JP2012071792A - 制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第一動力伝達機構を介して内燃機関に駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構を介して車輪に駆動連結される回転電機の制御を行うための制御装置であって、内燃機関から第一動力伝達機構を介して回転電機に伝達される伝達トルク振動を打ち消すための打消し振動トルク指令Tpを生成する制御を実行可能であり、内燃機関の回転速度ωeに基づいて振幅ΔTp及び周波数ωpを決定する振幅周波数決定部41と、位相αを決定する位相決定部42と、を備え、位相決定部42は、回転電機の回転速度振幅Δωmvの変化に基づき、回転速度振幅Δωmvを減少させるように位相調整方向を決定し、位相調整方向に位相αを変化させる。
【選択図】図2
Description
また、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
また、上記の特徴構成によれば、少なくとも内燃機関の回転速度に基づいて、打消し振動トルク指令の振幅及び周波数を決定するので、伝達トルク振動と同じ振幅及び周波数を有する打消し振動トルク指令を生成することができ、伝達トルク振動の打ち消しを適切に行うことができる。
ところで、伝達トルク振動を打ち消すためには、伝達トルク振動と逆位相の振動トルクを回転電機に出力させればよい。しかし、伝達トルク振動を直接測定できず、また、伝達トルク振動の位相が変動するような場合には、伝達トルク振動の位相と打消し振動トルク指令の位相との相対位相を把握して、伝達トルク振動と逆位相の打消し振動トルク指令を生成することは容易でない。また、打消し振動トルク指令の位相を、伝達トルク振動の逆位相に一致させるように変化させる上で、打消し振動トルク指令の位相が、伝達トルク振動の逆位相に対して位相進み側及び位相遅れ側のいずれの側にあるかに応じて、位相調整方向を変更する必要があるが、いずれの側にあるかを判定することは容易でない。
上記の特徴構成によれば、回転電機の回転速度振幅が減少する方向は、打消し振動トルク指令の位相が伝達トルク振動の逆位相に近づく方向であるため、回転速度振幅の変化に基づき、回転速度振幅を減少させるように決定した位相調整方向に、打消し振動トルク指令の位相を変化させることで、打消し振動トルク指令の位相を、伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
一方、位相制御結果が負である場合は、打消し振動トルク指令の位相を増加させれば回転速度振幅が減少すると判定できる。よって、現在の打消し振動トルク指令の位相は伝達トルク振動の逆位相に対して位相遅れ側にあると判定でき、位相調整方向を位相進み方向に決定することができる。
従って、打消し振動トルク指令の位相を、位相制御結果に基づき決定した位相調整方向に変化させることで、打消し振動トルク指令の位相を、精度良く伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
上記の構成によれば、位相領域での位相制御結果を、単位時間当たりの回転速度振幅の変化量、及び単位時間当たりの打消し振動トルク指令の位相の変化量、すなわち時間領域での算出結果に基づき算出できるように変換している。よって、時間領域で動作する制御系において、位相領域での位相制御結果を効率良く、リアルタイムで算出することできる。従って、位相制御結果に基づき、フィードバック的に、打消し振動トルク指令の位相を変化させることができる。このため、打消し振動トルク指令の位相を、応答性良く、伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
本発明に係る回転電機制御装置32の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、車両用駆動装置1を搭載した車両は、車両の駆動力源として内燃機関であるエンジンEと回転電機MGを備えたハイブリッド車両とされている。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。本実施形態では、回転電機MGは、第一動力伝達機構10を介してエンジンEに駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構11を介して車輪Wに駆動連結される。本実施形態では、第一動力伝達機構10に、回転電機TMとエンジンEとの間の駆動連結を断接するエンジン分離クラッチCLが備えられており、第二動力伝達機構11に、変速機構TMが備えられている。
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MGを備え、これらのエンジンEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速機構TMを備えており、当該変速機構TMにより、中間軸Mに伝達されたエンジンE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
次に、車両用駆動装置1の油圧制御系について説明する。油圧制御系は、油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速機構TMやエンジン分離クラッチCLの各摩擦係合要素等に供給される。
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置31〜34の構成について説明する。
制御装置31〜34は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、各制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、図2に示すような制御装置32の各機能部40〜46が構成されている。また、制御装置31〜34は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部40〜46の機能が実現される。
車両制御装置34は、エンジンE、回転電機MG、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCL等に対して行われる各種トルク制御、及び各摩擦係合要素の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
エンジン制御装置31は、エンジンEの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、エンジン制御装置31は、車両制御装置34からエンジン要求トルクが指令されている場合は、車両制御装置34から指令されたエンジン要求トルクを出力トルク指令値に設定し、エンジンEが出力トルク指令値の出力トルクTeを出力するように制御するトルク制御を行う。
また、エンジン制御装置31は、エンジンEの出力トルクTeを推定し、推定したトルクを推定エンジン出力トルクとして他の制御装置に伝達するように構成されている。エンジン制御装置31は、出力トルク指令値に基づき推定エンジン出力トルクを算出して伝達するようにしてもよい。
動力伝達制御装置33は、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCLの制御を行う機能部を備えている。動力伝達制御装置33には、出力軸回転速度センサSe3等のセンサの検出情報が入力されている。
動力伝達制御装置33は、変速機構TMに変速段を形成する制御を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速機構TMにおける目標変速段を決定する。そして、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCを介して変速機構TMに備えられた各摩擦係合要素C1、B1、・・・に供給される油圧を制御することにより、各摩擦係合要素を係合又は解放して目標とされた変速段を変速機構TMに形成させる。具体的には、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCに各摩擦係合要素B1、C1、・・・の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各摩擦係合要素に供給する。
また、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの係合又は解放を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの伝達トルク容量が、車両制御装置34から指令された目標伝達トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介してエンジン分離クラッチCLに供給される油圧を制御する。具体的には、動力伝達制御装置33は、目標伝達トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧をエンジン分離クラッチCLに供給する。なお、本実施形態では、特に断らない限り、エンジン分離クラッチCLは、直結係合状態にあるもとする。
回転電機制御装置32は、回転電機MGの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、回転電機制御装置32は、車両制御装置34から指令された回転電機要求トルクなどに基づき設定されたベーストルク指令値Tbを設定する。また、回転電機制御装置32は、図2に示すように、打消し振動トルク指令Tpを算出するトルク振動打消し制御部40を備えている。そして、回転電機制御装置32は、ベーストルク指令値Tbと、後述する打消し振動トルク指令Tpとに基づき、出力トルク指令値Tmoを設定し、回転電機MGがトルク指令値Tmoの出力トルクTmを出力するように制御する。
図2に示すように、トルク振動打消し制御部40は、図2及び図3に示すように、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達されるトルク振動である伝達トルク振動Teovに対し、当該伝達トルク振動Teov(図4〜図6等参照)を打ち消すためのトルク振動の指令である打消し振動トルク指令Tpを生成し、当該打消し振動トルク指令Tpに従って回転電機MGを制御するトルク振動打消し制御を実行する機能部である。
振幅周波数決定部41は、少なくともエンジンEの回転速度ωeに基づいて打消し振動トルク指令Tpの振幅ΔTp及び周波数ωpを決定する。また、位相決定部42は、打消し振動トルク指令の位相αを決定する。そして、打消し振動トルク指令生成部43は、振幅ΔTp、周波数ωp、及び位相αに基づいて、打消し振動トルク指令Tpを生成する。
そして、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて導出される回転速度振幅Δωmvの変化に基づき、回転速度振幅Δωmvを減少させるように位相調整方向を決定し、当該決定した位相調整方向に打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。
以下で、トルク振動打消し制御部40によって実行されるトルク振動打消し制御の処理について、詳細に説明する。
まず、車両用駆動装置1の動力伝達系について説明する。図4に、動力伝達系のモデルを示す。動力伝達系を3慣性の軸ねじれ振動系にモデル化している。
エンジンE、回転電機MG、及び負荷(車両)を、それぞれ慣性モーメント(イナーシャ)Je、Jm、Jlを有する剛体としている。
エンジンEと回転電機MGとの間は、弾性を有する第一動力伝達機構10により連結され、回転電機MGと負荷(車両)との間は、弾性を有する第二動力伝達機構11により連結されている。本実施形態では、第一動力伝達機構10は、ダンパー、エンジン出力軸Eo、入力軸Iなどの部材により構成されている。第一動力伝達機構10は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。第二動力伝達機構11は、中間軸O、変速機構TM、出力軸O及び車軸AXなどの部材により構成されている。特に、出力軸Oと車軸AXとの軸ねじれが大きく、出力軸O及び車軸AXをまとめて、出力シャフトと称する。第二動力伝達機構11は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。
Teoは、振動をしているエンジンEの出力トルクTeが、第一動力伝達機構10を介して、回転電機MGに伝達された伝達トルクであり、当該伝達トルクには当該伝達トルクの平均値に対する振動成分である伝達トルク振動Teovが生じている。Tmは、回転電機MGが出力する出力トルクであり、当該出力トルクには、後述するトルク振動打消し制御により、伝達トルク振動Teovを打ち消すための打消し振動トルク指令Tpのトルク振動が生じている。ここで、打消し振動トルク指令Tpは、回転電機MGの出力トルクTmの平均値に対する振動成分となる。
次に、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達される伝達トルク振動Teovについて、より詳細に説明する。
図5に示すように、エンジンEの出力トルクTeは、エンジンEの燃焼工程における燃焼により生じる。火花点火式エンジンの場合は、点火時期の後に燃焼が開始する。すなわち、燃焼により上昇した燃焼室内の圧力が、ピストン及びコネクティングロッドを介して、クランク角度等の幾何学的関係に従い、クランクシャフト(エンジン出力軸Eo)に伝達され、エンジンEの出力トルクTeに変換される。エンジンEの出力トルクTeは、点火時期の後に増加していき、ピストンが下死点に近づくにつれ減少していく。よって、エンジンEの出力トルクTeは、図5に示すように、回転同期で周期的に振動する。エンジンEの出力トルクTeの振動周波数(角周波数)ωpは、エンジンEの回転速度ωmに応じて変化する。気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp=N/2×ωeとなり、4気筒エンジンでは、ωp=2×ωeとなる。なお、ディーゼルエンジンなどの圧縮自着火エンジンでは、点火時期、すなわち、燃焼開始時期は、燃焼室内への燃料噴射時期とすることができる。
また、エンジンEの出力トルクTeは、ゼロ付近まで変動するため、出力トルク振動Tevの振幅が大きい。この出力トルク振動Tevの振幅は、エンジンEの出力トルクTeの平均値の増加に、概ね比例して増加する。なお、以下で、エンジンEの出力トルクTeは、特に断らない限り、振動をしているトルクの平均値を示すものとする。
ここで、ΔTeovは、伝達トルク振動Teovの振幅であり、βは、伝達トルク振動Teovの位相である。
また、図5に示すように、出力トルク振動Tevは、第一動力伝達機構10の伝達特性により、位相遅れが生じて、回転電機MGに伝達される。図10の(b)のボード線図の位相曲線の例に示すように、約−180deg〜−160degの位相遅れが生じる。
よって、図12に示すように、低い回転速度ωeであって、高い出力トルクTeである領域が、伝達トルク振動Teovが、運転者に不快感を与えるレベルまで大きくなる、高振動領域となる。この高振動領域は、図12に示すように、エンジンEの熱効率が高くなる、高効率領域と重複している。本願のような、トルク振動打消し制御を行わない場合は、高振動領域を避けて、エンジンEを運転する必要があり、エンジンEの高効率領域を使用できない場合が生じる。そのため、本実施形態に係る制御装置では、トルク振動打消し制御を行い、伝達トルク振動Teovを打ち消して、高振動領域を使用できるようにしている。
振動周波数ωpに対する1次の振動成分で近似できる伝達トルク振動Teovを、打ち消すためには、式(1)の伝達トルク振動Teovと逆位相、すなわち、π(180deg)だけ位相が進み又は遅れたトルク振動を、回転電機MGに出力させればよいことがわかる。
よって、図6及び次式に示すように、トルク振動打消し制御部40は、打消し振動トルク指令Tpを、振動周波数ωpに対する1次の振動成分で形成する。
ここで、ΔTpは、打消し振動トルク指令Tpの振幅であり、ωpは、打消し振動トルク指令Tpの振動周波数であり、αは、打消し振動トルク指令Tpの位相である。打消し振動トルク指令Tpが、伝達トルク振動Teovを打ち消すためには、打消し振動トルク指令Tpの振動周波数ωpは、伝達トルク振動Teovと同じ振動周波数ωpに設定され、位相αが、位相βに対してπ(180deg)だけ進み又は遅れた、逆位相に設定され、振幅ΔTpは、振幅ΔTeovに等しく設定されればよいことがわかる。
ここで、γは、合計トルク振動Tovの位相である。
この式から、合計トルク振動Tovの振幅ΔTovは、次式となる。
この式から、回転速度振動ωmvの振幅である回転速度振幅Δωmvは、次式となる。
よって、式(4)及び式(6)から、回転速度振幅Δωmvは、合計トルク振動の振幅ΔTovに比例することがわかる。また、図10の(a)に示す、エンジンEの出力トルクTeから回転電機MGの回転速度ωmまでの伝達特性のボード線図の例において、図10の(b)に示したトルク伝達特性と同様に、振動周波数ωpの増加に比例して、ゲインが減少することからも、回転速度振幅Δωmvは、合計トルク振動の振幅ΔTovに比例することがわかる。
位相差α−βがπの場合に、振幅ΔTov及び振幅Δωmvが最小となり、位相差α−βがπより、進み(増加)方向又は、遅れ(減少)方向に変化すると、振幅ΔTov及び振幅Δωmvが増加することがわかる。
また、打消し振動トルク指令の振幅ΔTpが、伝達トルク振動の振幅ΔTeovに等しい場合は、位相差α−βがπになるときに、振幅ΔTov及び振幅Δωmvがゼロの最小値になる。一方、振幅ΔTpが、振幅ΔTeovに一致していない場合でも、位相差α−βがπになるときに、振幅ΔTov及び振幅Δωmvがゼロより大きい最小値になる。
また、トルクセンサなどが備えられておらず、合計トルクToを直接測定できない場合でも、回転速度振幅Δωmvと合計トルク振動の振幅ΔTovとが比例関係にあることから、回転速度振幅Δωmvを最小化すれば、合計トルク振動の振幅ΔTovも最小化できることがわかる。
よって、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βに対して、位相進み側及び位相遅れ側のいずれにあるかによって、位相αの位相調整方向を反転させる必要がある。
打消し振動トルク指令の位相αの、π+βに対する相対位相を把握する上で、打消し振動トルク指令の位相αは、回転電機制御装置32により、比較的精度良く制御できる。一方、伝達トルク振動の位相βは、トルクセンサなどが備えられていない場合は容易に測定できず、また後述する変動要因により変動するため、相対位相を容易に把握できないという課題がある。相対位相が把握できないと、回転速度振幅Δωmv及び合計トルク振動の振幅ΔTovを最小化するために、打消し振動トルク指令の位相αを、位相進み又は位相遅れのいずれの方向に変化させるか、位相調整方向を決定できないため、打消し振動トルク指令の位相αを変化させることができない。
(1)点火時期の変動は、エンジン制御装置31による点火時期の変更などにより生じる。エンジン制御装置31は、エンジンEの回転速度ωe及び出力トルクTeなどの運転動作点が変化すると、運転動作点毎に設定された点火時期に点火時期を変更したり、ノッキング防止制御により、点火時期を遅角方向及び進角方向にリアルタイムに変更したりする。点火時期が位相進み又は位相遅れ方向に変化すると、その変化量に応じて、出力トルク振動Tevの位相も変化する。そして、出力トルク振動Tevの位相の変化量に応じて、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
(2)燃焼速度の変動は、燃焼室内の排気ガス再循環量の変化、燃焼室内の流動の変化、点火時期の変化などにより生じる。燃焼速度の変化に応じて、出力トルク振動Tevの位相も変化して、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
(3)第一動力伝達機構10の位相遅れの変動は、ダンパーなどの、ねじりばね定数及び粘性摩擦係数が変化することにより生じる。この位相遅れの変動に応じて、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
この内、(1)点火時期の変動は、エンジン制御装置30との通信などにより、回転電機制御装置32でも把握できるため、後述するように、トルク振動打消し制御部40は、点火時期の変動に応じて、打消し振動トルク指令の位相αをフィードフォワード的に変化させることが可能である。
なお、打消し振動トルク指令の位相αも、回転電機制御装置31において、打消し振動トルク指令の位相αを変更してから、インバータの駆動に反映されるまでの演算遅れなどにより、特に、高回転速度において多少変動する。
上記した相対位相を直接検出できない課題に対して、本実施形態では、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて導出される回転速度振幅Δωmvの変化に基づき、回転速度振幅Δωmvを減少させるように位相調整方向を決定し、当該決定した位相調整方向に打消し振動トルク指令の位相αを変化させている。
打消し振動トルク指令の位相αが、π+βより大きい(位相進み側にある)場合、例えば、位相αがα1である場合は、位相αに対する回転速度振幅Δωmvの傾きである位相制御結果dΔωmv/dαが、正となる(ゼロより大きくなる)。一方、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βより小さい(位相遅れ側にある)場合、例えば、位相αがα2である場合は、位相制御結果dΔωmv/dαが、負となる(ゼロより小さくなる)。よって、位相制御結果dΔωmv/dαが、正及び負のいずれであるかによって、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βに対して、位相進み側、又は位相遅れ側にあるかを判定でき、位相調整方向を決定できる。
そして、位相制御結果算出器47は、振幅検出器44により検出された回転速度振幅Δωmvに基づき、振幅変化量算出処理60を行って、単位時間当たりの回転速度振幅Δωmvの変化量dΔωmv/dtを算出する。また、位相制御結果算出器47は、位相変化量算出処理61を行って、単位時間当たりの打消し振動トルク指令の位相αの変化量dα/dtを算出する。そして、位相制御結果算出器47は、変化量dΔωmv/dtを、変化量dα/dtで除算して、位相制御結果dΔωmv/dαを算出する。
ここで、(n)は、今回の演算時期において算出された値であることを示し、(n−1)は、前回(今回よりもΔT1前)の演算時期において算出された値であることを示し、(n−2)は、前々回(今回よりも2ΔT1前)の演算時期において算出された値であることを示す。ここで、打消し振動トルク指令の位相αに、前回(n−1)及び前々回(n−2)の演算時期の値が用いられているが、これは、今回(n)の演算時期の値が、式(7)の演算結果に基づき、位相決定部42により最終的に決定される値であるとともに、位相αの制御結果を算出するためである。すなわち、前回の演算時期で指令した位相α(n−1)の制御結果は、今回の演算時期で検出した回転速度振幅Δωmv(n)に含まれており、前々回の演算時期で指令した位相α(n−2)の制御結果は、前回の演算時期で検出した回転速度振幅Δωmv(n−1)に含まれているためである。なお、回転電機制御装置32は、前回、及び前々回など、演算処理内容に応じて、過去の演算時期で算出した値を、RAMに保存するように構成されている。なお、演算周期ΔT1は、打消し振動トルク指令の位相αの変化に対する回転速度振幅Δωmvの制御結果を検出するために、伝達トルク振動Teovによる回転電機MGの回転速度ωmの振動周期(2π/ωp)より十分長い周期(例えば、10倍程度の周期)に設定されている。
また、図3に示すように、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて回転速度振幅Δωmvを検出する振幅検出器44を備えている。
本実施形態では、振幅検出器44は、回転電機MGの回転速度ωmに対してフーリエ変換演算処理を行って、振動周波数ωpの振幅を算出し、当該振動周波数ωpの振幅を、回転速度振幅Δωmvに設定している。
このように、回転速度振幅Δωmvを、フーリエ変換による振動周波数ωpの振幅に設定しているので、軸ねじれ振動などの振動周波数ωpとは異なる周波数帯域の振動に影響されず、エンジンEの出力トルク振動Tevにより生じた回転速度振幅Δωmvの振幅を検出することができる。
また、図3に示すように、位相決定部42は、位相調整方向に、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる位相調整部46を備えている。
本実施形態では、位相調整部46は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに応じて打消し振動トルク指令の位相αを変化させるように構成されている。
本例では、位相調整部46は、フィードバック位相制御器51を備えている。そして、フィードバック位相制御器51は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに基づくフィードバック制御を行って、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。なお、図3の例では、フィードバック位相制御器51により算出される、打消し振動トルク指令の位相αの変化量は、フィードバック位相変化量αfbとされている。図3に示す例では、フィードバック制御は、積分制御により構成されている。すなわち、フィードバック位相制御器51は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに積分ゲインKfbを乗算し、積分演算処理した値をフィードバック位相変化量αfbに設定している。なお、フィードバック制御として、積分制御以外の制御、例えば、比例積分制御などの各種のフィードバック制御を用いることができる。
また、位相決定部42は、エンジンEの点火時期に基づいて打消し振動トルク指令の位相αを変化させるフィードフォワード位相制御器50を備えている。
フィードフォワード位相制御器50は、点火時期の角度変化量に基づいて、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。なお、図3の例では、フィードフォワード位相制御器50により算出される、打消し振動トルク指令の位相αの変化量は、フィードフォワード位相変化量αffとされている。
また、点火時期は、火花点火式エンジンの場合は、スパークプラグから火花を発生させた時期とされる。そして、この点火時期の角度変化量は、エンジン制御装置30から通信により伝達された、ピストンの上死点に対する相対点火角度の情報に基づき算出した角度変化量としてもよく、スパークプラグのコイルに供給された電気信号などから検出した点火タイミングに基づき算出した角度変化量としてもよい。また、点火時期として、燃焼開始時期としてもよく、上記したように、ディーゼルエンジンなどの圧縮自着火エンジンでは、点火時期を、燃焼室内への燃料噴射時期とするようにしてもよい。また、燃焼室内の圧力を検出する圧力センサが備えられている場合は、圧力の上昇により、燃焼開始時期を判定するようにしてもよい。また、点火時期の変化によりエンジンEの出力トルク振動Tevの位相が変化してから、伝達トルク振動Teovの位相βが変化するまでの、第一動力伝達機構10の応答遅れを模擬するため、フィードフォワード位相制御器50は、点火時期の角度変化量又はフィードフォワード位相変化量αffに対して、第一動力伝達機構10の応答遅れに相当する応答遅れ処理を行うようにしてもよい。
振幅周波数決定部41は、上記したように、少なくともエンジンEの回転速度ωeに基づいて打消し振動トルク指令の振幅ΔTp及び周波数ωpを決定する。なお、本実施形態では、エンジンEの回転速度ωeと回転電機MGの回転速度ωmとは、振動成分は除き、概ね同じ回転速度となるため、振幅周波数決定部41は、エンジンEの回転速度ωeに代えて、回転電機MGの回転速度ωmを用いるようにしても良い。
周波数決定器48は、エンジンEの回転速度ωeに基づいて、打消し振動トルク指令の周波数ωpを決定する。具体的には、上記したように、気筒数Nの4サイクルエンジンでは、打消し振動トルク指令の周波数ωpを、ωp=N/2×ωeに設定し、例えば、4気筒エンジンでは、ωp=2×ωeに設定する。
本例では、図11の(a)に示すように、振幅決定器49は、エンジンEの出力トルクTeに基づき、出力トルク振動の振幅算出処理62を行って、エンジンEの出力トルク振動の振幅ΔTevを算出する。上記したように、出力トルク振動の振幅ΔTevは、エンジンEの出力トルクTe(平均値)に比例するため、振幅決定器49は、図11の(b)に示すような、エンジンEの出力トルクTe(平均値)に対する出力トルク振動の振幅ΔTevの特性が設定された出力トルク振幅の特性マップを備え、当該特性マップと、エンジンEの出力トルクTe(平均値)とに基づき、出力トルク振動の振幅ΔTevを算出する。
打消し振動トルク指令生成部43は、打消し振動トルク指令の振幅ΔTp、周波数ωp、及び位相αに基づき、打消し振動トルク指令Tpを生成する。
本実施形態では、打消し振動トルク指令生成部43は、式(2)に従い、打消し振動トルク指令Tpを生成する。なお、式(2)における周波数ωp×経過時間t(ωp×t)の代わりに、回転電機MGの回転角度θmが計測できる場合は、回転電機MGの回転角度θmに基づく情報を用いるようにしてもよい。例えば、気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp×tの代わりに、θm×(N/2)を用いることができる。
この場合、振幅周波数決定部41は、2次以上の振動成分の振幅ΔTp2、ΔTp3、・・・についても、上記した振幅ΔTpと同様の方法で決定する。
次に、トルク振動打消し制御の挙動を、図13の例に示すタイムチャートに基づき説明する。図13の例は、フィードフォワード位相制御器50によりフィードフォワード位相変化量αffが算出されずに、フィードバック位相変化量αfbにのみ基づき、打消し振動トルク指令の位相αが設定されるように構成した場合の例である。なお、位相決定部42の各部の処理は、演算周期ΔT1に同期して実行されている。
次に、図14に、フィードバック位相変化量αfbに加えて、フィードフォワード位相変化量αffにも基づき、打消し振動トルク指令の位相αが設定されるように構成した場合の例を示す。
図14に示す例は、点火時期の変化により、伝達トルク振動の位相βが変動した場合(時刻t22から時刻t23)に、点火時期の角度変化量に応じて、フィードフォワード位相変化量αffが変化されている。よって、位相αが、π+βの変化に応じて、フィードフォワード的に変化されており、伝達トルク振動の位相βの変動後、短期間で、再び回転速度振幅Δωmvが最小値まで減少されている。よって、点火時期に応じたフィードフォワード位相制御を行うことにより、点火時期の変化による伝達トルク振動の位相βの変動に対して、回転速度振幅Δωmvの収束速度を高めることができる。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
Tev:出力トルク振動
ΔTev:出力トルク振動の振幅
Teo:伝達トルク
Teov:伝達トルク振動
ΔTeov:伝達トルク振動の振幅
β:伝達トルク振動の位相
Tp:打消し振動トルク指令
ΔTp:打消し振動トルク指令の振幅
ωp:(打消し振動トルク指令の)周波数
α:打消し振動トルク指令の位相
ωm:回転電機の回転速度(角速度)
ωmv:回転電機の回転速度振動
Δωmv:回転電機の回転速度振幅
ωe:エンジンの回転速度(角速度)
Tm:回転電機の出力トルク
Tmo:回転電機の出力トルク指令
Tb:ベーストルク指令値
dΔωmv/dt:回転速度振幅の変化量
dα/dt:打消し振動トルク指令の位相の変化量
dΔωmv/dα:位相制御結果
Ks:符号ゲイン
MG:回転電機
E:エンジン(内燃機関)
TM:変速機構
CL:エンジン分離クラッチ
I:入力軸
M:中間軸
O:出力軸
AX:車軸
W:車輪
DF:出力用差動歯車装置
Se1:エンジン回転速度センサ
Se2:入力軸回転速度センサ
Se3:出力軸回転速度センサ
Jm:回転電機の慣性モーメント
Je:エンジンの慣性モーメント
Jl:負荷(車両)の慣性モーメント
1:車両用駆動装置
32:回転電機制御装置(制御装置)
10:第一動力伝達機構
11:第二動力伝達機構
40:トルク振動打消し制御部
41:振幅周波数決定部
42:位相決定部
43:打消し振動トルク指令生成部
44:振幅検出器
45:位相調整方向決定部
46:位相調整部
47:位相制御結果算出器
48:周波数決定器
49:振幅決定器
50:フィードフォワード位相制御器
51:フィードバック位相制御器
60:振幅変化量算出処理
61:位相変化量算出処理
また、本願において、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合要素、例えば摩擦クラッチや噛み合い式クラッチ等が含まれていてもよい。
また、上記の特徴構成によれば、少なくとも内燃機関の回転速度に基づいて、打消し振動トルク指令の振幅及び周波数を決定するので、伝達トルク振動と同じ振幅及び周波数を有する打消し振動トルク指令を生成することができ、伝達トルク振動の打ち消しを適切に行うことができる。
ところで、伝達トルク振動を打ち消すためには、伝達トルク振動と逆位相の振動トルクを回転電機に出力させればよい。しかし、伝達トルク振動を直接測定できず、また、伝達トルク振動の位相が変動するような場合には、伝達トルク振動の位相と打消し振動トルク指令の位相との相対位相を把握して、伝達トルク振動と逆位相の打消し振動トルク指令を生成することは容易でない。また、打消し振動トルク指令の位相を、伝達トルク振動の逆位相に一致させるように変化させる上で、打消し振動トルク指令の位相が、伝達トルク振動の逆位相に対して位相進み側及び位相遅れ側のいずれの側にあるかに応じて、位相調整方向を変更する必要があるが、いずれの側にあるかを判定することは容易でない。
上記の特徴構成によれば、回転電機の回転速度振幅が減少する方向は、打消し振動トルク指令の位相が伝達トルク振動の逆位相に近づく方向であるため、回転速度振幅の変化に基づき、回転速度振幅を減少させるように決定した位相調整方向に、打消し振動トルク指令の位相を変化させることで、打消し振動トルク指令の位相を、伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
一方、位相制御結果が負である場合は、打消し振動トルク指令の位相を増加させれば回転速度振幅が減少すると判定できる。よって、現在の打消し振動トルク指令の位相は伝達トルク振動の逆位相に対して位相遅れ側にあると判定でき、位相調整方向を位相進み方向に決定することができる。
従って、打消し振動トルク指令の位相を、位相制御結果に基づき決定した位相調整方向に変化させることで、打消し振動トルク指令の位相を、精度良く伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
上記の構成によれば、位相領域での位相制御結果を、単位時間当たりの回転速度振幅の変化量、及び単位時間当たりの打消し振動トルク指令の位相の変化量、すなわち時間領域での算出結果に基づき算出できるように変換している。よって、時間領域で動作する制御系において、位相領域での位相制御結果を効率良く、リアルタイムで算出することできる。従って、位相制御結果に基づき、フィードバック的に、打消し振動トルク指令の位相を変化させることができる。このため、打消し振動トルク指令の位相を、応答性良く、伝達トルク振動の逆位相に近づけることができる。
本発明に係る回転電機制御装置32の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の概略構成を示す模式図である。この図に示すように、車両用駆動装置1を搭載した車両は、車両の駆動力源として内燃機関であるエンジンEと回転電機MGを備えたハイブリッド車両とされている。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は信号の伝達経路を示している。本実施形態では、回転電機MGは、第一動力伝達機構10を介してエンジンEに駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構11を介して車輪Wに駆動連結される。本実施形態では、第一動力伝達機構10に、回転電機MGとエンジンEとの間の駆動連結を断接するエンジン分離クラッチCLが備えられており、第二動力伝達機構11に、変速機構TMが備えられている。
まず、本実施形態に係るハイブリッド車両の車両用駆動装置1の構成について説明する。図1に示すように、ハイブリッド車両は、車両の駆動力源としてエンジンE及び回転電機MGを備え、これらのエンジンEと回転電機MGとが直列に駆動連結されるパラレル方式のハイブリッド車両となっている。ハイブリッド車両は、変速機構TMを備えており、当該変速機構TMにより、中間軸Mに伝達されたエンジンE及び回転電機MGの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oに伝達する。
次に、車両用駆動装置1の油圧制御系について説明する。油圧制御系は、油圧ポンプから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。ここでは詳しい説明を省略するが、油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁からの信号圧に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速機構TMやエンジン分離クラッチCLの各摩擦係合要素等に供給される。
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置31〜34の構成について説明する。
制御装置31〜34は、それぞれCPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、各制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、図2に示すような回転電機制御装置32の各機能部40〜46が構成されている。また、制御装置31〜34は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部40〜46の機能が実現される。
車両制御装置34は、エンジンE、回転電機MG、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCL等に対して行われる各種トルク制御、及び各摩擦係合要素の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う機能部を備えている。
エンジン制御装置31は、エンジンEの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、エンジン制御装置31は、車両制御装置34からエンジン要求トルクが指令されている場合は、車両制御装置34から指令されたエンジン要求トルクを出力トルク指令値に設定し、エンジンEが出力トルク指令値の出力トルクTeを出力するように制御するトルク制御を行う。
また、エンジン制御装置31は、エンジンEの出力トルクTeを推定し、推定したトルクを推定エンジン出力トルクとして他の制御装置に伝達するように構成されている。エンジン制御装置31は、出力トルク指令値に基づき推定エンジン出力トルクを算出して伝達するようにしてもよい。
動力伝達制御装置33は、変速機構TM、及びエンジン分離クラッチCLの制御を行う機能部を備えている。動力伝達制御装置33には、出力軸回転速度センサSe3等のセンサの検出情報が入力されている。
動力伝達制御装置33は、変速機構TMに変速段を形成する制御を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、車速、アクセル開度、及びシフト位置などのセンサ検出情報に基づいて変速機構TMにおける目標変速段を決定する。そして、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCを介して変速機構TMに備えられた各摩擦係合要素C1、B1、・・・に供給される油圧を制御することにより、各摩擦係合要素を係合又は解放して目標とされた変速段を変速機構TMに形成させる。具体的には、動力伝達制御装置33は、油圧制御装置PCに各摩擦係合要素B1、C1、・・・の目標油圧(指令圧)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧を各摩擦係合要素に供給する。
また、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの係合又は解放を行う。本実施形態では、動力伝達制御装置33は、エンジン分離クラッチCLの伝達トルク容量が、車両制御装置34から指令された目標伝達トルク容量に一致するように、油圧制御装置PCを介してエンジン分離クラッチCLに供給される油圧を制御する。具体的には、動力伝達制御装置33は、目標伝達トルク容量に基づき設定した目標油圧(指令圧)を、油圧制御装置PCに指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(指令圧)の油圧をエンジン分離クラッチCLに供給する。なお、本実施形態では、特に断らない限り、エンジン分離クラッチCLは、直結係合状態にあるもとする。
回転電機制御装置32は、回転電機MGの動作制御を行う機能部を備えている。本実施形態では、回転電機制御装置32は、車両制御装置34から指令された回転電機要求トルクなどに基づき設定されたベーストルク指令値Tbを設定する。また、回転電機制御装置32は、図2に示すように、打消し振動トルク指令Tpを算出するトルク振動打消し制御部40を備えている。そして、回転電機制御装置32は、ベーストルク指令値Tbと、後述する打消し振動トルク指令Tpとに基づき、出力トルク指令値Tmoを設定し、回転電機MGが出力トルク指令値Tmoの出力トルクTmを出力するように制御する。
図2に示すように、トルク振動打消し制御部40は、図2及び図3に示すように、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達されるトルク振動である伝達トルク振動Teovに対し、当該伝達トルク振動Teov(図4〜図6等参照)を打ち消すためのトルク振動の指令である打消し振動トルク指令Tpを生成し、当該打消し振動トルク指令Tpに従って回転電機MGを制御するトルク振動打消し制御を実行する機能部である。
振幅周波数決定部41は、少なくともエンジンEの回転速度ωeに基づいて打消し振動トルク指令Tpの振幅ΔTp及び周波数ωpを決定する。また、位相決定部42は、打消し振動トルク指令の位相αを決定する。そして、打消し振動トルク指令生成部43は、振幅ΔTp、周波数ωp、及び位相αに基づいて、打消し振動トルク指令Tpを生成する。
そして、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて導出される回転速度振幅Δωmvの変化に基づき、回転速度振幅Δωmvを減少させるように位相調整方向を決定し、当該決定した位相調整方向に打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。
以下で、トルク振動打消し制御部40によって実行されるトルク振動打消し制御の処理について、詳細に説明する。
まず、車両用駆動装置1の動力伝達系について説明する。図4に、動力伝達系のモデルを示す。動力伝達系を3慣性の軸ねじれ振動系にモデル化している。
エンジンE、回転電機MG、及び負荷(車両)を、それぞれ慣性モーメント(イナーシャ)Je、Jm、Jlを有する剛体としている。
エンジンEと回転電機MGとの間は、弾性を有する第一動力伝達機構10により連結され、回転電機MGと負荷(車両)との間は、弾性を有する第二動力伝達機構11により連結されている。本実施形態では、第一動力伝達機構10は、ダンパー、エンジン出力軸Eo、入力軸Iなどの部材により構成されている。第一動力伝達機構10は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。第二動力伝達機構11は、中間軸M、変速機構TM、出力軸O及び車軸AXなどの部材により構成されている。特に、出力軸Oと車軸AXとの軸ねじれが大きく、出力軸O及び車軸AXをまとめて、出力シャフトと称する。第二動力伝達機構11は、所定のねじりばね定数と、粘性摩擦係数を有し、軸ねじれが生じる。
Teoは、振動をしているエンジンEの出力トルクTeが、第一動力伝達機構10を介して、回転電機MGに伝達された伝達トルクであり、当該伝達トルクには当該伝達トルクの平均値に対する振動成分である伝達トルク振動Teovが生じている。Tmは、回転電機MGが出力する出力トルクであり、当該出力トルクには、後述するトルク振動打消し制御により、伝達トルク振動Teovを打ち消すための打消し振動トルク指令Tpのトルク振動が生じている。ここで、打消し振動トルク指令Tpは、回転電機MGの出力トルクTmの平均値に対する振動成分となる。
次に、エンジンEから第一動力伝達機構10を介して回転電機MGに伝達される伝達トルク振動Teovについて、より詳細に説明する。
図5に示すように、エンジンEの出力トルクTeは、エンジンEの燃焼工程における燃焼により生じる。火花点火式エンジンの場合は、点火時期の後に燃焼が開始する。すなわち、燃焼により上昇した燃焼室内の圧力が、ピストン及びコネクティングロッドを介して、クランク角度等の幾何学的関係に従い、クランクシャフト(エンジン出力軸Eo)に伝達され、エンジンEの出力トルクTeに変換される。エンジンEの出力トルクTeは、点火時期の後に増加していき、ピストンが下死点に近づくにつれ減少していく。よって、エンジンEの出力トルクTeは、図5に示すように、回転同期で周期的に振動する。エンジンEの出力トルクTeの振動周波数(角周波数)ωpは、エンジンEの回転速度ωeに応じて変化する。気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp=N/2×ωeとなり、4気筒エンジンでは、ωp=2×ωeとなる。なお、ディーゼルエンジンなどの圧縮自着火エンジンでは、点火時期、すなわち、燃焼開始時期は、燃焼室内への燃料噴射時期とすることができる。
また、エンジンEの出力トルクTeは、ゼロ付近まで変動するため、出力トルク振動Tevの振幅が大きい。この出力トルク振動Tevの振幅は、エンジンEの出力トルクTeの平均値の増加に、概ね比例して増加する。なお、以下で、エンジンEの出力トルクTeは、特に断らない限り、振動をしているトルクの平均値を示すものとする。
また、図5に示すように、出力トルク振動Tevは、第一動力伝達機構10の伝達特性により、位相遅れが生じて、回転電機MGに伝達される。図10の(b)のボード線図の位相曲線の例に示すように、約−180deg〜−160degの位相遅れが生じる。
よって、図12に示すように、低い回転速度ωeであって、高い出力トルクTeである領域が、伝達トルク振動Teovが、運転者に不快感を与えるレベルまで大きくなる、高振動領域となる。この高振動領域は、図12に示すように、エンジンEの熱効率が高くなる、高効率領域と重複している。本願のような、トルク振動打消し制御を行わない場合は、高振動領域を避けて、エンジンEを運転する必要があり、エンジンEの高効率領域を使用できない場合が生じる。そのため、本実施形態に係る制御装置では、トルク振動打消し制御を行い、伝達トルク振動Teovを打ち消して、高振動領域を使用できるようにしている。
振動周波数ωpに対する1次の振動成分で近似できる伝達トルク振動Teovを、打ち消すためには、式(1)の伝達トルク振動Teovと逆位相、すなわち、π(180deg)だけ位相が進み又は遅れたトルク振動を、回転電機MGに出力させればよいことがわかる。
よって、図6及び次式に示すように、トルク振動打消し制御部40は、打消し振動トルク指令Tpを、振動周波数ωpに対する1次の振動成分で形成する。
この式から、合計トルク振動Tovの振幅ΔTovは、次式となる。
位相差α−βがπの場合に、振幅ΔTov及び振幅Δωmvが最小となり、位相差α−βがπより、進み(増加)方向又は、遅れ(減少)方向に変化すると、振幅ΔTov及び振幅Δωmvが増加することがわかる。
また、打消し振動トルク指令の振幅ΔTpが、伝達トルク振動の振幅ΔTeovに等しい場合は、位相差α−βがπになるときに、振幅ΔTov及び振幅Δωmvがゼロの最小値になる。一方、振幅ΔTpが、振幅ΔTeovに一致していない場合でも、位相差α−βがπになるときに、振幅ΔTov及び振幅Δωmvがゼロより大きい最小値になる。
また、トルクセンサなどが備えられておらず、合計トルクToを直接測定できない場合でも、回転速度振幅Δωmvと合計トルク振動の振幅ΔTovとが比例関係にあることから、回転速度振幅Δωmvを最小化すれば、合計トルク振動の振幅ΔTovも最小化できることがわかる。
よって、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βに対して、位相進み側及び位相遅れ側のいずれにあるかによって、位相αの位相調整方向を反転させる必要がある。
打消し振動トルク指令の位相αの、π+βに対する相対位相を把握する上で、打消し振動トルク指令の位相αは、回転電機制御装置32により、比較的精度良く制御できる。一方、伝達トルク振動の位相βは、トルクセンサなどが備えられていない場合は容易に測定できず、また後述する変動要因により変動するため、相対位相を容易に把握できないという課題がある。相対位相が把握できないと、回転速度振幅Δωmv及び合計トルク振動の振幅ΔTovを最小化するために、打消し振動トルク指令の位相αを、位相進み又は位相遅れのいずれの方向に変化させるか、位相調整方向を決定できないため、打消し振動トルク指令の位相αを変化させることができない。
(1)点火時期の変動は、エンジン制御装置31による点火時期の変更などにより生じる。エンジン制御装置31は、エンジンEの回転速度ωe及び出力トルクTeなどの運転動作点が変化すると、運転動作点毎に設定された点火時期に点火時期を変更したり、ノッキング防止制御により、点火時期を遅角方向及び進角方向にリアルタイムに変更したりする。点火時期が位相進み又は位相遅れ方向に変化すると、その変化量に応じて、出力トルク振動Tevの位相も変化する。そして、出力トルク振動Tevの位相の変化量に応じて、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
(2)燃焼速度の変動は、燃焼室内の排気ガス再循環量の変化、燃焼室内の流動の変化、点火時期の変化などにより生じる。燃焼速度の変化に応じて、出力トルク振動Tevの位相も変化して、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
(3)第一動力伝達機構10の位相遅れの変動は、ダンパーなどの、ねじりばね定数及び粘性摩擦係数が変化することにより生じる。この位相遅れの変動に応じて、伝達トルク振動Teovの位相も変化する。
この内、(1)点火時期の変動は、エンジン制御装置30との通信などにより、回転電機制御装置32でも把握できるため、後述するように、トルク振動打消し制御部40は、点火時期の変動に応じて、打消し振動トルク指令の位相αをフィードフォワード的に変化させることが可能である。
なお、打消し振動トルク指令の位相αも、回転電機制御装置32において、打消し振動トルク指令の位相αを変更してから、インバータの駆動に反映されるまでの演算遅れなどにより、特に、高回転速度において多少変動する。
上記した相対位相を直接検出できない課題に対して、本実施形態では、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて導出される回転速度振幅Δωmvの変化に基づき、回転速度振幅Δωmvを減少させるように位相調整方向を決定し、当該決定した位相調整方向に打消し振動トルク指令の位相αを変化させている。
打消し振動トルク指令の位相αが、π+βより大きい(位相進み側にある)場合、例えば、位相αがα1である場合は、位相αに対する回転速度振幅Δωmvの傾きである位相制御結果dΔωmv/dαが、正となる(ゼロより大きくなる)。一方、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βより小さい(位相遅れ側にある)場合、例えば、位相αがα2である場合は、位相制御結果dΔωmv/dαが、負となる(ゼロより小さくなる)。よって、位相制御結果dΔωmv/dαが、正及び負のいずれであるかによって、打消し振動トルク指令の位相αが、π+βに対して、位相進み側、又は位相遅れ側にあるかを判定でき、位相調整方向を決定できる。
そして、位相制御結果算出器47は、振幅検出器44により検出された回転速度振幅Δωmvに基づき、振幅変化量算出処理60を行って、単位時間当たりの回転速度振幅Δωmvの変化量dΔωmv/dtを算出する。また、位相制御結果算出器47は、位相変化量算出処理61を行って、単位時間当たりの打消し振動トルク指令の位相αの変化量dα/dtを算出する。そして、位相制御結果算出器47は、変化量dΔωmv/dtを、変化量dα/dtで除算して、位相制御結果dΔωmv/dαを算出する。
また、図3に示すように、位相決定部42は、回転電機MGの回転速度ωmに基づいて回転速度振幅Δωmvを検出する振幅検出器44を備えている。
本実施形態では、振幅検出器44は、回転電機MGの回転速度ωmに対してフーリエ変換演算処理を行って、振動周波数ωpの振幅を算出し、当該振動周波数ωpの振幅を、回転速度振幅Δωmvに設定している。
このように、回転速度振幅Δωmvを、フーリエ変換による振動周波数ωpの振幅に設定しているので、軸ねじれ振動などの振動周波数ωpとは異なる周波数帯域の振動に影響されず、エンジンEの出力トルク振動Tevにより生じた回転速度振幅Δωmvの振幅を検出することができる。
また、図3に示すように、位相決定部42は、位相調整方向に、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる位相調整部46を備えている。
本実施形態では、位相調整部46は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに応じて打消し振動トルク指令の位相αを変化させるように構成されている。
本例では、位相調整部46は、フィードバック位相制御器51を備えている。そして、フィードバック位相制御器51は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに基づくフィードバック制御を行って、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。なお、図3の例では、フィードバック位相制御器51により算出される、打消し振動トルク指令の位相αの変化量は、フィードバック位相変化量αfbとされている。図3に示す例では、フィードバック制御は、積分制御により構成されている。すなわち、フィードバック位相制御器51は、位相調整方向に、回転速度振幅Δωmvの大きさに積分ゲインKfbを乗算し、積分演算処理した値をフィードバック位相変化量αfbに設定している。なお、フィードバック制御として、積分制御以外の制御、例えば、比例積分制御などの各種のフィードバック制御を用いることができる。
また、位相決定部42は、エンジンEの点火時期に基づいて打消し振動トルク指令の位相αを変化させるフィードフォワード位相制御器50を備えている。
フィードフォワード位相制御器50は、点火時期の角度変化量に基づいて、打消し振動トルク指令の位相αを変化させる。なお、図3の例では、フィードフォワード位相制御器50により算出される、打消し振動トルク指令の位相αの変化量は、フィードフォワード位相変化量αffとされている。
また、点火時期は、火花点火式エンジンの場合は、スパークプラグから火花を発生させた時期とされる。そして、この点火時期の角度変化量は、エンジン制御装置30から通信により伝達された、ピストンの上死点に対する相対点火角度の情報に基づき算出した角度変化量としてもよく、スパークプラグのコイルに供給された電気信号などから検出した点火タイミングに基づき算出した角度変化量としてもよい。また、点火時期として、燃焼開始時期としてもよく、上記したように、ディーゼルエンジンなどの圧縮自着火エンジンでは、点火時期を、燃焼室内への燃料噴射時期とするようにしてもよい。また、燃焼室内の圧力を検出する圧力センサが備えられている場合は、圧力の上昇により、燃焼開始時期を判定するようにしてもよい。また、点火時期の変化によりエンジンEの出力トルク振動Tevの位相が変化してから、伝達トルク振動Teovの位相βが変化するまでの、第一動力伝達機構10の応答遅れを模擬するため、フィードフォワード位相制御器50は、点火時期の角度変化量又はフィードフォワード位相変化量αffに対して、第一動力伝達機構10の応答遅れに相当する応答遅れ処理を行うようにしてもよい。
振幅周波数決定部41は、上記したように、少なくともエンジンEの回転速度ωeに基づいて打消し振動トルク指令の振幅ΔTp及び周波数ωpを決定する。なお、本実施形態では、エンジンEの回転速度ωeと回転電機MGの回転速度ωmとは、振動成分は除き、概ね同じ回転速度となるため、振幅周波数決定部41は、エンジンEの回転速度ωeに代えて、回転電機MGの回転速度ωmを用いるようにしても良い。
周波数決定器48は、エンジンEの回転速度ωeに基づいて、打消し振動トルク指令の周波数ωpを決定する。具体的には、上記したように、気筒数Nの4サイクルエンジンでは、打消し振動トルク指令の周波数ωpを、ωp=N/2×ωeに設定し、例えば、4気筒エンジンでは、ωp=2×ωeに設定する。
本例では、図11の(a)に示すように、振幅決定器49は、エンジンEの出力トルクTeに基づき、出力トルク振動の振幅算出処理62を行って、エンジンEの出力トルク振動の振幅ΔTevを算出する。上記したように、出力トルク振動の振幅ΔTevは、エンジンEの出力トルクTe(平均値)に比例するため、振幅決定器49は、図11の(b)に示すような、エンジンEの出力トルクTe(平均値)に対する出力トルク振動の振幅ΔTevの特性が設定された出力トルク振幅の特性マップを備え、当該特性マップと、エンジンEの出力トルクTe(平均値)とに基づき、出力トルク振動の振幅ΔTevを算出する。
打消し振動トルク指令生成部43は、打消し振動トルク指令の振幅ΔTp、周波数ωp、及び位相αに基づき、打消し振動トルク指令Tpを生成する。
本実施形態では、打消し振動トルク指令生成部43は、式(2)に従い、打消し振動トルク指令Tpを生成する。なお、式(2)における周波数ωp×経過時間t(ωp×t)の代わりに、回転電機MGの回転角度θmが計測できる場合は、回転電機MGの回転角度θmに基づく情報を用いるようにしてもよい。例えば、気筒数Nの4サイクルエンジンでは、ωp×tの代わりに、θm×(N/2)を用いることができる。
次に、トルク振動打消し制御の挙動を、図13の例に示すタイムチャートに基づき説明する。図13の例は、フィードフォワード位相制御器50によりフィードフォワード位相変化量αffが算出されずに、フィードバック位相変化量αfbにのみ基づき、打消し振動トルク指令の位相αが設定されるように構成した場合の例である。なお、位相決定部42の各部の処理は、演算周期ΔT1に同期して実行されている。
次に、図14に、フィードバック位相変化量αfbに加えて、フィードフォワード位相変化量αffにも基づき、打消し振動トルク指令の位相αが設定されるように構成した場合の例を示す。
図14に示す例は、点火時期の変化により、伝達トルク振動の位相βが変動した場合(時刻t22から時刻t23)に、点火時期の角度変化量に応じて、フィードフォワード位相変化量αffが変化されている。よって、位相αが、π+βの変化に応じて、フィードフォワード的に変化されており、伝達トルク振動の位相βの変動後、短期間で、再び回転速度振幅Δωmvが最小値まで減少されている。よって、点火時期に応じたフィードフォワード位相制御を行うことにより、点火時期の変化による伝達トルク振動の位相βの変動に対して、回転速度振幅Δωmvの収束速度を高めることができる。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
Tev:出力トルク振動
ΔTev:出力トルク振動の振幅
Teo:伝達トルク
Teov:伝達トルク振動
ΔTeov:伝達トルク振動の振幅
β:伝達トルク振動の位相
Tp:打消し振動トルク指令
ΔTp:打消し振動トルク指令の振幅
ωp:(打消し振動トルク指令の)周波数
α:打消し振動トルク指令の位相
ωm:回転電機の回転速度(角速度)
ωmv:回転電機の回転速度振動
Δωmv:回転電機の回転速度振幅
ωe:エンジンの回転速度(角速度)
Tm:回転電機の出力トルク
Tmo:回転電機の出力トルク指令
Tb:ベーストルク指令値
dΔωmv/dt:回転速度振幅の変化量
dα/dt:打消し振動トルク指令の位相の変化量
dΔωmv/dα:位相制御結果
Ks:符号ゲイン
MG:回転電機
E:エンジン(内燃機関)
TM:変速機構
CL:エンジン分離クラッチ
I:入力軸
M:中間軸
O:出力軸
AX:車軸
W:車輪
DF:出力用差動歯車装置
Se1:エンジン回転速度センサ
Se2:入力軸回転速度センサ
Se3:出力軸回転速度センサ
Jm:回転電機の慣性モーメント
Je:エンジンの慣性モーメント
Jl:負荷(車両)の慣性モーメント
1:車両用駆動装置
32:回転電機制御装置(制御装置)
10:第一動力伝達機構
11:第二動力伝達機構
40:トルク振動打消し制御部
41:振幅周波数決定部
42:位相決定部
43:打消し振動トルク指令生成部
44:振幅検出器
45:位相調整方向決定部
46:位相調整部
47:位相制御結果算出器
48:周波数決定器
49:振幅決定器
50:フィードフォワード位相制御器
51:フィードバック位相制御器
60:振幅変化量算出処理
61:位相変化量算出処理
Claims (6)
- 第一動力伝達機構を介して内燃機関に駆動連結されるとともに、第二動力伝達機構を介して車輪に駆動連結される回転電機の制御を行うための制御装置であって、
前記内燃機関から前記第一動力伝達機構を介して前記回転電機に伝達されるトルク振動である伝達トルク振動に対し、当該伝達トルク振動を打ち消すためのトルク振動の指令である打消し振動トルク指令を生成し、当該打消し振動トルク指令に従って前記回転電機を制御するトルク振動打消し制御を実行可能であり、
少なくとも前記内燃機関の回転速度に基づいて前記打消し振動トルク指令の振幅及び周波数を決定する振幅周波数決定部と、
前記打消し振動トルク指令の位相を決定する位相決定部と、を備え、
前記位相決定部は、前記回転電機の回転速度に基づいて導出される回転速度振幅の変化に基づき、前記回転速度振幅を減少させるように位相調整方向を決定し、当該決定した位相調整方向に前記打消し振動トルク指令の位相を変化させる制御装置。 - 前記位相決定部は、前記回転速度振幅の変化に基づき、前記打消し振動トルク指令の位相に対する前記回転速度振幅の傾きである位相制御結果を算出し、前記位相制御結果が正である場合は、前記位相調整方向を位相遅れ方向に決定し、位相遅れ方向に前記打消し振動トルク指令の位相を変化させ、前記位相制御結果が負である場合は、前記位相調整方向を位相進み方向に決定し、位相進み方向に前記打消し振動トルク指令の位相を変化させる請求項1に記載の制御装置。
- 前記位相決定部は、単位時間当たりの前記回転速度振幅の変化量を、単位時間当たりの前記打消し振動トルク指令の位相の変化量で除算して、前記位相制御結果を算出する請求項2に記載の制御装置。
- 前記位相決定部は、前記回転速度振幅の大きさに応じて前記打消し振動トルク指令の位相を変化させる請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記内燃機関の点火時期に基づいて前記打消し振動トルク指令の位相を変化させる請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
- 前記内燃機関の回転速度及び出力トルクに基づいて前記打消し振動トルク指令の振幅を決定する請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
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