JP2012078081A - アルミニウム製フィン材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム板1またはアルミニウム合金板1の表面に、樹脂バインダー2aと多孔質微粒子2bとを含む樹脂組成物から得られた親水性皮膜層2が形成されてなるアルミニウム製フィン材10であって、前記樹脂バインダー2aは、所定の官能基を有する単量体から構成される重合体、共重合体、または、当該重合体および当該共重合体の少なくとも1種以上からなる混合物からなり、前記多孔質微粒子2bは、非水溶性のアミド系樹脂、またはセルロース系化合物からなるものであることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、本発明に係るアルミニウム製フィン材は、前記アルミニウム板または前記アルミニウム合金板の表面に形成されている各皮膜層(親水性皮膜層と潤滑皮膜層、親水性皮膜層と耐食皮膜層、親水性皮膜層と潤滑皮膜層と耐食皮膜層)の合計付着量は、片面当たり、0.1〜10.0g/m2であることが好ましい。
[アルミニウム製フィン材]
本発明に係るアルミニウム製フィン材10(以下、適宜、フィン材10とする)は、図1(a)に示すように、アルミニウム板1またはアルミニウム合金板1(以下、適宜、基板1とする)と、基板1表面に形成されている親水性皮膜層2と、から構成される。そして、図1(b)に示すように、親水性皮膜層2の表面に潤滑皮膜層3が形成されていることが好ましく、図1(c)、(d)に示すように、基板1と親水性皮膜層2との間に耐食皮膜層4または耐食性化成処理皮膜5が形成されていることがより好ましい。
また、図1(e)に示すように、基板1と親水性皮膜層2との間に耐食皮膜層4および耐食性化成処理皮膜5が形成されていることがさらに好ましい。
なお、図1(c)、(d)、(e)のフィン材10は、親水性皮膜層2の表面に潤滑皮膜層3が形成されているが、潤滑皮膜層3が形成されていなくてもよい。
以下、アルミニウム板1またはアルミニウム合金板1、親水性皮膜層2、潤滑皮膜層3、耐食皮膜層4、耐食性化成処理皮膜5、および、アルミニウム製フィン材10の製造方法を詳細に説明する。
本発明に係るフィン材10の基板1(アルミニウム板1またはアルミニウム合金板1)は、熱伝導性および加工性が優れることから、JIS H4000に規定される1000系のアルミニウム、好ましくは合金番号1200のアルミニウムが使用される。
なお、基板1の板厚は0.06〜0.3mm程度のものが好ましい。板厚が0.06mm未満では、基板1に必要とされる強度を確保することができず、一方、0.3mmを超えるとフィン材としての加工性が低下するからである。
本発明に係るフィン材10は、特定の樹脂バインダー2aと多孔質微粒子2bとを含有する樹脂組成物から得られる親水性皮膜層2を有している。この樹脂バインダー2aが親水性皮膜層2に優れた親水性を付与すると共に、フィン材10表面に付着した結露水の一部が親水性皮膜層2内部に浸透し、多孔質微粒子2bの開孔の中に取り込まれるため、親水性皮膜層2の水に対する接触角が小さくなり、フィン材10同士間の閉塞を抑制することが可能になったものと考えられる。また、この多孔質微粒子2bの吸湿性能は長期間に亘って発揮されるため、本発明に係るフィン材10の親水性も長期間に亘って維持される。
なお、本発明に係るフィン材10は、親水性皮膜層2に架橋剤(図示せず)を含んでいることが好ましい。架橋剤によって親水性皮膜層2が架橋されることにより、耐水性が向上するため、長期間に亘ってフィン材10の性能が維持されることとなる。
また、アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
なお、親水性皮膜層2に架橋剤を含有させた場合における架橋剤の樹脂バインダーに対する含有比率は、3質量%以上がよりに好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。
本発明に係るフィン材10においては、親水性皮膜層2の表面(基板1と反対側の表面)に、成形性を向上させるための潤滑皮膜層3を形成することが好ましい(図1(b)参照)。潤滑皮膜層3の存在によって摩擦係数が低減するため、熱交換器製造時のプレス成形性が一段と向上する。潤滑皮膜層3としては、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩よりなる群から選択される1種以上を含むものであることが好ましい。ポリエチレングリコールとカルボキシメチルセルロースナトリウムとを併用すると、造膜性および潤滑性(プレス成形性)が一層良好となるため、より好ましい実施態様である。併用の際の比率は、質量比で、ポリエチレングリコール:カルボキシメチルセルロースナトリウムが5〜9:1〜5程度が好ましい。
なお、潤滑皮膜層3が親水性皮膜層2の表面に形成されていても、潤滑皮膜層3は親水性を有することから、親水性皮膜層2が発揮する機能(フィン材の親水性の向上、親水性の長期間の維持等)を低下させることはない。
また、本発明に係るフィン材10においては、親水性皮膜層2と基板1との間に、耐食性を向上させる耐食皮膜層4を設けることが好ましい(図1(c)参照)。耐食皮膜層4の形成によって、本発明に係るフィン材10の耐食性が一段と向上するので、熱交換器の耐久性を高めることができる。また、耐食皮膜層4は疎水性であるため、基板2に水が浸透して、皮膜下腐食によって臭気を発生するのを抑制することができる。耐食皮膜層4には、従来公知の塗料用樹脂が使用でき、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、架橋ポリエステル系樹脂、架橋ポリオレフィン系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋アクリル系樹脂、および、架橋ウレタン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の樹脂を用いることが好ましい。ここで、架橋ポリエステル系樹脂、架橋ポリオレフィン系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋アクリル系樹脂および架橋ウレタン系樹脂とは、それぞれ、構造中に架橋性の官能基を有するポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂である。
なお、架橋性の官能基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、メチレン基、カルボジイミド基、アジリジン基及びメラミン等が挙げられる。
さらに、より一層の耐食性向上のため、基板1表面に対し、リン酸クロメート処理や塗布型ジルコニウム処理等の無機酸化物処理や、有機−無機複合化合物による処理等の公知の化成処理を施し、耐食性化成処理皮膜5を形成させることが好ましい(図1(d)、(e)参照)。これらの処理は、他の皮膜層(耐食皮膜層4、親水性皮膜層2、潤滑皮膜層3)を形成する前に行い、基板1と親水性皮膜層2との間(図1(d))、または、基板1と耐食皮膜層4との間(図1(e))に耐食性化成処理皮膜5を形成させる。
なお、耐食性化成処理皮膜5の付着量は、Cr換算で1〜100mg/m2が好ましい。
本発明に係るフィン材10の製造方法については、特に限定されないが、例えば、基板1(または、表面に耐食性化成処理皮膜5が形成されている基板1)に対し、各樹脂組成物を、ロールコート装置等を用いて、塗布、乾燥を繰り返し行うことで、耐食皮膜層4、親水性皮膜層2、潤滑皮膜層3を形成させることができる。
従来公知の製造方法により、純アルミニウム系のA1200(JIS H4000)からなるアルミニウム板(板厚0.10mm)を製造した。このアルミニウム板を、アルカリ性薬剤(日本ペイント社製「サーフクリーナー(登録商標)360」)で脱脂し、リン酸クロメート処理を行った。化成処理皮膜の付着量は、Cr換算で30mg/m2とした。
樹脂バインダーとして、ポリアクリル酸ナトリウム(「ジュリマー(登録商標)AC-10HN」:水溶液:日本純薬社製)と、アクリル酸とスルホン酸基含有単量体との共重合体(「アクアリック(登録商標)GL」:日本触媒社製)と、ポリビニルアルコール(「クラレポバールPVA105」:完全ケン化タイプ:クラレ社製)とを、多孔質微粒子としてポリアミド多孔質微粒子A(POMP−OPT(登録商標)平均粒径5μm:宇部興産社製)を後述の方法により湿式粉砕して平均粒径を1μmに調整したものを、それぞれ使用し、これらを表1に示した比率で混合し、純水で適宜希釈して、親水性皮膜層形成用の樹脂組成物aとした。なお、表1に示した比率は固形分である。
ポリアクリル酸:ジュリマーAC-10S:日本純薬社製
アクリル酸とスルホン酸基含有単量体との共重合体:アクアリック(登録商標)GL:日本触媒社製
ポリビニルアルコール:クラレポバールPVA105:クラレ社製
ポリビニルピロリドン:ポリビニルピロリドンK30 試薬:Mw約40000:和光純薬工業社製
ポリアクリルアミド:ポリアクリルアミド試薬:Mw約10000:50質量%水溶液:和光純薬工業社製
カルボキシメチルセルロースNa:セロゲン(登録商標)PR:第一工業製薬社製
ポリアミド多孔質微粒子A:POMP−OPT(登録商標)平均粒径5μm:宇部興産社製
多孔性セルロース粒子B:ビスコパール(登録商標)Pタイプ:平均粒径4mm:レンゴー社製
高吸水性樹脂粒子C:エスペック(登録商標)L:ポリアクリル酸ナトリウム系架橋樹脂:乾燥粒径1μm:水分散体:東洋紡績社製
珪酸ソーダD:4号珪酸ソーダ:富士化学社製
水溶性エポキシ樹脂:デナコールEX1610:ナガセケムテックス製
水溶性オキサゾリン基含有樹脂:エポクロス(登録商標)WS700:日本触媒社製
水分散性カルボジイミド化合物:カルボジライト(登録商標)E-02:日清紡ケミカル社製
耐食皮膜層用塗料は3種類調製した。塗料Iは、ポリオレフィン系樹脂水分散体(「ハイテックS-3148」:東邦化学工業社製)。塗料IIとしては、オキサゾリン基を有するアクリル系樹脂水分散体(「エポクロスWS700」:日本触媒社製)を用いた。塗料IIIとしては、ポリエステル系樹脂水分散体(「バイロナール(登録商標)MD-1200」:東洋紡績社製)と、メラミン系架橋剤(「スミマール(登録商標)M-50W」:住友化学社製)を、固形分の質量比で樹脂:架橋剤が85:15となるように混合した。
親水性皮膜層形成用の樹脂組成物a〜w、耐食皮膜層用塗料I〜III、上記潤滑皮膜層形成用塗料を用いて、表2および表3に示した皮膜構成となるように、上記リン酸クロメート処理後のアルミニウム板に塗工し、加熱乾燥し、アルミニウム製フィン材を製造した。各層とも塗工はバーコーターで行い、熱風乾燥炉を用いて最高到達温度200〜280℃の範囲内で適宜設定した条件で加熱乾燥した。最高到達温度はヒートシールテープで確認した。皮膜層の形成は、耐食皮膜層、親水性皮膜層、潤滑皮膜層の順序で行った。
下記の方法で性能評価を行い、結果を表2および表3に併記した。
アルミニウム製フィン材を、流量が0.1リットル/分である流水に8時間浸漬した後、80℃で16時間乾燥する工程を1サイクルとして、5サイクル行った。その後、アルミニウム製フィン材を室温に戻して、表面に約0.5μlの純水を滴下し、接触角測定器(協和界面科学社製:CA−05型)を用いて接触角を測定した。流水としては、水道水の場合と、純水(イオン交換水)の場合のそれぞれについて測定した。評価基準は以下の通りである。
◎(特に良好):接触角が20°未満
○(良好):接触角が20°以上、40°未満
△(概ね良好):接触角が40°以上、60°未満
×(不良):接触角が60°以上
バウデン式付着滑り試験機を用い、無塗油、荷重0.2kgf、移動速度4mm/秒の条件で測定した。
フィン成形用のプレス成形機で、アルミニウム製フィン材をフィンの形状に成形し、カラーの内面の焼き付きの有無を目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○(良好):カラーの内面に焼き付きが全く見られない
△(概ね良好):カラーの内面に軽微な焼き付きが見られる
×(不良):カラーの内面の全面で焼き付きが見られる
塗装面に軽く息を吹きかけ、親水性皮膜層の匂いを嗅ぎ取る方法によって評価した。評価基準は、以下の通りである。
○(良好):臭気は感知されない
×(不良):明らかな臭気が感知される
2 親水性皮膜層
2a 樹脂バインダー
2b 多孔質微粒子
3 潤滑皮膜層
4 耐食皮膜層
5 耐食性化成処理皮膜
10 アルミニウム製フィン材(フィン材)
Claims (11)
- アルミニウム板またはアルミニウム合金板の表面に、樹脂バインダーと多孔質微粒子とを含む樹脂組成物から得られた親水性皮膜層が形成されてなるアルミニウム製フィン材であって、
前記樹脂バインダーは、カルボン酸基、カルボン酸のアルカリ金属塩基、スルホン酸基、スルホン酸のアルカリ金属塩基、ヒドロキシ基、アミド基およびエーテル基よりなる群から選択される1種以上の官能基を有する単量体から構成される重合体、共重合体、または、当該重合体および当該共重合体の少なくとも1種以上からなる混合物からなり、
前記多孔質微粒子は、非水溶性のアミド系樹脂、またはセルロース系化合物からなるものであることを特徴とするアルミニウム製フィン材。 - 前記樹脂バインダーが、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸基含有共重合体のアルカリ金属塩、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、およびポリビニルピロリドンよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記樹脂バインダーが、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸のアルカリ金属塩、スルホン酸基含有共重合体、スルホン酸基含有共重合体のアルカリ金属塩、およびポリビニルアルコールよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記多孔質微粒子の平均粒径が5μm以下であり、前記親水性皮膜層中に1〜80質量%含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記親水性皮膜層が、架橋剤として、水溶性エポキシ樹脂、水溶性カルボジイミド化合物、水分散性カルボジイミド化合物および水溶性オキサゾリン基含有樹脂よりなる群から選択される1種以上の化合物を含むとともに、当該架橋剤によって架橋されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記親水性皮膜層の表面に、さらに、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩よりなる群から選択される1種以上を含む潤滑皮膜層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記親水性皮膜層と前記アルミニウム板または前記アルミニウム合金板との間に、無機酸化物または有機−無機複合化合物からなる耐食性化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記親水性皮膜層と前記アルミニウム板または前記アルミニウム合金板との間に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、架橋ポリエステル系樹脂、架橋ポリオレフィン系樹脂、架橋エポキシ系樹脂、架橋アクリル系樹脂、および、架橋ウレタン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の樹脂から得られる耐食皮膜層が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記耐食皮膜層と前記アルミニウム板または前記アルミニウム合金板との間に、無機酸化物または有機−無機複合化合物からなる耐食性化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする請求項8に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記親水性皮膜層の付着量が、片面当たり、0.1〜5.0g/m2であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
- 前記アルミニウム板または前記アルミニウム合金板の表面に形成されている各皮膜層の合計付着量は、片面当たり、0.1〜10.0g/m2であることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか1項に記載のアルミニウム製フィン材。
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