JP2012102237A - ポリイミド前駆体樹脂組成物並びに物品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリイミド前駆体と、沸点が150℃以上かつ融点が200℃以下であり、アルコール性水酸基を有しかつカルボキシル基、スルホ基及びリン酸基よりなる群に含まれる酸性基のいずれも有しない1級及び2級の脂肪族アミンよりなる群から選ばれる塩基とを含有することを特徴とするポリイミド前駆体樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物又はその硬化物により少なくとも一部が形成されている物品である。
【選択図】なし
Description
一方で最近、半導体の技術の進化に伴い、300℃以上の高温に耐えられないような耐熱性の低い部分を有する電子素子やプラスチック基板等の物品の上にも、ポリイミド樹脂を用いて絶縁膜、保護膜、配向膜等の機能的部分を形成したいという産業上のニーズが生まれているが、300℃以上に加熱しなければならないポリイミド前駆体は適用できない。
そのため目的に応じて、熱処理を伴うポリイミド前駆体を用いる方式と、熱処理を伴わない溶剤溶解性ポリイミドを用いる方式とが使い分けられている。
ポリイミド前駆体からポリイミドを得る際の加熱処理条件をより温和にするために、イミド化の際の縮合反応を触媒を用いて従来よりも促進する手法が検討されている。特許文献1では、低温での熱処理でポリイミド膜を形成できるポリイミド前駆体組成物を提供することを目的とし、水溶液中のプロトン錯体の酸解離定数pKaが0〜8である含窒素複素環化合物またはそのN−オキシド化合物(AC−1)、アミノ酸化合物(AC−2)、並びに分子量が1000以下である2個以上のヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環化合物(AC−3)をイミド化促進のための硬化促進剤(イミド化促進触媒)として、ポリアミド酸の繰返し単位1モル当量に対して0.1モル当量以上、好ましくは0.2〜4.0モル当量、最も好ましくは0.5〜2.5モル当量の範囲で利用することが提案されている(段落0032)。
しかし、この手法によると、イミド化促進触媒としての活性が弱いため、これを用いて充分にイミド化を促進するためには添加量を多くする必要があり、上記したとおりポリアミド酸の繰返し単位1モル当量に対して、AC−1、2又は3を0.1モル当量以上使用する必要がある。そのため、イミド化した後のポリイミド中に硬化触媒が残存するなどの点が課題となっていた。
これに対し、ポリイミド前駆体からポリイミドへ変化する際の縮合反応においてはフェノール性水酸基が介在しない。このため特許文献2の発明は、ポリイミド前駆体に対して効果を発揮するものではなかった。
また本発明は、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物を用いた物品、特に好適には、耐熱性の低い物品上にポリイミドからなる部分が形成された物品を提供することを目的とする。
本発明においては、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体を加熱によりポリイミドに変換する際のイミド化促進触媒として上記特定の塩基を用いるので、イミド化温度を低温化し、低温時のイミド化反応を促進する触媒活性も高くなり、温和な熱処理条件によってポリイミド前駆体樹脂組成物を硬化させることができる。
ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗膜その他の成形物を熱処理する過程において、沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を含有していることによって、低温でのイミド化反応が促進される。
塩基が分子内塩を形成すると、イミド化促進触媒としての触媒活性が低下するため、本発明においてはカルボキシル基、スルホ基及びリン酸基よりなる群に含まれる酸性基のいずれも有しない塩基を用いるが、同様の観点から、本発明で用いる塩基は、上記強酸基を含む如何なる酸性基も含まないものであることが好ましい。
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、全体又は一部の耐熱性が低い物品上にもポリイミドからなる部位を温和な熱処理によって形成することできる。
なお、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、本発明において、沸点及び融点は、圧力1atm(101325Pa)下での沸点及び融点をいう。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体及び塩基を必須成分とする混合物であるが、その他の成分を含有していてもよく、塗布等の加工適性の観点から当該混合物を必要に応じて溶剤に溶解、希釈して使用する。
以下、ポリイミド前駆体樹脂組成物に用いる各成分を、塩基、ポリイミド前駆体、沸点が100℃以上の25℃で液体である物質、溶剤及びその他の成分の順に説明する。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、ポリイミド前駆体を加熱によりポリイミドに変換する際にイミド化反応を促進するための硬化促進剤(イミド化促進触媒)として、沸点が150℃以上かつ融点が200℃以下のアルコール性水酸基を有する1級及び2級の脂肪族アミンよりなる群から選ばれる塩基を含有する。
上記塩基は、ポリイミド前駆体からポリイミドを得る際のイミド化温度を低温化し、低温時のイミド化反応を促進する触媒活性も高いため、温和な熱処理条件によってポリイミド前駆体樹脂組成物を硬化させることができる。
また上記塩基は、イミド化反応後に得られたポリイミド中の残留が少ないため、不純物の少ないポリイミド成形物が得られるという特徴もある。
その理由としては次のようなことが考えられる。ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を例にして説明する。ポリアミック酸の脱水環化反応は、次の式(1)で示される。
これに対し、実用的なプロセスにおいてはポリアミック酸を溶液状態ではなく、塗膜状態にしてから加熱し、ポリアミドに変化させるが、塗膜状態におけるポリアミック酸からのイミド化は、塗膜中でのポリアミック酸の分子鎖の自由度が小さいことに加え、イミド化の進行と共に分子鎖のTg(ガラス転移温度)が上昇していき、分子鎖の振動が困難となる。そのため、塗膜状態のポリアミック酸は、溶液状態のポリアミック酸に比べイミド化が進行しずらい。ポリアミック酸の塗膜は、ポリアミック酸の分子骨格にもよるが、140℃〜150℃から徐々にイミド化が進行し始めるものの進行速度が遅いため、完全にイミド化するための最も好ましいイミド化条件としては、Tg以上の温度で加熱することであるといわれている。一般に、ポリアミック酸の塗膜は、300℃以上の加熱が必要な場合が多い。
塗膜状態におけるポリアミック酸のイミド化は、塩基の使用量を増やすことで促進でき、例えば前記特許文献1ではポリアミド酸の繰返し単位1モル当量に対して塩基の1種である芳香族複素環化合物を0.1モル当量以上使用することが記載されているが、塩基を増量するとポリイミドに変化させた後の塩基又はその分解物の残留が多量になってしまうという問題がある。
なお、本発明において塩基の沸点は、150℃以上であればその上限が特に限定されないが、融点が200℃以下に制限されるため沸点の上限も事実上制限され、本発明において用いられる塩基の沸点は、常圧条件下に換算した状態で通常、400℃未満であることが多い。
しかし、イミド化の進行に伴ってカルボキシル基が消失するため、低沸点の塩基性化合物は組成物中に束縛される力を失い、急速に揮発し、系中からなくなることによってイミド化の促進効果が低下してくる。
一方、150℃以上の沸点を有する塩基の場合、イミド化によって徐々にカルボキシル基が消失しても揮発しにくく、そのまま系内に残存し、触媒として機能し続けるため、見かけ上、活性が高く観測される。
なお、本発明において塩基の融点は、200℃以下であればその下限が特に限定されないが、沸点が150℃以上に制限されるため融点の下限も事実上制限され、本発明において用いられる塩基の融点は、通常、−10℃以上であることが多い。
ここで、脂肪族系有機基とは、1級又は2級アミノ基(−NH2、−NH−)のNに連結する置換基が、脂肪族炭素である有機基のことをいう。
脂肪族系有機基は、狭義の脂肪族炭化水素基に限られず、炭素原子又は水素原子以外の異種原子、炭化水素結合以外の結合構造、多重結合などを有していてもよく、また、直鎖状、分岐状、環状いずれの連鎖構造を有していてもよい脂肪族炭化水素基を含む。非芳香族複素環式化合物に属するアミンは、脂環式脂肪族アミンに含まれ、本発明において塩基として用いられる
更に、塩基は、1級又は2級アミノ基を1つだけ有するモノアミン等の塩基だけでなく、ジアミン、トリアミン、テトラアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基であってもよい。中でも、1級又は2級アミノ基を1つ有するものであることが、塩基の発生効率、溶剤溶解性、合成上の精製の点から好ましい。
R1及びR2における脂肪族系有機基は、通常、1価の有機基であるが、R1とR2が結合して環状構造を形成する場合や、NHR1R2で表される塩基がジアミン等のアミド結合を形成可能なNH基を2つ以上有する塩基の場合等には、2価以上の有機基となり得る。
R1及びR2のうち、少なくとも一つは水酸基を有する脂肪族系有機基である。有機基中に水酸基を1つ以上有すれば有機基内のどこに存在していてもよい。R1及びR2が環状構造を形成する場合には、当該環状構造内に水酸基を1つ以上有すればよい。
前記R1及びR2の有機基中の炭化水素基及び水酸基以外の置換基としては、エステル基、アミド基、エーテル基など、が溶解性、安定性の観点から好ましい。
一般に芳香族アミンよりも脂肪族アミンの方が、1級よりも2級、2級よりも3級のアミンの方が塩基性が強く、DBUなどのアミジン類が最も強いため、その触媒能が高い。また、芳香族複素環化合物のような塩基性が比較的弱い塩基を使用すると、硬化促進剤として用いるには、添加量を多くする必要があり、コストやポリイミド膜中への残存物などの観点から好ましくない。
同様の観点から、本発明においては分子内塩を形成しにくい塩基を用いることが好ましい。そのため、本発明で用いる塩基は、上記強酸基を含む如何なる酸性基も含まないものであることが、さらに好ましい。
脂肪族1級アミンとしては、エタノールアミン、3−アミノ−1−プロパノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−2−ブタノール、3−アミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノール、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール、バリノール、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、チラミン、ノルエフェドリン、2−アミノ−1−フェニル−1,3−プロパンジオール、2−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサンエタノール、4−(2−アミノエチル)シクロヘキサノール等が挙げられる。
また、ポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分全体に対する塩基の含有量は、通常0.5〜25重量%程度、好ましくは、1重量%〜20重量%である。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物に用いるポリイミド前駆体とは、反応により最終的に目的の物性を示すポリイミドとなる物質を意味する。
本発明に用いるポリイミド前駆体は、なんらかの溶剤(有機溶剤、又は水溶液)に可溶なものが、塗布その他の加工容易性の観点から好適に用いられる。また、溶剤(有機溶剤、又は水溶液)に可溶なものであると、ポリイミド前駆体樹脂組成物の溶液を塗布又は成形後、乾燥させた塗膜その他の成形物を熱処理する過程において、当該塗膜等の中に残存する溶剤がポリイミド前駆体の分子鎖の自由度を向上させることで、イミド化を促進させる。
ここで、ある溶剤に可溶とは、具体的には、基板上に形成された塗膜の25℃における当該溶剤に対する飽和濃度が、1重量%以上であることをいい、5重量%以上であることが更に好ましい。
本発明に用いられるポリイミド前駆体としては、下記化学式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体が好適に用いられる。
具体例としては、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル等が挙げられる。
ここで、選択されるジアミンは耐熱性の観点より芳香族ジアミンが好ましいが、目的の物性に応じてジアミンの全体の60モル%、好ましくは40モル%を超えない範囲で、脂肪族ジアミンやシロキサン系ジアミン等の芳香族以外のジアミンを用いても良い。
このようにして合成されるポリイミド前駆体は、最終的に得られるポリイミドに耐熱性及び寸法安定性を求める場合には、芳香族酸成分及び/又は芳香族アミン成分の共重合割合ができるだけ大きいことが好ましい。具体的には、イミド構造の繰り返し単位を構成する酸成分に占める芳香族酸成分の割合が50モル%以上、特に70モル%以上であることが好ましく、イミド構造の繰り返し単位を構成するアミン成分に占める芳香族アミン成分の割合が40モル%以上、特に60モル%以上であることが好ましく、全芳香族ポリイミドであることが特に好ましい。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量が算出しにくい状況の場合は、数平均分子量で代替しても良い。その場合は、NMR(核磁気共鳴装置)によるピークの積分比によって、末端基を定量し、その値から数平均分子量を求める方法などが利用できる。
ポリイミド前駆体樹脂組成物は、当該樹脂組成物の溶液を塗布又は成形後、乾燥させた塗膜その他の成形物を熱処理する過程において、沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を含有していることが、低温でのイミド化反応を促進する観点から好ましい。熱処理過程中のポリイミド前駆体樹脂組成物中に、沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を適量含有させることにより、ポリイミド前駆体の分子鎖の自由度を向上させるため、イミド化反応の低温化、及び、見掛けの活性向上の観点から好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗膜その他の成形物の状態にした場合には、溶液状態ほどではないが通常は溶剤を1〜30重量%程度含んでいるので、通常は、このように少量ながら存在する溶剤が、沸点が100℃以上の25℃で液体である物質に該当し、イミド化反応を低温化する作用を発揮するに充分な量であることが多い。ただし必要に応じて、溶剤とは別に沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を組成物に配合して、熱処理過程中のポリイミド前駆体樹脂組成物中に沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を適量含有させる。
溶剤とは別に用いられる沸点が100℃以上の25℃で液体である物質としては、例えば、水、シクロヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等を例示できる。また、溶剤とは別に沸点が100℃以上の25℃で液体である物質を用いる場合、ポリイミド前駆体樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1〜30重量%程度の割合で配合することが好ましい。
ポリイミド前駆体樹脂組成物を溶解、分散又は希釈する溶剤としては、各種の汎用溶剤を用いることが出来る。また、ポリイミド前駆体の合成反応により得られた反応物溶液をそのまま用い、そこに含有される合成反応用溶剤に必要に応じて他の溶剤を追加、混合してもよい。
なお、本発明において固形分は、上述した溶剤以外のもの全てであり、室温で液体の反応性モノマー等も含まれる。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、それらは多孔質や中空構造であってもよい。また、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、通常、溶剤を用いて溶液状態に調製し、機能性部品等の何らかの支持体の表面に塗布、乾燥するなどして塗膜その他の所定形状にする。ポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布する場合には、当該樹脂組成物を、すでに説明したような溶剤に溶解後、浸漬法、スプレー法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スピンコート法、ディスペンス法などによって、シリコンウエハ、金属基板、セラミック基板、樹脂フィルムなどの支持体の表面に塗布し、乾燥して溶剤の大部分を除くことにより、支持体表面に粘着性のない塗膜を与えることができる。塗膜の厚みには特に制限はないが、用途に合わせて、通常は0.5〜200μm程度とすることが多い。塗布した塗膜の乾燥条件としては、例えば、80〜140℃、1分〜120分が挙げられる。
所定の二次元パターンを形成したい場合には、ポリイミド前駆体樹脂組成物の印刷インキを調製し印刷を行うか、或いは、ポリイミド前駆体樹脂組成物の塗膜上に、ポジ型又はネガ型のレジストを用いてレジストパターンを形成し、現像又はエッチングを行うことでポリイミド前駆体樹脂組成物からなる所定パターンを形成することができる。
この熱処理は、公知の方法であればどの方法でもよく、具体的に例示すると、空気、又は窒素雰囲気下の循環オーブン、又はホットプレートによる加熱等が挙げられるが、特に限定されない。
本発明においてイミド化反応を行うための加熱条件は、特に限定されないが、低温イミド化を行う典型的な加熱条件としては、150〜270℃が好ましく、150℃〜250℃がより好ましい。また、その際の室温以上の状態にサンプルが置かれる時間(加熱時間)としては、1分〜300分が好ましく、10分〜250分がより好ましい。
本発明のポリイミド前駆体樹脂組成物は、加熱処理によってイミド化反応が進行する。イミド化反応が進行したポリイミド前駆体樹脂組成物は、完全にイミド化させてポリイミドとしても良いし、用途に応じて、部分的にイミド化された状態で利用しても良い。
この場合のイミド化率は、350℃などの高温でイミド化されたサンプルのIRスペクトルをイミド化率100%とし、加熱処理する前の乾燥させただけのサンプルのIRスペクトルを0%として、目的のサンプルのIRスペクトルとそれらを比較することで求められる。
また、本発明に係るポリイミド前駆体樹脂組成物は、全体又は一部の耐熱性が低い物品上にもポリイミドからなる部位を温和な熱処理によって形成することできる。
このような用途においては、従来は300℃以上に加熱しなければイミド化率を90%以上とすることができなかったポリイミド前駆体であっても、本発明で用いる上記特定の塩基と組み合わせてイミド化反応を行うことによって、加熱温度を270℃以下としてイミド化率90%以上のポリイミド樹脂を得ることができる。
1H NMR測定:日本電子(株)製、JEOL JNM−LA400WB
手動露光機:大日本科研製、MA−1100
吸光度測定:(株)島津製作所製、紫外可視分光光度計UV−2550
塗膜の加熱:アズワン(株)製、HOT PLATE EC−1200(本実施例中、ホットプレートと記載することがある)
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)20.0g(100mmol)を500mlのセパラブルフラスコに投入し、181gの脱水されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解させ窒素気流下、オイルバスによって液温が50℃になるように熱電対でモニターし加熱しながら撹拌した。それらが完全に溶解したことを確認した後、そこへ、少しずつ30分かけて3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸2無水物(BPDA)27.4g(93mmol)を添加し、添加終了後、50℃で5時間撹拌した。その後、フタル酸無水物を0.9g(6mmol)添加した。その後室温まで冷却し、下記式(6)で表わされる繰り返し単位を有するポリイミド前駆体溶液1を得た。
本発明に係る光塩基発生剤から発生する塩基のイミド化を促進する触媒能の評価を行った。
(1)ポリイミド前駆体樹脂組成物の調製、及び塗膜の作製
上記合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1に、表1に記載の塩基を、上記ポリイミド前駆体溶液1の固形分1gに対してそれぞれ0.6mmolの割合で添加し、実施例1〜14及び比較例1〜8のポリイミド前駆体樹脂組成物を調製した。
また、上記合成例1で得られたポリイミド前駆体溶液1に、ピペリジンとシクロヘキサノールを、上記ポリイミド前駆体溶液1の固形分1gに対してそれぞれ0.6mmol添加したサンプルを、比較例9のポリイミド前駆体樹脂組成物とし、ポリイミド前駆体溶液1そのものを、ブランクとして比較例10のポリイミド前駆体樹脂組成物とした。また、塩基としてイソニペコチン酸を用いて、試験例1と同様にしてポリイミド前駆体樹脂組成物を調製したところ、ポリイミド前駆体溶液1にイソニペコチン酸が溶解しなかったため、イミド化率の測定はできなかった。
得られた実施例1〜14及び比較例1〜10の各ポリイミド前駆体樹脂組成物をクロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に、乾燥後11±1μmとなるようスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分乾燥させてそれぞれ対応する塗膜を作製した。
イミド化率は、各塗膜について、ホットプレートにより150℃、160℃、170℃及び250℃でそれぞれ10分間加熱した各塗膜のIRスペクトルから求めた。
具体的にはFT/IR−6100typeA(日本分光)と付属品名 ATR PRO470−Hのアタッチメントをもちい、下記の条件(条件記入)で測定し、得られたそれぞれのスペクトルを1480−1495cm−1のピークを基準に規格化し、1750−1800cm−1のイミドカルボニルピークの強度比から算出した。
算出の基準として、ポリイミド前駆体溶液(1)をクロムめっきされたガラス(50mm×50mm)上に、乾燥後11±1μmとなるようスピンコートし、100℃のホットプレート上で15分乾燥した塗膜をイミド化率0%、そのサンプルを、窒素気流下、室温から350℃まで毎分10℃ずつ昇温し、350℃で1時間加熱した後の塗膜をイミド化率100%としてイミド化率を算出した。結果は表1の通りであった。
ホットプレートにより160℃で加熱した際、イミド化率が60%以上であれば、塩基の触媒能は高いと判断される。
なお、表1中の沸点は東京化成工業(株)の2010年度版の試薬カタログ(TCI Fine Chemicals 2010−2011 No.40)、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)の2010年度版の試薬カタログ(ALDRICH Chemistry 2009−2010)及び、関東化学(株)の2010年度版のカタログ(The Index of Laboratory Chemicals 2010 No.26)を参照した。減圧状態での沸点が記載されているものに関しては、東京化成工業(株)の2010年度版の試薬カタログ(TCI Fine Chemicals 2010−2011 No.40)内に掲載されている沸点換算表を元に常圧1atm(=101325Pa=760mmHg)での沸点に換算した。
光源:標準光源
検出器:TGS
積算回数:16
分解:4cm−1
ゼロフィリング:On
アポダイゼーション:Cosine
ゲイン:Auto(32)
アパーチャー:Auto(7.1mm)
スキャンスピード:Auto(2mm/sec)
フィルタ:Auto(10000Hz)
Claims (10)
- ポリイミド前駆体と、沸点が150℃以上かつ融点が200℃以下であり、アルコール性水酸基を有しかつカルボキシル基、スルホ基及びリン酸基よりなる群に含まれる酸性基のいずれも有しない1級及び2級の脂肪族アミンよりなる群から選ばれる塩基とを含有することを特徴とする、ポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 沸点が100℃以上かつ25℃で液体である物質を含有する、請求項1に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 前記ポリイミド前駆体がポリアミック酸である、請求項1又は2に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 前記塩基が、酸性基を含まないものである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 前記塩基が、150〜200℃のいずれかの温度において、当該塩基100重量部に対して、前記ポリイミド前駆体を10重量部以上溶解する塩基である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 前記塩基が、4−アミノ−1−ブタノール、ジエタノールアミン、1−アミノ−2−ブタノール、エタノールアミン、4−ピペリジンメタノール、3−ピロリジノール、4−ピペリジンエタノール、3−ピペリジンメタノール、4−ヒドロキシピペリジン、2−ピペリジンメタノール、2−アミノ−1−ブタノール、trans−4−アミノシクロヘキサノール、2−ピロリジンメタノール、及び、N−メチルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つ以上の1級又は2級アミンである、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の
ポリイミド前駆体樹脂組成物。 - 前記ポリイミド前駆体100重量部に対して、前記塩基を0.1〜100重量部含有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 塗料、印刷インキ、シール剤、接着剤、或いは、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム、光学部材又は建築材料の形成材料として用いられる請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物。
- 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体樹脂組成物又はその硬化物により少なくとも一部が形成されている、印刷物、塗料、シール剤、接着剤、表示装置、半導体装置、電子部品、微小電気機械システム、光学部材又は建築材料のいずれかの物品。
- 前記ポリイミド前駆体樹脂組成物を、270℃以下の温度で熱処理して得られた、イミド化率が90%以上のポリイミド前駆体樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部が形成されている、請求項9に記載の物品。
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JP2010252027A JP5636891B2 (ja) | 2010-11-10 | 2010-11-10 | ポリイミド前駆体樹脂組成物並びに物品 |
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