JP2012094372A - 蓄電池の蓋、蓄電池の筐体および蓄電池 - Google Patents

蓄電池の蓋、蓄電池の筐体および蓄電池 Download PDF

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Abstract

【課題】ブッシング部と蓋との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる蓄電池の蓋ならびにそれを備えた蓄電池の筐体および蓄電池を提供する。
【解決手段】蓄電池の蓋1は、筒状部12を有する蓋部11と、筒状部12の内周側と嵌合するように設けられたブッシング部13とを備え、ブッシング部13は、ブッシング13の底面13eにおいて、底面13eの周方向の全周に連続的に設けられた環状溝13fを含み、筒状部12とブッシング部13とが嵌合された状態で、環状溝13fは、筒状部12に覆われ筒状部12と係合している。
【選択図】図4

Description

本発明は蓄電池の蓋、蓄電池の筐体および蓄電池に関し、特にブッシング部を有する蓄電池の蓋ならびにそれを備えた蓄電池の筐体および蓄電池に関するものである。
自動車などに使用される蓄電池として鉛蓄電池は広く知られている。一般に、鉛蓄電池は、極板、極柱および電解液などを収容する電槽と、電槽の上端に取り付けられる蓋とを備えている。電解液は硫酸溶液(希硫酸)である。電槽および蓋は合成樹脂で形成されている。蓋には端子がインサート成形により取り付けられている。端子は、ブッシング部と、ブッシング部に受入れられた極柱とを有している。ブッシング部および極柱は、鉛で形成されており、互いに上端において溶接されている。
ブッシング部は複数の環状突出部を有しており、この複数の環状突出部が蓋の内部にインサート成形されている。たとえば、特開平10−321199号公報(特許文献1)には、外周に複数の膨出部(環状突起部)が設けられた鉛ブッシング(ブッシング部)が開示されている。
特開平10−321199号公報
鉛蓄電池では、たとえば高温での使用または長時間の使用などにより、電解液が極柱を這い上がり、ブッシング部に到達することがある。そして、ブッシング部に到達した電解液は、毛細管現象により、ブッシング部と蓋との隙間を這い上がり、外部に漏れ出すことがある。
電解液の外部への漏れ出しを抑制するために、ブッシング部の外周に複数の環状突起部が設けられている。ブッシング部の外周に複数の環状突起部が設けられることにより、電解液が這い上がる際の沿面距離が長くなるため、ブッシング部の外周と蓋との隙間を電解液が這い上がることを抑制することが可能となる。
しかし、上記公報に記載のようなタイプの従来の鉛ブッシングでは、電解液がブッシング部の外周部に到達するまでの間に電解液の這い上がりを抑制する手段が設けられていない。そのため、たとえば、ブッシング部と蓋との密着性が良好でない場合には、電解液の這い上がりの抑制効果が十分に得られないことも考えられる。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ブッシング部と蓋との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる蓄電池の蓋ならびにそれを備えた蓄電池の筐体および蓄電池を提供することである。
本発明の蓄電池の蓋は、筒状部を有する蓋部と、筒状部の内周側と嵌合するように設けられたブッシング部とを備え、ブッシング部は、ブッシングの底面において、底面の周方向の全周に連続的に設けられた環状溝を含み、筒状部とブッシング部とが嵌合された状態で、環状溝は、筒状部に覆われ筒状部と係合している。
本発明の蓄電池の蓋によれば、ブッシング部の底面に環状溝が設けられているため、環状溝によって電解液が這い上がる沿面距離を長くすることができる。このため、ブッシング部の外周と筒状部との隙間に電解液が到達することを抑制できる。
また、環状溝は、筒状部とブッシング部とが嵌合された状態で、筒状部に覆われ筒状部と係合しているため、環状溝と筒状部とが噛み合うことにより、環状溝と筒状部との隙間か大きくなることを抑制できる。このため、環状溝を越えてブッシング部の外周と筒状部との隙間に電解液が達することを抑制できる。また、環状溝によって電解液が這い上がり始めるブッシング部の底面において電解液の這い上がり量を抑制できるため、結果として、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。
環状溝が底面の周方向の全周に連続的に設けられているため、底面の周方向の全周に連続的に環状溝と筒状部とが噛み合う場合には、底面の周方向の全周において電解液の這い上がりを抑制できる。この場合には、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることをさらに効果的に抑制できる。
上記の蓄電池の蓋において好ましくは、環状溝は、底面において複数設けられている。これにより、環状溝の数が増えるため、電解液が這い上がる沿面距離をさらに長くすることができる。また、環状溝と筒状部との噛み合い面積をさらに増やすことができる。そのため、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることをより効果的に抑制できる。
また、電解液の這い上がりは、溝のエッジ(角部)を越える際により効果的に抑制される。環状溝の数が増えることで溝のエッジの数が増えるため、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることをさらに効果的に抑制できる。
上記の蓄電池の蓋において好ましくは、環状溝は、レーザー加工により形成されている。レーザー加工のため、環状溝を正確に形成することができる。そのため、確実に環状溝と筒状部とを噛み合わせることができる。これにより、確実にブッシング部と筒状部との隙間における電解液の這い上がりの効果的な抑制を実現できる。また、レーザー加工のため、環状溝を短時間で正確に形成できるため、生産効率をも向上できる。
本発明の蓄電池の筐体は、電槽と、電槽に接合される上記のいずれかの蓄電池の蓋とを備えている。本発明の蓄電池の筐体によれば、上記のいずれかの蓄電池の蓋を備えているため、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。
本発明の蓄電池は、電槽と、電槽に接合された上記のいずれかの蓄電池の蓋とを備えている。本発明の蓄電池の筐体によれば、上記のいずれかの蓄電池の蓋を備えているため、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。また、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できるため、電解液が蓄電池の外部に漏れ出すことを抑制できる。このため、蓄電池の外部に漏れ出した電解液によってブッシング部が損傷することを抑制できるので蓄電池の寿命を向上できる。
以上説明したように本発明によれば、ブッシング部と筒状部との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる蓄電池の蓋ならびにそれを備えた蓄電池の筐体および蓄電池を提供することができる。
本発明の一実施の形態における蓄電池の概略斜視図である。 本発明の一実施の形態における蓄電池の部分断面側面図である。 本発明の一実施の形態における蓄電池の蓋の概略斜視図である。 図3のIV−IV線に沿う概略断面図である。 本発明の一実施の形態におけるブッシング部の概略斜視図である。 図4のP部を示す概略拡大図である。 実施例1の這い上がり段数を測定する状態を示す概略模式図である。 実施例1の這い下がり段数を測定する状態を示す概略模式図である。 実施例3の溝幅、溝深さ、溶けバリ高さを示す概略模式図である。
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
最初に本発明の一実施の形態の蓄電池の構成について説明する。
図1を参照して、蓄電池100は、筐体10と、筐体10内に収容された極板、極柱、電解液などの一般的な蓄電池の各種要素とを有している。筐体10は、蓋1と、電槽2と、液口栓3とを主に有している。
図1および図2を参照して、蓋1は電槽2に接合可能に形成されている。蓋1は電槽2の上部に接合されている。蓋1は電槽2の開口に対応した矩形の平面形状を有している。電槽2は、たとえば直方体形状の容器であり、合成樹脂で形成されている。電槽2は、外壁21と、隔壁22とを有している。外壁21と隔壁22とで取り囲まれた空間が複数形成されている。それぞれの空間内にストラップ5、正極板6、負極板7、セパレータ8からなる極板群が収容されている。それぞれの空間内の極板群は互いに直列に電気的に接続されている。また、それぞれの空間内には図示しない電解液が収容されている。なお電解液は硫酸溶液(希硫酸)である。
蓋1は蓋部11と複数のブッシング部13とを有している。蓋部11は合成樹脂で形成されている。蓋1はインサート成形によって形成される。つまり、ブッシング部13の下部の周りに筒状部12を有する蓋部11を構成する合成樹脂が注入され、注入された合成樹脂が固化されてブッシング部13と蓋部11とが一体化される。
蓋部11はブッシング部13を装着するための複数の筒状部12を有している。筒状部12は、蓋1と電槽2とが積層する方向に貫通孔を有するように筒状に形成されている。筒状部12は、筒状部12の上部が蓋1の上面1aから突出し、筒状部12の下部が蓋1の下面1bから突出するように形成されている。
ブッシング部13は複数の環状突出部13a,13b,13cと、貫通孔13dとを有している。環状突出部13a,13b,13cは、ブッシング部13の円管部に設けられている。ブッシング部13は、筒状部12と嵌合可能に構成されている。ブッシング部13は鉛で形成されている。ブッシング部13の下部の外周側が筒状部12の内周側に挿着されている。ブッシング部13は、ブッシング部13の上部が筒状部12の上端から突出するよう形成されている。ブッシング部13の貫通孔13dに極柱4が受入れられている。
極柱4は鉛で形成されている。ブッシング部13の上端と極柱4の上端とは溶接されており、ブッシング部13と極柱4とは電気的に接続されている。極柱4は電槽2内に延在するように形成されている。極柱4の電槽2内に位置する端部にはストラップ5が取り付けられている。ストラップ5には、正極板6、負極板7および正極板6と負極板7とが接触しないように隔離するセパレータ8が取り付けられている。
蓋1はリブ部14を有している。リブ部14は蓋1と電槽2との接合用のリブである。リブ部14が外壁21および隔壁22と溶着されることにより蓋1と電槽2とが接合されている。
続いて、蓄電池の蓋の構成についてより詳しく説明する。
図3を参照して、蓋1の上面1aには、液口栓3が螺着されるように液口15が形成されている。なお、図3では、ブッシング部13に極柱4(図2)が溶接されていない状態を示しているため、ブッシング部13の上端は開口している。
図4を参照して、ブッシング部13は、下端環状突出部13a,中間環状突出部13bおよび上端環状突出部13cを有している。下端環状突出部13aはブッシング部13の下端に位置している。上端環状突出部13cは筒状部12の上端に位置している。中間環状突出部13bは、下端環状突出部13aと上端環状突出部13cとの間に設けられている。中間環状突出部13bは3個形成されている。なお、中間環状突出部13bの個数は、これに限定されるものではなく、単数であってもよく、また複数であってもよい。下端環状突出部13aおよび中間環状突出部13bは、上端環状突出部13cより径方向の大きさが小さくなるように形成されている。
ブッシング部13は、筒状部12の内周側と嵌合するように設けられている。下端環状突出部13aおよび中間環状突出部13bでは、それぞれの上面、側面および下面が筒状部12に覆われている。上端環状突出部13cは、側面および下面が筒状部12に覆われている。また、ブッシング部13の底面13eは筒状部12に覆われている。
図4および図5を参照して、ブッシング部13の底面13eに環状溝13fが形成されている。環状溝13fはブッシング部13の円管部の底面13eに設けられている。環状溝13fはブッシング部13の底面13eにおいて、底面13eの周方向の全周に連続的に設けられている。環状溝13fは、周方向の全周に連続的に設けられていればよく、周方向の全周の一部において設けられていなくてもよい。環状溝13fは、たとえば周方向の全周の10%程度において設けられていなくてもよい。
また、環状溝13fは底面13eにおいて複数設けられていてもよい。環状溝13fは3本形成されている。なお、環状溝13fの本数は、これに限定されず、単数であってもよく、また複数であってもよい。
また、環状溝13fは環状に溝が形成されていればよく、加工方法は制限されないが、環状溝13fはレーザー加工により形成されていてもよい。レーザー加工によれば、環状溝13fが正確に形成される。また、レーザー加工によれば、環状溝13fが短時間で正確に形成される。なお、環状溝13fの加工はこれに限定されず、たとえば切削加工、鋳造加工および鍛造加工などのレーザ加工以外の加工であってもよい。
なお、図5に示すように、上端環状突出部13cおよび上端環状突出部13cと隣り合う中間環状突出部13bの各々の一部を互いにつなぐように突起部13gが設けられている。この突起部13gは、ブッシング部13が筒状部12に取り付けられた状態でのブッシング部13のまわり止めのために設けられている。
図4および図6を参照して、筒状部12とブッシング部13とが嵌合された状態で、環状溝13fは筒状部12に覆われ筒状部12と係合している。環状溝13fの側面SSおよび上面TSによって、ブッシング部13の底面13eと筒状部12との沿面距離が長くなる。環状溝13fには筒状部12を構成する合成樹脂の一部が入り込んでいる。環状溝13fの内部空間は筒状部12を構成する合成樹脂の一部によって充填されている。なお、環状溝13fは合成樹脂で完全に埋め込まれていなくてもよい。たとえば環状溝13fの上面TSと合成樹脂との間に隙間があってもよい。このように環状溝13fと筒状部12とが噛み合うことで環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることが抑制される。
また、蓋1はインサート成形によって形成されるため、筒状部12を構成する合成樹脂が固化する際に合成樹脂が収縮する。合成樹脂は、図6中矢印Aで示す方向に収縮する。そのため、下端環状突出部13aの内周側に位置する環状溝13fの側面SSに合成樹脂が密着する。したがって、環状溝13fの側面SSにおいて環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることが抑制される。特に、環状溝13fと底面13eとのエッジ(角部)付近において、環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることが抑制される。
図5および図6に示すようにブッシング部13の底面13eの周方向の全周に渡って連続的に環状溝13fと筒状部12とが噛み合わされる。
次に本発明の一実施の形態の作用効果について説明する。
本発明の一実施の形態の蓄電池100の蓋1によれば、ブッシング部13の底面13eに環状溝13fが設けられているため、環状溝13fによって電解液が這い上がる沿面距離を長くすることができる。このため、ブッシング部13の外周と筒状部12との隙間に電解液が到達することを抑制できる。
また、環状溝13fは、筒状部12とブッシング部13とが嵌合された状態で、筒状部12に覆われ筒状部12と係合しているため、環状溝13fと筒状部12とが噛み合うことにより、環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることを抑制できる。このため、環状溝13fを越えてブッシング部13の外周と筒状部12との隙間に電解液が達することを抑制できる。また、環状溝13fによって電解液が這い上がり始めるブッシング部13の底面13eにおいて電解液の這い上がり量を抑制できるため、結果として、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。
環状溝13fが底面13eの周方向の全周に連続的に設けられているため、底面13eの周方向の全周に連続的に環状溝13fと筒状部12とが噛み合う場合には、底面13eの周方向の全周において電解液の這い上がりを抑制できる。この場合には、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることをさらに効果的に抑制できる。
また、環状溝13fが底面13eの周方向の全周に連続的に設けられているため、電解液が環状溝13fの側面SSに沿って底面13eの周方向に移動するため、環状溝13fの側面SSと交差する方向(底面13eの周方向と交差する方向)への電解液の進行を抑制できる。このため、環状溝13fの側面SSと交差する方向への電解液の這い上がりを抑制できる。
また、蓋1はインサート成形によって形成されるため、筒状部12を構成する合成樹脂が固化する際の合成樹脂の収縮により、下端環状突出部13aの内周側に位置する環状溝13fの側面SSに合成樹脂が密着する。したがって、環状溝13fの側面SSにおいて環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることを抑制できる。特に、環状溝13fと底面13eとのエッジ付近において、環状溝13fと筒状部12との隙間が大きくなることを抑制できる。
本発明の一実施の形態の蓄電池100の蓋1によれば、環状溝13fは、底面13eにおいて複数設けられている。これにより、環状溝13fの数が増えるため、電解液が這い上がる沿面距離をさらに長くすることができる。また環状溝13fと筒状部12との噛み合い面積をさらに増やすことができる。そのため、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることをより効果的に抑制できる。
また、電解液の這い上がりは、溝のエッジ(角部)を越える際により効果的に抑制される。環状溝13fの数が増えることで溝のエッジの数が増えるため、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることをさらに効果的に抑制できる。
本発明の一実施の形態の蓄電池100の蓋1によれば、環状溝13fは、レーザー加工により形成されている。レーザー加工のため、環状溝13fを正確に形成することができる。そのため、確実に環状溝13fと筒状部12とを噛み合わせることができる。これにより、確実にブッシング部13と筒状部12との隙間における電解液の這い上がりの効果的な抑制を実現できる。また、レーザー加工のため、環状溝13fを短時間で正確に形成できるため、生産効率をも向上できる。
本発明の一実施の形態の蓄電池100の筐体10は、電槽2と、電槽2に接合される上記のいずれかの蓄電池100の蓋1とを備えている。上記のいずれかの蓄電池100の蓋1を備えているため、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。
本発明の一実施の形態の蓄電池100は、電槽2と、電槽2に接合された上記のいずれかの蓄電池100の蓋1とを備えている。上記のいずれかの蓄電池100の蓋1を備えているため、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できる。また、ブッシング部13と筒状部12との隙間を電解液が這い上がることを効果的に抑制できるため、電解液が蓄電池100の外部に漏れ出すことを抑制できる。このため、蓄電池100の外部に漏れ出した電解液によってブッシング部13が損傷することを抑制できるので蓄電池の寿命を向上できる。
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、ブッシング部の底面に環状溝を形成した実施例A〜Cと、環状溝を形成していない比較例Aとについて、硫酸溶液の這い上がり段数および這い下がり段数について測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2012094372
実施例A〜Cおよび比較例Aについてそれぞれブッシング部を作製した。表1の実施例A〜Cの溝形成条件については、条件1〜条件3として表2に示す。表2に示すように、溝ピッチ(mm)、溝本数(本)、レーザー加工回数(回)、溝幅(mm)、溝深さ(mm)、加工範囲(mm)をそれぞれ規定した。環状溝はレーザー加工により形成した。ここで加工範囲とは最も離れた溝同士の距離である。
Figure 2012094372
実施例A〜Cおよび比較例Aでは、プラス極(+)およびマイナス極(+)のブッシング部13についてそれぞれ測定した。実施例A〜Cおよび比較例Aは、製造誤差の影響を抑制するために第1回および第2回と2回に渡り同じ金型で成型した。この金型は1回で2個ずつ成型可能であり、その内の一方を這い上がり段数を測定するために使用し、他方を這い下がり段数を測定するために使用した。
図7を参照して、這い上がり段数の測定について説明する。ブッシング部13を蓋想定部2aにインサート成形した試料を実施例A〜Cおよび比較例Aについて作製した。ブッシング部13の底面が下側になるように試料を槽50内の硫酸溶液51に浸漬させた。ブッシング部13の底面が硫酸溶液51の液面の高さより低くなるように試料を硫酸溶液51に浸漬させた。硫酸溶液51は常温とし、比重1.3とした。この硫酸溶液51に2週間連続して試料を浸漬させた。その後、硫酸溶液51の這い上がりによって変色したブッシング部13の段数を測定することで硫酸溶液51の這い上がり段数を測定した。
段数はブッシング部13の複数の環状突出部のそれぞれを1段とし、また隣り合う環状突出部の間のブッシング部13の外周面を1段とした。また、段数はブッシング部13の底面から反対側に向かって段数が増えるように設定した。つまり、第1段はブッシング部13の底面の環状突出部Y1であり、第2段は底面の環状突出部Y1と隣り合う環状突出部Y3と環状突出部Y2との間のブッシング部13の外周面Y2である。第3段は環状突出部Y3である。このようにしてブッシング部13の底面の環状突出部Y1から最も離れた環状突出部Y9まで9段の段数を設定した。
図8を参照して、這い下がり段数の測定について説明する。這い上がり段数の測定と同様にブッシング部13を蓋想定部2aにインサート成形した試料を実施例A〜Cおよび比較例Aについて作製した。ブッシング部13の蓋想定部2aから突出した先端において貫通孔をゴム栓で封止した。そしてゴム栓が下側になるように試料を配置した。この状態でブッシング部13の底面が浸漬するように貫通孔に硫酸溶液51を注入した。硫酸溶液51は常温とし、比重1.3とした。この状態で2週間連続して試料を硫酸溶液51に接触させた。その後、硫酸溶液51の這い下がりによって変色したブッシング部13の段数を測定することで硫酸溶液51の這い下がり段数を測定した。なお、這い下がり段数の測定は、実際の使用としては想定されない状態での測定ではあるが、硫酸溶液51の漏れについてより過酷な条件を想定して測定した。
表1より、実施例A〜Cの各々は、這い上がり平均段数(段)、這い下がり平均段数(段)および這い上がり平均段数(段)と這い下がり平均段数(段)とを平均した全体平均段数(段)のいずれも比較例Aと比較して少なくなることがわかった。これにより、環状溝によって硫酸溶液51の這い上がりおよび這い下がりが抑制されることがわかった。
(実施例2)
実施例2では、ブッシング部の底面に環状溝を形成した実施例Dと、環状溝を形成していない比較例B〜Eについて、硫酸溶液の這い上がり段数について測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2012094372
実施例Dおよび比較例C〜Eのそれぞれについて試料1〜6の6つの試料を作製した。実施例Dおよび比較例C〜Eはブッシング部の底面の加工が異なっている。実施例Dはレーザー加工により底面に環状溝を1本形成した。比較例Bは底面に何ら加工を施さなかった。比較例Cはサンドペーパー100番(♯100)で底面を研磨した。比較例Dはサンドペーパー1000番(♯1000)で底面を研磨した。比較例Eはレーザー加工により底面に凹凸(滑り止め)加工を施した。
実施例1の這い上がり段数の測定と同様に図7に示す状態でそれぞれの試料について這い上がり段数を測定した。ブッシング部13の底面が硫酸溶液51の液面の高さより低くなるように試料を硫酸溶液51に浸漬させた。硫酸溶液51は常温とし、比重1.3とした。この硫酸溶液51に1ヶ月連続して試料を浸漬させた。その後、硫酸溶液51の這い上がりによって変色したブッシング部13の段数を測定することで硫酸溶液51の這い上がり段数を測定した。
表3より、実施例Dは、試料1〜6および平均のいずれも硫酸溶液51の這い上がり段数が比較例B〜Eと比較して少なくなることがわかった。これにより、環状溝によって硫酸溶液51の這い上がりが抑制されることがわかった。
(実施例3)
実施例3では、ブッシング部の底面の環状溝の形成条件の異なる実施例E〜Mについて、硫酸溶液の這い上がり段数について測定した。測定結果を表4に示す。
Figure 2012094372
実施例E〜Mはそれぞれ3個ずつ試料を作製した。這い上がり段数(段)はそれぞれの平均値である。実施例E〜Mの環状溝は、レーザー加工により形成した。レーザー加工には株式会社キーエンス製のレーザーマーカ(MD−V9900)を用いた。レーザーの波長は1064nmである。レーザーの出力は100%で13ワット(W)である。図9を参照して、形成された環状溝13fは、溝幅dと、溝幅wと、溶けバリ高さhとを有している。ここで溶けバリ高さhとは、レーザー加工の際に底面13eが溶けて底面13eから突出するように形成されたバリの高さである。
実施例1の這い上がり段数の測定と同様に図7に示す状態でそれぞれの資料について這い上がり段数を測定した。ブッシング部13の底面が硫酸溶液51の液面の高さより低くなるように試料を硫酸溶液51に浸漬させた。硫酸溶液51は常温とし、比重1.3とした。この硫酸溶液51に1ヶ月連続して試料を浸漬させた。その後、硫酸溶液51の這い上がりによって変色したブッシング部13の段数を測定することで硫酸溶液51の這い上がり段数を測定した。
表4より、這い上がり段数平均は、実施例Mが1.7段と最も少なくなった。続いて、実施例FおよびIが2.0段と少なくなった。これより、環状溝13fの溝深さdの寸法が0.041mm以上0.073mm以下であり、溝幅wの寸法が0.037以上0.077以下であり、溝深さdの寸法を溝幅wの寸法で除した値d/wが0.689以上1.108以下であり、環状溝13fが3本以上5本以下設けられていることにより、這い上がり段数平均が少なくなることがわかった。
なお、本発明は、自動車用の蓄電池への適用に限定されず、また鉛蓄電池への適用に限定されない。本発明は、たとえば、据置き用、列車用および電気車用などで電解液が水酸化カリウム(KOH)のアルカリ電池にも適用され得る。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
本発明は、ブッシング部を有する蓄電池の蓋ならびにそれを備えた蓄電池の筐体および蓄電池に特に有利に適用され得る。
1 蓋、1a 上面、1b 下面、2 電槽、2a 蓋想定部、3 液口栓、4 極柱、5 ストラップ、6 正極板、7 負極板、8 セパレータ、10 筐体、11 蓋部、12 筒状部、13 ブッシング部、13a 下端環状突出部、13b 中間環状突出部、13c 上端環状突出部、13d 貫通孔、13e 底面、13f 環状溝、13g 突起部、14 リブ部、15 液口、21 外壁、22 隔壁、100 蓄電池。

Claims (5)

  1. 筒状部を有する蓋部と、
    前記筒状部の内周側と嵌合するように設けられたブッシング部とを備え、
    前記ブッシング部は、前記ブッシング部の底面において、前記底面の周方向の全周に連続的に設けられた環状溝を含み、
    前記筒状部と前記ブッシング部とが嵌合された状態で、前記環状溝は、前記筒状部に覆われ該筒状部と係合している、蓄電池の蓋。
  2. 前記環状溝は、前記底面において複数設けられている、請求項1に記載の蓄電池の蓋。
  3. 前記環状溝は、レーザー加工により形成されている、請求項1または2に記載の蓄電池の蓋。
  4. 電槽と、
    前記電槽に接合される請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電池の蓋とを備えた、蓄電池の筐体。
  5. 電槽と、
    前記電槽に接合された請求項1〜3のいずれかに記載の蓄電池の蓋とを備えた、蓄電池。
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