示した(たとえば、非特許文献1)。色素増感太陽電池の一般的構造は、陽極、陰極、ナノサイズの二酸化チタン層、色素及び電解質を含み、色素は色素増感太陽電池の変換効率で決定的な役割を担う。色素増感太陽電池に好適な色素は、広い吸収スペクトル、高いモル吸収係数、熱安定性及び光安定性の特徴を有さなければならない。
ルテニウム錯体は、今日では最高の変換効率を持つ増感色素である。しかしながら、ルテニウム錯体の製造コストは高く、ルテニウム錯体が広く使われると供給不足の問題があるかもしれない。有機増感色素は高いモル吸収係数という利点を有する。さらに、分子設計を介して種々の有機増感色素を作製することが可能である。従って、様々な有機増感色素の使用によって異なった色を持つ色素増感太陽電池を製造して色素増感太陽電池の適用柔軟性を改善することができる。さらに、目的の色に合うように色素増感太陽電池の色を変更することも可能である。現在、たとえば、クマリン(非特許文献2)、インドリン(非特許文献3)、及びメロシアニン(非特許文献4)のような色素誘導体がすでに、色素増感太陽電池の製造に適用されている。
しかしながら、有機増感色素が吸収することができる波長範囲は狭いので、太陽のスペクトルのほんのわずかなエネルギー量しか使用することができない。従って、有機増感色素によって調製された色素増感太陽電池の光電変換効率は限定されており、改善するのは難しい。最近、Gratzelらは、2種類の有機色素を用いた共吸収工程によって、単一の有機色素で調製された色素増感太陽電池に比べて、色素増感太陽電池の光電変換効率を改善することができることを公表した(非特許文献5)。さらに、株式会社東芝(日本)は、有機色素と無機色素を用いた共吸収工程を介して調製された色素増感太陽電池が光電変換効率を改善することも開示した(特許文献1)。
好適な複数の増感色素を用いた共吸収(co−absorbed)工程は、色素増感太陽電池の光電変換効率に対して決定的に影響を及ぼす。従って、色素増感太陽電池の光電変換効率を改善するために、共吸収される増感色素の組み合わせを提供することが望ましい。
O'Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737
Hara, K.; Sayama, K.; Arakawa, H.; Ohga, Y.; Shinpo, A.; Sug, S. Chem. Commun., 2001, 569
Horiuchi, T.; Miura, H.; Sumioka, K.; Uchida, S. J. Am. Chem. Soc., 2004, 126 (39), 12218
Otaka, H.; Kira, M.; Yano, K.; Ito, S.; Mitekura, H.; Kawata, T.; Matsui, F. J. Photochem.Photobiol. A: Chem.; 2004, 164, 67
Kung D.; Walter P.; Nuesch F.; Kim S.; Ko J.; Comte P.; Zakeeruddin S. M.; Zakeeruddin M. K.; Gratzel, M. Langmuir 2007, 10906-10909
本発明の目的は、2種類を超える増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、色素増感太陽電池用の新規の光陽極を提供することである。
本発明の別の目的は、2種類を超える有機増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、色素増感太陽電池用の新規の光陽極を提供することである。
本発明の別の目的は、2種類を超える増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、新規の色素増感太陽電池を提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、2種類を超える有機増感色素を連続して吸収する多孔性の半導体層によって調製される、新規の色素増感太陽電池を提供することである。
本発明の色素増感太陽電池で使用される色素化合物の最大吸収波長は互いに相補的なので、色素化合物はさらに大きな波長範囲の太陽のスペクトルを吸収することができる。従って、本発明の色素増感太陽電池は優れた光電特性を示す。
本発明はまた、色素増感太陽電池を製造する方法も提供し、製造される色素増感太陽電池はさらに良好な光電変換効率を示す。
本発明の光陽極は、透明な基材と、透明な導電層と、多孔性半導体層と、色素化合物とを含む。
本発明の光陽極では、透明な基材は、基材の材料が透明な材料である限り、特に限定されない。好ましくは、透明な基材の材料は、良好な耐水性、溶媒耐性及び耐候性を持つ透明な材料である。従って、色素増感太陽電池は、透明な基材によって、外側からの水分又は気体に耐えることができる。透明な基材の具体例には、たとえば、石英やガラスのような透明な無機基材;たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明なプラスチック基材が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過性及びその特性に対する要求に従って変更することができる。好ましくは、透明な基材の材料はガラスである。
さらに、本発明の光陽極では、透明な導電層の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga2O3、ZnO−Al2O3、又はスズ系酸化物であることができる。
加えて、本発明の光陽極では、、多孔性の半導体層は半導体粒子から作ることができる。好適な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3、及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。好ましくは、半導体粒子はTiO2粒子である。半導体粒子の平均直径は5〜500nmであることができる。好ましくは、半導体粒子の平均直径は10〜50nmである。さらに、多孔性半導体層の厚さは5〜25μmである。
本発明の光陽極によれば、色素は、
(a)下記式(I)又はその塩によって表される第1の有機増感色素と、
(式中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、又はハロゲンであり、nは1,2又は3の整数であり;
D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、又はD1、D2及びNが一緒に結合して
(すなわち、C4〜C6のシクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり;
Bは、
であり、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである)
(b)第2の有機増感色素とを含み、第1の有機増感色素と第2の有機増感色素の間の最大吸収波長の差は50nmより大きい。
(a)下記式(I)又はその塩によって表される第1の有機増感色素と、
D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、又はD1、D2及びNが一緒に結合して
(すなわち、C4〜C6のシクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり;
Bは、
であり、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである)
(b)第2の有機増感色素とを含み、第1の有機増感色素と第2の有機増感色素の間の最大吸収波長の差は50nmより大きい。
上記式(I)にて、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであってもよく、nは1,2又は3の整数であることができる。好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、nは1又は2である。さらに好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、nは1又は2である。一層さらに好ましくは、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、nは1である。最も好ましくは、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、nは1である。
上記式(I)では、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であってもよく、又は又はD1、D2及びNが一緒に結合して
(すなわち、C4〜C6のシクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9はH又はC1〜C12のアルキルである。さらに好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、R9はH又はC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。
であってもよく、又は又はD1、D2及びNが一緒に結合して
(すなわち、C4〜C6のシクロヘテロアルキレン)を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9はH又はC1〜C12のアルキルである。さらに好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、R9はH又はC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。
加えて、本発明の態様の1つによれば、上記式(I)においてD1及びD2は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル又は
であってもよく、式中、R5、R6及びR7は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンである。好ましくは、D1及びD2におけるR5、R6及びR7は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシである。さらに好ましくは、D1及びD2におけるR5、R6及びR7は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2におけるR5はHであり、R6及びR7は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2におけるR5はHであり、R6及びR7は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキルである。
であってもよく、式中、R5、R6及びR7は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンである。好ましくは、D1及びD2におけるR5、R6及びR7は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシである。さらに好ましくは、D1及びD2におけるR5、R6及びR7は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2におけるR5はHであり、R6及びR7は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキルである。最も好ましくは、D1及びD2におけるR5はHであり、R6及びR7は、それぞれ独立してC1〜C12のアルキルである。
上記式(I)では、Bは、
であってもよく、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは、
であり、式中、R16、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。
であってもよく、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは、
であり、式中、R16、R19及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。
加えて、本発明の別の態様によれば、上記式(I)においてBは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、又はハロゲンであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。一層さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16及びR19は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは、
であり、式中、R16及びR19はHであり、ZはSである。
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、又はハロゲンであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである。好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16はH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシであり、R19は、H又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。一層さらに好ましくは、Bは、
であり、式中、R16及びR19は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはSである。最も好ましくは、Bは、
であり、式中、R16及びR19はHであり、ZはSである。
上記式(I)によって表される第1の有機増感色素の具体例は、以下である。
成分(b)における第2の有機増感色素の具体例は以下である。
本発明では、増感色素の分子は遊離の酸の形態で提示される。しかしながら、増感色素の実際の形態は塩であってもよく、それどころか、アルカリ金属塩又は四級アンモニウム塩であることができる。
本発明の色素増感太陽電池は、光陽極と、陰極と、光陽極と陰極の間に配置される電解質層とを含む。
本発明の色素増感太陽電池によれば、光陽極は前述の光陽極である。
加えて、色素増感太陽電池の陰極の材料は特に限定されることはなく、導電性を持ついかなる材料が挙げられてもよい。さもなければ、陰極の材料は、光陽極に向いた陰極の表面に形成される導電層がある限り、絶縁材料であることができる。電気化学的な安定性を持ついずれの材料をも陰極の材料として使用することができる。陰極の材料に好適な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
さらに、色素増感太陽電池の電解質層で使用される材料は特に限定されることはなく、電子及び/又は正孔を移動させることができるいかなる材料でもあることができる。
他方では、本発明はまた、色素増感太陽電池を製造する方法も提供するが、それは、以下の工程:(1)前述の光陽極を提供することと、(2)第2の基材を提供することと、(3)第2の基材上に金属層を形成することと、(4)光陽極と第2の基材を組み立てること、その際、半導体層は金属層に向かい合い、光陽極と第2の基材の間に収容空間を形成することと、(5)収容空間に電解質を充填することと、(6)収容空間を封止することを含む。
本発明の式(I)によって表される有機増感色素は以下のスキーム1に従って合成されることができる。
(スキーム1)
(i)KOtBu/K2CO3、1,4−ジオキサン)/DMF
(ii)PdCl2(dppf)、5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸又は4−ホルミルフェニルボロン酸、K2CO3、CH3OH/トルエン
(iii)シアノ酢酸、ピペリジン、CH3CN
(スキーム1)
(i)KOtBu/K2CO3、1,4−ジオキサン)/DMF
(ii)PdCl2(dppf)、5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸又は4−ホルミルフェニルボロン酸、K2CO3、CH3OH/トルエン
(iii)シアノ酢酸、ピペリジン、CH3CN
スキーム1に示すように、7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イルアミンを1−ヨードブタンと反応させて(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチルアミン(21)を形成する。次いで、(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチル−アミン(21)を5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸と反応させることによって鈴木カップリング反応を行い、5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)を得る。最終的に、アセトニトリル中でピペリジンを触媒として用いて、5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)をシアノ酢酸と反応させて2−シアノ−3−[5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−イル]−アクリル酸(I−1)を得る。
式(II−1)及び(II−2)によって表される有機増感色素は市販されている。
本発明の色素増感太陽電池を製造する方法は特に限定されず、当該技術で既知の従来の方法によって本発明の色素増感太陽電池を製造することができる。
透明な基材の材料は、基材の材料が透明な材料である限り、特に限定されない。好ましくは、透明な基材の材料は、良好な耐水性、溶媒耐性及び耐候性を持つ透明な材料である。従って、色素増感太陽電池は、透明な基材によって、外側からの水分又は気体に耐えることができる。透明な基材の具体例には、たとえば、石英やガラスのような透明な無機基材;たとえば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明なプラスチック基材が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透過性及びその特性に対する要求に従って変更することができる。特定の実施態様では、透明な基材の材料はガラス基材である。
さらに、透明な導電層の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga2O3、ZnO−Al2O3、又はスズ系酸化物であることができる。具体的な実施態様では、透明な導電層にはフッ素ドープした酸化スズが使用される。
加えて、多孔性の半導体層は半導体粒子から作ることができる。好適な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb2O5、TiSrO3、及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。先ず、ペースト形態で半導体粒子を調製し、次いで透明な導電性基材をペーストで被覆する。本明細書で使用されるコーティング法は、ブレードコーティング、スクリーン印刷、スピンコーティング、スプレーコーティング又は湿式コーティングであることができる。さらに、好適な厚さの多孔性半導体層を得るために、1回又は多数回コーティングを行うことができる。半導体層は単層又は多層であることができ、多層の各層は異なった直径を持つ半導体粒子によって形成される。たとえば、5〜50nmの直径を持つ半導体粒子を5〜20μmの厚さに被覆し、次いでその上に、200〜400nmの直径を持つ半導体粒子を3〜5μmの厚さに被覆する。被覆した基材を50〜100℃にて乾燥させた後、被覆した基材を400〜500℃にて30分間焼結して多層の半導体層を得る。
有機増感色素を好適な溶媒に溶解して色素溶液を調製する。好適な溶媒には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書では、半導体層で被覆した透明な基材を色素溶液に浸して色素溶液における色素を半導体層に完全に吸収させる。色素の吸収が完了した後、半導体層で被覆した透明な基材を取り出し、乾燥させて色素増感太陽電池用の光陽極を得る。
さらに、色素増感太陽電池用の陰極の材料は特に限定されることはなく、導電性を持ついかなる材料が挙げられてもよい。さもなければ、陰極の材料は、光陽極に向いた陰極の表面に形成される導電層がある限り、絶縁材料であることができる。陰極の材料は電気化学的な安定性を持つ材料であることができる。陰極の材料に好適な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
さらに、色素増感太陽電池の電解質層で使用される材料は特に限定されることはなく、電子及び/又は正孔を移すことができる材料であることができる。加えて、液体電解質は、ヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液、ヨウ素を含有するN−メチル−2−ピロリジノンの溶液、又はヨウ素を含有する3−メトキシプロピオニトリルの溶液であることができる。具体的な実施態様では、液体電解質はヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液であることができる。
本発明の色素増感太陽電池を製造する具体的な方法の1つを以下に提示する。
先ず、スクリーン印刷法により、20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストを用いてフッ素ドープの酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材を1回又は数回被覆する。次いで、被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結する。
アセトニトリルとt−ブタノール(1:1、v/v)の混合物に有機増感色素を溶解して色素溶液を作成する。次いで、多孔性のTiO2層を有する前述のガラス基材を色素溶液に浸す。多孔性のTiO2層が色素溶液の有機増感色素を吸収した後、得られたガラス基材を取り出し、乾燥させて光陽極を得る。
フッ素をドープした酸化スズで被覆したガラス基材にドリルで穴を開けて0.75μmの直径を持つ注入口を形成し、この注入口は電解質を注入するために使用する。次いで、フッ素をドープした酸化スズで被覆したガラス基材にH2PtCl6の溶液を被覆し、ガラス基材を400℃で15分間加熱して陰極を得る。
続いて、60μmの厚さを持つ熱可塑性のポリマー層を光陽極と陰極の間に配置する。120〜140℃にてこれら2つの電極を加圧して互いに接着させる。
次いで電解質を注入するが、電解質は、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチルピリジンを含有するアセトニトリルの溶液である。熱可塑性のポリマー層で注入口を封止した後、本発明の色素増感太陽電池が得られる。
以下の実施例は本発明を説明することを目的とすることが意図される。しかしながら、本発明の範囲は、これに添付される特許請求の範囲として定義されるべきであり、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。以下の実施例では、化合物は遊離の酸の形態で表されるが、増感色素の実際の形態は、塩であってもよく、それどころか、アルカリ金属塩又は四級アンモニウム塩であることができる。加えて、具体的な説明がない場合、実施例で使用される部分及び比率の単位は重量によって計算され、温度は摂氏度(℃)で表される。重量部と体積部の間の関係はキログラムとリットルの間の関係と同様である。
以後、有機増感色素を合成する方法及び色素増感太陽電池を製造する方法を詳細に記載するが、有機増感色素を合成する方法は前述のスキーム1を参照することができる。
実施例1
(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチルアミン(21)の合成
N2雰囲気下、0.52部の7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イルアミンと、2.21部の1−ヨードブタンと、0.67部のカリウムtert−ブトキシドと、0.83部の炭酸カリウムを10部の無水ジメチルホルムアミドと10部の1,4−ジオキサンに加えた後、撹拌して混合した。次いで、反応混合物を95℃に加熱し、24時間反応させた。反応混合物を冷却した後、水で反応を止め、生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムによって脱水工程を行った。溶媒を除いた後、溶出液としてジクロロメタン/ヘキサンを用いることによってシリカゲルカラムにて残留物を精製し、本実施例の化合物(21)を得た。この化合物は淡黄色の固体の形態であり、この化合物の収率は83%であった。
(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチルアミン(21)の合成
N2雰囲気下、0.52部の7−ブロモ−9H−フルオレン−2−イルアミンと、2.21部の1−ヨードブタンと、0.67部のカリウムtert−ブトキシドと、0.83部の炭酸カリウムを10部の無水ジメチルホルムアミドと10部の1,4−ジオキサンに加えた後、撹拌して混合した。次いで、反応混合物を95℃に加熱し、24時間反応させた。反応混合物を冷却した後、水で反応を止め、生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムによって脱水工程を行った。溶媒を除いた後、溶出液としてジクロロメタン/ヘキサンを用いることによってシリカゲルカラムにて残留物を精製し、本実施例の化合物(21)を得た。この化合物は淡黄色の固体の形態であり、この化合物の収率は83%であった。
実施例2
5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)の合成
N2雰囲気下、0.49部の(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチルアミン(21)と、0.19部の5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸と、0.41部の炭酸カリウムと、0.16部のPdCl2(dppf)を5部のトルエン及び5部のCH3OHに加えた後、撹拌及び混合した。反応混合物を60℃に加熱し、18時間反応させた。水で反応を止め、生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムによって脱水工程を行った。溶媒を除いた後、溶出液としてジクロロメタン/ヘキサンを用いることによってシリカゲルカラムにて残留物を精製し、本実施例の化合物(22a)を得た。この化合物は赤橙色の固体の形態であり、この化合物の収率は52%であった。
5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)の合成
N2雰囲気下、0.49部の(7−ブロモ−9,9−ジブチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジブチルアミン(21)と、0.19部の5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸と、0.41部の炭酸カリウムと、0.16部のPdCl2(dppf)を5部のトルエン及び5部のCH3OHに加えた後、撹拌及び混合した。反応混合物を60℃に加熱し、18時間反応させた。水で反応を止め、生成物をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムによって脱水工程を行った。溶媒を除いた後、溶出液としてジクロロメタン/ヘキサンを用いることによってシリカゲルカラムにて残留物を精製し、本実施例の化合物(22a)を得た。この化合物は赤橙色の固体の形態であり、この化合物の収率は52%であった。
実施例3
4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)ベンズアルデヒド(22b)の合成
5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸を0.18部の4−ホルミルフェニルボロン酸で置き換える以外、本化合物を調製する方法は、実施例2で記載されたものと同一であり、本実施例の化合物(22b)を得る。この化合物は黄色の固体の形態であり、この化合物の収率は61%であった。
4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)ベンズアルデヒド(22b)の合成
5−ホルミル−2−チオフェンボロン酸を0.18部の4−ホルミルフェニルボロン酸で置き換える以外、本化合物を調製する方法は、実施例2で記載されたものと同一であり、本実施例の化合物(22b)を得る。この化合物は黄色の固体の形態であり、この化合物の収率は61%であった。
実施例4
2−シアノ−3−[5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−イル]−アクリル酸(I−1)の合成
N2雰囲気下、0.23部の5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)と、0.05部のシアノ酢酸と、0.017部のピペリジンを10部のアセトニトリルに加えた後、撹拌及び混合した。次いで反応混合物を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応混合物を室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、固形物を得た。次いで固形物を水、エーテル及びアセトニトリルで逐次洗浄し、暗赤色の固形物を得た。最終的に、溶出液としてジクロロメタン/メタノールを用いることによってシリカゲルカラムにてこの暗赤色の固形物を精製し、本実施例の化合物(I−1)を得た。この化合物は暗赤色の固体の形態であり、この化合物の収率は86%であった。
2−シアノ−3−[5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−イル]−アクリル酸(I−1)の合成
N2雰囲気下、0.23部の5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)と、0.05部のシアノ酢酸と、0.017部のピペリジンを10部のアセトニトリルに加えた後、撹拌及び混合した。次いで反応混合物を90℃に加熱し、6時間反応させた。反応混合物を室温に冷却した後、反応混合物を濾過し、固形物を得た。次いで固形物を水、エーテル及びアセトニトリルで逐次洗浄し、暗赤色の固形物を得た。最終的に、溶出液としてジクロロメタン/メタノールを用いることによってシリカゲルカラムにてこの暗赤色の固形物を精製し、本実施例の化合物(I−1)を得た。この化合物は暗赤色の固体の形態であり、この化合物の収率は86%であった。
実施例5
2−シアノ−3−[4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−フェニル]−アクリル酸(I−2)の合成
本実施例において5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)を4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)ベンズアルデヒド(22b)で置き換える以外、本実施例の化合物を調製する工程は、実施例4で記載されたものと同一である。この化合物は赤橙色の固体の形態であり、この化合物の収率は68%であった。
2−シアノ−3−[4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−フェニル]−アクリル酸(I−2)の合成
本実施例において5−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)−チオフェン−2−カルボアルデヒド(22a)を4−(9,9−ジブチル−7−ジブチルアミノ−9H−フルオレン−2−イル)ベンズアルデヒド(22b)で置き換える以外、本実施例の化合物を調製する工程は、実施例4で記載されたものと同一である。この化合物は赤橙色の固体の形態であり、この化合物の収率は68%であった。
比較例1〜10
色素増感太陽電池の調製
20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストによってフッ素ドープの酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材を1回又は数回被覆した。但し、ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結した。焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmであった。
色素増感太陽電池の調製
20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストによってフッ素ドープの酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材を1回又は数回被覆した。但し、ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結した。焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmであった。
それぞれ、式(II−1)と(II−2)の第2の有機増感色素を1×10-4Mの濃度で作成し、式(I−1)と(I−2)の第1の有機増感色素を5×10-4Mの濃度で作成した。次いで、TiO2層で被覆した陽極を式(I−1)、(I−2)、(II−1)及び(II−2)の色素溶液にそれぞれ2、5、7及び24浸した。浸漬条件は以下の表1に列記する。
フッ素ドープの酸化スズで被覆したガラス基材にドリルで穴を開け0.75μmの直径を持つ注入口を形成した。注入口は電解質を注入するのに使用された。次いで、フッ素ドープの酸化スズで被覆したガラス基材上にH2PtCl6の溶液(1mLのエタノールに2mgのPt)を被覆し、得られたガラス基材を400℃にて15分間加熱して陰極を得た。
連続して、60μmの厚さを持つ熱可塑性ポリマー層を光陽極と陰極の間に配置した。これら2つの電極を120〜140℃で加圧して互いに接着させた。
次いで電解質を注入したが、それは、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチルピリジンを含有するアセトニトリルの溶液であった。熱可塑性のポリマー層で注入口を封止した後、本比較例の色素増感太陽電池が得られた。
実施例6〜12
色素増感太陽電池の調製
フッ素ドープの酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材を20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストを用いて1回又は数回被覆した。ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結した。焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmであった。
色素増感太陽電池の調製
フッ素ドープの酸化スズ(FTO)で被覆したガラス基材を20〜30nmの直径を持つTiO2粒子を含有するペーストを用いて1回又は数回被覆した。ガラス基材の厚さは4mmであり、ガラス基材の電気抵抗は10Ωである。次いで被覆したガラス基材を450℃にて30分間焼結した。焼結した多孔性のTiO2層の厚さは10〜12μmであった。
引き続き、2種類の有機増感色素を用いて共吸収工程を実施した。先ず、それぞれ、式(II−1)と(II−2)の第2の有機増感色素を1×10-4Mの濃度で調合し、式(I−1)と(I−2)の第1の有機増感色素を5×10-4Mの濃度で調合した。次いで、TiO2層で被覆した陽極を、第2の有機増感色素の色素溶液に4時間浸し、次いで第1の有機増感色素の溶液に1、2、4及び6時間浸した。浸漬条件は以下の表2に列記する。
フッ素ドープの酸化スズで被覆したガラス基材にドリルで穴を開け0.75μmの直径を持つ注入口を形成した。注入口は電解質を注入するのに使用された。次いで、フッ素ドープの酸化スズで被覆したガラス基材上にH2PtCl6の溶液(1mLのエタノールに2mgのPt)を被覆し、得られたガラス基材を400℃にて15分間加熱して陰極を得た。
引き続き、60μmの厚さを持つ熱可塑性ポリマー層を光陽極と陰極の間に配置した。これら2つの電極を120〜140℃で加圧して互いに接着させた。
次いで電解質を注入したが、それは、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチルピリジンを含有するアセトニトリルの溶液であった。熱可塑性のポリマー層で注入口を封止した後、本実施例の色素増感太陽電池が得られた。
試験方法及び結果
UV−Visスペクトル
式(I−1)、(I−2)、(II−1)及び(II−2)の有機増感色素を溶媒としての塩化メチレンと共に処方して色素溶液を得た。次いで各色素溶液のUV−Visスペクトルを測定した。
UV−Visスペクトル
式(I−1)、(I−2)、(II−1)及び(II−2)の有機増感色素を溶媒としての塩化メチレンと共に処方して色素溶液を得た。次いで各色素溶液のUV−Visスペクトルを測定した。
式(I−1)の有機増感色素のλmaxは、427nmであり、式(I−2)の有機増感色素のλmaxは、380nmであり、式(II−1)の有機増感色素のλmaxは、491nmであり、式(II−2)の有機増感色素のλmaxは、526nmである。
光電特性に関する試験
比較例1〜4及び6〜9、並びに実施例6〜9によって調製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、充填比(FF)及び光電変換効率(η)をAM1.5の刺激光の照明下で測定した。試験結果を以下の表3及び表4に示す。
比較例1〜4及び6〜9、並びに実施例6〜9によって調製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、充填比(FF)及び光電変換効率(η)をAM1.5の刺激光の照明下で測定した。試験結果を以下の表3及び表4に示す。
表3に示す結果によれば、共吸収工程を介して第1の有機増感色素(a)と第2の有機増感色素(b)の双方で調製された色素増感太陽電池(実施例6〜9)の光電特性は、単一の第1の有機増感色素(a)(すなわち、比較例1〜4)又は単一の第2の有機増感色素(b)(すなわち、比較例6〜9)で調製されたものよりも良好である。
表4に示される試験結果によれば、共吸収工程を介して第1の有機増感色素((I−1)と(I−2))と第2の有機増感色素((II−1)と(II−2))の双方で調製された色素増感太陽電池(実施例8,10及び11)の光電特性は、単一の第1の有機増感色素(a)(すなわち、比較例3〜5)又は単一の第2の有機増感色素(b)(すなわち、比較例8〜10)で調製されたものよりも良好である。
言い換えれば、第1の有機増感色素の構造は、第2の有機増感色素の構造とは異なるので、第1の有機増感色素と第2の有機増感色素の間の最大吸収波長は、UV−Visスペクトルが異なる。従って、異なった吸収波長を持つ2つに有機増感色素を共吸収させて色素増感太陽電池を調製する場合、可視領域におけるスペクトル利用を高めることが可能である。加えて、共吸収工程を実施する方法を有機増感色素の種類に従って調整して電池の光電効率を高めることができる。
結論として、本発明は、幾つかの方向で、たとえば、目的、方法及び効率、又はさらに技術及び研究及び設計において従来技術とは異なる。好ましい実施態様に関して本発明を説明してきたが、下文で請求されるような本発明の範囲を逸脱することなく多数のほかの可能な改変や変化を行い得ることが理解されるべきである。従って、本発明の範囲は、これに添付されるクレームとして定義されるべきであり、前述の実施例は、本発明の範囲を限定するとは決して解釈されるべきではない。
Claims (18)
- 色素を吸収する半導体層を有する基材である光陽極であって、色素が、
(a)下記式(I)又はその塩によって表される第1の有機増感色素と、
D1及びD2はそれぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、又はD1、D2及びNが一緒に結合して
を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり;
Bは、
であり、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである)
(b)第2の有機増感色素とを含み、
第1の有機増感色素と第2の有機増感色素の間の最大吸収波長の差は50nmより大きい光陽極。 - nが1である請求項1に記載の光陽極。
- D1及びD2が、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、式中、R5、R6、R7及びR8が、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9が、H又はC1〜C12のアルキルである請求項1に記載の光陽極。 - Bが、
であり、式中、R16が、H、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19及びR22が、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZがO、S又はSeである請求項3に記載の光陽極。 - ZがSであり、nが1である請求項4に記載の光陽極。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR16が、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシである請求項5に記載の光陽極。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR16が、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである請求項6に記載の光陽極。
- Bが、
であり、式中、R16が、H、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ又はハロゲンであり、R19がH又はC1〜C12のアルキルであり、ZがO、S又はSeである請求項1に記載の光陽極。 - D1及びD2が、それぞれ独立してC1〜C12のアルキル又は
であり、式中、R5、R6及びR7が、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンである請求項8に記載の光陽極。 - ZがSであり、nが1である請求項9に記載の光陽極。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR16が、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル又はC1〜C12のアルコキシである請求項10に記載の光陽極。
- R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR16が、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルである請求項11に記載の光陽極。
- R16及びR19がHである請求項12に記載の光陽極。
- 成分(a)における第1の有機増感色素が、下記式(I−1)又は(I−2)又はその塩によって表される化合物である請求項1に記載の光陽極。
- 成分(b)における第2の有機増感色素が、下記式(II−1)又は(II−2)又はその塩によって表される化合物である請求項1に記載の光陽極。
- 成分(b)における第2の有機増感色素が式(II−1)又は(II−2)又はその塩によって表される化合物である請求項14に記載の光陽極。
- 色素増感太陽電池であって、
(A)色素を吸収する半導体層を有する基材である光陽極と、
(B)陰極と、
(C)光陽極と陰極の間に配置される電解質層とを含み、
前記色素が、(a)下記式(I)又はその塩によって表される第1の有機増感色素と、
D1及びD2はそれぞれ独立してC1〜C12のアルキル、
であり、又はD1、D2及びNが一緒に結合して
を形成し、式中、R5、R6、R7、R8、R10、R11、R13及びR14は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、アミノ又はハロゲンであり、R9、R12及びR15は、それぞれ独立してH、又はC1〜C12のアルキルであり;
Bは、
であり、式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立してH、C1〜C12のアルキル、C1〜C12のアルコキシ、又はハロゲンであり、R19、R20、R21及びR22は、それぞれ独立してH又はC1〜C12のアルキルであり、ZはO、S又はSeである)
(b)第2の有機増感色素とを含み、
第1の有機増感色素と第2の有機増感色素の間の最大吸収波長の差は50nmより大きい色素増感太陽電池。 - 色素増感太陽電池を製造する方法であって、以下の工程:
(1)請求項1に記載の光陽極を提供することと、
(2)第2の基材を提供することと、
(3)第2の基材上に金属層を形成することと、
(4)光陽極及び第2の基材を組み立てること、但し、半導体層を金属層に向け、光陽極と第2の基材の間に収容空間を形成することと、
(5)収容空間に電解質を充填することと
(6)収容空間を封止することとを含む方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010253497A JP2012104428A (ja) | 2010-11-12 | 2010-11-12 | 色素増感太陽電池及びその光陽極 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010253497A JP2012104428A (ja) | 2010-11-12 | 2010-11-12 | 色素増感太陽電池及びその光陽極 |
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2010
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