JP2012092421A - 化成処理Al系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

化成処理Al系めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】有機樹脂を含む化成処理皮膜を有する化成処理Al系めっき鋼板であって、耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れる化成処理Al系めっき鋼板を提供すること。
【解決手段】Al系合金めっき鋼板の表面に化成処理液を塗布し、乾燥させて、膜厚が0.5〜10μmの化成処理皮膜を形成する。化成処理液は、反応性官能基0.05〜5質量%とF原子7〜20質量%とを含有し、数平均分子量が1000〜8万の範囲内であるフッ素含有樹脂と、前記反応性官能基と反応しうる官能基を有する有機系架橋剤と、4A族金属化合物とを含有する。化成処理液中のフッ素含有樹脂に対する有機系架橋剤の量は、0.8〜9.6質量%の範囲内である。また、化成処理液中のフッ素含有樹脂に対する4A族金属の化合物の量は、金属換算で0.1〜5質量%の範囲内である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐候性、耐水性および皮膜密着性に優れる化成処理Al系めっき鋼板およびその製造方法に関する。
めっき鋼板は、成形加工時のカジリを防止するために、有機樹脂を含む化成処理皮膜が形成されることがある(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1、2には、亜鉛系めっき鋼板の表面に、ウレタン樹脂などの有機樹脂を含む化成処理皮膜を形成することが記載されている。このようにめっき鋼板の表面を、有機樹脂を含む化成処理皮膜で被覆することで、耐カジリ性だけでなく、耐食性や耐変色性なども向上させることができる。
一方、化成処理めっき鋼板の耐候性を向上させるために、化成処理皮膜を構成する有機樹脂として耐候性に優れるフッ素樹脂を使用することがある。このように耐候性の向上を目的としてフッ素樹脂を使用する場合、有機溶剤系フッ素樹脂組成物が使用されることが多い。しかし、このような有機溶剤系フッ素樹脂組成物には、火災の危険性や有害性、大気汚染などの問題がある。
また、水系フッ素樹脂組成物も様々なものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、このような水系フッ素樹脂組成物は、いずれも高温での焼付けを必要とする(例えば180〜230℃、特許文献3参照)。このような高温での焼き付けは、現場での塗装においては現実的に不可能であり(通常は常乾樹脂を使用する)、加熱乾燥が主流である工場ラインにおいても不利である。
特開2005−15834号公報 特開2005−206764号公報 特開昭57−38845号公報
前述の通り、めっき鋼板の表面に有機樹脂を含む化成処理皮膜を形成することで、耐カジリ性や耐食性、その上に形成される皮膜(塗膜)の密着性などを向上させることができる。しかしながら、有機樹脂を含む化成処理皮膜を形成された従来の化成処理めっき鋼板は、外装建材として使用した場合に耐候性が不十分である場合があった。すなわち、ウレタン樹脂などの多くの有機樹脂は紫外線により劣化してしまうため、従来の化成処理めっき鋼板を外装建材として使用した場合、めっき鋼板の表面を被覆する化成処理皮膜が時間の経過とともに失われてしまうおそれがある。このように化成処理皮膜が失われてしまうと、変色や錆などが発生して美観が損なわれるおそれがあり、外装建材として好ましくない。
このような化成処理めっき鋼板の耐候性を向上させる手段としては、化成処理皮膜を構成する有機樹脂として耐候性に優れるフッ素樹脂を使用することが考えられる。そこで、本発明者は取り扱いが容易な水系フッ素樹脂組成物を用いてめっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成する予備実験を行った。その結果、水系フッ素樹脂組成物を使用することで、耐紫外線性を向上させることはできたが、その一方で造膜性、耐水性および皮膜密着性が低下してしまった。本発明者によるさらなる検討の結果、これらの品質の低下は、水系フッ素樹脂組成物を製造する際に使用される乳化剤(例えば、ペルフルオロオクタン酸アンモニウム塩)が化成処理皮膜中に残存するためであることが推察された。
以上のように、有機樹脂を含む化成処理皮膜を形成された従来の化成処理めっき鋼板は、耐候性が不十分である場合があった。また、有機樹脂として水系フッ素樹脂を使用することで、化成処理めっき鋼板の耐候性(耐紫外線性)を向上させることはできるが、その一方で造膜性、耐水性および皮膜密着性が低下してしまうため、耐候性、耐水性および皮膜密着性を両立させることはできなかった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、有機樹脂を含む化成処理皮膜を有する化成処理Al系めっき鋼板であって、耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れる化成処理Al系めっき鋼板を提供することを目的とする。
本発明者は、有機樹脂の原料として、乳化剤を使用せずに調製された水系フッ素含有樹脂組成物を使用し、かつこれらのフッ素含有樹脂を有機系架橋剤および4A族金属化合物で架橋することで、化成処理皮膜の耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてを向上させうることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一は、以下の化成処理Al系めっき鋼板に関する。
[1]Alを85〜99質量%含むAl系合金めっき鋼板と、前記Al系合金めっき鋼板の表面に形成された、膜厚0.5〜10μmの化成処理皮膜と、を有する化成処理Al系めっき鋼板であって;前記化成処理皮膜は、有機系架橋剤により架橋された、F原子を7〜20質量%含有するフッ素含有樹脂と、前記フッ素含有樹脂に対して金属換算で0.1〜5質量%の4A族金属化合物とを含有する、化成処理Al系めっき鋼板。
[2]前記有機系架橋剤は、メラミン化合物である、[1]に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
[3]前記化成処理皮膜は、さらにリン酸塩を含有し;前記フッ素含有樹脂に対する前記リン酸塩の量は、P換算で0.05〜3質量%の範囲内である、[1]または[2]に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
[4]前記化成処理皮膜は、さらにシランカップリング剤を含有し;前記フッ素含有樹脂に対する前記シランカップリング剤の量は、0.5〜5質量%の範囲内である、[1]〜[3]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板。
[5]前記4A族金属は、Ti、Zr、Hfおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、[1]〜[4]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板。
[6]前記Al系合金めっき鋼板と、前記化成処理皮膜との間に形成された;バルブメタルの酸化物または水酸化物、およびバルブメタルのフッ化物を含有する下地化成処理皮膜をさらに有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板。
本発明の第二は、以下の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法に関する。
[7]Alを85〜99質量%含むAl系合金めっき鋼板を準備するステップと;前記Al系合金めっき鋼板の表面に化成処理液を塗布し、乾燥させて、膜厚が0.5〜10μmの化成処理皮膜を形成するステップとを含み;前記化成処理液は、反応性官能基0.05〜5質量%とF原子7〜20質量%とを含有し、数平均分子量が1000〜8万の範囲内であるフッ素含有樹脂と、前記反応性官能基と反応しうる官能基を有する有機系架橋剤と、4A族金属の酸素酸塩、フッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩または過酸化塩のいずれかとを含有し;前記フッ素含有樹脂に対する前記有機系架橋剤の量は、0.8〜9.6質量%の範囲内であり;前記フッ素含有樹脂に対する、前記4A族金属の酸素酸塩、フッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩または過酸化塩の量は、金属換算で0.1〜5質量%の範囲内である、化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[8]前記フッ素含有樹脂は、前記反応性官能基としてカルボキシル基およびスルホン酸基を有し、前記フッ素含有樹脂が有するカルボキシル基とスルホン酸基との比率は、カルボキシル基/スルホン酸基のモル比で5〜60の範囲内である、[7]に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[9]前記有機系架橋剤は、メラミン化合物である、[7]または[8]に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[10]前記化成処理液は、さらにリン酸塩を含有し;前記フッ素含有樹脂に対する前記リン酸塩の量は、P換算で0.05〜3質量%の範囲内である、[7]〜[9]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[11]前記化成処理液は、さらにシランカップリング剤を含有し;前記フッ素含有樹脂に対する前記シランカップリング剤の量は、0.5〜5質量%の範囲内である、[7]〜[10]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[12]前記4A族金属は、Ti、Zr、Hfおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、[7]〜[11]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[13]乳化剤非存在下の水溶媒中でフルオロオレフィンと反応性官能基含有モノマーとを共重合させて、前記フッ素含有樹脂を準備するステップをさらに含む、[7]〜[12]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
[14]前記化成処理皮膜を形成するステップの前に;前記Al系合金めっき鋼板の表面に下地化成処理液を塗布し、乾燥させて、下地化成処理皮膜を形成するステップをさらに含み;前記下地化成処理液は、バルブメタル塩とフッ化物イオンとを含有する、[7]〜[13]のいずれかに記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
本発明によれば、耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れる化成処理Al系めっき鋼板を提供することができる。本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、耐候性、耐水性、耐食性および耐変色性に優れているため、例えば外装建材用のめっき鋼板として有用である。
1.化成処理Al系めっき鋼板
本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、Al系合金めっき鋼板(化成処理原板)と、Al系合金めっき鋼板の表面に形成された化成処理皮膜とを有する。本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、化成処理皮膜が有機系架橋剤により架橋されたフッ素含有樹脂と4A族金属化合物とを含むことを一つの特徴とする。
以下、本発明の化成処理Al系めっき鋼板の各構成要素について説明する。
[化成処理原板]
化成処理原板としては、耐食性および意匠性に優れる、Al系合金めっき鋼板が使用される。ここで「Al系合金めっき鋼板」とは、Alを85〜99質量%含み、残部が実質的にSiのAl系合金めっき層を有する鋼板を意味する。Al系合金めっき鋼板の例には、溶融Al−9%Siめっき鋼板などが含まれる。
Al系合金めっき鋼板の下地鋼としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などが使用される。加工性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などの深絞り用鋼板が下地鋼として好ましい。
[下地化成処理皮膜]
化成処理原板として使用されるAl系合金めっき鋼板の表面には、バルブメタルの酸化物または水酸化物と、バルブメタルのフッ化物とを含有する下地化成処理皮膜が形成されている場合もある。このように、Al系合金めっき鋼板の表面に下地化成処理皮膜が形成されている場合、化成処理皮膜は、下地化成処理皮膜を介してAl系合金めっき鋼板の表面に形成される。
バルブメタルの酸化物および水酸化物は、高い絶縁抵抗を示す。このため、バルブメタルの酸化物または水酸化物を含む下地化成処理皮膜は、電子の移動に対する抵抗体として作用する。したがって、雰囲気中の水分に含まれている溶存酸素の還元反応が抑えられ、対となるAl系合金めっき鋼板の酸化反応も抑えられる。その結果、基材となるAl系合金めっき鋼板からの金属成分の溶出(腐食)が抑制される。なかでも、Ti,Zr,Hf等のIV族A元素の4価化合物は安定な化合物であり、優れた高絶縁性皮膜を形成する。
また、化成処理皮膜には、通常、化成処理時や成形加工時に、皮膜欠陥が不可避的に発生する。皮膜欠陥部では基材が露出するため、化成処理されていても、腐食抑制作用が期待できない。これに対して、前述の下地化成処理皮膜は、バルブメタルのフッ化物をも含むので、自己修復作用を有する。つまり、バルブメタルのフッ化物は、雰囲気中の水分に溶け出した後、皮膜欠陥部から露出している下地鋼の表面に難溶性酸化物または水酸化物となって再析出する。その結果、皮膜欠陥部が埋められるので、自己修復作用が発揮される。
本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、Al系合金めっき鋼板に化成処理をすることで製造されるが;化成処理前のAl系合金めっき鋼板は、耐食性が十分でない。そのため、化成処理前のAl系合金めっき鋼板を保存/運搬したり、成形加工をしたりする間に、腐食が発生する恐れがある。そこで、化成処理前のAl系合金めっき鋼板に下地化成処理皮膜を形成しておくことで、化成処理前のAl系合金めっき鋼板における腐食の発生を確実に防止することができる。
下地化成処理皮膜を形成したAl系合金めっき鋼板を、保存、運搬または成形加工(溶接等を含む)等したときに、一部の下地化成処理皮膜が剥離、欠損または欠落することがある。それにより、Al系合金めっき鋼板の表面が露出するが、この露出面には、フッ素含有樹脂および4A族金属化合物を含む化成処理皮膜が直接接触する。
下地化成処理皮膜は、Al系合金めっき鋼板と、化成処理皮膜との密着性を向上させる作用を示す。このため、下地化成処理皮膜が剥離等した箇所に形成された化成処理皮膜は、一般的にはその皮膜密着性が低下するとも思われる。しかしながら、化成処理皮膜中には、直接的に接触するめっき層から溶出したAlが存在する。そして、このAlの存在により、化成処理皮膜の耐食性や皮膜密着性が向上する。すなわち、Al系合金めっき鋼板と、化成処理皮膜との密着性を向上させる作用を示す下地化成処理皮膜が剥離等した箇所においても、化成処理皮膜の耐食性や密着性は低下し難いといった効果が発揮される。なお、化成処理皮膜中にAlが存在することによって、化成処理皮膜の耐食性等が向上するメカニズムについては後述する。
下地化成処理皮膜は、基材となるAl系合金めっき鋼板の表面に形成された下地化成処理液の塗布膜を、乾燥させること等により形成される。下地化成処理液には、バルブメタル塩と、フッ化物イオンと、溶媒である水とが含まれる。下地化成処理液の塗膜を乾燥させることで、バルブメタル塩が、下地化成処理皮膜に含まれるバルブメタルの酸化物もしくは水酸化物、またはフッ化物となる。
バルブメタルの例には、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、およびWが含まれる。下地化成処理液に添加されるバルブメタル塩は、バルブメタルのハロゲン化物や酸素酸塩などでありうる。添加されるバルブメタル塩がフッ化物であれば、フッ化物イオン源としても作用する。
チタン塩の例には、KTiF(K:アルカリ金属又はアルカリ土類金属、n:1又は2)、K[TiO(COO)]、(NHTiF、TiCl、TiOSO、Ti(SO、およびTi(OH)などが含まれる。一方、下地化成処理液に含まれるフッ化物イオン源は、フッ素原子を含むバルブメタル塩であってもよいし、別途の可溶性フッ化物(例えば、(NH)Fなど)であってもよい。
下地化成処理液には、バルブメタル塩を安定化するために、キレート作用のある有機酸が添加されていることが好ましい。有機酸は、金属イオンをキレート化して化成処理液を安定させることができる。そのため、有機酸の添加量は、有機酸/金属イオンのモル比が、0.02以上となるように設定される。有機酸の例には、酒石酸、タンニン酸、クエン酸、蓚酸、マロン酸、乳酸、酢酸、およびアスコルビン酸などが含まれる。なかでも、酒石酸などのオキシカルボン酸や、タンニン酸などの多価フェノール類は、下地化成処理液を安定化させるとともに、フッ化物の自己修復作用を補完する作用も示し、密着性の向上にも有効である。
下地化成処理液には、各種金属のオルソリン酸塩やポリリン酸塩が添加されていてもよい。化成処理皮膜に、可溶性または難溶性の、金属リン酸塩または複合リン酸塩を含ませるためである。
可溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、下地化成処理皮膜から皮膜欠陥部に溶出して、基材であるAl系合金めっき鋼板のめっき成分(Alなど)と反応して、不溶性リン酸塩を析出させる。このようにして、チタンフッ化物の自己修復作用を補完する。また、可溶性リン酸塩が解離する際に、雰囲気が若干酸性化するため、チタンフッ化物の加水分解、ひいては難溶性チタン酸化物または水酸化物の生成が促進される。可溶性リン酸塩または複合リン酸塩の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびMnなどでありうる。可溶性リン酸塩または複合リン酸塩は、各種金属リン酸塩の形態で下地化成処理液に添加されてもよいし;各種金属塩と、燐酸、ポリ燐酸、またはリン酸塩とを組み合わせて化成処理液に添加されてもよい。
一方、難溶性の金属リン酸塩または複合リン酸塩は、下地化成処理皮膜に分散して、皮膜欠陥を解消するとともに皮膜強度を向上させる。難溶性リン酸塩または複合リン酸塩の金属は、Al、Ti、Zr、Hf、Znなどでありうる。難溶性リン酸塩または複合リン酸塩は、各種金属リン酸塩の形態で化成処理液に添加されてもよいし;各種金属塩とリン酸、ポリリン酸、またはリン酸塩とを組み合わせて化成処理液に添加されてもよい。
下地化成処理液には、フッ素系、ポリエチレン系、スチレン系などの有機ワックスや;シリカ、二硫化モリブデン、タルクなどの無機質潤滑剤などを、添加することもできる。これらを添加することで、下地化成処理皮膜の潤滑性を向上させることができる。低融点の有機ワックスは、下地化成処理液の塗布膜を乾燥させるときに、膜表面にブリードし、潤滑性を発現すると考えられる。一方、高融点の有機ワックスや無機系潤滑剤は、皮膜中に分散して存在するが、皮膜の最表層では島状分布で皮膜表面に露出することによって潤滑性を発現させるものと考えられる。
下地化成処理液の塗布膜を乾燥させて得た下地化成処理皮膜を、蛍光X線、ESCAなどで元素分析すると、下地化成処理皮膜に含まれているO及びF濃度が測定される。この元素濃度比F/O(原子比率)は、1/100以上であることが好ましい。得られた化成処理鋼板の腐食を抑制するためである。特に、元素濃度比F/O(原子比率)が1/100以上であると、皮膜欠陥部を起点とする腐食の発生が大幅に減少する。これは、十分な量のチタンフッ化物が下地化成処理皮膜中に含まれており、自己修復作用を発揮しているためと推察される。
[化成処理皮膜]
化成処理皮膜は、上述のAl系合金めっき鋼板(化成処理原板)の表面に形成されている。化成処理原板の表面には、下地となる皮膜を形成する等の下地化成処理をしてもよいが、下地化成処理をしなくてもよい。なお、化成処理原板の表面に下地化成処理をしない場合には、化成処理原板の表面には化成処理皮膜が直接形成される。この化成処理皮膜は、Al系合金めっき鋼板の耐候性や耐水性などを向上させる。
本発明は、化成処理皮膜の耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてを向上させることを目的としている。前述の通り、化成処理皮膜の耐候性(耐紫外線性)を向上させるためには、有機樹脂としてフッ素含有樹脂を使用すればよい。フッ素含有樹脂は、有機溶剤系フッ素含有樹脂と水系フッ素含有樹脂に大別される。有機溶剤系フッ素含有樹脂組成物を用いて化成処理皮膜を形成する場合は、揮発した溶剤の回収が問題となるが、水系フッ素含有樹脂組成物を用いた場合は、このような問題は生じない。そこで、本発明者は、取り扱いが容易な水系フッ素含有樹脂組成物を使用して耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れた化成処理皮膜を形成することを試みた。
前述の通り、本発明者の予備実験によれば、水系フッ素含有樹脂組成物を用いて化成処理皮膜を形成した場合に耐水性が低下するのは、水系フッ素含有樹脂組成物を製造する際に使用される乳化剤が化成処理皮膜中に残存するためと考えられた。そこで、本発明者は、乳化剤を使用せずに水系フッ素含有樹脂組成物を製造することができれば、化成処理皮膜の耐水性の低下を抑制できると考えた。
そこで、本発明者は、様々な観点から検討した結果、1)低分子量の水系フッ素含有樹脂であれば、乳化剤を使用しなくても水系フッ素含有樹脂組成物を製造可能であること、2)低分子量のフッ素含有樹脂を用いて化成処理皮膜を形成する場合も化成処理皮膜の耐水性の低下が問題となるが、低分子量のフッ素含有樹脂を用いて化成処理皮膜を形成する場合であっても、フッ素含有樹脂のポリマー鎖間を有機系架橋剤および4A族金属化合物で架橋することで化成処理皮膜に十分な耐水性を付与できること、を見出した。
そして、本発明者は、低分子量の水系フッ素含有樹脂をベースとする化成処理液に、さらに有機系架橋剤および4A族金属化合物を配合することで、耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れる化成処理皮膜を形成できることを見出したのである。
従来、有機系架橋剤を用いてフッ素含有樹脂皮膜を形成すると、有機系架橋剤による架橋部位が優先的に耐候劣化して皮膜が多孔質状となってしまい、皮膜の耐水性が低下してしまうという問題があった。この問題に対して、本発明者は、有機系架橋剤と4A族金属化合物とを組み合わせて用いることで、皮膜の多孔質化を抑制できることを見出した。その理由は明らかではないが、1)有機系架橋剤と4A族金属化合物とを組み合わせることでフッ素含有樹脂の架橋反応がより進行し、フッ素含有樹脂が高分子量化することで有機系架橋剤による架橋部位の結合がより安定化しているという可能性や、2)4A族金属化合物による架橋部位の結合が安定であるため、紫外線により有機系架橋剤による架橋が解離してもフッ素含有樹脂の低分子量化が抑制されているという可能性などが考えられる。
本発明の化成処理Al系めっき鋼板の化成処理皮膜では、1)フッ素含有樹脂(好ましくはフッ素含有オレフィン樹脂)を配合することで耐候性(耐紫外線性)を向上させている。また、2)低分子量のフッ素含有樹脂を使用することでエマルション製造時の乳化剤の使用を回避し、かつ3)フッ素含有樹脂を有機系架橋剤および4A族金属化合物で架橋させることで耐水性を向上させている。
以下、化成処理皮膜に含まれる各成分について説明する。
1)フッ素含有樹脂
化成処理皮膜は、フッ素含有樹脂、より具体的にはフッ素含有オレフィン樹脂を主成分として含む。化成処理皮膜における架橋されたフッ素含有樹脂の含有量は、70〜99質量%の範囲内が好ましい。前述の通り、化成処理皮膜を構成する有機樹脂としてフッ素含有樹脂を用いることで、化成処理皮膜の耐候性(耐紫外線性)を向上させることができる。
化成処理皮膜に含まれるフッ素含有樹脂中のF原子の含有量は、7〜20質量%の範囲内が好ましい。F原子の含有量が7質量%未満の場合、化成処理皮膜の耐候性を十分に向上させることができない。一方、F原子の含有量が20質量%超の場合、塗料化が困難であり、かつ密着性および乾燥性が低下するおそれがある。フッ素含有樹脂中のF原子の含有量は、蛍光X線分析装置を用いることで測定することができる。
本発明の化成処理Al系めっき鋼板の化成処理皮膜では、乳化剤を使用せずに調製された水系フッ素樹脂組成物を用いて形成される。ここで「水系フッ素含有樹脂」とは、水系溶媒に分散しうるフッ素含有樹脂を意味する。また、「水系フッ素樹脂組成物」とは、水系フッ素含有樹脂のエマルションや懸濁液などを意味する。
乳化剤を使用せずに高分子量のフッ素含有樹脂を調製することは困難なため、通常、乳化剤を使用せずに調製された水系フッ素樹脂組成物に含まれるフッ素含有樹脂の分子量は、1000〜8万の範囲内である。このような低分子量のフッ素含有樹脂を用いて化成処理皮膜を形成した場合、化成処理皮膜の耐水性が十分ではなく、湿気や腐食性ガスなどが化成処理皮膜を容易に貫通してめっき鋼板に到達し、その結果としてめっき鋼板が腐食してしまうおそれがある。さらに、低分子量のフッ素含有樹脂を用いて化成処理皮膜を形成した場合、光エネルギーなどの作用により発生したラジカルがポリマー鎖の末端に作用しやすいため、水などの相乗作用によりフッ素含有樹脂が容易に加水分解されてしまうおそれもある。これらの問題を防ぐために、本発明の化成処理Al系めっき鋼板の化成処理皮膜では、フッ素含有樹脂のポリマー鎖間を有機系架橋剤および4A族金属化合物で架橋させる。
フッ素含有樹脂は、有機系架橋剤および4A族金属化合物により架橋されている。架橋前のフッ素含有樹脂は反応性官能基を有しており、この反応性官能基と有機系架橋剤または4A族金属化合物とが反応することで、フッ素含有樹脂は架橋される。架橋前のフッ素含有樹脂が有する反応性官能基の種類は、有機系架橋剤および4A族金属化合物と反応しうるものであれば特に限定されない。反応性官能基の例には、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ヒドロキシル基などが含まれる。フッ素含有樹脂の親水性を高める観点からは、カルボキシル基およびスルホン酸基が反応性官能基として好ましい。
架橋前のフッ素含有樹脂は、反応性官能基を0.05〜5質量%有することが好ましい。反応性官能基の量が0.05質量%未満の場合、有機系架橋剤および4A族金属化合物と十分に架橋させることができず、化成処理皮膜の耐水性を十分に向上させることができない。一方、反応性官能基の量が5質量%超の場合、紫外線に曝されるとラジカルを生じさせうる未反応の反応性官能基が残存してしまい、このラジカルがフッ素含有樹脂の結合を不安定化し、分解を引き起こすことで、化成処理皮膜の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
フッ素含有樹脂中の反応性官能基の含有量は、フッ素含有樹脂に含まれる反応性官能基の総モル質量を、フッ素含有樹脂の数平均分子量で除して求めればよい。たとえば、フッ素含有樹脂がカルボキシル基およびスルホン酸基を有する場合、カルボキシル基のモル質量は45であり、スルホン酸基のモル質量は81であるので、フッ素含有樹脂に含まれるカルボキシル基およびスルホン酸基それぞれの数を求め;それぞれにモル質量を乗じることで、フッ素含有樹脂に含まれる反応性官能基の総モル質量が求まる。フッ素含有樹脂の数平均分子量はGPCで測定される。
架橋前のフッ素含有樹脂は、反応性官能基としてカルボキシル基およびスルホン酸基の両方を有することが好ましい。フッ素含有樹脂中のカルボキシル基は、めっき層表面と水素結合などを形成して化成処理皮膜とめっき層表面との密着性の向上に寄与するが、Hが解離しにくいため有機系架橋剤および4A族金属化合物との架橋反応が生じにくい。一方、フッ素含有樹脂中のスルホン酸基は、Hが解離しやすいものの、有機系架橋剤および4A族金属化合物と架橋反応せずに未反応のまま皮膜中に残存すると、水分子の吸着作用が強いため皮膜の耐水性を著しく低下させてしまうおそれがある。したがって、それぞれの特徴を活かすべく、フッ素含有樹脂には、カルボキシル基およびスルホン酸基の両方を含むことが好ましい。この場合、カルボキシル基とスルホン酸基との比率は、カルボキシル基/スルホン酸基のモル比で5〜60の範囲内が好ましい。
フッ素含有樹脂としては、フルオロオレフィンと反応性官能基含有モノマーとの共重合体が挙げられる。反応性官能基含有モノマーとは、カルボキシル基含有モノマーやスルホン酸基含有モノマーなどである。
フルオロオレフィンの例には、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペンタフルオロプロピレン、2,2,3,3−テトラフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、ブロモトリフルオロエチレン、1−クロロ−1,2−ジフルオロエチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエチレンなどが含まれる。これらのフルオロオレフィンは、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。耐候性(耐紫外線性)の観点からは、これらのフルオロオレフィンの中でも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンなどのパーフルオロオレフィンや、フッ化ビニリデンなどが好ましい。クロロトリフルオロエチレンなどの塩素を含むフルオロオレフィンは、塩素イオンによる腐食が生じるおそれがあるため好ましくない。
カルボキシル基含有モノマーの一例としては、以下の式(1)に示される不飽和カルボン酸や、これらのエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類が挙げられる。
Figure 2012092421
(式中、R、RおよびRは同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基である。nは0〜20の範囲内である。)
上記式(1)に示される不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、5−ヘキセン酸、5−ヘプテン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデシレン酸、11−ドデシレン酸、17−オクタデシレン酸、オレイン酸などが含まれる。
カルボキシル基含有モノマーの別の例としては、以下の式(2)に示されるカルボキシル基含有ビニルエーテルモノマーが挙げられる。
Figure 2012092421
(式中、RおよびRは同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基である。nは0または1である。mは0または1である。)
上記式(2)に示されるカルボキシル基含有ビニルエーテルモノマーの例には、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などが含まれる。
スルホン酸基含有モノマーの例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−メタクリロイルオキシブタンスルホン酸、3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホイン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
フルオロオレフィンと反応性官能基含有モノマーとの共重合体には、必要に応じてさらに共重合可能な他のモノマーを共重合されていてもよい。共重合可能な他のモノマーとしては、カルボン酸ビニルエステル類、アルキルビニルエーテル類、非フッ素系オレフィン類などが挙げられる。
カルボン酸ビニルエステル類は、相溶性および光沢を向上させたり、ガラス転移温度を上昇させたりすることができる。カルボン酸ビニルエステル類の例には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどが含まれる。
アルキルビニルエーテル類は、光沢および柔軟性を向上させることができる。アルキルビニルエーテル類の例には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどが含まれる。
非フッ素系オレフィン類は、可とう性を向上させることができる。非フッ素系オレフィン類の例には、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなどが含まれる。
上記モノマーを公知の重合法で共重合させることで、反応性官能基を有するフルオロオレフィン共重合体を得ることができる。このとき、乳化剤をまったく使用しなくても、低分子量のフルオロオレフィン共重合体であれば、水系組成物を製造することができる。
前述の通り、フッ素含有樹脂は、化成処理皮膜の耐水性を向上させる観点から、有機系架橋剤により架橋されている。フッ素含有樹脂を架橋する有機系架橋剤の種類は、フッ素含有樹脂が有する反応性官能基に反応しうる官能基を有しているものであれば特に限定されない。有機系架橋剤の例には、メラミン樹脂、(ブロック化)イソシアネート化合物、フェノール樹脂、オキサゾリン系化合物、アジリジン系化合物などが含まれる。これらの化合物は、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。
たとえば、メラミン樹脂としては、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコール(メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコールなど)を反応させてエーテル化した化合物や、それらの混合物などが使用されうる。メチロールメラミン誘導体の例には、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンなどが含まれる。
また、イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが使用されうる。
また、オキサゾリン系化合物としては、例えば、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン、2−n−プロピル−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリンなどが使用されうる。
また、アジリジン系化合物としては、例えば、1−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジニル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジンなどが使用されうる。
2)4A族金属化合物
化成処理皮膜は、4A族金属化合物を含む。4A族金属化合物は、フッ素含有樹脂中のカルボキシル基やスルホン酸基などの反応性官能基と反応しやすく、フッ素含有樹脂の硬化または架橋反応を促進する。そのため、低温乾燥でも化成処理皮膜の耐水性を向上させることができる。
また、4A族金属化合物は、皮膜密着性および耐水性も向上させる。すなわち、Al系合金めっき鋼板の表面に存在する強固なAl酸化物は、化成処理皮膜の密着性を低下させるが、化成処理皮膜に4A族金属化合物を含ませることにより、このAl酸化物による皮膜密着性の低下を抑制することができる。また、4A族金属化合物は、エッチング反応により溶出したAlイオンと反応する4A族金属イオンの供給源ともなる。反応生成物は、めっき層と化成処理皮膜の界面に濃化して、初期の耐食性を向上させる。4A族金属の例には、TiやZr、Hfなどが含まれる。
化成処理皮膜中の4A族金属化合物の含有量は、フッ素含有樹脂に対して金属換算で0.1〜5質量%の範囲内が好ましい。含有量が金属換算で0.1質量%未満の場合、Al酸化物の濃化に起因する悪影響を十分に抑制することができず、また水系フッ素含有樹脂脂を十分に架橋させることができず、結果として化成処理皮膜の耐水性を十分に向上させることができない。一方、含有量が金属換算で5質量%超の場合、化成処理皮膜が多孔質状となり、加工性、耐候性が低下するおそれがある。化成処理皮膜中の4A族金属化合物の金属換算量は、蛍光X線分析装置を用いることで測定することができる。
上述のように化成処理皮膜中にはめっき層から溶出したAlが存在する。このAlは、耐食性の向上に寄与する。Alの存在により耐食性が向上するのは、以下のメカニズムによるものと推察される。すなわち、1)化成処理液が弱アルカリ性であるため、化成処理液を塗布した際に、めっき層に含まれるAlの酸化物および金属Alが選択的に化成処理液に溶出する。2)化成処理液のpH域では、AlはAl(OH) の状態で化成処理液に溶解する。3)化成処理液を乾燥させて化成処理皮膜を形成する際に、化成処理液中のAlは脱水縮合などにより化成処理皮膜中に取り込まれる。4)その結果として、化成処理皮膜の絶縁性や緻密度などが向上し、耐食性が向上する。
3)リン酸塩
化成処理皮膜は、さらにリン酸塩を含むことが好ましい。リン酸塩は、Al系合金めっき鋼板のめっき層表面と反応して、化成処理皮膜のAl系合金めっき鋼板への密着性を向上させる。
リン酸塩の種類は、リン酸アニオンを有する化合物であって、水溶性のものであれば特に限定されない。リン酸塩の例には、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸マグネシウム、リン酸カリウム、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸(二リン酸)、三リン酸、四リン酸などが含まれる。これらのリン酸塩は、単独で使用されてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。
化成処理皮膜中のリン酸塩の含有量は、フッ素含有樹脂に対してP換算量として0.05〜3質量%の範囲内が好ましい。P換算量が0.05質量%未満の場合、めっき層表面との反応が不足して、化成処理皮膜の密着性を十分に向上させることができない。一方、P換算量が3質量%超の場合、4A族金属化合物との反応が過剰に進行して、4A族金属化合物による架橋効果が損なわれてしまう。
化成処理皮膜中のリン酸塩のP換算量は、蛍光X線分析装置を用いることで測定することができる。
4)シランカップリング剤
化成処理皮膜は、さらにシランカップリング剤を含むことが好ましい。シランカップリング剤を配合することで、化成処理皮膜の密着性をより向上させることができる。シランカップリング剤としては、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、アルコキシ基、ビニル基、スチリル基、イソシアネート基、クロロプロピル基などの官能基を1種類または2種類以上含むシラン化合物が使用される。
化成処理皮膜中のシランカップリング剤の含有量は、フッ素含有樹脂に対して0.5〜5質量%の範囲内が好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.5質量%未満の場合、化成処理皮膜の密着性を十分に向上させることができない。一方、シランカップリング剤の含有量が5質量%超の場合、皮膜密着性は飽和し、それ以上の向上は認められない。化成処理皮膜中のシランカップリング剤の含有量は、蛍光X線分析装置を用いることで測定することができる。
化成処理皮膜の膜厚は、0.5〜10μmの範囲内が好ましい。膜厚が0.5μm未満の場合、耐食性や耐変色性などを十分に付与することができない。一方、膜厚を10μm超としても、膜厚の増加に伴う性能向上を期待することはできない。
2.化成処理Al系めっき鋼板の製造方法
本発明の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
本発明の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法は、1)Al系合金めっき鋼板(化成処理原板)を準備する第1のステップと、2)化成処理液を準備する第2のステップと、3)Al系合金めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成する第3のステップとを含む。なお、下地化成処理皮膜を介してAl系合金めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成する場合には、化成処理皮膜を形成する第3のステップの前に、Al系合金めっき鋼板の表面に下地化成処理液を塗布し、乾燥させて、下地化成処理皮膜を形成するステップをさらに含む。
[化成処理原板の準備]
第1のステップでは、化成処理原板として前述のAl系合金めっき鋼板を準備する。
[化成処理液の準備]
第2のステップでは、前述の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂(好ましくは、フッ素含有オレフィン樹脂)、有機系架橋剤および4A族金属化合物を含む化成処理液を準備する。
化成処理液は、前述の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂(好ましくは、フッ素含有オレフィン樹脂)の水系組成物(エマルションや懸濁液など)に、有機系架橋剤および4A族金属化合物を添加することで調製されうる。化成処理液に添加する有機系架橋剤としては、前述の有機系架橋剤が用いられる。化成処理液に添加する4A族金属化合物としては、4A族金属の酸素酸塩やフッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩、過酸化塩などが用いられる。酸素酸塩の例には、水素酸塩、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などが含まれる。化成処理液には、さらに必要に応じてリン酸塩やシランカップリング剤などを添加してもよい。
乳化剤非存在下で製造されたフッ素含有樹脂の水系組成物に含まれるフッ素含有樹脂の数平均分子量は、通常、1000〜8万の範囲内である。乳化剤を使用せずに製造したフッ素含有樹脂の分子量を8万以上とすることは困難だからである。
化成処理液中のフッ素含有樹脂の含有量は、水100質量部に対して、10〜50質量部の範囲内が好ましい。フッ素含有樹脂の含有量が10質量部未満の場合、乾燥過程において水の蒸発量が多くなり、化成処理皮膜の成膜性および緻密性が低下するおそれがある。一方、フッ素含有樹脂の含有量が50質量部超の場合、化成処理液の保存安定性が低下するおそれがある。
化成処理液中の有機系架橋剤の含有量は、有機系架橋剤の種類に応じて前後するものの、一般的にはフッ素含有樹脂100質量部に対して0.8〜9.6質量部の範囲内が好ましい。有機系架橋剤の含有量が0.8質量部未満の場合、架橋反応が不足して、化成処理皮膜の耐水性を十分に向上させることができない。一方、有機系架橋剤の含有量が9.6質量部超の場合、架橋反応せず未反応のまま皮膜に残存する有機系架橋剤が多くなり、皮膜の耐水性や耐候性が低下するおそれがある。
化成処理液中の4A族金属の酸素酸塩、フッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩または過酸化塩の含有量は、フッ素含有樹脂100質量部に対して、金属換算で0.1〜5質量部の範囲内が好ましい。これらの塩の含有量が0.1質量部未満の場合、架橋反応およびめっき層表面との反応が不足して、化成処理皮膜の耐水性および皮膜密着性を十分に向上させることができない。一方、これらの塩の含有量が5質量部超の場合、架橋反応が進行して、化成処理液の保存安定性が低下するおそれがある。
化成処理液にリン酸塩を添加する場合、化成処理液中のリン酸塩の含有量は、フッ素含有樹脂100質量部に対して、P換算で0.05〜3質量部の範囲内が好ましい。リン酸塩の含有量が0.05質量部未満の場合、化成処理皮膜の密着性を十分に向上させることができない。一方、リン酸塩の含有量が3質量部超の場合、4A族金属化合物との反応が過剰に進行して、4A族金属化合物による架橋効果が損なわれてしまうおそれがある。
化成処理液にシランカップリング剤を添加する場合、化成処理液中のシランカップリング剤の含有量は、フッ素含有樹脂100質量部に対して、0.5〜5質量部の範囲内が好ましい。シランカップリング剤の含有量が0.5質量部未満の場合、化成処理皮膜の密着性を十分に向上させることができない。一方、シランカップリング剤の含有量が5質量部超の場合、皮膜密着性は飽和し、それ以上の向上は認められない。また、処理液の安定性が低下してしまうおそれもある。
化成処理液には、その他の成分として、エッチング剤や無機化合物、潤滑剤、着色顔料、染料などを必要に応じて添加してもよい。エッチング剤としては、フッ化物などが使用される。エッチング剤は、めっき層表面を活性化することにより化成処理皮膜の密着性をより高める。MgやCa、Sr、V、W、Mn、B、Si、Snなどの無機化合物(酸化物、リン酸塩など)は、化成処理皮膜を緻密化して耐水性を向上させる。フッ素系やポリエチレン系、スチレン系などの有機潤滑剤、二硫化モリブデンやタルクなどの無機潤滑剤は、化成処理液から皮膜に持ち込まれ、化成処理皮膜の潤滑性、さらには化成処理Al系めっき鋼板の加工性を向上させる。また、無機顔料や有機顔料、有機染料などを配合することで、化成処理皮膜に所定の色調を付与することができる。
[化成処理皮膜の形成]
第3のステップでは、第1のステップで準備したAl系合金めっき鋼板の表面に、化成処理皮膜を形成する。化成処理皮膜を形成するには、第2のステップで準備した化成処理液を第1のステップで準備したAl系合金めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥および硬化させればよい。
化成処理液の塗布方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよい。そのような塗布方法の例には、ロールコート法やカーテンフロー法、スピンコート法、スプレー法、浸漬引き上げ法などが含まれる。
化成処理液の乾燥条件は、使用する有機系硬化剤の種類に応じて適宜設定すればよい。しかし、300℃超に保持した場合、有機成分が熱分解して化成処理皮膜の性能が低下するおそれがあるため、乾燥温度は300℃以下が好ましい。本発明の製造方法では、化成処理液中に乳化剤が含まれていないため、乾燥温度を50℃程度としても乳化剤が残存せず、耐水性に優れた化成処理皮膜を形成することができる。
以上の手順により、耐候性、耐水性および皮膜密着性のすべてに優れる本発明の化成処理Al系めっき鋼板を製造することができる。
[下地化成処理皮膜の形成]
下地化成処理皮膜を形成するステップでは、化成処理皮膜を形成する前に、第1のステップで準備したAl系合金めっき鋼板の表面に下地化成処理液を塗布して塗布膜を形成する。下地化成処理液は、例えば、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法等などで塗布することができる。下地化成処理液の塗布量は、バルブメタル付着量が1mg/m以上となるように調整することが好ましい。得られる化成処理鋼板に十分な耐食性を付与するためである。また、下地化成処理液の塗布量は、形成される下地化成処理皮膜の厚さが3nm以上1000nm以下となるように調整することが好ましい。3nm以上で十分な耐食性が発現し、1000nmを超えると鋼板を成形加工しようとするときに、応力によってクラックが発生するおそれがある。
Al系合金めっき鋼板の表面に形成された塗布膜を、水洗することなく乾燥することにより、下地化成処理皮膜を形成することができる。常温で乾燥することもできるが、連続操業を考慮すると50℃以上に保持して乾燥時間を短縮することが好ましい。ただし、200℃を超える乾燥温度では、化成処理被膜に含まれている有機成分が熱分解し、有機成分で付与された特性が損なわれることがある。
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
[実施例]
1.化成処理Al系めっき鋼板の作製(1)
板厚0.8mmのSPCCを基材として、溶融Al−9質量%Si合金めっき鋼板(めっき付着量45g/m)を作製した。本実施例では、この溶融Al−9質量%Si合金めっき鋼板を化成処理原板として使用した。
各めっき鋼板の表面に表1に示す組成の化成処理液を塗布し、到達板温110℃で加熱乾燥して、膜厚2.0μmの化成処理皮膜を形成した。なお、表1に示されるNo.10およびNo.12の化成処理液は、塗布前にゲル化してしまったため、化成処理皮膜を形成することができなかった。
表1に示される処理液No.1〜13の化成処理液は、所定量の反応性官能基(カルボキシル基およびスルホン酸基)を有するフッ素含有樹脂の水系エマルション(表2参照)に、有機系架橋剤や4A族金属化合物などを添加して調製した。処理液No.14の化成処理液は、ウレタン樹脂の水系エマルション(不揮発分25質量%;表2参照)に、4A族金属化合物などを添加して調製した。
フッ素含有樹脂を含む水系エマルションは、水溶媒に、所定量のフルオロオレフィン、カルボキシル基含有モノマーおよびスルホン酸基含有モノマーを添加して、乳化剤の非存在下においてそれらを共重合反応させることで得た。有機系架橋剤について、メラミン樹脂は、ベッカミンM−3(DIC株式会社)を使用した。イソシアネート化合物は、DNW−5000(DIC株式会社)を使用した。オキサゾリン系化合物は、エポクロスK−2010E(株式会社日本触媒)を使用した。アジリジン系化合物は、ケミタイトDZ−22E(株式会社日本触媒)を使用した。ウレタン樹脂を含む水系エマルションは、PR135(住化バイエルンウレタン株式会社)を使用した。シランカップリング剤は、A−1891(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)を使用した。
Figure 2012092421
Figure 2012092421
各化成処理Al系めっき鋼板の化成処理皮膜における有機樹脂に対する4A族金属、リン酸塩およびシランカップリング剤の量を蛍光X線分析装置を用いて測定した。リン酸塩およびシランカップリング剤の含有量は、PおよびSiの測定値から算出した。各化成処理液について、形成される化成処理皮膜における有機樹脂に対する4A族金属、リン酸塩およびシランカップリング剤の量を表3に示す。
Figure 2012092421
2.化成処理Al系めっき鋼板の評価(1)
(1)促進耐候性試験
各化成処理Al系めっき鋼板から試験片を切り出し、JIS K5600−7−7:2008に準拠して促進耐候性試験(キセノンランプ法)を実施した。本試験では、キセノンアーク灯の光を120分間照射する間に18分間水を噴射する工程を1サイクル(2時間)とし、この工程を0〜1000サイクル(0、500、1000サイクル)繰り返した。
(2)耐候性の評価
各化成処理Al系めっき鋼板について、促進耐候試験前後の化成処理皮膜の厚さを断面検鏡により測定し、塗膜残存率を求めた。各化成処理Al系めっき鋼板について、塗膜残存率が95%以上の場合は「◎」、80%以上95%未満の場合は「○」、60%以上80%未満の場合は「△」、30%以上60%未満の場合は「▲」、30%未満の場合は「×」と評価した。
(3)皮膜密着性の評価
各化成処理Al系めっき鋼板について、促進耐候試験前後の試験片(サイズ:30mm×150mm)を用いてドロービード試験(金型のビード高さ:4mm、加圧力:1.0kN)した後、金型が摺動した部分の皮膜残存率を計測した。各化成処理Al系めっき鋼板について、皮膜残存率が95%以上の場合は「◎」、80%以上95%未満の場合は「○」、60%以上80%未満の場合は「△」、30%以上60%未満の場合は「▲」、30%未満の場合は「×」と評価した。
(4)耐食性の評価
各化成処理Al系めっき鋼板について、促進耐候試験後の試験片を用いて塩水噴霧試験(JIS Z2371に準拠;120時間)を行い、平坦部の白錆発生面積率を評価した。各化成処理Al系めっき鋼板について、白錆発生面積率が5%以下の場合は「◎」、5%を超え10%以下の場合は「○」、10%を超え30%以下の場合は「△」、30%を超え50%以下の場合は「▲」、50%を超える場合は「×」と評価した。
(5)評価結果
各化成処理Al系めっき鋼板(実施例1〜8、比較例1〜4)についての、化成処理原板の種類、使用した処理液の種類、ならびに耐候性試験、皮膜密着性試験および平坦部耐食性試験の評価結果を表4に示す。
Figure 2012092421
耐候性は、促進耐候性試験後の化成処理皮膜の塗膜残存率により評価した。ウレタン樹脂を用いて化成処理皮膜を形成した比較例4の化成処理Al系めっき鋼板では、500サイクル(屋外暴露5年相当)で化成処理皮膜が消失してしまった。また、過剰量の反応性官能基を有するフッ素含有オレフィン樹脂を含む化成処理皮膜を形成した比較例3の化成処理めっき鋼板でも、サイクル数の増加に伴い化成処理皮膜が減少してしまった。一方、所定量の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂、有機系架橋剤および4A族金属化合物を用いて化成処理皮膜を形成した実施例1〜8の化成処理Al系めっき鋼板では、1000サイクル(屋外暴露10年相当)繰り返した後でも化成処理皮膜の膜厚はほとんど変化しなかった。
皮膜密着性は、ドロービード試験後の皮膜残存率により評価した。ウレタン樹脂を含む化成処理皮膜を形成した比較例4の化成処理Al系めっき鋼板では、500サイクル(屋外暴露5年相当)で化成処理皮膜がほとんど消失しているため、ドロービード試験後も皮膜は存在しない。一方、所定量の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂、有機系架橋剤および4A族金属化合物を含む化成処理皮膜を形成した実施例1〜8の化成処理Al系めっき鋼板では、1000サイクル(屋外暴露10年相当)繰り返した後でも皮膜の密着性は良好であった。
耐食性は、塩水噴霧試験後の白錆発生面積率により評価した。ウレタン樹脂を用いて化成処理皮膜を形成した比較例4の化成処理Al系めっき鋼板では、促進耐候性試験前は耐食性が良好であったものの、皮膜の消失に伴い耐食性が著しく低下してしまった。また、4A族金属化合物を含まない化成処理皮膜を形成した比較例1の化成処理Al系めっき鋼板、および過少量の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂を含む化成処理皮膜を形成した比較例2の化成処理Al系めっき鋼板では、促進耐候性試験前から耐食性が劣っていた。一方、所定量の反応性官能基を有するフッ素含有樹脂、有機系架橋剤および4A族金属化合物を含む化成処理皮膜を形成した実施例1〜8の化成処理Al系めっき鋼板では、1000サイクル(屋外暴露10年相当)繰り返した後でも耐食性が良好であった。
以上の結果から、本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、耐候性および皮膜密着性に優れていることがわかる。
3.化成処理Al系めっき鋼板の作製(2)
(1)下地化成処理皮膜の形成
前述のAl系合金めっき鋼板の表面に、表5に示す組成の下地化成処理液を塗布した後、到達板温70〜170℃で加熱乾燥して下地化成処理皮膜を形成した。蛍光X線分析装置を使用し、形成された下地化成処理皮膜の組成を分析した。結果を表6に示す。
Figure 2012092421
Figure 2012092421
(2)化成処理皮膜の形成
形成された下地化成処理皮膜の表面に前述の処理液No.8の化成処理液を塗布し、到達板温140℃で加熱乾燥して、膜厚2.0μmの化成処理皮膜を形成した。
4.化成処理Al系めっき鋼板の評価(2)
前述の「化成処理Al系めっき鋼板の評価(1)」と同様の手法により、作製した化成処理Al系めっき鋼板について促進耐候性試験を実施した。そして、作製した化成処理Al系めっき鋼板の耐候性、耐黒変性、ならびに平坦部およびクロスカット部の耐食性を評価した。評価結果を表7に示す。クロスカット部の耐食性については、以下に示す手順で評価した。
クロスカット部の耐食性の評価
各化成処理Al系めっき鋼板について、促進耐候試験後、X字型の切り込み部(クロスカット部)を表面に形成して、めっき層を露出させた。試験片を得た。得られた試験片に塩水噴霧試験(JIS Z2371に準拠;120時間)を行い、クロスカット部の白錆発生面積率を評価した。各化成処理Zn系めっき鋼板について、白錆発生面積率が5%以下の場合は「◎」、5%を超え10%以下の場合は「○」、10%を超え30%以下の場合は「△」、30%を超え50%以下の場合は「▲」、50%を超える場合は「×」と評価した。
Figure 2012092421
下地化成処理皮膜の上に、所定量の親水性官能基を有するフッ素含有樹脂および4A族金属化合物を含む化成処理皮膜を形成した実施例9〜16の化成処理Al系めっき鋼板では、1000サイクル(屋外暴露10年相当)繰り返した後でも、化成処理皮膜の膜厚および明度はほとんど低下しなかった。
また、いずれの実施例においても、平坦部の耐食性試験において良好な結果を示した。さらに、いずれの実施例においても、クロスカット部の耐食性試験においてほぼ良好な結果を示した。これは、下地化成処理皮膜の自己修復作用が発揮され、クロスカット部(皮膜欠陥部)が修復されたためであると考えられる。特に、下地化成処理皮膜にリン(P)が含まれている実施例9〜14の化成処理Al系めっき鋼板については、クロスカット部の耐食性がより優れている。
本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、耐候性、耐水性および皮膜密着性に優れているため、外装建材などの様々な用途において有用である。たとえば、本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、1)ビニールハウスまたは農業ハウス用の鋼管、形鋼、支柱、梁、搬送用部材、2)遮音壁、防音壁、吸音壁、防雪壁、ガードレール、高欄、防護柵、支柱、3)鉄道車両用部材、架線用部材、電気設備用部材、安全環境用部材、構造用部材、太陽光架台などの用途に好適に使用されうる。
Al系合金めっき鋼板は、高温高湿下において塗膜と十分に密着するとともに、耐食性に優れる。よって、本発明の化成処理Al系めっき鋼板は、高温高湿環境下で使用される外装用材料として特に好適である。

Claims (14)

  1. Alを85〜99質量%含むAl系合金めっき鋼板と、
    前記Al系合金めっき鋼板の表面に形成された、膜厚0.5〜10μmの化成処理皮膜と、を有する化成処理Al系めっき鋼板であって、
    前記化成処理皮膜は、有機系架橋剤により架橋された、F原子を7〜20質量%含有するフッ素含有樹脂と、前記フッ素含有樹脂に対して金属換算で0.1〜5質量%の4A族金属化合物とを含有する、化成処理Al系めっき鋼板。
  2. 前記有機系架橋剤は、メラミン化合物である、請求項1に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
  3. 前記化成処理皮膜は、さらにリン酸塩を含有し、
    前記フッ素含有樹脂に対する前記リン酸塩の量は、P換算で0.05〜3質量%の範囲内である、
    請求項1に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
  4. 前記化成処理皮膜は、さらにシランカップリング剤を含有し、
    前記フッ素含有樹脂に対する前記シランカップリング剤の量は、0.5〜5質量%の範囲内である、
    請求項1に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
  5. 前記4A族金属は、Ti、Zr、Hfおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
  6. 前記Al系合金めっき鋼板と、前記化成処理皮膜との間に形成された、
    バルブメタルの酸化物または水酸化物、およびバルブメタルのフッ化物を含有する下地化成処理皮膜をさらに有する、請求項1に記載の化成処理Al系めっき鋼板。
  7. Alを85〜99質量%含むAl系合金めっき鋼板を準備するステップと、
    前記Al系合金めっき鋼板の表面に化成処理液を塗布し、乾燥させて、膜厚が0.5〜10μmの化成処理皮膜を形成するステップとを含み、
    前記化成処理液は、反応性官能基0.05〜5質量%とF原子7〜20質量%とを含有し、数平均分子量が1000〜8万の範囲内であるフッ素含有樹脂と、前記反応性官能基と反応しうる官能基を有する有機系架橋剤と、4A族金属の酸素酸塩、フッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩または過酸化塩のいずれかとを含有し、
    前記フッ素含有樹脂に対する前記有機系架橋剤の量は、0.8〜9.6質量%の範囲内であり、
    前記フッ素含有樹脂に対する、前記4A族金属の酸素酸塩、フッ化物、水酸化物、有機酸塩、炭酸塩または過酸化塩の量は、金属換算で0.1〜5質量%の範囲内である、
    化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  8. 前記フッ素含有樹脂は、前記反応性官能基としてカルボキシル基およびスルホン酸基を有し、
    前記フッ素含有樹脂が有するカルボキシル基とスルホン酸基との比率は、カルボキシル基/スルホン酸基のモル比で5〜60の範囲内である、請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  9. 前記有機系架橋剤は、メラミン化合物である、請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  10. 前記化成処理液は、さらにリン酸塩を含有し、
    前記フッ素含有樹脂に対する前記リン酸塩の量は、P換算で0.05〜3質量%の範囲内である、
    請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  11. 前記化成処理液は、さらにシランカップリング剤を含有し、
    前記フッ素含有樹脂に対する前記シランカップリング剤の量は、0.5〜5質量%の範囲内である、
    請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  12. 前記4A族金属は、Ti、Zr、Hfおよびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  13. 乳化剤非存在下の水溶媒中でフルオロオレフィンと反応性官能基含有モノマーとを共重合させて、前記フッ素含有樹脂を準備するステップをさらに含む、請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
  14. 前記化成処理皮膜を形成するステップの前に、
    前記Al系合金めっき鋼板の表面に下地化成処理液を塗布し、乾燥させて、下地化成処理皮膜を形成するステップをさらに含み、
    前記下地化成処理液は、バルブメタル塩とフッ化物イオンとを含有する、請求項7に記載の化成処理Al系めっき鋼板の製造方法。
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