JP2012084843A - 透明導電性酸化物膜付き基体、および光電変換素子 - Google Patents

透明導電性酸化物膜付き基体、および光電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合に、VOC×bottom−JSCに優れたダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体の提供。
【解決手段】ダブルテクスチャ構造を有し、小山部4の高さが250〜500nmであり、基体1上における前記小山部4の表面被覆率が10%以上50%以下であることを特徴とする透明導電性酸化物膜付き基体1。
【選択図】図1

Description

本発明は、透明導電性酸化物膜付き基体および該基体を用いた光電変換素子(特に太陽電池)に関する。
光電変換素子である薄膜系太陽電池には発電層の種類によりアモルファスシリコン(a−Si)系、多結晶シリコン系などがあるが、これらの薄膜シリコン系太陽電池では、その入射光側電極として透明導電性酸化物膜が使用される。この透明導電性酸化物膜は、光電変換効率を高めるために低抵抗・高透明であり、かつ光散乱性能が大きいことが要求される。特許文献1には、フッ素をSnO2に対して、0.01〜4mol%含み、導電電子密度が5×1019〜4×1020cm-3であるフッ素ドープSnO2膜が記載されており、膜の光吸収率が少なく高透明で、かつ活性水素種に対して高い耐久性があることが見出されている。
特許文献2には、表面凹凸(テクスチャ)構造を持ち、入射光を光電変換ユニット内で散乱させる効果をもつため、表面凹凸の小さな透明導電膜と比較して、アモルファスシリコン太陽電池の光電変換効率を高くできる透明導電膜が記載されている。
一方、近年盛んに研究の行われている薄膜多結晶シリコンや薄膜微結晶シリコン(μc−Si)のような薄膜結晶質シリコン太陽電池の場合、アモルファスシリコン太陽電池に比べて長波長領域の電池感度が高い。これはアモルファスシリコン系に比べて、より長波長域での高い透明性と光散乱性が透明導電膜には求められることを示す。長波長での光散乱を高めるためには透明導電膜の表面凹凸構造をより大きくすることが有効である。例えば、膜厚を厚くすれば結晶粒径も増大し、表面凹凸を大きくすることができるが、フッ素ドープSnO2膜のような透明導電膜は自由電子による長波長域での光吸収があるため、膜を厚くすると光吸収が増え、透過率が低下してしまう。この結果、表面凹凸を大きくすることにより長波長側の光散乱が増大しても、長波長の光吸収も増加するため全体として太陽電池の光電変換効率は増加しないことから、分光ヘイズ率(以下、単に「ヘイズ率」ともいう。)の高い透明導電膜を用いた光電変換率の高効率化は困難であった。
上記以外にも光電変換層と接する透明導電膜の表面凹凸をコントロールして、光散乱効果を増大する技術は従来良く知られており、特許文献3〜7等に記載がある。
このうち特許文献3には、平均粒径の大きい第1層と平均粒径の小さい第2層とを積層した構成をもつことを特徴とした透明電極基体が記載されている。これは平均粒径の大きい第1層で長波長側の光を、平均粒径の小さい第2層で短波長光を屈折散乱させ、より多くの光を光電変換層で吸収させようとするものである。しかしながら、実施例に記載された電極構造では、第1層および第2層ともに透明導電膜であるため自由電子の吸収が避けられない。すなわち、入射光は基体表面の全領域にわたって少なくとも1.0μmの第1層膜を通過し、さらに少なくとも0.2μmの第2層膜を通過するため、全体として少なくとも1.2μmの膜による吸収が生ずる。したがって、光電変換層に到達するまでの光の減衰は避けられない。このため、特許文献3に記載されているような基体の構成では、有意な光電変換効率向上は認められないことがわかった。
また、特許文献4にもガラス基体上に、表面凹凸の高低差の大きい第1の透明導電膜を形成し、その上に表面凹凸の高低差の小さい第2の透明導電膜を形成したシリコン薄膜系光電変換装置用の透明電極基体が記載されている。第2の透明導電膜の高低差を小さくし、表面をなだらかにすることでスパイク状の突起をなくすことができ、光電変換ユニットにおける接合間の短絡を低減でき、光電変換装置の性能のバラツキを低減できるとしている。しかしながら、この透明電極基体も、上記した問題点と同様、吸収のある2層の透明導電膜(連続膜)を通過するため、導電膜によって吸収される分だけ光電変換層へ入射する光量が減少し、光電変換効率が向上しないという欠点を持っていることがわかった。
さらに、特許文献5、6には、通常の電子ビーム蒸層法、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法、スプレー法によって形成されたインジウム・錫酸化物、SnO2に代表される透明電極膜は、表面凹凸の高低差が約20〜100nm、凸部と凸部の間隔が約50〜200nmであり、光電変換層との界面での光散乱効果が不十分であると記載されている。これに対して、透明電極膜の表面を化学的にエッチング処理を行い、高低差約100〜500nm、凸部と凸部の間隔約200〜1000nmの凹凸面とすることで、界面での光散乱効果を増加させ、光電変換率を上昇することができると記載されている。しかしながら、この方式は透明電極膜を形成した後、化学的にエッチング処理を行い、エッチング液を除去するために基体を十分に洗浄、乾燥させてから、光電変換層を形成する必要があるため、工程が複雑になり、量産性に低いといった問題点がある。
また、特許文献7には、表面凹凸の高低差が10〜100nmであり、表面凹凸のピッチが表面凹凸の高低差より大きく、かつその25倍以下にした透明電極をもつ光電変換装置は、開放端電圧の低下や生産歩留まりの低下を招くことなく、光閉じ込め効果による光電変換特性が改著されることが記載されている。しかしながら、この工程における表面凹凸を実現する手段は、前述の例と同様、化学的なエッチングであることから、工程が複雑になり量産性に課題がある。
上記した従来技術が有していた上記課題を解決するため、本願出願人は、特許文献8において、(1)複数の山部と複数の平坦部とで構成され、該山部および該平坦部の表面がミクロの多数の凸部を連続して有している透明導電性酸化物膜が基体上に設けられた透明導電性酸化物膜付き基体、(2)第1の酸化物からなる不連続な小山部と、その上に形成される第2の酸化物からなる連続層であって、該連続層の表面にミクロの多数の凸部を連続して有する連続層とからなる透明導電性酸化物膜が基体上に設けられた透明導電性酸化物膜付き基体、および、上記(1),(2)の透明導電性酸化物膜付き基体の製造方法を提案している。上記(1),(2)の透明導電性酸化物膜付き基体は、基体上に、複数の山部によるマクロな凹凸(テクスチャ)と、この山部間をうめる複数の平坦部とを有しており、該山部および該平坦部の外表面がミクロの多数の凹凸を有するダブルテクスチャ構造であることにより、低抵抗、高透明で、量産性に優れており、太陽光の全波長域(300nm〜3μm)で良好な光散乱性能を有している。
特公平7−105166号公報 特公平6−12840号公報 特開平3−125481号公報 特開2000−252500号公報 特開昭61−288314号公報 特開昭61−288473号公報 特開2000−232234号公報 国際公開WO2003/036657号
しかしながら、特許文献8に記載の透明導電性酸化物膜付き基体は、ダブルテクスチャ構造を有しているため、表面が平坦な透明導電性酸化物膜付き基体に比べて、薄膜シリコン系光電変換素子用基体とした場合に、開放電圧(VOC)が低くなる傾向がある。開放電圧(VOC)が低くなると、光電変換効率が低下するので問題である。
光電変換素子の光電変換層としては、a−Siのp−i−n層を上部セル(top cell)とし、μc−Siのp−i−n層を下部セル(bottom cell)として積層させたタンデムセル((a−Si/μc−Si)タンデムセル))に代表される多接合セルが好ましい。その理由は、シングルセルに比べて、タンデムセルの場合は、top cellにより短波長側の光を光電変換する一方で、bottom cellにより長波長側の光を光電変換することができるため、短波長側のみならず長波長側の光の光電変換も可能となるためである。多接合セルの場合も、禁制帯幅の異なるi層を有するセルを多層に接合することで、短波長側から長波長側の光をより有効に利用することが期待できるので好ましい。
透明導電性酸化物膜付き基体を、多接合型の光電変換素子用基体として用いる場合には、特に、長波長光の散乱性能が優れていることが求められる。光電変換層が(a−Si/μc−Si)タンデムセルである薄膜シリコン系光電変換素子の場合は、透明導電性酸化物膜付き基体を用いた結果として、bottom cellの短絡電流(bottom−JSC)が向上することが期待される。
以下、本明細書において、光電変換層が多接合型の光電変換素子であるものを(a−Si/μc−Si)タンデムセルである薄膜シリコン系光電変換素子で代表して評価できると考えており、(a−Si/μc−Si)タンデムセルである薄膜シリコン系光電変換素子用の基体として用いる透明導電性酸化物膜付き基体のことを、「(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体」という。
(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体の性能評価の指標としては、a−Siシングルセルと(a−Si/μc−Si)タンデムセルの2種類のセルを作製して、a−Siシングルセルを用いて測定したVOCと、(a−Si/μc−Si)タンデムセルを用いて測定したbottom−JSCと、の積(VOC×bottom−JSC)を用いるのが以下の理由から適当と考える。
影響する要因を単純化してVOCを測定するためには、単純な構成のa−Siシングルセルを用いるのが好ましい。これに対し、bottom−JSCを測定する際には(a−Si/μc−Si)タンデムセルを用いる必要がある。
最終的な光電変換効率には、FF(曲線因子)も影響するが、FFは、(a−Si/μc−Si)タンデムセルを構成するbottom cellと、top cellの電流がバランスした最適構成になっているか否かで変動する値のため、(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体の性能評価の際には、FFを含めない形で評価することが好ましい。
このような理由から、上記で定義したVOC×bottom−JSCが最も優れた評価方法と考えられる。
本願出願人は、特許文献8に記載されているようなダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体を多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いるために、a−Siシングルセル及び(a−Si/μc−Si)タンデムセルを作製して、該透明導電性酸化物膜付き基体のVOC×bottom−JSCの評価を試みた。
この結果、特許文献8に記載されているようなダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体の場合、小山部の高さを低くすると、VOCの低下を抑制することができることを見出した。
しかしながら、その一方で、小山部の高さを低くすると、bottom−JSCが低下するので、VOC×bottom−JSCを向上させることができない。
上記した従来技術の問題点を解決するため、本発明は、多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合に、VOC×bottom−JSCに優れたダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、第1の酸化物からなる不連続な小山部と、その上に形成される第2の酸化物からなる連続層であって、該連続層の表面にミクロの多数の凸部を連続して有する連続層と、前記第1の酸化物からなる不連続な小山部と、前記第2の酸化物からなる連続層との間に形成された、第1および第2の酸化物とは組成が異なる第3の酸化物からなる中間膜と、を有する導電性酸化物層が基体上に設けられた透明導電性酸化物膜付き基体であって、
前記第1の酸化物と前記第2の酸化物が、SnO2を主成分とする酸化物からなり
前記第3の酸化物が、SiO2を主成分とする酸化物からなり、
前記小山部の高さが250〜500nmであり、
前記基体上における前記小山部の表面被覆率が10%以上50%以下であることを特徴とする透明導電性酸化物膜付き基体を提供する。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、ヘイズ率が400〜800nmの波長全域にわたって10〜95%であることが好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、波長800nmにおけるヘイズ率が10〜50%であることが好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、前記第3の酸化物が、シリコンと錫との混合酸化物からなり、該混合酸化物における錫とシリコンのモル比が0.2:0.8〜0.5:0.5であることが好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、前記小山部の底面径が50〜2000nmであることが好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、シート抵抗が8〜20Ω/□、浸液法による550nmにおける透過率が80〜90%であることが好ましい。
また、本発明は、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体上に、光電変換層を介して、裏面電極を有する光電変換素子を提供する。
本発明の光電変換素子において、前記光電変換層が、p層、i層、n層がこの順に形成された層(p−i−n層)を含むことが好ましい。
本発明の光電変換素子において、前記光電変換層が、アモルファスシリコン(a−Si)のi層を有するp−i−n層からなる上部セルと、微結晶シリコン(μc−Si)のi層を有するp−i−n層からなる下部セルと、を含んで積層した多接合セルであることが好ましい。
本発明により得られるダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体は、低抵抗、高透明で、量産性に優れており、太陽光の全波長域(300nm〜3μm)で良好な光散乱性能を有している。この基体を(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合に、VOC×bottom−JSC(基準基体比)が1以上となるため、多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合に、光電変換効率に優れた光電変換素子(特に太陽電池)を得ることができる。
図1は、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体の形状および構成を示す一部切欠き断面図である。 図2は、図1に示す山部の拡大図である。 図3は、太陽電池の構成を示す一部切欠き断面図である。 図4は、図4に示す導線以外の部分の拡大図である。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体の形状および構成を図1、図2を用いて説明するが、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体とその製造方法、および光電変換素子(以下、太陽電池の具体例について述べる)は、これに限定されない。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体は、図1に示されるように、基体1上に、不連続な複数の山部2によるマクロな凹凸(テクスチャ)と、この山部間をうめる複数の平坦部3とを有しており、該山部2、および該平坦部3の外表面は、ミクロの多数の凹凸(テクスチャ)を有する構造となっている。以下、上記したような2つの凹凸を有する構造を、ダブルテクスチャ構造という。
このようなダブルテクスチャ構造は、基体1上に形成された第1の酸化物からなる不連続な小山部4と、その上に形成される第2の酸化物からなる連続層5と、該小山部4と該連続層5との間に形成された、第1および第2の酸化物とは組成が異なる第3の酸化物からなる中間膜6とによって構成されている。
図示したダブルテクスチャ構造において、上記山部の高さ(平坦部上のミクロの凸部の頂部からの高さ)Haは0.15〜1.8μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8μm、さらに好ましくは0.3〜0.6μmである。上記山部間の間隔(隣接する山部間の平坦部の距離)Waは直線状に0〜2.3μmであることが好ましく、より好ましくは1.5μm以下、さらに0.7μm以下であることが好ましく、特に、0.1μm以上(いずれの山部も不連続である)であることが好ましい。本発明においては、複数の山部は不連続である部分と連続している部分があってよく、山部間の間隔Waが0〜2.3μmであるということは、平坦部がないところがあってもよいということである。
また、上記山部の底面径Daは0.4〜2.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.8μmである。
さらに、上記山部間のピッチ(隣接する山部間の頂点と頂点の距離)Paは直線状に0.1〜2.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.6μmである。
上記ミクロの多数の凹凸を示す図1の拡大図を図2に示す。図2に示すように、凸部10の高さHbは0.1〜0.2μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2μmである。また、上記凸部間のピッチ(隣接する凸部間の頂点と頂点の距離)Pbは直線状に0.1〜0.3μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2μmである。
さらに、上記凸部10の底面径Dbは0.1〜0.3μmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.3μmであり、凸部10の高さHb/底面径Dbの比は0.7〜1.2であることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.0である。
該山部2、および該平坦部3の外表面を、このような山部による凹凸(マクロな凹凸)よりも小さな凹凸(ミクロな凹凸)とすることにより短波長の光を強く散乱することができ、全体として広い領域の光を有効に散乱することが可能になる。すなわち、大きな凹凸である山部により長波長の光を、小さな凹凸表面より短波長の光を散乱することができる。
また、上記ダブルテクスチャ構造により、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体は、基体全体において、400〜800nmの波長全域にわたって、ヘイズ率が10〜95%である。該ヘイズ率は、400〜600nmの波長領域において25%以上であることが好ましく、特に、600〜800nmの波長領域において10〜80%である事が好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体は、波長800nmにおけるヘイズ率が10〜50%であることが好ましい。波長800nmにおけるヘイズ率が10〜50%であると、この基体を多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合にVOC×bottom−JSCが向上するので好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体に用いられる基体1は、必ずしも平面で板状である必要はなく、曲面でも異型状でもよい。該基体としては、ガラス基体、セラミックス基体、プラスチック基体、金属基体などが挙げられる。該基体は透光性に優れた透明の基体であることが好ましく、ガラス基体であることが強度および耐熱性の点から好ましい。ガラス基体としては、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス基体、無アルカリガラス基体、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板を用いることができる。
太陽電池用基体に用いる場合、ガラス基体の厚さは0.2〜6.0mmであることが好ましい。この範囲であると、前記ガラス基体の強度が強く、透過率が高い。また基体は、350〜800nmの波長領域において高い透過率、例えば80%以上の透過率を有することが好ましい。また、十分絶縁性で、かつ化学的、物理的耐久性が高いことが望ましい。
なお、ソーダライムシリケートガラスなどのナトリウムを含有するガラスからなるガラス基体、または低アルカリ含有ガラスからなるガラス基体の場合には、ガラスからその上面に形成される透明電導膜へのアルカリ成分の拡散を最小限にするために、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜などのアルカリバリア層をガラス基体面に施してもよい。
また、ガラス基体の表面に、ガラス基体の表面と、その上に設けられる層との屈折率の差異を軽減するための層をさらに有していてもよい。
ソーダライムシリケートガラス基体上に形成するアルカリバリア層は、SiO2や、SiO2とSnO2の混合酸化物膜や多層膜などであり、その膜厚は20〜100nmであることが好ましい。膜厚がこの範囲であると、ガラス基体からの透過光の反射および吸収を制御することができる。多層膜の例としては、ソーダライムシリケートガラス基体上にTiO2膜とSiO2膜を順次積層した膜が挙げられ、膜厚はそれぞれ5〜20nm、15〜40nmであることが好ましい。また、ソーダライムシリケートガラス基体上にSnO2膜とSiO2膜とを順次積層した膜も好ましい。特に、該アルカリバリア層の膜厚は、20〜60nmであることが好ましい。
上述したように、図示したダブルテクスチャ構造では、基体1上に第1の酸化物からなる不連続な小山部4が形成されている。
上記第1の酸化物としては、可視光域で高透明な酸化物であることが求められること、小山形状が容易に形成できることから、SnO2を主成分とする酸化物を用いる。
このような高透明な小山部4を所望の高さとなるように基体1上に形成し、さらに、中間膜6、および、連続層5を形成することで、所望のダブルテクスチャ構造を得ることができる。
なお、可視光域で高透明であるためには、小山部4の屈折率は、波長400〜800nmにおいて、1.8〜2.2であることが好ましく、さらに、1.9〜2.1であるのが好ましい。なお、SnO2を主成分とする酸化物とは、成分の50%以上がSnO2であることを示す。
また、上記第1の酸化物からなる小山部4は、不連続な突起物であって連続膜ではないので、基体1の該突起物(小山部4)に覆われていない部分は、当然ながら小山部による入射光の吸収損はゼロであるため、この透明導電性酸化物膜付き基体を薄膜シリコン系光電変換素子用基体に用いた場合に、光電変換層への入射光量を増やすことができる。
これらの小山部4は、透明導電性酸化物膜付き基体の長波長ヘイズ率を高める(光の散乱度を上げる)部分であり、自由電子による吸収を抑えて、高透明にするために、電気導電性はない方が好ましい。したがって、上記第1の酸化物としてSnO2を主成分とする酸化物を用いる場合、フッ素などのキャリアを発生するドーパントは、SnO2に対して0.01mol%以下の含有量であることが好ましいがこれに限定されるものではない。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、小山部4の高さHcが250〜500nmである。上述したように、ダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体は、表面が平坦な透明導電性酸化物膜付き基体に比べて、薄膜シリコン系光電変換素子用基体とした場合に、開放電圧(VOC)が低くなる傾向がある。ここで、小山部4の高さHcの高さを低くすると、VOCの低下を抑制することができるが、小山部4の高さHcの高さを低くすると、bottom−JSCが低下するので、VOC×bottom−JSCを向上させることができず、VOC×bottom−JSC(基準基体比)を1以上とすることができなかった。
ここで言う「基準基体」の詳細については後述する実施例に示す。
本願発明者らは鋭意検討した結果、小山部4の高さHcを250〜500nmとし、かつ、基体1上における小山部4の表面被覆率を後述する範囲とすることで、VOC×bottom−JSCが向上し、VOC×bottom−JSC(基準基体比)が1以上となることを見出した。
小山部4の高さHcは、250〜500nmであることが好ましく、350〜500nmであることがより好ましく、350〜450nmであることがさらに好ましい。
小山部4の底面径Dc が0.05〜2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5μmであり、上記小山部4間のピッチ(隣接する小山部4間の頂点と頂点の距離)PcはPaと同値であり、直線状に0.1〜2.5μmであることが好ましく、より好ましくは0. 2〜1.6μmである。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、基体1上における小山部4の表面被覆率が10%以上50%以下である。小山部4の表面被覆率を10%以上50%以下とすることで、電池層(光電変換層)のなかに発生する欠陥を抑制し、VOCを向上させることができるため好ましい。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体において、小山部4の高さHcを250〜500nmとし、かつ、基体1上における小山部4の表面被覆率を10%以上50%以下とすることで、VOC×bottom−JSCが向上し、VOC×bottom−JSC(基準基体比)が1以上となる。
また、基体1上における小山部4の表面被覆率が上記範囲であると、ヘイズ率が400〜800nmの波長全域にわたって10〜95%となり、かつ、ヘイズ率が下記を満たすことから好ましい。
25%以上(400〜600nm平均)
15〜50%(600〜800nm平均)
ヘイズ率の最大値と最小値の絶対値の差(最大値−最小値):50%以下
基体1上における小山部4の表面被覆率は、後述する手順で基体1上に小山部4を形成した時点で基体1の被覆面のSEM写真を撮影し、基体1上を小山部4が占める面積を、基体1の当該被覆面全体の面積で割った値を表面被覆率として評価する。
基体1上における小山部4の表面被覆率は10%以上50%以下であることが好ましく、15%以上50%以下であることがより好ましい。
図示したダブルテクスチャ構造において、第2の酸化物からなる連続層5が、上記小山部4および小山部4が形成されていない部分の基体1の上に連続的に形成されている。但し、小山部4と、連続層5と、の間には第3の酸化物からなる中間膜6が形成されている。
上記第2の酸化物としては、可視光域で透明であり、さらに導電性を有している透明導電性酸化物であることが求められること、また、ミクロの多数の凹凸を有することが求められることから、導電性発現のためにフッ素など、キャリアを発生する物質をドーパントとして含有する、SnO2を主成分として用いる。
ここで、ドーパントがフッ素の場合、SnO2に対するフッ素の含有量を0. 01〜4mol%とすることにより、導電電子密度が向上し、太陽電池に用いる基体として好適な範囲となる。ドーパントはフッ素以外には、アンチモンなどでもよい。
なお、太陽電池に用いる基体の場合、導電電子密度が5×1019〜4×1020cm-3の範囲であれば好ましく、1×1020〜2×1020cm-3の範囲であればより好ましい。この範囲であれば、膜の光吸収量が少なく、高透明で、かつ活性水素種に対して高い耐久性があるので、後述する薄膜シリコン系太陽電池を形成する際に一般に用いられる水素プラズマ照射によっても、透明性は損なわれない。
なお、可視光域で高透明であるためには、連続層5の屈折率は、波長400〜800nmにおいて、1.8〜2.2であることが好ましく、さらに、1.9〜2.1であるのが好ましい。
また、図2に示すように、上記連続層5の表面はミクロの多数の凸部10を有している。凸部10の高さHb、凸部10間のピッチPb、凸部10の底面径Db、および、凸部10の高さHb/底面径Dbの比については上述した通りである。
上記小山部4上の連続層5の厚さHd(ミクロの凸部を含む)は0.5〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.7μmである。同様に、上記基体1上の連続層5の厚さHe(ミクロの凸部を含む)は0.5〜1.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜0.7μmである。
なお、以下に示す方法により連続層5の表面に存在するミクロな凹凸の形状を測定することができる。
表面形状の解析
連続層5表面の凸部を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られる顕微鏡写真より、凸部の底面径を測定する。また、連続層5表面の凹凸形状をSEM、原子間力顕微鏡(AFM)により観察し、得られる顕微鏡写真より、膜表面の凹凸形状、および凸部の高さを解析する。
図示したダブルテクスチャ構造において、第1の酸化物からなる小山部4と、第2の酸化物からなる連続層5と、の間に、第3の酸化物からなる中間膜6を形成するのは、基体1上に小山部4を形成した後、該小山部4上、および小山部4が形成されていない部分の基体1上に中間膜6を形成した後に、連続層5を形成することにより、連続層5表面にミクロの多数の凸部10が形成されやすくなり、図示したダブルテクスチャ構造を容易に形成できるからである。
図示したダブルテクスチャ構造において、各層の界面での反射を軽減し、後述する太陽電池の光電変換層への入射光量を最大にする必要がある。すなわち、基体1、第1の酸化物からなる小山部4、第3の酸化物からなる中間膜6、第2の酸化物からなる連続層5の各界面での光反射をできるだけ低減することが望ましい。そのためには、第1の酸化物からなる小山部4、第3の酸化物からなる中間膜6、第2の酸化物からなる連続層5の屈折率ができるだけ近いこと、および、第3の酸化物からなる中間膜5の膜厚ができるだけ小さいことが望ましい。なお、上述したように、小山部4、および、連続層5の屈折率は、波長400〜800nmにおいて、1.8〜2.2であることが好ましく、さらに、1.9〜2.1であるのが好ましい。
これらの理由に加えて、(1)第1の酸化物からなる小山部4、および、基体1に対する被覆性が良好であること、(2)作製が容易であること、(3)アモルファス膜になりやすいこと等の理由から、第3の酸化物として、SiO2を主成分とする酸化物を用いる。なお、SiO2を主成分とする酸化物とは、成分の50%以上がSiO2であることを示す。ここで、SiO2を主成分とする酸化物として、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物を用いた場合、第1、2の酸化物と同じ錫成分を含むことから、連続層5の結晶成長による成膜時に、導電性を劣化させる欠陥を生じにくくする傾向がある点で、好ましい。
第3の酸化物として、シリコンと錫との混合酸化物を用いる場合、形成する酸化物の金属元素の組成比をモル比で表わすと、錫とシリコンのモル比が0.2:0.8〜0.5:0.5の間にあることが好ましい。錫のモル比が0.2より小さくなると、第2の酸化物からなる連続層5内に導電性を劣化させる欠陥を生じにくくする効果が減少し、また、錫のモル比が0.5より大きくなると、中間膜6が良好なアモルファス状の混合酸化物の層とならず、凹凸形状を緩やかにする効果が無くなるためである。錫とシリコンのモル比は0.3:0.7〜0.5:0.5の間にあることがより好ましい。
また、上記の理由から、第3の酸化物からなる中間膜6の膜厚は5〜35nmであることが好ましく、5〜20nmであることがより好ましい。
図示したダブルテクスチャ構造の透明導電性酸化物膜付き基体は、以下に示す手順で製造することができる。
第一に、第1の酸化物からなる小山部4を基体1上に形成する。第1の酸化物からなる小山部4を基体1上に形成する方法は限定されないが、例えば、金属塩化物を原料として、基体を加熱して、常圧CVD法を実施することによって、基体1上に第1の酸化物からなる小山部4を形成する方法がある。この場合、常圧CVD法実施時の供給ガスとしては、金属塩化物、ハロゲン化水素、水の混合物を用いるが、これらの媒体中の金属元素濃度を調整することによって、形成される小山部4の寸法や基体1上における小山部4の密度を調整する。具体的には、金属塩化物に対するハロゲン化水素と水の量を調整することによって、形成される小山部4の寸法や基体1上における小山部4の表面被覆率を調整する。
具体的な手順の一例を挙げると、基体1であるソーダライムシリケートガラス基体をベルトコンベア炉において520℃に加熱し、このガラス基体上に、まず、アルカリバリア層(TiO2/SiO2)を形成する。具体的には、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)をN2で希釈したガスを吹き付けることで、TiO2膜を成膜する。引き続いて、0.8mol%のシランガスを含有した窒素ガス20L/分と、酸素ガス20L/分とを同時に吹き付けシリカ(SiO2)膜を成膜する。次に、このアルカリバリア層(TiO2/SiO2)付きガラス基体を540℃に加熱し、四塩化錫、水、塩化水素ガスを同時に吹き付けることで、シリカ膜上にSnO2からなる不連続な小山部4を形成する。ここで、塩化水素ガスを加える割合を増加させると、小山部4が形成され易くなるので、基体1上における小山部4の表面被覆率を制御するうえで好ましい。塩化水素を加える割合は、塩化水素と四塩化錫のモル比(以下、HCl/SnCl4という)で表され、HCl/SnCl4が1〜12であることが好ましい。HCl/SnCl4がこの範囲であると、小山部が形成され易く、上記表面被覆率を制御できる。特に、HCl/SnCl4が5〜10であることが好ましい。
次に、第3の酸化物からなる中間膜6を、第1の酸化物からなる不連続な小山部4の上および、小山部のない平坦なガラス基体上に形成する。第3の酸化物からなる中間膜6を、第1の酸化物からなる不連続な小山部4の上および、小山部のない平坦なガラス基体上に形成する方法は限定されず、例えば、CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法などを用いることができる。これらの中でも、製造コストや中間膜6上に形成される連続層5の低抵抗化の容易さなどを考えるとCVD法、特に常圧CVD法を用いることが好ましい。
CVD法で連続層5を形成する際、シリコン原料としてはモノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン(二塩化シラン)、トリクロロシラン(三塩化シラン)、テトラクロロシラン(四塩化シラン)、テトラエトキシシランなどの無機または有機のシラン化合物を用いることができる。
具体的な手順の一例を挙げると、中間膜6として、SiO2からなる層を形成する場合は、第1の酸化物からなる小山部4が形成された基体1(ガラス基体)を520℃に加熱し、このガラス基体上に、0.8mol%のシランガスを含んだ窒素ガス20L/分と、酸素ガス20L/分とを同時に吹き付け、常圧CVD法により非結晶性でSiO2を主成分とする酸化物からなる層を形成する。
中間膜6として、シリコンと錫との混合酸化物からなる層を形成する場合は、キャリアガスとして窒素ガスを用い、錫の酸化物を形成する原料ガスとして四塩化錫、シリカを形成する原料ガスとしてトリクロロシランを用いる。第1の酸化物からなる小山部4が形成された基体1(ガラス基体)を550℃に加熱し、このガラス基体上に、これらの原料ガスを四塩化錫とトリクロロシランの合計が0.1体積%になるように窒素ガスと混合し、水蒸気とともに吹き付け、常圧CVD法により錫とシリコンとの混合酸化物からなる層を形成する。
次に、第3の酸化物からなる中間膜6上に、第2の酸化物からなる連続層5を形成する。第3の酸化物からなる中間膜6上に、第2の酸化物からなる連続層5を形成する方法は限定されず、例えば、常圧CVD法、電子ビーム蒸層法、真空蒸着法、スパッタ法、スプレー法を用いることができる。これらの中でも、常圧CVD法を用いると、エッチング工程を要せず、連続層5の外表面にミクロの多数の凹凸を形成することができるので好ましい。
具体的な手順の一例を挙げると、中間膜6が形成された基体1(ガラス基体)を540℃に加熱し、四塩化錫、水、フッ化水素、を同時に吹き付け、常圧CVD法により、フッ素をドープした錫を主成分とするSnO2からなる層を形成することができる。
本発明の透明導電性酸化物膜付き基体は、前述のような形状の複数の山部とその間をうめる複数の平坦部とで構成され、該山部および外平坦部の表面がミクロの多数の凸部を連続して有するものであるが、基体1上から山部2の頂上(ミクロの凸部10を含む)までの高さは0.7〜3.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2μmである。導電性に関して、透明導電性酸化物膜全体のシート抵抗が8〜20Ω/□であることが好ましく、より好ましくは8〜12Ω/□であり、550nmにおける透過率(透明性)は、後に実施例で詳述する浸液法で測定した場合、80〜90%であることが好ましく、より好ましくは85〜90%である。また、ヘイズ率は前述したように、400〜800nmの波長全域にわたって10〜95%であることが好ましい。但し、波長800nmにおけるヘイズ率が10〜50%であることが好ましい。より好ましくは10〜40%、さらに好ましくは30〜40%である。
上記構成を後述する太陽電池等の光電変換素子の透明電極(本発明における透明導電性酸化物膜)に用いると、基体を経て入射された光は、透明電極により屈折、散乱されて光電変換部に入射し、光電変換部中を長い距離にわたって通過する。その結果、多くの光が光電変換部にて吸収され、光電変換効率が向上する。
以上で説明した透明導電性酸化物膜付き基体と、光電変換層、および裏面電極を有する本発明の光電変換素子(以下、太陽電池として説明する)の構成を示す好適な1例を図3を用いて説明するが、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体、太陽電池およびそれらの製造方法はこれに限定されない。
図3に示されるように、本発明の太陽電池は20で図示されており、基体21(例えば、ガラス基体)上に、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体に用いられる透明導電性酸化物膜22、光電変換層26と、裏面電極層27とを有している。この構成は、比較的低コストで製造可能な光電変換装置の1つである。かかる太陽電池20は、光28が基体21側から入射し、主としてi層24内で吸収されるように設計されている。起電力は透明電導性酸化物膜22と裏面電極27の2つの電極間で発生し、導線29を通して太陽電池から電気が取り出される。
以下に各構成について説明する。
光電変換層26は、一般的な太陽電池に使用することができる光電変換層であれば使用可能である。図3に示される光電変換層26の構造は、p層23、i層24およびn層25をこの順に形成された3層(p−i−n層)からなるシングル構造のセル(シングルセル)となっている。p層の材料としては水素化アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC:H)が挙げられ、i層の材料としては水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、結晶シリコン(c−Si)、微結晶シリコン(μc−Si)、水素化アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe:H)が挙げられる。また、n層材料としては水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)、微結晶シリコン(μc−Si)が挙げられる。
この中でも、p層としてa−SiC:H層、i層としてa−Si:H層、およびn層としてa−Si:H層がこの順に形成された3層(以下、a−Siのp−i−n層)からなるシングルセルが好ましい。
また、他の例として、例えば、a−Siのi層を有するp−i−n層を上部セル(top cell)とし、別のp−i−n層を下部セル(bottom cell)として積層させた多接合構造のセル(その1例としてタンデムセルがある)が好ましく使用される。
タンデムセルの具体例としては、
a−Siのi層を有するp−i−n層をtop cellとし、p層としてμc−Si:H層、i層として微結晶Si(μc−Si:H)層、およびn層としてa−Si:H層もしくはμc−Si:H層がこの順に形成された3層をbottom cellとして積層させた(a−Si/μc−Si)タンデムセル;
a−Siのi層を有するp−i−n層をtop cellとし、p層としてa−Si:H層、i層としてa−SiGe:H層、およびn層としてa−Si:H層もしくはμc−Si:H層がこの順に形成された3層をbottom cellとして積層させたタンデムセル;
a−Siのi層を有するp−i−n層をtop cellとし、p層としてμc−Si:H層、i層としてμc−SiGe:H層、およびn層としてμc−Si:H層もしくはa−Si:H層がこの順に形成された3層をbottom cellとして積層させたタンデムセルが挙げられる。
これらのタンデムセルにおいて、top cellのn層として、a−Si:H層の替わりに、微結晶Siを含むμc−Si:Hを用いても好ましい。
さらに、そのほかの多接合セルの例として、a−Si/a−SiGe/a−SiGeあるいは、a−Si/μc−Si/μc−Siなどのトリプル接合や4接合、5接合セルも好ましい。
タンデムセルなどの多接合セルを光電変換層に用いることにより、短波長のみならず長波長側の光の光電変換も可能となることから、ダブルテクスチャ構造を有する本発明の透明導電性酸化物膜付き基体と、多接合セルと、を組み合わせれば、光電変換効率の向上効果はより明らかなものとなる。この点において、上記したタンデムセル(a−Si/μc−Si)をはじめとする多接合セルが好ましい。
上述したように、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体は、(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体として評価した場合に、VOC×bottom−JSC(基準基体比)が1以上となるので、多接合セル用透明導電性酸化物膜付き基体として好適である。
次に、上記裏面電極層27の電極材料としては、AgまたはAg合金、AlまたはAl合金などを主成分とする層を用いることができ、好ましくは、結晶性のAgを膜中に95mol%以上含有する金属膜を用いる。結晶性のAgを裏面電極の金属膜に用いることにより、上記光電変換層26を透過してきた光を反射させ、再び反射光を光電変換層26に戻すことが可能となることから、光電変換効率の向上効果につながる。
上記金属膜は、Pdおよび/またはAuを成分として含有してもよい。膜中でのPdおよびAuの含有量は、Agとの総和に対して、それぞれ0.3〜5mol%であることが好ましく、0.3〜3mol%であることがより好ましい。
また、Agのみからなる層である場合、不純物量の合計は1mol%以下であることが好ましい。
本発明の太陽電池は、図3に示す上記裏面電極層27と、光電変換層26との間に接触改善層を有していてもよい。本発明の透明導電性酸化物膜、および接触改善層を有する太陽電池の1例を図4を用いて説明するが、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体とその製造方法、および光電変換素子はこれに限定されない。なお、図4は、図3の部分拡大図に相当する。
図4に示されるように、太陽電池は40で図示されており、基体44(例えば、ガラス基体)、本発明における透明導電性酸化物膜45、a−Siのi層を有するp−i−n層からなる光電変換層42、接触改善層41、および裏面電極43を有している。なお、図4では、光電変換層42として、a−Siのi層を有するp−i−n層からなるシングルセルを示しているがこれに限定されず、他の構成のシングルセルであってもよく、(a−Si/μc−Si)タンデムセルのような多接合セルであってもよい。
上記接触改善層41は、図4に示されるように、上記光電変換層42と、裏面電極43との間にあり、光電変換層42と裏面電極43との接触性を改善するために用いられる。
ここで、接触改善層41は、比抵抗および吸収係数が小さいことが好ましい。具体的には、比抵抗が1×10-2Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは、5×10-3Ω・cm以下である。上記接触改善層41の比抵抗が、この範囲であると、光電変換層42で光電変換された起電力を、低減させることなく裏面電極43へ通すことが可能となる。
吸収係数は、好ましくは波長領域500〜800nmにおいて、5×103cm-1以下であり、2×103cm-1以下であることがより好ましい。上記接触改善層41の吸収係数が、この範囲であると、光電変換層42を透過した光を、吸収することなく裏面電極43へ透過させることが可能となる。
上記接触改善層41の材料としては、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、膜中の全金属成分の90原子%以上がZnであることが好ましい。より好ましくは、上記酸化亜鉛を主成分とする層にガリウム(Ga)を含有させてなる層、またはアルミニウム(Al)を含有させてなる層を用いることである。GaやAlを含有させることにより、導電電子密度が上がり、酸化亜鉛に対してドーパントとして働くことにより、接触改善層41全体の導電性の向上といった効果を有する。
また、GaまたはAlを含有させる含有量は、Znとの総和に対して0.3〜10mol%であることが好ましく、より好ましくは、0.3〜5mol%である。この範囲であると、導電性の過剰な向上による接触改善層41の吸収係数の増大を防ぐことができる。
さらに、GaやAlを含有する酸化亜鉛層である場合は、不純物を含んでいてもよく、不純物量の合計は1mol%以下であることが好ましい。
上記太陽電池の製造方法は特に限定されないが、例えば、プラズマCVD法、および、スパッタ法を用いることによって製造することができる。
具体的には、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体上に、プラズマCVD法により光電変換層を形成した後、スパッタ法により上記光電変換層上に上記接触改善層および上記裏面電極をこの順で形成することによって、上記太陽電池を得ることができる。
上記手順で太陽電池を製造する場合、プラズマCVD法は、一般的な太陽電池において光電変換層を形成する条件で行うことができ、例えば、光電変換層として、a−Siシングルセル、(a−Si/μc−Si)タンデムセルを、後述する実施例に示す条件で形成することができる。
スパッタ法により上記光電変換層上に上記接触改善層を形成するには、具体的には、例えば、Gaをドーピングさせた酸化亜鉛(以下、GZO)をターゲットに用い、不活性ガス雰囲気でスパッタすることにより、光電変換層の上に接触改善層としてGZO層を積層させればよい。
また、接触改善層としてGZO層の形成する場合、GZO層の形成方法に関しては特に限定されず、スパッタ法、真空蒸着法等の物理蒸着法やCVD法等の化学蒸着法が用いることができる。但し、より低温基体温度で良好な導電膜特性が得られる物理蒸着法、特にスパッタ法が好ましい。なお、後述する実施例では直流スパッタ法を用いているが、これを高周波スパッタリング法で行ってもよい。
同様に、上記接触改善層上に、裏面電極層を形成するには、例えばAgを95mol%以上含有する金属(以下、Ag系金属という)をターゲットに用い、不活性ガス雰囲気でスパッタすることにより、接触改善層の上に裏面電極層としてAg膜を積層させればよい。
本発明の太陽電池は、例えば次のように製作される。まず、接触改善層を形成するGZOターゲットを直流マグネトロンスパッタ装置のカソードに取り付ける。さらに、光電変換層が形成された透明導電性酸化物膜付き基体を基体ホルダーに取り付ける。次いで、成膜室内を真空に排気後、スパッタガスとして、アルゴンガスを導入する。スパッタガスには、アルゴンガスの他に、He、Ne、Krなどの不活性ガスを用いることができるが、放電が安定で、価格が安価であるアルゴンガスが好ましい。また、二酸化炭素を0.3〜20vol%含有する不活性ガスであることがより好ましく、さらに好ましくは、二酸化炭素を0.3〜10vol%含有する不活性ガスである。二酸化炭素を含有させることにより、Gaドープによる導電性の過剰な向上による吸収係数の増大を防ぐことができる。
スパッタ中の圧力としては、0.1〜1.5Paが適当である。また、残留ガス圧は1.0×10-5〜2.5×10-3Paが好ましい。成膜時の基体温度としては、太陽電池特性の観点から室温〜200℃、特に100〜150℃であることが適当である。
また、上記スパッタによる成膜時において、GZOターゲットを基体に対して30〜90°傾けてスパッタを行う(以下、斜めスパッタという)ことが、低抵抗と低吸収を両立できることから好ましい。
裏面電極層の形成は、接触改善層同様、まず、裏面電極層を形成するAg系金属ターゲットを直流マグネトロンスパッタ装置のカソードに取り付ける。さらに、前述のようにして接触改善層が形成された基体を基体ホルダーに取り付ける。次いで、成膜室内を真空に排気後、スパッタガスとして、アルゴンガスを導入する。スパッタガスには、アルゴンガスの他に、He、Ne、Krなどの不活性ガスを用いることができるが、放電が安定で、価格が安価であるアルゴンガスが好ましい。
スパッタ中の圧力も同様で、0.1〜1.5Paが適当である。また、残留ガス圧は1.0×10-5〜2.5×10-3Paが好ましい。スパッタ時の基体の温度としては、基体と膜との密着性の観点から室温〜200℃、特に100〜150℃で行うことが適当である。スパッタ時に基体を加熱することにより、裏面電極であるAgの結晶性の向上、反射率の向上、および基体全体の低抵抗化が図られるため好ましい。
また、裏面電極層として、Pdおよび/またはAuを含有するAg層を形成するとき、Pdおよび/またはAuをそれぞれ別々のターゲットとして用いて形成してもよく、また、あらかじめ所望の組成のPdおよび/またはAuを含有するAg合金を作成して、それをターゲットとして用いてもよい。
上記太陽電池における光電変換層、接触改善層、および裏面電極層の各膜厚を以下に示す。
光電変換層は、上述したように、シングルセルの場合と、タンデムセルなどの多接合セルの場合と、がある。このため、光電変換層の膜厚は、光電変換層の種類により異なる。a−Siのp−i−n層のシングルセルの場合、p層の膜厚は、5〜15nmの範囲であり、i層の膜厚は、100〜400nmであり、n層の膜厚は20〜60nmである。(a−Si/μc−Si)タンデムセルの場合、top cellを構成するa−Siのp−i−n層の各層の膜厚は上記と同様である。一方、bottom cellを構成するμc−Siのp−i−n層の各層の膜厚は、p層の膜厚は、5〜50nmの範囲であり、i層の膜厚は、1000〜4000nmであり、n層の膜厚は20〜60nmである。
接触改善層の膜厚は50〜200nmであることが好ましく、より好ましくは50〜150nmである。接触改善層がGZO層であるときの膜厚は50〜150nmであることが好ましい。接触改善層の膜厚がこの範囲であると、本発明の透明導電性酸化物膜付き基体のようなダブルテクスチャ構造に対しても十分な接触改善効果が確認される。
また、裏面電極層の膜厚は、100〜300nmであることが好ましく、より好ましくは150〜250nmである。特に、裏面電極層がAgであるときの膜厚は150〜250nmであることが好ましい。
実施例では以下に示す手順でダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体を作製し、この基体を(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体として用いた場合のVOC×bottom−JSCを評価した。
なお、以下に示す例1〜18のうち、例1〜例11、例17、18が実施例、例12〜16が比較例である。
(例1)
以下に示す手順でダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体を作製した。
<アルカリバリア層および第1の酸化物からなる小山部の形成>
透明導電性酸化物膜は、ソーダライムシリケートガラス基体上に常圧CVD法で作製した。基体1として、300mm×300mm×1.1mm厚のソーダライムシリケートガラス基体をベルトコンべア炉(ベルト速度3m/分)で520℃に加熱し、まず、TiO2膜を成膜する。原料のチタンテトライソプロポキシド(TTIP)は、あらかじめ110℃に加熱し、窒素ガスを4.5L/分で吹き込んで、希釈窒素ガスとともに基体上に移送した。次に、0.8mol%のシランガスを含む窒素ガス20L/分と酸素ガス20L/分を同時に吹き付けシリカ膜を成膜した。
次に、このシリカ膜付きガラス基体を540℃に加熱し、四塩化錫、水、塩化水素ガスを同時に吹き付け、第1の酸化物からなる層として、SnO2層を形成した。四塩化錫はあらかじめ55℃に加熱し、窒素ガスを2L/分で吹き込んで基体上に移送した。また100℃に加熱した水を20g/分、塩化水素ガスを2.0L/分で基体に吹き付けた。
成膜後、SEMによりSnO2層表面の凹凸形状を観察したところ、SnO2層は連続膜ではなく、マクロな凹凸からなる小山部4を形成していることがわかった。基体を真上から観察したSEM像を画像処理して計算したところ、小山部4を形成するSnO2によるガラス基体表面の被覆率は22%であった。SnO2からなる小山部4はAFMで測定し高さHcは342nm、小山部4の底面径Dcは700nmだった。
また、後述する測定方法により、小山部4のシート抵抗は20MΩ/□以上、ヘイズ率は27%(400〜600nm平均)、19%(600〜800nm平均)であり、浸液法による550nmにおける透過率は90%と求められた。
c の測定
小山部4の高さHcの測定については、第1の酸化物からなる層としてSnO2層を形成した後、AFMによって測定すると前述したが、具体的な方法を詳細に記載する。
小山部4の高さHの測定は、透明導電性酸化物膜付き基体を用いて光電変換素子を作製する際に、実際に光電変換素子として利用される領域を用いて行う。その領域において、20cm角の範囲内で、お互いに7cm以上離れた任意の6部位を選択し、AFM測定において、これら6部位でのPV(peak to valley)値を測定し、これら6部位でのPV値の中央値(ラジアン)をHとした。
なおAFMの測定条件を次に示す。
装置:SIIナノテクノロジー社製
測定モード:ダンピングモード(DFM)
カンチレバーのばね定数:40N/m
走査エリア:10μm角
走査周波数:0.3Hz
Xデータ数/Yデータ数:256/256
また、小山部4の高さHを測定する第2の方法として、以下の方法も可能である。
後述する手順で第2の酸化物からなる連続層5としてFドープSnO2層まで形成した後、透明導電性酸化物膜付き基体を用いて光電変換素子を作製する際に、実際に光電変換素子として利用される領域において、20cm角の範囲を決定し、その範囲を濃度4mol/リットルのHClと亜鉛粉末を用いてエッチングして、第2の酸化物からなる連続層5(FドープSnO2層)および第3の酸化物からなる中間膜6(シリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物からなる層)を除去した上で、上記と同様の手順で、AFM測定において、任意の6部位のPV値を測定し、該PV値の中央値(ラジアン)をHとする。
参考までに、例1、9について、上記2つの方法で測定した小山部4の高さHの測定結果を表3に示した。
<第3の酸化物からなる中間膜の形成>
次に、SnO2を主成分とする酸化物からなる小山部4が形成された基体1(ガラス基体)をベルトコンベア炉(ベルト速度3m/分)で550℃に加熱し、キャリアガスとして窒素ガスを用い、錫の酸化物を形成する原料ガスとして四塩化錫、シリカを形成する原料ガスとしてトリクロロシランを用い、小山部4上、および小山部4が形成されていない部分の基体1上に、第3の酸化物(SiO2を主成分とする酸化物)からなる中間膜6として、シリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物からなる層を形成した。このための原料ガスは、四塩化錫とトリクロロシランの合計が0.1体積%になるように窒素ガスと混合し、水蒸気とともに、小山部4が形成された基体1(ガラス基体)に吹き付けて形成した。この層の表面組成をESCAで分析したところ、錫とシリコンの元素比は0.4:0.6であった。
また、シリカ膜のみを形成した物性評価用ガラス基体に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物の層を形成し、触診式膜厚計で測定したところ膜厚は8nmであった。
<第2の酸化物からなる連続層の形成>
次に、SiO2を主成分とする酸化物からなる中間膜6の上に常圧CVD法を用いて、第2の酸化物からなる連続層5として、FドープSnO2層を形成した。具体的には、基体1(ガラス基体)をベルトコンベア炉(ベルト速度3m/分)で540℃に加熱し、四塩化錫、水、HFガスを吹き付けて、FドープSnO2層を形成した。四塩化錫はあらかじめ80℃に加熱し、窒素ガスを6L/分で移送し基体1(ガラス基体)上に吹き付けた。また100℃に加熱した水を65g/分、HFガスを1.3L/分となるように基体1(ガラス基体)上に吹き付けた。
FドープSnO2層表面の凹凸形状をSEM、AFMにより観察した。SEM観察によると、FドープSnO2層は連続層となっており、FドープSnO2層によるガラス基体表面の被覆率は100%だった。
SEM、AFM観察によると、山部2の高さHaは400nm、隣接する山部2間の間隔Waは0〜0.4μm、山部2の底面径Daは1.0〜1.5μm、隣接する山部2間のピッチPaは0.3〜1.2μm、基体1上から山部2の頂点(ミクロの凸部を含む)までの高さは0.8〜1.0μmであった。また、FドープSnO2層の表面は、ミクロの多数の凹凸を有しており、その凸部10の高さHbは0.1〜0.2μm、凸部10間のピッチPbは0.1〜0.2μm、凸部10の底面径Dbは0.2〜0.3μmであり、凸部10の高さHb/底面径Dbは0.73であった。さらに、後述する測定方法により、シート抵抗は10Ω/□、ヘイズ率は、65%(400〜600nm平均)、38%(600〜800nm平均)、28%(800nm)と、求められ、浸液法による550nmにおける透過率は89%であった。
FドープSnO2層中のフッ素含有量と導電電子密度を定量するために、あらかじめシリカコートしたガラス基体上に四塩化錫、水、HFガスを吹き付けてFドープSnO2層を形成した。基体温度、ガス流量は本例における連続層5の作成条件と同一条件で行った。得られたFドープSnO2層を亜鉛を含む塩酸中で溶解した後、ガスクロマトグラフィーにより定量分析したところ、フッ素含有量はSnO2に対して0.05mol%であった。また、電子密度をホール効果(van der Pauw法)による測定により求めたところ、1. 9×1020cm-3であった。なお、FドープSnO2層の膜厚は、触針式膜厚計で測定したところ0.7μmであった。
得られた透明導電性酸化物膜付き基体のシート抵抗、ヘイズ率、透過率の測定方法を以下に述べる。シート抵抗は、4端子法で測定した。導電性酸化物膜付基体を約3cm角に切り出し、対向する2辺に、長さ3cmの一対の電極を電極間距離が3cmとなるように、膜の上に平行に取り付けた。次に、テスターで電極間の抵抗を測り、シート抵抗とした。ヘイズ率は分光光度計(日立製作所製U3400)を用いて測定した。測定波長範囲は400〜800nm、測定間隔は10nmとした。まず光入射面をガラス面として、正透過法で透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTd(λ)とする。次に内面球径150mmφの積分球を装着し、サンプルの膜面を積分球に密着させて、積分球透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTt(λ)とする。以上の測定結果からヘイズ率Hz(λ)を以下の式により算出した。
Hz(λ)=(Tt(λ)−Td(λ))×100/Tt(λ)(%)
分光透過率は、導電性酸化物基体表面の凹凸の大きさの違いによる測定誤差を最小にするために、浸液法を用いて行った。浸液法とは、導電性酸化物膜付基体の膜表面に、ジヨードメタンを数滴滴下して、透明石英ガラスで溶液を挟み込んで透過率を測定する方法である。ジヨードメタンによる吸収は、主に400nm以下であることから、400〜800nmの範囲では、ジヨードメタンと石英ガラスによる吸収はほとんどない。分光透過率の測定は、分光光度計(日立製作所製U3400)に内面球径150mmφの積分球(日立製作所製:150−0901)を装着して行った。
上記の手順で得られた透明導電性酸化物膜付き基体について、以下の手順でVOC、bottom−JSCを測定した。
<VOCの測定>
OCは以下の手順でa−Siシングルセルを作製して測定した。
光電変換層の形成
40mm×40mmの大きさに切り出した透明導電性酸化物膜付き基体の上に、光電変換層として、a−Siのp−i−n層をプラズマCVD装置(島津製作所製SLCM14)を用いて形成した。
p−i−n層を構成する各層(p層、i層、n層)の形成条件は以下の通り。
[p層]
基体表面温度:180℃
圧力 :40Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
CH4 :20sccm
2 :95sccm
2/B26:25sccm(B26:1000ppm)
[i層]
基体表面温度:180℃
圧力 :27Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
[n層]
基体表面温度:180℃
圧力 :40Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
2 :75sccm
2/PH3:75sccm(PH3:1000ppm)
接触改善層、裏面電極層の形成
次いで、光電変換層の上部に、ガリウム(以下、Gaともいう)が亜鉛との総和に対し5mol%含有しているGZOターゲットを用いて直流スパッタ法によりGZO層を約100nm形成した。スパッタは真空装置をあらかじめ10-3Pa以下に減圧した後、Arガスを100sccm導入して行ない、スパッタ中の圧力を4×10-1Pa、スパッタパワーは1.4W/cm2とした。また、GZO膜中のGa含有量はターゲットと同様で亜鉛との総和に対し5mol%、基体温度は100℃とした。GZO単膜の性能は、比抵抗が5×10-3Ω・cm、500〜800nmにおいて吸収係数が1×103cm-1であった。最後にGZO膜上に裏面電極層としてAg膜を、Agターゲットを用いてArガス雰囲気でスパッタ法(スパッタ中の圧力:4×10-1Pa、スパッタパワー:1.4W/cm2)により約200nmの膜厚で形成した。さらに、Alターゲットを用いてArガス雰囲気中でスパッタ法(スパッタ中の圧力:4×10-1Pa、スパッタパワー:1.4Wcm2)により、約18nmのAl薄膜を形成したのち、5mm×5mmの大きさの裏面電極をマスクとして、SF6を用いてリアクティブイオンエッチングを行いa−Siシングルセルを作製した。
このようにして得られたa−Siシングルセルに、ソーラーシミュレータでAM(エアマス)1.5の光を照射してVOCを測定した。
<bottom−JSCの測定>
bottom−JSCは以下の手順で(a−Si/μc−Si)タンデムセルを作製して測定した。
光電変換層の形成
40mm×40mmの大きさに切り出した透明導電性酸化物膜の上に、上記と同様の手順でa−Siのp−i−n層をtop cellとして形成した後、μc−Siのp−i−n層をbottom cellとして形成した。μc−Siのp−i−n層の形成にもプラズマCVD装置(島津製作所製SLCM14)を用いた。
トップセルのp−i−n層を構成する各層(p層、i層、n層)の形成条件は以下の通り。
[トップp層]
基体表面温度:180℃
圧力 :40Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
CH4 :20sccm
2 :95sccm
2/B26:25sccm(B26:1000ppm)
[トップi層]
基体表面温度:180℃
圧力 :27Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
[トップn層]
基体表面温度:180℃
圧力 :40Pa
RF(13.56MHz)パワー :0.024W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
2 :75sccm
2/PH3:75sccm(PH3:1000ppm)
ボトムセルのp−i−n層を構成する各層(p層、i層、n層)の形成条件は以下の通り。
[ボトムp層]
基体表面温度:140℃
圧力 :200Pa
RF(27MHz)パワー:0.049W/cm2
ガス流量
SiH4 :3sccm
2 :450sccm
2/B26:4sccm(B26:1000ppm)
[ボトムi層]
基体表面温度:180℃
圧力 :267Pa
RF(27MHz)パワー:0.13W/cm2
ガス流量
SiH4 :10sccm
2 :220sccm
[ボトムn層]
基体表面温度:180℃
圧力 :133Pa
RF(13.56MHz)パワー:0.19W/cm2
ガス流量
SiH4 :5sccm
2 :400sccm
2/PH3:100sccm(PH3:1000ppm)
次いで、光電変換層上に、a−Siシングルセルと同様の手順で接触改善層および裏面電極層を形成し、5mm×5mmの大きさの裏面電極をマスクとして、SF6を用いてリアクティブイオンエッチングを行い、5mm×5mmの大きさの(a−Si/μc−Si)タンデムセルを作製した。得られた(a−Si/μc−Si)タンデムセルのボトムセルの各波長における量子効率をバンドパスフィルター(朝日分光株式会社製 バンドパスフィルター 型番:PB0056,品名:PB0550/280)を通しておよそAM1.5のバイアス光を照射しながら測定した。測定により得られたボトムセルの分光感度とAM1.5の照射強度からbottom−JSCを計算により求めた。
例1の透明導電性酸化物膜付き基体について、(a−Si/μc−Si)タンデムセル用透明導電性酸化物膜付き基体としての性能を評価するために、以下に示す基準基体を準備した。
[基準基体を用いた光電変換素子]
基準基体は、上述した例1の透明導電性酸化物膜付き基体の製造手順のうち、小山部4の形成工程及び中間膜6の形成工程を除いて作製したものである。
すなわち、基体1の上に、アルカリバリア層、第2の酸化物からなる連続層5を形成した構造を有するものである。
<基準基体における第2の酸化物からなる連続層の形成>
常圧CVD法を用いて、第2の酸化物からなる連続層5として、FドープSnO2層を形成した。具体的には、例1との透明導電性酸化物膜付き基体と同様の方法で、アルカリバリア層(TiO2/SiO2)を形成した基体1(ガラス基体)をベルトコンベア炉(ベルト速度3m/分)で540℃に加熱し、四塩化錫、水、HFガスを吹き付けて、FドープSnO2層を形成した。四塩化錫はあらかじめ80℃に加熱し、窒素ガスを7L/分で移送し基体1(ガラス基体)上に吹き付けた。また100℃に加熱した水を50g/分、HFガスを1.0L/分となるように基体1(ガラス基体)上に吹き付けた。この場合表面には、ミクロな凹凸が形成される。
基準基体のシート抵抗は9Ω/□、ヘイズ率は、33%(400〜600nm平均)、13%(600〜800nm平均)、9%(800nm)と、求められ、浸液法による550nmにおける透過率は89%であった。
上記の手順で作製した基準基体を用いて、例1の透明導電性酸化物膜付き基体と同様の手順で、a−Siシングルセル、(a−Si/μc−Si)タンデムセルを作製した。前者はVOCの測定に使用、後者はbottom−JSCの測定に使用した。
上記の透明導電性酸化物膜付き基体を基準基体として光電変換素子に使用したのは以下の理由である。
基準基体として用いたのは、シングルテクスチャ構造の凹凸を有する透明導電膜基板基体(以下シングルテクスチャ基体という)の1種である。従来a−Siシングルセルの光電変換素子(単接合太陽電池)用としては、シングルテクスチャ基体が好適に用いられてきた。
しかしながら、シングルテクスチャ基体でも、ヘイズ率の違いによって、光散乱の特性に違いが生じ、それに伴って、光電変換特性にも差が見られる。(a−Si/μc−Si)タンデムセルのようなタンデムセル(多接合太陽電池)に用いる場合には、その差は特に顕著となる。
たとえば以下は、実際に、ヘイズ率が異なる3種類のシングルテクスチャ基体(基体A、B、C)を用いて、光電変換特性(VOC、bottom−JSC、VOC×bottom−JSC)を評価した結果である。
因みに、シングルテクスチャ基体の種類は、ヘイズ率に加えて、シングルテクスチャ構造における凹凸の形状で特徴づけられる。シングルテクスチャ構造における凹凸の平均底面径及び高さを下記表に示す。
これらのシングルテクスチャ基体でのa−SiシングルセルのVOC、(a−Si/μc−Si)タンデムセルのbottom−JSCを測定した結果を下記表に示す。
なお、表中の基準比とは、基体Aを基準とした場合の比である。
Figure 2012084843
上表から明らかなのは、シングルテクスチャ基体を(a−Si/μc−Si)タンデムセルに使用する場合には、基体Aのような性状(ヘイズ率、テクスチャ形状)の基体を用いたときに、最も高いVOC×bottom−JSCを得ることができることである。
このように、基体Aは、従来のシングルテクスチャ構造の透明導電性酸化物膜付き基体のなかでも、最も(a−Si/μc−Si)タンデムセルに適した基体であると考えられるため、本発明では、この基体Aを基準基板として用いて、本発明のダブルテクスチャ構造を有する透明導電性酸化物膜付き基体の優劣判断を行うこととした。
因みに、特許文献8に示す従来のダブルテクスチャ基体は、前述のように解放電圧(VOC)が低下する傾向があり、高いVOC×bottom−JSC が得られていない。
例15、例16が特許文献8の実施例の記載に近い従来ダブルテクスチャ基体に相当する。
基準基体を用いた光電変換素子のVOC、bottom−JSCはそれぞれ以下の通り。
OC(基準):852mV
bottom−JSC(基準):9.36mA/cm2
例1の透明導電性酸化物膜付き基体について測定したVOC、bottom−JSCから、上記のVOC(基準)、bottom−JSC(基準)に対して求めた比である、VOC、bottom−JSCの基準比を求め、その結果を用いてVOC×bottom−JSCを算出した。結果を表2に示す。
(例2〜16)
基体1上に小山部4を形成する際のHCl/SnCl4およびSnCl4導入量を変えて実施することによって、小山部4の高さおよび表面被覆率を表2に示すように変えた以外は例1と同様の手順を実施して透明導電性酸化物膜付き基体を作製した。得られた透明導電性酸化物膜について、例1と同様の手順で、波長800nmにおけるヘイズ率、VOCおよびbottom−JSCを測定し、VOC×bottom−JSCを算出した。結果を表2に示す。
(例17〜18)
基体1上に小山部4を形成する際のHCl/SnCl4およびSnCl4導入量を変えて実施することによって、小山部4の高さおよび表面被覆率を表2に示すように変えた。また第3の酸化物からなる中間膜6の形成方法が、以下に示すように、例1とは異なる。
SnO2を主成分とする酸化物からなる小山部4が形成された基体1(ガラス基体)を520℃に加熱し、基体1上に、0.8mol%のシランガスを含んだ窒素ガス20L/分と、酸素ガス20L/分とを同時に吹き付ける常圧CVD法を実施することにより、第3の酸化物からなる中間膜6として、非結晶性でSiO2を主成分とする酸化物からなる層(膜厚15nm)を形成した。
得られた透明導電性酸化物膜について、例1と同様の手順で、波長800nmにおけるヘイズ率、VOCおよびbottom−JSCを測定し、VOC×bottom−JSCを算出した。結果を表2に示す。
Figure 2012084843
Figure 2012084843
1 基体
2 山部
3 平坦部
4 小山部
5 連続層
6 中間膜
10 凸部
a 山部間の間隔
c 小山部間の間隔
a 山部の高さ
b 凸部の高さ
c 小山部の高さ
d 、He 連続層の厚さ
a 山部の底面径
b 凸部の底面径
c 小山部の底面径
a 山部間のピッチ
b 凸部間のピッチ
c 小山部間のピッチ
20 太陽電池
21 透明絶縁性基体
22 透明導電膜
23 p層
24 i層
25 n層
26 光電変換層
27 裏面電極
28 光
29 導線
40 太陽電池用基体
41 接触改善層
42 a−Siのp−i−n層
43 裏面電極
44 ガラス基体
45 透明導電性酸化物膜

Claims (9)

  1. 第1の酸化物からなる不連続な小山部と、その上に形成される第2の酸化物からなる連続層であって、該連続層の表面にミクロの多数の凸部を連続して有する連続層と、前記第1の酸化物からなる不連続な小山部と、前記第2の酸化物からなる連続層との間に形成された、第1および第2の酸化物とは組成が異なる第3の酸化物からなる中間膜と、を有する導電性酸化物層が基体上に設けられた透明導電性酸化物膜付き基体であって、
    前記第1の酸化物と前記第2の酸化物が、SnO2を主成分とする酸化物からなり
    前記第3の酸化物が、SiO2を主成分とする酸化物からなり、
    前記小山部の高さが250〜500nmであり、
    前記基体上における前記小山部の表面被覆率が10%以上50%以下であることを特徴とする透明導電性酸化物膜付き基体。
  2. ヘイズ率が400〜800nmの波長全域にわたって10〜95%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電性酸化物膜付き基体。
  3. 波長800nmにおけるヘイズ率が10〜50%であることを特徴とする請求項2に記載の透明導電性酸化物膜付き基体。
  4. 前記第3の酸化物が、シリコンと錫との混合酸化物からなり、該混合酸化物における錫とシリコンのモル比が0.2:0.8〜0.5:0.5であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性酸化物膜付き基体。
  5. 前記小山部の底面径が50〜2000nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性酸化物膜付き基体。
  6. シート抵抗が8〜20Ω/□、浸液法による550nmにおける透過率が80〜90%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明導電性酸化物膜付き基体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の透明導電性酸化物膜付き基体上に、光電変換層を介して、裏面電極を有する光電変換素子。
  8. 前記光電変換層が、p層、i層、n層がこの順に形成された層(p−i−n層)を含むことを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。
  9. 前記光電変換層が、アモルファスシリコン(a−Si)のi層を有するp−i−n層からなる上部セルと、微結晶シリコン(μc−Si)のi層を有するp−i−n層からなる下部セルとを含んで積層した多接合セルであることを特徴とする請求項8に記載の光電変換素子。
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