JP2012110407A - クレープ紙の加工方法及び加工装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】坪量が6〜60〔g/m2〕のクレープ紙に、クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕の水を含浸してクレープ紙を湿潤状態にする第1工程と、第1工程により湿潤状態にあるクレープ紙にエンボス加工を施す第2工程と、第2工程によりエンボス加工された湿潤状態のクレープ紙を乾燥させる第3工程と、第3工程により乾燥させたクレープ紙をプレス加工によって圧縮する第4工程と、からなるクレープ紙の加工方法及び加工装置を提供する。
【選択図】図1
Description
一方、紙のふんわりとした柔らかさは、紙の見かけ密度が低いほど良くなる傾向にあり、この傾向は吸水性に関しても同様である。
見かけ密度を低くするためには、抄紙機上で湿紙から水分を絞るときのフェルトのプレス圧を低くしたり、ヤンキードライヤーへの湿紙のタッチ圧を下げて紙の圧縮を弱めること等が行われる。
また、特許文献2,3に記載されているように、後加工の工程でエンボスロールによって紙表面に凹凸(エンボス)をつけ、見かけ上の嵩を高めて密度を低くすることも行われている。
更に、特許文献4に記載されているように、紙シートをモールド状に形成して立体化し、嵩を高めるTAD(スルー・エアー・ドライング)抄紙技術も公知となっている。
(1)カレンダー加工では、紙の表面の平滑性は向上するが、嵩が低くなって密度が高くなり、ふんわりとした柔らかさや吸水性が低下する。
(2)抄紙時にフェルトのプレス圧を少なくして嵩を高める方法では、湿紙からの搾水が不十分になり、乾燥に要するエネルギーが増大する。また、パルプ繊維間の水素結合も十分ではないため、紙の強度が低くなる。更に、この方法では十分な低密度化を達成することが困難である。
(3)エンボス加工を行うと、凹凸による嵩の増大によって見かけ密度が低下し、吸水性は向上するが、紙の表面の平滑性が低下する。また、嵩の高さはエンボスの深さに依存するため、単なるエンボス加工では嵩の高さの細かい調整が困難である。
(4)TAD抄紙技術では湿紙を熱風で通気乾燥する必要があり、乾燥コストが高くなるため、国内では普及していない。
坪量が6〜60〔g/m2〕のクレープ紙に、
クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕の水を含浸してクレープ紙を湿潤状態にする第1工程と、
第1工程により湿潤状態にあるクレープ紙にエンボス加工を施す第2工程と、
第2工程によりエンボス加工された湿潤状態のクレープ紙を乾燥させる第3工程と、
第3工程により乾燥させたクレープ紙をプレス加工によって圧縮する第4工程と、
を有するものである。
クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕の水を含浸してクレープ紙を湿潤状態にする湿潤化手段と、
前記湿潤化手段の後段に配置され、湿潤状態にあるクレープ紙にエンボス加工を施すエンボス加工手段と、
前記エンボス加工手段の後段に配置され、エンボス加工された湿潤状態のクレープ紙を乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段の後段に配置され、乾燥したクレープ紙をプレス加工によって圧縮するプレス加工手段と、
を備えたものである。
本発明では、上述のごとく湿潤状態で形成されたエンボスをプレス加工することで、復元性、弾力性に富んだエンボスを形成し、紙の見かけ密度を低くしてふんわり感を高めることができる。同時に、プレス加工によってエンボスの頭部を平滑にし、クレープ紙の表面の平滑性も向上する。
更に、クレープ紙を湿潤化する工程で柔軟成分または保湿成分からなる処理液を含浸させれば、クレープ紙の柔軟性、しっとり感、滑らかさ、ふんわり感をより一層向上させることができる。
図1は、この実施形態に係るクレープ紙の加工装置を示す概略的な構成図である。この実施形態における加工対象のクレープ紙Pは、ヤンキー抄紙機等で抄紙されるクレープ紙である。クレープ紙Pの原料パルプとしては広葉樹、針葉樹などの木材パルプを使用することができ、また、非木材パルプである植物繊維も使用可能である。
クレープにはドライクレープ及びウェットクレープがあり、ドライクレープの方が紙の柔軟性が高く、好ましい。ドライクレープは、ドライヤーにより湿紙を乾燥させた後に、ドライヤー表面から紙をブレードで剥がす時に形成されるものである。ドライヤーの表面速度より巻き取りリールの速度を遅くすることで細かいシワができ、このクレープによって紙の柔軟性が高められる。
また、クレープ紙Pの坪量は6〜60〔g/m2〕が好ましく、更に好ましくは9〜30〔g/m2〕、特に好ましくは10〜25〔g/m2〕である。坪量が低いと抄紙が困難であり、高過ぎると強度が強くなり過ぎて、衛生用紙や家庭用紙としては相応しくない。
以下では、クレープ紙Pa,Pbを二枚重ねしてクレープ紙P’を得る一連の加工工程について詳述する。ここで、クレープ紙P’は、例えばトイレットペーパー,ティシュペーパー,ペーパータオルまたはキッチンペーパーの素材として使用されるものである。
図1の湿潤化手段10において、クレープ紙Pa,Pbの全面に適宜なスプレー装置11a,11bにより水を含浸して、湿潤状態とする。含浸方法としては、スプレー装置11a,11bを用いる以外に、グラビアロール等の印刷ロールを用いてクレープ紙Pa,Pbの全面に塗布してもよい。なお、これらの含浸方法は、後述する処理液を併用する場合にも適用される。
水の含浸量は、クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕が好ましく、更に好ましくは0.3〜30〔重量%〕、特に好ましくは0.5〜20〔重量%〕である。
水の含浸量が少な過ぎれば、エンボスの形状保持性が不十分になり、その後のプレスによってエンボス形状が消失しやすくなる。逆に、含浸量が多過ぎれば紙の強度が低下し、紙の破断や紙にシワが入るなど、加工適性が低下する。
柔軟成分はパルプ繊維間の水素結合を緩和し、パルプ繊維を動きやすくしてクレープ紙を柔軟にする。また、パルプ繊維の表面に付着した柔軟成分は、クレープ紙表面の平滑性向上に寄与する。
この柔軟成分は、親油性物質や親油基を持つ成分からなり、具体的には、炭化水素類,油脂類,エステル油類,脂肪酸類,高級アルコール類,シリコーン類,ロウ類,界面活性剤類などが挙げられる。
油脂類としては、オリーブ油,ツバキ油,ヒマシ油,大豆油,ヤシ油,牛脂,トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン,トリカプリル酸グリセリンなどがある。
エステル油類としては、ミリスチン酸イソプロピル,パルミチン酸イソプロピル,オクタン酸セチルなどがある。
脂肪酸類としては、脂肪酸,脂肪酸塩,グリセリン脂肪酸エステルなどがあり、脂肪酸としては、ステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン酸,ラウリン酸,カプリン酸,カプリル酸などがあり、脂肪酸塩としては、前記各種脂肪酸のナトリウム,カリウム,トリエタノールアミン,ジエタノールアミン,モノエタノールアミンなどの塩類があり、グリセリン脂肪酸エステルとしては、前記各脂肪酸のグリセリンモノ脂肪酸エステル,ポリグリセリン脂肪酸エステルなどがある。
高級アルコール類としては、ラウリルアルコール,ミリスチルアルコール,セチルアルコール,ステアリルアルコール,オクチルドデカノール,ベヘニルアルコールなどがある。
シリコーン類としては、アミノ変性,エポキシ変性,カルボキシル変性,ポリエーテル変性,ポリグリセリン変性の変性シリコーンオイル,ジメチルポリシロキサンなどがある。
ロウ類としては、ミツロウ,カルナバロウ,ラノリンなどがある。
界面活性剤としては、陰イオン性,陽イオン性,両性,非イオン性の界面活性剤が用いられ、非イオン性界面活性剤の場合、HLB価は12以下であることが好ましい。
柔軟成分は水に乳化、分散または溶解させた状態で含浸することが好ましい。このため、必要に応じて、乳化剤,分散剤,可溶化剤を併用する。
このため、助剤として用いられる柔軟成分の含有量は、クレープ紙当たり0.01〜20〔重量%〕が好ましく、更に好ましくは0.03〜10〔重量%〕、特に好ましくは0.05〜5〔重量%〕である。
保湿成分とは、吸湿性または水分の保持能力が高い物質であり、具体的には、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン,エチレングリコール,ジエチレングリコール,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,1,3−ブチレングリコール,ソルビット,キシリトール,エリスリトール,マンニトール,ラクチトール,オリゴ糖アルコール,マルチトール,還元澱粉加水分解物,果糖,ブドウ糖,オリゴ糖,トレハロース,グリシンベタイン,ピロリドンカルボン酸,ピロリドンカルボン酸塩,ヒアルロン酸,ヒアルロン酸塩,乳酸,乳酸塩,尿素などが挙げられる。
保湿成分には、グリセリンを含むことが好ましい。グリセリンは吸湿性が高く、かつ、安全性も高いため、その使用が推奨される。
助剤として用いられる保湿成分の含有量は、少な過ぎるとクレープ紙に取り込まれる水分量が少なくなって柔軟化やしっとりさの効果が十分ではなく、多過ぎるとクレープ紙の強度が低下するので、クレープ紙当たり0.5〜50〔重量%〕が好ましく、更に好ましくは1〜30〔重量%〕、特に好ましくは3〜20〔重量%〕である。
第1工程により湿潤状態としたクレープ紙Pa,Pbを、エンボス加工手段20に導入してエンボス加工を行う。湿潤状態にあるクレープ紙は過剰の水分によってパルプが可塑化し、また、パルプ繊維間の水素結合が緩んでいる。そのため、エンボス加工によって形成される凹凸に沿ってパルプ繊維が動きやすく、明瞭で微細なエンボスを形成することができる。
この場合、エンボス加工のニップ圧が低過ぎるとエンボスの形成が不十分になり、高過ぎると紙が破断しやすく強度も低下しやすくなるので、ニップ圧は1〜50〔Kgf/cm〕とすることが好ましい。更に好ましいニップ圧は2〜30〔Kgf/cm〕、特に好ましくは3〜20〔Kgf/cm〕である。
ここで、鋼製エンボスロール21a,21bとして熱エンボスロールを使用すれば、エンボス加工と乾燥とを同時に行うことができる。熱エンボスロールを使用すると、エンボスの形状を保持したまま熱源に接触した状態でエンボスを乾燥させることが可能であり、乾燥効率が高くなる。熱エンボスロールを使用する場合、温度が低いと乾燥効率が低くなり、温度が高いと紙が劣化するので、熱エンボスロールの好ましい表面温度は40〜200〔℃〕であり、更に好ましくは60〜120〔℃〕である。
エンボス加工後の、湿潤状態にあるクレープ紙Pa,Pbを乾燥手段30に導入し、エンボス付きのクレープ紙Pa,Pbを乾燥させる。この乾燥によってパルプ繊維間に水素結合が形成され、エンボス形状が安定化してその形状保持性が高まる。
この乾燥工程では、湿潤工程で用いた水の80%以上を蒸発させるようにする。これにより、形状が安定したエンボスを得ることができる。
ここで、湿潤状態のエンボスは外力によって消失しやすいため、エンボスの乾燥は非接触にて通気乾燥することが望ましい。この場合、温度が低過ぎると乾燥効率が低くなって加工速度が遅くなり、温度が高過ぎるとクレープ紙Pa,Pbが劣化して品質が低下するため、乾燥温度は40〜200〔℃〕が好ましく、更に好ましくは60〜120〔℃〕である。
なお、図1では、乾燥手段30の内部を加熱する熱源や通気装置の図示を省略してある。
エンボス乾燥後のクレープ紙Pa,Pbを重ね合わせて、プレスを行う。なお、エンボス加工工程において、前述したように凹凸を有する硬質ロールと平滑な軟質ロールとを用いてエンボス加工を行った場合、各クレープ紙Pa,Pbのエンボスの凸面が対向する(内側に向く)ようにクレープ紙Pa,Pbを重ね合わせてプレスすることが望ましい。これにより、加工済後のクレープ紙P’の表裏に平滑な面が現れて肌触りが良くなると共に、クレープ紙Pa,Pbの相互間に空間が形成され、ふんわり感に富んだクレープ紙P’を得ることができる。
プレスロール41a,41bとしては、平滑な硬質のカレンダーロールに代えて、表面に凹凸を有するエンボスロールを使用することができる。前記エンボス加工手段20により予め形成された形状保持性の良いエンボスを乾燥手段30により乾燥させた後に、プレス加工手段40において表面に凹凸を有するエンボスロールを用いて加圧することにより、クレープ紙Pa,Pbの表面が受ける圧縮力に差が生じる。このため、強い圧縮力を受ける部分はある程度構造が破壊されるが、圧縮力の少ない部分は構造を保持することになり、これによって嵩高でふんわりとした柔らかさが一層向上する。このようにプレスロール41a,41bとしてエンボスロールを用いる場合、そのエンボス形状は、エンボス加工手段20におけるエンボスロールのエンボス形状と重なり合わないことが必要である。
従って、ニップ圧としては、30〔Kgf/cm〕以下が好ましく、更に好ましくは0.5〜20〔Kgf/cm〕であり、特に好ましくは1.0〜10〔Kgf/cm〕である。
クレープ紙の嵩の高さは、プレス加工後の最終的なエンボスの高さによって調整することができる。また、同じエンボス高さでプレスの有無を比較したとき、嵩の高いエンボスを形成し、その後これをプレスしてプレス無しの場合と同じ高さにした方が、平滑性とふんわり感が向上する。
図示するように、ログ加工部200の前段に加工装置100を組み込むことにより、クレープ紙の低密度化柔軟加工からトイレットロールログの形成まで、連続的に行うことができる。
また、図3は、図1の加工装置を備えたプライマシンを示す概略的な構成図であり、301はスリッター、302は巻取部である。
プライマシンは、クレープ紙を複数枚重ね合わせるティシュペーパーやキッチンタオル等を製造する場合に使用される装置であり、このプライマシンに加工装置100を組み込むことにより、クレープ紙の低密度化柔軟加工から重ね合わせまで、連続的に行うことが可能である。
1.トイレットペーパーの加工
[クレープ紙]
NBKP(針葉樹クラフト法漂白パルプ)80〔重量%〕、LBKP(広葉樹クラフト法漂白パルプ)20〔重量%〕の配合からなるパルプ原料をカナダ標準濾水度600〜610〔ml〕に叩解し、常法により抄紙機のヤンキードライヤー上でドライクレープをつけ、クレープ紙を抄紙した。得られたクレープ紙は、坪量16〔g/m2〕、水中伸度25〔%〕であった。
このクレープ紙を用いて、以下に述べる加工を順次行った。
クレープ紙の巻き取り親ロール2組をリワインダーにセットし、図1に示した湿潤化手段10において、2枚のクレープ紙Pa,Pbに、図4に示す処理液をローター式スプレー装置を用いてそれぞれ含浸させた。なお、図4の「処理液配合」における数値は、クレープ紙Pa,Pbに対する各処理液の含浸率〔重量%〕である。
次に、湿潤状態のクレープ紙Pa,Pbに1枚ずつ同時にエンボス加工を施す処理を行った。エンボス加工には、図1に示した如く、エンボス加工手段20内の鋼製エンボスロール21a,21bとラバー製受けロール22a,22bとを用い、図4に示すエンボスニップ圧をかけて行った。
次いで、クレープ紙Pa,Pbを図1の乾燥手段30に通して熱風乾燥を行った後、エンボスの凸面を内側に向けてクレープ紙Pa,Pbを重ね合わせ、2枚1組とした。
次に、乾燥後のクレープ紙1組をプレス加工手段40に導入し、プレスロール41a,41bとして平滑なショア硬度90〔°〕の一対の鋼製カレンダーロールを用いて図4に示すニップ圧で圧縮し、その後、トイレットペーパー状のログに巻き取った。
なお、一連の加工速度は、100〔m/分〕である。
ログをスリッターによって114〔mm〕の長さに切断し、トイレットペーパー製品を得た。
こうして得られた製品を温度23〔℃〕、相対湿度50〔%〕の環境で調湿し、各特性値を測定した。その結果を図5に示す。
実施例5は、水のみを含浸して湿潤状態でエンボス加工し、乾燥したエンボス加工紙にカレンダーロールによりプレス加工した。ただし、カレンダーロールは、紙を挟まない状態で予めロール間に隙間を設けた。
実施例6,7は、水に柔軟成分として流動パラフィンを界面活性剤(ポリオキシエチレン(12EO)ステアリルエーテル)により乳化してなる処理液を含浸して湿潤状態にした。その後、実施例1〜4と同様にエンボス加工を行い、カレンダーロールによりニップ圧を変えてプレス加工した。
実施例8,9は、水に保湿成分としてグリセリンを溶解した処理液を含浸して湿潤状態にした。その後、実施例1〜4と同様にエンボス加工し、カレンダーロールによりニップ圧を変えてプレス加工した。
実施例10,11は、水に柔軟成分として流動パラフィンを界面活性剤(ポリオキシエチレン(12EO)ステアリルエーテル)により乳化し、更に、保湿成分としてグリセリンを加えた処理液を含浸して湿潤状態にした。その後、実施例1〜4と同様にエンボス加工し、カレンダーロールによりニップ圧を変えてプレス加工した。
比較例2は、比較例1と同様に処理した。ただし、エンボスニップ圧を3〔Kgf/cm〕とした。
比較例3は、水を含浸せずに乾燥状態でエンボス加工を行った。乾燥後のプレス加工は行っていない。
比較例4,5は、水を含浸せずに乾燥状態でエンボス加工を行った。その後、カレンダーロールによりニップ圧を変えてプレス加工した。
比較例6は、水を含浸せずに乾燥状態でエンボス加工を行った。その後、カレンダーロールによりプレス加工した。ただし、この比較例6のみ、カレンダーロールは紙を挟まない状態でロール間に隙間を設けた。
比較例7は、エンボス加工及びプレス加工を行わない無処理のクレープ紙である。
[クレープ紙]
NBKP(針葉樹クラフト法漂白パルプ)50〔重量%〕、LBKP(広葉樹クラフト法漂白パルプ)50〔重量%〕の配合からなるパルプ原料を、カナダ標準濾水度540〜580〔ml〕に叩解した。パルプスラリーに湿潤紙力増強剤である「湿潤紙力剤 WS4024」(星光PMC社製)を固形分として対パルプ当たり0.2〔重量%〕添加し、常法により抄紙機のヤンキードライヤー上でドライクレープをつけ、クレープ紙を抄紙した。
得られたクレープ紙は、坪量13.5〔g/m2〕、水中伸度22〔%〕であった。
クレープ紙の巻き取り親ロール2組をリワインダーにセットし、図1の湿潤化手段10において、2枚のクレープ紙Pa,Pbに、図6に示す処理液を、ローター式スプレー装置を用いて含浸させた。なお、図6の「処理液配合」における数値は、クレープ紙Pa,Pbに対する各処理液の含浸率〔重量%〕である。
次に、湿潤状態のクレープ紙Pa,Pbに1枚ずつ同時にエンボス加工を施す処理を行った。エンボス加工には、図1に示した如く、エンボス加工手段20内の鋼製エンボスロール21a,21bとラバー製受けロール22a,22bとを用い、図6に示すエンボスニップ圧をかけて行った。
次いで、クレープ紙Pa,Pbを図1の乾燥手段30に通して熱風乾燥を行った後、エンボスの凸面を内側に向けてクレープ紙Pa,Pbを重ね、2枚1組とした。
次に、乾燥後のクレープ紙1組をプレス加工手段40に導入し、プレスロール41a,41bとして平滑なショア硬度90〔°〕の一対の鋼製カレンダーロールを用いて図6に示すニップ圧で圧縮し、その後、リールに巻き取った。
リールに巻き取った紙をインターホルダーにセットし、組み合わせ、断裁を経てティシュペーパー製品を得た。
こうして得られた製品を温度23〔℃〕、相対湿度50〔%〕の環境で調湿し、形状及び特性値を測定した。その結果を図7に示す。
図6及び図7における実施例12〜22、比較例8〜14の処理液配合、カレンダーロールニップ圧、カレンダーロール隙間は、図4及び図5に示したトイレットペーパーにおける実施例1〜11、比較例1〜7にそれぞれ準じている。
実施例1と同じクレープ紙を用い、同様に処理液の含浸、エンボス加工、プレス加工、ログ加工を行ってトイレットペーパー製品を得た。
ただし、ここでは、プレスロールとして、平滑な鋼製カレンダーロールに代えてエンボスロールを用い、クレープ紙を1枚の状態でプレスしてその後に凸面を内側にして2枚のクレープ紙を重ね合わせた。
図8は実施例23〜26における処理液成分、プレス加工用エンボスニップ圧を示す図であり、図9は実施例23〜26の特性値を示す図である。ここで、実施例23,24,25,26の処理液の配合は、それぞれ実施例3,6,8,10に準じている。
プレス加工用のエンボスロールとしては、硬質の鋼製エンボスロールと平滑なラバー製受けロールとを組み合わせて使用した。エンボスロールのエンボス形状は一辺が0.7〔mm〕の正方形であり、その高さは1〔mm〕、ポイント数は30〔個/cm2〕である。
次に、加工前のクレープ紙の水中伸度、及び、図5,図7,図9の各特性値を測定するための試験方法について説明する。
[水中伸度]
クレープ紙を水中に浸漬するとクレープが伸びるため、クレープ紙を水中に浸漬したときに紙が縦方向に伸びる割合を〔%〕で表す水中伸度により、クレープの程度を測定することができる。
水中伸度の測定手順は、以下のとおりである。
(1)浸漬容器に水を入れる。
(2)試料1枚を紙の縦方向に100〔mm〕、横方向に25〔mm〕切り取る。
(3)試料を浸漬容器に浸漬する。
(4)60秒経過後、紙の縦方向の長さを測定する。
水中伸度〔%〕は、以下の式により求める。
水中伸度〔%〕=(L2−L1)/L1×100
L1:浸漬前の試料の縦方向長さ
L2:浸漬後の試料の縦方向長さ
摩擦感試験機器として、摩擦感テスター(KES−SE4)(カトーテック社製)を用いた。
凸面が内側になるように重ね合わされた試料(2枚1組)の表面を摩擦子によってなぞり、摩擦特性として、摩擦係数(MIU)及び摩擦係数の変動量(MMD)を求める。測定は、試料を替えて10回行い、その平均値を求めた。なお、摩擦子の荷重は50〔g〕、摩擦子の移動速度は1〔mm/sec〕である。
MIUは数値が小さいほどすべりやすく、MMDは数値が小さいほど滑らかであることを示す。
紙の厚さは、圧縮試験機(KES−FB3)(カトーテック社製)を用いて測定した。試料は、2枚を凸面が内側になるように重ね合わせたもの(2枚1組)を用いた。
測定条件は、標準高感度測定、加圧板2〔cm2〕、圧縮スピード0.0067〔mm/s〕で、測定荷重0.5〔gf/cm2〕における高さを求めた。測定は試料を替えて10回行いその平均値を求めた。
「JAPAN TAPPI No.34 紙−柔らかさ試験方法」に規定される試験方法に準じ、以下の条件で測定した。
試料は、2枚を凸面が内側になるように重ね合わせたもの(2枚1組)を用いた。この試料を試験機のスリット間に押し込み、そのときの抵抗力(mN/100mm)を測定した。
測定は試料を替えて試料の縦方向と横方向とについてそれぞれ10回行い、そのすべての平均値を求めた。数値が小さいほど、抵抗が少なく柔らかいと判断される。
なお、試験機にはハンドルオメーター(熊谷理機工業製)を用いた。また、試料の寸法は10×10〔cm〕であり、上記スリット幅は6.35〔mm〕である。
以下の計算により、2枚重ねの試料の密度を求めた。
密度〔g/cm3〕=坪量〔g/m2〕×2/〔紙の厚さ〔mm〕×1000〕
[滑らかさ]
試料の表面を手の指でなぞって感じる滑らかさを、以下の基準により評価した。
大変滑らかである:4点
滑らかである:3点
やや滑らかである:2点
滑らかでない:1点
モニター10名による評価点を集計した合計点について、以下のようにランク付けした。
36〜40点:◎
26〜35点:○
16〜25点:△
10〜15点:×
[ふんわり感]
空気を含んだような柔らかい厚み感をふんわり感と定義し、以下の基準により評価した。
大変ふんわりしている:4点
ふんわりしている:3点
ややふんわりしている:2点
ふんわりしていない:1点
1.トイレットペーパー(図4,図5)
(1)摩擦係数(MIU):すべりやすさ
すべての実施例1〜11は、プレス工程のない比較例1と比べてすべりやすい。
実施例1〜4は、プレスのニップ圧(カレンダーロールニップ圧)を上げるに従ってMIUの数値が減少しており、表面のすべりやすさが向上している。また、カレンダーロール間に隙間を設けた場合についても、実施例5は比較例6と比べてすべりやすくなっている。これは、本発明ではエンボスが潰れにくいため、カレンダーロールの平滑面が転写しやすいためと思われる。
処理液に柔軟成分を配合した実施例6,7は、同じプレス圧の実施例1,3と比べてすべりやすくなっている。これは、柔軟成分による潤滑作用によるものと思われる。
処理剤に保湿成分を配合した実施例8,9は、柔軟成分を配合した実施例6,7よりすべりにくい。これは、保湿成分によりパルプ繊維が膨潤してすべりにくくなっているものと思われる。
実施例10,11は、処理液に柔軟成分と保湿成分とを含み、処理液に柔軟成分のみを配合した実施例6,7と同程度のすべりやすさである。
比較例1〜3はプレス工程が無いためすべりにくく、特に比較例1はエンボスが鮮明であるため、最も滑りにくい。また、比較例2は実施例1〜4と同程度の密度と厚さを持っているが、すべりにくい。
すべての実施例1〜11は、プレス工程のない比較例1と比べて滑らかである。
実施例1〜4は、プレスのニップ圧を上げることでMMDの数値が減少し、表面の滑らかさが向上している。また、カレンダーロール間に隙間を設けた場合についても、実施例5は比較例6と比べて滑らかになっている。
処理液に柔軟成分を配合した実施例6,7は、実施例1,3より滑らかである。これは、柔軟成分による効果と思われる。
処理液に保湿成分を配合した実施例8,9は、実施例6,7より更に滑らかである。すなわち、保湿成分は滑らかさにおいて効果が高い。
実施例10,11は、柔軟成分及び保湿成分の相乗効果により最も滑らかである。
比較例1〜3はプレス工程がないため滑らかでなく、特に比較例1はエンボスが鮮明であるため、最も滑らかでない。また、比較例2は実施例1〜4と同程度の密度と厚さを持つが、滑らかではない。
すべての実施例1〜11は、プレス工程のない比較例1と比べて柔らかい。
実施例1〜4はプレス圧を上げるほど柔らかさが向上している。柔らかの試験では表面がすべりやすく、かつ曲げやすいほど柔らかく評価される。表面のすべりやすさと曲げやすさが、柔らかさを向上させたものと思われる。
処理液に柔軟成分を配合した実施例6,7は、実施例1、3より柔らかい。これは、柔軟成分によってすべりやすさと曲げやすさが更に向上したことによるものと思われる。
処理液に保湿成分を配合した実施例8は実施例6より柔らかく、同様に実施例9は実施例7より柔らかい。これは、保湿成分による水分の増加によってパルプが可塑化しているためと思われる。
実施例10,11は、柔軟成分及び保湿成分の相乗効果により最も柔らかくなっている。
実施例1〜4はプレス圧を上げることで少しずつ密度が高くなるが、比較例1との差は少なく、初期密度の維持性が高い。
処理液に柔軟成分を配合した実施例6,7は、実施例1,3より密度が低い。これは、柔軟成分によって紙の圧縮が抑制されたためと思われる。
比較例1は最も密度が低い。これは、エンボスの形状がそのまま残っているためである。
比較例4,5は比較例3との差が大きく、無処理の比較例7と同程度まで密度が高くなっている。これは、比較例4,5が乾式エンボスをプレス加工しているため、エンボスの凹凸がほとんど消失しているためである。同様に比較例6も、エンボスの消失の程度が大きい。
実施例1〜4は、プレス圧を上げることで滑らかさが向上する。
処理液に柔軟成分を配合した実施例7は、実施例3より滑らかである。これは、柔軟成分による効果と思われる。
処理液に保湿成分を配合した実施例8,9は、いずれも非常に滑らかである。つまり、保湿成分は滑らかさにおいて効果が高い。
比較例1〜3は、エンボスのざらつきが感じられるため、滑らかではない。
処理液に柔軟成分を配合した実施例6,7は、ふんわり感の評価が高い。これは、柔軟成分によって紙の圧縮が抑制されたためと思われる。
実施例10,11は、柔軟成分及び保湿成分の相乗効果によってふんわり感が高く、かつ滑らかである。
各特性値とも、トイレットペーパーとほぼ同様の傾向を示している。
3.トイレットペーパー(エンボスロールによるプレス加工:図8,図9)
実施例23〜26は、平滑な硬質のプレスロールを用いた同じ処理液の実施例3,6,8,10と比べて密度が低く、滑らかさには劣るが、ふんわり感に優れている。
また、湿潤工程における処理液に柔軟成分を配合すると、更にふんわり感が向上し、保湿成分を配合すると更に滑らかさが向上する。そして、処理液に柔軟成分及び保湿成分を同時に配合することで、一層優れた特性を有することが可能となる。また、プレス加工におけるニップ圧を変えることで嵩高さの微調整も可能であり、トイレットペーパー等のロール製品の巻き長さと外径の調整、ティシュペーパー等のボックス製品では箱入り枚数の調整が容易になる。
P’:クレープ紙(加工後)
10:湿潤化手段
11a,11b:スプレー装置
20:エンボス加工手段
21a,21b:鋼製エンボスロール
22a,22b:ラバー製受けロール
30:乾燥手段
40:プレス加工手段
41a,41b:プレスロール
100:加工装置
200:ログ加工部
201:巻取り中のログ
202:巻取られたログ
203:ワインディングロール
204:ベットロール
205:ニップロール
301:スリッター
302:巻取部
Claims (8)
- 坪量が6〜60〔g/m2〕のクレープ紙に、
クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕の水を含浸してクレープ紙を湿潤状態にする第1工程と、
第1工程により湿潤状態にあるクレープ紙にエンボス加工を施す第2工程と、
第2工程によりエンボス加工された湿潤状態のクレープ紙を乾燥させる第3工程と、
第3工程により乾燥させたクレープ紙をプレス加工によって圧縮する第4工程と、
を有することを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項1に記載したクレープ紙の加工方法において、
第1工程では、前記水に加えて、柔軟成分及び保湿成分のうちの少なくとも一種を含む処理液を含浸させることを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項1または2に記載したクレープ紙の加工方法において、
第1工程、第2工程及び第3工程をそれぞれ1枚のクレープ紙に対して実行し、第3工程により乾燥させた1枚のクレープ紙を2枚重ね合わせて第4工程を実行することを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載したクレープ紙の加工方法において、
第4工程におけるプレス加工を、平滑な表面を有する2本で一対の硬質なプレスロールを用いて実行することを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項4に記載したクレープ紙の加工方法において、
クレープ紙を挟む前の状態で2本のプレスロールを非接触状態にし、かつ、2本のプレスロール間の隙間がプレス加工前の紙厚の80〔%〕以下であることを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載したクレープ紙の加工方法において、
第4工程におけるプレス加工を、2本で一対のプレスロールを用いて実行し、かつ、2本のプレスロールのうち少なくとも1本が凹凸の表面をもつ硬質なエンボスロールであることを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載したクレープ紙の加工方法において、
第4工程におけるプレス加工のニップ圧が30〔kgf/cm〕以下であることを特徴とするクレープ紙の加工方法。 - 坪量が6〜60〔g/m2〕のクレープ紙に、
クレープ紙の坪量当たり0.1〜50〔重量%〕の水を含浸してクレープ紙を湿潤状態にする湿潤化手段と、
前記湿潤化手段の後段に配置され、湿潤状態にあるクレープ紙にエンボス加工を施すエンボス加工手段と、
前記エンボス加工手段の後段に配置され、エンボス加工された湿潤状態のクレープ紙を乾燥させる乾燥手段と、
前記乾燥手段の後段に配置され、乾燥したクレープ紙をプレス加工によって圧縮するプレス加工手段と、
を備えたことを特徴とするクレープ紙の加工装置。
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