JP2012097153A - 直液式筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した直液式筆記具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなる櫛溝状ペン芯を介してペン先へインキを誘導する直液式筆記具に内蔵される水性インキ組成物であって、前記水性インキの表面張力が30mN/m以下であり、且つ、ペン芯の円盤体の平面部に対する水性インキの接触角が30°以上である直液式筆記具用水性インキ組成物。前記インキを内蔵する直液式筆記具。
【選択図】なし
Description
通常ペン芯は合成樹脂材料から成形されるが、合成樹脂の表面は相対的に疎水性であるため、水性インキを適用する場合には、疎水性表面への親和性を付与するためにインキの表面張力を調整してペン芯の濡れ性を向上させる必要がある。インキの表面張力が高いとペン芯の濡れ性が悪く、特にペン先の毛細管力が低いボールペン形態にあってはペン先からのインキ吐出性が安定せず筆跡にウスやトギレを生じることがある。そこで各種界面活性剤を水性インキ中に適用してインキの表面張力を低下させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
更に、前記水性インキ組成物が乳化物を含むこと、前記乳化物がシリカ又はシリコーン樹脂を乳化剤により乳化した化合物であること、前記乳化物がインキ組成物全量中0.01〜5重量%の範囲で添加されることを要件とし、前記いずれかの直液式筆記具用水性インキ組成物を内蔵した直液式筆記具を要件とする。
更に、ペン先と、インキ貯蔵部と、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備え、前記インキ貯蔵部に収容される水性インキの表面張力が30mN/m以下であり、且つ、前記円盤体の平面部に対する水性インキの接触角が30°以上である直液式筆記具を要件とする。
更には、前記円盤体がABS樹脂成形物であること、前記インキ貯蔵部が着脱可能なカートリッジ形態であること、前記筆記具がボールペン形態であることを要件とする。
本発明では、合成樹脂製のペン芯を備えた筆記具に適用される水性インキとして、表面張力を30mN/m以下とすると共に、ペン芯の円盤体の平面部に対するインキの接触角を30°以上とすることで、優れたペン芯性能を発揮し、毛細管力の低いペン先においても安定した筆跡形成を可能として前記問題を解消したものである。
尚、前記円盤体の平面部に対するインキの接触角とは、ペン芯を切断して取り出した1枚の円盤体上に水性インキを一滴載せ、市販の接触角測定装置で測定した角度である。
0.01重量%未満では所期の効果を得ることは困難であり、又、5重量%を越えて添加しても接触角を維持する効果の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
また、着色剤として顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、万年筆形態のチップ(ペン体)としては、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等が適用できる。尚、前記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
特に、ボールペンチップは、チップ自体の毛細管力が乏しく、筆記先端へのインキ誘導力が低いため、インキの表面張力が高いと吐出安定性が低下する傾向にある。そのため、本発明のインキはペン先の種類によらず高い吐出安定性を発現できる点で有用である。
以下の表に実施例及び比較例の直液式筆記具用水性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。また、表面張力は、協和界面科学(株)製の表面張力計を用いて測定した。更に、インキの接触角は、試料用直液式筆記具のペン芯に用いられるABS樹脂材により成形されたプレート(3cm×3cm、厚さ2mm)上に、各水性インキ15μLを滴下したものを協和界面科学(株)製の接触角測定装置を用いて測定した。
(1)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターブラック250L
(2)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:ブリリアントブルーFCF−L
(3)山陽色素(株)製、商品名:SS Blue GLL
(4)シリカをシリコーン系界面活性剤で乳化した乳化物、東レダウコーニング社製、商品名:FSアンチフォーム013A
(5)シリコーン樹脂をソルビタン系界面活性剤で乳化した乳化物、信越化学工業(株)製、商品名:KM−72
(6)ACGセイミケミカル(株)製、商品名:サーフロンS−111N
(7)日光ケミカルズ(株)製、商品名:ニッコールNP−20
(8)第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
水にフェノール以外の成分を添加し、室温又は必要に応じて50℃〜60℃の範囲に加温して混合攪拌した後、加温したものは放冷し、更にフェノールを添加して均一に混合することで各インキを調製した。
前記各インキ組成物をボールペン形態のペン先を有するペン芯式筆記具(パイロットコーポレーション社製、Hi−TecpointV5)外装のインキ貯蔵部に0.5g充填し、キャップを嵌合することで試料用筆記具を作製した。尚、前記筆記具のペン芯はABS樹脂材料を射出成形することで形成した。
ペン芯性能試験
ペン先下向き状態で保持した試料用筆記具を、キャップ嵌合状態で0℃、1時間放置した後、ペン先下向き状態のままキャップを外して30℃まで上昇させた際のペン芯櫛溝部へのインキ流入状態及びペン先からのインキボタ落ちの有無を観察した。更に、再び0℃に冷却した際にペン芯櫛溝部からインキ貯蔵部へのインキの回収状態を観察した。
筆記可能であることを確認した各試料筆記具を、室温にて旧JIS P3201筆記用紙Aに手書きで1行に12個の螺旋状の丸を3行連続筆記した。その際の筆跡状態を目視により確認した。
前記各試験の結果を以下の表に示す。
ペン芯性能試験
○:円滑に流入し、ボタ落ちは発生しなかった。また、ペン芯内の全てのインキを良好に回収した。
×:流入が変則的で、ボタ落ちが発生した、またはインキが回収されず、ペン芯櫛溝部内に残留した。
筆記試験
○:良好な筆跡を示した。
×:筆跡に複数のカスレや線飛びが見られた。筆跡に滲みが見られた。
Claims (9)
- 多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を介してペン先へインキを誘導する直液式筆記具に内蔵される水性インキ組成物であって、
前記水性インキの表面張力が30mN/m以下であり、且つ、前記円盤体の平面部に対する水性インキの接触角が30°以上である直液式筆記具用水性インキ組成物。 - 前記水性インキ組成物が乳化物を含む請求項1記載の直液式筆記具用水性インキ組成物。
- 前記乳化物がシリカ又はシリコーン樹脂を乳化剤により乳化した化合物である請求項1又は2に記載の直液式筆記具用水性インキ組成物。
- 前記乳化物がインキ組成物全量中0.01〜5重量%の範囲で添加される請求項2又は3に記載の直液式筆記具用水性インキ組成物。
- 前記請求項1乃至4のいずれかに記載の直液式筆記具用水性インキ組成物を内蔵した直液式筆記具。
- ペン先と、インキ貯蔵部と、多数の円盤体が櫛溝状の間隔を開け並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなるペン芯を備え、前記インキ貯蔵部に収容される水性インキの表面張力が30mN/m以下であり、且つ、前記円盤体の平面部に対する水性インキの接触角が30°以上である直液式筆記具。
- 前記円盤体がABS樹脂成形物である請求項5又は6に記載の直液式筆記具。
- 前記インキ貯蔵部が着脱可能なカートリッジ形態である請求項5乃至7のいずれかに記載の直液式筆記具。
- 前記筆記具がボールペン形態である請求項5乃至8のいずれかに記載の直液式筆記具。
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