JP5628100B2 - 画像形成材料、平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法 - Google Patents

画像形成材料、平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法 Download PDF

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本発明は、赤外線感応性画像形成材料、それを用いた赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版及び平版印刷版の作製方法に関する。
従来、種々の感光性組成物が可視画像形成材料や平版印刷版材料として使用されている。特に、平版印刷における近年のレーザーの発展は目覚ましく、特に近赤外から赤外に発光領域を持つ固体レーザー・半導体レーザーは高出力かつ小型の物が容易に入手できるようになっている。コンピュータ等のディジタルデータから直接製版する際の露光光源として、これらのレーザーは非常に有用である。
赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版は、アルカリ可溶性のバインダー樹脂と、光を吸収し熱を発生する赤外線吸収剤等とを必須成分とする。この赤外線吸収剤等が、未露光部(画像部)では、バインダー樹脂との相互作用によりバインダー樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させる現像抑制剤として働き、露光部(非画像部)では、発生した熱により赤外線吸収剤等とバインダー樹脂との相互作用が弱まり、アルカリ現像液に溶解して平版印刷版を形成する。
しかしながら、このような赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版材料では、未露光領域と露光領域との溶解性の差異が充分に得られず、画像形成に適する現像条件の許容性(現像ラチチュード)が充分ではないために、活性度の落ちた疲労現像液で現像すると残膜が生じたり、活性度の高い現像液で現像すると所望されない画像部の強度低下が生じたりする懸念があった。
現像ラチチュードの問題を解決するために、非画像部をより容易に現像し得る、即ち、アルカリ水溶液に対する溶解性がより良好な特性を有する材料からなる記録層を用いることが考えられるが、このような記録層は、画像部領域においても化学的に弱くなり、通常印刷における耐久性、更には、現像液や印刷中に使用されるインキ洗浄溶剤、プレートクリーナー等によりダメージを受け易くなるなど、耐薬品性に劣るといった問題があった。
この問題を解決する目的で、記録層を重層化し、上層としての記録層近傍にアルカリ可溶性の高い下層を設け、露光により上層が除去されると下層の高いアルカリ可溶性により残膜の発生を抑制して現像ラチチュードを改良する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、記録層を重層化するという方法だけでは、様々な使用条件における未露光部(画像部)の現像液に対する耐溶解性と、露光部(非画像部)の溶解性との間の差(ディスクリミネーション;以下、「溶解ディスクリ」又は「溶解識別性」ともいう。)が未だ十分とは言えず、使用条件の変動による現像過剰や現像不良が起きやすいという問題があり、特に、現像ラチチュード、未露光部領域における耐久性に優れる材料が熱望されていた。さらに、露光による相互作用解除により非画像部(可溶性領域)が形成されるポジ型記録層に特有の、露光後、現像処理に至るまでに経時した場合、所望されない相互作用の再形成によって現像性が低下するという問題もあった。
特開平11−218914号公報
本発明の目的は、現像ラチチュード、溶解識別性及び画像部の強度に優れ、且つ、像様露光後、現像処理に至るまでに経時した場合でも現像性の低下が抑制された画像形成材料、前記画像形成材料を用いてなる溶解識別性及び耐刷性に優れ、像様露光後の経時による現像性の低下が抑制された赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版、並びに、前記赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版を使用した平版印刷版の製版方法を提供することにある。
本発明の上記課題は、以下に示す本発明の手段により解決された。
<1> 支持体上に、赤外線吸収剤及び水不溶かつアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンを含む上層と、を順次備える画像形成材料。
<2> 前記熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンが、熱により分解して酸基となる官能基を側鎖に有するポリウレタンである前記<1>に記載の画像形成材料。
<3> 前記熱により分解して酸基となる官能基が分解して発生する酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、フェノール性水酸基から選択される酸基である前記<2>に記載の画像形成材料。
<4> 前記熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンが、ジイソシアネート化合物と、下記一般式(1)で表されるジオール化合物と、の反応生成物である前記<2>又は<3>に記載の画像形成材料。
前記一般式(1)中、Lは、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される原子を含んで構成される3価の連結基を表す。
A1は熱により分解して酸基となる官能基を表す。
<5> 前記熱により分解して酸基を発生する官能基が、下記一般式(2)〜一般式(4)で表される官能基より選択される少なくとも1種である<2>〜<4>のいずれか1つに記載の画像形成材料。
一般式(2)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタールを構成する官能基を表す。
一般式(3)中、Rは、隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成する官能基を表す。
一般式(4)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基を表す。
<6> 前記上層に、さらに酸発生剤を含む<1>〜<5>のいずれか1つに記載の画像形成材料。
<7> 前記上層に、さらに赤外線吸収剤を含む<1>〜<6>のいずれか1つに記載の画像形成材料。
<8> 前記上層に、さらに酸増殖剤を含む<1>〜<7>のいずれか1つに記載の画像形成材料。
<9> <1>〜<8>のいずれか1つに記載の画像形成材料を用いてなる赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版。
<10> <9>に記載の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
<11> 前記アルカリ水溶液が、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を含む<10>に記載の平版印刷版の作製方法。
本発明の作用機構は明確ではないが、以下のように推定している。
本発明の平版印刷版原版では、赤外線露光領域の下層で赤外線吸収剤により発生した熱が、上層において、上層に存在する特定ポリウレタンの溶解性向上に効率よく使用され、露光部では十分な溶解性の向上が達成される。特に、本発明の好ましい態様の如き、側鎖に熱分解性基を有する特定ポリウレタンを用いた場合には、露光部において充分な量の酸基が生成され、アルカリ水溶液に対する高い可溶性を発現し、さらに、上層が除去されると、アルカリ可溶性に優れた下層が露出して、速やかに画像記録層が除去され、且つ、未露光部では、主鎖ポリウレタンの高い耐久性は維持されるために、高い溶解ディスクリが付与でき、画像識別性に優れる
また、熱分解性基は分解して酸基となるが、この反応は不可逆的な分解・酸基発生反応であるため、露光後に直ちに現像せず、経時後に現像を行った場合でも現像性の低下が生じず、焼きだめ性も良好となったものと推測している。
さらに、本発明の好ましい態様において、上層に酸発生剤や酸増殖剤を用いた場合には、熱分解性基の分解反応を促進させたり、分解反応の触媒作用を有したりするために、更に、溶解ディスクリが良化したものと考えている。
本発明によれば、現像ラチチュード、溶解識別性及び画像部の強度に優れ、且つ、像様露光後、現像処理に至るまでに経時した場合でも現像性の低下が抑制された画像形成材料、前記画像形成材料を用いてなる溶解識別性及び耐刷性に優れ、像様露光後の経時による現像性の低下が抑制された赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版、並びに、前記赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版を使用した平版印刷版の製版方法を提供することができる。
(画像形成材料)
本発明の画像形成材料は、支持体上に、赤外線吸収剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有する下層と熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンを含有する上層と、を順次有する重層構造の画像記録層を備えてなり、前記熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンが、側鎖に、熱により分解して酸基となる官能基(以下、適宜、熱分解性基と称する)を有するポリウレタンであることが好ましい。
本発明の画像形成材料は、露光部の溶解性及び形成された画像部の強度に優れるため、露光、現像により画像を形成する種々の材料、例えば、平版印刷版原版、レジスト材料、ディスプレイ材料などの種々の分野に応用可能であるが、その特性から平版印刷版原版に用いられることが好ましい。
以下、本発明の画像形成材料の好適な応用態様である平版印刷版原版を例に挙げて本発明の詳細を説明する。
(赤外線レーザー用平版印刷版原版)
本発明の赤外線レーザー用平版印刷版原版は、前記本発明の画像形成材料を用いてなり、好ましくは親水性表面を有する支持体上に、赤外線吸収剤及びアルカリ可溶性樹脂を含有する下層と熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンを含有する上層と、を順次有する重層構造の画像記録層を備えてなる。
なお、本発明において「順次備える」とは、支持体上に、下層と、上層とがこの順に配置されていればよく、その他の層を有していてもよい。即ち、本発明の平版印刷版原版は、上記重層構造の画像記録層に加えて、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに、下塗り層、保護層など、所望により設けられる他の層を有していてもよい。
本発明の平版印刷版原版は、広く赤外線に感応して製版され、特に赤外線レーザー露光に適し、ポジ型の画像を与える平版印刷版原版である。
以下、本発明の平版印刷版原版の構成について詳細に説明する。
<画像記録層>
〔熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンを含有する上層〕
本発明に用いる平版印刷版原版における画像記録層は、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン(以下、適宜、特定ポリウレタンと称する)を含有する上層を有する。
以下、上層に含まれる成分について説明する。
(熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタン)
一般に、高い耐久性を有する被膜を形成しうるポリマーは、現像液の浸透性が低くなる傾向にあり、現像液活性の影響を受けやすく、現像ラチチュードが不十分となるために、通常、被膜の強度、耐久性と、現像ラチチュードとは、トレードオフの関係となる。これに対し、前記本発明に係る特定ポリウレタンは、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性を有するために、未露光部では、ポリウレタン由来の高い膜強度を有し、露光部では下層の赤外線吸収剤が発生する熱によりポリウレタンのアルカリ水溶液に対する溶解性が向上するため、アルカリ水溶液である現像液により速やかに除去される。ポリウレタンに、「熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上する特性」を付与する手段には特に制限はないが、本発明においては、特定ポリウレタンとして、熱により露光領域において疎水性から親水性へと極性変換する基を側鎖に有しているポリウレタンを用いることができる。このような極性変換を生じうる官能基としては、熱により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、組成物中に所望により含有される酸発生剤から発生した酸により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよく、また、熱及び酸の双方により疎水性から親水性へと極性変換する官能基であってもよい。このような官能基を以下、適宜、熱/酸極性変換基と称する。
熱及び酸の少なくともいずれかにより疎水性から親水性へと極性変換する基としては、例えば、特開2002−309057公報の段落番号〔0053〕〜〔0090〕に記載されている3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、特開昭60−3625号公報に記載されているベンジルエステル基、特開昭63−010153号、特開平9−171254号、同10−55067号、同10−111564号、同10−87733号、同10−153853号、同10−228102号、同10−268507号、同10−282648号、及び、同10−282670号等の各公報、或いは、欧州特許公開EP−0884547A1号明細書に記載されているアセタール基、ケタール基及びオルトカルボン酸エステル基、特開昭62−251743号公報に記載されている炭酸エステル基、特開昭62−209451号公報に記載されているオルト炭酸エステル基、特開昭48−89603号、同51−120714号、同53−133429号、同55−12995号、同55−126236号、及び、同56−17345号の各公報に記載されているC−O−C結合を有する基を挙げることができる。また、特開昭60−10247号公報に記載されているシリルエステル基、特開昭62−280842号公報に記載されているオルトケイ酸エステル基、特開昭60−37549号、及び、同60−121446号の各公報に記載のSi−O−C結合を有する基、特開昭62−222246号公報に記載されているSi−N結合を有する基を挙げることができる。さらに特開平10−282644号公報に記載のスルホン酸エステル基、特開昭62−280841号公報に記載されているオルトチタン酸エステル基、特開昭62−244038号公報に記載されているC−S結合を有する基を用いることができる。
これらの基の中では、感度、耐刷性の観点から、3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、ベンジルエステル基、アセタール基、ケタール基、オルトカルボン酸エステル基、炭酸エステル基、オルト炭酸エステル基、シリルエステル基、及び、スルホン酸エステル基が好ましく、更に保存安定性、製造適性の観点から、3級エステル基、ラクトン骨格を有する基、アセタール基、ケタール基、及び、炭酸エステル基が好ましい。
上記熱及び酸の少なくともいずれか(以下、「熱/酸」と記載する)により疎水性から親水性へと極性変換する基として、熱/酸により分解して酸基を発生する官能基が好ましい。
熱/酸により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である熱分解性基は、製造の容易さ及び熱分解性基の導入量を制御しうる観点から、ポリウレタンの側鎖に導入されることが、好ましい。
ここで酸基とは、pKaが13以下の基であり、現像性と耐刷性の観点から、pKaは−3から12が好ましく、0から11が更に好ましい。
熱分解性基の分解により発生する酸基としては、カルボン酸基、フェノール性水酸基、スルホン酸基であることが好ましく、カルボン酸基、フェノール性水酸基であることがより好ましい。
本発明に適用し得る熱により分解して酸基を発生可能な基としては、赤外レーザーの露光により発生する熱により分解して酸基を発生可能な基であれば限定されないが、カルボン酸基、フェノール性水酸基、スルホン酸基などの酸基を保護基で保護した基を好ましく用いることができる。
分解してカルボン酸基となる熱分解性基である、保護基を有するカルボン酸基の例としては、下記一般式(I)〜一般式(IV)で表わされる基が画像形成性と耐刷性の観点から好ましく挙げられる。
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に一価の炭化水素基を表す。
一般式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子または一価の炭化水素基を表す。
一般式(III)中、R〜R11は、それぞれ独立に、水素原子または一価の炭化水素基を表す。
一般式(IV)中、R12〜R14は、それぞれ独立に、一価の炭化水素基を表す。
〜R14で示される基はさらに置換基を有していてもよい。RとR、RとR、RとR11は互いに結合して環構造を形成してもよい。
上記一般式(I)〜一般式(IV)において、一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基などが挙げられ、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基が好ましく、なかでも、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が耐刷性と感度の観点から好ましい。
これら一価の炭化水素基は、置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
〜Rとしては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチルが挙げられ、R〜Rとしては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、シクロへキシル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、メトキシエチル基等が挙げられ、R〜R11としては、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、フェニル基(RとR11とが互いに結合して形成された環構造としてのフェニル基)等が挙げられ、 R12〜R14としては、好ましくは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
分解してフェノール性水酸基となる熱分解性基である、保護基を有するフェノール性水酸基としては、下記一般式(V)〜(VII)で表わされる基が、画像形成性と耐刷性の観点から好ましい。
一般式(V)中、R〜Rは、それぞれ、前記一般式(II)におけるR〜Rと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(VI)中、R15は一価の炭化水素基を表す。
15としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
一般式(VII)中、Aは、O、S、又は、−N(R17)−を表し、R16は一価の炭化水素基を表す。ここで、R17は水素原子又は一価の炭化水素基を表し、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基である。Aは、好ましくは、Oであり、R16は好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基、アリル基等である。R17は好ましくは、メチル基である。
上記R15〜R17で示される基はさらに置換基を有していてもよい。
熱により分解してスルホン酸基となる、保護基を有するスルホン酸基としては、下記一般式(VIII)で表わされるスルホン酸エステル基、又は、特開平10−282644号公報等に記載のスルホン酸エステル基が、画像形成と耐刷性の観点から好ましい。
一般式(VIII)中、R18は置換基を有していてもよい一価の炭化水素基を表す。
上記、一般式(VIII)において、一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基などが挙げられ、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基が好ましく、なかでも、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数4〜10のシクロアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基等が、感度と耐刷性の観点から好ましい。
18に導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。R18は、好ましくは、シクロヘキシル基、又は、ベンジル基である。
本発明に係る特定ポリウレタンが側鎖に有するこれら熱分解性基は、ポリマー中に1種のみ導入されてもよく、2種以上導入されていてもよい。また、互いに異なる熱分解性基を有する複数種のポリウレタン同士を混合して用いてもよい。
前記熱により分解して酸基を発生する官能基としては、例えば、下記一般式(2)〜一般式(4)で表される官能基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(2)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタールを構成する官能基を表す。
一般式(3)中、Rは、隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成する官能基を表す。
一般式(4)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基を表す。
ここで、一般式(2)における隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、tert−ブチル基、1,1−ジメチル−2−クロロエチル基、1,1−ジメチルエチル基、1−メチルシクロヘキシル基等が挙げられ、tert−ブチル基が好ましい。また、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタール構造を構成する官能基としては、1−エトキシエチルエステル基、1−ブトキシエチル基、1−メトキシエトキシエチル基、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル基、テトラヒドロフラン−2−イル基等が挙げられ、1−エトキシエチル基、1−ブトキシエチル基、テトラヒドロフラン−2−イル基が好ましい。
一般式(3)中、Rで示される,隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成するシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基が好ましい。
一般式(4)における隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基としては、シクロヘキシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基等が挙げられ、なかでも、シクロヘキシル基が好ましい。また、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基としては、前記一般式(2)のRにおいて説明した官能基を同様に挙げることができ、好ましい例も同様である。
本発明に係る特定ポリウレタンに、熱及び酸の少なくともいずれかにより疎水性から親水性へと極性変換する基、好ましくは、既述の熱分解性基(既述のように、熱分解性基をふくむ、熱及び酸の少なくともいずれかにより極性変換する官能基を、適宜、「熱/酸極性変換基」と総称する)、を有する導入する方法としては、(a)熱/酸極性変換基を有する原料モノマーを合成し、得られた原料モノマーを用いてポリウレタンを合成する方法、(b)ポリウレタンを合成後に、熱/酸極性変換基を高分子反応によって導入する方法等が挙げられる。(a)及び(b)の方法について、具体例を挙げながら説明する。
(a)熱/酸極性変換基を有する原料モノマーを合成し、該原料モノマーを用いてポリウレタンを合成する方法
熱により疎水性から親水性へと極性変換する基、その好ましい態様である酸分解性基、を有するジイソシアネート化合物及び熱/酸極性変換基を有するジオール化合物から選択される化合物を、ポリウレタンの原料モノマーとして用い、これらをポリウレタン化することによって、側鎖に熱/酸極性変換基を有するポリウレタンを得ることができる。
上記(a)熱/酸極性変換基を有するモノマーをポリウレタン化する方法では、モノマーの製造適性の観点から、ジオール化合物中に、熱/酸極性変換基を有していることが好ましい。このようなジオール化合物の具体例について、下記に詳述する。
熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンの原料として好ましいジオール化合物の具体的態様としては下記一般式(1)で表されるジオール化合物が挙げられる。
前記一般式(1)中、Lは、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意の2以上の原子を含んで構成される3価の連結基を表す。
A1は熱極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基、即ち、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、フェノール性水酸基から選択される酸基となる官能基であることが好ましく、画像形成性と耐刷性の観点から、カルボン酸基およびフェノール性水酸基のいずれかとなりうる官能基であることがさらに好ましい。最も好ましくは、RA1は、前述の一般式(I)〜一般式(VII)で表される基からなる群より選択される基を表す。
本発明に係る特定ポリウレタンの合成に用いうるジオール化合物のさらに好ましい態様としては、下記一般式(5)及び下記一般式(6)で表されるジオール化合物から選択される化合物が挙げられる。
一般式(5)及び一般式(6)中、L及びLは、それぞれ独立に、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される任意の2以上の原子を含んで構成される2価の連結基を表し、X、及びXは、それぞれ独立に、−S−、−N(R29)−、−OC(=O)−N(R30)−、−N(R31)C(=O)O−、又は、−C(=O)−を表し、R19〜R31はそれぞれ独立に、水素原子または一価の置換基を表す。一価の置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、が挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
A1は熱/酸極性変換基、好ましくは、既述の熱分解性基を表し、その具体例は一般式(1)におけるRA1と同義であり、好ましい例も同様である。
分子内に熱/酸極性変換基を有するジオール化合物を製造する際に用いる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルグリコール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。
以下に、熱/酸極性変換基を側鎖に有する特定ポリウレタンの原料として好ましいジオール化合物の具体例〔例示化合物(D−1)〜(VIII)−3〕を示すが、本発明がこれらに限定されるものではない。









上記の化合物群は一般的な合成方法で合成することが可能であり、合成方法は限定されない。以下、ジオール化合物〔例示化合物(I)−1〕について、その合成例を記載する。
〔合成例1:例示化合物(I)−1の合成〕
300mL3つ口フラスコにアクリル酸tert−ブチル(和光純薬製)128.17gを秤量し、室温にて攪拌しながら、チオグリセロール(和光純薬製)108.16gを30分かけて滴下した。滴下終了後、70℃にて5時間加熱・攪拌し、例示化合物(I)−1を236.33g得た。精製物が(I)−1であることは、NMR、IR、MSスペクトルから確認した。
得られた例示化合物(I)−1は、これ以上の精製はせず、次工程、即ち、特定ポリウレタンの合成工程にそのまま用いられる。
ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを用いてポリウレタン樹脂を製造する方法については、例えば、特開2003−177533号公報等に記載されている方法を挙げることができる。
本発明に係る前記特定ポリウレタンを合成する際には、前記熱/酸極性変換基を有するジオール化合物を、ポリウレタン原料であるジオール化合物の少なくとも一部として使用する他は、一般的なポリウレタンの合成方法を適用すればよい。
分解性基を有するジオールをジオール成分の一部として、ジイソシアネート、別のジオール成分と反応させて、前記ポリウレタン樹脂を得ることが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂の合成に用いることができるポリイソシアネート化合物、及び、前記熱/酸極性変換基を有するポリール化合物以外のポリオール化合物(以下、他のポリオール化合物と称する)としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
特定ポリウレタンの合成に用いうるポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物であることが好ましく、下記一般式(i)で表される化合物であることがより好ましい。
また、前記熱/酸極性変換基を有するポリオール化合物以外の併用可能なポリオール化合物としては、ジオール化合物であることが好ましい。
本発明に係る特定ポリウレタンの合成に用いる他のポリオール化合物は、カルボキシ基を有するポリオール化合物を含むことが好ましく、カルボキシ基を有するジオール化合物を含むことがより好ましい。
カルボキシル基を有するジオール化合物としては、下記一般式(ii)又は一般式(iii)で表されるジオール化合物を好ましく挙げることができる。
特定ポリウレタンが、既述の熱/酸極性変換基(好ましくは酸分解性基)に加え、カルボキシ基を有することが、現像性の観点から好ましい。但し、カルボキシ基の含有量が多すぎる場合、未露光部の耐久性が低下する可能性があるため、カルボキシ基の導入量は、特定ポリウレタンの酸価が0.01mmol/g〜2.00mmol/gとなる範囲であることがより好ましい。より好ましくは、0.10mmol/g〜1.50mmol/gである。
一般式(i)中、Rは二価の連結基を表す。上記二価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基が挙げられ、炭素数2〜10のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基が好ましく挙げられる。また、Rはイソシアネート基と反応しない他の官能基を置換基として有していてもよい。イソシアネート基と反応しない他の官能基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基等が挙げられる。
一般式(ii)中、Rは水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、又は、アリーロキシ基を表す。ここで、Rは置換基を有していてもよい。Rに導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等が挙げられる。
としては、水素原子、炭素数1〜8の無置換のアルキル基、又は、炭素数6〜15
の無置換のアリール基が好ましく挙げられる。
一般式(ii)及び一般式(iii)中、R、R及びRはそれぞれ同一でも相異していてもよく、単結合又は二価の連結基を表す。上記二価の連結基としては、脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、R、R及びRは、例えば、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基等から選択される如き置換基を有していてもよい。
、R及びRとしては、炭素数1〜20の無置換のアルキレン基、又は、炭素数6〜15の無置換のアリーレン基が好ましく挙げられ、炭素数1〜8の無置換のアルキレン基がより好ましく挙げられる。
一般式(iii)中、Arは置換基を有していてもよい三価の芳香族炭化水素を表し、炭素数6〜15の三価の芳香族炭化水素基であることが好ましい。Arに導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、ウレタン基、ウレア基などが挙げられる。
前記一般式(i)で表されるジイソシアネート化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートの二量体、2,6−トリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の如き芳香族ジイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の如き脂肪族ジイソシアネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の如き脂環族ジイソシアネート化合物;1,3−ブチレングリコール1モルとトリレンジイソシアネート2モルとの付加体等の如きジオールとジイソシアネートとの反応物であるジイソシアネート化合物等が挙げられる。なかでも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートのような芳香族環を有するものが耐刷性の観点より好ましい。
また、前記一般式(ii)又は一般式(iii)で表されるカルボキシル基を有するジオール化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、酒石酸等が挙げられる。なかでも、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸が、イソシアネートとの反応性の観点から、より好ましい。
前記特定ポリウレタンは、上記ジイソシアネート化合物及びジオール化合物を非プロトン性溶媒中、それぞれの反応性に応じた活性の公知な触媒を添加し、加熱することにより合成される。
特定ポリウレタンを合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。
使用するジイソシアネート及びジオール化合物のモル比は好ましくは0.8:1〜1.2:1であり、ポリマー末端にイソシアネート基が残存した場合、アルコール類又はアミン類等で処理することにより、最終的にイソシアネート基が残存しない形で合成される。
本発明に用いることができる前記ポリウレタン樹脂の好ましい具体例として、PU−1〜PU−68を、その原料モノマーと使用したモル比及び得られた特定ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)により示すが、前記ポリウレタン樹脂はこれらに限定されないことは言うまでもない。なお、下記の各モノマー名の下に記載の数字は、使用した各モノマーのモル比を表し、PU−1〜PU−68は、表1〜表3に記載した各モノマーの反応生成物としての特定ポリウレタンを意味する。
上記表1〜表3に記載の各原料モノマーのうち、熱/酸極性変換基を有するジオール化合物は前記例示化合物である。ポリイソシアネート化合物、及び、他のジオール化合物の詳細を以下に示す。

本発明に好適に使用される前記特定ポリウレタンの分子量は、重量平均(ポリスチレン標準)で5,000〜800,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、20,000〜100,000であることが更に好ましい。
このときの分散度(Mw/Mn)は、1.0〜20.0であることが好ましく、1.5〜16.0であることがより好ましく、2.0〜10.0であることが更に好ましい。分子量が上記範囲であると、十分な効果が得られ、また、現像性に優れる。
以下、前記特定ポリウレタンPU−5の合成例を示す。
〔合成例2:特定ポリウレタンPU−5の合成〕
300mL3つ口フラスコに、合成例1で得られたジオール化合物〔例示化合物(I)−1〕を9.57重量部、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)9.66重量部、メチルエチルケトン70重量部を秤取し、室温にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.04重量部およびMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.20重量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13重量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。反応液を水2,000重量部にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−5)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
前記例示特定ポリウレタンも、用いる原料モノマーを上記表1〜表3に記載のように代えた以外は、同様にして合成することができる。
(b)ポリウレタンを合成後に熱/酸極性変換基を高分子反応によって導入する方法
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基を側鎖に有するポリウレタンを合成し、得られた該ポリウレタン中の反応性基と反応する基および場合に応じて前述した熱/酸極性変換基の両者を有する化合物と反応させることにより、熱/酸極性変換基を側鎖に有するポリウレタンを得ることができる。
ポリウレタン合成時に問題とならない反応性基としては、カルボン酸基、ハロゲン原子、アルデヒド基、ケトン基、エステル基等を挙げることができ、該ポリウレタン中の反応性基と反応する基としては、ビニルエーテル基、アミノ基、チオール基、等を挙げることができる。
以下、高分子反応により熱/酸極性変換基を導入する方法を用いた特定ポリウレタンの合成について例を挙げて説明する。
〔合成例3:特定ポリウレタンPU−23の合成〕
300mLの3つ口フラスコに、DMPA(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸;東京化成工業製)15.42重量部、メチルエチルケトン173重量部を秤取し、室温(25℃)にて攪拌しながら、TDI(2,4−ジイソシアン酸トリレン;東京化成工業製)4.13重量部およびMDI(ミリオネートMT;日本ポリウレタン工業製)23.71重量部、ネオスタンU−600(日東化成(株)製:ビスマス触媒)0.13重量部を、この順に添加し、70℃にて6時間加熱・攪拌した。その後、反応液中に、(+)−10−カンファースルホン酸(東京化成工業製)0.01重量部、ブチルビニルエーテル(東京化成工業製)4.14重量部を、室温下、30分かけて滴下し、30℃にて2時間反応を行った。反応液を炭酸水素ナトリウム10重量部、水2,000重量部からなる水溶液にあけ、ポリウレタンを析出させた。これを濾取、洗浄、乾燥し、特定ポリウレタン(PU−23)を得た。目的物であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、GPC(ポリスチレン換算)から確認した。
上層中に含まれる前記特定ポリウレタンの含有量は、全固形分中、2.0重量%〜99.5重量%であることが好ましく、10.0重量%〜99.0重量%であることがより好ましく、20.0重量%〜90.0重量%であることが更に好ましい。
なお、ここで「固形分」とは、上層を形成するためのポジ型組成物中の溶剤を除いた成分の合計量を表す。
〔酸発生剤〕
画像記録層の上層には、感度向上の観点から、酸発生剤を含有することが好ましい。
本発明において酸発生剤とは、光又は熱により酸を発生する化合物であり、赤外線の照射や、100℃以上の加熱によって分解し酸を発生する化合物を指す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等のpKaが2以下の強酸であることが好ましい。この酸発生剤から発生した酸が触媒として機能し、前記酸分解性基における化学結合が開裂して酸基となり、上層のアルカリ水溶液に対する溶解性がより向上するものである。
本発明において好適に用いられる酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、US4,708,925号や特開平7−20629号に記載されている化合物を挙げることができる。特に、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物や特開平1−102456号及び特開平1−102457号の各公報に記載されているジアゾ樹脂も好ましい。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2−100054号、特開平2−100055号及び特願平8−9444号に記載されている活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。他にも、特開平7−271029号に記載されている、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
さらに、前記特開平8−220752号公報において、「酸前駆体」として記載されている化合物、或いは、特開平9−171254号号公報において「(a)活性光線の照射により酸を発生し得る化合物」として記載されている化合物なども本発明の酸発生剤として適用しうる。
なかでも、感度と安定性の観点から、酸発生剤としてオニウム塩化合物を用いることが好ましい。以下、オニウム塩化合物について説明する。
本発明において好適に用い得るオニウム塩化合物としては、赤外線露光、及び、露光により赤外線吸収剤から発生する熱エネルギーにより分解して酸を発生する化合物として知られる化合物を挙げることができる。本発明に好適なオニウム塩化合物としては、感度の観点から、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する、以下に述べるオニウム塩構造を有するものを挙げることができる。
本発明において好適に用いられるオニウム塩としては、公知のジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、アジニウム塩等が挙げられ、なかでも、トリアリールスルホニウム、又は、ジアリールヨードニウムのスルホン酸塩、カルボン酸塩、BF4 -、PF6 -、ClO4 -などが好ましい。
本発明において酸発生剤として用いうるオニウム塩としては、下記一般式(III)〜一般式(V)で表されるオニウム塩が挙げられる。
式(III)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、スルホン酸イオン、および、ペルフルオロアルキルスルホン酸イオン等フッ素原子を有するスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、アリールスルホン酸イオン、及びペルフルオロアルキルスルホン酸イオンである。
式(IV)中、Ar21は炭素原子数20個以下のアリール基を示す。Ar21は置換基を有していてもよい。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
式(V)中、R31、R32及びR33は、それぞれ炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。これらは置換基を有していてもよい。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(III)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−6])、一般式(IV)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−2])、及び一般式(V)で示されるオニウム塩([OS−1]〜[OS−4])の具体例を以下に挙げる。
また、一般式(III)〜一般式(V)で表される化合物の別の例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0036〕〜〔0045〕において、ラジカル重合開始剤の例として記載の化合物を、本発明における酸発生剤として好適に用いることができる。
本発明に用いられる酸発生剤として好ましいオニウム塩の別の例として、下記一般式(VI)で表されるアジニウム塩化合物が挙げられる。
一般式(VI)中、R41、R42、R43、R44、R45、及びR46は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子、または一価の置換基を表す。
一価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、置換アミノ基、置換カルボニル墓、水酸基、置換オキシ基、チオール基、チオエーテル基、シリル基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、スルホ基、置換スルホニル基、スルホナト基、置換スルフィニル基、ホスホノ基、置換ホスホノ基、ホスホナト基、置換ホスホナト基、等が挙げられ、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
一般式(VI)で表される化合物としては、一般式(VI)で表される化合物における特定構造の骨格(カチオン部)が、R41を介して結合し、カチオン部が分子中に2個以上含まれる化合物(多量体型)も包含され、このような化合物も好適に用いられる。
41-はZ11-と同義の対イオンを表す。
上記一般式(VI)で示されるアジニウム塩化合物の具体例としては、特開2008−195018公報の段落番号〔0047〕〜〔0056〕に記載の化合物を挙げることができる。
また、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号ならびに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群もまた、本発明における酸発生剤として好適に用いられる。
本発明に用いうる酸発生剤のより好ましい例として、下記化合物(PAG−1)〜(PAG−5)が挙げられる。
これらの酸発生剤を本発明における上層を構成するポジ型感光性組成物中に含有させる場合、これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
酸発生剤を上層に添加する場合の、好ましい添加量は、上層の全固形分に対し0.01重量%〜50重量%、好ましくは0.1重量%〜40重量%、より好ましくは0.5重量%〜30重量%の範囲である。添加量が上記範囲において、酸発生剤添加の効果である感度の向上が見られるとともに、非画像部における残膜の発生が抑制される。
〔酸増殖剤〕
本発明における上層には、酸増殖剤を添加してもよい。
本発明における酸増殖剤とは、比較的に強い酸の残基で置換された化合物であって、酸触媒の存在下で容易に脱離して新たに酸を発生する化合物である。すなわち、酸触媒反応によって分解し,再び酸(以下、一般式でZOHと記す)を発生する。1反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に酸濃度が増加することにより、飛躍的に感度が向上する。この発生する酸の強度は,酸解離定数(pKa)として3以下であり、さらに2以下であることが好ましい。これよりも弱い酸であると,酸触媒による脱離反応を引き起こすことができない。
このような酸触媒に使用される酸としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェニルスルホン酸等が挙げられる。
酸増殖剤は、WO95/29968号、WO98/24000号、特開平8−305262号、特開平9−34106号、特開平8−248561号、特表平8−503082号、米国特許第5,445,917号、特表平8−503081号、米国特許第5,534,393号、米国特許第5,395,736号、米国特許第5,741,630号、米国特許第5,334,489号、米国特許第5,582,956号、米国特許第5,578,424号、米国特許第5,453,345号、米国特許第5,445,917号、欧州特許第665,960号、欧州特許第757,628号、欧州特許第665,961号、米国特許第5,667,943号、特開平10−1598号等に記載の酸増殖剤を1種、或いは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明における酸増殖剤の好ましい具体例としては、例えば、特開2001−66765公報段落番号〔0056〕〜〔0067〕に記載される化合物を挙げることができる。なかでも、例示化合物(ADD−1)、(ADD−2)、(ADD−3)として記載された下記化合物を好適に用いることができる。
これらの酸増殖剤を上層中に添加する場合の添加量としては、固形分換算で、0.01重量%〜20重量%,好ましくは0.01重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲である。酸増殖剤の添加量が上記範囲において、酸増殖剤を添加する効果が充分に得られ、感度向上が達成されるとともに、画像部の膜強度低下が抑制され、特定ポリウレタンに起因する優れた膜強度が維持される。
更に、本発明における上層中には、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂を併用することができる。上層自体は、特に非画像部領域において、アルカリ可溶性を発現することを要するため、この特性を損なわない樹脂を選択する必要がある。この観点から、併用可能な樹脂としては、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。一般的な水不溶性且つアルカリ可溶性樹脂については以下に詳述するが、中でも、例えば、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂等を好ましく挙げることができる。
また、混合する量としては、前記ポリウレタン樹脂に対して50重量%以下であることが好ましい。
また、本発明の平版印刷版原版の上層には、さらに赤外線吸収剤を含むことが好ましい。赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、以下に詳述する下層に含まれる赤外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
特に好ましい染料は、後述する一般式(a)で表されるシアニン染料である。
上層に赤外線吸収剤を添加する際の添加量としては、上層全固形分に対し、0.01重量%〜50重量%であることが好ましく、0.1重量%〜30重量%であることがより好ましく、1.0重量%〜30重量%であることが特に好ましい。添加量が0.01重量%以上であると、高感度となり、また、50重量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
〔赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂を含有する下層〕
本発明の平版印刷版原版の画像記録層において、支持体側に設けられる層である下層は、赤外線吸収剤とアルカリ可溶性樹脂とを含有し、所望によりその他の添加剤を含有してもよい。
以下、下層が含有する各成分について説明する。本発明において、「アルカリ可溶性」とは、pH8.5〜13.5のアルカリ水溶液に標準現像時間の処理で可溶であることを意味する。
<赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版の下層には、赤外線吸収剤を含む。
赤外線吸収剤としては、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収剤として知られる種々の染料を用いることができる。
本発明に用いることができる赤外線吸収剤としては、市販の染料及び文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料などの染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち、赤外光又は近赤外光を少なくとも吸収するものが、赤外光又は近赤外光を発光するレーザーでの利用に適する点で好ましく、シアニン染料が特に好ましい。
これらの染料のうち特に好ましいものとして、下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明における下層に使用した場合に、高い活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
一般式(a)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。Xは、酸素原子又は硫黄原子を示す。Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、又はヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
上記式中、Xaは後述するZaと同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。
、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。
、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zaは、対アニオンを示す。但し、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za-は必要ない。好ましいZaは、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]、特開2002−40638号公報の段落番号[0012]〜[0038]、特開2002−23360号公報の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
下層が含有する赤外線吸収剤として特に好ましくは、以下に示すシアニン染料Aでる。
下層における赤外線吸収剤の添加量としては、下層全固形分に対し、0.01重量%〜50重量%であることが好ましく、0.1重量%〜30重量%であることがより好ましく、1.0重量%〜10重量%であることが特に好ましい。添加量が0.01重量%以上であると、感度が高くなり、また、50重量%以下であると、層の均一性が良好であり、層の耐久性に優れる。
<水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂>
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、アルカリ性現像液などのアルカリ水溶液に接触すると溶解する特性を有するものであれば特に制限はないが、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する共重合体、又は、これらの混合物であることが好ましい。
このような酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有することが好ましい。したがって、このような樹脂は、上記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーを1つ以上含むモノマー混合物を共重合することによって好適に生成することができる。前記官能基を有するエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸の他に、下式で表される化合物及びその混合物が好ましく例示できる。なお、下式中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
本発明に用いることができるアルカリ可溶性樹脂としては、上記重合性モノマーの他に、他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物であることが好ましい。この場合の共重合比としては、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、スルホンアミド基、活性イミド基等の官能基を有するモノマーのようなアルカリ可溶性を付与するモノマーを10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。アルカリ可溶性を付与するモノマーの共重合成分が10モル%以上であると、アルカリ可溶性が十分得られ、また、現像性に優れる。
使用可能な他の重合性モノマーとしては、下記に挙げる化合物を例示することができる。
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、等のアルキルアクリレートやアルキルメタクリレート。2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン類。N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のその他の窒素原子含有モノマー。N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2,6−ジエチルフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマレイミド、等のマレイミド類。
これらの他のエチレン性不飽和モノマーのうち、好適に使用されるのは、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、(メタ)アクリロニトリルである。
また、アルカリ可溶性樹脂としては、ノボラック樹脂が好ましく挙げられる。
本発明に用いることができるノボラック樹脂としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,又はm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。
また更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3−8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体が挙げられる。また、その重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量(Mn)が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が2,000以上、かつ数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5,000〜300,000で、かつ数平均分子量が800〜250,000であることがより好ましい。また、前記アルカリ可溶性樹脂の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であることが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の下層におけるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
本発明における下層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、50重量%〜98重量%の範囲であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂の添加量が50重量%以上であると記録層(感光層)の耐久性に優れ、また、98重量%以下であると、感度、及び、耐久性の両方に優れる。
<その他の添加剤>
前記下層及び上層を形成するにあたっては、上記の必須成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。以下に挙げる添加剤は、下層のみに添加してもよいし、上層のみに添加してもよいし、両方の層に添加してもよい。
〔現像促進剤〕
前記上層及び/又は下層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加してもよい。
酸無水物類としては環状酸無水物が好ましく、具体的に環状酸無水物としては、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシテトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。非環状の酸無水物としては、無水酢酸などが挙げられる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、2,2’−ビスヒドロキシスルホン、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されており、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。 上記の酸無水物、フェノール類及び有機酸類の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.05重量%〜20重量%が好ましく、0.1重量%〜15重量%がより好ましく、0.1重量%〜10重量%が特に好ましい。
〔界面活性剤〕
上層及び/又は下層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−57820号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
界面活性剤の下層又は上層の全固形分に占める割合は、0.01重量%〜15重量%が好ましく、0.01重量%〜5重量%がより好ましく、0.05重量%〜2.0重量%が更に好ましい。
〔焼出し剤/着色剤〕
上層及び/又は下層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼出し剤及び着色剤としては、例えば、特開2009−229917号公報の段落番号〔0122〕〜〔0123〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を本発明にも適用しうる。
これらの染料は、下層又は上層の全固形分に対し、0.01重量%〜10重量%の割合で添加することが好ましく、0.1重量%〜3重量%の割合で添加することがより好ましい。
〔可塑剤〕
上層及び/又は下層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、下層又は上層の全固形分に対し、0.5重量%〜10重量%の割合で添加することが好ましく、1.0重量%〜5重量%の割合で添加することがより好ましい。
〔ワックス剤〕
上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6,117,913号明細書、特開2003−149799号公報、特開2003−302750号公報、又は、特開2004−12770号公報に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物などを挙げることができる。
添加量として好ましいのは、上層中に占める割合が0.1重量%〜10重量%であることが好ましく、0.5重量%〜5重量%であることがより好ましい。
<下層及び上層の形成>
本発明の平版印刷版原版における下層及び上層は、通常、前記各成分を溶剤に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。
なお、下層及び上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と、上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、又は、上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。
以下、これらの方法について詳述するが、2つの層を分離して塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
下層に含まれる成分と上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法としては、上層用塗布液を塗布する際に、下層に含まれる成分のいずれもが不溶な溶剤系を用いるものである。これにより、二層塗布を行っても、各層を明確に分離して塗膜にすることが可能になる。例えば、下層成分として、上層成分であるアルカリ可溶性樹脂を溶解するメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等の溶剤に不溶な成分を選択し、該下層成分を溶解する溶剤系を用いて下層を塗布・乾燥し、その後、アルカリ可溶性樹脂を主体とする上層をメチルエチルケトンや1−メトキシ−2−プロパノール等で溶解し、塗布・乾燥することにより二層化が可能になる。
次に、2層目(上層)を塗布後に、極めて速く溶剤を乾燥させる方法としては、ウェブの走行方向に対してほぼ直角に設置したスリットノズルより高圧エアーを吹きつけることや、蒸気等の加熱媒体を内部に供給されたロール(加熱ロール)よりウェブの下面から伝導熱として熱エネルギーを与えること、あるいはそれらを組み合わせることにより達成できる。
また、新たな機能を付与するために、本発明の効果を充分に発揮する範囲において、積極的に上層及び下層の部分相溶を行う場合もある。そのような方法としては、上記溶剤溶解性の差を利用する方法、2層目を塗布後に極めて速く溶剤を乾燥させる方法のいずれにおいても、その程度を調整する事によって可能となる。
支持体上に塗布される下層/上層用塗布液中の、溶剤を除いた前記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1重量%〜50重量%であることが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、上層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、上層塗布方法は、非接触式であることが好ましい。また、接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いることも可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが好ましい。
本発明の平版印刷版原版の支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.5g/m〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.6g/m〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.5g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
また、上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05g/m〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.08g/m〜0.7g/mの範囲であることがより好ましい。0.05g/m以上であると、現像ラチチュード、及び、耐傷性に優れ、1.0g/m以下であると、感度に優れる。
下層及び上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.6g/m〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、0.7g/m〜2.5g/mの範囲にあることがより好ましい。0.6g/m以上であると、耐刷性に優れ、4.0g/m以下であると、画像再現性及び感度に優れる。
<支持体>
本発明の画像形成材料に使用される支持体としては、必要な強度と耐久性を備えた寸度的に安定な板状物であれば特に制限はなく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙、又は、プラスチックフィルム等から目的に応じて適宜選択される。
なかでも、本発明の画像形成材料を平版印刷版原版に適用する場合には、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸度安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート又は蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は10重量%以下であることが好ましい。
本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mmであることが好ましく、0.15mm〜0.4mmであることがより好ましく、0.2mm〜0.3mmであることが特に好ましい。
このようなアルミニウム板には、必要に応じて粗面化処理、陽極酸化処理などの表面処理を行ってもよい。アルミニウム支持体の表面処理については、例えば、特開2009−175195号公報の〔0167〕〜〔0169〕に詳細に記載されるような、界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理、表面の粗面化処理、陽極酸化処理などが適宜、施される。
陽極酸化処理を施されたアルミニウム表面は、必要により親水化処理が施される。
親水化処理としては、2009−175195号公報の〔0169〕に開示されている如き、アルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法、フッ化ジルコン酸カリウム或いは、ポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
<下塗層>
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に前記下層及び上層の2層を積層してなる重層の記録層を設けたものであるが、必要に応じて支持体と下層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、並びに、ヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が好ましく挙げられる。また、これら下塗層成分は、1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。下塗層に使用される化合物の詳細、下塗層の形成方法は、特開2009−175195号公報の段落番号〔0171〕〜〔0172〕に記載され、これらの記載は本発明にも適用される。
有機下塗層の被覆量は、2mg/m〜200mg/mであることが好ましく、5mg/m〜100mg/mであることがより好ましい。被覆量が上記範囲であると、十分な耐刷性能が得られる。
<バックコート層>
本発明の平版印刷版原版の支持体裏面には、必要に応じてバックコート層が設けられる。かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OCなどのケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液性に優れており特に好ましい。
上記のようにして作製された平版印刷版原版は、画像様に露光され、その後、現像処理を施される。
(平版印刷版の製版方法)
本発明の平版印刷版の作製方法は、前記本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含むことを特徴とする。
本発明の赤外線レーザー用ポジ型平版印刷版原版を画像露光する露光工程、及び、現像液を用いて現像する現像工程、をこの順で含むことが好ましい。
本発明の平版印刷版の作製方法によれば、焼きだめ性が良好となり、得られた平版印刷版は、非画像部の残膜に起因する汚れの発生がなく、画像部の強度、耐久性に優れる。
<露光工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、本発明の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を画像様に露光する露光工程を含む。
本発明の平版印刷版原版の画像露光に用いられる活性光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーがより好ましい。中でも、本発明においては、波長750nm〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー又は半導体レーザーにより画像露光されることが特に好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10mJ/cm〜300mJ/cmであることが好
ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
<現像工程>
本発明の平版印刷版の製版方法は、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程を含む。
現像工程に使用されるpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液(以下、「現像液」ともいう。)は、pH8.5〜10.8のアルカリ水溶液であり、pH9.0〜10.0であることがより好ましい。また、前記現像液は、界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を少なくとも含むことがより好ましい。界面活性剤は処理性の向上に寄与する。
前記現像液に用いられる界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステル、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物が好ましく用いられる。
また、水に対する安定な溶解性あるいは混濁性の観点から、HLB値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
両性界面活性剤は、界面活性剤の分野においてよく知られているように、アニオン性部位とカチオン性部位とを同一分子内に持つ化合物であり、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤が含まれる。
現像液に用いることができる両性界面活性剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前記現像液に用いられる界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤が更に好ましく、スルホン酸又はスルホン酸塩を含有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01重量%〜10重量%が好ましく、0.01重量%〜5重量%がより好ましい。
前記現像液をpH6〜13.5に保つためには、緩衝剤として炭酸イオン、炭酸水素イオンが存在することで、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。炭酸イオン、炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩を現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
現像液のpHは、現像可能であれば特に限定されないが、pH8.5〜10.8の範囲であることが好ましい。
炭酸塩及び炭酸水素塩の総量は、現像液の全重量に対して、0.3重量%〜20重量%が好ましく、0.5重量%〜10重量%がより好ましく、1重量%〜5重量%が特に好ましい。総量が0.3重量%以上であると現像性、処理能力が低下せず、20重量%以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的に他のアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタ
ノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
前記現像液には上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。ただし、水溶性高分子化合物を添加すると、特に現像液が疲労した際に版面がベトツキやすくなるため、添加しないことが好ましい。
現像の温度は、現像可能であれば特に制限はないが、60℃以下であることが好ましく、15℃〜40℃であることがより好ましい。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。現像及び現像後の処理の一例としては、アルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する方法が例示できる。また、他の例としては、炭酸イオン、炭酸水素イオン及び界面活性剤を含有する水溶液を用いることにより、前水洗、現像及びガム引きを同時に行う方法が好ましく例示できる。よって、前水洗工程は特に行わなくともよく、一液を用いるだけで、更には一浴で前水洗、現像及びガム引きを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。現像の後は、スクイズローラ等を用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
現像工程は、擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像露光後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号公報、特開昭60−59351号公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像露光後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
本発明に使用する回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版の支持体における腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報、特開平3−100554号公報に記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は20μm〜400μm、毛の長さは5mm〜30mmのものが好適に使用できる。
回転ブラシロールの外径は30mm〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は0.1m/sec〜5m/secが好ましい。回転ブラシロールは、複数本用いることが好ましい。
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去がさらに確実となる。更に、回転ブラシロールをブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
現像工程の後、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
本発明の平版印刷版の作製方法において好適に用いられる自動処理機としては、現像部と乾燥部とを有する装置が用いられ、平版印刷版原版に対して、現像槽で、現像とガム引きとが行なわれ、その後、乾燥部で乾燥されて平版印刷版が得られる。
また、耐刷性等の向上を目的として、現像後の印刷版を非常に強い条件で加熱することもできる。加熱温度は、通常200℃〜500℃の範囲である。温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じる恐れがある。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に好適に用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるモノではない。
(実施例1〜26、比較例1、2)
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS A 1050アルミニウム板をパミス−水懸濁液を研磨剤として回転ナイロンブラシで表面を砂目立てした。このときの表面粗さ(中心線平均粗さ) は0.5μmであった。水洗後、10%苛性ソーダ水溶液を70℃に温めた溶液中に浸漬して、アルミニウムの溶解量が6g/mになるようにエッチングした。水洗後、30%硝酸水溶液に1分間浸漬して中和し、十分水洗した。その後に、0.7%硝酸水溶液中で、陽極時電圧13ボルト、陰極時電圧6ボルトの矩形波交番波形電圧を用いて20秒間電解粗面化を行い、20%硫酸の50℃溶液中に浸漬して表面を洗浄した後、水洗した。
粗面化後のアルミニウムシートに、20%硫酸水溶液中で直流を用いて多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。電流密度5A/dmで電解を行い、電解時間を調節して、表面に重量4.0g/mの陽極酸化皮膜を有する基板を作製した。この基板を100℃1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間処理して封孔率60%の基板(a)を作製した。基板(a)をケイ酸ナトリウム2.5重量%水溶液で30℃10秒間処理して表面親水化を行った後、下記下塗り液1を塗布し、塗膜を80℃で15秒間乾燥し平版印刷版用支持体〔A〕を得た。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/mであった。
〔下塗り液1〕
・分子量2.8万の下記共重合体 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
〔記録層の形成〕
得られた下塗り層を形成してなる支持体〔A〕に、下記組成の下層形成用塗布液組成物(1)を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.3g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の上層形成用塗布液組成物(2)をワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.7g/mとなる重層記録層を有する赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を得た。
<下層形成用塗布液組成物(1)>
・N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル=35/35/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量6.5万)
3.5g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量6000)
0.6g
・赤外線吸収剤(IR色素(1):下記構造) 0.25g
・エチルバイオレットの対アニオンを6−ヒドロキシ−β−ナフタレンスルホン酸にした染料 0.15g
・ビスフェノールスルホン 0.3g
・テトラヒドロフタル酸 0.4g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 60g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g
・γ−ブチロラクトン 20g
<上層形成用塗布液組成物(2)>
・特定ポリウレタン又は比較ポリマー(表4記載の化合物) 0.68g
・赤外線吸収剤(IR色素(1):上記構造) 0.045g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 26.0g
なお、比較ポリマー(REF−1)として、ノボラック樹脂 (m,p−クレゾール(6/4)、重量平均分子量:7,000、未反応クレゾール0.5質量%)を用いた。また、REF−2で示される比較ポリマーは、下記3種の原料モノマーの反応生成物である本発明の範囲外のポリウレタンである。
[耐刷性の評価]
得られた平版印刷版原版に、Creo社製Trendsetterにて露光エネルギーを変えて露光し、テストパターンを画像状に描き込んだ。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)を仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサーLP940Hを用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像を行って平版印刷版を得た。得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンにセットし、連続して印刷した。この際、どれだけの枚数が充分なインキ濃度を保って印刷できるかを目視にて測定し、測定された印刷枚数(耐刷枚数)により耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例1の耐刷枚数を1.0とした際の相対値として示した。
[現像ラチチュードの評価]
得られた平版印刷版原版をCreo社製Trendsetter3244VXにて、ビーム強度9w、ドラム回転速度150rpmで露光し、テストパターンを画像状に描き込込んだ。その後、下記組成のアルカリ現像液の、水の量を変更することにより希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ、富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間22秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の感光層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低いものとの電導導度の差を現像ラチチュードとして評価した。その結果を下記表3に示す。
[感度の評価]
得られた平版印刷版原版に対し、Creo社製Trendsetter3244VFSにて露光エネルギーを変えてテストパターンの描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の感光層残膜に起因する汚れや着色がなく良好に現像が行えた現像液の電導度の一番高いものと、一番低いものと、の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度160rpmのときのビーム強度)を測定して、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。その結果を表3に示す。
[焼きだめ性の評価]
露光後に25℃相対湿度70%の環境で一時間保存する以外は、上記感度評価と同様の評価を行った。そして、上記感度評価の結果を露光直後の感度として、保存することにより、その感度が低下する度合いを焼きだめ性の指針とした。その結果を表3に示す。なお、表3中の数値は露光後一時間での感度を表し、当該数値が露光直後の感度に近いほど焼きだめ性が良好であると評価する。
[耐薬品性の評価]
実施例・比較例の平版印刷版原版を、上記耐刷性の評価と同様にして露光・現像および印刷を行った。この際、5,000枚印刷する毎に、クリーナー(富士フイルム社製、マルチクリーナー)で版面を拭く工程を加え、耐薬品性を評価した。この時の耐刷枚数が、前述の耐刷性評価において測定した耐刷枚数の95%〜100%であるものを◎、80%以上95%未満であるものを○、60以上80%未満であるものを△、60%未満であるものを×とした。クリーナーで版面を拭く工程を加えた場合であっても、耐刷枚数の低下が小さいほど耐薬品性に優れるものと評価する。結果を以下の表3に示す。
〔バーニング処理後の耐刷性の評価〕
上記耐刷性の評価と同様に現像して得られた平版印刷版の版面を水洗後、富士フイルム(株)製のバーニング整面液BC−7で拭いた後、約270℃で2分間、バーニング処理を行った。その後、水洗し、富士フイルム(株)製ガムFP−2Wを水で体積を2倍に希釈した液で版面を処理した。その後、耐刷性の評価同様に、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、バーニング処理後の耐刷性を評価した。なお、耐刷性は、比較例1の耐刷枚数を1.0とした際の相対値として示した。
[現像液(アルカリ水溶液)]
・D ソルビット 2.5質量%
・水酸化ナトリウム 0.85質量%
・ポリエチレングリコールラウリルエーテル 0.5質量%
(重量平均分子量1,000)
・水 96.15質量%
(pH:13.3)
表4に明らかなように、本発明に係る特定ポリウレタンを用いた実施例の平版印刷版原版によれば、現像ラチチュード、露光ディスクリ(感度)を保ったまま、上層に比較ポリマーであるノボラック樹脂を使用した比較例1と比べて、耐刷性が大きく向上することが分かる。また、上層に本発明の範囲外のウレタン樹脂を用いた比較例2では、非画像部に残膜が発生し、良好な印刷物が得られなかった。
〔実施例27〜51、比較例3、4〕
〔支持体の作製〕
〔下塗り層の形成〕
実施例1と同様にして、支持体および下塗り層を作製した。
〔記録層の形成〕
得られた下塗り済の支持体に、下記組成の下層形成用塗布液組成物(3)を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.0g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の上層形成用塗布液組成物(4)ワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.5g/mとなる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。
<下層形成用塗布液組成物(3)>
・N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸=45/35/20(モル比)の共重合体(重量平均分子量50,000) 0.85g
・赤外線吸収剤(IR色素(1)) 0.045g
・エチルバイオレット 0.05g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製) 0.02g
・メチルエチルケトン 5g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 15g
・γ−ブチロラクトン 5g
<上層形成用塗布液組成物(4)>
・特定ポリウレタン又は比較ポリマー(表5記載の化合物) 0.68g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 26.0g
得られた平版印刷版原版を実施例1と同様にして評価した。なお、耐刷性、バーニング処理後の耐刷性は、それぞれ比較例3の耐刷枚数を1.0とした際の相対値として示した。結果を表5に示す
表5に明らかなように、本発明に係る特定ポリウレタンを用いた実施例の平版印刷版原版によれば、現像ラチチュード、露光ディスクリ(感度)を保ったまま、上層にノボラック樹脂を使用した比較例3と比べて、耐刷性が大きく向上することが分かる。また、上層に本発明の範囲外のウレタン樹脂を用いた比較例4では、非画像部に残膜が発生し、良好な印刷物が得られなかった。
〔実施例52〜80、比較例5、6〕
〔支持体の作製〕
〔下塗り層の形成〕
実施例1と同様にして、下塗り層を有する支持体を作製した。
〔記録層の形成〕
得られた下塗り層を有する支持体に、前述の下層形成用塗布液組成物(3)を、ワイヤーバーで塗布したのち、150℃の乾燥オーブンで40秒間乾燥して塗布量を1.2g/mとなるようにし、下層を設けた。下層を設けた後、下記組成の上層形成用塗布液組成物(5)をワイヤーバーで塗布し上層を設けた。塗布後150℃40秒間の乾燥を行い、下層と上層を合わせた塗布量が1.7g/mとなる赤外線レーザ用感光性平版印刷版原版を得た。
<上層形成用塗布液組成物(5)>
・特定ポリウレタン又は比較ポリマー(表6記載の化合物) 0.68g
・赤外線吸収剤(IR色素(1)) 0.045g
・酸発生剤(表6記載の化合物) 0.150g
・酸増殖剤(表6記載の化合物) 0.100g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−780、DIC(株)製) 0.03g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 26.0g
得られた平版印刷版原版を実施例1と同様に評価した。なお、耐刷性、バーニング処理後の耐刷性は、それぞれ比較例5の耐刷枚数を1.0とした際の相対値として示した。結果を表6に示す
表6に明らかなように、本発明に係る特定ポリウレタンを用いた実施例の平版印刷版原版によれば、現像ラチチュード、露光ディスクリ(感度)を保ったまま、上層にノボラック樹脂を使用した比較例5よりも、耐刷性が大きく向上することが分かる。また、実施例52〜60に示すように、酸発生剤および酸増殖剤をさらに添加した平版印刷版原版では、酸発生剤および酸増殖剤を含まないものと比較し、感度・焼きだめがより良化することが分かった。また、現像ラチチュードが良化することは意外な結果であった。
<実施例81〜114、比較例7、8>
実施例52〜80、比較例5、6において、前述の上層形成用塗布液組成物(5)に用いる化合物を下記表7のように変更した以外は、同様にして、支持体、下塗り層、下層、及び上層を作製し平版印刷版原版を得た。得られた平版印刷版原版を、現像工程を下記条件に変えた以外は、前記実施例1と同様に評価した。なお、耐刷性、バーニング処理後の耐刷性は、それぞれ比較例7の耐刷枚数を1.0とした際の相対値として示した。結果を表7に示す。
(現像工程)
露光後の平版印刷版原版を自動現像処理機〔現像槽25L、版搬送速度100cm/min、ポリブチレンテレフタレート繊維(毛直径200μm、毛長17mm)植え込んだ外形50mm)のブラシロール1本が搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)乾燥温度80℃〕および以下に示す処方の現像液を用いて温度30℃にて現像を行った。
[現像液]
・水 8963.8g
・炭酸ナトリウム 200g
・炭酸水素ナトリウム 100g
・界面活性剤(表7記載) 656g
・EDTA 4Na 80g
・2−ブロモ−2−ニトロプロパンジオール 0.1g
・2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.1g
(pH=9.7)
表7に記載の界面活性剤の詳細を以下に示す。
SU−1:ニューコールB4SN(ポリオキシエチレンナフチルエーテル硫酸塩 日本乳化剤(株)製)
SU−2:パイオニンB−111(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド 竹本油脂(株)製)
SU−3:ニューコールB13(ノニオン系界面活性剤 日本乳化剤(株)製)
本発明に係る特定ポリウレタンを用いた実施例81〜114の平版印刷版原版の現像ラチチュードは、現像液を換えた場合でも、実施例52〜80におけるのと同様に良好な値を示した。また、表7に明らかなように、本発明に係る特定ポリウレタンを用いた実施例の平版印刷版原版によれば、露光ディスクリ(感度)を保ったまま、上層にノボラック樹脂を使用した場合と比較して、耐刷性が大きく向上することが分かる。また、実施例83〜90に示すように、酸発生剤および酸増殖剤をさらに添加した平版印刷版原版では、酸発生剤および酸増殖剤を含まないものと比較し、感度が良化することが分かった。

Claims (11)

  1. 支持体上に、赤外線吸収剤及び水不溶かつアルカリ可溶性樹脂を含む下層と、熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンを含む上層と、を順次備える画像形成材料。
  2. 前記熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンが、熱により分解して酸基となる官能基を側鎖に有するポリウレタンである請求項1に記載の画像形成材料。
  3. 前記熱により分解して酸基となる官能基が分解して発生する酸基が、カルボン酸基、スルホン酸基、及び、フェノール性水酸基から選択される酸基である請求項2に記載の画像形成材料。
  4. 前記熱によりアルカリ水溶液への溶解性が向上するポリウレタンが、ジイソシアネート化合物と、下記一般式(1)で表されるジオール化合物と、の反応生成物である請求項2又は請求項3に記載の画像形成材料。

    前記一般式(1)中、Lは、炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択される原子を含んで構成される3価の連結基を表す。
    A1は熱により分解して酸基となる官能基を表す。
  5. 前記熱により分解して酸基となる官能基が、下記一般式(2)〜一般式(4)で表される官能基より選択される少なくとも1種である請求項2に記載の画像形成材料。

    一般式(2)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合してヘミアセタールを構成する官能基を表す。
    一般式(3)中、Rは、隣接する酸素原子と結合してシリルエステル基を構成する官能基を表す。
    一般式(4)中、Rは、隣接する酸素原子と結合して2級エステルを構成する官能基、又は、隣接する酸素原子と結合して3級エステルを構成する官能基を表す。
  6. 前記上層に、さらに酸発生剤を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成材料。
  7. 前記上層に、さらに赤外線吸収剤を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成材料。
  8. 前記上層に、さらに酸増殖剤を含む請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成材料。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成材料を用いてなる赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版。
  10. 請求項9に記載の赤外線感応性ポジ型平版印刷版原版を赤外線により画像様に露光する露光工程と、
    露光後の平版印刷版原版をpH8.5〜10.8のアルカリ水溶液を用いて現像する現像工程と、をこの順で含む平版印刷版の作製方法。
  11. 前記アルカリ水溶液が、アニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤を含む請求項10に記載の平版印刷版の作製方法
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