JP2012082868A - トルクコンバータのタービン速度推定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン2と自動変速機4の前後進切替機構44との間に介装されたトルクコンバータ6のタービン速度を推定する装置であって、湿式多板クラッチ装置52を断接するときの作動油の油圧Pを推定する油圧推定手段12と、この油圧推定手段12により推定された作動油の油圧Pに基づいて湿式多板クラッチ装置52の係合トルクTCLTを推定する係合トルク推定手段14と、この係合トルク推定手段14により推定された係合トルクTCLTと、クランク角センサ20aにより検出されたエンジン2の回転速度Neとに基づいて、トルクコンバータ6のタービン回転速度Ntを算出するタービン回転速度演算算手段16と、を備える。
【選択図】図1
Description
このようなトルコンを有する自動車では,運転者のシフトレバー操作によってニュートラル状態であるP又はNレンジとDレンジやRレンジ等の走行レンジとを切り替える機会がある。このような局面では、トルコン反力によるエンジン負荷(以下トルコン負荷)が過渡的に変化するため、エンジン回転速度の変動が発生するおそれがある。
また、特許文献2には、走行中にあってはタービン軸とプライマリ軸が同一回転速度とみなせることを利用し、プライマリ回転速度Npもしくはセカンダリ回転速度Nsおよびプライマリ−セカンダリ間減速比から計算することにより、タービン回転速度Ntを検出するセンサを省略できるようにした技術が提案されている。
本発明は、かかる課題に鑑みて創案されたもので、自動変速機内の前後進切替機構の作動状況によりタービン回転速度Ntに変化が生じる場合であっても、タービン回転速度センサに頼ることなくタービン回転速度を推定することができるようにして、エンジンがトルコンから受ける負荷トルクの計算を精度よく行なってエンジン回転変動の防止等車両のドライバビリティ向上を実現することができるようにした、トルクコンバータのタービン回転速度推定装置を提供することを目的とする。
前記前後進切替機構から前記自動変速機の変速機構に入力される変速機入力回転速度Npを検出する変速機入力回転速度検出手段を備え、前記粘性抵抗トルクTDRGは、前回得られたタービン回転速度Nt(n−1)と前記変速機入力回転速度検出手段により検出された変速機入力回転速度Npとの差と、前記油圧式摩擦係合要素の係合面の数及び有効半径(r1,r2)と、作動油の粘性抵抗係数μATFとに基づいて算出し、前記接触摩擦トルクTFRGは、前記作動油の油圧P(n)と、該油圧P(n)が作用する前記油圧式摩擦係合要素の係合面の有効面積nS,有効半径[(r1+r2)/2]及び摩擦係数μFRCとに基づいて算出することが好ましい。
図1〜図10は本発明の実施形態を説明するもので、図1はエンジン,変速機,トルクコンバータ及びタービン回転速度推定装置を示す構成図、図2はNDクラッチの構成を示す要部断面図、図3はその容量係数の特性図、図4はトルク比の特性図、図5,6はNDクラッチの作動モデル図、図7はNDクラッチのピストン動作の説明図、図8は模擬油圧の特性図、図9,10は推定手順を説明するフローチャートである。
まず、本タービン回転速度推定装置の推定対象であるトルクコンバータを有する自動車の駆動系の要部構成を説明する。
トルコン6は、トルコンケーシング62内に、エンジン2の出力軸22に結合されたインペラ64と、自動変速機4の入力軸42に結合されたタービンライナ(単に、タービンともいう)66とが対向して装備され、インペラ64とタービンライナ66との間には、図示しない粘性流体が介在し、この粘性流体を介してインペラ64とタービンライナ66との間の動力伝達が行なわれる。
また、エンジン2及び変速機4を制御する電子制御ユニット(ECU)10が備えられている。このECU10は、入出力装置、記憶装置(ROM,RAM,不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えている。
前後進切替機構44は、詳細は図示しないが、例えば、サンギアと、リングギアと、サンギアと噛み合う第1のピニオンギアと、リングギアと噛み合う第2のピニオンギアと、第1,第2のピニオンギアを枢支するキャリアとからなるダブルピニオン型遊星歯車機構によって構成することができる。この場合、サンギアは入力軸42に連結され、キャリアはプライマリ軸46Aに連結されると共にピニオンギア,リングギア及びリバースブレーキを介してケーシング40に連結される。
図2に示すように、この湿式多板クラッチ装置52は、第1回転要素44aと一体に回転するように装備されクラッチプレート保持部52dを備えたシリンダ(ここでは、環状シリンダ)52aと、このシリンダ52a内に軸方向に移動可能に装備されたピストン(ここでは、環状ピストン)52bと、シリンダ52aの内壁とピストン52bの受圧面とに囲繞された油圧室52cと、第2回転要素44bと一体に回転するクラッチディスク保持部材52eとを備え、油圧室52cには作動油供給口52fが設けられている。
本タービン速度推定装置は、上記のような駆動系を有する車両(自動車)において、前後進切替機構44の断接切替時のトルコン6のタービン66の回転速度を推定する装置であって、ECU10内の機能要素として構成される。
以下、油圧推定手段12,係合トルク推定手段14,タービン回転速度算出手段16によるタービン回転速度の推定について説明する。
NDクラッチの係合途中でのトルコン6のタービン66の回転速度(タービン回転速度)Ntの推定について具体的に説明する。
なお、タービン回転速度Ntは、NDクラッチの係合に至るまでは式(1)に従い、NDクラッチの係合完了後は式(1)によらずNt=Npとみなすことができる。
この推定は、NDクラッチピストン作用油圧PはNDクラッチ板間隙h(n)と相関関係があり、NDクラッチ板間隙h(n)はシリンダ内のATFの体積Q(n)と相関関係があり、シリンダ内のATFの体積Q(n)はシリンダ内へのATFの入出量を積算することで求めることができ、シリンダ内へのATFの入出量はソレノイド弁(作動油供給弁)58の変位x(n)から求めることができる、という点に着目して行なっている。
例えば、ソレノイド弁を駆動する電流I(n)は、式(6.1)に示すように、電流の応答ゲインk1に応じた変化に加えて、クラッチ係合指令[O(n)=1]があると1次フィルタゲインk2に応じた一次遅れで増加し、クラッチ開放指令[O(n)=1]があると1次フィルタゲインk2に応じた一次遅れで減少する。また、電流I(n)による磁界H(n)は、式(6.2)に示すように、電流I(n)を電流に対する磁界の応答ゲインk3で処理することで得られる。ソレノイド弁に加わるリターンスプリング52iの復元力f(n)は、式(6.3)に示すように、磁界H(n)を磁界に対する力の応答ゲインk4で処理することで得られる磁力k4H(n)と、リターンスプリング52iの変位(=ソレノイド弁変位)の前回値x(n−1)にバネ定数k5を乗算することで得られるバネ力k5x(n−1)との差として得られる。ソレノイド弁変位速度v(n)は、式(6.4)に示すように、力f(n)を時間積算することにより得られ、ソレノイド変位x(n)は、式(6.5)に示すように、さらにこの速度v(n)を時間積算することにより得ることができる。
<作用(フローチャート)>
本発明の一実施形態にかかるトルクコンバータのタービン速度推定装置は、上述のように構成されているので、例えば、図9,10のフローチャートに示すように、タービン回転速度を推定することができる。なお、図9,10のフローチャートは、エンジンの始動前等のエンジン停止時から、予め設定された所定の演算周期で実行される。また、推定演算にかかる各パラメータの初期値については予め設定されている。
接触摩擦項TFRGの演算(ステップa70)は、図10のサブフローチャートに示すように行なう。つまり、まず、シフトレバー位置を読み込む(ステップb10)。このシフトレバー位置、即ち、シフトレバー位置が何れのシフトレンジにあるかによってクラッチ係合開放指令[指令値O(n)]を把握できる。このシフトレバー位置から得られるクラッチ係合開放指令値O(n)を判定し(ステップb20)、クラッチ係合開放指令値O(n)が走行レンジ、即ち、NDクラッチを開放させるべき指令であれば、クラッチ係合開放指令値O(n)を0とし(ステップb30)、NDクラッチを係合させるべき指令であれば、クラッチ係合開放指令値O(n)を1とする(ステップb40)。
シリンダ内に存在するATF体積Q(n)によりピストンはQ(n)/Sfだけ変位することから、前記の式(8)に示すように、NDクラッチ板間隙h(n)を演算する(ステップb120)。そして、クラッチ板間隙h(n)と油圧の挙動との関係から、前記の式(9)に示すように、模擬油圧P(n)を演算する(ステップb130)。
再び、図9を参照すると、このような演算により、NDクラッチ係合トルクTCLTの粘性抵抗項TDRG(ステップa60)及びNDクラッチ係合トルクTCLTの接触摩擦項TFRG(ステップa70)が得られると、粘性抵抗項TDRGと接触摩擦項TFRGとを加算してNDクラッチ係合トルクTCLTを演算する(ステップa80)。
こうして得られたNDクラッチ係合トルクTCLT,トルコントルク比τ,トルコン容量C,及びステップa30により検出されたエンジン回転速度Neを、前記の式(1´)に代入して、タービン回転速度の時間変化率dNt/dtを演算し(ステップa130)、前記の式(2)に示すように、タービン回転速度の時間変化率dNt/dtを各演算周期毎に積算することにより、タービン回転速度推定値Nt(n)を演算する(ステップa140)。
このようにしてNDクラッチが係合状態と解放状態との間で移動してタービン回転速度Ntに変化が生じる場合であっても、タービン回転速度センサに頼ることなくタービン回転速度Nt(n)を推定することができる。
また、入力指令は運転者のシフトレバー操作に限られるものではない。つまり、停車時に運転者のシフトレバー操作によらず自動的にニュートラル状態に準ずる状態へ移行するような制御(いわゆるアイドルニュートラル制御)を行なう場合についても、NDクラッチは上記と同様に作動するので、この場合にもタービン回転速度Nt(n)を推定して、タービン回転速度Ntを利用してエンジン回転速度の挙動を安定させることが可能になる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態の一部を用いたり、適宜変更したりして実施することができる。
4 自動変速機
6 トルクコンバータ(トルコン)
10 電子制御ユニット(ECU)
12 油圧推定手段
14 係合トルク推定手段
16 タービン回転速度算出手段
20a クランク角センサ(エンジン回転速度検出手段)
20b プライマリ回転速度センサ(プライマリ回転速度検出手段)
40 自動変速機4のケーシング
42 自動変速機4の入力軸
44 前後進切替機構
44a,44b 前後進切替機構44の回転要素
46A プライマリ軸
46 プライマリプーリ
48A セカンダリ軸
48 セカンダリプーリ
50 ベルト
52 湿式多板クラッチ装置(NDクラッチ,油圧式摩擦係合要素)
52a シリンダ
52b ピストン
52c 油圧室
52d クラッチプレート保持部
52e クラッチディスク保持部材
52g クラッチプレート
52h クラッチディスク
52i リターンスプリング
54 出力軸
54a ギア対
56 油圧源(油圧ポンプ或いは作動油タンク)
58 作動油供給弁(ソレノイド弁、電磁弁)
62 トルコンケーシング
64 インペラ
66 タービンライナ(タービン)
Claims (6)
- 車両に装備されたエンジンと、油圧式摩擦係合要素の断接により前記車両の前後進及び動力の伝達・非伝達の切り替えをする前後進切替機構を有する自動変速機と、前記エンジンと前記自動変速機の前記前後進切替機構との間に介装されたトルクコンバータと、を備えた駆動系における、前記トルクコンバータのタービン速度を推定する装置であって、
前記エンジンの回転速度Neを検出するエンジン回転速度検出手段と、
前記油圧式摩擦係合要素を断接するときの作動油の油圧Pを推定する油圧推定手段と、
前記油圧推定手段により推定された前記作動油の油圧Pに基づいて前記油圧式摩擦係合要素の係合トルクTCLTを推定する係合トルク推定手段と、
前記係合トルク推定手段により推定された前記油圧式摩擦係合要素の係合トルクTCLTと、前記エンジン回転速度検出手段により検出された前記エンジンの回転速度Neとに基づいて、前記トルクコンバータのタービン回転速度Ntを算出するタービン回転速度演算手段と、を備える
ことを特徴とする、トルクコンバータのタービン速度推定装置。 - 前記油圧式摩擦係合要素は、電磁弁により油圧を制御されて断接するものであり、
前記油圧推定手段は、前記電磁弁のソレノイドの駆動電流値Iに基づいて前記電磁弁を通過する前記作動油の体積流量Qinを算出し、算出した該体積流量に基づいて前記油圧式摩擦係合要素の要素間の間隙hを算出し、算出した該要素間の間隙から前記作動油の油圧Pを推定する
ことを特徴とする、請求項1記載のトルクコンバータのタービン速度推定装置。 - 前記油圧推定手段は、
所定周期毎に前記電磁弁を通過する前記作動油の体積流量Qin(n)を算出し、この算出した体積流量Qin(n)を前記油圧式摩擦係合要素における流出流量Qoutにより補正した補正後体積流量に基づいて、前記油圧式摩擦係合要素の油圧室内の作動油体積Q(n)を算出し、この算出した油圧室内の作動油体積Q(n)に基づいて前記間隙h(n)を算出する
ことを特徴とする、請求項2記載のトルクコンバータのタービン速度推定装置。 - 前記油圧式摩擦係合要素は、前記電磁弁により油圧を制御されて移動するピストンによって断接するものであり、
前記油圧推定手段は、予め得られた前記油圧室内の作動油体積と前記ピストン位置との対応関係と、予め得られた前記ピストン位置と前記要素間の間隙との対応関係とを用いて、前記油圧室内の作動油体積Q(n)に基づいて前記間隙h(n)を算出する
ことを特徴とする、請求項1記載のトルクコンバータのタービン速度推定装置。 - 前記係合トルク推定手段は、
前記作動油の粘性抵抗に応じた粘性抵抗トルクTDRGと前記油圧式摩擦係合要素の接触摩擦に応じた接触摩擦トルクTFRGとの和として、前記係合トルクTCLTを算出する
ことを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項記載のトルクコンバータのタービン速度推定装置。 - 前記前後進切替機構から前記自動変速機の変速機構に入力される変速機入力回転速度Npを検出する変速機入力回転速度検出手段を備え、
前記粘性抵抗トルクTDRGは、前回得られたタービン回転速度Nt(n−1)と前記変速機入力回転速度検出手段により検出された変速機入力回転速度Npとの差と、前記油圧式摩擦係合要素の係合面の数及び有効半径(r1,r2)と、作動油の粘性抵抗係数μATFとに基づいて算出し、
前記接触摩擦トルクTFRGは、前記作動油の油圧P(n)と、該油圧P(n)が作用する前記油圧式摩擦係合要素の係合面の有効面積nS,有効半径[(r1+r2)/2]及び摩擦係数μFRCとに基づいて算出する
ことを特徴とする、請求項5記載のトルクコンバータのタービン速度推定装置。
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