JP2012107199A - 変性セルロース繊維、樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物、成形体の製造方法 - Google Patents
変性セルロース繊維、樹脂組成物、成形体及び樹脂組成物、成形体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】分子中のグルコースの6位に少なくとも1のアリール基を有する繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であって、該アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、C6位のメチロールを酸化処理してアルデヒド基やカルボキシル基を導入し、アリール基を有する化合物と反応させることにより得られる。
【選択図】なし
Description
そこで、本発明者らは鋭意検討の結果、従来の課題を解決し得る技術として、疎水性の樹脂に高度なレベルで分散し、高透明性、高強度/高弾性率の成形体を提供し得る樹脂組成物が得られることを見出し本発明に至ったものである。
(前記式(1―A)、(1−B)、(1−C)中、X1、X2はアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
(前記式(1―A)、(1−B)、(1−C)中、X1、X2はアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
本発明の変性セルロース繊維は、分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維である。
(前記式(1―A)、(1−B)、(1−C)中、X1、X2はアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。)
本発明の変性セルロース繊維では、変性セルロース繊維を構成する分子の繰返し単位に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含むものであればよい。
本発明の変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物では、該変性セルロース繊維の(1―A)、(1−B)、(1−C)で表される繰り返し単位が、疎水性を有することで、樹脂と高度なレベルで親和性を発現し、樹脂への優れた分散性を発現し、本発明の課題である、高透明性、高強度/高弾性率を実現し得るものである。
また、前記ヘテロ原子を含む基は酸素、窒素、リン、イオウなどのヘテロ原子が含まれる基であればよいが、水酸基、アミノ基などのヘテロ原子を含む電子供与基が好適である。
また、Yが水酸基の場合でも、強酸などの適切な触媒存在下、前記アリール基を有する化合物と式(2)の繰り返し単位を含む化合物とを接触させるなどの適切な方法を用いてもよい。
なお、本発明におけるアリール基を有する化合物のアリール基は、前記式(1―A)、(1―B)、および(1―C)中の置換基であるX1、X2のアリール基に対応するものであり、本発明のアリール基を有する化合物は、変性セルロース繊維製造工程で、芳香族親電子置換反応に活性なアリール基を有する化合物であるが、具体的にはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのアルキル基置換ベンゼン、ジフェニルメタン、ヒドロキシフェニルフェニルメタンなどのアラルキル基置換ベンゼン、フェノール、アニリン、アニソールなどのヘテロ原子を含む基が置換したベンゼンなどが例示される置換、または無置換の単環式芳香族、ナフタレン、アントラセン、ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどの置換、または無置換の縮合多環式芳香族、ビフェニル、フェニルフェノール、ビフェノールなどの置換、または無置換の多環式芳香族に加え、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリフェニレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、さらにはアニリン樹脂、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂などのフェノール樹脂など、アリール基を有する樹脂のアリール基の芳香環を構成する炭素原子とセルロースのC6位のメチロールに由来する炭素原子((1−A)においてはメチレンの炭素、(1−B)においてはカルボニル炭素、(1−C)においてはメチン炭素)が結合しうる樹脂が含まれるが、フェノール樹脂、アニリン樹脂などの水酸基、アミノ基などの電子供与基が置換したアリール基を有する樹脂が好ましい。
また、本発明の変性セルロース繊維における式(1―A)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、37モル%以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の変性セルロース繊維に前記(1−A)以外の繰り返し単位である(1―B)、および/または(1―C)を含む場合は、(1−A)は含まなくともよい。
なお、前記アリール基を有する化合物は、前記分子中に式(1−A)で表わされる繰り返し単位を含む変性セルロース繊維の合成方法で説明したものと同様である。
また、本発明の変性セルロース繊維における式(1―B)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、37モル%以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の変性セルロース繊維に前記(1−B)以外の繰り返し単位である(1―A)、および/または(1―C)を含む場合は、(1−B)は含まなくともよい。
なお、前記アリール基を有する化合物は、前記分子中に式(1−A)で表わされる繰り返し単位を含む変性セルロース繊維の合成方法で説明したものと同様である。
また、本発明の変性セルロース繊維における式(1―C)で表される繰り返し単位の含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性による高分散性の効果が十分に発現し、37モル%以下だと、極性が適度となる。ただし、本発明の変性セルロース繊維に前記(1−C)以外の繰り返し単位である(1―A)、および/または(1―B)を含む場合は、(1−C)は含まなくともよい。
なお、本発明の変性セルロース繊維における式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位が並存する場合の合計含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位の総量が3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。
本発明の変性セルロース繊維に用いる原料のセルロース繊維は、分子中にβグルコースがグリコシド結合により重合した構造が含まれていれば何ら限定されないが、針葉樹や広葉樹から得られる精製パルプ、コットンリンターやコットンリントより得られるセルロース、バロニアやシオグサなどの海草より得られるセルロース、ホヤより得られるセルロース、バクテリアの生産するセルロースなどの天然セルロース、前記天然セルロースを微細化した再生セルロースを使用することが出来る。しかしながら特に力学強度の観点からは高結晶性のものが好ましく、その点で再生セルロースよりも天然セルロースより得られる繊維を用いることが好ましい。
前記機械処理されたセルロース繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、4nm〜5μmであることが好ましく、4〜1000nmであることがより好ましい。前記の平均繊維径の範囲内だと、セルロースC6位のメチロールに係るハロゲン化反応や後述する酸化反応、本発明の繰り返し単位へ誘導する反応が円滑に行われるため好ましい。
前記酸化処理されたセルロース繊維における式(3)のYが水酸基である繰り返し単位を含む化合物と式(4)の繰り返し単位を含む化合物の合計含有量は、原料のセルロースC6位のメチロールを有する繰り返し単位を100とした場合、3〜37モル%であることが好ましく、5〜37モル%であることがより好ましい。3モル%以上だと、変性セルロース合成が円滑に実施でき、37モル%以下だと、極性が適度となる。
本発明の樹脂組成物は、以上に説明した本発明の変性セルロース繊維と、アリール基を有する樹脂とを含むことを特徴とする。
本発明の変性セルロース繊維はアリール基を有しており、このため分子内にアリール基を有する樹脂との親和性がよいという特徴を有する。前記アリール基を有する樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリアリーレン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、芳香環を有するビニルエステル樹脂、アニリン樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、などが例示されるが、本技術の骨子であるアリール基を有する変性セルロース繊維と親和性の高いアリール基を有する樹脂であれば何ら限定されないものである。
中でも、もともとセルロースの原料であるバイオマスにリグニンとして類似構造を有するフェノール樹脂、該フェノール樹脂と性質が類似しているアニリン樹脂、フェノール樹脂と親和性の高いエポキシ樹脂、芳香環を有するビニルエステル樹脂、フェノール構造とアニリン構造の両方を具備するアミノフェノールを用いるポリベンゾオキサゾール、芳香族アミンを用いるポリイミド、マレイミド樹脂が好ましく、フェノール樹脂がより好ましい。
フェノール樹脂としては、分子内にフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物が含まれ、ノボラック型フェノール、ノボラック型クレゾール、ノボラック型ナフトールなどのノボラック樹脂やビスフェノールF、ビスフェノールAなどのビスフェノール樹脂、パラキシリレン変性フェノール樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール、メチロール型フェノール等のレゾール型フェノール樹脂、前記樹脂等をさらにメチロール化させた化合物、フェノール性水酸基を1つ以上含むリグニンやリグニン誘導体、リグニン分解物、さらにリグニンやリグニン誘導体、リグニン分解物を変性したもの、あるいはこれらを石油資源から製造されたフェノール樹脂とを混合した物を含むものであるが、ノボラック型フェノール樹脂および/またはレゾール型フェノール樹脂が、樹脂組成物おける透明性および強度の向上させることができるため好ましい。
またセルロースは生物由来の材料であり、生物由来の疎水性樹脂と併用することで生分解性のある強靭な樹脂を得ることができ、そのときは環境負荷が小さくかつ機械的特性も良好な樹脂材料を得ることができるため、生体に吸収されることが前提の生体内埋め込み用部品や、廃棄問題化している各種の消費材にも適用可能である。たとえば文具、玩具、スポーツ用品、衝撃吸収材、壁等である。
フーリエ変換赤外分光光度計IRPrestige−21(株式会社島津製作所製)でFT−IRスペクトルを測定した。
FT−NMR装置ECA−400(日本電子株式会社製)で固体体NMR法による13C−NMRを測定した。
ヘイズメーターNDH−2000(日本電色社製)で全光線透過率を測定した。
JIS K 7171に準拠し、伸展間距離36mm、クロスヘッド速度1mm/分、23℃、相対湿度60%下で株式会社オリエンテック社製UCT−30T型テンシロンで測定した。
乾燥質量で2質量部相当分の未乾燥のパルプ(主に1000nmを超える繊維径の繊維から成る)、0.025質量部のTEMPO(2,2,6,6‐テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシル)および0.25質量部の臭化ナトリウムを水150質量部に分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて反応を開始した。反応中は自動滴定装置を用い、0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、0.5Mの塩酸水溶液でpH7に中和し反応物をろ過した後、十分な量の水による水洗、ろ過を6回繰り返し、固形分量2質量%の水を含浸させた酸化処理されたセルロース繊維を得た。
この混合液を高圧ホモジナイザー(ノロ・ソビア社製、15−8TA)型)を用いて圧力20Mpaで10回処理し、酸化処理されたセルロース繊維の分散水溶液を得た。
また、乾燥させて得られた膜状のセルロースの広角X線回折像から、セルロースI型結晶構造を有するセルロースから成ることが示され、また同じ膜状セルロースのATRスペクトルのパターンからカルボニル基の存在が確認され、上述した方法により評価したセルロース中のアルデヒド基の量およびカルボキシル基の量はそれぞれ0.31mmol/g(原料のセルロース繊維のC6位のメチロールを100とした場合のアルデヒドへの変性率は5モル%に相当)、および1.67mmol/g(原料のセルロース繊維のC6位のメチロールを100とした場合のカルボキシル基への変性率は28モル%に相当)であった。
原料のセルロース繊維「セリッシュ(ダイセル化学工業)KY100G(セルロース分濃度10質量%)」に水を加え、0.2質量%とした。この混合液を高圧ホモジナイザー(ノロ・ソビア社製、15−8TA)型)を用いて圧力20Mpaで10回処理し、機械処理されたセルロース繊維の分散水溶液を得た。
作製例1で得られた前記セルロース繊維の分散水溶液を、1Mの塩酸を用いてpH1に調整し24時間攪拌することで、酸化処理されたセルロース繊維の凝集物を得た。次に該凝集物をアセトンで洗浄し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)で洗浄した。酸化処理されたセルロース繊維の凝集物にNMPを加え前記酸化処理されたセルロース濃度0.2質量%とし、超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を3つ口セパラブルフラスコに移し、窒素気流化において氷水浴中で10℃以下に冷却しながら、塩化チオニルを前記NMP分散液中の酸化処理されたセルロース繊維のC6位のメチロール由来の炭素数と当モル滴下した。さらに3つ口セパラブルフラスコをオイルバスに移し、窒素気流化70℃で4時間反応させた後、後処理を行い、式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物(ただし、この場合式(2)、式(3)のYが塩素、および(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と考えられる)を得た後、超音波ホモジナイザーを使用して0.2質量%のNMP溶液を作製した。
次にアリール基を有する化合物として、フェノール(和光純薬株式会社)(前記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物におけるC6位のメチロール由来の炭素数と当モル)を、脱水NMPに5質量%となるように加えた混合液を乾燥管をつけた3つ口セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素雰囲気下で0℃に冷却しておき、フェノールの1.5倍モルの無水塩化アルミニウムを加え、混合物を30分間撹拌した。その後式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物の0.2質量%のNMP溶液を滴下し、30分間撹拌後、室温に昇温し12時間撹拌した。反応終了後、減圧ろ過して不溶分を除去し、ろ液を大過剰のトルエンに再沈し、析出物をろ過した後、該析出物をNMPにホモジナイザーを使用して溶解・分散させ、大過剰の水に3回再沈することで粗生成物の精製を行い、本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
前記変性セルロース繊維にNMPを加え該セルロース濃度0.2質量%の混合液とした。この混合液を超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、変性セルロース繊維のNMP分散液を得た。
その後、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してノボラック型フェノール樹脂A1087(住友ベークライト社製)を850質量部配合、撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、温度140℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をして、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を表面が平滑なステンレス板に挟み、プレス機により90℃で成形し、30μmのフィルムを得た。光線透過率を測定したところ、全光線透過率は88%であった。
前記と同様の手法により得られた、曲げ強度測定に必要量の樹脂組成物を粉砕し、樹脂組成物中のノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学社製)15質量部を配合し、ミキサーで3分間混合した後、2本ロールにより100℃で溶融混練して、成形材料に用いる樹脂組成物を得た。得られた成形材料に用いる樹脂組成物を圧縮成形で125℃で2時間、150℃で2時間硬化させ、厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。曲げ強度を測定した結果、77Nであった。
作製例1で得られたセルロース繊維の分散水溶液を100℃で減圧し濃度1質量%に濃縮した。この濃縮した分散水溶液にアリール基を有する化合物として、原料セルロースのC6位のメチロール由来の炭素数と当モルのフェノール(和光純薬株式会社)、および前記フェノール100質量部に対して2質量部の硫酸を加えて、窒素気流下に4時間還流した。その後、減圧下に脱水し、水蒸気蒸留により脱フェノールを行った後、残る反応物をNMPで希釈後前記ホモジナイザーで分散し、該NMP分散液の質量に対し、大過剰の水で再沈を行った。この操作を3回繰り返し、本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維と考えられる。
次に前記少なくとも(1―C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は87%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は72Nであった。
作製例2で得られた機械処理されたセルロース繊維の分散水溶液を、1Mの塩酸を用いてpH1に調整し24時間攪拌することで、機械処理されたセルロース繊維の凝集物を得た。該凝集物をアセトンで洗浄し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)で洗浄した。セルロース繊維の凝集物にNMPを加え固形分濃度0.2質量%とし、超音波ホモジナイザー(ヒールッシャー社製、UP400S)を用いて30分間処理し、機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
前記NMP分散液を3つ口セパラブルフラスコに移し、窒素気流化において氷水浴中で10℃以下に冷却しながら、塩化チオニル(和光純薬株式会社)を前記NMP分散液中の機械処理されたセルロース繊維のC6位のメチロール由来の炭素数と当モル滴下した。さらに3つ口セパラブルフラスコをオイルバスに移し、窒素気流化70℃で4時間反応させた後、後処理を行い、式(2)の繰り返し単位を含む化合物を得た後、超音波ホモジナイザーを使用して0.2質量%のNMP溶液を作製した。
次にアリール基を有する化合物として、フェノール(和光純薬株式会社)(2)の繰り返し単位を含む化合物におけるC6位のメチロール由来の炭素数と当モル)を、脱水NMPに5質量%となるように加えた混合液を乾燥管をつけた3つ口セパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら窒素雰囲気下で0℃に冷却しておき、フェノールの1.5倍モルの無水塩化アルミニウムを加え、混合物を30分間撹拌した。その後式(2)を含む化合物の0.2質量%のNMP溶液を滴下し、30分間撹拌後、室温に昇温し12時間撹拌した。反応終了後、減圧ろ過して不溶分を除去し、ろ液を大過剰のトルエンに再沈し、析出物をろ過した後、該析出物をNMPにホモジナイザーを使用して溶解・分散させ、大過剰の水に3回再沈することで粗生成物の精製を行い、本発明の分子中に式(1―A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェノールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―A)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は81%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は73Nであった。
実施例1と同様の操作で得られた、変性セルロース繊維のNMP分散液を用い、前記分散液中の変性セルロース繊維150質量部に対してレゾール型フェノール樹脂PR961A(住友ベークライト社製)を850質量部配合し撹拌し、変性セルロース繊維が均一に分散した混合物を得た。得られた前記混合物を離型処理したシャーレに注ぎ、減圧下において、温度80℃の熱板上で8時間脱溶媒処理をし、さらに150℃で2時間プレス成形し、30μmのフィルム、および厚み1mm、幅10mmのテストピースを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は87%であった。厚み1mm、幅10mmのテストピースの曲げ強度を測定した結果、74Nであった。
実施例4におけるレゾール型フェノール樹脂PR961Aを変性セルロース繊維100質量部に対して100質量部配合したこと以外は、実施例4と同様の操作で30μmのフィルムを得た。
30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は83%であった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、トルエン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、トルエンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したトルエンが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は86%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は74Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、カテコール(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、カテコールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したカテコールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は87%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は76Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ナフトール(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ナフトールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したナフトールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は89%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は75Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、アニリン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、アニリンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したアニリンが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は88%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は73Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、o−フェニルフェノール(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、フェニルフェノールの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したフェニルフェノールが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は85%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は74Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ジフェニルメタン(和光純薬株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ジフェニルメタンの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したジフェニルメタンが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は89%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は76Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ビスフェノールF(三光株式会社)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ビスフェノールFの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したビスフェノールFが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は87%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は73Nであった。
実施例1におけるアリール基を有する化合物として、ノボラック型フェノール樹脂A1087(住友ベークライト社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ノボラック型フェノール樹脂の芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したノボラック型フェノール樹脂が観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―B)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維であると考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は86%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は75Nであった。
実施例2におけるアリール基を有する化合物として、ビスフェノールF(三光株式会社)を用いたこと以外は、実施例2と同様の操作で本発明の分子中に式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得た。得られた変性セルロース繊維をFT−IRにより測定した結果、セルロースに由来するスペクトル、ビスフェノールFの芳香環に由来するスペクトルがそれぞれ観察された。また、変性セルロース繊維を固体体NMR法による13C−NMR測定を行った結果、C6位の原料メチロール由来の炭素と結合を形成したビスフェノールFが観測された。
ただし、本実施例の場合、少なくとも(1―C)で表される繰り返し単位を含む変性セルロース繊維と考えられる。
次に前記変性セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に変性セルロース繊維のNMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は87%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は75Nであった。
実施例3と同様の操作で機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
次に前記機械処理されたセルロース繊維のNMP分散液を用いる以外は、実施例1と同様にノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は32%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は31Nであった。
実施例1と同様の操作で酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を得た。
次に前記酸化処理されたセルロース繊維のNMP分散液を用いる以外は、実施例1と同様にノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は53%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は58Nであった。
特許文献3(特開2010−59304号公報)の[実施例1]に記載されている方法で有機オニウム処理された乾燥した微細修飾セルロース繊維を得た。
次に前記微細修飾セルロース繊維を用いる以外は、実施例1と同様に微細修飾セルロース繊維の0.2質量%NMP分散液を得た後、ノボラック型フェノール樹脂A1087を用いる樹脂組成物の作製、30μmのフィルムの作製、さらに厚み1mm、幅10mmのテストピースを作製も実施例1と同様の操作で実施した。前記30μmのフィルムの光線透過率を測定したところ、全光線透過率は67%、厚み1mm、幅10mmのテストピースでの曲げ強度は57Nであった。
比較例1は本発明の変性セルロース繊維を用いず、機械処理されたセルロース繊維とノボラック型フェノール樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して半分以下となった。
比較例2は本発明の変性セルロース繊維を用いず、酸化処理されたセルロース繊維とノボラック型フェノール樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して低い結果となった。
比較例3は本発明の変性セルロース繊維を用いず、有機オニウム処理された微細修飾セルロース繊維とノボラック型フェノール樹脂による樹脂組成物であるが、光線透過率と曲げ強度が本発明の変性セルロース繊維を用いた樹脂組成物と比較して低い結果となった。
以上のことから、本発明により高透明、高強度を有する成形体、該成形体を提供し得る、変性セルロース繊維、樹脂組成物、及び該樹脂組成物、成形体の製造方法を提供できることが確認された。本発明の変性セルロース繊維は、樹脂中に高度なレベルで均一に分散していることから高充填が可能となり、高度なレベルで均一に分散しているセルロース繊維から推定される効果として、高弾性を発現し得る。
また、本実施例ではフェノール樹脂を用いた樹脂組成物を代表例として説明したが、本発明の技術骨子が、アリール基を有する樹脂との親和性の高い変性セルロース繊維であることから、本実施例によりアリール基を有する樹脂との親和性の高さが明らかであり、特に前記フェノール樹脂以外では、該フェノール樹脂と性質が類似しているアニリン樹脂、フェノール樹脂と親和性の高いエポキシ樹脂、芳香環を有するビニルエステル樹脂、フェノール構造とアニリン構造の両方を具備するアミノフェノールを用いるポリベンゾオキサゾール、芳香族アミンを用いるポリイミド、マレイミド樹脂では本発明における最も好ましい態様を示すことは明白である。
また、高強度/高弾性率であることに加え、セルロースの軽量性や生物由来の材料による環境負荷低減効果から、鉄道、航空機、船等の輸送用機器の部品、住宅やオフィスにおけるサッシ、壁板及び床板などの建材、柱あるいは鉄筋コンクリートにおける鉄筋のような構造部材、電子回路、パソコン及び携帯電話等の家電製品の筐体(ハウジング)、文具等の事務用機器、家具、使い捨て容器等の生活用品、スポーツ用品、玩具など家庭内で使用される小物、看板、標識などの野外設置物、防弾盾、防弾チョッキなどの衝撃吸収部材、ヘルメットなどの護身用具、人工骨、医療用品、研磨剤、防音壁、防護壁、振動吸収部材、工具、板ばねなどの機械部品、楽器、梱包材などにも使用することが出来、本発明の有用性は高い。
Claims (14)
- 前記式(3)および/または式(4)の繰り返し単位を含む化合物が、天然セルロースとN−オキシル化合物とを接触させることにより誘導される化合物である請求項3または請求項4に記載の変性セルロース繊維。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の変性セルロース繊維と、アリール基を有する樹脂と、を含む樹脂組成物。
- 前記アリール基を有する樹脂がフェノール樹脂である、請求項6記載の樹脂組成物。
- 前記変性セルロース繊維の含有率が、前記樹脂組成物全体に対して0.1〜99.9質量%である請求項6または請求項7に記載の樹脂組成物。
- 前記フェノール樹脂がノボラック型フェノール樹脂および/またはレゾール型フェノール樹脂である請求項6ないし請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 下記式(2)、式(3)、および式(4)の繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む化合物と、アリール基を有する化合物を用いて、式(1―A)、(1―B)、および(1―C)で表される繰り返し単位のうち少なくとも1つを含む変性セルロース繊維を得る第1の工程と、該変性セルロース繊維とアリール基を有する樹脂とを接触させて樹脂組成物を得る第2の工程を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
(前記式(2)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。dは1以上の整数である。)
(前記式(3)中、Yは水酸基、またはハロゲン基を表す。eは1以上の整数である。)
(前記式(4)中、fは1以上の整数である。)
(前記式(1―A)、(1−B)、(1−C)中、X1、X2はアリール基であり、アリール基の芳香環上の水素原子は、アルキル基、アラルキル基、ヘテロ原子を含む基で置換されていてもよく、X1、X2は同一であっても異なっていてもよい。a、b、cは1以上の整数である。) - 請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形体。
- 厚み30μmにおける全光線透過率が70%以上である請求項11記載の成形体。
- 曲げ強度が50N以上である請求項11または請求項12に記載の成形体。
- 請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いることを特徴とする成形体の製造方法。
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