JP2012072032A - 誘電体スラリーの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

誘電体スラリーの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーを提供することができる誘電体スラリーの製造方法と、誘電損失が小さく、高誘電率で長寿命の積層セラミック電子部品とを提供すること。
【解決手段】誘電体粉末と溶剤とを少なくとも含む分散前処理溶液を、予備分散処理により混合分散する工程と、予備分散処理が行われた処理済み溶液を、湿式分級装置を用いて分級する工程と、を有し、予備分散処理が、予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する予備分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%である。
【選択図】図3

Description

本発明は、誘電体スラリーの製造方法および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、携帯電話、パソコン等の種々の電子機器に組み込まれ、その需要は年々増加してきている。さらに携帯電話、パソコン等の電子機器の小型化・軽量化の進展に伴い、微小化が強く求められてきており、このため、誘電体グリーンシート層の薄層化と多層化が求められている。
誘電体層の薄層化には、誘電体の分散を向上させる必要があり、例えば、下記の特許文献1においては、分散機としてメディアレスの高圧ホモジナイザーを誘電体分散工程に取り入れることで誘電体へのダメージを少なくし、かつ樹脂と誘電体との分散度の高い誘電体塗料を作製している。
しかし特許文献1に示す技術では、原材料に存在する粗粒をそのままビーズミルで砕くことで粒度分布を調整し薄層化に対応している。すなわち、特許文献1に示す技術では、誘電体粉のBET比表面積の変化が大きくなるように分散処理を行っている。このため、粉砕された誘電体粉を、後工程で焼成することになるが、その焼成工程での挙動が安定せず、電子部品としての性能に悪影響を与えるおそれがある。
また、下記の特許文献2においては、高圧ホモジナイザーとビーズミルの組み合わせの分散方法を開示しているが、メディアレス分散である高圧ホモジナイザーで解砕できる凝集は限られており、特に誘電体粉末の製造方法によっては高圧ホモジナイザーの圧力程度では解砕されない凝集塊の場合も多く、その後のビーズミル処理への負荷はそれほど低減しない。そのため、薄層化に対応するためには、誘電体粉末のBET比表面積が大きくなるようにその後分散処理を行う必要がある。
なお、下記の特許文献3に示すように、湿式分級装置を用いてセラミック電子部品に用いられる金属微粒子の均一化を図る技術は知られている。しかしながら、従来の分級処理は、分級処理後の微粒子を、いったん乾燥させてから塗料化またはスラリー化することが一般的であり、塗料化またはスラリー化したときに微粒子の分散性の点で難点があった。また、従来の方法では、分級処理を行う前の予備分散処理に関して何ら考慮されておらず、誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーの製造方法が求められていた。
特許第3675264号公報 特開2003−146764号公報 特開2010−84222号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、誘電体層の薄層化に適した誘電体スラリーを提供することができる誘電体スラリーの製造方法と、誘電損失が小さく、高誘電率で長寿命の積層セラミック電子部品とを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る誘電体スラリーの製造方法は、
誘電体粉末と溶剤とを少なくとも混合分散して誘電体スラリーを製造する方法であって、
前記誘電体粉末と溶剤とを少なくとも含む分散前処理溶液を、予備分散処理により混合分散する工程と、
前記予備分散処理が行われた処理済み溶液を、湿式分級装置を用いて分級する工程と、を有し、
前記予備分散処理が、予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する予備分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%であることを特徴とする。
本発明に係る誘電体スラリーの製造方法では、湿式分級工程を導入して誘電体分散工程の負荷を減らし、効率よく誘電体スラリーを作製することができる。また、本発明では、予備分散処理における誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%である。その範囲にあるときに、誘電体にダメージを与えず、二次凝集を解し、その後に行われる分級処理を精度よく行うことが可能となり、分級処理の効率が向上する。分級の前処理でダメージを与えて微粉が増加した場合でも分級点以上の粗粒が減少していれば分級効率は見かけ上ではあるが向上する。しかしながらその分級スラリーには微粉が含まれるためコンデンサの特性としては劣ることとなる。本発明の方法により得られる誘電体スラリーでは、微細で均一な粒径の誘電体粉末が均一に分散している。
好ましくは、前記予備分散処理が、第1分散処理と、前記第1分散処理の後に行われ、前記第1分散処理とは異なる第2分散処理との二段階の分散処理である。予備分散処理を二段階で行うことにより、粉体へのダメージが少なく、解砕が行われるため分級効率が向上する。
好ましくは、前記第1分散処理が、高速せん断型分散器による分散処理であり、前記第2分散処理が、メディアレス分散機、または、ビーズ径が0.05mm以下のビーズを用いるビーズミル分散機による分散処理である。このような分散処理の組合せにより分級効率が向上する。なお、高速せん断型分散機としては周速が20m/s以上が好ましく、さらには30m/s以上が好ましい。また主軸の回転数としては10000rpm以上が好ましい。また前記メディアレス分散機としては、高圧ホモジナイザー、または、超音波分散機が好ましく用いられる。ビーズミルとしてはΦ0.05mm以下のビーズが使用できればどれでも使用できるが、粗大粒子があっても影響を受けないタイプのものが使いやすい。
好ましくは、前記湿式分級装置が、遠心分離タイプである。遠心分離タイプの湿式分級装置を用いることにより、誘電体粉体にダメージを与えることなく、分級処理を容易に行うことができるだけでなく、量産性並びに粗粒側のスラリーの再利用のしやすさからも好ましい。
好ましくは、前記湿式分級装置により分級された微粒側の前記誘電体粉末を含む微粒側分散液を用いて薄膜用誘電体スラリーを製造する。本発明の方法では、分級処理後の粉体を乾燥させることなく、分級処理後の微粒側分散液を用いて容易に、微細で均一な粒径の誘電体粉末が均一に分散された薄膜用誘電体スラリーを製造することができる。薄膜用誘電体スラリーとしては、たとえば1.0μm以下の厚みの誘電体層を形成するための誘電体スラリーである。
なお、従来では、分級工程を導入してもミクロン領域までの乾式分級か、湿式分級でも誘電体粉体の製造工程のひとつとして入れているものばかりで、分級後に乾燥工程を経てしまっているので、特に、今後使われる予定の100nm前後の誘電体粉末においては再凝集を少なからず起こしてしまい、誘電体分散工程での負荷はさほど低減していない。本発明では、塗料作製工程の前半に分級工程を導入することで、層間厚みに適した粒度分布を持つスラリーを少ない分散負荷で取り出せることを本発明者等は見出した。
前記湿式分級装置により分級された前記誘電体粉末の粗粒側分散液を用いて厚膜用誘電体スラリーを製造してもよい。厚膜用誘電体スラリーとしては、たとえば1μm以上の厚みの誘電体層を形成するための誘電体スラリーである。厚膜用誘電体スラリーは、内部電極層が形成されない外装用グリーンシートを形成するためのスラリーとして用いても良い。
前記微粒側分散液に、バインダ樹脂の溶解液を混合してメディアレス分散機による後分散処理を行っても良い。分級処理後で乾燥を経ていない分級処理後の微粒側分散液はすでに粉体の分散としては十分であるため、その後の余分な分散工程が省略でき、樹脂との混合後では、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散のみで済むため、ダメージのない、粒度の揃った誘電体スラリーを得ることができる。そのため、分級処理後に、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機で分散した塗料は、それだけで薄膜塗布可能な誘電体スラリーとなる。
なお、本発明において、バインダ樹脂の溶解液を混合する際には、分級処理後の分散液の固形分濃度を正確に測ることで、塗料乾燥工程を経ず、そのまま次工程の後分散行程に移せ、分級の効果をより発現させることが可能となる。
好ましくは、前記後分散処理前の前記微粒側分散液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α’)に対する後分散処理後の前記微粒側分散液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β’)の変化率(100×(β’−α’)/α’)が0%を超え1%以下である。後分散処理におけるBET比表面積(β’)の変化率を所定範囲とすることで、誘電損失が少なく、高誘電率で高寿命の積層セラミック電子部品を製造することができる。
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
上記に記載の誘電体スラリーの製造方法により得られた誘電体スラリーを用いて、グリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
前記内部電極パターン層が形成された前記グリーンシートを、複数積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、を有する。
図1は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略断面図である。 図2(A)および図2(B)は図1に示す積層セラミックコンデンサの製造過程を示す概略断面図である。 図3は本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを製造する過程で用いられる薄膜用誘電体スラリーの製造プロセスを示すフローチャート図である。 図4は分級処理を行うシステムの概略図である。 図5は図4に示すシステムに用いる分級装置の概念図である。 図6はロータステータ型分散機の概念図である。 図7はホモジナイザー分散機の概念図である。 図8は超音波分散機の概念図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
積層セラミックコンデンサの構造
まず、本発明に係るセラミックスラリーを用いて製造される積層セラミックコンデンサの全体構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に、これらの内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の一方の端部4aに形成してある第1端子電極6の内側に対して電気的に接続してある。また、交互に積層される他方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の他方の端部4bに形成してある第2端子電極8の内側に対して電気的に接続してある。
コンデンサ素体4において、誘電体層10と内部電極層12との積層体の積層方向の両端部には、内部電極層を有されない外装用誘電体層14が形成してある。
積層セラミックコンデンサ2の形状やサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよい。積層セラミックコンデンサ2が直方体形状の場合は、通常、縦(0.4〜5.6[mm])×横(0.2〜5.0[mm])×厚み(0.1〜1.9[mm])程度である。
各誘電体層10の厚みは、特に限定されないが、0.15〜5.0[μm]程度であるが、本実施形態では、1.0μm以下である。誘電体層10の積層数は、特に限定されないが、好ましくは20〜1000である。
各内部電極層12の厚みは、好ましくは0.15〜5.0[μm]、より好ましくは0.25〜0.5[μm]程度である。内部電極層12の厚さは、電極の途切れが生じない範囲で薄い方がより望ましい。内部電極層12は、単一の層で構成してあってもよく、あるいは2以上の組成の異なる複数の層で構成してあってもよい。
第1端子電極6と第2端子電極8の材質は特に限定されないが、通常、銅や銅合金、ニッケルやニッケル合金などが用いられる。第1端子電極6と第2端子電極8の厚みも特に限定されないが、通常10〜50[μm]程度である。
誘電体層の組成
誘電体層10は、以下に示す主成分および各副成分を含有する。
主成分である誘電体粉末としては、チタン酸バリウムを用いることが好ましい。また、Ca,Sr、ZrおよびSnの少なくともいずれかを含む誘電体[例えば(Ba,Zr)TiO]を主成分として用いても良い。
第1副成分としては、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの少なくともいずれか1種の希土類元素の酸化物が例示される。
第2副成分としては、たとえばMgOが例示される。なお、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種の酸化物を、第3副成分として用いても良い。
第4副成分としては、たとえばSiO系の焼結助剤が例示される。第5副成分としては、V,MoOおよびWOから選ばれる少なくとも1種の酸化物が例示される。第5副成分としては、MnOおよびCrのから選ばれる少なくとも1種の酸化物が例示される。その他の副成分としては、たとえばAlを用いてもよい。
積層セラミックコンデンサの製造方法
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ2の製造方法の一例を説明する。
グリーンシートの製造方法
図1に示す誘電体層10を構成することになるグリーンシートを製造するために、グリーンシート用塗料(誘電体スラリー)を準備する。
まず、主成分の誘電体粉末および各副成分粉末と、バインダー樹脂の溶解液とを、後述する方法により分散混合して誘電体スラリーを得る。
誘電体粉末および各副成分粉末としては、上記した酸化物やその混合物、複合酸化物を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。
バインダ樹脂は特に限定されず、ポリビニルブチラール、アクリル、エチルセルロース等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。また、用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒や、メチルエチルケトン、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
誘電体スラリーは、溶剤系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。誘電体スラリーを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた誘電体原料とを混合すればよい。水溶性バインダは特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
誘電体スラリー中のバインダー樹脂の含有量に特に制限はない。通常、バインダは10〜20 [重量%]程度、溶剤は50〜400 [重量%]程度とすればよい。また、ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、帯電防止剤、粘性調整剤等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10[重量%]以下とすることが好ましい。
誘電体スラリーは、図2(A)に示すように、PET等の支持フィルム20上にシート状に成形され、内装用グリーンシート10aとなる。内装用グリーンシート10aは、焼成後に図1に示す誘電体層10となる部分である。
グリーンシートの形成方法は、所望の厚みが塗布できれば、塗布方法は限定されないが、後述する分級処理は、薄膜グリーンシート作製のための手段であるため、薄膜(1μm以下)に適した塗布方法が好ましい。
塗布後グリーンシートは乾燥されるが、乾燥も薄膜に適した乾燥方法が好ましく、雰囲気乾燥、AFD、遠赤外線などを組み合わせて使用する。特に乾燥炉前半は緩やかな乾燥に対応できるような方法が好ましい。
内部電極層の形成方法
内部電極層12の形成方法は、層を均一に形成できる方法であれば特に限定されず、例えば内部電極層用ペーストを用いたスクリーン印刷法或いはグラビア印刷法、オフセット印刷などの厚膜形成方法、あるいは蒸着、スパッタリングなどの薄膜法が挙げられる。本実施形態ではスクリーン印刷法を用いる。
本実施形態で用いる内部電極層用ペーストは、導電性粉末、溶剤、分散剤、可塑剤、有機ビヒクル、添加物粉末などを含有する。内部電極層用ペーストは、これらの成分を、ペースト化することにより形成する。
なお、導電性粉末としては、特に限定されないが、誘電体層10の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。
溶剤としては、特に限定されず、ターピネオール、ブチルカルビトール、ケロシン、アセトン、イソボニルアセテートなどが使用できる。
分散剤としては、特に限定されないが、マレイン酸系分散剤、ポリエチレングリコール系分散剤および/またはアリルエーテルコポリマー分散剤が使用できる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸、燐酸エステル、グリコール類などが使用できる。
バインダとしては、特に限定されず、エチルセルロース、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、又は、これらの共重合体などが使用できる。
内部電極層用ペースト中には、グリーンシートに含まれるセラミック粉末と同じ組成の添加物粉末が共材として含まれていても良い。共材は、焼成過程において導電性粉末の焼結を抑制する作用を奏する。
誘電体を薄膜化するには、内部電極層も薄膜にする必要があり、そのためにはもとの導電材粉の粒度を細かく、また粒度分布をシャープにする必要がある。誘電体塗料と同様に湿式分級処理を行ってもよいし、導電粉の段階で乾式分級処理を行ってもよい。
内部電極用ペーストの分散を向上させるためには、塗料分散もしっかりする必要がある。特に、微粒子Niを使用する場合には、まず混練工程として高固形分状態でNi粉と分散剤、樹脂、溶剤をしっかり濡らし、分散剤とNi粒子との距離を縮めておく必要がある。この高固形分処理により、微粒子でも粘度が低く、経時安定性の高い塗料とすることができる。
高固形分処理を行う装置としては、3本ロール、2本ロール、加圧ニーダー、連続式ニーダー等が挙げられる。さらにこの塗料を高圧ホモジナイザーで処理することが好ましい。それにより薄膜塗布に適した塗料とすることが出来る。この時に使用する高圧ホモジナイザーとしては液−液衝突タイプでも壁面衝突タイプでもまた攪拌タイプや超音波分散機でも可能である。しかし一般的に電極ペーストは高粘性であるため、高粘度に適した装置が好ましい。
コンデンサ素体の形成
まず、図2(B)に示すように、内部電極層用ペーストを内装用グリーンシート10aに印刷し、内部電極ペースト層12aが形成された内装用グリーンシート10aを準備する。内部電極ペースト層12aは、焼成後に図1に示す内部電極層12となる部分である。
また、内部電極ペースト層12aが形成されない外装用グリーンシート(図示省略)も準備する。外装用グリーンシートは、焼成後に、図1に示す外装用誘電体層14となる部分である。
外装用グリーンシートは、内装用グリーンシート10aと同一の誘電体スラリーにより形成することができるが、異なる誘電体スラリーにより形成しても良い。外装用グリーンシートは、内装用グリーンシート10aに比較して、厚膜に形成することが好ましい。外装用グリーンシートの積層工数を削減するためである。また、分級を行った場合、分級後の粗粒側スラリーを用いて外装用グリーンシートを作製すると好ましい。なお、内装用グリーンシート10aは、静電容量を向上させるためには、薄いほど好ましい。
まず、所定枚数の外装用グリーンシートを積層し、その後に、内部電極ペースト層12aが形成された内装用グリーンシート10aを多数積層し、さらに所定枚数の外装用グリーンシートを積層し、その積層体を所定形状に切断することにより、グリーンチップを得る。
なお、積層方式は様々な方法がある。特に剥離PETから最初に剥がす剥離タイプと、最初に層間を接着してから剥離する圧着タイプがあり、それぞれメリット、デメリットがあるため、その製品の要求特性を満たしやすい積層タイプを選定すればよい。生産性と薄膜対応性で剥離熱圧着方式が好ましいと考えられる。剥離熱圧着方式は、ロールで供給されたグリーンシートをまず剥離してから、位置合わせを行い、熱を掛けながら積層していく方式である。まず剥離してしまうため、剥離を工夫して速度を速められると積層全体のタクトを短くでき、生産性の高い積層機となる。またシートや剥離PETに工夫をすることで、薄膜でも剥がせることが可能となる。
積層体を切断して得られたグリーンチップは、次に、脱バインダ処理、焼成処理およびアニール処理が行われる。これらの諸条件は、一般的な条件である。
上記のように脱バインダ処理、焼成およびアニールを経て、コンデンサ素体4が得られる。コンデンサ素体4に対して、バレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを印刷または転写して焼成し、第1端子電極6と第2端子電極8を形成する。そして、必要に応じて、第1端子電極6と第2端子電極8の表面に、めっき等により被覆層を形成する。このようにして積層セラミックコンデンサ2が製造される。積層セラミックコンデンサ2は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
誘電体スラリーの製造方法
次に、図2(A)に示す内装用グリーンシート10aを形成するための誘電体スラリーを製造する方法について説明する。
図3に示すように、まず、ステップS1にて、誘電体粉末を準備する。誘電体粉末の製法(固相法、水熱合成法、ゾル・ゲル法、アルコキシド法)は問わないが、製法によって誘電体粉末の凝集度が異なり、ステップS2における前処理(予備分散処理)条件が若干異なることになる。
誘電体粉末の製法によって異なる凝集度に合わせた前処理方法が必要であり、この前処理によって、後の分級工程(ステップS3)の精度が決まる。ただし、ステップS2において、ビーズミルなどで激しい分散をしてしまうと、誘電体粉末にダメージを与えてしまい、分級が精度よくできてもよい特性を持つ製品(積層セラミックコンデンサ)にはならない。
そのため、いかにダメージを与えずに凝集塊を解してやるかがポイントとなる。そのため、前処理では、まずは、誘電体粉末を、溶剤と分散剤とにしっかり濡らすために、高速せん断型分散機が用いられる。高速せん断分散機としては、たとえばディゾルバー型、ロータステーター型、コロイドミル型、薄膜旋回型が用いられるが、好ましくはロータステータ型分散機が用いられる。ロータステータ型分散機は、たとえば図6に示すように、回転軸と共に回転するロータ30と、回転しないステータ32との間の数mm程度の隙間に処理液を通し、分散混合するための装置である。コロイドミルはロータとステーターとの隙間が100分の数mmと小さく、粉体の粉砕や発熱を起こしてしまう。また薄膜旋回型はバッチ処理の色合いが濃く、どうしても処理液が高温になってしまう。
そのため本実施形態では、特に、周速30m/s以上のロータステーター型の高速攪拌機(前処理機1)で混合することが好ましい。
また、ステップS2の前処理では、混合液を時間ごとに粒度を測定し、粒度分布が、特に10μ以上の粗大粒子の分布が変化しなくなったら、その塗料の一部を次の前処理分散処理機2で処理を行う。前処理分散処理機2としては、たとえば高圧ホモジナイザーや超音波分散機などのメディアレス分散機が好ましく用いられる。ただし、非常にマイルドな分散ができるφ0.05mm以下の小径ビーズを使用できるビーズミル処理機を使用しても良い。なお、ビーズミルでの分散は粒度管理を正確にできるパス方式で行うのが好ましい。
高圧ホモジナイザーとしては、たとえば図7に示すように、処理液を所定の流路に通して、処理部(ジェネレーター)で衝突部34に衝突させて分散処理を行う衝突型の装置と、衝突せず直管だけの貫通型ジェネレーター式の装置(図示せず)がある。
なお、処理部は、衝突型であれば少ない処理時間で済むため好ましいが、設備が高価になってしまう。衝突しない貫通型ジェネレーターを使った場合には処理時間は掛かるが、粗大粒の詰まりがなく、洗浄性も高く、前処理には適している。
また、超音波分散機としては、たとえば図8に示す装置が用いられ、発振器の振幅が分散性に効いており、好ましくは25μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。しかしながら、超音波振動の振幅が45μmを越えると、振動子36そのものが欠けるようになり、分散液中のコンタミとなってしまうので注意が必要である。
二段階目の前処理として、ビーズミルを使う場合はダメージを抑えるために、ジルコニアビーズであればφ0.05mm以下が使用できる分散機が必要である。φ0.05mmビーズが使えればどんなミルでも構わないが、前処理として使用するので、目詰まりの発生しない遠心分離タイプのミルがさらに好ましい。このミルで小径ビーズを使用し低周速で分散することで、ダメージを与えずにすむ。
また、ビーズミル装置を用いる場合には、周速として10m/s以下さらには8m/s以下(5m/s以上)が好ましい。ビーズ径をできるだけ小さくし、可能な限り低周速で、滞留時間1分から10分程度に分散時間を抑えることが好ましい。周速5m/s以下の場合、遠心分離タイプのビーズミルではビーズ流出の危険性が高く、かつ誘電体粉体の弱い凝集を解すには不十分なせん断しかかからないため好ましくない。いずれにしろ二段目の前処理工程では液−液衝突、液―壁衝突、超音波新藤によるスラリーの粗密化、ビーズ衝突やローターにより起こる不均一な運動等によりスラリーの流れが乱されることで、一段目の高速せん断では解されなかった凝集を解くことが可能となる。
本実施形態では、前処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する前処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%となるように、前処理に用いられる処理装置の組合せや諸条件が選択される。なお、前処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)は、誘電体粉末の種類や合成法により異なるが、好ましくは、7〜15m/g、さらに好ましくは8〜13m/gである。
こうして作製した前処理分散液は、D100粒度が1μm以下で、安定性の高い分散液となる。そのため、図3に示すステップS3において、分級器に通したときに分級器の能力を十分引き出すことが可能となる。
次に、ステップS3における湿式分級処理工程について説明する。湿式の分級処理方法はいろいろ存在するが、大量生産ができる可能性および複数回処理できることを考えると遠心分離タイプが好ましい。最近は、分散機の延長線上でコンパクトな遠心分離タイプの分級器がいろいろと提案されている。一般的に分級点はローターの遠心力(回転数)、ローター長さ、供給流量によって決まる、分級機内滞留時間内に分級点以上の粒子が沈降すればよく、原理に基づき分級ポイントを計算することができる。しかしながら当然実情は原理どおりにはならず、いろいろと工夫が必要となる。
本実施形態における分級器の原理図を図5に示すと共に、その分級器を用いたシステムを図4に示す。図3に示すステップS2における前処理済みの処理液は、図4に示すスラリータンク38に貯留され、ポンプ40を通して分級器50に送られる。分級器50では、処理液中の誘電体粉末を、微粒側と粗粒側とに分級し、微粒側の誘電体粉末が含まれる処理液を微粒スラリー回収タンク52に送る。分散機50により分級された粗粒側の誘電体粉末が含まれる処理液は、ポンプ42を通して、スラリータンク38に戻される。
図5に示すように、分級器50では、処理液に含まれるある大きさの粒子が、この分級器50内部に滞留する時間内に沈降すればよいこととなる。まず、ある半径dの粒子の遠心力場での沈降速度vは、次の数式<1>で表される。
Figure 2012072032
次に、処理液供給量Qで、処理液が、この分級器50内に流入し、厚み(ra−rb)で円筒内部を上部に向かって流れるとしたときの内部の移動速度Vは以下の数式<2>で表される。
Figure 2012072032
数式<1>と数式<2>からtを消去し、dを求める式にすると、下記の数式<3>が得られる。
Figure 2012072032
なお、上記の数式において、
ω : 回転角速度、
μ : スラリー粘度、
Q : 流量、
σ : 溶質の密度、
ρ : 溶媒の密度、
d : 分級度粒子径である。
少なくともまずは上記の条件を満たさなくては希望の粒子径として分級できない。しかしながら原理通りには分級はできないため、より遠心力を高めたり、分級ゾーンに流速差を持った流れを作り出し流速差をプラスしたり、さらには繰り返して分級を行うことで、精度や歩留まりを向上させる必要がある。本実施形態では、図4に示すように、強制的にポンプ42で粗流側の処理液を戻し、それを繰り返し分級することで分級精度を向上させている。
図4に示すステップS3にて分級処理された微粒側処理液については、好ましくは、次に、固形分濃度が測定される。この固形分濃度に合わせて、可塑剤、界面活性剤が処理液に添加される。さらに溶剤としてのエタノールを混合し、固形分濃度を下げる必要と、もしくは場合よってはライカイ機等で溶剤を揮発させ固形分濃度を上げる必要がある。
ここでしっかりと固形分濃度を測定し、それをもとに、この後の調合を決めることになる。上記の添加剤を添加後、図3に示すステップS4では、処理液に対して、後分散処理としてのメディアレス分散処理の一例として、高圧ホモジナイザー処理を行う。さらに、ごみ、かすの除去のためにフィルトレーションを行い、薄膜用誘電体スラリーを作製する。
なお、これらの後分散処理は、後分散処理前の微粒側処理液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α’)に対する後分散処理後の微粒側処理液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β’)の変化率(100×(β’−α’)/α’)が0%を超え1%以下となるように行われる。後分散処理におけるBET比表面積(β’)の変化率を所定範囲とすることで、誘電損失が少なく、高誘電率で高寿命の積層セラミックコンデンサを製造することができる。
図3に示すステップS3にて分級された粗粒側処理液は、図4に示すスラリータンクに集められ、その後に、図3に示すステップS6にてビーズミル処理され、ステップS7にてメディアレス分散処理され、厚膜用誘電体スラリーが得られる。ステップS6におけるビーズミル処理は、一般的なビーズミル処理でよい。また、ステップS7にてメディアレス分散処理は、たとえばステップS4における処理と同じであっても異なっていても良い。
厚膜用誘電体スラリーは、たとえば図1に示す外装用誘電体層14を形成するためのグリーンシート用塗料として用いられても良く、あるいは、別工程で製造される1μm以上に厚膜の内装用誘電体層10を形成するためのグリーンシート用塗料として用いられても良い。
上述したように、本実施形態に係る誘電体スラリーの製造方法およびそれを用いた積層セラミックコンデンサの製造方法においては、湿式分級工程を導入して誘電体分散工程の負荷を減らし、効率よく誘電体スラリーを作製することができる。また、本実施形態では、予備分散処理における誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%である。その範囲にあるときに、誘電体にダメージを与えず、二次凝集を解し、その後に行われる分級処理を精度よく行うことが可能となり、分級処理の効率が向上する。本実施形態の方法により得られる誘電体スラリーでは、微細で均一な粒径の誘電体粉末が均一に分散している。
さらに本実施形態では、微粒側分散液に、バインダ樹脂の溶解液を混合してメディアレス分散機による後分散処理を行っている。分級処理後で乾燥を経ていない分級処理後の微粒側分散液はすでに粉体の分散としては十分であるため、その後の余分な分散工程が省略でき、バインダ樹脂との混合後では、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散のみで済むため、ダメージのない、粒度の揃った誘電体スラリーを得ることができる。そのため、分級処理後に、高圧ホモジナイザーなどのメディアレス分散機で分散した塗料は、それだけで薄膜塗布可能な誘電体スラリーとなる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、本発明に係る製造方法は、積層セラミックコンデンサに限らず、インダクタ、バリスタなどのその他の積層セラミック電子部品の製造にも用いることができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1−1
水熱合成法により製造したBaTiO(BT)から成る誘電体粉末を準備した。
次に、エタノール/プロパノール/キシレンから成る溶剤を150重量部と、ポリカルボン酸からなる分散剤を3重量部とを、ロータステータ型分散機(浅田鉄工製の2軸高速デスパミル)に投入し、ロータステーター部を周速10m/secで攪拌しながら、誘電体原料100重量部および微量添加材を投入した。周速を38m/sに上げてから60分処理(前処理1)を行った。その後、前処理2として、この処理液を高圧ホモジナイザー(吉田機械興業製ナノマイザー)で圧力30Mpaで5パス(5p)処理を行った。
次に、この処理液を、図4および図5に示した分級装置50を使い、供給量3L/h、粗大粒側引き出し流量2L/h、ローターの回転数8750rpm、3000G、理論分級点0.38μmで処理を行った。この分級処理を、微粒子側の液に対して5回繰り返した。
こうして作製した分級処理液における最初に投入した誘電体原料の量に対しての分級処理後の微粒子側の分級処理液における誘電体原料の量の重量比率(分級効率)を求めたところ39%であった。
また、この分級処理液を10ccるつぼに入れ、130℃のオーブンで3時間乾燥させた。この乾燥粉をBET比表面積測定器(Macsorb HM1208)にてBET比表面積を測定したところ7.65m/g(n=5の平均値)であった。前処理1の前の誘電体原料の初期BET比表面積は、7.5m/g(n=5の平均値)であったことから、BET比表面積変化率は、2%であった。結果を表1に示す。
なお、本実施例では、BET比表面積は、気体(Nガス)を粉体に吸着させ、それにより粉体の比表面積を求める方法により求められ、具体的には、上述した装置により求めた。
実施例1−2,1−3,1−5,1−6
前処理2におけるホモジナイザー処理の条件を、表1に示すように変化させた以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1-1と同様な結果が得られた。すなわち、BET比表面積変化率は、1〜5%の範囲内にあり、分級効率は、20%以上であった。
比較例1−1
前処理2におけるホモジナイザー処理を行わないと共に、前処理1では、メディアレス分散機としてのディゾルバー(プライミクス社製「TKミキサー」)で分散処理を行った以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1-1では、BET比表面積変化率が0%となり、分級効率が2%と低く、効率が悪くなることが確認された。
比較例1−2
前処理2におけるホモジナイザー処理を行わないと共に、前処理1では、ボールミルによる分散処理を行い、ボールミルの条件をΦ2mmのジルコニアビーズ、21rpm、16hrとした以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1-2では、BET比表面積変化率が8%となり、分級効率も7%と低く、効率が悪くなることが確認された。
比較例1−3
前処理2におけるホモジナイザー処理を行わない以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1-3では、BET比表面積変化率が0%となり、分級効率が2%と低く、効率が悪くなることが確認された。
比較例1−4
前処理2におけるホモジナイザー処理の条件を、表1に示すように変化させた以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1-4では、前処理2におけるホモジナイザー処理が弱すぎて、BET比表面積変化率が0%となり、分級効率が20%未満と低下し、効率が悪くなることが確認された。比較例1−4と実施例1-6とを対比することで、BET比表面積変化率は、1%以上が好ましいことが確認された。
実施例1−4,1−7,1−8
BTとして、シュウ酸塩法により得られた初期BET比表面積が8.5m/g(n=5の平均値)のBTを用いた以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた(実施例1−4)。また同じシュウ酸塩法により得られたBT粉を用い、前処理2のパス回数を5回から10回へ変更したものを実施例1−7、さらに同じシュウ酸塩法のBTを用いて前処理1の周速を38m/sから45m/sへ上げたものを実施例1−8とした。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1-1と同様な結果が得られた。すなわち、BET比表面積変化率は、1〜5%の範囲内にあり、分級効率は、20%以上であった。さらに前処理1、2の条件を上げたものは、凝集の強いシュウ酸塩法のBT粉でも回収率30%以上にすることが可能となる。
実施例2−1〜2−4および比較例2−1〜2−4
高圧ホモジナイザーから超音波分散機(日本精機製「UW−600T」)に変更し、超音波分散機の処理条件として、超音波振動の振幅と、処理液の滞留時間とを、表2に示すように変化させた以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。また、分級後の処理液を、130℃で3時間乾燥させた後、ICP分析によりPb量を求め、コンタミネーション量(ppm)とした。これらの結果を表2に示す。なお、超音波振幅を効率的に伝えるために、通液ホルダーを用い、ポンプの流量を変更して滞留時間を制御した。
表2に示すように、実施例2−1〜2−4では、比較例2−1〜2−4に比較して、BET比表面積変化率が1〜5%の範囲にあり、そのときに、分級効率が向上することが確認された。また、実施例2−1〜2−4では、比較例2−1〜2−4に比較して、コンタミネーション量(ppm)も低いことが確認できた。
実施例3−1〜3−6および比較例3−1〜3−2
BTとして、固相合成法により得られた初期BET比表面積が7.5m/g(n=5の平均値)のBTを用い、前処理2として、ジルコニア(ZrO)ビーズを用いたビーズミル装置(日本コークス社製「MSC100」)による処理に変更し、ビーズミル装置の条件として、周速度を6m/secと一定とし、ビーズミルの径と、処理液の滞留時間とを、表3に示すように変化させた以外は、実施例1-1と同様にして、分級効率とBET比表面積変化率を求めた。また、分級後の処理液0.1ccにHOを50cc入れて、150Wの超音波分散機で5分間処理を行った。それを(株)日機装のレーザー回折方式の粒度分布測定器(MT3300)にて粒度を測定し、1μm以上の頻度を調べた。これらの結果を表3に示す。
表3に示すように、実施例3−1〜3−6では、比較例3−1〜3−2に比較して、BET比表面積変化率が1〜5%の範囲にあり、そのときに、分級効率が向上することが確認された。また、実施例3−1〜3−6と比較例3−2とを比較することで、ビーズミルを前処理2として用いる場合には、ビーズミルの径は、好ましくは0.05mm以下、さらに好ましくは0.015mm〜0.05mmであることが確認された。
実施例4−1および4−2
実施例1−1で作製した分級処理液を用い、以下の実験を行った。分級処理液を130℃で3時間乾燥させ、分級処理液の固形分濃度(重量基準)を測定したところ、5.2%であった。
乾燥させない分級処理液に対して、固形分測定に基づき添加量を決めて15%に溶解したポリビニルブチラール樹脂(積水化学BH−3)を、ディゾルバーで攪拌しながら添加した(後分散処理1)。さらに高圧ホモジナイザー(吉田機械興業社製「ナノマイザー」)で100MPaまたは200MPa、5パス処理を行った(後分散処理2)後、0.5μのフィルターを5パス通過させてろ過を行った。
この処理液0.1ccにHOを50cc入れて希釈し、超音波照射なしで、その希釈液を(株)日機装のレーザー回折方式の粒度分布測定器(MT3300)にて粒度を測定した。さらに常温で5日間経時後、同様の方法で粒度を測定し、そのD90の値の変化の割合を求め、粒度分布変化率(%)として結果を表4に示した。この粒度分布変化率は、小さいほど好ましい。
また、前処理の前後におけるBET比表面積変化率と同様にして、後分散処理(1および2)の前後におけるBET比表面積変化率を求め、BET比表面積変化率2として表4に示した。
その後、後分散処理後で濾過を行った処理液(完成塗料)を用いて、厚さ0.8μmのグリーンシートを形成した。さらに、このグリーンシートの表面に電極をスクリーン印刷し、シートユニットとした。このユニットを剥離熱圧着積層機に掛け、電極がないグリーンシートを20μmになるまで積層した上に、このユニットを300層積層し、さらに電極がないシートを20μmになるまで、その上に積層した。
この積層ユニットを電極サイズに合わせて切断し、脱バイ後1140℃と1210℃の2つの焼成温度でおのおの焼成を行った。外部電極を付け、セラミックコンデンサとした。作製した積層セラミックコンデンサ100個について、インピーダンスアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP−4284A)を用いて、静電容量とtanδの測定を行った。εは、この静電容量と層間厚みと電極面積から計算した。さらに、このコンデンサ20個について、200℃で層間に75Vの電圧が印加されるようにして、寿命(平均寿命:MTTF)を測定した。寿命はワイブル解析により求めた。tanδ、εおよび寿命に関する特性は、実施例4−1の値を100%としたときの相対値で表した。結果を表4に示す。
比較例4−1〜4−4
後分散処理(1および2)の前後におけるBET比表面積変化率2が0%あるいは1%を超えるように、後分散処理に用いる高圧ホモジナイザーの条件を変化させた以外は、実施例4-1と同様にして、評価を行った。
表4に示すように、比較例4−1〜4−4に比較して、実施例4−1〜4−2では、BET比表面積変化率2が0%より大きく1%以下の範囲にあるために、粒度分布変化が少なく、tanδ、εおよび寿命に優れていることが確認できた。
実施例4−3
前処理2として、ホモジナイザーの代わりに、超音波分散機(日本精機製「UW−600T」)に変更し、超音波分散機の処理条件として、超音波振動の振幅と、処理液の滞留時間とを、表5に示すように変化させた以外は、実施例4-1と同様にして、評価を行った。表5に示すように、前処理2として、ホモジナイザーの代わりに、超音波分散機を用いた場合でも、実施例4−1と同様な結果が得られることが確認できた。
実施例4−4
前処理2として、ホモジナイザーの代わりに、ジルコニア(ZrO)ビーズを用いたビーズミル装置(日本コークス社製「MSC100」)による処理に変更し、ビーズミル装置の条件として、周速度を6m/secと一定とし、ビーズミルの径と、処理液の滞留時間とを、表5に示すように変化させた以外は、実施例4-1と同様にして、評価を行った。前処理2として、ホモジナイザーの代わりに、ビーズ径0.05mm以下のビーズミル装置を用いた場合でも、実施例4−1と同様な結果が得られることが確認できた。
Figure 2012072032
Figure 2012072032
Figure 2012072032
Figure 2012072032
Figure 2012072032
2… 積層セラミックコンデンサ
4… コンデンサ素体
6,8… 端子電極
10… 誘電体層
12… 内部電極層
10a… グリーンシート
12a… 内部電極ペースト層
50… 分級器

Claims (9)

  1. 誘電体粉末と溶剤とを少なくとも混合分散して誘電体スラリーを製造する方法であって、
    前記誘電体粉末と溶剤とを少なくとも含む分散前処理溶液を、予備分散処理により混合分散する工程と、
    前記予備分散処理が行われた処理済み溶液を、湿式分級装置を用いて分級する工程と、を有し、
    前記予備分散処理が、予備分散処理前の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α)に対する予備分散処理後の溶液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β)の変化率(100×(β−α)/α)が1〜5%である誘電体スラリーの製造方法。
  2. 前記予備分散処理が、第1分散処理と、前記第1分散処理の後に行われ、前記第1分散処理とは異なる第2分散処理との二段階の分散処理である請求項1に記載の誘電体スラリーの製造方法。
  3. 前記第1分散処理が、高速せん断型分散器による分散処理であり、前記第2分散処理が、メディアレス分散機、または、ビーズ径が0.05mm以下のビーズを用いるビーズミル分散機による分散処理である請求項2に記載の誘電体スラリーの製造方法。
  4. 前記湿式分級装置が、遠心分離タイプであること特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の誘電体スラリーの製造方法。
  5. 前記湿式分級装置により分級された微粒側の前記誘電体粉末を含む微粒側分散液を用いて薄膜用誘電体スラリーを製造すること特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の誘電体スラリーの製造方法。
  6. 前記湿式分級装置により分級された粗粒側の前記誘電体粉末を含む粗粒側分散液を用いて厚膜用誘電体スラリーを製造すること特徴とする請求項5に記載の誘電体スラリーの製造方法。
  7. 前記微粒側分散液に、バインダ樹脂の溶解液を混合してメディアレス分散機による後分散処理を行う請求項5に記載の誘電体スラリーの製造方法。
  8. 前記後分散処理前の前記微粒側分散液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(α’)に対する後分散処理後の前記微粒側分散液に含まれる誘電体粉末のBET比表面積(β’)の変化率(100×(β’−α’)/α’)が0%を超え1%以下である請求項7に記載の誘電体スラリーの製造方法。
  9. 請求項8に記載の誘電体スラリーの製造方法により得られた誘電体スラリーを用いて、グリーンシートを形成する工程と、
    前記グリーンシート上に内部電極パターンを形成する工程と、
    前記内部電極パターン層が形成された前記グリーンシートを、複数積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成する工程と、を有する積層セラミック電子部品の製造方法。
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