JP2012078509A - 赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、平版印刷版及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版及びその製造方法、並びに、該ポジ型平版印刷版原版により得られた平版印刷版及びその製造方法。
【選択図】なし
Description
<1> 親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<2> 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを、全モノマーユニット中に、5モル%〜95モル%含む共重合体である<1>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<3> 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に酸性基を有するモノマーユニットを含む共重合体である<1>又は<2>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<4> 前記側鎖に酸性基を有するモノマーユニットにおける酸性基が、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、又はイミド基である<3>に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<5> 前記下層及び前記上層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む<1>〜<4>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<6> 前記下層が、前記水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体、及び、溶剤を含む塗布液を、前記支持体上に、塗布、乾燥して形成した層である<1>〜<5>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、下層形成用塗布液及び上層形成用塗布液を、この順に支持体上に逐次塗布により塗布する工程を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
<8> <1>〜<6>のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を、赤外線により画像様に露光する露光工程と、露光後の前記ポジ型平版印刷版原版を、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の製造方法。
<9> <8>に記載の平版印刷版の製造方法により得られた平版印刷版。
本発明の赤外線感光性平版印刷版原版(以下、適宜「平版印刷版原版」と称する。)は、親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つ水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である。
本発明の平版印刷版原版は、更に、下塗層、バックコート層など、所望により設けられる他の層を有するものであってもよい。
本発明の平版印刷版原版は、上記の構成を有することにより、現像ラチチュードに優れ該平版印刷版原版により得られた平版印刷版は耐刷性に優れたものとなる。
その作用機構は、未だ明確ではないが、次の如く推測している。
即ち、本発明において、下層に特定量含有されるフルオロ脂肪族基含有共重合体は、溶剤に対する溶解性が低く、また、下層における上層との界面付近に偏在しうる。このため、記録層を形成する際には、下層形成用塗布液と上層形成用塗布液との混合が抑制されて、形成された下層及び上層の層間混合が抑制される。また、重層構造の記録層を構成する下層及び上層における層間混合の抑制は、当該記録層に要求される機能を十全に発揮させうることから、本発明の平版印刷版原版は、現像時に溶解ディスクリがつきやすく、現像ラチチュードが広いものとなる。さらには、得られた平版印刷版を印刷に供した際においては、画像部に付与されたインクに含まれる溶剤が、上層を透過して支持体方向に浸透した場合であっても、下層における上層との界面付近にフルオロ脂肪族基含有共重合体が存在することにより、下層への溶剤の浸透が抑制されることから、記録層が支持体から剥がれることが抑制され、耐刷性についても向上する。
本発明の平版印刷版原版における記録層は、親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた重層構造の記録層である。
本発明の平版印刷版原版における下層は、重層構造の記録層を構成する層のうち、支持体側に設けられ層であり、不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、該下層の全固形分に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する。該下層の上に、後述する上層が設けられる。
以下、下層が含有する各成分について説明する。
下層は、フルオロ脂肪族基含有共重合体を、該下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%含有する。
ここで、「下層の全固形分」とは、下層に含有されう成分のうち、溶剤を除いた全成分を意味する。
フルオロ脂肪族基の例としては、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換された、直鎖、分岐若しくは環状の、アルキル基、アルケニル基、等が挙げられる。
フルオロ脂肪族基としては、炭素原子に結合する水素原子の全部が、フッ素原子に置換されたものが特に好ましい。
Rfにおけるアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、環状のいずれであってもよく、直鎖又は分岐鎖であることがより好ましい。
Rfは、当該部分を構成する炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されたフルオロアルキル基であってもよいし、炭素原子に結合する水素原子の全部がフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基であってもよい。Rfとしては、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
X及びRfを連結するアルキレン基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、等が挙げられる。
酸性基を有するモノマーユニットとしては、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーユニットであることが好ましい。
酸性基を有するモノマーユニットを形成するためのモノマーとしては、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。該酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、下式で表される重合性モノマーが好ましく例示でき、これらのモノマーは混合物として用いてもよい。なお、下式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。
2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。
N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。
これらの他の重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
(合成例1:ポリマー6の合成)
200mLの3つ口フラスコに、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド4.83g、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc:和光純薬製)28.39gを秤取し、窒素雰囲気下70℃で1時間攪拌した。得られた溶液に、70℃攪拌下、DMAc83.50g、N−(4−スルファモイルフェニル)メタクリルアミド19.32g、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(ダイキン工業製)11.57g、アクリロニトリル(東京化成工業製)5.33g、V−601(和光純薬製)0.58gの溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液を90℃に加熱し、V−601(和光純薬製)0.58gを添加した後、更に2時間加熱・攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却後、水5Lに注ぎ込むことにより得られた白色粉体を濾取し、ポリマー6を得た。得られた白色粉体がポリマー6であることは、GPC、NMR、IRより確認した。
下層は、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂(以下、適宜「アルカリ可溶性樹脂」と略称する。)を含有する。
ここで、下層が含有する水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂が、「水不溶性」とであるとは、該樹脂の水に対する常温(25℃)での溶解度が、1質量%以下(より好ましくは0.1質量%以下)であることを意味し、「アルカリ水溶液に可溶性」とであるとは、該樹脂がpH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味し、「アルカリ水溶液に分散性」であるとは、該樹脂が、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液中において、一般にエマルジョン又はコロイダルディスパージョンと称される状態を呈することを意味する。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他の重合性モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
本発明に用いることができるノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を下層に含むことが好ましい。
赤外線吸収剤としては、赤外線を吸収し熱を発生する染料又は顔料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料は顔料を用いることができる。
また、染料として特に好ましい別の例としては、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外線吸収染料を挙げることができる。
本発明の平版印刷版原版における上層は、重層構造の記録層を構成する層のうち、前記下層の支持体側とは反対側に設けられる層である。
上層は、不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン」と略称する。)を含有する。
酸性水素原子を含む置換基を有するポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン(1)」と称する。)について説明する。
特定ポリウレタン(1)において、酸性水素原子とは、カルボキシル基、−SO2NH2基、−SO2NHCOO−基、−CONHSO2−基、−CONHSO2NH−基、−NHCONHSO2−基等の酸性官能基が含む水素原子であり、特にカルボキシル基が含む水素原子であることが好ましい。
熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン樹脂(以下、適宜「特定ポリウレタン(2)」と称する)について説明する。
一般に、高い耐久性を有する被膜を形成しうるポリマーは、現像液の浸透性が低くなる傾向にあり、現像液活性の影響を受けやすく、現像ラチチュードが不充分となるために、通常、被膜の強度、耐久性と、現像ラチチュードとは、トレードオフの関係となる。
これに対し、特定ポリウレタン(2)は、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性を有するために、未露光部では、ポリウレタン由来の高い膜強度を有し、露光部では熱によりポリウレタンのアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するため、アルカリ水溶液である現像液により速やかに除去される。
特定ポリウレタン(2)において、「熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性」を付与する手段には特に制限はないが、本発明においては、熱により露光領域が疎水性から親水性へと極性変換する基を側鎖に有しているポリウレタンを用いることができる。このような極性変換を生じうる官能基としては、熱により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、上層を構成する組成物中に所望により含有される酸発生剤から発生した酸により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、また、熱及び酸の双方により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよい。このような官能基を以下、適宜、熱/酸極性変換基と称する。
上記熱及び酸の少なくともいずれか(以下、「熱/酸」と記載する)により疎水性から親水性へと極性変換する基として、熱/酸により分解して酸を発生する官能基が好ましい。
熱/酸により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である熱分解性基は、製造の容易さ及び熱分解性基の導入量を制御しうる観点から、ポリウレタンの側鎖に導入されることが、好ましい。
熱分解性基の分解により発生する酸基としては、カルボン酸基、フェノール性水酸基、又はスルホン酸基であることが好ましく、カルボン酸基、又はフェノール性水酸基であることがより好ましい。
本発明に適用し得る熱により分解して酸基を発生可能な基としては、赤外レーザーの露光により発生する熱により分解して酸基を発生可能な基であれば限定されないが、カルボン酸基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などの酸基を保護基で保護した基を好ましく用いることができる。
一般式(II)中、R4〜R6は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を表す。
一般式(III)中、R7〜R11は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の炭化水素基を表す。
一般式(IV)中、R12〜R14は、それぞれ独立に、一価の炭化水素基を表す。
R1〜R14で示される基はさらに置換基を有していてもよい。R1とR2、R4とR6、R9とR11は互いに結合して環構造を形成してもよい。
これら一価の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
R1〜R3としては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチルが挙げられる。
R4〜R6としては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロへキシル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシエチル基等が挙げられる。
R7〜R11としては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基(R9とR11とが互いに結合して形成された環構造としてのフェニル基)等が挙げられる。
R12〜R14としては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
一般式(VI)中、R15は一価の炭化水素基を表す。
R15としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
一般式(VII)中、Aは、O、S、又は、−N(R17)−を表し、R16は一価の炭化水素基を表す。ここで、R17は水素原子又は一価の炭化水素基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。Aは、好ましくは、Oであり、R16は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、アリル基等である。R17は好ましくは、メチル基である。
上記R15〜R17で示される基はさらに置換基を有していてもよい。
熱により分解してスルホン酸基となる、保護基を有するスルホン酸基としては、下記一般式(VIII)で表わされるスルホン酸エステル基、又は、特開平10−282644号公報等に記載のスルホン酸エステルが、画像形成と耐刷性の観点から好ましい。
上記、一般式(VIII)において、一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基などが挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基が好ましく、なかでも、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が、感度と耐刷性の観点から好ましい。
R18に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。R16は、好ましくは、シクロヘキシル基、又は、ベンジル基である。
特定ポリウレタン(2)が側鎖に有するこれら熱分解性基は、ポリマー中に1種のみ導入されてもよく、2種以上導入されていてもよい。また、互いに異なる熱分解性基を有する複数種のポリウレタン同士を混合して用いてもよい。
一般式(3)中、RSは、隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成する官能基を表す。
一般式(4)中、R2は、隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基を表す。
ここで、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、tert−ブチルエステル、1,1−ジメチル−2−クロロエチルエステル、1,1−ジメチルエチルエステル、1−メチルシクロヘキシルエステル等が挙げられ、tert−ブチルエステルが好ましい。また、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタール構造を構成する官能基としては、1−エトキシエチルエステル、1−ブトキシエチルエステル、1−メトキシエトキシエチルエステル、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルエステル、テトラヒドロフラン−2−イルエステル等が挙げられ、1−エトキシエチルエステル、1−ブトキシエチルエステル、テトラヒドロフラン−2−イルエステルが好ましい。
RSで示されるシリルエステル基としては、例えば、トリメチルシリルエステルが好ましい。
隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基としては、シクロヘキシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基等が挙げられ、なかでも、シクロヘキシル基が好ましい。また、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、前記一般式(2)のR1において説明した官能基を同様に挙げることができ、好ましい例も同様である。
熱により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である酸分解性基、を有するジイソシアネート化合物及び熱/酸極性変換基を有するジオール化合物から選択される化合物を、ポリウレタンの原料モノマーとして用い、これらをポリウレタン化することによって、側鎖に熱/酸極性変換基を有するポリウレタンを得ることができる。
熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンの原料として好ましいジオール化合物の具体的態様としては下記一般式(1)で表されるジオール化合物が挙げられる。
RA1は熱極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基、即ち、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、フェノール性水酸基から選択される酸基となる官能基であることが好ましく、画像形成性と耐刷性の観点から、カルボン酸基及びフェノール性水酸基となりうる官能基であることがさらに好ましい。最も好ましくは、RA1は、前述の一般式(I)〜一般式(VII)で表される基からなる群より選択される基を表す。
RA1は熱/酸極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基を表し、その具体例は一般式(1)におけるRA1と同義であり、好ましい例も同様である。
これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。
300mL3つ口フラスコにアクリル酸tert−ブチル(和光純薬製)128.17gを秤量し、室温にて攪拌しながら、チオグリセロール(和光純薬製)108.16gを30分かけて滴下した。滴下終了後、70℃にて5時間加熱・攪拌し、例示化合物(I)−1を236.33g得た。精製物が(I)−1であることは、NMR、IR、MSスペクトルから確認した。
得られた例示化合物(I)−1は、これ以上の精製はせず、次工程、即ち、特定ポリウレタンの合成工程にそのまま用いられる。
特定ポリウレタン(2)を合成する際には、前記熱/酸極性変換基を有するジオール化合物を、ポリウレタン原料であるジオール化合物の少なくとも一部として使用する他は、一般的なポリウレタンの合成方法を適用すればよい。
分解性基を有するジオールをジオール成分の一部として、ジイソシアネート、別のジオール成分と反応させて、前記ポリウレタン樹脂を得ることが好ましい。
また、前記熱/酸極性変換基を有するポリール化合物以外の併用可能なポリオール化合物としては、ジオール化合物であることが好ましい。
本発明に係る特定ポリウレタンの合成に用いる他のポリオール化合物は、カルボキシル基を有するポリオール化合物を含むことが好ましく、カルボキシル基を有するジオール化合物を含むことがより好ましい。
カルボキシル基を有するジオール化合物としては、下記一般式(ii)又は一般式(iii)で表されるジオール化合物を好ましく挙げることができる。
特定ポリウレタン(2)が、既述の熱/酸極性変換基(好ましくは酸分解性基)に加え、カルボキシ基を有することが、現像性の観点から好ましい。但し、カルボキシル基の含有量が多すぎる場合、未露光部の耐久性が低下する可能性があるため、カルボキシル基の導入量は、特定ポリウレタン(2)の酸価が0.01mmol/g〜2.00mmol/gとなる範囲で含むことがより好ましい。より好ましくは、0.10mmol/g〜1.50mmol/gである。
一般式(ii)中、R2は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基を表す。ここで、R2は置換基を有していてもよい。R2に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等が挙げられる。
R2としては、水素原子、炭素数1〜8の無置換のアルキル基、又は、炭素数6〜15の無置換のアリール基が好ましく挙げられる。
一般式(ii)及び一般式(iii)中、R3、R4及びR5はそれぞれ同一でも相異していてもよく、単結合又は二価の連結基を表す。上記二価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、R3、R4及びR5は、例えば、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等から選択される如き置換基を有していてもよい。
R3、R4及びR5としては、炭素数1〜20の無置換のアルキレン基、又は、炭素数6〜15の無置換のアリーレン基が好ましく挙げられ、炭素数1〜8の無置換のアルキレン基がより好ましく挙げられる。
一般式(iii)中、Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、炭素数6〜15の三価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。Arに導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環式ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのような芳香族環を有するものが耐刷性の観点より好ましい。
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。なかでも、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸が、イソシアネートとの反応性の観点から、より好ましい。
特定ポリウレタン(2)を合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を併用してもよい。
使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は、好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
なお、下記の具体例において、各モノマー名の下に記載の数字は、使用した各モノマーのモル比を表す。
このときの分散度(Mw/Mn)は、1.0〜20.0であることが好ましく、1.5〜16.0であることがより好ましく、2.0〜10.0であることが更に好ましい。分子量が上記範囲であると、十分な効果が得られ、また、現像性に優れる。
〔合成例5:特定ポリウレタンPU−5の合成〕
300mL3つ口フラスコに、合成例4で得られたジオール化合物〔例示化合物(I)−1〕を9.57質量部、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)9.66質量部、メチルエチルケトン70質量部を秤取し、室温にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.04質量部及びMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.20質量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13質量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。反応液を水2,000質量部にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−5)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基を側鎖に有するポリウレタンを合成し、得られた該ポリウレタン中の反応性基と反応する基及び場合に応じて前述した熱/酸極性変換基の両者を有する化合物と反応させることにより、熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンを得ることができる。
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基としては、カルボン酸基、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基等を挙げることができ、該ポリウレタン中の反応性基と反応する基としては、ビニルエーテル基、アミノ基、チオール基、等を挙げることができる。
300mLの3つ口フラスコに、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)15.42質量部、メチルエチルケトン173質量部を秤取し、室温(25℃)にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.13質量部及びMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.71質量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13質量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。その後、反応液中に、(+)−10−カンファースルホン酸(東京化成工業製)0.01質量部、ブチルビニルエーテル(東京化成工業製)4.14質量部を、室温下、30分かけて滴下し、30℃にて2時間反応を行った。反応液を炭酸水素ナトリウム10質量部、水2,000質量部からなる水溶液にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−23)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
本発明の平版印刷版原版は、赤外線吸収剤を上層に含んでもよい。赤外線吸収剤を上層に含有することで、より感度に優れる。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料、顔料であれば特に制限はなく、下層に用いうる赤外線吸収剤として前記したものを同様に用いることができる。
特に好ましい染料は、前記シアニン染料Aである。
上層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4 -、PF6 -、ClO4 -などが好ましい。
本発明において酸発生剤として用いうるオニウム塩としては、下記一般式(x)〜一般式(xii)で表されるオニウム塩が挙げられる。
一般式(xi)中、Ar21は炭素原子数20個以下のアリール基を示す。Ar21は置換基を有していてもよい。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
一般式(xii)中、R31、R32及びR33は、それぞれ炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。これらは置換基を有していてもよい。
一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
Z41-はZ11-と同義の対イオンを表す。
上記一般式(xiii)で示されるアジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
本発明に用いうる酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG−1)〜(PAG−5)が挙げられる。
酸発生剤を上層に含有する場合の、好ましい含有量は、上層の全固形分に対し0.01質量%〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜40質量%、更に好ましくは0.5〜30質量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
上層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
下層及び上層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の他の添加剤を添加することができる。以下に挙げる添加剤は、下層のみに添加してもよいし、あるいは上層のみに添加してもよいし、上層及び下層の双方に添加してもよい。
上層及び下層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。
上層及び下層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、例えば、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.01質量%〜15質量%が好ましく、0.01質量%〜5質量%がより好ましく、0.05質量%〜2.0質量%が更に好ましい。
上層及び下層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。光酸放出剤としては、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドや、オキサゾール系化合物としてトリアジン系化合物とトリハロメチル化合物とが挙げられる。
着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の公知の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料を挙げることができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレットラクトン、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料が特に好ましく挙げられる。
これらの染料は、上層又は下層のそれぞれの全固形分に対し、0.01質量%〜10質量%の割合で添加することが好ましく、0.1質量%〜3質量%の割合で添加することがより好ましい。
上層及び下層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、上層又は下層のそれぞれの全固形分に対し、0.5質量%〜10質量%の割合で添加することが好ましく、1.0質量%〜5質量%の割合で添加することがより好ましい。
上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
ワックス剤の添加量は、上層中に占める割合が上層の全固形分に対し、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜5質量%であることがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版における記録層は、通常、下層又は上層に含有される前記の各成分を溶剤に溶解又は分散させて塗布液を調製し、該塗布液を適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
具体的には、アルカリ可溶性樹脂、フルオロ脂肪族基含有共重合体、必要により添加される任意成分、及び、溶剤を含む下層用塗布液を調製し、該下層用塗布液を支持体上に、塗布、乾燥して下層を形成した後、特定ポリウレタン、必要により添加される任意成分、及び、溶剤を含む上層塗布液を調製し、該上層用塗布液を下層上に塗布、乾燥することにより、上層及び下層を形成することが好ましい。
上記のごとく下層を形成することで、上層の形成前に、下層における上層との界面近傍におけるフルオロ脂肪族基含有共重合体の偏在が顕著となる。このため、上層を形成する際において、上層と下層との層間混合が効果的に抑制されることから、上層及び下層が明確に分離した記録層を形成することが可能になる。
下層を構成する成分と、上層を構成する成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、下層を塗布した後、上層用塗布液を塗布する際に、下層を構成する成分のいずれもが不溶な溶剤系を用いる方法である。これにより、上層及び下層を、より明確に分離した塗膜にすることが可能になる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、第2層である上層の塗布時に、第1層である下層へのダメージを防ぐため、第2層の塗布方法は、非接触式であることが好ましい。また、接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、第1層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが好ましい。
上層の乾燥後の固形分塗布量は、0.05g/m2〜2.0g/m2の範囲であることが好ましく、0.1g/m2〜1.0g/m2の範囲であることがより好ましい。
また、上層と下層との塗布量の比(上層/下層)は、0.05〜1が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8の範囲である。
本発明の平版印刷版原版に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、又は、プラスチックフィルム等が挙げられる。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.15〜0.4mmであることがより好ましく、0.2〜0.3mmであることが特に好ましい。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
以上のように粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に重層構造の記録層として、下層及び上層の2層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、並びに、トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
下塗層の塗布量は乾燥後で、2mg/m2〜200mg/m2であることが好ましく、5mg/m2〜100mg/m2であることがより好ましい。乾燥後の塗布量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4などのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液(現像液)を用いて現像する現像工程、をこの順で含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版は、本発明の平版印刷版の製版方法により得られた平版印刷版である。
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程を含むことが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましい。
本発明の平版印刷版の製版方法は、現像液を用いて現像する現像工程を含むことが好ましい。
現像工程に使用される現像液(以下、「処理液」ともいう。)は、pH6〜13.5の水溶液が好ましく、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液がより好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸エステル塩類が特に好ましく用いられる。
現像液に用いることができる両性界面活性剤としては、下記式<1>で表される化合物及び下記式<2>で表される化合物が好ましい。
式<2>中、R18、R19及びR20はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ただし、R18、R19及びR20の全てが、水素原子であることはない。
式<1>で表される化合物において、R8〜R11の炭素数の総和は、8〜25であることが好ましく、11〜21であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
また、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、界面活性剤の水系の現像液への溶解性を上げることも可能である。
式<2>で表される化合物において、R18〜R20の炭素数の総和は、8〜22であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜13.5の範囲であることが好ましい。
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20μm〜400μm、毛の長さは5mm〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30mm〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1m/sec〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
(支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)を苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温60℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗し、10g/l硝酸で中和洗浄後、水洗した。これを印加電圧Va=20Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて、塩化水素濃度15g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温30℃の水溶液中で、400C/dm2の電気量で電化化学的な粗面化処理を行い、水洗した。次に、苛性ソーダ濃度30g/l、アルミニウムイオン濃度10g/l、液温40℃で10秒間エッチング処理を行い、流水で水洗した。次に、硫酸濃度15質量%、液温30℃の硫酸水溶液中でデスマット処理を行い、水洗した。更に、液温20℃の10質量%硫酸水溶液中、直流にて電流密度6A/dm2の条件下で、陽極酸化皮膜両が2.5g/m2相当となるように陽極酸化処理し、水洗、乾燥した。その後、ケイ酸ナトリウム1.0質量%水溶液で30℃において10秒間処理し、親水性処理した支持体(a)を作製した。
この支持体(a)の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.48μmであった。
このようにして得られた支持体(a)上に、下記組成を有する下塗り液を塗布し、80℃で30秒間乾燥して下塗り層を設けた。下塗り層の乾燥塗布量は17mg/m2であった。
・下記化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
下塗り層を有する支持体(a)に、下記組成の下層用塗布液1をバーコーターにて被覆重量が1.3g/m2となるように塗布し、130℃で40秒間乾燥した後に、35℃まで冷却した。
・N−フェニルマレイミド/メタクリル酸/メタクリルアミド共重合体
(重量比:59/15/25、Mw:50,000) 3.44g
・フルオロ脂肪族基含有共重合体(下記ポリマー1) 1.80g
・赤外線吸収剤:下記構造のシアニン染料A 0.94g
・クリスタルバイオレット(保土ヶ谷化学(株)製) 0.08g
・メチルエチルケトン 61.00g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 14.00g
・γ−ブチロラクトン 9.40g
・水 9.34g
・下記により合成したポリウレタン(1)
(25%、3−ペンタノン溶液) 30.00g
・赤外線吸収剤:前記構造のシアニン染料A 0.15g
・エチルバイオレット 0.03g
・フッ素系界面活性剤:メガファックF−176(DIC(株)製) 0.05g
・3−ペンタノン 62.40g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル−2−アセテート 7.37g
濃縮器及び攪拌機を備えた容量500mlの丸底三首フラスコ内に、2.7gの4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、14.5gのトルエン−2,4−ジイソシアネート、7.0gのネオペンチルグリコール、35.8gの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、及び、280gの3−ペンタノンを導入した。0.3gのジブチル錫ジドデカノエートを添加し、反応混合物を撹拌しながら80℃に加熱した。反応を80℃で6時間継続した。こうしてポリウレタン(1)を得た。ポリウレタン(1)のGPCによる重量平均分子量は24000であった。また、酸価は125であった。
実施例1において用いた下層用塗布液1及び上層用塗布液1の組成を、下記表1又は表2に記載される組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜18、比較例1〜8の平版印刷版原版を作製した。
得られた実施例1〜18、及び比較例1〜8の平版印刷版原版を用い、塗布面状、現像ラチチュード、及び耐刷性について評価した。評価結果を表3に示した。
実施例及び比較例の各平版印刷版原版について、記録層の塗布面面状を目視で観察した。面状評価は、1平方メートルあたりのピンホール発生個数で表した。ピンホール発生個数が少ないほど面状に優れるものと評価する。結果を下記表3に示す。
実施例及び比較例の平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにて120mJ/cm2の割合で露光した。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度を変化させたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像した。得られた版について、レーザー露光領域の現像性と画像領域の状態を評価した。
現像ラチチュードは良好な画像特性を示す電導度の範囲によって評価する。範囲が広い方が、現像ラチチュードに優れるものと評価する。なお、現像液の最適な電導度は現像ラチチュード幅の中央である。
結果を下記表3に示す。
実施例及び比較例の各平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetterにて120mJ/cm2の割合で露光した。その後、富士フイルム(株)製現像液XP−D(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサー940HIIを用い、液温を30℃に保ち、現像時間12秒で現像した。得られた版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて連続して印刷した。
この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、耐刷性を評価した。枚数が多いほど耐刷性に優れるものと評価する。
結果を下記表3に示す。
Claims (9)
- 親水性表面を有する支持体上に、下層及び上層をこの順に形成して設けられた記録層を有してなり、前記下層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂と、前記下層の全固形分の質量に対して5質量%〜50質量%のフルオロ脂肪族基含有共重合体と、を含有する層であり、前記上層が、水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性のポリウレタン樹脂を含有する層である赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、フルオロ脂肪族基を含むモノマーユニットを、全モノマーユニット中に、5モル%〜95モル%含む共重合体である請求項1に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に酸性基を有するモノマーユニットを含む共重合体である請求項1又は請求項2に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記側鎖に酸性基を有するモノマーユニットにおける酸性基が、フェノール性水酸基、スルホンアミド基、又は活性イミド基である請求項3に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記下層及び前記上層の少なくとも一方が、赤外線吸収剤を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 前記下層が、前記水不溶性且つアルカリ水溶液に可溶性又は分散性の樹脂、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体、及び、溶剤を含む塗布液を、前記支持体上に、塗布、乾燥して形成した層である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法であって、下層形成用塗布液及び上層形成用塗布液を、この順に支持体上に逐次塗布により塗布する工程を含む赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版の製造方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の赤外線感光性ポジ型平版印刷版原版を、赤外線により画像様に露光する露光工程と、
露光後の前記ポジ型平版印刷版原版を、アルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の製造方法。 - 請求項8に記載の平版印刷版の製造方法により得られた平版印刷版。
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