JP4966510B2 - 直液式筆記具 - Google Patents

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本発明は直液式筆記具に関する。更に詳細には、インキを直接収容したインキ貯蔵部からペン芯を介してペン先へインキが誘導されるタイプの直液式筆記具に関する。
従来より、軸筒内に、内外圧の変化に応じてインキ貯蔵部のインキを一時的に溜めるペン芯を収容する筆記具として、多数の薄い円盤体が互いに僅かな間隙(櫛溝状間隔)を開けて並列配置され、前記円盤体を軸方向に縦貫するスリット状のインキ誘導溝及び該溝より太幅の通気溝が設けられ、軸心にインキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するためのインキ誘導芯が配置されたペン芯を軸筒内に収容し、インキ貯蔵部からペン先へインキを誘導するタイプの筆記具が汎用されている。
前記筆記具に適用されるペン芯は通常、合成樹脂成形物であり、表面は相対的に疎水性であるため、水性インキを適用する場合、インキ中に各種添加剤を添加してペン芯に対する濡れ性を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献1、2参照)。
特開平3−79682号公報 特開平5−140498号公報
前記特開平3−79682号公報に記載されている界面活性剤は、ペン芯への親和性を付与することで濡れ性を向上させることができるものの、インキの表面張力が大幅に低下して筆跡に滲みを生じたり、温度変化やキャップの着脱による筆記具内部の圧力変化によってペン先からのインキボタ落ち現象を生じる虞がある。
また、特開平5−140498号公報に記載の添加剤は、ペン芯の濡れ性を向上させることができるものの、インキが増粘してペン先での耐ドライアップ性能が著しく劣化してしまうため不向きである。
本発明は、前述の合成樹脂製のペン芯を備えた筆記具に適用する水性インキにおいて、ペン芯の濡れ性を向上させることができると共に、筆記具内部の圧力変化によるペン先からのインキボタ落ち現象や筆跡滲みを生じることがなく、更には、ペン先での耐ドライアップ性能の劣化を生じることのない水性インキ組成物を内蔵した筆記具を提供しようとするものである。
本発明は、軸筒内に、内外圧の変化に応じてインキ貯蔵部の少なくとも着色剤と水とN−アシルメチルタウリン塩を含むインキ組成物を一時的に溜める合成樹脂製ペン芯を収容してなり、前記ペン芯の先端部にペン先を設け、且つ、ペン芯にはインキ貯蔵部からインキをペン先へ誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなる直液式筆記具を要件とする。
更には、前記軸筒内にカートリッジ式のインキ貯蔵部を収容してなること、万年筆形態のペン先を有すること等を要件とする。
本発明は、合成樹脂製ペン芯の表面への濡れ性が良いにも拘わらず表面張力が極端に低くないので、ペン先での耐ドライアップ性能の劣化や筆跡滲みを生じることがなく、温度変化やキャップ着脱による内部気圧の変化に即応してペン芯へのインキ流出入が円滑に行なわれ、しかも、ペン先からのインキボタ落ちを発生することがないインキ組成物を内蔵した直液式筆記具を提供できる。
更に、前記インキ組成物を収容した金属製の万年筆型ペン先を備えた筆記具は、インキ組成物が金属に対して適度な濡れ性を有するため、比較的細い筆跡の形成を維持することができる。
本発明は、合成樹脂製ペン芯を備えた筆記具に適用される水性インキ中に、N−アシルメチルタウリン塩を添加することにより、筆記具内部の圧力変化によるペン先からのインキボタ落ち現象、筆跡滲み、耐ドライアップ性能の劣化を生じることなくペン芯の濡れ性を向上させることができるものである。
一般的に、ペン芯を備えた筆記具に適用される水性インキは、表面張力が高いと筆記具内部の気圧変化によって誘導芯を介してペン先からインキのボタ落ちが発生したり、或いは、表面張力が低いと筆記具内部の気圧変化によってペン芯に保持されたインキが回収できない等の問題が生じ易くなる。
そこで、N−アシルメチルタウリン塩を水性インキ中に添加することで、合成樹脂製ペン芯に対して適度な濡れ性を付与し、温度変化やキャップの着脱による筆記具内部の気圧変化に即応してインキのペン芯内への出入を円滑に行うことができる。しかも、ペン芯に対する表面張力が極端に高くなったり、低くなったりすることがなく、ペン芯でのインキ保持機能も維持され、万年筆型ペン先からのインキボタ落ち現象を抑制できる。
前記N−アシルメチルタウリン塩は、一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成物全量中0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲で添加できる。
0.05重量%未満では所望の効果を得ることは困難であり、又、5重量%を越えて添加しても濡れ性の向上は認められないので、これ以上の添加を要しない。
前記N−アシルメチルタウリン塩としては、N−ココイルイメチルタウリン、N−ラウロイルメチルタウリン、N−ミリストイルメチルタウリン、N−パルミトイルメチルタウリン、N−ステアロイルメチルタウリン等のナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩を例示できる。
前記着色剤は、水性媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料が全て使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
酸性染料としては、
ニューコクシン(C.I.16255)、
タートラジン(C.I.19140)、
アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、
ギニアグリーン(C.I.42085)、
ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、
アシッドバイオレット6BN(C.I.43525)、
ソルブルブルー(C.I.42755)、
ナフタレングリーン(C.I.44025)、
エオシン(C.I.45380)、
フロキシン(C.I.45410)、
エリスロシン(C.I.45430)、
ニグロシン(C.I.50420)、
アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、
クリソイジン(C.I.11270)、
メチルバイオレットFN(C.I.42535)、
クリスタルバイオレット(C.I.42555)、
マラカイトグリーン(C.I.42000)、
ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、
ローダミンB(C.I.45170)、
アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、
メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、
コンゴーレッド(C.I.22120)、
ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、
バイオレットBB(C.I.27905)、
ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、
カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、
ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、
フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、既に界面活性剤や水溶性樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、界面活性剤を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Blue 15:3B〔商品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素(株)製〕、
C.I. Pigment Red 146〔商品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 81〔商品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Red220/166〔商品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業(株)製〕等を挙げることができる。
また、水溶性樹脂を用いた水分散顔料としては、
C.I.Pigment Black 7〔商品名:WA color Black
A250、顔料分15%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Green 7〔商品名:WA−S color Green、顔料分8%、大日精化工業(株)製〕、
C.I.Pigment Violet 23〔商品名:マイクロピグモ WMVT−5、顔料分20%、オリエント化学工業(株)製〕、
C.I.Pigment Yellow 83〔商品名:エマコールNSイエロー4618、顔料分30%、山陽色素(株)製〕が挙げられる。
前記蛍光顔料としては、
黄色蛍光顔料〔シンロイヒ(株)製、商品名:SF5015レモンイエロー、固形分30%〕、
桃色蛍光顔料〔シンロイヒ(株)製、商品名:SF5017ピンク、固形分30%〕、
橙色蛍光顔料〔日本蛍光化学(株)製、商品名:ルミコールNKW−3904E、固形分33.5%〕が挙げられる。
その他、パール顔料、金属粉顔料、蓄光性顔料、二酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム等の白色顔料、熱変色性組成物を内包したカプセル顔料、香料や香料を内包したカプセル顔料等を例示できる。
前記金属光沢顔料としては、アルミニウムや真鍮等の金属光沢顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した金属光沢顔料(パール顔料)、透明又は着色透明フィルムに金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、透明性樹脂層を複数積層した虹彩性フィルムを細かく裁断した虹彩性を有する金属光沢顔料が例示できる。
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜25重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲で用いられる。
また、着色剤として顔料を用いた場合、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
更に、必要に応じて水溶性有機溶剤を添加することができる。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用することもでき、3〜30重量%の範囲で用いられる。
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することもできる。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1乃至30重量%の範囲で用いられる。
上記成分以外に、必要に応じて炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1,2−ベンズチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、金属石鹸、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、燐酸系活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩等の潤滑剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン、カテキン誘導体、合成ポリフェノール、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素、ホルムアミジンスルフィン酸、グルタチオン等の酸化防止剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤、分散剤等を使用してもよい。
更に、必要に応じて剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。
前記剪断減粘性付与剤は従来より公知のものから適宜選択することができ、具体例には、キサンタンガム、サクシノグリカン、ウェランガム、アルカシーガム、グァーガム、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられる。
前記インキ組成物は、各種ペン先を筆記先端部に装着し、軸筒内部に直接インキを収容し、合成樹脂製の櫛溝状インキ流量調節部材(ペン芯)を介在させる構造を有するマーキングペン、ボールペン、万年筆等の汎用のペン芯式筆記具に充填して実用に供される。
前記ペン先のうち、マーキングペンチップとしては、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、毛筆等が適用でき、ボールペンチップとしては、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等が適用できる。尚、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等が適用でき、直径0.1mm〜3.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
また、万年筆形態のペン先としては、ステンレス板、金合金板等の金属板を先細テーパー状に裁断し、屈曲又は湾曲したものや、ペン先形状に樹脂成形したもの等が適用できる。尚、前記ペン体には中心にスリットを設けたり、先端に玉部を設けることもできる。
特に、前記ペン先として金属板片からなるペン体を用いた場合、本発明のインキ組成物が金属に対して適度な濡れ性を保持できることから、細い筆跡の形成を維持できる。
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
Figure 0004966510
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)ダイワ化成(株)製、商品名:エオシン GHコンク35%液
(2)オリエント化学工業(株)製、商品名:ウォーターブラックR510(酸性染料、C.I.50420)
(3)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:ブリリアントブルーFCF−L(酸性染料、C.I.42090)
(4)N−ラウロイルメチルタウリンのナトリウム塩、日光ケミカルズ(株)製、商品名:LMT
(5)第一工業製薬(株)製、商品名:ノイゲンP
インキの調製
水にフェノール以外の成分を添加し、室温又は必要に応じて50℃〜60℃の範囲に加温して混合攪拌した後、放冷してフェノールを添加して均一に混合することで各インキを調製した。
筆記具の作製
前記各インキ組成物を万年筆形態のペン先を有する筆記具(パイロットコーポレーション社製、SVP−20NS)のインキ貯蔵部に充填し、キャップを嵌合することで筆記具を作製した。
前記筆記具を用いて以下の試験を行った。
ペン芯濡れ性試験
ペン先下向き状態で保持した試料用筆記具を、キャップ嵌合状態で0℃、1時間放置した後、ペン先下向き状態のままキャップを外して40℃まで上昇させた際のペン芯櫛溝部へのインキ流入状態及びペン先からのインキボタ落ちの有無を観察した。
インキ回収試験
ペン芯濡れ性試験の後、再び0℃に冷却した際にペン芯櫛溝部からインキ貯蔵部へのインキの回収状態を観察した。
キャップ着脱試験
ペン先下向き状態で、キャップの着脱動作を連続的に繰り返した際における、ペン芯櫛溝部内へのインキの出入状態を観察した。
前記各試験の結果を以下の表に示す。
Figure 0004966510
尚、試験結果の評価は以下の通りである。
ペン芯濡れ性試験
○:円滑に流入し、ボタ落ちは発生しなかった。
×:流入が変則的で、ボタ落ちが発生した。
インキ回収試験
○:良好に全て回収した。
×:回収されず、ペン芯櫛溝部内に残留した。
キャップ着脱試験
○:着脱によるインキの出入が円滑に行われ、ボタ落ちは発生しなかった。
×:インキの出入が円滑に行われず、ペン先又は空気溝からボタ落ちが発生した。

Claims (4)

  1. 軸筒内に、内外圧の変化に応じてインキ貯蔵部の少なくとも着色剤と水とN−アシルメチルタウリン塩を含むインキ組成物を一時的に溜める合成樹脂製ペン芯を収容してなり、前記ペン芯の先端部にペン先を設け、且つ、ペン芯にはインキ貯蔵部からインキをペン先へ誘導するためのインキ誘導芯が配置されてなる直液式筆記具。
  2. 前記N−アシルメチルタウリン塩をインキ組成物全量中0.05〜5重量%の範囲で添加してなる請求項1記載の直液式筆記具。
  3. 前記軸筒内にカートリッジ式のインキ貯蔵部を収容してなる請求項1記載の直液式筆記具。
  4. 万年筆形態のペン先を有する請求項3記載の直液式筆記具。
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