JP2012111434A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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智仁 大野
Hirotatsu Kitahata
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Abstract

【課題】第1回転電機のロック状態への移行と第2回転電機の駆動軸からの切り離しとが同時進行する場合に蓄電手段の充放電収支の変動を抑制する。
【解決手段】第1回転電機をロックする第1係合機構、第2回転電機と駆動軸との間のトルク伝達を可能とする第2係合機構を備えた係合装置(800)を備えたハイブリッド車両(1)を制御する装置(100)は、第1係合機構における複数の係合要素が回転同期状態となるように第1回転電機を制御する第1制御手段と、蓄電手段の充放電収支の変化量を特定する特定手段と、第2係合機構の一の係合要素における、アクチュエータの駆動力に抗する抵抗力が、アクチュエータの駆動力以下となる範囲内で、特定された変化量に基づいて調整トルクの目標値を決定する目標値決定手段と、決定された目標値に応じた調整トルクを第2回転電機から出力させる第2制御手段とを具備する。
【選択図】図8

Description

本発明は、第1回転電機から反力要素を介して反力トルクを付与することにより内燃機関のトルクを駆動軸に伝達可能な差動機構と、駆動軸との間でトルクの入出力が可能な第2回転電機と、第1回転電機をロックするロック機構と、第2回転電機と駆動軸とを断接するクラッチ機構とを備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
この種のクラッチ機構としてドグクラッチ機構を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された車両の駆動制御装置によれば、ドグ歯に作用するトルクを推定し、この推定されたトルクに基づいてドグクラッチ機構の解放制御を行うことにより解放時間のばらつきを低減することが可能であるとされている。
また、この種の装置として、第1回転電機をロックすることにより内燃機関を駆動軸に直結してハイブリッド車両を走行させるにあたり、第2回転電機のフリクションや慣性による動力損失を回避する目的から第2回転電機を駆動軸から切り離すものがある。特に、上記ロック機構及びクラッチ機構として、係合要素同士の係合時に係合要素間の回転同期を必要とし、解放時に係合要素間に作用するトルク低減を必要とするものを対象としたものがある(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された装置によれば、第1回転電機がゼロ回転である場合にロック機構としてのブレーキ機構が係合され、その後に第2回転電機のトルクがゼロトルクまで低減される。
尚、第1回転電機のロックに伴い第2回転電機を駆動軸から切り離す技術思想については、特許文献3にも開示されている。
特開2010−089575号公報 特開2005−192284号公報 特開2003−104072号公報
ロック機構が、係合要素同士の係合が解除された解放状態から当該係合要素同士が係合した係合状態へ移行するに際し、係合要素同士の回転同期を必要とする係合機構である場合、アクチュエータからの駆動力の付与により実際に係合状態へ向けて係合要素が駆動されるのに先んじて、この回転同期に係る処理が必要となる。
この処理の際、第1回転電機の回転速度は、回転同期状態に相当する回転速度へ向けて変化することになるが、第1回転電機の動作点変化に伴う蓄電手段の充放電収支は、従前の第1回転電機の動作点等に応じて、正側(即ち、第1回転電機がロック状態への移行過程で発電する)又は負側(即ち、第1回転電機がロック状態への移行過程で放電する)に変化する。
ここで、蓄電手段の蓄電状態は一律ではないから、例えば蓄電手段が満充電或いはそれに近い状態において上記充放電収支が正側に変化する事態も、反対に、例えば蓄電手段が過放電或いはそれに近い状態において上記充放電収支が負側に変化する事態も生じ得る。満充電或いはそれに近い状態においては、物理的に或いは各種の制約により、蓄電手段に対するそれ以上の充電は現実的に不可能であり、また、過放電或いはそれに近い状態においては、物理的に或いは各種の制約により、蓄電手段の電力を消費するそれ以上の放電は現実的に不可能である。
このような事態を防止して第1回転電機を確実にロックする観点から言えば、第1回転電機をロックする過程において、蓄電手段の充放電収支は平衡状態(理想的な一形態としては、充放電収支がゼロである状態)に維持されるのが望ましい。この充放電収支は、通常、駆動軸に直接的又は間接的に連結された第2回転電機のトルクにより、その変動を抑制することができる。
ところで、ドグクラッチ機構等の各種噛合式係合機構等においては、係合要素相互間に作用する伝達トルクが十分に低減された状態でないと係合要素同士を切り離すことができない。従って、第2回転電機と駆動軸との断接を行うクラッチ機構としてこの種の係合機構が適用される場合、係合要素同士を切り離す解放時における係合要素間の伝達トルクは、特許文献2に開示されるようにゼロトルク相当値まで低減されるのが一般的である。当然ながら、このように伝達トルクがゼロトルク相当値まで低減された状態においては、第2回転電機は当該充放電収支の調整に寄与しない。
一方、車両コストや車両搭載性を向上させる等の目的から、例えばアクチュエータを共用する等して、ロック機構における係合処理と、クラッチ機構における解放処理とを同時に実現する係合装置が公知である。このような係合装置を搭載するハイブリッド車両においては、第1係合機構の係合要素同士が回転同期状態に移行する期間において、第2係合機構の伝達トルクは先述したようにゼロトルク相当値まで低減されることになり、第1回転電機の動作点変化に伴う蓄電手段の充放電収支の変動を抑制することが困難となる。
ここで、従来からある技術思想においては、第1回転電機のロック状態への移行(即ち、第1係合機構の係合状態への移行)と第2回転電機の駆動軸からの切り離し(即ち、第2係合機構の解放状態への移行)とが同時に進行する場合における蓄電手段の充放電収支について、何ら想定されていない。このため、このような場合において、蓄電手段の充放電収支の変動を抑制することはできず、第1回転電機のロックが阻害される場合がある。また、蓄電手段の保護の観点からも望ましくない。このような問題は、特許文献1に開示されるように、ドグ歯に作用するトルクを推定可能であるとしても何ら変わり無く生じ得る。
このように、従来の技術思想には、第1回転電機のロック状態への移行と第2回転電機の駆動軸からの切り離しとが同時に進行する構成において、蓄電手段の充放電収支の変動が抑制され難いことに起因して、第1回転電機のロック状態への移行が阻害される又は著しく制約される、また蓄電手段に大きな物理的負荷が加わるという各種の技術的問題点がある。
本発明は、上述した技術的問題点に鑑みてなされたものであり、第1回転電機のロック状態への移行と第2回転電機の駆動軸からの切り離しとが同時に進行する構成において、蓄電手段の充放電収支の変動を抑制し得るハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、第1回転電機と、第2回転電機と、前記第1及び第2回転電機との間で電力の入出力が可能な蓄電手段と、前記第1回転電機に連結された第1回転要素、前記内燃機関に連結された第2回転要素及び前記車軸に繋がる駆動軸に連結された第3回転要素を含む相互に差動作用をなす複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、複数の係合要素同士が係合することにより前記第1回転電機を所定の回転速度にロックする第1係合機構、複数の係合要素が係合することにより前記第2回転電機と前記駆動軸との間のトルク伝達を可能とする第2係合機構、並びに前記第1及び第2係合機構の各々における一の前記係合要素に対し、該各々を係合状態及び解放状態とするための駆動力を付与可能なアクチュエータを備え、前記第1係合機構が前記係合状態となり且つ前記第2係合機構が前記解放状態となる第1動作状態と、前記第1係合機構が前記解放状態となり且つ前記第2係合機構が前記係合状態となる第2動作状態との間で動作状態を選択的に切り替え可能な係合装置とを備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、前記第2動作状態から前記第1動作状態への前記動作状態の切り替え要求が生じた場合に、前記第1係合機構における前記複数の係合要素が回転同期状態となるように前記第1回転電機を制御する第1制御手段と、前記第1係合機構における複数の係合要素が前記回転同期状態に移行する移行期間における、前記第1回転電機の動作点変化に伴う前記蓄電手段の充放電収支の変化量を特定する特定手段と、前記第2係合機構において前記複数の係合要素相互間に該相互間に作用する伝達トルクに比例して生じる摩擦力を含む前記一の係合要素における前記アクチュエータの駆動力に抗する抵抗力が、前記一の係合要素に付与される前記アクチュエータの駆動力以下となる範囲内で、前記特定された変化量に基づいて、前記移行期間における前記蓄電手段の充放電収支の変化を抑制するために前記第2回転電機から出力すべき調整トルクの目標値を決定する目標値決定手段と、前記決定された目標値に応じた前記調整トルクが出力されるように前記第2回転電機を制御する第2制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係るハイブリッド車両は、駆動軸に対しトルクを供給可能な動力要素として、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等、その物理的、機械的又は電気的構成を問わない各種の態様を採り得る、燃料の燃焼により動力を生成可能な機関としての内燃機関と、各々が力行及び発電(即ち、電力回生である)可能な、各種モータジェネレータ等の第1及び第2回転電機とを備える。
また、本発明に係るハイブリッド車両は、これら動力要素としての内燃機関並びに第1及び第2回転電機と、車軸に直結された或いは各種ギア機構を介して間接的に連結された駆動軸との間のトルク伝達を可能とする動力伝達機構を備える。
動力伝達機構は、第1回転電機に連結された第1回転要素と、内燃機関に連結された第2回転要素と、駆動軸に連結された第3回転要素とを少なくとも含む、相互に差動作用をなす複数の回転要素を備えた、好適には回転二自由度の差動機構として構成される。尚、動力伝達機構に備わる回転要素或いは差動機構の数量は多義的であってよく、例えば、動力伝達機構は、遊星歯車機構等の各種差動ギア機構を一又は複数備えてもよい。複数の遊星歯車機構を含む場合、各遊星歯車機構を構成する回転要素の一部が複数の遊星歯車機構相互間で適宜共有されてもよい。
動力伝達機構における回転要素相互間の差動作用に鑑みれば、第1回転電機に連結された第1回転要素は、内燃機関に反力トルクを付与する反力要素として機能する。第2回転要素を介して入力される内燃機関のトルクは、この反力トルクに対応する一部の直達トルクが、第3回転要素を介して駆動軸に伝達される。尚、このような構成においては、第1回転電機により、内燃機関の動作点は、少なくとも所定の範囲で連続的に可変となり得る。従って、動力伝達機構及び第1回転電機は、好適には一種の電気的CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速装置)として機能する。
一方、第2回転電機は、後述する第2係合機構が係合状態にある場合に、駆動軸と直結或いは各種ギア機構等を介して間接的に連結され、駆動軸との間でトルクの入出力が可能である。第2回転電機は、例えば正回転領域において、例えば駆動輪、車軸及び駆動軸を順次介する動力伝達経路でトルクが入力された場合(即ち、負トルクである)等に、係る入力トルクを利用した電力回生が可能であり、また例えば正回転領域において駆動軸に対し正トルクを供給(即ち、力行)することにより、駆動軸に供給されるトルクとしての駆動軸トルクの少なくとも一部を負担することが可能である。
本発明に係るハイブリッド車両における走行モードは、少なくとも、内燃機関の直達トルクと第2回転電機のトルクとを適宜協調的に使用する所謂ハイブリッドモード(協調の態様は多義的であり、例えば、第2回転電機からのトルクアシストがない場合も含む)と、少なくとも車両走行用動力として第2回転電機のトルクのみを使用する(即ち、単なるアイドリングや補機駆動用電力を得るための内燃機関の稼動等は適宜生じ得る)所謂EV(電気自動車)モードとの間で適宜選択可能である。
本発明に係るハイブリッド車両は、各々が複数の係合要素を備えた第1係合機構及び第2係合機構を含む係合装置を備える。
第1係合機構は、複数の係合要素同士が係合してなる係合状態において、第1回転電機を所定の回転速度にロックする係合機構である。実践的運用面において、第1係合機構における係合要素は、所定の回転速度を有するロック側の係合要素と、第1回転電機と直接的又は間接的に連結された第1回転電機側の係合要素とを含んでなる。尚、所定の回転速度がゼロであれば、ロック側の係合要素とは、即ち、固定要素(ブレーキ要素)を意味する。
第1回転電機は、先に述べたように内燃機関のトルクに対する反力トルクを付与する動力要素であるが、このように常時所定の回転速度にロックされている状態においては、第1係合機構から物理的に反力トルクを与えることができるため、第1回転電機の稼動を停止させることができる。従って、例えば、ハイブリッド車両が高速軽負荷走行状態にある場合のように、第1回転電機が負回転領域で負トルク(反力トルク)を供給する力行状態となることに起因する動力循環(第1回転電機の力行に要する電力を第2回転電機の発電作用により得られた発電電力により賄う非効率な電気パスを意味する)を回避することも可能となる。
第2係合機構は、複数の係合要素同士が係合してなる係合状態において、駆動軸と第2回転電機とを直接的に又は間接的に接続し、これらの係合が解除されてなる解放状態において第2回転電機を駆動軸から切り離す係合機構である。実践的運用面において、第2係合機構における係合要素は、駆動軸に連結された駆動軸側の係合要素と、第2回転電機に連結された第2回転電機側の係合要素とを含んでなる。
第2回転電機は、例えば上述したハイブリッドモード等において、内燃機関の直達トルクのみでは駆動軸トルクの要求値を満たさない場合等に駆動軸に対し適宜トルクのアシストを行う補助動力源として有効であるが、一方で、第1係合機構の作用により第1回転電機をロックしてなるエンジン直結モード等のように、駆動軸トルクの要求値を内燃機関の直達トルクのみで賄える状況(このような状況において第1回転電機がロックされるようにロック条件が定められていてもよい)においては、そのフリクションや慣性抵抗が動力損失を招き得る。第2係合機構によれば、例えばこのような場合において第2回転電機を駆動軸から切り離すことができ、燃料消費や電力消費の抑制に有益である。
このように、第1係合機構が係合状態にある場合には第2係合機構は解放状態にあるのが望ましく、第1係合機構が解放状態にある場合には第2係合機構は係合状態にあるのが望ましい。そこで、本発明に係る係合装置は、その動作状態として、第1係合機構が係合状態となり第2係合機構が解放状態となる第1動作状態と、第1係合機構が解放状態となり第2係合機構が係合状態となる第2動作状態との間で動作状態が選択的に切り替えられる構成となっている。この動作状態の選択的な切り替えは、駆動力付与手段としての各種実践的態様を伴い得るアクチュエータにより実現される。本発明に係るアクチュエータは、第1及び第2係合機構の各々における一の係合要素に対し駆動力を付与する(例えば、所定の方向にストロークさせるための駆動力であってもよい)ことにより、当該各々における係合要素同士を係合させ、また解放することができる。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、第2動作状態から第1動作状態への係合装置の動作状態の切り替え要求が生じた場合に、アクチュエータによる上述した駆動力の付与に先立って(即ち、実際に動作状態の切り替えが開始される前に)、第1係合機構における複数の係合要素が回転同期状態となるように第1回転電機が制御される。尚、第1回転電機に対してなされるこのような制御を、これ以降適宜「回転同期制御」と称することとする。
回転同期制御は、第1係合機構における係合要素の相対回転速度を予め設定された許容値未満の目標値に減少させる或いは収束させるべく、第1回転電機に対してなされる回転速度の制御である。回転同期制御は、例えば、予め設定された制御量に応じたフィードフォワード制御や、上記相対回転速度をフィードバックするフィードバック制御等を含んでいてもよい。尚、本発明に係る第1係合機構は、好適には、係合要素同士を係合させるにあたって、このような係合要素同士の回転同期を必要とする係合機構であり、少なくとも、このような回転同期が実践上の利得を生じ得る係合機構である。例えば、係合要素各々に形成された噛合用の歯状部材が噛合することにより係合力を発揮する、例えばドグクラッチ機構等の噛合式係合機構においては、歯状部材同士が噛合可能な位相状態になければ係合自体が成立しない。また、この種の噛合式係合機構や、一の係合要素が一対の係合部材含み、この一対の係合部材の一方の回転がロックされ同期回転関係が崩れることにより動力伝達部材を介して他方の係合部材もまたロックされる、例えばカムロック式係合機構等においては、所謂ガタ打ちショックと称される物理衝撃やそれに伴う衝撃音の発生を抑制する観点から、係合要素同士の回転同期が実質的に必須要件となる。
ここで、この回転同期制御自体は、第1回転電機のトルク制御により好適に進捗し得るが、第1回転電機における、トルク及び回転速度の変化、即ち動作点の変化は、バッテリ等の蓄電手段の充放電収支に影響を与える。端的には、この回転同期制御の過程で第1回転電機が力行状態を採るのであれば蓄電手段の充放電収支は負側に、反対に電力回生状態を採るのであれば蓄電手段の充放電収支は正側に夫々変化する。
ここで特に、蓄電手段の蓄電容量には無論物理的限界があるから、係合要素同士が回転同期状態に移行するまでの移行期間における充放電量と、蓄電手段の蓄電状態との関係によっては(尚、この関係は、一義的には規定され得ない)、満充電状態又はそれに準じる比較的良好な蓄電状態における更なる充電や、完全放電状態又はそれに準じる比較的悪化した充電状態における更なる放電の必要が生じ、蓄電手段やハイブリッド車両の実運用上、好ましくない。従って、回転同期制御により第1係合機構の係合要素同士を回転同期状態に移行させる移行期間においては、蓄電手段の充放電収支の変動を抑制する必要がある。
そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、第2回転電機から調整トルクが出力され、この調整トルクによる蓄電手段の充放電収支の変化が、第1回転電機の動作点変化に伴う充放電収支の変化と相殺される。その結果、蓄電手段の充放電収支の変化は抑制され、理想的には、充放電収支が一定或いはそれに類する状態に維持される。
調整トルクの目標値は、目標値決定手段により決定されるが、調整トルクの趣旨に鑑みれば、この目標値の決定に際しては、第1回転電機の動作点変化に伴って生じる充放電収支の変化量が把握される必要がある。そこで、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置では、特定手段により、この移行期間における、第1回転電機の動作点変化に伴う蓄電手段の充放電収支の変化量が特定される。目標値決定手段は、この特定された変化量に基づいて調整トルクの目標値を決定する。調整トルクの目標値は、理想的には、この充放電収支の変化がゼロとなるように、即ち、第1回転電機の動作点変化に伴う充電量(放電量)と、調整トルクに応じた放電量(充電量)とが完全に相殺するように設定される。
尚、「特定」とは、検出、算出、推定、同定、選択又は取得等、各種の実践的態様を伴い得る概念であり、特定手段が充放電量を特定するにあたっての実践的態様は特に限定されない趣旨である。補足すれば、単位時間当たりの充放電量とは、第1回転電機の単位時間当たりの仕事量であって、トルクと回転速度とが検出されていれば、公知の各種態様に従って容易に求められる。また、第2動作状態において第2回転電機の回転速度は駆動軸の回転速度と一義的な関係にあるから、第1回転電機の充放電量と釣り合う調整トルクは、これも公知の各種態様に従った数値演算等により容易に求めることができる。
ところで、本発明に係る係合装置は、第1動作状態と第2動作状態との間で動作状態が選択的に切り替わる構成を有しており、アクチュエータからの駆動力の付与により第1係合機構を係合状態へ実際に移行させるにあたっては、第2係合機構は逆に解放状態へ移行することになる。即ち、第2係合機構は、係合要素相互間に、伝達トルクとして調整トルクに応じたトルクが作用している状態で解放状態へ移行することになる。
ところが、係合要素相互間に作用する伝達トルクがゼロ或いはゼロ相当値まで低下していない状況においては、係合要素相互間に、この伝達トルクに応じた摩擦力が発生して、アクチュエータの駆動力に抗する抵抗力として作用する。従って、単に充放電収支のみを勘案して第2回転電機の調整トルクを制御すると、第2係合機構の係合要素同士の係合を解除するのに必要な駆動力が、アクチュエータから付与される駆動力を上回り、第2係合機構側の制約により、第1回転電機をロック出来ない事態が生じ得る。このような問題は、第1係合機構と第2係合機構との間で動作の独立性が担保されていれば顕在化し難い新規な問題であり、このような問題に想到することのない旧来の技術思想の範疇では、結局のところ、第2係合機構の係合要素同士の係合を解除する場合において、第2係合機構の係合要素相互間の伝達トルクはゼロトルク或いはゼロトルク相当値まで低減されるよりない。即ち、蓄電手段の充放電収支の変動を抑制することが困難となる。
これに対し、本発明に係る目標値決定手段は、係る問題点を考慮した上で、調整トルクの目標値を決定する構成となっている。即ち、本発明に係る目標値決定手段は、調整トルクに応じて増加する摩擦力を含む、アクチュエータの駆動力に抗する抵抗力(例えば、駆動力の付与対象となる係合要素の質量や慣性等に起因する抵抗力も含む)が、第2係合機構の係合要素に付与されるアクチュエータの駆動力以下となる範囲で、調整トルクの目標値を決定する。例えば、第1回転電機の動作点変化に伴って生じる充放電収支の変化を相殺し得る調整トルクにより摩擦力が増加した状態であっても第2係合機構を解放状態に移行させることが可能である場合には、調整トルクに実質的な制約はなく、また、係る調整トルクにより摩擦力が増加した状態では第2係合機構を解放状態に移行させることが不可能或いは困難である場合には、調整トルクは然るべき上限値に制限される。
従って、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、第1回転電機のロック状態への移行と、第2回転電機の駆動軸からの切り離しとが同時に進行する構成において、蓄電手段の充放電収支の変動を可及的に抑制することが可能となるのである。
尚、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、好適な一形態として、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体の或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記動作状態が前記第2動作状態から前記第1動作状態へ切り替えられた際に前記調整トルクに応じて発生するトルクショックの許容値を決定する許容値決定手段を更に具備し、前記目標値決定手段は、前記トルクショックが前記決定された許容値以下となる範囲で前記目標値を決定する(請求項2)。
上述したように、調整トルクの目標値は、第2係合機構の係合要素同士の係合を解除できるトルク範囲で決定されるが、第2回転電機が駆動軸から切り離された状態では、第2回転電機から出力される調整トルクは駆動軸に伝達されなくなるから、この調整トルクに応じたトルクショックが発生することになる。特に、充放電収支の維持と快適性の低下防止とは別問題であるから、このトルクショックが、ハイブリッド車両の快適性を大きく低下させる規模で生じる可能性は必ずしも低くない。
この態様によれば、許容値決定手段により、トルクショックの許容値が決定され、係合装置の動作状態が第2動作状態から第1動作状態へ切り替わる際に生じるトルクショックが、この決定された許容値未満となるように、調整トルクの目標値が決定される。即ち、実践的には、調整トルクの絶対値の上限は、このトルクショックを考慮した調整トルクの絶対値の上限と、第2係合機構を解放状態に移行せしめ得る調整トルクの絶対値の上限とのうち小さい方となる。従って、この態様によれば、トルクショックによる快適性の低下抑制と、蓄電手段の充放電収支の維持とを両立することができる。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記第1係合機構は、固定要素と、前記第1回転電機に連結されるカム要素及び所定の動力伝達部材を介装した状態で該カム要素と対向し且つ前記解放状態において前記固定要素から切り離されるクラッチ要素を含む回転電機側係合要素とを含み、前記クラッチ要素が前記アクチュエータからの駆動力の付与により前記固定要素側へストロークするのに伴って前記クラッチ要素が前記固定要素の対向面に形成された摩擦部材に押圧されることにより、前記動力伝達部材及び前記カム要素を介して前記第1回転電機が前記固定要素にロックされるカムロック機構であり、前記第1制御手段は、前記調整トルクの出力による前記充放電収支の変化の抑制量が前記特定された変化量未満である場合に、前記抑制量の不足分に応じて、前記回転同期状態を規定する、前記第1係合機構における前記複数の係合要素の相対回転速度を上昇させる(請求項3)。
カムロック式の係合機構は、固定要素の摩擦面とクラッチ要素の摩擦面との間に作用する摩擦力が主たる係合力であるから、回転同期状態として許容される、係合要素(この場合、固定要素と回転電機側係合要素)相互間の相対回転速度の範囲は、例えばドグクラッチ等の噛合式係合機構と較べて広い。即ち、回転同期制御により係合要素同士が回転同期状態に移行する移行期間において第1回転電機が採り得る動作点には、この種の噛合式係合機構と較べて自由度がある。
この態様によれば、上述した各種の態様において出力される調整トルクによりもたらされる、充放電収支の変化の抑制量が、特定手段により特定された充放電収支の変化量未満である場合、即ち、調整トルクでは充放電収支の変化を完全に抑制し得ない場合に、第1係合機構に係る回転同期状態を規定する係合要素同士の相対回転速度を上昇させる。尚、この際、クラッチ要素が固定要素の摩擦面に接触して生じるクラッチ要素とカム要素との相対回転速度の変化により動力伝達部材が回転方向に生じた間隙を詰める際の、所謂ガタ詰めショックや騒音が、予め設定された許容値以内に収まるのが望ましい。
この態様によれば、カムロック式係合機構の利点を生かして、第1回転電機の動作点を変化させることができるため、係合装置の動作状態が第2動作状態から第1動作状態へ移行するに際しての蓄電手段の充放電収支の変動をより好適に抑制することができる。
尚、この態様では、前記第1制御手段は、前記摩擦面を保護すべく設定された許容値以下の範囲で前記相対回転速度を上昇させてもよい(請求項4)。
相対回転速度を上昇させる程、実際の係合時において固定要素の摩擦面或いはクラッチ要素の摩擦面に加わる物理負荷は大きくなる。従って、摩擦面の保護を図る観点からは、許容される相対回転速度の上限値は自ずと定まる。このように定まる許容値以下の範囲で相対回転速度を上昇させれば、固定要素或いはクラッチ要素に形成された摩擦面の劣化を防ぐことが可能となり、当該摩擦面の劣化によるカムロック機構の誤係合或いは解放不良を防止することができる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図1のハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図2の矢線A方向へ見た第1係合機構の概略断面図である。 図3の模式的拡大図である。 第1係合機構の係合過程を説明する図である。 図2のハイブリッド駆動装置の一動作状態を例示する動作共線図である。 図1のハイブリッド車両においてECUにより実行される変速制御のフローチャートである。 図7の変速制御において実行されるMG1ロック制御のフローチャートである。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両1の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両1の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両1は、ECU100、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、アクセル開度センサ13及び車速センサ14並びにハイブリッド駆動装置10を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「ハイブリッド車両の制御装置」の一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する変速制御を実行可能に構成されている。
尚、ECU100は、本発明に係る「第1制御手段」、「特定手段」、「目標値決定手段」、「第2制御手段」及び「駆動軸トルク制御手段」及び「許容値決定手段」の夫々一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、これら各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1の車軸たる左車軸SFL(左前輪FLに対応)及び右車軸SFR(右前輪FRに対応)に駆動力としての駆動トルクを供給することによりハイブリッド車両1を駆動するドライブユニットである。ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成については後述する。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給可能に構成された不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、例えばリチウムイオンバッテリセル等の単位電池セルを複数(例えば、数百個)直列に接続した構成を有し、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する電池ユニットであり、本発明に係る「蓄電手段」の一例である。
アクセル開度センサ13は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
車速センサ14は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出可能に構成されたセンサである。車速センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、MG2減速機構400、駆動軸500、減速機構600、MG2出力軸700及び係合装置800を備える。
エンジン200は、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成された、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンである。エンジン200は、公知のガソリンエンジンであり、ここでは、その詳細な構成を割愛するが、エンジン200の出力動力たるエンジントルクTeは、不図示のクランク軸を介して、動力分割機構300の動力入力軸310に伝達される構成となっている。尚、エンジン200は、本発明に係る内燃機関の採り得る実践的態様の一例に過ぎず、本発明に係る内燃機関の実践的態様としては、エンジン200に限らず、公知の各種エンジンを採用可能である。
モータジェネレータMG1は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた電動発電機であり、本発明に係る「第1回転電機」の一例である。
モータジェネレータMG2は、モータジェネレータMG1よりも体格の大きい、本発明に係る「第2回転電機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。
尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、無論他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、本発明に係る「動力伝達機構」の一例たる遊星歯車機構である。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、本発明に係る「第1回転要素」の一例たるサンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「第3回転要素」の他の一例たるリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギア(不図示)と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「第2回転要素」の更に他の一例たるキャリアC1とを備える。
サンギアS1は、エンジントルクTeに拮抗する反力トルクを負担する反力要素であり、モータジェネレータMG1の出力回転軸たるMG1出力軸320に固定されている。従って、サンギアS1の回転速度は、モータジェネレータMG1の回転速度たるMG1回転速度Nmg1(MG1出力軸320の回転速度を意味する)と等価である。リングギアR1は、動力分割機構300の出力要素であり、動力出力軸330に、その回転軸を共有する形で連結されている。キャリアC1は、先に述べたように、エンジン200のクランク軸に連結された動力入力軸310にその回転軸を共有する形で連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度Neと等価である。
MG2減速機構400は、動力分割機構300の動力出力軸330に連結された第1ギア410、ハイブリッド駆動装置10の動力出力軸たる駆動軸500に連結され、第1ギア410及び第3ギア430と噛合する第2ギア420及び後述する駆動軸側係合要素822に連結され、第2ギア420と噛合する第3ギア430を備えた減速装置である。第2ギア420の回転速度は、駆動軸500の回転速度と等価であり、即ち、ハイブリッド駆動装置10の出力回転速度Noutである。
一方、第3ギア430の歯数は、第2ギア420の歯数よりも多くなっており、駆動軸500の回転速度は、減速された状態で駆動軸側係合要素822に伝達される。他方、第3ギア430の回転速度は、駆動軸側係合要素822が後述するMG2側係合要素821と係合した状態において、モータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2と等価となる。従って、MG2回転速度Nmg2は、出力回転速度Noutに対し減速される。
尚、MG2減速機構400の構成は、モータジェネレータMG2を減速する機構の採り得る一形態に過ぎず、この種の減速機構は、多様な形態を有し得る。例えば、この種の減速機構は、駆動軸に固定された回転要素と、固定要素に固定された回転要素と、MG2のロータに固定された回転要素とを含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を含む一種の差動ギア機構として構成されていてもよい。また、この種の減速機構は、必ずしもハイブリッド駆動装置に備わっておらずともよい。
減速機構600は、先述した左車軸SFL及び右車軸SFRと、駆動軸500との間のトルク伝達を行うギア機構である。
MG2出力軸700は、モータジェネレータMG2のロータに固定された、モータジェネレータMG2の出力回転軸である。
係合装置800は、第1係合機構810、第2係合機構820及び係合制御機構830を備えた、本発明に係る「係合装置」の一例である。
第1係合機構810は、係合状態においてモータジェネレータMG1をロックする、本発明に係る「第1係合機構」の一例たるカムロック式係合機構である。
ここで、図3を参照し、第1係合機構810の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、図2の矢線A方向へ見た第1係合機構810の概略断面図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図3において、第1係合機構810は、ケースCS、固定要素811、摩擦面812、クラッチ要素813、摩擦面814、カム815、カムボール816及びリターンスプリング817を備える。
ケースCSは、第1係合機構810を収容する筐体であり、ハイブリッド駆動装置10の外郭部材と略一体に固定されている。
固定要素811は、ケースCSに固定された、本発明に係る「固定要素」の一例たる円板状部材である。尚、固定要素811は、ケースCSに固定されているため、その回転速度はゼロ(即ち、本発明に係る「所定の回転速度」の一例)である。
摩擦面812は、固定要素811における、クラッチ要素813との対向面に形成された摩擦機能体である。摩擦面812の摩擦係数は、摩擦面812が形成されない場合と較べて、接触状態にある物体の回転方向への移動がより大きく阻害されるように設定されている。
クラッチ要素813は、固定要素811と間隙を隔てて対向配置され、カム815と一対をなす円板状の係合部材である。
摩擦面814は、クラッチ要素813における、固定要素811との対向面に形成された摩擦機能体である。摩擦面814の摩擦係数は、固定要素811と接触した場合のクラッチ要素813の回転が、摩擦面814が形成されない場合と較べてより大きく阻害されるように設定されている。
カム815は、MG1出力軸320に連結され、MG1出力軸320及びサンギアS1と一体回転可能な、クラッチ要素813と一対をなす略円板状の係合部材であり、本発明に係る「カム要素」の一例である。尚、カム815は、必ずしもMG1出力軸320と直接的に連結されている必要はなく、各種連結部材を介してMG1出力軸320と間接的に連結されていてもよい。
カムボール816は、カム815とクラッチ要素813とに挟持された、本発明に係る「動力伝達部材」の一例たる金属製の球状物体である。第1係合機構810は、サンギアS1及びMG1出力軸320を介してカム815に伝達されるモータジェネレータMG1の出力トルクたるMG1トルクTmg1が、このカムボール816を伝達要素としてクラッチ要素813に伝達される構成となっている。
リターンスプリング817は、一方の固定端がクラッチ要素813に固定され、他方の固定端が固定要素811に固定されてなる弾性体であり、クラッチ要素813をカム815の方向へ付勢している。このため、クラッチ要素813は、通常、このリターンスプリング817の付勢を受けて、所定の対向間隔GAP(符合省略)を隔てて固定要素811と対向する非接触位置で停止している。
尚、クラッチ要素813には、後述するフォーク833の一端部が固定されており、フォーク833が紙面左右方向にストロークするのに伴い、上記非接触位置からクラッチ要素813に形成された摩擦面814が固定要素811に形成された摩擦面812と接触する接触位置までストロークする構成となっている。
ここで、図4を参照し、第1係合機構810の構成について更に具体的に説明する。ここに、図4は、図3の模式的拡大図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、カム815及びクラッチ要素813の各々において相互に対向する対向面813A及び815Aは、夫々中心部へ向かう程、当該各々における、MG1出力軸320の伸長方向への厚みが小さくなるように形成されており、上記カムボール816は、通常、両者間の対向空間が最も広い中心部付近に挟持されている。
このため、クラッチ要素813が上記非接触位置にある場合、カム815とクラッチ要素813とは、このカムボール816をトルクの伝達要素として、モータジェネレータMG1の回転方向と等しい方向へ略一体に回転する。従って、クラッチ要素813が上記非接触位置にある場合、モータジェネレータMG1の回転は、少なくとも実質的には何ら阻害されることはない。尚、図4では、紙面下方をモータジェネレータMG1の正回転方向と定義するが、モータジェネレータMG1は、係る正回転方向のみならず、係る正回転方向と真逆の負回転方向にも同様に回転可能である。
次に、図5を参照し、第1係合機構810の係合の仕組みについて説明する。ここに、図5は、第1係合機構810の係合過程を説明する図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、図5(a)は、先の図4と同様の状態を表しており、クラッチ要素813と固定要素811との間に対向空間GAPが介在しており、クラッチ要素813は、固定要素811の摩擦面812による抑止力を受けることなく回転可能である。このため、カムボール816の作用によりカム815とクラッチ要素813とは略一体に回転可能である。
ここで、カム815は、MG1出力軸320を介してモータジェネレータMG1のロータに連結されており、このロータは、MG1出力軸320を介してサンギアS1に連結されている。従って、ハイブリッド駆動装置10において、カム815は、サンギアS1と一体に回転する回転要素として扱うことができる。即ち、図5(a)に示される状態では、サンギアS1もまたクラッチ要素813の制約を受けずに回転可能である。この状態は、本発明に係る「解放状態」の一例に相当する。
図5(b)には、先述したフォーク833が、上記非接触位置から所定量ストロークした状態が示される。即ち、この場合、フォーク833に連結されたクラッチ要素813は、リターンスプリング817の付勢に打ち勝って上記非接触位置から対極の接触位置まで移動し、その結果、固定要素811の摩擦面812とクラッチ要素813の摩擦面814とが接触して対向空間GAPは消滅する。摩擦面相互間に作用する摩擦力によって、クラッチ要素813の正回転又は負回転方向への動作は阻害される。即ち、この状態において、クラッチ要素813は、ケースCSに対して静止する。
一方、このようにクラッチ要素813が固定要素811に固定された状態では、消滅した対向空間GAPの代わりに、カムボール816とクラッチ要素813との間に、回転方向に沿ったガタGTAが形成される。従って、カム815がモータジェネレータMG1の回転の影響を受けて正回転方向又は負回転方向へ回転すると、カム815とカムボール816のみが、その回転方向へ移動する。尚、ここでは、これらが正回転方向(紙面下方)へ移動するものとして説明を継続する。
ここで、新たに形成されたガタGTAは、先に述べたように各対向面が断面視逆テーパ状となっていることから、カムボール816が回転方向に進行するにつれて徐々に詰められ、遂には消滅してガタ詰め完了状態となる。ガタ詰め完了状態においては、再びカム815、カムボール816及びクラッチ要素813が相互に接触した状態となる。
図5(c)には、このようなガタ詰め完了状態が示される。このガタ詰め完了状態でカム815が更に正回転方向に回転しようとした場合、この逆テーパ形状をなす対向面の作用によって、カムボール816には、クラッチ要素813を更に固定要素811の方向へ押圧する押圧力が発生する。この押圧力は、摩擦面812及び814相互間の摩擦力を増大させる方向に作用するため、第1係合機構810は、所謂セルフロック状態となる。
このセルフロック状態では、カム815もまたクラッチ要素813と同様にケースCSに対し静止、即ち固定された状態となる。その結果、カム815と一体に回転するサンギアS1及びモータジェネレータMG1もまた、ケースCSに対し固定された状態となる。即ち、モータジェネレータMG1はロック状態となる。ロック状態では、サンギアS1の回転速度、即ちMG1回転速度Nmg1がゼロとなる。
図2に戻り、第2係合機構820は、MG2側係合要素821、駆動軸側係合要素822及びスリーブ823を備えた、本発明に係る「第2係合機構」の一例たる回転同期噛合式のドグクラッチ機構である。
MG2側係合要素821は、MG2出力軸700に固定され、MG2出力軸700と一体回転する円板状の係合部材である。MG2係合要素821の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。
駆動軸側係合要素822は、MG2減速機構400の第3ギア430と回転軸を共有する円板状の係合部材である。駆動軸側係合要素822の外周面には、噛合用の歯状部材たる外歯(不図示)が等間隔に配設されている。
スリーブ823は、所定のストローク方向(紙面左右方向)に所定量ストローク可能に構成された環状部材である。スリーブ823の内周面には、噛合用の歯状部材たる内歯(不図示)が等間隔で配設されている。この内歯は、MG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822に夫々形成された上述の外歯と、回転同期状態において噛合可能に構成されている。図2には、スリーブ823がMG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822と噛合している状態が例示されている。
このようにスリーブ823がMG2側係合要素821及び駆動軸側係合要素822の双方と係合している状態では、MG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822とは間接的に係合していることになり、モータジェネレータMG2は、駆動軸500との間でトルクの伝達を行うことが可能である。即ち、この状態は、本発明に係る「係合状態」の一例である。一方、スリーブ823がストローク方向(より具体的には、紙面左方向)に所定量ストロークした状態では、スリーブ823に形成された内歯は、MG2側係合要素821の外歯から解放され、駆動軸側係合用822のみと噛合する。この状態では、MG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822とは係合しておらず、モータジェネレータMG2は駆動軸500から切り離された形となり、両者の間のトルク伝達は遮断される。即ち、この状態は、本発明に係る「解放状態」の一例である。
係合制御機構830は、フォーク831、ロッド832及びアクチュエータ833を備え、これら第1及び第2係合機構の状態によって規定される係合装置800の動作状態を選択的に切り替える機構である。
フォーク831は、一方の端部が第1係合機構810における上述したクラッチ要素813に固定され、他方の端部が第2係合機構820におけるスリーブ823に固定された駆動部材である。フォーク831とこれらクラッチ要素及びスリーブは、ストローク方向(紙面左右方向)に一体に往復運動可能に構成される。
ロッド832は、フォーク831に固定され、フォーク831にアクチュエータ833からの動力を伝達する動力伝達部材である。ロッド832は、上述のストローク方向に所定量ストローク可能であり、ロッド832のストローク運動は、ロッド832に連結された上述のフォーク831の往復運動に変換される構成となっている。
アクチュエータ833は、ロッド832に対し、フォーク831をストローク方向にストローク運動させるための駆動力を付与可能な、本発明に係る「アクチュエータ」の一例たる、公知の直動式電磁アクチュエータである。アクチュエータ833は、その駆動力源としてソレノイド(電磁石)を備えており、このソレノイドに対し、駆動電流たる励磁電流が供給されることにより、ロッド832をストローク方向に変位させる電磁力を発生させる仕組みとなっている。
尚、アクチュエータ833は、PCU11と電気的に接続されており、PCU11からの電力供給により駆動電流を供給可能である。従って、アクチュエータ833の動作状態もまた、ECU100により制御される構成となっている。尚、ロッド832のストローク方向は、駆動電流の符合を反転させることによって反転する。
このように、係合装置800においては、アクチュエータ833が第1係合機構810と第2係合機構820との間で共有されており、ロッド832及びフォーク833のストローク運動により、第1係合機構810及び第2係合機構820の状態が同時に切り替えられる。
ここで特に、図示するように、第1係合機構810が解放状態にある場合には、第2係合機構820は係合状態となる。反対に、第1係合機構810が係合状態にある場合には、第2係合機構820は解放状態となる。即ち、係合装置800は、その動作状態が、第1係合機構810が係合状態にあり且つ第2係合機構820が解放状態にある第1動作状態と、第1係合機構810が解放状態にあり且つ第2係合機構820が係合状態にある第2動作状態との間で選択的に切り替えられる構成となっている。
尚、ハイブリッド駆動装置10においては、図示破線枠A1、A2及びA3に相当する部位に、レゾルバ等の回転センサが付設されており、検出部位の回転速度を検出可能な構成となっている。これら回転センサは、ECU100と電気的に接続された状態にあり、検出された回転速度は、夫々ECU100に対し一定又は不定の周期で送出されている。補足すると、図示破線枠A1に相当する部位の回転速度とは、即ちMG1回転速度Nmg1であり、図示破線枠A2に相当する部位の回転速度とは、即ちMG2回転速度Nmg2である。また、図示破線枠A3に相当する部位の回転速度とは、即ち、出力回転速度Noutである。
また、ハイブリッド駆動装置10において、動力分割機構300は、上述した構成の下で、エンジン200から動力入力軸310に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1によってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジントルクTeを2系統に分割することが可能である。この際、動力分割機構300の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギアS1に作用するトルクTesは下記(1)式により、また動力出力軸330に現れるエンジン直達トルクTerは下記(2)式により、夫々表される。
Tes=−Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
尚、本発明に係る「動力伝達機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力伝達機構は、複数の遊星歯車機構が組み合わされた複合型遊星歯車機構であってもよい。
<実施形態の動作>
<変速モードの詳細>
本実施形態に係るハイブリッド車両1は、変速モードとして、固定変速モード及び無段変速モードを選択可能である。
ここで、図6を参照し、ハイブリッド車両1の変速モードについて説明する。ここに、図6は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態を例示する動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6(a)において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にサンギアS1(一義的にモータジェネレータMG1)、キャリアC1(一義的にエンジン200)及びリングギアR1(一義的にモータジェネレータMG2及び駆動軸500)が表されている。
ここで、動力分割機構300は、相互に差動関係にある複数の回転要素により構成された回転二自由度の遊星歯車機構であり、サンギアS1、キャリアC1及びリングギアR1のうち二要素の回転速度が定まった場合に、残余の一回転要素の回転速度が必然的に定まる構成となっている。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表すことができる。
図6(a)において、車速V及び出力回転速度Noutと一義的な回転関係にあるリングギアR1が、図示白丸m1に相当する回転速度で回転しているとする。この場合、モータジェネレータMG1が、図示白丸g1に相当する回転速度で回転していれば、残余の回転要素たるキャリアC1に連結されたエンジン200の回転速度(即ち、機関回転速度Ne)は、必然的に図示白丸e1に相当する回転速度となる。この際、リングギアR1の回転速度を維持したまま(即ち、一義的に出力回転速度Nout及びMG2回転速度Nmg2を維持したまま)モータジェネレータMG1の回転速度を図示白丸g2及び白丸g3に相当する回転速度に夫々変化させれば、エンジン200の回転速度は、夫々図示白丸e2及び白丸e3に相当する回転速度へと変化する。
即ち、この場合、モータジェネレータMG1を回転速度制御機構として機能させることによって、エンジン200を所望の動作点(ここでは、機関回転速度NeとエンジントルクTeの組み合わせにより規定される一動作条件を意味する)で動作させることが可能となる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。
無段変速モードにおいては、当然ながらMG1回転速度Nmg1は可変である必要がある。このため、無段変速モードが選択される場合、係合装置800は、第1係合機構810が解放状態且つ第2係合機構820が係合状態となる先述した第2動作状態に制御される。
動力分割機構300において、駆動軸500に先に述べたエンジントルクTeに対応するトルクTerを供給するためには、MG1トルクTmg1として、エンジントルクTeに応じてサンギアS1の回転軸たるMG1出力軸320に現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符合が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクを、モータジェネレータMG1からこのMG1出力軸320に供給する必要がある。この場合、上記白丸g1或いは白丸g2といった正回転領域の動作点において、MG1は正回転負トルクの電力回生状態(即ち、発電状態)となる。このように、無段変速モードにおいては、モータジェネレータMG1を反力要素として機能させることにより、駆動軸にエンジントルクTeの一部を供給しつつ、サンギア軸に分配されるエンジントルクTeの一部で電力回生(発電)が行われる。駆動軸500に対し要求されるトルク(即ち、ハイブリッド車両1の要求トルク)が、エンジン200からの直達トルクで不足する場合には、この回生電力を利用する形で、或いは適宜バッテリ12から電力を持ち出して、モータジェネレータMG2から駆動軸に対し適宜アシストトルクとしてのMG2トルクTmg2が供給される。
一方、例えば高速軽負荷走行時等、出力回転速度Noutが比較的高い割に機関回転速度Neが比較的低い運転条件においては、モータジェネレータMG1が、例えば図示白丸g3の如き負回転領域の動作点となる。モータジェネレータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しているから、この場合、MG1は、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1から出力されるMG1トルクTmg1は、ハイブリッド車両1の駆動トルクとして駆動軸に伝達される。
他方で、ハイブリッド駆動装置10では、エンジン直達トルクTerとMG2トルクTmg2との総和がドライバ要求トルクに合致するように、エンジン200、MG1及びMG2が相互に協調的に制御されており、このようにMG1が力行状態に陥った場合、モータジェネレータMG2は、駆動軸500に供給される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため負トルク状態となる。この場合、モータジェネレータMG2は、正回転負トルクの電力回生状態となる。このような状態においては、MG1からの駆動力をMG2での電力回生に利用し、この回生電力によりMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10のシステム効率が低下する。
そこで、ハイブリッド車両1では、予め、例えばこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、係合装置800の動作状態が、第1係合機構810が係合状態且つ第2係合機構820が解放状態となる先述した第1動作状態に制御され、モータジェネレータMG1がロックされる。その様子が図6(b)に示される。第1係合機構810の一方の係合要素たる固定要素811は、ゼロ回転固定のブレーキ要素であるから、第1係合機構810によりモータジェネレータMG1がロック状態に移行すると、モータジェネレータMG1は、図示白丸g4に相当するゼロ回転にロックされる。
この場合、出力回転速度NoutとMG1回転速度Nmg1(Nmg1=0)とにより、残余の機関回転速度Neは、図示白丸e4に相当する回転速度に一義的に決定される。即ち、モータジェネレータMG1がロックされた場合、機関回転速度Neは、車速Vと一義的な出力回転速度Noutにより一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)。この状態に対応する変速モードが固定変速モードである。
固定変速モードでは、本来モータジェネレータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクを、第1係合機構810の物理的な係合力により代替させることができる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1を電力回生状態にも力行状態にも制御する必要はなくなり、モータジェネレータMG1を停止させることが可能となり、同時に、モータジェネレータMG2を停止させることもまた可能となる。従って、固定変速モードでは、駆動軸に現れる駆動トルクが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構300により駆動軸側に分割される直達トルクTerのみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
ここで、係合装置800の動作状態が第1動作状態に切り替えられた場合、第2係合機構820は、MG2側係合要素821と駆動軸側係合要素822との係合が解除された解放状態となる。モータジェネレータMG2は、非稼動空転状態にある場合において、そのフリクションや回転慣性により駆動軸500の回転を妨げる単なる慣性体に過ぎなくなるが、このように第1動作状態においてモータジェネレータMG2は駆動軸500から切り離されるから、ハイブリッド駆動装置10における燃料消費は可及的に抑制される。特に、係合装置800は、係合制御機構830の構成により、第1係合機構810と第2係合機構820とを同時に駆動することができる。そのため、係合装置800は、第1動作状態から第2動作状態への動作状態の切り替え及び第2動作状態から第1動作状態への動作状態の切り替えを効率的に行うことが出来る。更には、各係合機構を単一のアクチュエータ833で駆動することができるため、電力消費率の面においても、車両搭載性の面においても、またコスト面においても、係合機構毎にアクチュエータが設けられる構成と較べて有利である。
<変速制御の詳細>
係合装置800の動作状態を切り替えることによる変速モードの選択は、ECU100により実行される変速制御によって制御される。
ここで、図7を参照し、変速制御の詳細について説明する。ここに、図7は、変速制御のフローチャートである。
図7において、ECU100は、モータジェネレータMG1が非ロック状態にあるか否か、即ち、係合装置800が第2動作状態にあるか否かを判定する(ステップS101)。係合装置800の動作状態は、アクチュエータ833の動作状態を制御するECU100自身が制御情報として保持している。
モータジェネレータMG1が非ロック状態にある場合(ステップS101:YES)、ECU100は、ハイブリッド車両1の運転条件が、予めモータジェネレータMG1をロックすべきものとして定められたMG1ロック領域に該当するか否かを判定する(ステップS102)。尚、ステップS102において判定に供される運転条件は一義的でないが、例えば、好適には、ハイブリッド車両1の車速V及び要求駆動力Ft(車軸に供給すべき駆動力)等が採用され得る。また、MG1ロック領域の定義も、実験的、経験的又は理論的に適宜設定可能であるが、例えば、上述したように高速軽負荷走行時に対応する領域に設定されていてもよい。運転条件がMG1ロック領域に該当しない場合(ステップS102:NO)、処理はステップS101に戻される。
ハイブリッド車両1の運転条件がMG1ロック領域に該当する場合(ステップS102:YES)、ECU100は、MG1ロック制御を実行する(ステップS200)。MG1ロック制御は、第1係合機構810を解放状態から係合状態へ切り替える一方で第2係合機構820を係合状態から解放状態へ切り替える制御であり、即ち、第2動作状態から第1動作状態へ係合装置800の動作状態を切り替える制御である。MG1ロック制御が実行されると、処理はステップS101に戻される。尚、MG1ロック制御については後述する。
一方、ステップS101において、モータジェネレータMG1が非ロック状態でない場合(ステップS101:NO)、即ち、係合装置800が第1動作状態である場合、ECU100は、MG1ロックの解除要求があるか否かを判定する(ステップS103)。尚、MG1ロックの解除要求は、基本的に、ハイブリッド車両1の運転条件が先のMG1ロック領域以外の領域に該当する場合に発生する。MG1ロックの解除要求がない場合(ステップS103:NO)、ECU100は、処理をステップS101に戻す。即ち、係合装置800は、従前の第1動作状態に維持される。
MG1ロックの解除要求がある場合(ステップS103:YES)、ECU100は、MG1ロックを解除する(ステップS104)。MG1ロックの解除とは、即ち、第1係合機構810を係合状態から解放状態へ切り替える一方で第2係合機構820を解放状態から係合状態へ切り替える制御であり、第1動作状態から第2動作状態へ係合装置800の動作状態を切り替える制御である。MG1ロックが解除されると、処理はステップS101に戻される。
尚、MG1ロックが解除される場合、駆動軸500から切り離された状態にあるモータジェネレータMG2の回転速度たるMG2回転速度Nmg2と、駆動軸側係合要素822の回転速度との同期が図られる。一方で、モータジェネレータMG1のトルク制御が実行され、第1係合機構810がその時点で負担するエンジン200の反力トルクがモータジェネレータMG1から出力される。このようにして、固定要素811からカム815へ反力トルクの移譲がなされる。ECU100は、第2係合機構820の回転同期と、第1係合機構810における反力トルクの移譲とが完了すると、アクチュエータ833を駆動制御して、クラッチ要素813及びスリーブ823を同時にストロークさせ、モータジェネレータMG1のロックを解除すると共に、モータジェネレータMG2を駆動軸500に接続する。
<MG1ロック制御の概要>
モータジェネレータMG1をロックするにあたっては、上述したガタ詰め時に生じるガタ詰めショックを防止するために、実際にアクチュエータ833の駆動制御によりクラッチ要素813をストロークさせる以前に、クラッチ要素813、カムボール816及びカム815を含むMG1側係合要素(即ち、本発明に係る「回転電機側係合要素」の一例)と固定要素811とを回転同期させる必要がある。
本実施形態においては、MG1側係合要素の係合相手はゼロ回転固定の固定要素811であるから、実践上、これらを回転同期させる回転同期処理とは、MG1側係合要素の回転速度、即ち、一義的にMG1回転速度Nmg1を、予め双方の係合が許可されるものとして設定された同期回転領域の回転速度まで変化させる処理を意味する。
ここで、MG1ロック要求が生じる直前のモータジェネレータMG1の動作点(ここでは、回転速度及びトルクにより規定される一動作条件を意味する)は一義的ではなく、モータジェネレータMG1がその時点で電力回生状態にあるか力行状態にあるかもまた一義的でない。然るに、いずれにせよ、バッテリ12の充放電収支は、モータジェネレータMG1の動作点の変化に伴って、規模の大小はさておき変動する。このような変速モードの切り替え中(変速中)におけるバッテリ12の充放電収支の変動は、好ましくない。
一方、充放電収支が正側に変動するのであれば、余剰な電力をモータジェネレータMG2の力行に消費して、充放電収支の変動を相殺することができる。同様に、充放電収支が負側に変動するのであれば、持ち出された電力が補填されるようにモータジェネレータMG2で電力を回生して、充放電収支の変動を相殺することができる。即ち、何らの制約もなければ、モータジェネレータMG2から正負いずれかの調整トルクTajを出力させることにより、変速中の充放電収支の変動を抑制することができる。
ところが、単に充放電収支の変動を抑制する観点に立って調整トルクを制御してしまうと、実践上、各種の問題が生じ得る。変速制御において実行されるMG1ロック制御では、この各種の問題点を考慮しつつ、変速中における充放電収支の変動を好適に抑制することが可能となっている。
<MG1ロック制御の詳細>
ここで、図8を参照し、MG1ロック制御の詳細について説明する。ここに、図8は、MG1ロック制御のフローチャートである。
図8において、ECU100は、充放電量Tbatを算出する(ステップS101)。充放電量Tbatとは、先述した回転同期処理により、MG1回転速度Nmg1がゼロ回転に移行する移行期間において生じる充放電量、即ち、充放電収支の変化量を意味し、本発明に係る「第1回転電機の動作点変化に伴う蓄電手段の充放電収支の変化量」の一例である。充放電量Tbatは、MG1回転速度Nmg1とMG1トルクTmg1とに基づいた数値演算により算出される。
充放電量Tbatを算出すると、ECU100は、解放許容トルク調整量Tlimit1を算出する(ステップS102)。解放許容トルク調整量Tlimit1は、第2係合機構820において、MG2側係合要素821と噛合するスリーブ823をMG2側係合要素821から切り離すことが可能となる調整トルクTaj(即ち、MG2トルクTmg2)の絶対値の上限値である。
より具体的には、スリーブ823にはアクチュエータ833からの駆動力が付与されるが、スリーブ823に作用する摩擦力が、この駆動力よりも大きければ、スリーブ823を解放側へストロークさせることが出来ない。ここで、このアクチュエータの駆動力に抗する摩擦力は、MG2側係合要素821とスリーブ823との間に作用する押圧力の絶対値に比例する。更に、この押圧力は、MG2側係合要素821とスリーブ823との間に作用する伝達トルクに比例する。従って、スリーブ823をMG2側係合要素821から解放し得るトルク範囲の上限を規定するMG2トルクTmg2の値を決定することができる。解放許容トルクTlimit1は、モータジェネレータMG2から出力される調整トルクTajがそれよりも大きいと、モータジェネレータMG1をロック出来ない値である。
続いて、ECU100は、ショック許容トルク調整量Tlimit2を算出する(ステップS203)。ショック許容トルク調整量Tlimit2は、ハイブリッド車両1の快適性を担保する観点から、スリーブ823がMG2側係合要素821から切り離された時点で生じるトルクショックに対し予め実験的に、経験的に又は理論的に設定される許容上限値に相当する調整トルクTajの絶対値である。即ち、調整トルクTajが、ショック許容トルク調整量Tlimit2よりも大きい場合、モータジェネレータMG2が駆動軸500から切り離された時点で、この調整トルクTajに応じて生じるトルクショックが、ドライバに不快感を与え得る程度に顕在化してしまうのである。
次に、ECU100は、ステップS203において算出されたショック許容トルク調整量Tlimit2が、ステップS202において算出された解放許容トルク調整量Tlimit1よりも大きいか否かを判定する(ステップS204)。
ステップS204に係る判定の結果、解放許容トルク調整量Tlimit1がショック許容トルク調整量Tlimit2未満である場合(ステップS204:YES)、ECU100は、解放許容トルク調整量Tlimit1を調整トルクTajとして設定する(ステップS205)。また、解放許容トルク調整量Tlimit1がショック許容トルク調整量Tlimit2以上である場合(ステップS204:NO)、ECU100は、ショック許容トルク調整量Tlimit2を調整トルクTajとして設定する(ステップS206)。即ち、ECU100は、解放許容トルク調整量Tlimit1とショック許容トルク調整量Tlimit2とのうち絶対値の小さい方の値を、調整トルクTajとして設定する。
調整トルクTajを設定すると、ECU100は、設定された調整トルクTajをバッテリ12の充放電収支の変化の抑制量Tbatajに換算すると共に、ステップS201において算出された充放電量Tbatが、この抑制量Tbatajよりも大きいか否かを判定する(ステップS207)。
抑制量Tbatajが充放電量Tbat以上である場合(ステップS207:NO)、ECU100は、充放電量Tbatに相当する分だけトルクオフセットしたモータジェネレータMG2の駆動制御を開始する(ステップS210)。また、それと同時に、第1係合機構810の回転同期制御を開始する(ステップS211)。回転同期制御とは、第1係合機構810のMG1側係合要素と固定要素811との相対回転速度Nr1(即ち、ここでは、MG1回転速度Nmg1)を、目標値Nr1tg(即ち、ここでは、ゼロ回転)に収束させる制御であり、モータジェネレータMG1のトルク制御により実現される。
ステップS210及びステップS211が実行される場合、スリーブ823をMG2側係合要素821から確実に切り離し、且つ切り離し時点のトルクショックを許容範囲に収めつつ、バッテリ12の充放電収支の変動が相殺される。
一方、抑制量Tbatajが充放電量Tbat未満である場合(ステップS207:YES)、即ち、調整トルクTajでは、モータジェネレータMG1の動作点変化に伴うバッテリ12の充放電収支の変動を完全に相殺し得ない場合、ECU100は、調整不足量Tstg(Tstg=Tbat−Tbataj)を算出する(ステップS208)。
次に、ECU100は、オフセット回転充放電補正量Tbatofsを算出する(ステップS209)。オフセット回転充放電補正量Tbatofsは、第1係合機構810の回転同期制御における、目標相対回転速度Nr1tgのオフセット量の上限値に相当する充放電収支の変化の抑制量を意味する。
オフセット回転充放電補正量Tbatofsを算出すると、ECU100は、算出されたオフセット回転充放電補正量Tbatofsが、調整不足量Tstg未満であるか否かを判定する(ステップS212)。算出されたオフセット回転充放電補正量Tbatofsが調整不足量Tstg以上である場合(ステップS212:NO)、ECU100は、調整トルクTaj分だけトルクオフセットしたモータジェネレータMG2の駆動制御を開始する(ステップS214)。また、それと同時に、第1係合機構810の回転同期制御を開始する(ステップS215)。但し、ステップS215における回転同期制御では、第1係合機構810のMG1側係合要素と固定要素811との相対回転速度Nr1の目標値Nr1tgが、ゼロでなく、許容オフセット回転速度Nr1tgofsに設定される。
この許容オフセット回転速度Nr1tgofsは、予め固定要素811に形成された摩擦面812及びクラッチ要素813に形成された摩擦面814を物理的に保護する観点から予め実験的に定められた目標相対回転速度Nr1tgの上限値であり、先に算出されたオフセット回転充放電補正量Tbatofsは、モータジェネレータMG1の最終的な到達回転速度を、このオフセット回転充放電補正量Tbatofsとした場合に抑制されるバッテリ12の充放電収支の変化量である。
ステップS211又はステップS215が実行されると、第1係合機構810における回転同期制御の完了(即ち、第1係合機構810における相対回転速度Nr1の目標値Nr1tgへの収束)を待って、ECU100はアクチュエータ831を駆動し(ステップS216)、係合装置800の動作状態を第2動作状態から第1動作状態へ切り替える。即ち、モータジェネレータMG1をロックする。
一方、ステップS212において、算出されたオフセット回転充放電補正量Tbatofsが調整不足量Tstg未満である場合(ステップS212:YES)、ECU10は、第1係合機構810の回転同期制御の実行過程においてモータジェネレータMG1の動作点変化により生じるバッテリ12の充放電収支の変動を完全に相殺することができないものとして、モータジェネレータMG1のロックを禁止する(ステップS213)。ステップS213又はステップS216が実行されると、MG1ロック制御は終了する。
以上説明したように、本実施形態に係るMG1ロック制御によれば、モータジェネレータMG1をロックする第1係合機構810における、係合要素(固定要素811及びMG1側係合要素(即ち、カム815、カムボール816及びクラッチ要素813)の回転同期制御の過程において、モータジェネレータMG1の動作点変化に伴って生じるバッテリ12の充放電収支の変動が、モータジェネレータMG2を介した調整トルクTajの出力により相殺される。
この際、調整トルクTajの上限値は、解放許容トルク調整量Tlimit1とショック許容トルク調整量Tlimit2とのうち絶対値の小さい方に設定されるため、この充放電収支の変動相殺に係る措置により、第2係合機構820が解放不能となる事態も、また解放時のトルクショックが快適性を低下させる事態も生じることがない。
また、この調整トルクTajの出力では充放電収支の変動を完全に相殺できない場合、係合要素相互間の摩擦面を物理的に保護し得る範囲で、第1係合機構810の回転同期制御における相対回転速度Nr1の目標値たる目標相対回転速度Nr1tgが上昇せしめられる。目標相対回転速度Nr1tgが上昇するのに伴い、第1回転電機の動作点変化に伴う充放電量Tbatは減少するから、バッテリ12の充放電収支の変動を相殺することができる。
即ち、モータジェネレータMG1のロック状態への移行とモータジェネレータMG2の駆動軸500からの切り離しとが同時に進行する構成において、蓄電手段たるバッテリ12の充放電収支の変動が好適に抑制されるのである。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うハイブリッド車両の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明は、第1のモータジェネレータを選択的にロックすることにより無段変速モードと固定変速モードとの間で変速モードを切り替える第1の係合機構と、第2のモータジェネレータを駆動軸から切り離す第2の係合機構とを備えたハイブリッド車両に適用可能である。
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、100…ECU、200…エンジン、300…動力分割機構、400…MG2減速機構、500…駆動軸、600…減速機構、700…MG2出力軸、800…係合装置、810…第1係合機構、811…固定要素、812…摩擦面、813…クラッチ要素、814…摩擦面、815…カム、816…カムボール、820…第2係合機構、821…MG2側係合機構、822…駆動軸側係合機構、830…係合制御機構、831…アクチュエータ。

Claims (4)

  1. 内燃機関と、
    第1回転電機と、
    第2回転電機と、
    前記第1及び第2回転電機との間で電力の入出力が可能な蓄電手段と、
    前記第1回転電機に連結された第1回転要素、前記内燃機関に連結された第2回転要素及び前記車軸に繋がる駆動軸に連結された第3回転要素を含む相互に差動作用をなす複数の回転要素を備えた動力伝達機構と、
    複数の係合要素同士が係合することにより前記第1回転電機を所定の回転速度にロックする第1係合機構、複数の係合要素が係合することにより前記第2回転電機と前記駆動軸との間のトルク伝達を可能とする第2係合機構、並びに前記第1及び第2係合機構の各々における一の前記係合要素に対し、該各々を係合状態及び解放状態とするための駆動力を付与可能なアクチュエータを備え、前記第1係合機構が前記係合状態となり且つ前記第2係合機構が前記解放状態となる第1動作状態と、前記第1係合機構が前記解放状態となり且つ前記第2係合機構が前記係合状態となる第2動作状態との間で動作状態を選択的に切り替え可能な係合装置と
    を備えたハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
    前記第2動作状態から前記第1動作状態への前記動作状態の切り替え要求が生じた場合に、前記第1係合機構における前記複数の係合要素が回転同期状態となるように前記第1回転電機を制御する第1制御手段と、
    前記第1係合機構における複数の係合要素が前記回転同期状態に移行する移行期間における、前記第1回転電機の動作点変化に伴う前記蓄電手段の充放電収支の変化量を特定する特定手段と、
    前記第2係合機構において前記複数の係合要素相互間に該相互間に作用する伝達トルクに比例して生じる摩擦力を含む前記一の係合要素における前記アクチュエータの駆動力に抗する抵抗力が、前記一の係合要素に付与される前記アクチュエータの駆動力以下となる範囲内で、前記特定された変化量に基づいて、前記移行期間における前記蓄電手段の充放電収支の変化を抑制するために前記第2回転電機から出力すべき調整トルクの目標値を決定する目標値決定手段と、
    前記決定された目標値に応じた前記調整トルクが出力されるように前記第2回転電機を制御する第2制御手段と
    を具備することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記動作状態が前記第2動作状態から前記第1動作状態へ切り替えられた際に前記調整トルクに応じて発生するトルクショックの許容値を決定する許容値決定手段を更に具備し、
    前記目標値決定手段は、前記トルクショックが前記決定された許容値以下となる範囲で前記目標値を決定する
    ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記第1係合機構は、固定要素と、前記第1回転電機に連結されるカム要素及び所定の動力伝達部材を介装した状態で該カム要素と対向し且つ前記解放状態において前記固定要素から切り離されるクラッチ要素を含む回転電機側係合要素とを含み、前記クラッチ要素が前記アクチュエータからの駆動力の付与により前記固定要素側へストロークするのに伴って前記クラッチ要素が前記固定要素の対向面に形成された摩擦部材に押圧されることにより、前記動力伝達部材及び前記カム要素を介して前記第1回転電機が前記固定要素にロックされるカムロック機構であり、
    前記第1制御手段は、前記調整トルクの出力による前記充放電収支の変化の抑制量が前記特定された変化量未満である場合に、前記抑制量の不足分に応じて、前記回転同期状態を規定する、前記第1係合機構における前記複数の係合要素の相対回転速度を上昇させる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  4. 前記第1制御手段は、前記摩擦面を保護すべく設定された許容値以下の範囲で前記相対回転速度を上昇させる
    ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106652476A (zh) * 2017-02-24 2017-05-10 成都皆为科技有限公司 一种驱动轮识别装置

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