JP2012071374A - 切断刃及び積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

切断刃及び積層セラミック電子部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】切断時等にグリーンシート積層体に生じる応力が少なく、切断時における積層体のデラミネーションの形成を抑制しうる切断刃等を提供する。
【解決手段】
積層された複数のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体を切断する切断刃であって、刃先から峰へ向かって順に配列される第1領域、第2領域及び第3領域を有する刃面を有し、前記第1領域は、前記切断刃の厚み方向の中心線に対して第1の角度を有しており、前記第2領域は前記中心線に対して前記第1の角度より小さい第2の角度を有しており、前記第3領域は、前記中心線に対して前記第2の角度より小さい第3の角度を有しており、前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域の算術平均粗さRaが0.1μm以下であり、前記第1領域の延長線と、前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第2領域までの距離が5μm以下である切断刃。
【選択図】図3

Description

本発明は、グリーンシート積層体を好適に切断できる切断刃、およびこのような切断刃を用いた積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造において、複数のセラミックグリーンシートを積層して作成されたグリーンシート積層体を、切断刃を用いて積層体の積層方向に力を作用させ、いわゆる押し切りによって切断する技術や、これに用いる切断刃が提案されている(特許文献1等参照)。
従来技術では、カップ型砥石を用いて、切断刃の刃面に、短辺方向に延在する研削溝を形成することが提案されている。また、短辺方向に分割された複数の段付き面を有する切断刃を用いることが提案されている。
特開2004−17444号公報
従来技術に係る切断刃では、積層体の切断面に、研削溝に沿う凹凸が形成される場合があり、切断面の平滑性に問題を有している。また、従来技術に係る切断刃は、切断時にグリーンシート積層体のデラミネーションを引き起こす場合があった。本発明の発明者らは、刃面を単に段付き面としただけでは、面の境界が積層体のデラミネーションを引き起こす場合があるとの知見を得た。
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、切断時等にグリーンシート積層体に生じる応力が少なく、切断時における積層体のデラミネーションの形成を抑制しうる切断刃及びこのような切断刃を用いた積層セラミク電子部品の製造方法を提供することである。
本発明に係る切断刃は、
積層された複数のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体を切断する切断刃であって、
刃先から峰へ向かって順に配列される第1領域、第2領域及び第3領域を有する刃面を有し、
前記第1領域は、前記切断刃の厚み方向の中心線に対して第1の角度を有しており、前記第2領域は前記中心線に対して前記第1の角度より小さい第2の角度を有しており、前記第3領域は、前記中心線に対して前記第2の角度より小さい第3の角度を有しており、
前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域の算術平均粗さRaが0.1μm以下であり、
前記第1領域の延長線と、前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第2領域までの距離が5μm以下であることを特徴とする。
本発明に係る切断刃の刃面は、第1領域と第3領域の間に、第1領域と第3領域の中間の傾斜角度を有しており、第1領域および第3領域の延長線の交点からの距離が5μm以下であり、したがって中心線方向の幅も比較的小さい第2領域を有する。第2領域の存在により、隣接する2つの領域のなす角度が小さくなるため、本発明に係る切断刃は、切断の際にグリーンシート積層体に生じる応力を低減し、切断時における積層体のデラミネーションの形成を抑制することができる。
また、さらに、本発明に係る切断刃は、第1領域、第2領域及び第3領域の算術平均粗さRaが0.1μm以下であるため、切断時に生じる応力が少なく、切断により形成される切断面の平滑度が高い。
また、例えば、本発明に係る切断刃は、
第1の刃面と、前記中心線を対称軸として前記第1の刃面に対して略対称な形状を有する第2の刃面とから成る2つの前記刃面を有してもよく、
前記第1の刃面における前記第1領域の延長線と、前記第1の刃面における前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第1の刃面における前記第2領域までの距離を第1の距離とし、
前記第2の刃面における前記第1領域の延長線と、前記第2の刃面における前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第2の刃面における前記第2領域までの距離を第2の距離とすると、
前記第1の距離と前記第2の距離の差の絶対値は2μm以下が好ましい。
このような切断刃は、第1の刃面の第2領域と、第2刃面の第2領域の間における形状の差異が小さいため、切断時において、第1の刃面が受ける力と、第2の刃面が受ける力の差が小さくなる。これにより、このような切断刃は、切断刃が湾曲せず中心線に沿って、高精度にグリーンシート積層体を切断することができる。
本発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、
上記いずれかに記載の切断刃を用いて、積層された複数のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体を切断する工程と、
前記グリーンシート積層体を焼成する工程と、を含む。
図1は、本発明の一実施形態に係る切断刃によるグリーンシート積層体の切断工程を、模式的に説明した概念図である。 図2は、本発明の第1実施形態に係る切断刃の断面図である。 図3は、図2に示す切断刃の一部を拡大して示した拡大断面図である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る切断刃の一部を示す拡大断面図である。 図5は、図4に示す切断刃の一部をさらに拡大して示した拡大断面図である。 図6は、参考例に係る切断面の一部を示す拡大断面図である。
図1は、本発明の一実施形態に係る切断刃10によるグリーンシート積層体12の切断工程を、模式的に説明した概念図である。
図1に示すように、切断刃10は、グリーンシート積層体12を切断するために使用される。切断刃10は、グリーンシート積層体12の積層方向に押圧力を作用させて、グリーンシート積層体12を切断する。すなわち、切断の際、切断刃10の刃先16は、グリーンシート積層体12の上面12aから底面12bまで、グリーンシート積層体12の積層方向に沿って移動する。
切断刃10は、第1の刃面20及び第2の刃面30を有する。第1の刃面20及び第2の刃面30は、切断時における進行方向の先端に位置する刃先16から、後端に位置する峰14に至る切断刃10の両側面を構成する。
図2は、切断刃10の断面図である。第1の刃面20と第2の刃面30とは、切断刃10の厚み方向の中心線18を対称軸として、互いに略対称な形状を有している。図1及び図2に示すように、第1の刃面20は、刃先16から峰14に向かって順に配列される第1刃面第1領域22、第1刃面第2領域24及び第1刃面第3領域26を有する。第2の刃面30も、第1の刃面20と同様に、刃先16から峰14に向かって順に配列される第2刃面第1領域32、第2刃面第2領域34、第2刃面第3領域36を有する。
図3は、図2に示す切断刃10における第1刃面第2領域24及び第2刃面第2領域34付近を拡大して示した拡大断面図である。第2の刃面30において、第2刃面第1領域32は、刃先16(図2参照)から境界33までの間の部分であり、第2刃面第1領域32は、中心線18に対して第1の角度αを有している。
第2刃面第2領域34は、第2の刃面30における境界33から境界35までの間の部分であり、第2刃面第2領域34は、中心線18に対して、第1の角度αより小さい第2の角度βを有している。また、第2刃面第3領域36は、第2の刃面30における境界35から峰14までの間であって切断時にグリーンシート積層体12に接触する部分である。第2刃面第3領域36は、中心線18に対して第2の角度βより小さい第3の角度を有している。なお、図3に示す第2刃面第3領域36において、第3の角度は0度であるが、第3の角度はこれに限定されない。
第2の刃面30において、第2刃面第1領域32の延長線Lと、第2刃面第3領域36の延長線Mの交点Pから、第2刃面第2領域34までの距離である第2の距離Hは、5μm以下とすることが好ましい。第2の距離Hを5μm以下とすることによって、隣接する2つの領域のなす角度や、第2刃面第2領域34の中心線18方向の幅が小さくなり、切断時の切断抵抗を抑制することができる。
第1の刃面20と第2の刃面30とは、略対称な形状を有することが好ましく、本実施形態における第1刃面第1領域22は、第2刃面第1領域32と同様に、中心線18に対して、第1の角度αを有している。また、第1刃面第2領域24は、中心線18に対して第2の角度βを有しており、第1刃面第3領域26は、中心線18に対して第3の角度を有している。なお、図3において、境界23は、第1刃面第1領域22と第1刃面第2領域24の境界を示しており、境界25は、第1刃面第2領域24と第1刃面第3領域26の境界を示している。
第1の刃面20においても、第2の刃面30と同様に、第1刃面第1領域22の延長線Lと第1刃面第3領域の延長線Mの交点Pから、第1刃面第2領域24までの距離である第1の距離Hは、5μm以下とすることが好ましい。さらに、第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値は2μm以下とすることが好ましい。第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値を2μm以下とすることによって、切断時において、第1の刃面20が受ける力と、第2の刃面30が受ける力の差が小さくなり、切断刃10は湾曲せずに、グリーンシート積層体12を高精度に切断することができる。なお、第1の距離H及び第2の距離Hの下限は、第1刃面第2領域24及び第2刃面第2領域34を、サブミクロンオーダーの計測で認識できる程度であれば特に限定されないが、1.0μm以上であることがさらに好ましい。第1の距離H及び第2の距離Hを1.0μm以上とすることによって、境界23,25,33,35等におけるグリーンシート積層体12のデラミネーションの形成を抑制することができる。
第1の刃面20における第1刃面第1領域22、第1刃面第2領域24及び第1刃面第3領域26並びに第2の刃面30における第2刃面第1領域32、第2刃面第2領域34及び第2刃面第3領域36の算術平均粗さRa(JIS B 0601:2001)は、切断時の切断抵抗を抑制するために、0.1μm以下とすることが好ましく、0.05μm以下とすることが更に好ましい。また、各領域22,24,26,32,34,36の算術平均粗さRaの下限値は特に限定されないが、研磨時間等を考慮して、0.01μm程度以上とすることが好ましい。
以上のように、本実施形態に係る切断刃10の第1の刃面20は、第1刃面第1領域22と第1刃面第3領域26の間に、第1刃面第2領域24を有する。第1刃面第2領域24は、中心線18に対する角度が、第1刃面第1領域22より小さく、第1刃面第3領域26より大きい。また、第1の刃面20において、第1刃面第1領域22の延長線Lと第1刃面第3領域26の延長線Mの交点Pから、第1刃面第2領域24までの距離である第1の距離Hは、5μm以下である。さらに、第1刃面第1領域22、第1刃面第2領域24及び第1刃面第3領域26の算術平均粗さRaは、0.1μm以下である。
このような切断刃10は、第1の刃面20における各領域22,24,26の算術平均粗さRaが小さいため、切断時の切断抵抗が小さく、また、切断されたグリーンシート積層体12に発生する応力を抑制することができる。また、切断刃10は、上述のような第1刃面第2領域24を有するので、隣接する領域22,24,26の境界23,25における刃面の角度の変化が小さく、この点でも切断時の切断抵抗が小さく、また、切断されたグリーンシート積層体12に発生する応力を、効果的に抑制することができる。これにより、切断刃10は、切断されたグリーンシート積層体12にデラミネーションが起こることを抑制することができる。
また、第1刃面第2領域24は、中心線18方向の幅も比較的小さく、第1刃面第1領域22と第1刃面第3領域26の間に形成された面取り面もしくは面取り面に類似した形状を有している。このような切断刃10は、切断されたグリーンシート積層体12に発生する応力を抑制することができる。
また、切断刃10における第2の刃面30も、中心線18を対称軸として、第1の刃面20と略対称な形状を有しており、第1の刃面20と同様の作用効果を奏する。さらに、切断刃10において、第1の刃面20における第1の距離Hと、第2の刃面30における第2の距離Hの差の絶対値は2μm以下である。これにより、切断刃10は、良好な切断直進性を有し、グリーンシート積層体12を高精度に切断することができる。
切断刃10の製造方法は、特に限定されないが、例えば、切断刃10は、研削工程と、研磨工程を経て作製される。研削工程では、中心線18に対して第1の角度αを有する第1領域22、32と、中心線18に対して第3の角度を有する第3領域26,36が、研削により形成される。研削工程では、砥石の砥面と切断刃の刃面とを、所定の角度で接触させた状態で、研削が行われる。研削工程で用いる砥石は、カップ型砥石であっても良く、平面砥石であっても良く、特に限定されない。
次に研磨工程では、第1領域22,32及び第3領域26,36が形成された刃面を研磨する。研磨工程では、研削によって形成された第1領域22、32及び第3領域26,36の表面が平滑化されると共に、第1領域22,32と第3領域26,36の境界が面取りされ、第2領域24,34が形成される。研磨工程における研磨方法は、特に限定されないが、例えば流体研磨法又は電解研磨法を用いることが好ましい。流体研磨法又は電解研磨法を用いることによって、第1の距離H及び第2の距離Hが5μm以下である第2領域24,34を比較的容易に形成することができると共に、第2領域24,34の形成と各領域22,24,26,32,34,36の平滑化を同時に行うことができる。
第2実施形態
図1〜図3では、第1の刃面20及び第2の刃面30が、面取り面に相当する第2領域24,34を一つずつ有する切断刃10を例に挙げて説明を行ったが、本発明に係る切断刃は、これに限定されない。例えば、図4及び図5に示す第2実施形態に係る切断刃50のように、面取り面又はこれに類似する形状の領域が、各刃面に複数形成されていても良い。
図4は、本発明の第2実施形態に係る切断刃50の一部を拡大して示した拡大断面図である。第2実施形態に係る切断刃50は、刃先56周辺の形状が異なる他は、第1実施形態に係る切断刃10と同様である。切断刃50における第1の刃面60は、刃先56から峰(不図示)に向かって順に配列される第1刃面第1領域62、第1刃面第2領域63、第1刃面第3領域64、第1刃面第4領域65、第1刃面第5領域66を有している。各領域62〜66と中心線58の間の角度は、刃先から離れて位置する領域ほど小さい。
図5は、図4に示す切断刃50の刃先56付近を拡大した拡大断面図である。第1刃面第1領域62の延長線Lと、第1刃面第3領域64の延長線Mの交点Pから、第1刃面第2領域63までの距離である第3の距離Hは、5μm以下とすることが好ましい。また、図4に示すように、第1刃面第3領域64の延長線Lと、第1刃面第5領域66の延長線Mの交点Pから、第1刃面第4領域65までの距離である第5の距離Hも、5μm以下とすることが好ましい。
第2の刃面70は、中心線58を対称軸として、第1の刃面60に対して略対称な形状を有している。すなわち、第2の刃面70も、第1の刃面60と同様に、第2刃面第1領域72、第2刃面第2領域73、第2刃面第3領域74、第2刃面第4領域75、第2刃面第5領域76を有している。また、各領域72〜76と中心線58の間の角度は、刃先から離れて位置する領域ほど小さい。
また、図5に示すように、第2刃面第1領域72の延長線Lと、第2刃面第3領域74の延長線Mの交点Pから、第2刃面第2領域73までの距離である第4の距離Hは、5μm以下とすることが好ましい。また、図4に示すように、第2刃面第3領域74の延長線Lと、第2刃面第5領域76の延長線Mの交点Pから、第2刃面第4領域75までの距離である第6の距離Hも、5μm以下とすることが好ましい。
切断刃50における第2領域63,73及び第4領域65,75は、切断刃10における第2領域24,34と同様に、隣接する2つの領域のなす角度や、中心線58方向の幅が小さく、切断時の切断抵抗を抑制する効果を奏する。すなわち、切断面が互いに角度の異なる3以上の領域を有する場合は、両隣に位置する領域の延長線の交点P,P,P,Pからの距離が5μm以下となる領域H,H,H,Hが、同様の距離が5μmより大きくなる領域62,64,66,72,74,76の間に配置されることが好ましい。このような切断刃50は、切断されたグリーンシート積層体12にデラミネーションが起こることを、効果的に抑制することができる。
切断刃50においては、図5に示す第3の距離Hと第4の距離Hの差の絶対値が2μm以下であり、図4に示す第5の距離Hと第6の距離Hの差の絶対値も2μm以下であることが好ましい。互いに対称な位置にある領域の形状の差異を小さくすることにより、切断刃50は、第1の刃面60が受ける力と、第2の刃面70が受ける力の差を小さくして、グリーンシート積層体12を高精度に切断することができる。
また、第1の刃面60及び第2の刃面70が有する各領域62〜66,72〜76の算術平均粗さRaは、切断時の切断抵抗を抑制するために、0.1μm以下とすることが好ましく、0.05μm以下とすることが更に好ましい。
なお、切断刃50の製造方法も、特に限定されないが、例えば、研削工程で第1領域62,72、第3領域64,74及び第5領域66,76を形成したのち、研磨工程で第2領域63,73及び第4領域65,75を形成することによって製造することができる。
積層セラミック電子部品の製造方法
本実施形態に係る切断刃10,50を用いる積層セラミック電子部品の製造方法として、セラミックコンデンサの製造方法を例に挙げて説明する。本実施形態に係る製造方法では、図1に示すように、まず、グリーンシート積層体12を準備し、切断刃10を用いて、グリーンシート積層体12を切断する。
グリーンシート積層体12は、印刷等によって複数の内部電極が形成されたセラミックグリーンシートを所定枚数積層した後、これを熱圧着して作成する。ただし、グリーンシート積層体12における積層方向の両方の最外部には、内部電極が形成されていない外層用のセラミックグリーンシートが積層されている。
セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウムなどに代表されるセラミック粉末、バインダ、分散剤及び可塑剤等をボールミルなどで混練した誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法等により作製される。内部電極は、導電性粉末、溶剤、バインダ及びセラミック粉末等を、三本ロールなどで混練して作製した導電ペーストを、グリーンシート表面に転写等することによって形成される。セラミック粉末の組成、誘電体ペースト又は導電ペーストにおける各成分の配合比等は特に限定されず、セラミックコンデンサの仕様等に応じて適宜調整することができる。
次に、切断刃10によってチップ状に切断された積層体を、所定温度で脱バインダ処理及び焼成した後、端子電極を焼き付け、セラミックコンデンサを得る。脱バインダ処理時及び焼成時の温度についても、特に限定されず、グリーンシートの組成その他の条件に応じて適宜調整される。
本実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法によれば、切断時および切断後において、グリーンシート積層体12にデラミネーションが起こることを効果的に抑制できる。したがって、本実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、製造される積層セラミック電子部品の特性ばらつきを抑え、歩留まりを向上させることができる。
なお、切断刃10,50は、刃先16を積層方向に移動させる、いわゆる押し切りによってグリーンシート積層体12を切断する場合だけでなく、刃先16を積層方向とは垂直な方向に移動させる、いわゆる引き切りによってグリーンシート積層体12を切断する場合に用いても良い。
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
<切断刃の作製>
実施例1では、図2及び図3等に示す切断刃10を作製し、準備したグリーンシート積層体12を切断し、切断時の最大切断負荷を調査した。また、切断されたグリーンシート積層体12の個片について、端部(切断面)にデラミネーションが形成されているか否かを調査した。
実施例1に係る切断刃10は、研削工程と、研磨工程を経て作製した。研削工程では、第1の刃面および第2の刃面に、中心線18に対して第1の角度αを有する第1領域22、32と、中心線18に対して第3の角度を有する第3領域26,36を、研削によって形成した。第1の角度αは10度、第3の角度は0度とした。
研磨工程では、第1領域22,32及び第3領域26,36が形成された刃面を、流体研磨法により研磨した。研磨は、第1の距離H及び第2の距離Hが所定の大きさとなる第2領域24,34が形成され、各領域22,24,26,32,34,36の算術平均粗さRaが所定の値となるまで行った。実施例1に係る切断刃10では、領域22,24,26,32,34,36の算術平均粗さRaを0.03μmとし、第1の距離Hと第2の距離Hの平均値を5μmとした。また、第2の角度βは2度とした。
<グリーンシート積層体の準備>
セラミクグリーンシート積層体12は、内部電極が印刷されたグリーンシートを、積層機により積層し、熱圧着することによって作製した。この際の積層数は、750層とした。なお、グリーンチップ積層体における積層方向の両方の最外部には、厚さ10μmの誘電体グリーンシートを5枚積層し、保護層を形成した。セラミクグリーンシート積層体12の寸法は、縦3.2mm×横1.6mm×積層方向の厚さ1.6mmであった。
内部電極が印刷されたグリーンシートは、キャリアフィルム上に形成されたグリーンシートの表面に、導電ペーストを用いて内部電極を印刷して作製した。グリーンシートは、誘電体ペーストを用いて、ドクターブレード法により作製した。グリーンシートの厚さは、1.6μmとした。
グリーンシート作製に用いた誘電体ペーストは、誘電体原料100重量部に、ブチラール樹脂10重量部、エタノール50重量部、n−プロパノール50重量部、トルエン35重量部を配合し、φ2mmジルコニアビーズを用い、ボールミルにより24時間混合して作製した。誘電体原料は、粒径0.1〜1.0μmのチタン酸バリウム、酸化クロム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化珪素の各粉末を、仮焼きしたのち、ボールミルにより24時間混合し、その後乾燥することによって作製した。誘電体原料の混合比は、BaTiOを100モル%として、Crに換算して0.3モル%、MgOに換算して1.0モル%、BaOに換算して2.4モル%、CaOに換算して0.3モル%、SiOに換算して0.7モル%、Yに換算して1.5モル%とした。
内部電極作製に用いた導電ペーストは、平均粒径0.1μmのNi粒子100重量部、有機ビヒクル溶液(エチルセルロース樹脂15重量部をターピネオール85重量部に溶解したもの)27重量部及びターピネオール73重量部を混合分散し、ペースト化することによって作製した。
<グリーンシート積層体の切断及び最大切断負荷の測定>
上述のようにして作製された切断刃10を用いて、準備されたセラミクグリーンシート積層体12を切断した。グリーンシート積層体12の切断は、セラミクグリーンシート積層体12を台に設置し、当該台に対して昇降可能なホルダに切断刃10を固定し、グリーンシート積層体12の積層方向に沿って、切断刃10の刃先16を所定の速度で移動させて行った。なお、切断時において切断刃10にかかる最大切断負荷を、ホルダに設置されたロードセルにより測定した。
<デラミネーション発生率の調査>
上述のように切断されたセラミクグリーンシート積層体12の個片1000個について、切断面を顕微鏡下(500倍)で観察し、デラミネーションの有無を調査した。個片全体1000個のうち、デラミネーションが発見された個片の割合を、端部デラミネーション発生率とした。実施例1の条件および評価結果を表1に示す。
Figure 2012071374
実施例2
実施例2でも、実施例1と同様に、図2及び図3等に示す切断刃10を作製し、準備したグリーンシート積層体12を切断し、切断時の最大切断負荷と、端部デラミネーション発生率を調査した。ただし、実施例2では、切断刃10における領域22,24,26,32,34,36の算術平均粗さRaを0.05μmとし、第1の距離Hと第2の距離Hの平均値を1μmに変更した。
実施例2では、切断刃10の製造工程における研磨時間を変更することによって、算術平均粗さRa,第1の距離H及び第2の距離Hを変更した。その他の条件は、実施例1と同様である。実施例2の条件および評価結果を表1に示す。
参考例1
参考例1では、図6に示すような切断刃80を作製し、準備したグリーンシート積層体12を切断し、切断時の最大切断負荷と、端部デラミネーション発生率を調査した。
参考例1に係る切断刃80は、切断刃80の厚さ方向の中心線88を対称軸として、互いに略対称な形状を有する第1の刃面91と第2の刃面95を有する。第1の刃面91は、第1刃面第1領域92と第1刃面第3領域94を有しており、第1刃面第1領域92及び第1刃面第3領域94の中心線88に対する角度は、それぞれ10度及び0度である。また、第2の刃面95は、第2刃面第1領域96と第2刃面第3領域98を有しており、第2刃面第1領域96及び第2刃面第3領域98の中心線88に対する角度は、それぞれ10度及び0度である。
すなわち、参考例1に係る切断刃80は、図3に示す実施例1に係る切断刃10と比較して、第1刃面第2領域24と第2刃面第2領域34を有しない点と、切断刃80の各領域92,94,96,98の算術平均粗さRaが0.09である点で異なるが、その他の形状は同様である。
参考例1に係る切断刃80は、研削工程によって、第1刃面第1領域92及び第1刃面第3領域94並びに第2刃面第1領域96及び第2刃面第3領域98を形成することによって作製した。参考例1に係る切断刃80の製造においては、実施例1に係る切断刃10の製造とは異なり、研削工程後の研磨工程は行わなかった。参考例1の条件および評価結果を表1に示す。
実施例1、実施例2及び参考例1の評価結果
表1に示すように、実施例1及び実施例2の最大切断負荷は、参考例1の最大切断負荷に対して、10%程度減少している。実施例1及び実施例2に係る切断刃10は、刃面20,30における各領域22,24,26,32,34,36の算術平均粗さRaが小さく、かつ、領域22,24,26,32,34,36の境界23,25,33,35における刃面の角度の変化が小さいため、グリーンシート積層体12を切断する際の切断抵抗を抑制できたものと考えられる。
実施例1及び実施例2の端部デラミネーション発生率は、参考例1の端部デラミネーション発生率に対して、それぞれ50分の1又は4分の1程度であった。実施例1及び実施例2に係る切断刃10は、領域22,24,26,32,34,36の境界23,25,33,35における刃面の角度の変化が小さいため、これらの境界23,25,33,35が切断面を滑らかに通過することが可能となり、切断時および切断後にグリーンシート積層体12に発生する応力を、効果的に抑制できたものと考えられる。
実施例3
実施例3では、切断時の切断直線性の評価を行った。実施例3では、実施例1と同様にして、図2及び図3等に示す切断刃10を作製し、準備したグリーンシート積層体12を切断した。実施例3で用いた切断刃10は、第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値が1.6μmであるが、その他の寸法等は、実施例1に係る切断刃10と同様である。実施例3に係る切断刃10及びグリーンシート積層体12の製造方法は、実施例1の製造方法と同様である。実施例3の条件および評価結果を表2に示す。
切断直線性の評価は、設計上の切断終了位置(切断開始位置を通る垂線が、グリーンシート積層体12の底面12bと交わる位置)から、現実の切断終了位置までのずれを測定することによりおこなった。切断直線性の評価は、上述のずれが10μm以下の場合は○、10μmより大きく15μmより小さい場合は△、15μm以上の場合は×とした。実施例3の条件および評価結果を表2に示す。
Figure 2012071374
実施例4
実施例4では、実施例3とは異なる切断刃10を用いて、グリーンシート積層体12を切断する際における切断直線性の評価を行った。実施例3で用いた切断刃10は、第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値が2.0μmである点で実施例3と相違するが、その他の寸法及び製造方法等は、実施例3に係る切断刃10と同様である。なお、切断したグリーンシート積層体12も、実施例3で用いたものと同様である。実施例4の条件および評価結果を表2に示す。
参考例2
参考例2では、実施例3及び実施例4とは異なる切断刃を用いて、グリーンシート積層体12を切断する際における切断直線性の評価を行った。参考例2で用いた切断刃は、第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値が3.3μmである点で実施例3と相違するが、その他の寸法は、実施例3に係る切断刃10と同様である。
参考例2に係る切断刃は、研削工程及び研磨工程を経て作製されたが、研磨工程において、流体研磨法を行わずにバフ研磨を行った点で、実施例3及び実施例4に係る切断刃10とは異なる製造方法によって作成された。なお、参考例2において切断したグリーンシート積層体12は、実施例3及び実施例4で用いたものと同様である。参考例2の条件および評価結果を表2に示す。
実施例3、実施例4及び参考例2の評価結果
表2に示すように、実施例3及び実施例4は、切断直進性が良好であった。実施例3及び実施例4に係る切断刃10は、第1の刃面20における第1の距離Hと、第2の刃面30における第2の距離Hの差の絶対値が2μm以下であるため、第1の刃面20が受ける力と、第2の刃面30が受ける力の差が小さく、切断刃が湾曲せず切断することができて、グリーンシート積層体12を精度良く切断できたものと考えられる。
総合評価
各実施例の結果を総合すると、研磨工程を行って刃面20,30に第2領域24,34を形成することによって、デラミネーションの発生率を抑制できることと、第2領域24,34を形成する際に、第1の距離Hと第2の距離Hの差の絶対値を2μm以下とすることによって、切断直線性が良好となることが確認された。
10,50…切断刃
12…グリーンシート積層体
14…峰
16,56…刃先
18,58…中心線
20,30…刃面
22,32,62,72…第1領域
24,34,63,73…第2領域
26,36,64,74…第3領域
65,75…第4領域
66,76…第5領域
23,25,33,35…境界

Claims (3)

  1. 積層された複数のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体を切断する切断刃であって、
    刃先から峰へ向かって順に配列される第1領域、第2領域及び第3領域を有する刃面を有し、
    前記第1領域は、前記切断刃の厚み方向の中心線に対して第1の角度を有しており、前記第2領域は前記中心線に対して前記第1の角度より小さい第2の角度を有しており、前記第3領域は、前記中心線に対して前記第2の角度より小さい第3の角度を有しており、
    前記第1領域、前記第2領域及び前記第3領域の算術平均粗さRaが0.1μm以下であり、
    前記第1領域の延長線と、前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第2領域までの距離が5μm以下であることを特徴とする切断刃。
  2. 請求項1に記載された切断刃であって、
    第1の刃面と、前記中心線を対称軸として前記第1の刃面に対して略対称な形状を有する第2の刃面とから成る2つの前記刃面を有し、
    前記第1の刃面における前記第1領域の延長線と、前記第1の刃面における前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第1の刃面における前記第2領域までの距離を第1の距離とし、
    前記第2の刃面における前記第1領域の延長線と、前記第2の刃面における前記第3領域の延長線とが交わる点から、前記第2の刃面における前記第2領域までの距離を第2の距離とすると、
    前記第1の距離と前記第2の距離の差の絶対値は2μm以下であることを特徴とする切断刃。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の切断刃を用いて、積層された複数のセラミックグリーンシートを有するグリーンシート積層体を切断する工程と、
    前記グリーンシート積層体を焼成する工程と、
    を含む積層セラミック電子部品の製造方法。
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