以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、基板貼り合わせ装置の全体構成図である。基板貼り合わせ装置10は、2枚の基板110を貼り合わせる。尚、基板貼り合わせ装置10が3枚以上の基板110を貼り合わせるように構成してもよい。図1に示すように、基板貼り合わせ装置10は、筐体12と、常温部14と、高温部16とを備える。筐体12は、常温部14及び高温部16を囲むように構成されている。
常温部14は、複数の基板カセット20、22、24と、ロボットアーム26と、プリアライナ28と、仮接合部30と、ロボットアーム32と、塗布部34と、制御盤36とを有する。
基板カセット20、22、24は、基板貼り合わせ装置10において結合される基板110、または、基板貼り合わせ装置10において2枚の基板110が結合された重ね合わせ基板112を収容する。基板カセット20、22、24は、筐体12の外面に脱着自在に装着されている。これにより、複数の基板110を基板貼り合わせ装置10に一括して装填できる。また、複数組の基板110を一括して回収できる。尚、基板貼り合わせ装置10に装填される基板110は、単体のシリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、ガラス基板等の他、それらに素子、回路、端子等が形成されたものでもよい。また、装填された基板110が、既に複数のウエハが積層された重ね合わせ基板112であってもよい。
ロボットアーム26は、筐体12の内部であって、基板カセット20、22、24の近傍に配置されている。ロボットアーム26は、基板カセット20、22、24の基板110をプリアライナ28に搬送する。ロボットアーム26は、プリアライナ28の基板110を、後述する仮接合部30の固定ステージ42及び移動ステージ44の何れかに交互に搬送する。ロボットアーム26は、基板110を裏返す機能を有する。これにより、ロボットアーム26は、固定ステージ42に搬送する基板110を裏返して搬送する。ロボットアーム26は、結合されて移動ステージ44まで搬送された重ね合わせ基板112を基板カセット20、22、24の何れかに搬出する。
プリアライナ28は、筐体12の内部であって、ロボットアーム26の近傍に配置されている。プリアライナ28は、仮接合部30に基板110を装填する場合に、高精度であるが故に、狭い仮接合部30の調整範囲にそれぞれの基板110が装填されるように、ここの基板110の位置を仮合わせする。これにより、仮接合部30における基板110の位置決めは、迅速且つ確実に完了する。
仮接合部30は、枠体40と、固定ステージ42と、移動ステージ44と、一対のシャッタ46及びシャッタ48とを有する。枠体40は、固定ステージ42、移動ステージ44を囲むように構成されている。枠体40の基板カセット20、22、24側の面と高温部16側の面は、開口されている。
固定ステージ42は、枠体40の内側であって、基板カセット20、22、24の近傍に固定されている。固定ステージ42の下面は、基板110を真空吸着する。移動ステージ44は、枠体40の内側であって、高温部16側に配置されている。移動ステージ44は、枠体40の内部を水平方向及び鉛直方向に移動する。移動ステージ44の上面は、基板110を真空吸着する。これにより、移動ステージ44が移動することによって、固定ステージ42に保持された基板110と、移動ステージ44に保持された基板110とが位置合わせされ、仮接合される。基板110と基板110は、接着剤によって仮接合してもよく、プラズマによって仮接合してもよい。
シャッタ46は、枠体40の基板カセット20、22、24側の面の開口を開閉する。シャッタ48は、枠体40の高温部16側の面の開口を開閉する。枠体40及びシャッタ46、48に囲まれた領域は、空気調整機等に連通されて、温度管理される。これにより、基板110の位置合わせの精度が向上する。
ロボットアーム32は、筐体12の内部であって、高温部16の近傍に配置されている。ロボットアーム32は、重ね合わせ基板112を真空吸着する。ロボットアーム32は、移動ステージ44によって位置合わせされた一対の基板110が重ね合わされた重ね合わせ基板112を真空吸着して、後述する高温部16の積層室70へと搬送して、積層する。ロボットアーム32は、高温部16にて結合された重ね合わせ基板112を1組ずつ、後述する高温部16の分離室74から移動ステージ44へと搬送する。
塗布部34は、ロボットアーム32によって搬送される重ね合わせ基板112の下面に分離剤114を塗布する。これにより、重ね合わせ基板112と重ね合わせ基板112とが付着することを抑制する。
制御盤36は、基板貼り合わせ装置10の全体の動作を制御する制御部を有する。制御盤36は、基板貼り合わせ装置10の電源投入、各種設定等をする場合に、ユーザが外部から操作する操作部を有する。更に、制御盤36は、配備された他の機器と基板貼り合わせ装置10とを接続する接続部を有する場合もある。
高温部16は、重ね合わせ基板112の貼り合わせ工程において、高温且つ真空状態に設定される。高温部16は、断熱壁50と、エアロック室52と、一対のシャッタ54及びシャッタ56と、第1搬送部の一例であるロボットアーム58と、3個の収容室60と、加熱部の一例である3個の加熱加圧装置64と、第2搬送部の一例であるロボットアーム66と、冷却室68とを備える。尚、収容室60及び加熱加圧装置64の数は、3個に限定されるものではなく、適宜変更してよい。
断熱壁50は、高温部16を包囲する。これにより、断熱壁50は、高温部16の高い内部温度を維持するとともに、高温部16から外部への熱輻射を遮断する。この結果、断熱壁50は、高温部16の熱が常温部14に及ぼす影響を抑制できる。また、断熱壁50は、高温部16と外部との気体の流れを遮断する。これにより、断熱壁50は、高温部16の真空状態を維持する。
エアロック室52は、常温部14と高温部16とを連結する。エアロック室52の常温部14側と高温部16側とは、基板110及び重ね合わせ基板112を搬送可能に開口されている。
シャッタ54は、エアロック室52の常温部14側の開口を開閉する。シャッタ54は、上下に分離されている。シャッタ54が開状態になると、エアロック室52が、常温部14と連通される。これにより、エアロック室52は、常温部14と略同じ気圧となり、常温部14との間での重ね合わせ基板112の搬送ができる。
シャッタ56は、エアロック室52の高温部16側の開口を開閉する。シャッタ56は、上下に分離されている。シャッタ56が開状態になると、エアロック室52が、高温部16と連通される。これにより、エアロック室52は、高温部16と略同じ気圧となり、高温部16との間で重ね合わせ基板112の搬送ができる。尚、貼り合わせ工程において、シャッタ54及びシャッタ56の両方が開状態となることはない。
ロボットアーム58は、エアロック室52の積層室70にて積層された複数組の重ね合わせ基板112を積層状態で収容室60に配置された加熱加圧装置64へと搬送する。
3個の収容室60は、断熱壁50の中心の周りに略等角度間隔で配置されている。収容室60は、加熱加圧装置64を包囲する。収容室60は、2枚の基板110が重ね合わされた複数組の重ね合わせ基板112を積層状態で収容する。
加熱加圧装置64は、収容室60の内部に配置されている。加熱加圧装置64は、収容室60に収容された複数組の重ね合わせ基板112を積層状態で加熱する。これにより、加熱加圧装置64は、複数組の重ね合わせ基板112における2枚の基板110同士が結合する温度まで昇温して、重ね合わせ基板112の温度を保持する。この結果、加熱加圧装置64は、複数組の重ね合わせ基板112における2枚の基板110同士を略同時に結合する。
ロボットアーム66は、加熱加圧装置64にて結合された複数組の重ね合わせ基板112を積層状態で搬出する。ロボットアーム66は、積層状態の重ね合わせ基板112を冷却室68へと搬入する。重ね合わせ基板112が冷却室68にて冷却されると、ロボットアーム66は、重ね合わせ基板112を積層状態でエアロック室52へと搬入する。ここで、重ね合わせ基板112の冷却時間が短い場合、ロボットアーム66は、積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を収容室60の加熱加圧装置64から直接エアロック室52の分離室74へと搬送してもよい。
冷却室68は、ロボットアーム66によって搬入される、結合された積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を収容する。そして、冷却室68は、搬入された重ね合わせ基板112を積層状態で冷却する。
図2は、エアロック室の断面図である。図2に示すように、エアロック室52は、積層室70と、隔離壁72と、分離室74とを備える。
積層室70には、収容室60に搬送するための複数組の重ね合わせ基板112が順に搬入されて積層される。積層室70は、隔離壁72の上方に設けられている。積層室70は、積層台76と、3本の積層ピン78と、4本の位置合わせ部材80とを備える。尚、積層ピン78及び位置合わせ部材80の本数は適宜変更してよい。
積層台76は、積層室70内に固定されている。積層台76は、隔離壁72の上方に配置されている。
3本の積層ピン78は、積層台76の上面に固定されている。3本の積層ピン78は、載置される重ね合わせ基板112の中心から重ね合わせ基板112の半径以内の距離に配置されている。これにより、3本の積層ピン78は、重ね合わせ基板112を支持できる。3本の積層ピン78の上端部は、同じ高さに配置されている。これにより、3本の積層ピン78が重ね合わせ基板112を水平に支持する。3本の積層ピン78は、載置される重ね合わせ基板112の中心の周りに120°間隔で配置されている。積層ピン78の高さは、ロボットアーム58の厚みよりも大きい。これにより、ロボットアーム58が、積層ピン78上に配置された重ね合わせ基板112の下方に挿入できる。
位置合わせ部材80は、円柱状に形成されている。位置合わせ部材80は、積層台76の上面に設けられている。位置合わせ部材80は、載置された重ね合わせ基板112の中心から半径よりも遠い位置に配置されている。これにより、重ね合わせ基板112を4本の位置合わせ部材80の内側に載置できる。4本の位置合わせ部材80は、重ね合わせ基板112の中心の周りに略90°間隔で配置されている。位置合わせ部材80は、外側に傾斜している。これにより、積層される重ね合わせ基板112の中心と、既に積層されている重ね合わせ基板112の中心とが、平面視において、略同じ位置となるように、4本の位置合わせ部材80によって案内される。位置合わせ部材80は、太さが異なる筒が重ねられたテレスコピック構造を有する。これにより、位置合わせ部材80は、略上下方向に沿って伸縮できる。重ね合わせ基板112を積層する場合、位置合わせ部材80の上端部が、次に積層される重ね合わせ基板112の上面よりも上方となるように、位置合わせ部材80が伸びる。これにより、位置合わせ部材80によって重ね合わせ基板112を案内しつつ、積層時のロボットアーム32の上下方向の移動を低減できる。また、所定の組数の重ね合わせ基板112を積層した後において、位置合わせ部材80を縮めることにより、積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を搬出するロボットアーム58の上下方向の移動を低減できる。
隔離壁72は、積層室70と分離室74との間に設けられている。隔離壁72は、板状であって、略水平状態で配置されている。これにより、隔離壁72は、積層室70と分離室74との間の空気及び温度等の流れを遮断する。
分離室74は、複数組の重ね合わせ基板112を組毎に分離する。分離室74は、隔離壁72を挟み、積層室70と反対側に配置されている。分離室74は、分離台82と、3本の支持ピン84と、4本の分離部材86とを備える。尚、支持ピン84及び分離部材86の本数は、適宜変更してよい。
分離台82は、分離室74内に固定されている。分離台82は、積層台76及び隔離壁72の下方に配置されている。
3本の支持ピン84は、分離台82の上面に固定されている。3本の支持ピン84は、載置される重ね合わせ基板112の中心から重ね合わせ基板112の半径以内の距離に配置されている。これにより、3本の支持ピン84は、積層された重ね合わせ基板112を支持できる。3本の支持ピン84の上端部は、同じ高さに配置されている。これにより、3本の支持ピン84が重ね合わせ基板112を水平に支持する。3本の支持ピン84は、載置される重ね合わせ基板112の中心の周りに120°間隔で配置されている。支持ピン84の高さは、ロボットアーム66の厚みよりも小さい。これにより、ロボットアーム66は、支持ピン84上に載置された重ね合わせ基板112の下方に挿入できる。
分離部材86は、円柱状に形成されている。分離部材86は、分離台82の上面に設けられている。分離部材86は、載置された重ね合わせ基板112の中心から半径よりも遠い位置に配置されている。これにより、重ね合わせ基板112を4本の分離部材86の内側に配置できる。4本の分離部材86は、重ね合わせ基板112の中心の周りに略90°間隔で配置されている。分離部材86は、点線で示すように下端部を中心として揺動する。分離部材86は、重ね合わせ基板112の半径方向に沿って揺動する。これにより、分離部材86は、揺動によって、積層された複数組の重ね合わせ基板112を積層方向と交差する方向に位置ずれを生じさせる。この結果、積層された重ね合わせ基板112が、互いに貼り付いていても、分離部材86は重ね合わせ基板112を組毎に分離する。分離部材86は、外側に傾斜している。これにより、分離部材86が揺動すると、重ね合わせ基板112のそれぞれに作用する水平方向の力のタイミングをずらすことができるので、積層された重ね合わせ基板112が効率よく分離される。分離部材86の外側への揺動領域は、内側の揺動領域よりも大きい。これにより、重ね合わせ基板112を搬入または搬出する場合、分離部材86を外側に大きく傾斜させることによって、分離部材86と重ね合わせ基板112との衝突が低減する。
図3は、加熱加圧装置の全体構成図である。図3に示すように、加熱加圧装置64は、真空状態の収容室60の内部に配置されている。加熱加圧装置64は、押圧部88と、固定部90とを備える。
押圧部88は、床に配置されている。押圧部88は、押圧ステージ92と、ヒータ部94と、昇降部96とを備えている。
押圧ステージ92は、押圧部88の最上面に配置されている。押圧ステージ92は、円盤状に形成されている。押圧ステージ92は、積層状態の重ね合わせ基板112を保持する。押圧ステージ92の上面には、挿入溝93が形成されている。挿入溝93の上面は開口されている。挿入溝93の深さは、ロボットアーム58及びロボットアーム66の厚みよりも小さい。これにより、ロボットアーム58は、積層室70から搬出した積層状態の重ね合わせ基板112が載置された状態で、押圧ステージ92の挿入溝93に挿入できる。この後、ロボットアーム58は、下方に移動することにより、押圧ステージ92に重ね合わせ基板112を載置して、挿入溝93から退避できる。また、ロボットアーム66は、押圧ステージ92に積層状態の重ね合わせ基板112が載置されている状態で、挿入溝93に挿入する。この後、ロボットアーム66が、上方に移動すると、重ね合わせ基板112がロボットアーム66に保持される。この後、ロボットアーム66が、押圧ステージ92から退避することによって、重ね合わせ基板112が押圧ステージ92から搬出される。
ヒータ部94は、押圧ステージ92の下部に設けられている。ヒータ部94は、電熱線等によって重ね合わせ基板112を加熱する。ヒータ部94は、押圧ステージ92を介して、積層された重ね合わせ基板112のうち、最下層の重ね合わせ基板112の下面を加熱する。この後、熱は、積層された重ね合わせ基板112を上方へと伝達する。尚、ヒータ部94が、誘導加熱等によって重ね合わせ基板112を加熱するように構成してもよい。
昇降部96は、ヒータ部94の下部に設けられている。昇降部96は、シリンダ97と、ピストン98とを有する。シリンダ97に外部から液体が供給または排出されると、ピストン98が上下方向に移動する。これにより、ピストン98とともに、積層状態の重ね合わせ基板112が載置された押圧ステージ92が上下方向に移動する。
固定部90は、天井に固定されている。固定部90は、押圧板100と、ヒータ部102とを有する。
押圧板100は、固定部90の最下層に設けられている。押圧板100の下面は、略水平である。これにより、押圧板100の下面は、押圧部88によって昇降される積層状態の重ね合わせ基板112の最上面を押圧する。
ヒータ部102は、押圧板100の上部に設けられている。ヒータ部102は、電熱線等によって重ね合わせ基板112を加熱する。ヒータ部102は、押圧板100を介して、積層された重ね合わせ基板112のうち、最上層の重ね合わせ基板112の上面を加熱する。この後、熱は、積層された重ね合わせ基板112を下方へと伝達する。これにより、積層された複数組の重ね合わせ基板112は、上から固定部90によって加熱され、下から押圧部88によって加熱されつつ、押圧部88によって加圧される。この結果、各重ね合わせ基板112内の基板110と基板110とが結合される。尚、ヒータ部102が、誘導加熱等によって重ね合わせ基板112を加熱するように構成してもよい。
図4は、積層半導体装置の製造方法のフローチャートである。図5は、位置合わせ工程を説明する図である。図6は、積層工程の初期状態を説明する図である。図7は、積層工程の完了状態を説明する図である。図8は、搬送工程を説明する図である。図9は、分離室への搬送を説明する図である。図10は、分離工程を説明する図である。図11は、分離室からの搬出を説明する図である。
積層半導体装置の製造方法では、図4に示すように、まず、位置合わせ工程が実行される(S200)。位置合わせ工程では、ロボットアーム26が、筐体12の装着された基板カセット20、22、24の何れかに収納されている基板110をプリアライナ28へと搬送する。プリアライナ28では、仮接合部30の移動ステージ44の移動量よりも大きい移動量で基板110の位置を仮合わせする。ロボットアーム26は、プリアライナ28にて仮合わせされた基板110を搬出する。この後、ロボットアーム26は、基板110の上下面を反転させた後、固定ステージ42の下面へと基板110を搬送する。固定ステージ42は、搬送された基板110を下面で保持する。
次に、ロボットアーム26は、基板カセット20、22、24の何れかに収納されている他の基板110をプリアライナ28へと搬送する。プリアライナ28では、移動ステージ44の移動量よりも大きい移動量で基板110の位置を仮合わせする。ロボットアーム26は、プリアライナ28にて仮合わせされた基板110を搬出する。この後、ロボットアーム26は、基板110の上下面を反転させることなく、移動ステージ44の上面へと基板110を搬送する。移動ステージ44は、搬送された基板110を上面で保持する。
図5に示すように、仮接合部30では、一方の基板110を保持する移動ステージ44が、他方の固定ステージ42の下方へと移動する。次に、移動ステージ44が、基板110同士が接触するまで上方へと移動する。これにより、移動ステージ44に保持されている基板110と固定ステージ42に保持されている基板110とが、位置合わせされて重ねあわされる。この後、重ね合わされた2枚の基板110が、加熱、接着剤またはプラズマ等によって仮接合される。これにより、2枚の基板110が位置合わせされて仮接合された重ね合わせ基板112が、作製される。重ね合わせ基板112は、移動ステージ44によってロボットアーム32の近傍へと移動する。
積層工程では(S202)、ロボットアーム32が、移動ステージ44上の重ね合わせ基板112を真空吸着する。シャッタ54を開状態にした後、図6に示すように、ロボットアーム32は、重ね合わせ基板112をエアロック室52の積層室70へと搬送する。ロボットアーム32は、重ね合わせ基板112を積層ピン78上に載置した後、真空吸着を解除する。これにより、重ね合わせ基板112は、積層ピン78によって支持される。次に、図6に点線で示すように、位置合わせ部材80の上端が、次に積層される重ね合わせ基板112の上面よりも上方となるように、位置合わせ部材80が上方へと伸ばされる。この後、位置合わせ工程において仮接合された重ね合わせ基板112が、ロボットアーム32によって積層室70へと搬送される。2組目以降の重ね合わせ基板112の下面には、搬送経路中に配置されている塗布部34によって、分離剤114が塗布される。そして、ロボットアーム32は、位置合わせ部材80の上端部を越えた後、下方へ移動して、2組目の重ね合わせ基板112を、位置合わせ部材80の内側に載置された1組目の重ね合わせ基板112に積層する。ここで、重ね合わせ基板112の位置がずれている場合、外側に傾斜している位置合わせ部材80によって、ロボットアーム32が下方に移動するにつれて、重ね合わせ基板112の位置が補正される。この後、上述の工程が繰り返されることにより、図7に示すように、ロボットアーム32が、2枚の基板110が重ね合わされた複数組の重ね合わせ基板112を順に積層するとともに、重ね合わせ基板112の積層組数に伴って位置合わせ部材80が上方へと順次伸ばされる。尚、位置合わせ工程及び積層工程は、並列に実行される。
搬送工程では(S204)、図8に示すように、積層室70に所定組数の重ね合わせ基板112が積層されると、位置合わせ部材80が収容されて短縮される。シャッタ54が閉状態となるとともに、シャッタ56が開状態となる。これにより、積層室70の気圧が、高温部16の気圧と略等しくなる。ロボットアーム58は、積層室70に載置された積層状態の複数組の重ね合わせ基板112の下方に侵入した後、上方へ移動する。これにより、重ね合わせ基板112が、積層ピン78から浮かされるとともに、ロボットアーム58によって保持される。この後、ロボットアーム58は、収容室60の内部に配置されている加熱加圧装置64へと搬入する。ロボットアーム58は、挿入溝93の上方に達すると、下方へと移動する。ロボットアーム58が、挿入溝93に挿入されて所定距離下方に移動すると、図3に示すように、積層された複数組の重ね合わせ基板112が、収容室60の加熱加圧装置64の押圧ステージ92へと搬入される。ロボットアーム58が挿入溝93から退避する。
結合工程では(S206)、押圧ステージ92が、積層状態の複数組の重ね合わせ基板112とともに、昇降部96によって上方へと移動する。最上層の重ね合わせ基板112が固定部90の押圧板100に接して、積層状態の重ね合わせ基板112が、押圧部88の押圧ステージ92と固定部90の押圧板100とによって鉛直方向に押圧される。この後、重ね合わせ基板112に一定の圧力が加圧されるように昇降部96を維持した状態で、押圧部88のヒータ部94及び固定部90のヒータ部102によって、積層された複数組の重ね合わせ基板112を加熱する。重ね合わせ基板112の温度が、結合温度まで昇温されると、重ね合わせ基板112の温度が結合温度に維持されるように、ヒータ部94、102が制御される。結合温度の一例は、200℃〜300℃である。この状態で、例えば、10分〜15分程度の結合時間が経過すると、各組の重ね合わせ基板112の基板110同士が結合される。この後、ヒータ部94、102がオフ状態となるとともに、後述するように重ね合わせ基板112が収容室60から搬出される。ここで、積層室70にて重ね合わせ基板112が積層するための時間を積層時間とする。積層された重ね合わせ基板112が収容室60に収容されている時間を収容時間とする。単位時間当たりの重ね合わせ基板112の結合枚数を増加させるためには、3個の加熱加圧装置64があることを考慮すると、積層時間が収容時間よりも短いことが好ましい。
次に、冷却工程では(S208)、ロボットアーム66が押圧ステージ92の挿入溝93に挿入した後、上方へと移動する。これにより、押圧ステージ92によって保持されていた積層状態の重ね合わせ基板112が、ロボットアーム66によって支持される。次に、ロボットアーム66が、積層状態の重ね合わせ基板112を収容室60から搬出した後、冷却室68へと搬入する。冷却時間が経過すると、重ね合わせ基板112が冷却温度まで冷却される。
次に、分離工程では(S210)、図9に示すように、ロボットアーム66が、冷却された積層状態の複数組の重ね合わせ基板112をエアロック室52の分離室74へと搬送する。ロボットアーム66は、分離室74の支持ピン84上であって、分離部材86の内側に積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を載置した後、分離室74から退避する。尚、基板110の熱容量が小さく、冷却時間が短い場合、ロボットアーム66が、収容室60の加熱加圧装置64から分離室74に直接搬送しつつ、冷却するように構成してもよい。この場合、ロボットアーム66によって加熱加圧装置64から分離室74に搬送することが冷却工程(S210)に相当することになる。
次に、シャッタ56が閉状態となる。この後、図10に示すように、積層状態の重ね合わせ基板112の回りを囲む分離部材86が、実線及び点線で示す間を揺動する。これにより、複数組の重ね合わせ基板112が互いに水平方向の位置ずれを起こす。この結果、重ね合わせ基板112が互いに付着していても分離される。図11に示すように、分離部材86が外側に最大限傾斜するとともに、シャッタ56が開状態となる。ロボットアーム32が分離室74へと移動して、積層状態の複数組の重ね合わせ基板112のうち、最上層の重ね合わせ基板112を上から真空吸着して搬送する。ロボットアーム32は、移動ステージ44を介して、重ね合わせ基板112をロボットアーム26へと受け渡す。ロボットアーム26は、基板カセット20、22、24の何れかに重ね合わせ基板112を収容する。
この後、個片化工程では(S212)、結合された重ね合わせ基板112が、1個の積層半導体装置に個片化される。これにより、積層半導体装置の製造が完了する。
図12は、重ね合わせ基板の張り合わせ装置内での時間と温度との関係を示すタイムチャートである。このタイムチャートに基づいて、収容時間と積層時間の最適化について説明する。3個のタイムチャートは、異なる加熱加圧装置64を経由する重ね合わせ基板112のタイムチャートである。各タイムチャートの縦軸は加熱加圧装置64内での重ね合わせ基板112の温度Tm1、Tm2、Tm3を示す。タイムチャートの横軸は時間Tを示す。
積層時間Taは、複数組の重ね合わせ基板112を積層するための時間である。例えば、積層時間Taとは、積層室70の内部で、1組目の重ね合わせ基板112を仮接合部30から積層室70に搬入してから、積層を完了して積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を積層室70から搬出するまでにかかる時間のことである。積層時間Taの開始時間(例えば、Ts2)は、先のヒータ部94、102の昇温時間の開始時間(例えば、Ts1)の前から開始している。これは、積層室70から重ね合わせ基板112が搬出されると、積層室70が空くので、次の重ね合わせ基板112の積層が開始できることによる。
収容時間Tbは、収容室60の内部に積層状態の複数組の重ね合わせ基板112が収容されている時間である。収容時間Tbには、昇温時間及び保温時間が含まれる。昇温時間は、積層状態の重ね合わせ基板112が収容室60に収容されてから結合温度Tmcになるまでに必要な時間である。保温時間は、重ね合わせ基板112が結合温度Tmcで保温されて各重ね合わせ基板112における基板110同士が結合に必要な時間である。保温時間の一例は、10分〜15分である。尚、保温時間の終了後、収容時間Tbの終了までに冷却が開始されているのは、重ね合わせ基板112が収容室60からロボットアーム66によって搬出されるまでの間に、重ね合わせ基板112が冷却されることによる。
冷却時間は、冷却室68において重ね合わせ基板112を冷却するために必要な時間である。本実施形態のように熱容量の大きい窒化アルミニウム(=AlN)等からなる基板ホルダを介さずに重ね合わせ基板112を積層すると、昇温時間及び冷却時間が極めて短くなる。各タイムチャートにおいて、冷却時間と次の昇温時間とが重複しているのは、先の重ね合わせ基板112が冷却室にて冷却されている間に、次の重ね合わせ基板112が加熱加圧装置64に搬入されて加熱が開始されるためである。保温時間と冷却時間との間は、加熱加圧装置64から冷却室68へと搬送するために必要な時間である。
図12に示すように、積層時間Taは、昇温時間の開始時間までに終了していなければならない。また、積層時間Taは、先の積層状態の重ね合わせ基板112が搬出された時間である、先の積層時間Taが終了した後にしか開始できない。これらを考慮すると、加熱加圧装置64が3個の場合、積層時間Taは、収容時間Tbの1/3以下であることが好ましい。これにより、積層室70での重ね合わせ基板112の積層待ちに起因する、加熱加圧装置64の空き時間を低減できるからである。更に、加熱加圧装置64がN個の場合に、N個の加熱加圧装置64によって、各組の重ね合わせ基板112における基板110同士を結合する工程を並列に実行することを考慮すると、積層時間Taと収容時間Tbとの関係は次の式を満たすことが好ましい。
Ta≦Tb/N
更に、この積層時間Taに基づいて、積層室70にて積層される重ね合わせ基板112の組数を決定することが好ましい。これにより、重ね合わせ基板112が積層室70で積層される時間が増大して、加熱加圧装置64に重ね合わせ基板112が搬入されずに、加熱加圧装置64が動作していない時間を低減できる。
上述したように、基板貼り合わせ装置10では、複数積層された重ね合わせ基板112を収容室60に収容して、ヒータ部94、102が積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を結合温度まで加熱して結合させる。これにより、複数組の重ね合わせ基板112を一度に結合することができるので、位置合わせされた重ね合わせ基板112の待機時間を短縮できる。この結果、基板貼り合わせ装置10は、単位時間当たりに結合可能な基板の数を増加させることができる。また、加熱加圧装置64での結合工程の時間を短縮できるので、加熱加圧装置64の結合工程が長時間に及ぶことに起因する積層半導体装置の製造工程にかかる時間を短縮できる。
基板貼り合わせ装置10では、積層室70において重ね合わせ基板112を積層する。これにより、次の重ね合わせ基板112を積層室70に搬入しつつ、加熱加圧装置64によって先の積層状態の重ね合わせ基板112を加熱して結合することができる。この結果、加熱加圧装置64は積層される複数組の重ね合わせ基板112を搬入するまで待機する必要がないので、加熱加圧装置64内での重ね合わせ基板112の工程時間を増大させることがない。
基板貼り合わせ装置10では、ロボットアーム58によって積層室70にて積層された重ね合わせ基板112を積層状態で、収容室60へと搬入する。これにより、加熱加圧装置64内で重ね合わせ基板112を積層する必要がないので、加熱加圧装置64は重ね合わせ基板112の加熱を直ぐに開始できる。この結果、加熱加圧装置64内での重ね合わせ基板112の工程時間を短縮することができる。
基板貼り合わせ装置10では、ロボットアーム66によって加熱加圧装置64から積層状態の重ね合わせ基板112を搬出する。これにより、加熱加圧装置64から迅速に重ね合わせ基板112を搬出することができるので、次の重ね合わせ基板112を搬入可能状態に必要な時間を短縮できる。この結果、加熱加圧装置64を起因とする重ね合わせ基板112を搬送途中等で待機させる必要を低減できるので、積層半導体装置の製造工程にかかる時間を短縮できる。
基板貼り合わせ装置10では、冷却時間が短い場合、ロボットアーム66によって加熱加圧装置64から分離室74へと重ね合わせ基板112を直接搬送することができる。この結果、高温部16での工程を簡略化することができるとともに、各重ね合わせ基板112に必要な工程時間を短縮することができる。
基板貼り合わせ装置10では、分離部材86の揺動によって、複数組の重ね合わせ基板112に積層方向と交差する方向に位置ずれを生じさせる。これにより、複数組の重ね合わせ基板112が互いに付着した場合でも、容易に、重ね合わせ基板112を組毎に分離できる。
基板貼り合わせ装置10では、熱容量の大きい基板ホルダ等を介することなく、2枚の基板110からなる重ね合わせ基板112を積層している。このため、積層状態の重ね合わせ基板112の加熱及び冷却を短時間でできるとともに、加熱に要する消費電力を低減できる。一例として、基板ホルダが、10mmの厚み及び350mmの直径を有する窒化アルミニウムとする。窒化アルミニウムの比熱は970[J/(kg・K)]とし、窒化アルミニウムの密度は3.26[g/cm3]とする。一方、基板110が、0.7mmの厚み及び300mmの直径を有するシリコンとする。シリコンの比熱は、820[J/(kg・K)]とし、シリコンの密度は2.33[g/cm3]とする。これらの数値より、基板ホルダの熱容量は3040[J/K](=970×17.52×π×1×3.26/1000)となる。基板110の熱容量は94.5[J/K](=820×152×π×0.07×2.33/1000)となる。従って、基板ホルダの熱容量は、基板110の熱容量の約32倍である。この結果、理論的には、基板ホルダを省略して基板110を積層すると消費電力は32分の1となり、昇温時間及び冷却時間を32分の1とすることができる。
次に、基板ホルダによって保持された基板を結合するための基板貼り合わせ装置について説明する。上述した実施形態と同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。 図13は、基板ホルダに保持された基板の位置合わせ工程を説明する図である。図14は、基板ホルダに保持された基板が仮接合された重ね合わせ基板の断面図である。図15は、基板ホルダによって基板を保持された重ね合わせ基板を加熱加圧する加熱加圧装置の全体構成図である。
図13に示すように、ロボットアーム26が、基板ホルダ120によって保持された一対の基板110を仮接合部30の固定ステージ42及び移動ステージ44に装着する。次に、移動ステージ44を移動させて、一対の基板110と基板110とを位置合わせする。
移動ステージ44を上方に移動させて、移動ステージ44に保持された基板110と、固定ステージ42に保持された基板110とを接触させる。この状態で、図14に示すように、上側の基板ホルダ120の止め溝124と下側の基板ホルダ120の止め溝124とを跨ぐように止め具126を取り付ける。これにより、基板ホルダ120に保持された一対の基板110、110が仮接合された重ね合わせ基板112が完成する。この後、ロボットアーム32が、仮接合された重ね合わせ基板112を基板ホルダ120とともに、積層室70へと搬送する。この工程を繰り返して、基板ホルダ120とともに重ね合わせ基板112が積層室70で複数組積層されると、積層状態の重ね合わせ基板112が、ロボットアーム58によって搬出される。この後、図15に示すように、ロボットアーム58は、積層状態の複数組の重ね合わせ基板112を収容室60の内部に配置された加熱加圧装置64の押圧ステージ92に載置する。
次に、加熱加圧装置64では、昇降部96が、積層状態の重ね合わせ基板112とともに押圧ステージ92を上方へと移動させる。最上層の重ね合わせ基板112の上面が押圧板100に接すると、押圧ステージ92と押圧板100とによって重ね合わせ基板112を加圧しつつ、ヒータ部94、102によって加熱する。これにより、加熱加圧装置64は、複数組の重ね合わせ基板112を基板ホルダ120に保持された状態で加熱することになる。各重ね合わせ基板112内の基板110と基板110とが結合される。尚、基板ホルダ120の熱容量が大きく、ヒータ部94、102のみでは、基板110を加熱することが困難である場合、積層された重ね合わせ基板112の側方に配置された複数の補助ヒータ部128によって、重ね合わせ基板112を加熱してもよい。この後、ロボットアーム66が、重ね合わせ基板112を積層状態で収容室60から冷却室68へと搬送する。重ね合わせ基板112が冷却されると、ロボットアーム66が、重ね合わせ基板112を分離室74まで搬送する。次に、ロボットアーム32及びロボットアーム26が、重ね合わせ基板112を基板カセット20、22、24まで搬出する。尚、基板カセット20、22、24に搬出する前に、基板ホルダ120を基板110から取り外してもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
上述の実施形態の一部を変更した例を説明する。上述の実施形態では、基板110と基板110との間に分離剤114を挟む例を示したが、分離剤114の代わりに熱伝導の高い金属板等を基板110と基板110との間に介在させてもよい。更には、分離剤114の代わりに、電熱線等を有する加熱部材を基板110と基板110との間に設けてもよい。