JP2012078509A - 赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版及びその製造方法 - Google Patents

赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】現像ラチチュードが広く、且つ、耐刷性に優れた平版印刷版が得られる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、該ポジ型平版印刷版原版により得られた平版印刷版及びその製造方法を提供する。
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、該ポジ型平版印刷版原版により得られた平版印刷版及びその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版及びその製造方法に関する。
従来、種々の感光性組成物が、可視画像形成や平版印刷版材料として使用されている。特に、平版印刷における近年のレーザーの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー・半導体レーザーは高出力かつ小型の物が容易に入手できるようになり、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収剤等とを必須成分とする。この赤外線吸収剤等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働き、露光部(非画像部)では、発生した熱により赤外線吸収剤等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。しかしながら、このような赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版では、活性度の落ちた疲労現像液での処理性が低く、現像ラチチュードは十分なものではなかった。
このような、現像ラチチュードの問題を解決するために、非画像部をより容易に現像し得る記録層、即ち、アルカリ水溶液に対する溶解性がより良好な特性を有する材料からなる記録層を用いることが考えられる。しかし、このような記録層は、画像部領域においても化学的に弱くなり、通常印刷における耐久性、更には、現像液や印刷中に使用されるインキ洗浄溶剤、プレートクリーナー等によりダメージを受け易くなるなど、耐薬品性に劣るといった問題があった。このような問題を解決する目的で、記録層を重層化するという方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、記録層を重層化するという方法だけでは、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差(ディスクリミネーション;以下、「溶解ディスクリ」又は「溶解識別性」ともいう。)が未だ十分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすいという問題があり、特に、現像ラチチュード優れる材料が熱望されていた。
重層構造の記録層を有する平版印刷版原版において、現像ラチチュード、画像部領域における耐久性を向上させる技術として、上層に酸性水素原子を持つ置換基を有するポリウレタン樹脂を用いることが提案されているが(例えば、特許文献2参照。)、未だ充分ではなく、赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の更なる改良が待ち望まれていた。
一方、平版印刷版原版における記録層の塗布性の良化、画像部の疎水性向上などのため、記録層を構成する組成物にフッ素系の高分子化合物を含有させる技術が提案されている(例えば、特許文献3参照。)
特開平11−218914号公報 特開2007−17913号公報 特許第3856298号明細書
本発明の課題は、現像ラチチュードが広く、且つ耐刷性に優れた平版印刷版が得られる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、耐刷性に優れた平版印刷版及びその製造方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
<1> 親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<2> 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを、全モノマーユニット中に、5モル%〜95モル%含む共重合体である<1>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<3> 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に酸性基を有するモノマーユニットを含む共重合体である<1>又は<2>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<4> 前記側鎖に酸性基を有するモノマーユニットにおける酸性基が、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、又はイミド基である<3>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<5> 前記下層及び前記上層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む<1>〜<4>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<6> 前記下層が、前記水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体、及び、溶剤を含む塗布液を、前記支持体上に、塗布、乾燥して形成した層である<1>〜<5>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、下層形成用塗布液及び上層形成用塗布液を、この順に支持体上に逐次塗布により塗布する工程を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
<8> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を、赤外線により画像様に露光する露光工程と、露光後の前記ポジ型平版印刷版原版を、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の製造方法。
<9> <8>に記載の平版印刷版の製造方法により得られた平版印刷版。
本発明によれば、現像ラチチュードが広く、且つ耐刷性に優れた平版印刷版が得られる赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、耐刷性に優れた平版印刷版及びその製造方法を提供することができる。
[赤外線感光性平版印刷版原版]
本発明の赤外線感光性平版印刷版原版(以下、適宜「平版印刷版原版」と称する。)は、親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つ水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である。
本発明の平版印刷版原版は、更に、下塗層、バックコート層など、所望により設けられる他の層を有するものであってもよい。
本発明の平版印刷版原版は、上記の構成を有することにより、現像ラチチュードに優れ該平版印刷版原版により得られた平版印刷版は耐刷性に優れたものとなる。
本発明の平版印刷版原版において、現像ラチチュード及び耐刷性に優れることの要因となる特徴的な構成要素の一つは、記録層における下層が、該下層の全固形分に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有することである。
その作用機構は、未だ明確ではないが、次の如く推測している。
即ち、本発明において、下層に特定量含有されるフルオロ脂肪族基含有共重合体は、溶剤に対する溶解性が低く、また、下層における上層との界面付近に偏在しうる。このため、記録層を形成する際には、下層形成用塗布液と上層形成用塗布液との混合が抑制されて、形成された下層及び上層の層間混合が抑制される。また、重層構造の記録層を構成する下層及び上層における層間混合の抑制は、当該記録層に要求される機能を十全に発揮させうることから、本発明の平版印刷版原版は、現像時に溶解ディスクリがつきやすく、現像ラチチュードが広いものとなる。さらには、得られた平版印刷版を印刷に供した際においては、画像部に付与されたインクに含まれる溶剤が、上層を透過して支持体方向に浸透した場合であっても、下層における上層との界面付近にフルオロ脂肪族基含有共重合体が存在することにより、下層への溶剤の浸透が抑制されることから、記録層が支持体から剥がれることが抑制され、耐刷性についても向上する。
本発明の平版印刷版原版は、広く赤外線に感応して製版され、特に赤外線レーザー露光に適し、また、ポジ型の画像を与える平版印刷版原版である。
(記録層)
本発明の平版印刷版原版における記録層は、親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた重層構造の記録層である。
<下層>
本発明の平版印刷版原版における下層は、重層構造の記録層を構成する層のうち、支持体側に設けられ層であり、不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、該下層の全固形分に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する。該下層の上に、後述する上層が設けられる。
以下、下層が含有する各成分について説明する。
<<フルオロ脂肪族基含有共重合体>>
下層は、フルオロ脂肪族基含有共重合体を、該下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%含有する。
ここで、「下層の全固形分」とは、下層に含有されう成分のうち、溶剤を除いた全成分を意味する。
下層におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体の含有量は、該下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%であり、より好ましくは10質量%〜40質量%であり、更に好ましくは20質量%〜40質量%である。フルオロ脂肪族基含有共重合体の含有量が、下層の全固形分の質量に対して5質量%未満では、現像ラチチュードの向上が不充分となり、50質量%よりも多くなると、得られた平版印刷版の耐刷性が低下する。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットと、これとは異なる他のモノマーユニットとを含む共重合体である。
フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットは、フルオロ脂肪族基含有共重合体に含まれる全モノマーユニット中に、モル比で、5モル%〜95モル%含まれることが好ましく、10モル%〜80モル%含まれることがより好ましく、10モル%〜60モル%含まれることが更に好ましい。
フルオロ脂肪族基含有共重合体において、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニット、及び、他のモノマーユニットは、それぞれ、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
フルオロ脂肪族基含有共重合体において、「フルオロ脂肪族基」とは、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された脂肪族基を意味する。
フルオロ脂肪族基の例としては、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された、直鎖、分岐若しくは環状の、アルキル基、アルケニル基、等が挙げられる。
フルオロ脂肪族基としては、炭素原子に結合する水素原子の全部が、フッ素原子に置換されたものが特に好ましい。
フルオロ脂肪族基含有共重合体の重量平均分子量(Mw)としては、現像性及び耐刷性の観点から、2,000〜100,000の範囲が好ましい。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量である。
フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを構成するモノマーの好適な態様の一つは、下記一般式(a)で表されるモノマーである。
一般式(a)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子、又は−N(R2)−を表し、mは1以上6以下の整数を表し、Rfはフルオロアルキル基を表す。R2は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
一般式(a)中、Rfにおけるアルキル部分としては、炭素原子数1〜12(より好ましくは2〜10、更に好ましくは4〜8)のアルキル部分が挙げられる。
Rfにおけるアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖であることがより好ましい。
Rfは、当該部分を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されたフルオロアルキル基であってもよいし、炭素原子に結合する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。Rfとしては、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
は、水素原子又はメチル基を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基)を表し、水素原子がより好ましい。
Xとしては、酸素原子、イオウ原子、又は−N(R2)−を表し、酸素原子又は−N(R2)−がより好ましい。
mは1以上6以下の整数を表し、2〜4がより好ましい。
X及びRfを連結するアルキレン基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、等が挙げられる。
以下、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを構成しうるモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。


フルオロ脂肪族基含有共重合体において、他のモノマーユニットを構成しうるモノマーとしては、現像性の観点から、酸性基(酸性水素原子を含む官能基)を有するモノマーユニットが望ましい。
酸性基を有するモノマーユニットとしては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーユニットであることが好ましい。
酸性基を有するモノマーユニットを形成するためのモノマーとしては、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。該酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、下式で表される重合性モノマーが好ましく例示でき、これらのモノマーは混合物として用いてもよい。なお、下式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
これらの中でも、他のモノマーユニットとしては、耐刷性の観点から、スルホンアミド基、活性イミド基、又はフェノール性水酸基を有するモノマーユニットが好ましく、特に、スルホンアミド基を有するモノマーユニットが好ましい。
更に、フルオロ脂肪族基含有共重合体において、他のモノマーユニットを構成しうる他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる各化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。
2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。
これらの他の重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」のいずれをも含む表現である。
フルオロ脂肪族基含有共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、DIC(株)製のフッ素系界面活性剤メガファックシリーズ、等が挙げられる。
以下、フルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例(下記に示すポリマー1〜16)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ポリマー1〜16における共重合比は、モル比である。
以下、上記ポリマー6を例に、フルオロ脂肪族基含有共重合体の合成例を記載する。
(合成例1:ポリマー6の合成)
200mLの3つ口フラスコに、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド4.83g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc:和光純薬製)28.39gを秤取し、窒素雰囲気下70℃で1時間攪拌した。得られた溶液に、70℃攪拌下、DMAc83.50g、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド19.32g、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(ダイキン工業製)11.57g、アクリロニトリル(東京化成工業製)5.33g、V−601(和光純薬製)0.58gの溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を90℃に加熱し、V−601(和光純薬製)0.58gを添加した後、更に2時間加熱・攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却後、水5Lに注ぎ込むことにより得られた白色粉体を濾取し、ポリマー6を得た。得られた白色粉体がポリマー6であることは、GPC、NMR、IRより確認した。
ポリマー1〜16等の他のフルオロ脂肪族基含有共重合体についても、用いる原料モノマーを代える以外は、ポリマー6と同様にして合成することができる。
<<水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂>>
下層は、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂(以下、適宜「アルカリ可溶性樹脂」と略称する。)を含有する。
ここで、下層が含有する水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂が、「水不溶性」とであるとは、該樹脂の水に対する常温(25℃)での溶解度が、1質量%以下(より好ましくは0.1質量%以下)であることを意味し、「アルカリ水溶液に可溶性」とであるとは、該樹脂がpH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味し、「アルカリ水溶液に分散性」であるとは、該樹脂が、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液中において、一般にエマルジョン又はコロイダルディスパージョンと称される状態を呈することを意味する。
本発明の下層に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液に接触すると溶解又は分散する特性を有するものであれば特に制限はない。アルカリ可溶性樹脂としては、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。該アルカリ可溶性樹脂は、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、下式で表される重合性モノマーが好ましく例示でき、これらのモノマーは混合物として用いてもよい。なお、下式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。
下層に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記の重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の酸性基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
前記アルカリ可溶性樹脂に使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他の重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
本発明に用いることができるノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
下層が含有するアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
下層の全固形分に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、50質量%〜98質量%であることが好ましい。下層におけるアルカリ可溶性樹脂の含有量が50質量%以上であると記録層(感光層)の耐久性により優れ、また、98質量%以下であると、感度及び耐久性の両方に更に優れる。
<<赤外線吸収剤>>
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を下層に含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、赤外線を吸収し熱を発生する染料又は顔料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料は顔料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としての染料は、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外線又は近赤外線を発光するレーザーでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
そのような赤外線又は近赤外線を少なくとも吸収する染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、染料としては、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例としては、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外線吸収染料を挙げることができる。
赤外線吸収剤として特に好ましい染料は、以下に示すシアニン染料Aである。
また、赤外線吸収剤としての顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
カーボンブラックは、組成物中における分散性などが安定である限り、ASTMによる分類のほか、用途(例えば、カラー用、ゴム用、乾電池用など)の如何に拘らずいずれも使用可能である。カーボンブラックには、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラックなどが含まれる。なお、カーボンブラックなどの黒色着色剤は、分散を容易にするため、必要に応じて分散剤を用い、予めニトロセルロースやバインダーなどに分散させたカラーチップやカラーペーストとして使用することができ、このようなチップやペーストは市販品として容易に入手できる。
本発明においては、比較的低い比表面積及び比較的低いDBP吸収を有するカーボンブラックや比表面積の大きい微細化されたカーボンブラックまでを使用することも可能である。好適なカーボンブラックの例は、Printex(登録商標)U、Printex(登録商標)A、又はSpezialschwarz(登録商標)4(Degussaより)を含む。
下層における赤外線吸収剤の添加量としては、感度及び層の均一性及び耐久性の観点から、下層全固形分に対し、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜30質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜30質量%であることが特に好ましい。
<上層>
本発明の平版印刷版原版における上層は、重層構造の記録層を構成する層のうち、前記下層の支持体側とは反対側に設けられる層である。
<<水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂>>
上層は、不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン」と略称する。)を含有する。
上層が含有する特定ポリウレタン樹脂が、「水不溶性」とであるとは、該樹脂の水に対する常温(25℃)での溶解度が、1質量%以下(より好ましくは0.1質量%以下)であることを意味し、「アルカリ水溶液に可溶性」とであるとは、該樹脂がpH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味し、「アルカリ水溶液に分散性」であるとは、該樹脂が、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液中において、一般にエマルジョン又はコロイダルディスパージョンと称される状態を呈することを意味する。
特定ポリウレタンの好適な態様の一つとしては、酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタン樹脂が挙げられる。
また、特定ポリウレタン樹脂の他の好適な態様としては、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン樹脂が挙げられる。
<<酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタン樹脂>>
酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン(1)」と称する。)について説明する。
特定ポリウレタン(1)において、酸性水素原子とは、カルボキシル基、−SONH基、−SONHCOO−基、−CONHSO−基、−CONHSONH−基、−NHCONHSO−基等の酸性官能基が含む水素原子であり、特にカルボキシル基が含む水素原子であることが好ましい。
特定ポリウレタン(1)は、例えば、カルボキシ基を有するジオールと、必要に応じて他のジオールと、ジイソシアナートとを反応させる方法;ジオールと、カルボキシ基を有するジイソシアナートと、必要に応じて他のジイソシアナートとを反応させる方法;或いは、カルボキシ基を有するジオールと、必要に応じて他のジオールと、カルボキシ基を有するジイソシアナートと、必要に応じて他のジイソシアナートとを反応させる方法によって合成することができる。
カルボキシ基を有するジオールとしては、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸などが挙げられるが、特に、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸がイソシアネートとの反応性の点でより好ましい。
他のジオールとしては、ジメチロールプロパン、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。
カルボキシ基を有するジイソシアナートとしては、ダイマー酸ジイソシアナートなどが挙げられる。
他のジイソシアナートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソソアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアナート、水添キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートなどが挙げられる。
ジイソシアネート及びジオールのモル比は、0.7:1〜1.5:1が好ましく、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
特定ポリウレタン(1)は、感度及び耐刷性の観点から、その重量平均分子量が、2,000〜100,000の範囲であることが好ましい。
<<熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン樹脂>>
熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン(2)」と称する)について説明する。
一般に、高い耐久性を有する被膜を形成しうるポリマーは、現像液の浸透性が低くなる傾向にあり、現像液活性の影響を受けやすく、現像ラチチュードが不充分となるために、通常、被膜の強度、耐久性と、現像ラチチュードとは、トレードオフの関係となる。
これに対し、特定ポリウレタン(2)は、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性を有するために、未露光部では、ポリウレタン由来の高い膜強度を有し、露光部では熱によりポリウレタンのアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するため、アルカリ水溶液である現像液により速やかに除去される。
特定ポリウレタン(2)において、「熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性」を付与する手段には特に制限はないが、本発明においては、熱により露光領域が疎水性から親水性へと極性変換する基を側鎖に有しているポリウレタンを用いることができる。このような極性変換を生じうる官能基としては、熱により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、上層を構成する組成物中に所望により含有される酸発生剤から発生した酸により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、また、熱及び酸の双方により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよい。このような官能基を以下、適宜、熱/酸極性変換基と称する。
熱及び酸の少なくともいずれかにより疎水性から親水性へと極性変換する基としては、例えば、特開2002−309057公報の段落番号〔0053〕〜〔0090〕に記載されている3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、特開昭60−3625号公報に記載されているベンジルエステル基、特開昭63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同282648号、及び、同10−282670号等の各公報、或いは、欧州特許公開EP−0884547A1号明細書に記載されているアセタール基、ケタール基及びオルトカルボン酸エステル基、特開昭62−251743号公報に記載されている炭酸エステル基、特開昭62−209451号公報に記載されているオルト炭酸エステル基、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、及び、同56−17345号の各公報に記載されているC−O−C結合を有する基を挙げることができる。また、特開昭60−10247号公報に記載されているシリルエステル基、特開昭62−280842号公報に記載されているオルトケイ酸エステル基、特開昭60−37549号、及び、同60−121446号の各公報に記載のSi−O−C結合を有する基、特開昭62−222246号公報に記載されているSi−N結合を有する基を挙げることができる。さらに特開平10−282644号公報に記載のスルホン酸エステル基、特開昭62−280841号公報に記載されているオルトチタン酸エステル基、特開昭62−244038号公報に記載されているC−S結合を有する基を用いることができる。
これらの基の中では、感度、耐刷性の観点から、3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、ベンジルエステル基、アセタール基、ケタール基、オルトカルボン酸エステル基、炭酸エステル基、オルト炭酸エステル基、シリルエステル基、及び、スルホン酸エステル基が好ましく、更に保存安定性、製造適性の観点から、3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、アセタール基、ケタール基、及び、炭酸エステル基が好ましい。
上記熱及び酸の少なくともいずれか(以下、「熱/酸」と記載する)により疎水性から親水性へと極性変換する基として、熱/酸により分解して酸を発生する官能基が好ましい。
熱/酸により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である熱分解性基は、製造の容易さ及び熱分解性基の導入量を制御しうる観点から、ポリウレタンの側鎖に導入されることが、好ましい。
ここで酸基とは、pKaが13以下の基であり、現像性と耐刷性の観点から、pKaは−3から12が好ましく、0から11が更に好ましい。
熱分解性基の分解により発生する酸基としては、カルボン酸基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基であることが好ましく、カルボン酸基、又はフェノール性水酸基であることがより好ましい。
本発明に適用し得る熱により分解して酸基を発生可能な基としては、赤外レーザーの露光により発生する熱により分解して酸基を発生可能な基であれば限定されないが、カルボン酸基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などの酸基を保護基で保護した基を好ましく用いることができる。
分解してカルボン酸基となる熱分解性基である、保護基を有するカルボン酸基の例としては、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表される基が画像形成性と耐刷性の観点から好ましく挙げられる。
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に一価の炭化水素基を表す。
一般式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を表す。
一般式(III)中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を表す。
一般式(IV)中、R12〜R14は、それぞれ独立に、一価の炭化水素基を表す。
〜R14で示される基はさらに置換基を有していてもよい。RとR、RとR、RとR11は互いに結合して環構造を形成してもよい。
上記一般式(I)〜一般式(IV)において、一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基などが挙げられ、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が耐刷性と感度の観点から好ましい。
これら一価の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
〜Rとしては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチルが挙げられる。
〜Rとしては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロへキシル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシエチル基等が挙げられる。
〜R11としては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基(RとR11とが互いに結合して形成された環構造としてのフェニル基)等が挙げられる。
12〜R14としては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
分解してフェノール性水酸基となる熱分解性基である、保護基を有するフェノール性水酸基としては、下記一般式(V)〜(VII)で表される基が、画像形成性と耐刷性の観点から好ましい。
一般式(V)中、R〜Rは、それぞれ、前記一般式(II)におけるR〜Rと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(VI)中、R15は一価の炭化水素基を表す。
15としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
一般式(VII)中、Aは、O、S、又は、−N(R17)−を表し、R16は一価の炭化水素基を表す。ここで、R17は水素原子又は一価の炭化水素基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。Aは、好ましくは、Oであり、R16は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、アリル基等である。R17は好ましくは、メチル基である。
上記R15〜R17で示される基はさらに置換基を有していてもよい。
熱により分解してスルホン酸基となる、保護基を有するスルホン酸基としては、下記一般式(VIII)で表わされるスルホン酸エステル基、又は、特開平10−282644号公報等に記載のスルホン酸エステルが、画像形成と耐刷性の観点から好ましい。
一般式(VIII)中、R18は置換基を有していてもよい一価の炭化水素基を表す。
上記、一般式(VIII)において、一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基などが挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基が好ましく、なかでも、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が、感度と耐刷性の観点から好ましい。
18に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。R16は、好ましくは、シクロヘキシル基、又は、ベンジル基である。
特定ポリウレタン(2)が側鎖に有するこれら熱分解性基は、ポリマー中に1種のみ導入されてもよく、2種以上導入されていてもよい。また、互いに異なる熱分解性基を有する複数種のポリウレタン同士を混合して用いてもよい。
前記熱により分解して酸基を発生する官能基としては、例えば、下記一般式(2)〜一般式(4)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(2)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタールを構成する官能基を表す。
一般式(3)中、Rは、隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成する官能基を表す。
一般式(4)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基を表す。
ここで、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、tert−ブチルエステル、1,1−ジメチル−2−クロロエチルエステル、1,1−ジメチルエチルエステル、1−メチルシクロヘキシルエステル等が挙げられ、tert−ブチルエステルが好ましい。また、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタール構造を構成する官能基としては、1−エトキシエチルエステル、1−ブトキシエチルエステル、1−メトキシエトキシエチルエステル、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル、テトラヒドロフラン−2−イルエステル等が挙げられ、1−エトキシエチルエステル、1−ブトキシエチルエステル、テトラヒドロフラン−2−イルエステルが好ましい。
で示されるシリルエステル基としては、例えば、トリメチルシリルエステルが好ましい。
隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基としては、シクロヘキシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基等が挙げられ、なかでも、シクロヘキシル基が好ましい。また、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、前記一般式(2)のRにおいて説明した官能基を同様に挙げることができ、好ましい例も同様である。
特定ポリウレタン(2)に、熱及び酸の少なくともいずれかにより疎水性から親水性へと極性変換する基、好ましくは、既述の熱分解性基(既述のように、熱分解性基をふくむ、熱及び酸の少なくともいずれかにより極性変換する官能基を、適宜、「熱/酸極性変換基」と総称する)、を有する導入する方法としては、(a)熱極性変換基を有する原料モノマーを合成し、原料モノマーを用いてポリウレタンを合成する方法、(b)ポリウレタンを合成後に、熱/酸極性変換基を高分子反応によって導入する方法等が挙げられる。(a)及び(b)の方法について、具体例を挙げながら説明する。
(a)熱/酸極性変換基を有する原料モノマーを合成し、該原料モノマーを用いてポリウレタンを合成する方法
熱により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である酸分解性基、を有するジイソシアネート化合物及び熱/酸極性変換基を有するジオール化合物から選択される化合物を、ポリウレタンの原料モノマーとして用い、これらをポリウレタン化することによって、側鎖に熱/酸極性変換基を有するポリウレタンを得ることができる。
上記(a)熱/酸極性変換基を有するモノマーをポリウレタン化する方法では、モノマーの製造適性の観点から、ジオール化合物中に、熱/酸極性変換基を有していることが好ましい。このようなジオール化合物の具体例について、下記に詳述する。
熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンの原料として好ましいジオール化合物の具体的態様としては下記一般式(1)で表されるジオール化合物が挙げられる。
一般式(1)中、Lは、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意の2以上の原子を含んで構成される3価の連結基を表す。
A1は熱極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基、即ち、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、フェノール性水酸基から選択される酸基となる官能基であることが好ましく、画像形成性と耐刷性の観点から、カルボン酸基及びフェノール性水酸基となりうる官能基であることがさらに好ましい。最も好ましくは、RA1は、前述の一般式(I)〜一般式(VII)で表される基からなる群より選択される基を表す。
特定ポリウレタン(2)の合成に用いうるジオール化合物のさらに好ましい態様としては、下記一般式(5)及び下記一般式(6)で表されるジオール化合物から選択される化合物が挙げられる。
一般式(5)及び一般式(6)中、L及びLは、それぞれ独立に、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意の2以上の原子を含んで構成される2価の連結基を表し、X、及びXは、それぞれ独立に、−S−、−N(R29)−、−OC(=O)−N(R30)−、−N(R31)C(=O)O−、又は、−C(=O)−を表し、R19〜R31はそれぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、が挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
A1は熱/酸極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基を表し、その具体例は一般式(1)におけるRA1と同義であり、好ましい例も同様である。
分子内に熱/酸極性変換基を有するジオール化合物を製造する際に用いる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルグリコール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。
以下に、熱/酸極性変換基を側鎖に有する特定ポリウレタン(2)の原料として好ましいジオール化合物の具体例〔例示化合物(D−1)〜(VIII)−3〕を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。
上記の化合物群は一般的な合成方法で合成することが可能であり、合成方法は限定されない。以下、ジオール化合物〔例示化合物(I)−1〕について、その合成例を記載する。
〔合成例4:例示化合物(I)−1の合成〕
300mL3つ口フラスコにアクリル酸tert−ブチル(和光純薬製)128.17gを秤量し、室温にて攪拌しながら、チオグリセロール(和光純薬製)108.16gを30分かけて滴下した。滴下終了後、70℃にて5時間加熱・攪拌し、例示化合物(I)−1を236.33g得た。精製物が(I)−1であることは、NMR、IR、MSスペクトルから確認した。
得られた例示化合物(I)−1は、これ以上の精製はせず、次工程、即ち、特定ポリウレタンの合成工程にそのまま用いられる。
ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを用いて特定ポリウレタン(2)を製造する方法については、例えば、特開2003−177533号公報等に記載されている方法を挙げることができる。
特定ポリウレタン(2)を合成する際には、前記熱/酸極性変換基を有するジオール化合物を、ポリウレタン原料であるジオール化合物の少なくとも一部として使用する他は、一般的なポリウレタンの合成方法を適用すればよい。
分解性基を有するジオールをジオール成分の一部として、ジイソシアネート、別のジオール成分と反応させて、前記ポリウレタン樹脂を得ることが好ましい。
特定ポリウレタン(2)の合成に用いることができるポリイソシアネート化合物、及び、前記熱/酸極性変換基を有するポリール化合物以外のポリオール化合物(以下、他のポリオール化合物と称する)としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
特定ポリウレタン(2)の合成に用いうるポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物であることが好ましく、下記一般式(i)で表される化合物であることがより好ましい。
また、前記熱/酸極性変換基を有するポリール化合物以外の併用可能なポリオール化合物としては、ジオール化合物であることが好ましい。
本発明に係る特定ポリウレタンの合成に用いる他のポリオール化合物は、カルボキシル基を有するポリオール化合物を含むことが好ましく、カルボキシル基を有するジオール化合物を含むことがより好ましい。
カルボキシル基を有するジオール化合物としては、下記一般式(ii)又は一般式(iii)で表されるジオール化合物を好ましく挙げることができる。
特定ポリウレタン(2)が、既述の熱/酸極性変換基(好ましくは酸分解性基)に加え、カルボキシ基を有することが、現像性の観点から好ましい。但し、カルボキシル基の含有量が多すぎる場合、未露光部の耐久性が低下する可能性があるため、カルボキシル基の導入量は、特定ポリウレタン(2)の酸価が0.01mmol/g〜2.00mmol/gとなる範囲で含むことがより好ましい。より好ましくは、0.10mmol/g〜1.50mmol/gである。
一般式(i)中、Rは二価の連結基を表す。上記二価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基が好ましく挙げられる。また、Rはイソシアネート基と反応しない他の官能基を置換基として有していてもよい。イソシアネート基と反応しない他の官能基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基等が挙げられる。
一般式(ii)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基を表す。ここで、Rは置換基を有していてもよい。Rに導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等が挙げられる。
としては、水素原子、炭素数1〜8の無置換のアルキル基、又は、炭素数6〜15の無置換のアリール基が好ましく挙げられる。
一般式(ii)及び一般式(iii)中、R、R及びRはそれぞれ同一でも相異していてもよく、単結合又は二価の連結基を表す。上記二価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、R、R及びRは、例えば、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等から選択される如き置換基を有していてもよい。
、R及びRとしては、炭素数1〜20の無置換のアルキレン基、又は、炭素数6〜15の無置換のアリーレン基が好ましく挙げられ、炭素数1〜8の無置換のアルキレン基がより好ましく挙げられる。
一般式(iii)中、Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、炭素数6〜15の三価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。Arに導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
前記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環式ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのような芳香族環を有するものが耐刷性の観点より好ましい。
また、前記一般式(ii)又は一般式(iii)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。なかでも、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸が、イソシアネートとの反応性の観点から、より好ましい。
特定ポリウレタン(2)は、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。
特定ポリウレタン(2)を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を併用してもよい。
使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は、好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
上層が含有しうる特定ポリウレタン(2)の好ましい具体例(PU−1〜PU−68)を、その原料モノマーと使用したモル比及び得られた特定ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)により示すが、本発明はこれらに限定されないことは言うまでもない。
なお、下記の具体例において、各モノマー名の下に記載の数字は、使用した各モノマーのモル比を表す。
PU−1〜PU−67の各原料モノマーのうち、酸極性変換基を有するジオール化合物は前記例示化合物である。ポリイソシアネート化合物、及び、他のジオール化合物の詳細を以下に示す。
特定ポリウレタン(2)の分子量は、重量平均(ポリスチレン標準)で5,000〜800,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、20,000〜100,000であることが更に好ましい。
このときの分散度(Mw/Mn)は、1.0〜20.0であることが好ましく、1.5〜16.0であることがより好ましく、2.0〜10.0であることが更に好ましい。分子量が上記範囲であると、十分な効果が得られ、また、現像性に優れる。
以下に、特定ポリウレタン(2)である特定ポリウレタンPU−5の合成例を示す。
〔合成例5:特定ポリウレタンPU−5の合成〕
300mL3つ口フラスコに、合成例4で得られたジオール化合物〔例示化合物(I)−1〕を9.57質量部、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)9.66質量部、メチルエチルケトン70質量部を秤取し、室温にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.04質量部及びMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.20質量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13質量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。反応液を水2,000質量部にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−5)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
特定ポリウレタン(2)の具体例として前掲した他の特定ポリウレタンも、用いる原料モノマーを前掲の如く代える以外は、同様にして合成することができる。
(b)ポリウレタンを合成後に熱/酸極性変換基を高分子反応によって導入する方法
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基を側鎖に有するポリウレタンを合成し、得られた該ポリウレタン中の反応性基と反応する基及び場合に応じて前述した熱/酸極性変換基の両者を有する化合物と反応させることにより、熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンを得ることができる。
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基としては、カルボン酸基、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基等を挙げることができ、該ポリウレタン中の反応性基と反応する基としては、ビニルエーテル基、アミノ基、チオール基、等を挙げることができる。
以下、高分子反応により熱/酸極性変換基を導入する方法を用いた特定ポリウレタン(2)の合成について例を挙げて説明する。
〔合成例6:特定ポリウレタンPU−23の合成〕
300mLの3つ口フラスコに、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)15.42質量部、メチルエチルケトン173質量部を秤取し、室温(25℃)にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.13質量部及びMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.71質量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13質量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。その後、反応液中に、(+)−10−カンファースルホン酸(東京化成工業製)0.01質量部、ブチルビニルエーテル(東京化成工業製)4.14質量部を、室温下、30分かけて滴下し、30℃にて2時間反応を行った。反応液を炭酸水素ナトリウム10質量部、水2,000質量部からなる水溶液にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−23)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
また、上層に含まれる特定ポリウレタンの含有量は、上層の全固形分中、2.05質量%〜99.5質量%であることが好ましく、10.05質量%〜99.0質量%であることがより好ましく、20.05質量%〜90.0質量%であることが更に好ましい。これによって画像形成性と共に耐刷性が向上する。
ここで「上層の全固形分」とは、上層に含有されう成分のうち、溶剤を除いた全成分を意味する。
本発明の効果を損なわない限りにおいて、上層は、特定ポリウレタン以外の他のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。該他のアルカリ可溶性樹脂としては、リアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、等のアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
上層が他のアルカリ可溶性樹脂を含有する場合、その含有量は、上層の全固形分に対して、20質量%以下であることが好ましい。
上層には、さらに赤外線吸収剤、酸発生剤、酸増殖剤等を含有することが好ましい。以下に、上層に含むことが好ましい成分について説明する。
<<赤外線吸収剤>>
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を上層に含んでもよい。赤外線吸収剤を上層に含有することで、より感度に優れる。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料、顔料であれば特に制限はなく、下層に用いうる赤外線吸収剤として前記したものを同様に用いることができる。
特に好ましい染料は、前記シアニン染料Aである。
上層における赤外線吸収剤の含有量としては、感度、層の均一性及び耐久性の観点から、上層の全固形分に対し、0.01質量%〜50質量%であることが好ましく、0.1質量%〜30質量%であることがより好ましく、1.0質量%〜30質量%であることが特に好ましい。
<酸発生剤>
上層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4 -、PF6 -、ClO4 -などが好ましい。
本発明において酸発生剤として用いうるオニウム塩としては、下記一般式(x)〜一般式(xii)で表されるオニウム塩が挙げられる。
一般式(x)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオン、及び、ペルフルオロアルキルスルホン酸イオン等フッ素原子を有するスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン、及びペルフルオロアルキルスルホン酸である。
一般式(xi)中、Ar21は炭素原子数20個以下のアリール基を示す。Ar21は置換基を有していてもよい。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
一般式(xii)中、R31、R32及びR33は、それぞれ炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。これらは置換基を有していてもよい。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(x)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−6])、一般式(xi)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−2])、及び一般式(xii)で示されるオニウム塩([OS−1]〜[OS−4])の具体例を以下に挙げる。
また、一般式(x)〜一般式(xii)で表される化合物の別の例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0036〕〜〔0045〕において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
本発明に用いられる酸発生剤として好ましいオニウム塩の別の例として、下記一般式(xiii)で表されるアジニウム塩化合物が挙げられる。
一般式(xiii)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の置換基を表す。
一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
一般式(xiii)で表される化合物としては、一般式(xiii)で表される化合物における特定構造の骨格(カチオン部)が、R41を介して結合し、カチオン部が分子中に2個以上含まれる化合物(多量体型)も包含され、このような化合物も好適に用いられる。
41-はZ11-と同義の対イオンを表す。
上記一般式(xiii)で示されるアジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
本発明に用いうる酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG−1)〜(PAG−5)が挙げられる。
これらの酸発生剤を上層に含有させる場合、該酸発生剤は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸発生剤を上層に含有する場合の、好ましい含有量は、上層の全固形分に対し0.01質量%〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜40質量%、更に好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
〔酸増殖剤〕
上層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明における酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば、特開2001−66765号公報段落番号〔0056〕〜〔0067〕に記載される化合物を挙げることができる。なかでも、例示化合物(ADD−1)、(ADD−2)、(ADD−3)として記載された下記化合物を好適に用いることができる。
これらの酸増殖剤を上層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01〜20質量%,好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されるとともに、画像部の膜強度低下が抑制され、特定ポリウレタンに起因する優れた膜強度が維持される。
更に、本発明における上層中には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を併用してもよい。
<その他の添加剤>
下層及び上層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の他の添加剤を添加することができる。以下に挙げる添加剤は、下層のみに添加してもよいし、あるいは上層のみに添加してもよいし、上層及び下層の双方に添加してもよい。
<<現像促進剤>>
上層及び下層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
<<界面活性剤>>
上層及び下層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、例えば、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.05質量%〜2.0質量%が更に好ましい。
<<焼出し剤/着色剤>>
上層及び下層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。光酸放出剤としては、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドや、オキサゾール系化合物としてトリアジン系化合物とトリハロメチル化合物とが挙げられる。
着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の公知の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料が特に好ましく挙げられる。
これらの染料は、上層又は下層のそれぞれの全固形分に対し、0.01質量%〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1質量%〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
<<可塑剤>>
上層及び下層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、上層又は下層のそれぞれの全固形分に対し、0.5質量%〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0質量%〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
<<ワックス剤>>
上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
ワックス剤の添加量は、上層中に占める割合が上層の全固形分に対し、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。
<記録層の形成>
本発明の平版印刷版原版における記録層は、通常、下層又は上層に含有される前記の各成分を溶剤に溶解又は分散させて塗布液を調製し、該塗布液を適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独で使用、又は2種以上を併用して使用される。
なお、下層及び上層は、2つの層を分離して逐次塗布によって形成する。
具体的には、アルカリ可溶性樹脂、フルオロ脂肪族基含有共重合体、必要により添加される任意成分、及び、溶剤を含む下層用塗布液を調製し、該下層用塗布液を支持体上に、塗布、乾燥して下層を形成した後、特定ポリウレタン、必要により添加される任意成分、及び、溶剤を含む上層塗布液を調製し、該上層用塗布液を下層上に塗布、乾燥することにより、上層及び下層を形成することが好ましい。
上記のごとく下層を形成することで、上層の形成前に、下層における上層との界面近傍におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体の偏在が顕著となる。このため、上層を形成する際において、上層と下層との層間混合が効果的に抑制されることから、上層及び下層が明確に分離した記録層を形成することが可能になる。
更に、上層及び下層の形成においては、例えば、下層を構成する成分と、上層を構成する成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、又は、下層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去した後に上層を設ける方法などを併用してもよい
下層を構成する成分と、上層を構成する成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、下層を塗布した後、上層用塗布液を塗布する際に、下層を構成する成分のいずれもが不溶な溶剤系を用いる方法である。これにより、上層及び下層を、より明確に分離した塗膜にすることが可能になる。
次に、2層目(上層)を塗布後に、極めて速く溶剤を乾燥させる方法としては、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エアーを吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロール(加熱ロール)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギーを与えること、あるいはそれらを組み合わせる方法により達成できる。
支持体上に塗布される下層及び上層用各塗布液中の、溶剤を除いた前記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1〜50質量%であることが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、第2層である上層の塗布時に、第1層である下層へのダメージを防ぐため、第2層の塗布方法は、非接触式であることが好ましい。また、接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、第1層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが好ましい。
下層の乾燥後の固形分塗布量は、0.3g/m〜5.0g/mの範囲であることが好ましく、0.5g/m〜3.0g/mの範囲であることがより好ましい
上層の乾燥後の固形分塗布量は、0.05g/m〜2.0g/mの範囲であることが好ましく、0.1g/m〜1.0g/mの範囲であることがより好ましい。
また、上層と下層との塗布量の比(上層/下層)は、0.05〜1が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8の範囲である。
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、又は、プラスチックフィルム等が挙げられる。
中でも、本発明においては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。以下、このような表面処理について簡単に説明する。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
以上のように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であることが好ましい。陽極酸化皮膜の量は、1.0g/m以下であることが好ましい。1.0g/m以下であると、耐刷性に優れ、平版印刷版の非画像部に傷が付きにくく、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」を抑制することができる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。
本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号、同第4,689,272号の各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
<下塗層>
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に重層構造の記録層として、下層及び上層の2層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、並びに、トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
この下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤又はそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。また後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
下塗層の塗布量は乾燥後で、2mg/m〜200mg/mであることが好ましく、5mg/m〜100mg/mであることがより好ましい。乾燥後の塗布量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
(平版印刷版の製版方法)
本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液(現像液)を用いて現像する現像工程、をこの順で含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版は、本発明の平版印刷版の製版方法により得られた平版印刷版である。
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程を含むことが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましい。
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
<現像工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、現像液を用いて現像する現像工程を含むことが好ましい。
現像工程に使用される現像液(以下、「処理液」ともいう。)は、pH6〜13.5の水溶液が好ましく、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液がより好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩類が特に好ましく用いられる。
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
本発明においては、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステル、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物がより好ましい。
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、HLB値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
両性界面活性剤は、界面活性剤の分野においてよく知られているように、アニオン性部位とカチオン性部位とを同一分子内に持つ化合物であり、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤が含まれる。
現像液に用いることができる両性界面活性剤としては、下記式<1>で表される化合物及び下記式<2>で表される化合物が好ましい。
式<1>中、R8はアルキル基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R11はアルキレン基を表し、Aはカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを表す。
式<2>中、R18、R19及びR20はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ただし、R18、R19及びR20の全てが、水素原子であることはない。
前記式<1>において、R8、R9又はR10におけるアルキル基、及び、R11におけるアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<1>で表される化合物において、R8〜R11の炭素数の総和は、8〜25であることが好ましく、11〜21であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
また、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、界面活性剤の水系の現像液への溶解性を上げることも可能である。
前記式<2>において、R18、R19又はR20におけるアルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<2>で表される化合物において、R18〜R20の炭素数の総和は、8〜22であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
両性界面活性剤の総炭素数は、記録層に用いる材料、とりわけバインダーの性質により影響を受けることがある。親水度の高いバインダーの場合、総炭素数は比較的小さいものが好ましく、用いるバインダーの親水度の低い場合には、総炭素数が大きいものが好ましい傾向にある。
現像液に用いることができる両性界面活性剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤が更に好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
現像液をpH6〜13.5に保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜13.5の範囲であることが好ましい。
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全質量に対して、0.3〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%が特に好ましい。総量が0.3質量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20質量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。湿潤剤は、現像剤の全質量に対し、0.1〜5質量%の量で使用されることが好ましい。
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対して、0.01〜4質量%の範囲が好ましい。
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。キレート剤は現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量は、現像液の全質量に対して、0.001〜1.0質量%が好適である。
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系の化合物を使用することができ、HLB値が5以下の化合物であることが好ましい。シリコーン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等がいずれも使用できる。消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲が好適である。
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対して、0.01〜0.5質量%が好ましい。
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、ガソリン、若しくは、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、又は、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール等)、ケトン類(メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40質量%未満が好ましい。
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01〜0.5質量%が好ましい。
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体における腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20μm〜400μm、毛の長さは5mm〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30mm〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1m/sec〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。更に、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
以下、本発明を実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
[実施例1]
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、400C/dmの電気量で電化化学的な粗面化処理を行い、水洗した。次に、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い、水洗した。更に、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dmの条件下で、陽極酸化皮膜両が2.5g/m相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、ケイ酸ナトリウム1.0質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、親水性処理した支持体(a)を作製した。
この支持体(a)の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
(下塗り層の形成)
このようにして得られた支持体(a)上に、下記組成を有する下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥して下塗り層を設けた。下塗り層の乾燥塗布量は17mg/mであった。
<下塗り液>
・下記化合物 0.3g

・メタノール 100g
・水 1g
(記録層の形成)
下塗り層を有する支持体(a)に、下記組成の下層用塗布液1をバーコーターにて被覆重量が1.3g/mとなるように塗布し、130℃で40秒間乾燥した後に、35℃まで冷却した。
<下層用塗布液1>
・N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミド共重合体
(重量比:59/15/25、Mw:50,000) 3.44g
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(下記ポリマー1) 1.80g


・赤外線吸収剤:下記構造のシアニン染料A 0.94g


・クリスタルバイオレット(保土ヶ谷化学(株)製) 0.08g
・メチルエチルケトン 61.00g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 14.00g
・γ−ブチロラクトン 9.40g
・水 9.34g
更に、下層上に、下記組成の上層用塗布液1をバーコーターにて被覆重量が0.5g/mとなるように塗布し、135℃で40秒間乾燥後、ゆっくりと20℃から26℃まで冷却した。
<上層用塗布液1>
・下記により合成したポリウレタン(1)
(25%、3−ペンタノン溶液) 30.00g
・赤外線吸収剤:前記構造のシアニン染料A 0.15g
・エチルバイオレット 0.03g
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−176(DIC(株)製) 0.05g
・3−ペンタノン 62.40g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート 7.37g
<<ポリウレタン(1)の合成>>
濃縮器及び攪拌機を備えた容量500mlの丸底三首フラスコ内に、2.7gの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、14.5gのトルエン−2,4−ジイソシアネート、7.0gのネオペンチルグリコール、35.8gの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び、280gの3−ペンタノンを導入した。0.3gのジブチル錫ジドデカノエートを添加し、反応混合物を撹拌しながら80℃に加熱した。反応を80℃で6時間継続した。こうしてポリウレタン(1)を得た。ポリウレタン(1)のGPCによる重量平均分子量は24000であった。また、酸価は125であった。
以上のようにして、実施例1の平版印刷版原版を得た。
[実施例2〜18、比較例1〜8]
実施例1において用いた下層用塗布液1及び上層用塗布液1の組成を、下記表1又は表2に記載される組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜18、比較例1〜8の平版印刷版原版を作製した。
表1及び表2中に示されるポリマー1〜14は、フルオロ脂肪族基含有共重合体の具体例として前掲した化合物である。
(平版印刷版原版の製版及び評価)
得られた実施例1〜18、及び比較例1〜8の平版印刷版原版を用い、塗布面状、現像ラチチュード、及び耐刷性について評価した。評価結果を表3に示した。
1.塗布面状の評価
実施例及び比較例の各平版印刷版原版について、記録層の塗布面面状を目視で観察した。面状評価は、1平方メートルあたりのピンホール発生個数で表した。ピンホール発生個数が少ないほど面状に優れるものと評価する。結果を下記表3に示す。
2.現像ラチチュードの評価
実施例及び比較例の平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにて120mJ/cmの割合で露光した。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度を変化させたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像した。得られた版について、レーザー露光領域の現像性と画像領域の状態を評価した。
現像ラチチュードは良好な画像特性を示す電導度の範囲によって評価する。範囲が広い方が、現像ラチチュードに優れるものと評価する。なお、現像液の最適な電導度は現像ラチチュード幅の中央である。
結果を下記表3に示す。
3.耐刷性の評価
実施例及び比較例の各平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにて120mJ/cmの割合で露光した。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像した。得られた版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて連続して印刷した。
この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。枚数が多いほど耐刷性に優れるものと評価する。
結果を下記表3に示す。
表3に示されるように、実施例の平版印刷版原版は、比較例の平版印刷版原版との対比において、現像ラチチュードが広く、且つ、耐刷性に優れた平版印刷版が得られていることが分る。また、実施例の平版印刷版原版は、塗布面状にも優れていることが分る。

Claims (9)

  1. 親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  2. 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを、全モノマーユニット中に、5モル%〜95モル%含む共重合体である請求項1に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  3. 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に酸性基を有するモノマーユニットを含む共重合体である請求項1又は請求項2に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  4. 前記側鎖に酸性基を有するモノマーユニットにおける酸性基が、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、又は活性イミド基である請求項3に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  5. 前記下層及び前記上層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  6. 前記下層が、前記水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体、及び、溶剤を含む塗布液を、前記支持体上に、塗布、乾燥して形成した層である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、下層形成用塗布液及び上層形成用塗布液を、この順に支持体上に逐次塗布により塗布する工程を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を、赤外線により画像様に露光する露光工程と、
    露光後の前記ポジ型平版印刷版原版を、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の製造方法。
  9. 請求項8に記載の平版印刷版の製造方法により得られた平版印刷版。
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