JP2012092379A - アレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Al:0.002〜0.05%、N:0.01%以下、Nb:0.003〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、次の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.32〜0.40であり、板厚の(1/2)t部のフェライト組織分率が80%以上であり、かつ板厚の(1/2)t部の有効結晶粒径が25μm以下であり、45゜の角度の方向の(321)、(211)、(110)面のX線強度比の和の板厚の(1/2)t部と(1/4)t部での平均値が3.3以下であることを特徴とするアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。さらに、Cu、Ni、Crなどを含んでもよい。
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5・・・(1)
【選択図】なし
Description
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5・・・(1)
ここで、式中の、C、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
Tr<1050 ・・・・・・(2)
400≦t×exp(Tr3/270000000)≦550 ・・・・・(3)
ここで、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そして、Trは加熱温度(℃)を、それぞれ表す。
A−3.5G≦0 ・・・・・・(4)
A−1.5G≧0 ・・・・・・(5)
C−670−G≦0 ・・・・・・(6)
B−C−20−1400/G≦0 ・・・・・・(7)
ここで、Aは圧延途中の任意の厚み(mm)を、BはAにおける圧延温度(℃)を、Cは仕上圧延温度(℃)を、そして、Gは最終の厚肉鋼の板厚(mm)を、それぞれ表す。
Fe3++e−→Fe2+ (Fe3+の還元反応)
2H2O+O2+2e−→4OH−、
2H++2e−→H2
アノード反応:Fe→Fe2++2e− (Feの溶解反応)
2Fe3++Fe→3Fe2+・・・・・・(8)
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5・・・(1)
ここで、式中の、C、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
C:0.01〜0.12%
Cは、強度確保のために必要な元素である。そして、実用的な強度を有する鋼とするためには、0.01%以上を含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が0.12%を超えると、ベイナイト変態領域の靭性劣化が顕著化するとともに、溶接熱影響部の靭性も損ねる。したがって、Cの含有量は0.01〜0.12%とする。強度とアレスト特性のバランスの点から、Cの含有量の好ましい範囲は0.03〜0.10%である
Siは、精錬段階での脱酸に必要な元素であるとともに強度上昇に寄与する元素である。しかしながら、Siの含有量が0.5%を超えると、溶接熱影響部における島状マルテンサイトの生成を助長して靭性に悪影響を及ぼす。したがって、Siの含有量を0.5%以下とする必要がある。Siの含有量は、好ましくは0.3%以下である。なお、Siの効果を安定的に発現させるためには、Siを0.03%以上含有させるのが好ましい。
Mnは、強度確保のための必要な元素である。そして、実用的な強度を有する鋼とするためには、0.4%以上を含有させる必要がある。しかしながら、2.0%を超えると溶接熱影響部の靭性が大幅に劣化する。したがって、Mnの含有量の上限は2.0%とする。Mnの含有量の好ましい上限は1.6%である。なお、Mnによる強度確保を安定的に得るためには、0.4%以上含有させるのが好ましい。より好ましい含有量は0.6%以上である。
Pは、不純物として存在し、溶接熱影響部における粒界割れの原因となる。Pの含有量が0.05%を超えると、溶接熱影響部における粒界割れの発生が著しくなることから、P含有量の上限を0.05%とする必要がある。なお、その混入量はできるだけ低くするのが好ましく、アレスト特性を安定的に得るためには、Pの含有量を0.03%以下とするのが好ましい。
Sは、不純物として存在し、脆性破壊の基点となるMnSを形成して、アレスト特性を損なう元素である。Sの含有量が0.008%を超えると、アレスト特性が顕著に劣化するため、不純物元素とてのS含有量の上限を0.008%とする必要がある。なお、その混入量はできるだけ低くするのが好ましく、アレスト特性を安定的に得るためには、Sの含有量を0.003%以下とするのが好ましい。
Alは鋼の脱酸に必要な元素である。本発明に係る鋼材の場合、脱酸にはAlは0.002%以上の含有量が必要である。しかし、その含有量が0.05%を超えると析出物の増加を通じてアレスト特性の劣化が顕著化する。したがってAlの含有量は0.002〜0.05%とする。好ましくは0.002〜0.04%である。
Nは、不純物として存在し、析出物を形成することで靭性劣化をもたらす元素である。Nの含有量が0.01%を超えるとアレスト特性の劣化が顕著化するため、Nの含有量は0.01%以下とする必要がある。なお、低温靭性確保のためには低い方が良く、好ましくは0.006%以下である。
Nbは、組織の微細化、焼入れ性の向上及び析出硬化による強度上昇に有効な元素であり、特に未再結晶域の拡大効果が大きいことから、TMCP法を適用する鋼材には必要な元素である。この効果を発揮させるためには、Nbを0.003%以上含有させる必要がある。しかし、その含有量が0.1%を超えると、析出物の増加により却って靭性の劣化をもたらす。したがって、Nbの含有量を0.003〜0.1%とする。好ましくは0.003〜0.04%である。
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減する作用を有することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高飛来塩分環境における耐候性を向上させる。また、Snには鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用がある。これらの作用は、Snを0.03%以上含有させることにより得られ、0.50%を超えると飽和する。したがって、Snの含有量は0.03〜0.50%とする。なお、Snの含有量の好ましい下限は0.05%であり、好ましい上限は0.30%である。
Ni、必要に応じて含有させることができる。Niを含有させると、鋼板のアレスト特性を向上させることができる。しかしながら、Niの含有はコストアップ要因となるため、その含有量を1.0%以下とする。好ましくは0.6%以下である。なお、Niによるアレスト特性向上効果を安定的に発現させるためには、Niを0.03%以上含有させることが好ましい。
Cuは、必要に応じて含有させることができる。Cuを含有させると、靭性を劣化させずに強度を向上させることができる。しかしながら、その含有量が0.2%以上であるかまたはCu/Sn比が1.0を超えると、Snを含有する鋼では、Cuの含有による耐食性の低下が著しい、さらに、鋼板を製造する際に圧延割れの原因となる。このため、Cuを含有させる場合のCu含有量は0.2%未満とし、かつSn含有量に対するCu含有量の比、すなわち、Cu/Sn比を1.0以下とする。なお、Cuを含有させる場合のCu含有量の上限は、より好ましくは0.15%である。
Crは、必要に応じて含有させることができる。Crを含有させると、強度を上昇させることができる。しかしながら、その含有量が1%を超えると、却って靭性の劣化をきたし、更に、溶接熱影響部に硬化した組織を形成し靭性を劣化させるので、その含有量の上限は1%とする。Crの好ましい上限は0.6%である。なお、Crによる強度向上効果を安定的に発現させるためには、Crを0.05%以上含有させることが好ましい。
Moは、必要に応じて含有させることができる。Moを含有させると、焼入れ性を高め、強度を向上させることができる。しかしながら、Moの含有はコストアップ要因となり、また、その含有量が0.5%を超えると、却って溶接熱影響部の靭性を劣化させるので、その含有量の上限は0.5%とする。Moの好ましい上限は0.3%である。なお、Moによる焼入性と強度の向上効果を安定的に発現させるためには、Moを0.02%以上含有させることが好ましい。
Vは、必要に応じて含有させることができる。Vを含有させると、焼入れ性の向上及び析出硬化による強度の向上に有効となる。しかしながら、Vの含有量が0.1%を超えると、却って靭性の著しい劣化をもたらすので、その含有量の上限は0.1%とする。Vの好ましい上限は0.06%である。なお、Vによる焼入性と強度の向上効果を安定的に発現させるためには、Vを0.003%以上含有させることが好ましい。
Bは、必要に応じて含有させることができる。Bを含有させると、オーステナイト粒界からのフェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させ、強度を高めることができる。しかしながら、Bの含有量が0.005%を超えると靭性が劣化するので、その含有量の上限は0.005%とする。Bの好ましい上限は0.0015%である。なお、Bによる焼入性および強度の向上効果を安定的に発現させるためには、Bを0.0003%以上含有させることが好ましい。さらに、本発明においては板厚中心部のフェライト量を確保することが必要であるので、Bを含有させるときは、炭素当量で示される焼入れ性とのバランスを十分考慮することが重要となる。
Tiは、必要に応じて含有させることができる。Tiを含有させると、酸化物粒子の構成元素として有効となり、また高温延性を高めて連続鋳造で製造される鋼塊のひび割れを防止するのに有効となる。しかしながら、Tiの含有量が0.1%を超えると、TiCを生成し、靭性を劣化させるので、その含有量の上限は0.1%とする。Tiの好ましい上限は0.04%である。なお、Tiによるこれらの効果を安定的に発現させるためには、Tiを0.003%以上含有させることが好ましい。
Caは、必要に応じて含有させることができる。Caを含有させると、介在物の形態制御効果を有し、アレスト特性の向上に寄与する。しかしながら、その含有量が0.004%を超えると、鋼の清浄度自体を大きく低下させるので、その含有量の上限は0.004%以下とする。Caの好ましい上限は0.002%である。なお、Caによるこれらの効果を安定的に発現させるためには、Caを0.0003%以上含有させるのが好ましい。
Mgは、必要に応じて含有させることができる。Mgを含有させると、微細酸化物の分散密度を増すことができる。しかしながら、その含有量が0.002%を超えると、微細酸化物が得られないし、鋼の清浄度を大きく低下させるので、その含有量の上限は0.002%以下とする。Mgの好ましい上限は0.0015%である。なお、Mgによる微細酸化物の分散密度の向上効果を安定的に発現させるためには、Mgを0.0002%以上含有させることが好ましい。ここで、Mgを溶鋼中に含有させる工程は、Alを溶鋼中に含有させる前に行うのが好ましい。
REM(希土類元素)は、必要に応じて含有させることができる。REMを含有させると、Mgと同様に、微細酸化物の分散密度を増すことができる。さらに、過剰なSを硫化物として固定する効果も得られる。しかしながら、その含有量が0.002%を超えると、微細酸化物が得られないし、鋼の清浄度を大きく低下させるので、その含有量の上限は0.002%以下とする。REMの好ましい上限は0.0015%である。なお、REMによるこれらの効果を安定的に発現させるためには、REMを0.0002%以上含有させることが好ましい。
本発明で規定する高強度厚肉鋼板は強度部材として使用されることから、規格材として十分な強度を保有している必要がある。したがって、高強度厚肉鋼板の化学組成は各々の規定範囲を満足するだけではなく、適切な焼入れ性を有していることが必要である。高強度厚肉鋼板の焼入れ性を表すパラメータとしては炭素当量を用いることができる。特に、引張強さが490MPa以上の強度クラスの高強度厚肉鋼板の場合には、IIW(International Institute of Welding: 国際溶接学会)で規定されている炭素当量式を用いることができる。すなわち、次の(1)式で示される炭素当量Ceqを用いて整理することができる。
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5・・・(1)
ここで、式中の、C、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。
板厚中心部は加工の浸透度が低いこともあり、上部ベイナイト組織が主体となる。そして、一般に上部ベイナイト組織は細粒フェライト組織に比べて、ラス間の硬質組織(MA)の影響により靭性が低下する。
高強度厚肉鋼板の靱性は、圧延後に得られる肉厚鋼板の板厚中心部((1/2)t部)のフェライト組織分率を80%以上と規定することに加えて、板厚中心部の有効結晶粒径を25μm以下とすることによって向上することが分かった。
以下に詳述する製造条件は、上述の厚肉鋼板を経済的に要領よく実現するための方法の一つであり、厚肉鋼板自体の技術的範囲はこの製造条件によって規定されるものではない。
Tr<1050 ・・・・・・(2)
400≦t×exp(Tr3/270000000)≦550 ・・・・・(3)
ここで、tは鋼塊の加熱時間(hr)を、そして、Trは加熱温度(℃)を、それぞれ表す。
A−3.5G≦0 ・・・・・・(4)
A−1.5G≧0 ・・・・・・(5)
C−670−G≦0 ・・・・・・(6)
B−C−20−1400/G≦0 ・・・・・・(7)
ここで、Aは圧延途中の任意の厚み(mm)を、BはAにおける圧延温度(℃)を、Cは仕上圧延温度(℃)を、そして、Gは最終の厚肉鋼の板厚(mm)を、それぞれ表す。
E−500≦0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(9)
F−5≧0 ・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
ここで、Eは水冷停止温度(℃)を、そして、Fは板厚中心部((1/2)t部)における水冷中の平均冷却速度F(℃/s)を、それぞれ表す。
ここで、vTrsL:圧延方向のvTrs、vTrs45:45°方向のvTrsをそれぞれ表す。なお、ΔvTrsの目標値は≦10℃とした。
Claims (7)
- 質量%で、C:0.01〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:0.4〜2.0%、P:0.05%以下、S:0.008%以下、Al:0.002〜0.05%、N:0.01%以下、Nb:0.003〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなる化学組成を有する鋼板であって、次の(1)式で示される炭素当量Ceqが0.32〜0.40%であり、板厚の(1/2)t部のフェライト組織分率が80%以上であり、かつ板厚の(1/2)t部の有効結晶粒径が25μm以下であり、45゜の角度の方向の(321)、(211)、(110)面のX線強度比の和の板厚の(1/2)t部と(1/4)t部での平均値が3.3以下であることを特徴とするアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
Ceq=C+Mn/6+Cu/15+Ni/15+Cr/5+Mo/5+V/5・・・(1)
ここで、式中の、C、Mn、Cu、Ni、Cr、MoおよびVは、それぞれの元素の含有量(質量%)を意味する。 - 質量%で、さらに、Ni:1.0%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
- 質量%で、さらに、Cu:0.2%未満を含有し、Cu/Sn比が1.0以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
- 質量%で、さらに、Cr:1.0%以下を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
- 質量%で、さらに、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下およびB:0.005%以下の元素のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
- 質量%で、さらに、Ti:0.1%以下を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
- 質量%で、さらに、Ca:0.004%以下、Mg:0.002%以下およびREM:0.002%以下の元素のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載のアレスト特性および耐食性に優れた高強度厚肉鋼板。
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