JP2012114205A - 透明導電膜基板およびその製造方法、ならびにこの基板を用いた太陽電池 - Google Patents

透明導電膜基板およびその製造方法、ならびにこの基板を用いた太陽電池 Download PDF

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Abstract

【課題】透明導電膜での光線の吸収を減少させ、光電変換効率を向上させることができる透明導電膜基板およびその製造方法、ならびにこの基板を用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】ガラス基板18上に第一酸化物構造層12、第二酸化物層14及び導電性酸化物層16がその順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板であって、第一酸化物構造層12には、ガラス基板18の面から突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部のガラス基板18の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、第二酸化物層14は、SiとSnとの混合酸化物で構成され、該混合酸化物における、SiとSnとの合計に対するSnのモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3であり、第二酸化物層14の膜厚は2〜10nmであり、導電性酸化物層16は、Fを含有したSnO2で構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜太陽電池などの光電変換デバイスに有効な透明導電膜基板およびその製造方法、ならびにこの基板を用いた太陽電池に関する。
透明導電性の薄膜は太陽電池基板やディスプレイ基板、タッチパネル基板など様々な分野で使用されている。これらの用途の内、薄膜太陽電池などの光電変換デバイスには、高い透明性、光閉じこめ性、電気伝導性、化学的耐久性などが要求されており、これらの要求を満たすものとしては酸化錫膜が広く使用されている。太陽電池用の透明導電膜として酸化錫膜を使用する場合、光閉じこめ性を高めるには酸化錫の結晶性を上げ表面のヘイズ率を増やすことが効果的であることが、特許文献1で知られている。特に、特許文献2に記載されるように、長波長の光から短波長の光までを効果的に閉じこめるためには、大きな結晶粒と小さな結晶粒を組み合わせた層を形成することが有効である。
しかしながら、上記酸化錫は急峻な結晶エッジを持つ特徴があり、結晶粒径を大きくした場合、急峻に尖った凹凸が形成される。このような急峻に尖った凹凸がある基板を用いて太陽電池を作成した場合、特許文献3にも記載されているように凹部分で発電層に欠陥が形成され、更に凸部分には電界集中により電流のリークが発生しやすい部分が形成され、結果として光電変換が悪化する。光電変換デバイスとして、高い光閉じこめ性能を実現するためには、ヘイズ率の大きい基板を用いるのが有効であるが、ヘイズ率の大きい基板は酸化錫の結晶粒が大きくなる傾向があり、上記理由により光電変換性能が上がりにくい問題がある。上記特許文献2にはヘイズ率75%までの基板についての光閉じこめ性の有効性が実施例により記載されている。
この問題に対して、特許文献3では化学エッチングやプラズマ処理により透明導電膜基板の表面結晶を丸くする加工を提案している。また、特許文献4では透明導電膜表面の結晶を研磨により丸める方法が記載されている。しかしながら、化学エッチングは基板を強酸や強アルカリの薬液に浸し、その後、水によりリンスするプロセスが必要となり、製造プロセスが煩雑になりコストアップにつながる。また、薬液処理により、導電膜に欠陥を生じることがあり、結果として、導電膜の電気抵抗が上昇するといった欠点もある。また、スパッタリング処理は真空プロセスが必要であるため製造コストのアップにつながる。同様に研磨によるプロセスも研磨、洗浄という2工程が必要となりコストアップにつながる。更に、いずれの方法も一度作製した導電膜を削るプロセスであるため、結晶粒を大きくし、ヘイズ率を上昇させ、光閉じこめ性を高くする用途に使用するには、効果的なプロセスではない。
本願出願人は、上述の問題点を考慮して、特許文献5に記載の透明導電膜基板及びこの基板を用いた太陽電池を提案している。
特許文献5に記載の透明導電膜基板は、ガラス基板上に第一酸化物構造層、第二酸化物層及び導電性酸化物層がその順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板であって、上記第一酸化物構造層には、上記ガラス基板の面から突出した複数の凸部が設けられ、上記凸部の上記ガラス基板の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、上記複数の凸部のうち隣接した凸部間の凹の深さが、上記第一酸化物構造層の平均高さの2割以上ある凹部の角度の平均値をA1、上記凹部の領域の上に形成された上記第二酸化物層の凹部の角度の平均値をA2とした時に、A2/A1が1.1以上であることを特徴とし、太陽電池などの光電変換デバイスに適用した場合に、電界集中による電流のリークが発生しにくく、光電変換性能の悪化が生じない、更に光の透過率が高い透明導電膜基板である。
特許文献5に記載の透明導電膜基板において、上記で定義したA2/A1を1.1以上とするのは、A2/A1が1.1以上の場合、第一酸化物構造層の急峻な凹凸形状の上に、曲線で構成される緩やかな形状の第二酸化物層が形成されるからであり、この構造の上に更に透明導電性膜を構成した透明導電膜基板を用いて太陽電池を作成すると、電池特性の向上が見られるからである。
特許文献5に記載の透明導電膜基板では、第一酸化物構造層の急峻な凹凸形状の上に、曲線で構成される緩やかな形状の第二酸化物層を形成するために、第二酸化物層は、膜厚が20nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜100nmがより好ましいとされている。
特許文献5に記載の透明導電膜基板において、第二酸化物層は、ガラス基板の屈折率と導電性酸化物層の屈折率との中間の屈折率を有する材料であることが好ましいとされている。その理由として、中間の屈折率を有する材料を用いることで、第二酸化物層の膜厚が20nm〜200nm程度となっても、透過率が減少しないためであるとされている。
第二酸化物層の形成材料としては、シリコンと錫の混合酸化物が、作製が容易であり、アモルファス膜になりやすく、第一酸化物構造層への被覆性が良好であること、および、導電性酸化物層の結晶成長による成膜時に、導電性を劣化させる欠陥を生じにくくする傾向があることから好ましいとされている。
第二酸化物層の形成材料として、シリコンと錫の混合酸化物を用いる場合、形成する酸化物の金属元素の組成比をモル比で表わすと、錫とシリコンのモル比が0.25:0.75〜0.7:0.3の間にあることが好ましいとされている。その理由として、錫のモル比が0.2より小さくなると、d線屈折率が1.58より小さくなり、導電性酸化物層と第二酸化物層の屈折率差により生じる反射が大きくなり、光透過性が減少するためであるとされている。また、錫のモル比が0.7より大きくなると、第二酸化物層は、良好なアモルファス状の混合酸化物の層とならず、凹凸形状を緩やかにする効果が無くなるためであるとされている。錫とシリコンのモル比は0.4:0.6〜0.6:0.4の間にあることがより好ましいとされている。
特表平2−503615号公報 特開2005−347490号公報 特開2000−277763号公報 特開2006−5021号公報 国際公開WO2010/016468号
しかしながら、本願発明者は、鋭意検討した結果、特許文献5に記載されているような、積層構造の透明導電膜基板、すなわち、ガラス基板上に、複数の凸部を有する第一酸化物構造層、第二酸化物層、及び、導電性酸化物層がこの順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板において、第二酸化物層の形成材料として、シリコンと錫の混合酸化物を用いた場合に、第二酸化物層におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))、および、第二酸化物層の膜厚が、該第二酸化物層での光線の吸収に影響を及ぼし、ひいては、該透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率に影響を及ぼすことを見出した。
すなわち、特許文献5に記載の透明導電膜基板は、該第二酸化物層での光線の吸収、および、それによる透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率への影響という観点で見た場合、吸収の点で必ずしも最適な条件ではないことを見出した。
上記した従来技術の問題点を解決するため、本発明は、ガラス基板上に、複数の凸部を有する第一酸化物構造層、第二酸化物層、及び、導電性酸化物層がこの順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板において、第二酸化物層での光線の吸収を減少させ、それにより該透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率を向上させることができる透明導電膜基板およびその製造方法、ならびにこの基板を用いた太陽電池を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明は、ガラス基板上に第一酸化物構造層、第二酸化物層及び導電性酸化物層がその順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板であって、
前記第一酸化物構造層には、前記ガラス基板の面から突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の前記ガラス基板の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、
前記第二酸化物層は、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物で構成され、該混合酸化物におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3であり、
前記第二酸化物層の膜厚は2〜10nmであり、
前記導電性酸化物層は、フッ素(F)を含有した酸化錫(SnO2)で構成されていることを特徴とする透明導電膜基板を提供する。
本発明の透明導電膜基板において、前記第二酸化物層での波長550nmにおける吸収率が0.95%以下であることがより好ましい。
本発明の透明導電膜基板において、C光源で測定したヘイズ率が50%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
また、本発明は、本発明の透明導電膜基板を用いて作製されたことを特徴とする太陽電池を提供する。
また、本発明は、ガラス基板上に、第一酸化物構造層、第二酸化物層及び導電性酸化物層をその順に形成して光電変換デバイス用透明導電膜基板を製造する光電変換デバイス用透明導電膜基板の製造方法であって、
前記第一酸化物構造層には、前記ガラス基板の面から突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の前記ガラス基板の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、
前記第二酸化物層は、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物で構成され、該混合酸化物における、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3であり、
前記第二酸化物層の膜厚は2〜10nmであり、
前記導電性酸化物層は、フッ素(F)を含有した酸化錫(SnO2)で構成されていることを特徴とする透明導電膜基板の製造方法を提供する。
本発明の透明導電膜基板では、第二酸化物層におけるモル比(Sn/(Si+Sn))を5〜30%とし、該第二酸化物層の膜厚を2〜10nmとすることにより、第二酸化物層での光線の吸収が減少する。これにより、本発明の透明導電膜基板を用いて太陽電池を作成した場合に、従来の透明導電膜基板を用いた太陽電池に比べて光電変換効率が向上する。
図1は、本発明の透明導電膜基板の切断面の一例を模式的に示した図である。
以下、本発明の透明導電膜基板について説明する。
図1は、本発明の透明導電膜基板の切断面の一例を模式的に示した図である。
図1に示す透明導電膜基板10は、第一酸化物構造層12、第二酸化物層14、及び導電性酸化物層16が、その順にガラス基板18に形成されて構成されている。
第一酸化物構造層12は、ガラス基板18上に島状の構造物が離散的に配置された層であり、該島状の構造物がガラス基板18の面から突出した複数の凸部をなしている。第一酸化物構造層12の島状の構造物の高さ(すなわち、ガラス基板18の面からの凸部の高さ)は200nm以上2000nm以下である。200nm未満では長波長の有効な光閉じこめ性が得られず、また、2000nm超では島状の構造物による光吸収が大きくなるためである。さらに、300nm以上1000nm以下であることが好ましい。
第一酸化物構造層12は、SnO2、SiO2、TiO2、Al23などの各種酸化物を用いることができるが、可視光域で高透明な酸化物であることが求められること、および、ガラス基板18上に島状の構造物が離散的に配置された層を容易に形成できることから、酸化錫(SnO2)が好ましい。
第一酸化物構造層12は、CVD法、ナノインプリント法、フォトリソプロセスなどにより作成することが可能であるが、製造コストや大面積の成膜が容易な点などからCVD法を用いるのが好ましい。
第一酸化物構造層12では、酸化物の島状の構造物を大きくし、島状の構造物の密度を上げることが光閉じこめ性の点から好ましいが、この好ましい条件では島状の構造物間に急峻な凹凸形状が形成される。特許文献5に記載の透明導電膜基板では、急峻な凹凸形状を有する第一酸化物構造層の上に、曲線で構成される緩やかな形状の第二酸化物層を形成するために、第二酸化物層の膜厚が20nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜100nmがより好ましいとされている。
特許文献5に記載の透明導電膜基板では、第二酸化物層の膜厚が20nm〜200nm程度となっても透過率が減少しないようにするために、第二酸化物層の形成材料として、ガラス基板の屈折率と導電性酸化物層の屈折率との中間の屈折率を有する材料を選択しており、第二酸化物層の形成材料として、シリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物を用いる場合、錫(Sn)とシリコン(Si)のモル比が0.25:0.75〜0.7:0.3の間にあることが好ましく、0.4:0.6〜0.6:0.4の間にあることがより好ましいとされている。
本発明の透明導電膜基板においても、作製が容易であり、アモルファス膜になりやすく、第一酸化物構造層への被覆性が良好であること、および、導電性酸化物層の結晶成長時に良好な結晶核の起点を作り、結果、結晶粒の均一性を高め、導電性を劣化させる欠陥を生じにくくする傾向があることから、第二酸化物層の形成材料としては、シリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物を用いる。
しかしながら、本願発明者は、図1に示す構造の透明導電膜基板10において、第二酸化物層14の形成材料として、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物を用いた場合に、第二酸化物層14におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))、および、第二酸化物層14の膜厚が、該第二酸化物層での光線の吸収に影響を及ぼし、ひいては、該透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率に影響を及ぼすことを見出した。
一般に、図1に示す構造の透明導電膜基板10において、各層(すなわち、第一酸化物構造層12、第二酸化物層14、及び導電性酸化物層16)の膜厚が大きくなるほど、光線の吸収が増加する傾向がある。この考えに基づけば、第二酸化物層14の膜厚を小さくするほど、該第二酸化物層14での光線の吸収を減少させることができることになる。
しかしながら、第二酸化物層14の形成材料として、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物を用いた場合に、第二酸化物層14におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))も、該第二酸化物層14での光線の吸収に影響を及ぼすことを本願発明者は見出した。
この点については、後述する比較例1と比較例3とを比較することで確認できる。比較例1および比較例3は、いずれも第二酸化物層14がシリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物で構成されるが、第二酸化物層14の膜厚と、該第二酸化物層14におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が異なる。後述する比較例1および比較例3では、第二酸化物層14での光線の吸収を評価するため、表面にアルカリバリア層が形成されたソーダライム基板上にシリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物層のみを形成して、分光光度計により波長550nmにおける吸収率を測定した。
シリコン(Si)と錫(Sn)の混合酸化物層の膜厚についてみた場合、比較例1が25nmであるのに対して比較例3は20nmであることから、上述した膜厚と、光線の吸収と、の関係についての一般的な傾向に基づけば、比較例3のほうが光線の吸収が少ないことになる。しかしながら、実際には、比較例3のほうが比較例1よりも波長550nmにおける吸収率が大きくなっている。
この結果は、第二酸化物層14におけるシリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が、第二酸化物層14での光線の吸収に影響を及ぼすこと、具体的には、モル比(Sn/(Si+Sn))が大きくなるほど、第二酸化物層14での光線の吸収が増加することを示している。
本願発明者は、上記の知見に基づき鋭意検討した結果、第二酸化物層14の膜厚、および、Sn/(Si+Sn)を後述する範囲とすることで、第二酸化物層14の形成による光線の吸収を減少させることができ、それにより透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率を向上させることができることを見出した。更に、第二酸化物層14にSnを後述する範囲で混合することによりSnO2を主成分とする導電性酸化物層の初期結晶核を均等に分散させ、結果、導電性酸化物層の結晶粒の大きさを均等にできる。導電性酸化物層の結晶粒の大きさを均等にすると、導電性酸化物層の上に光電変換層を作製した場合に欠陥の原因となる急峻な凹凸の要因であった大きい結晶粒の数を低下させることができ、光電変換効率を向上させることができる効果もあることを見出した。
本発明の透明導電膜基板10において、第二酸化物層14の膜厚は2〜10nmである。第二酸化物層14の膜厚が2nm未満だと、第二酸化物層14の膜厚が小さすぎるため、導電性酸化物層の結晶成長時に結晶核の起点となるのに有効な量のSnが膜中に分散されず、結果、導電性酸化物層の結晶粒の大きさを均等にする効果が十分でなく、この透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率が改善できない。
一方、第二酸化物層14の膜厚が10nm超だと、第二酸化物層14の膜厚が大きすぎるため、第二酸化物層14での光線の吸収が増加し、透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率が低下する。
第二酸化物層14の膜厚は2〜7nmであることが好ましい。
本発明の透明導電膜基板10において、第二酸化物層14のモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3である。モル比(Sn/(Si+Sn))が0.05未満だと、結晶核の制御に有効な量のSnが膜中に分散されず、これにより透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率の向上が見込めない問題が生じる。
一方、モル比(Sn/(Si+Sn))が0.3超だと、第二酸化物層14での光線の吸収が増加し、透明導電膜基板を用いて作製される太陽電池の光電変換効率が低下する。
第二酸化物層14のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.2〜0.3であることが好ましい。より好ましくは、0.2〜0.24である。
第二酸化物層14は、CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法などにより形成することが可能であるが、膜厚の制御のしやすさや被覆性の良さなどからCVD法で作成するのが好ましい。CVD法で第二酸化物層14を作成する場合、シリコン原料としてはモノシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシランなどの無機または有機のシラン化合物を用いることが出来る。この内、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシランなどの塩化シラン類はモノシランのように反応が速すぎてチャンバーの気相中で反応が進み、粉状の反応物が発生することが無く、また、爆発性も低いなど取り扱いが容易であり好ましい。
また、スズ原料としては四塩化錫、モノブチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、テトラメチルスズなどの有機または無機化合物を用いることができる。
導電性酸化物層16は、可視光域で透明であり、さらに導電性を有していることが求められるが、化学的耐久性や製造コストの点で好ましいことから、フッ素(F)を含有した酸化錫(SnO2)で構成される。
導電性酸化物層16は、CVD法、スパッタリング法、ゾルゲル法などで作製することが可能であるが、製造コストや表面導電層の低抵抗化の容易さなどを考えるとCVD法で作成するのが好ましい。
また、本発明に用いるガラス基板がソーダライムガラスからなる場合、ガラス中のアルカリ成分が導電性酸化物層16に拡散することを防ぐために、ガラス基板と透明導電性膜16の間にアルカリバリア層を設けてもよい。アルカリバリア層としては、シリカ(SiO2)層を材料として、第一酸化物構造層12とガラス基板18に設けることが好適である。ここで、ガラス基板からの透過光の反射および吸収を制御するために、アルカリバリア層は、ソーダライムガラス基板上に、酸化チタン(TiO2)膜と、シリカ(SiO2)膜と、を順次積層した多層膜とすることもできる。
本発明の透明導電膜基板は、第二酸化物層14での波長550nmにおける吸収率が、0.95%以下であることが好ましい。
本発明の透明導電膜基板は、C光源で測定したヘイズ率が50%以上あることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
本発明により提供される透明導電膜基板は、薄膜太陽電池の基板として有効であり、特にアモルファスシリコンと微結晶シリコンを一つの基板上に作成するタンデム型のシリコン太陽電池用の基板として有効に用いることができる。
以下に、本発明の透明導電膜基板の効果について、CVD法を用いて作成した透明導電膜基板を例として説明するが、本発明の透明導電膜基板は、以下のものに限定されない。
(実施例1)
(a)アルカリバリア層の形成
1.1mm厚のソーダライムガラス基板をガラス基板18として用い、このガラス基板18に、アルカリバリア層として酸化チタン(TiO2)膜(膜厚10nm)と、シリカ(SiO2)膜(膜厚30nm)と、を順次積層した多層膜を形成した。
具体的には、ソーダライムガラス基板を、ベルトコンベア炉において500℃に加熱し、このガラス基板上に、あらかじめ110℃で気化したチタンテトライソプロポキシド(TTIP)を、希釈窒素ガスとともに吹き込んでTiO2膜を形成し、次に、0.8mol%のシランガスを含む窒素ガスと酸素ガスを同時に吹き付けてSiO2膜を形成した。
(b)第一酸化物構造層の形成
次に、このアルカリバリア層付きガラス基板に第一酸化物構造層12を形成した。ここでは、第一酸化物構造層12の形成方法として、最初に凸部の基点となる核を作成し、次に製造条件を変えて凸部を製造する2段式の方法で行った。第一酸化物構造層12の形成には、上記と同様のベルトコンベア炉においてアルカリバリア層付きガラス基板を540℃に加熱し、キャリアガスとして窒素ガスを用い、第一酸化物構造層12を形成する原料ガスとして、四塩化錫、水および塩化水素を用いた。該キャリアガスと該原料ガスとの合計ガス量に対する四塩化錫の濃度を0.1体積%として、5nmの質量膜厚の核をシリカ膜上に形成した。この後、該合計ガス量における四塩化錫の濃度を0.9体積%として、凸部の平均高さが620nmの離散した凸部を有する第一酸化物構造層12を形成した。このとき、レーザー顕微鏡を用いて第一酸化物構造層12を測定すると、平均0.4個/μm2の密度で、酸化錫からなる凸部が離散して形成された。
なお、ここでは、質量膜厚とは、酸化錫からなる凸部の質量から体積を計算して、成膜面積に均等に膜が付いたと仮定した時の膜厚である。また、凸部の平均高さは原子間力顕微鏡(AFM)で以下のように測定する。測定は、透明導電膜付基板上で実際に太陽電池として利用される領域を用いて行う。その領域において、20cm角の範囲内で、互いに7cm以上離れた任意の6部位を5mm角に切り出してAFMの測定を行う。この6部位の測定において、各部位から1点ずつPV(peak to valley)を測定し、これら6点の平均値をアルカリバリア層付きガラス基板の面からの高さとする。
なおAFMの測定条件を次に示す。
装置:SIIナノテクノロジー社製
モード:ダンピングモード(DFM)
カンチレバーのばね定数:40N/m
走査エリア:10μm角
走査周波数:0.3Hz
Xデータ数/Yデータ数:256/256
(c)第二酸化物層、導電性酸化物層の形成
第一酸化物構造層12が形成されたガラス基板をベルトコンベア炉において550℃に加熱し、キャリアガスとして窒素ガスを用い、錫の酸化物を形成する原料ガスとして四塩化錫、シリカを形成する原料ガスとして三塩化シランを用い、これらのガスと窒素ガスと混合し、水蒸気とともに第一酸化物構造層12が形成されたガラス基板に吹き付け、錫とシリコンの混合酸化物からなる膜(第二酸化物層14)を形成した。同時に、アルカリバリア層のみを形成したガラス基板に第二酸化物層14を同じ組成の物性評価用膜を形成し、この物性評価用膜の表面組成をX線光電子分光法(XPS)で分析したところ、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.28であった。なお、この方法では、物性評価用膜をArスパッタリングでエッチングしながら膜全体のSi、Snの量を計測し、膜界面の組成が傾斜する部分を除いて、Si、Snの積分値を原子換算し比較したものである。
また、物性評価用膜の膜厚を、触針式膜厚計で測定したところ5nmであった。すなわち、第二酸化物層14の厚さは5nmであった。また、物性評価用膜付きガラス基板の波長550nmにおける吸収率を測定したところ、0.84%であった。ここで、波長が550nmの場合、ガラス単体、アルカリバリア層単体での吸収は無視できるほど小さいため、第二酸化物層14の吸収率は0.84%であると考える。
第一酸化物構造層12、第二酸化物層14が形成されたガラス基板を540℃に加熱し、四塩化錫、水、フッ化水素を同時に吹き付け、常圧CVD法を用いることで、導電性酸化物層16として、フッ素(F)含有酸化錫(SnO2)膜(膜厚800nm)を形成し透明導電膜基板10を得た。
作製した透明導電膜基板10のC光源透過率とヘイズ率をヘイズメーターで測定したところ、それぞれ、80%、86%であった。
(d)太陽電池の作製
作製した透明導電膜基板10を用いた太陽電池の光電変換の性能を調べるため、透明導電膜基板10の一部を切り出し、その上にpin型のアモルファスシリコン膜を形成した。p層としてa−SiC:B層(膜厚20nm)、i層としてa−Si:H層(膜厚200nm)、n層としてa−Si:P層(膜厚40nm)を、それぞれSiH4/CH4/H2/B26、SiH4/H2、及びSiH4/H2/PH3を原料として用いて、この順にプラズマCVD法により形成した。この後、GaをドープしたZnOを20nm形成した後、Al電極をスパッタリング法により形成し太陽電池セルを作製した。太陽電池部分の大きさは5mm角である。
(e)太陽電池の特性評価方法
作製した太陽電池の短絡電流、開放端電圧、及び曲線因子を測定し、光電変換効率を求めた。測定はソーラーシュミレータ(オプトリサーチ社製CE−24型ソーラーシュミレータ)を用い、IV測定時におけるソーラーシミュレータの照射光スペクトルをAM(エアマス)1.5、光強度を100(mW/cm2)とした。また、太陽電池の電極には面積が6.25(mm2)のものを用いた。
観測された太陽電池の効率を後述する比較例2の光電変換効率で規格化した光電変換率の相対値を以下の表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に第一酸化物構造層12を作製し、第二酸化物層14を作製する際の原料濃度を調整し膜厚を変更した以外は、実施例1と同様に導電性酸化物層16の成膜まで行って透明導電膜基板10を作製した。この透明導電膜基板10のC光源透過率とヘイズ率はそれぞれ、78%、85%であった。
実施例1と同様に、アルカリバリア層のみを形成した物性評価用ガラス基板に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物膜を形成し、膜厚と波長550nmにおける吸収率を測定した。その結果、第二酸化物層14の厚さは25nmであった。また、第二酸化物層14での波長550nmにおける吸収率は、0.98%であった。
この基板を用いて実施例1と同様の方法で太陽電池セルを作製し、上記方法で光電変換率を測定し、比較例2の光電変換効率で規格化した光電変換率の相対値を表1に示す。
(比較例2)
第二酸化物層14を作成する際の原料ガスの混合比率と濃度を変えて、実施例1とは、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が異なる組成を持つ第二酸化物層を作製した以外は、実施例1と同様に導電性酸化物層16の成膜まで行って透明導電膜基板10を作製した。この透明導電膜基板10のC光源透過率とヘイズ率はそれぞれ、77%、85%であった。
また、実施例1と同様に、アルカリバリア層のみを形成した物性評価用ガラス基板に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物膜を形成し、この膜の表面組成をXPSで分析したところ、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.38であった。また、この混合酸化物膜の膜厚と波長550nmにおける吸収率を測定した。結果は、膜厚は45nm、波長550nmにおける吸収率は1.00%であった。
この基板を用いて実施例1と同様の方法で太陽電池セルを作製し、上記方法で光電変換効率を測定し、測定された光電変換効率を基準として他の実施例、比較例の評価を行った。
(比較例3)
第二酸化物層14を作成する際の原料ガスの混合比率と濃度を変えて、実施例1とは、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が異なる組成を持つ第二酸化物層を作製した以外は、実施例1と同様に導電性酸化物層16の成膜まで行って透明導電膜基板10を作製した。
また、実施例1と同様に、アルカリバリア層のみを形成した物性評価用ガラス基板に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物膜を形成し、この膜の表面組成をXPSで分析したところ、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.45であった。また、この混合酸化物膜の膜厚と波長550nmにおける吸収率を測定した。結果は、膜厚は20nm、波長550nmにおける吸収率は0.99%であった。
(比較例4)
第二酸化物層14を作成する際の原料ガスの混合比率と濃度を変えて、実施例1とは、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が異なる組成を持つ第二酸化物層を作製した以外は、実施例1と同様に導電性酸化物層16の成膜まで行って透明導電膜基板10を作製した。
また、実施例1と同様に、アルカリバリア層のみを形成した物性評価用ガラス基板に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物膜を形成し、この膜の表面組成をXPSで分析したところ、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.42であった。また、この混合酸化物膜の膜厚と波長550nmにおける吸収率を測定した。結果は、膜厚は40nm、波長550nmにおける吸収率は1.06%であった。
(比較例5)
第二酸化物層14を作成する際の原料ガスの混合比率と濃度を変えて、実施例1とは、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が異なる組成を持つ第二酸化物層を作製した以外は、実施例1と同様に導電性酸化物層16の成膜まで行って透明導電膜基板10を作製した。
また、実施例1と同様に、アルカリバリア層のみを形成した物性評価用ガラス基板に、同じ成膜条件で錫とシリコンの混合酸化物膜を形成し、この膜の表面組成をXPSで分析したところ、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))は0.42であった。また、この混合酸化物膜の膜厚と波長550nmにおける吸収率を測定した。結果は、膜厚は75nm、波長550nmにおける吸収率は1.11であった。
Figure 2012114205
実施例1は、比較例1〜5と比べて第二酸化物層での光線の吸収(波長550nmにおける吸収率)が減少していることが表1により確認できる。実施例は、比較例2と比べ光電変換効率は1.02倍に上昇しており、第二酸化物層での光線の吸収の減少による効果が確認できる。
10 透明導電膜基板
12 第一酸化物構造層
14 第二酸化物層
16 導電性酸化物層
18 ガラス基板

Claims (6)

  1. ガラス基板上に第一酸化物構造層、第二酸化物層及び導電性酸化物層がその順に形成された光電変換デバイス用透明導電膜基板であって、
    該第一酸化物構造層には、前記ガラス基板の面から突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の前記ガラス基板の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、
    前記第二酸化物層は、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物で構成され、該混合酸化物における、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3であり、
    前記第二酸化物層の膜厚は2〜10nmであり、
    前記導電性酸化物層は、フッ素(F)を含有した酸化錫(SnO2)で構成されていることを特徴とする透明導電膜基板。
  2. 前記第二酸化物層での波長550nmにおける吸収率が0.95%以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜基板。
  3. C光源で測定したヘイズ率が50%以上である請求項1または2に記載の透明導電膜基板。
  4. C光源で測定したヘイズ率が85%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電膜基板。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電膜基板を用いて作製されたことを特徴とする太陽電池。
  6. ガラス基板上に、第一酸化物構造層、第二酸化物層及び導電性酸化物層をその順に形成して光電変換デバイス用透明導電膜基板を製造する光電変換デバイス用透明導電膜基板の製造方法であって、
    前記第一酸化物構造層には、前記ガラス基板の面から突出した複数の凸部が設けられ、前記凸部の前記ガラス基板の面からの高さは200nm以上2000nm以下であり、
    前記第二酸化物層は、シリコン(Si)と錫(Sn)との混合酸化物で構成され、該混合酸化物における、シリコン(Si)と錫(Sn)との合計に対する錫(Sn)のモル比(Sn/(Si+Sn))が0.05〜0.3であり、
    前記第二酸化物層の膜厚は2〜10nmであり、
    前記導電性酸化物層は、フッ素(F)を含有した酸化錫(SnO2)で構成されていることを特徴とする透明導電膜基板の製造方法。
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