JP2012071312A - カム装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本来の強制復元機能を保持しつつ、カムスライダの動作の異常を検知しうる強制復元機構を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明は、下型2と上型3とを備えたプレス型1に設けられたカム装置5であって、上型3の下降に伴って加工前位置から加工位置まで変位するカムスライダ10と、カムスライダ10を加工前位置に付勢する付勢部材15と、カムスライダ10を加工位置から加工前位置に復元させる強制復元機構12と、を備え、強制復元機構12は、上型3の上下動に対応して上下動する強制復元部34と、強制復元部34に係脱可能に連結された異常発生検知部35と、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合可能に設けられた係合部36と、を備えていることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、プレス型の所定位置に固定されて成形品に対して加工処理を行うカム装置に関する。
従来、下型とこの下型に対して上下動可能な上型とを備えたプレス型を用いて、例えば板金等の成形品を製造する際、この成形品の側面に対して加工処理を行うために、カム装置が用いられている。このようなプレス型に用いられるカム装置として、上型に固定されて上下動可能な取付ベースと、この取付ベースの下降に伴って取付ベースに押圧され、成形品の加工の準備をする位置(以下、「加工前位置」と称す。)から成形品の加工を行う位置(以下、「加工位置」と称す。)まで成形品の加工方向に沿って変位するカムスライダと、カムスライダを摺動可能に支持して下型に固定されるカムドライバと、カムスライダを加工前位置に付勢する弾性部材と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
このような構成のカム装置には、カムスライダを加工前位置に復元させる目的で、又は、カムスライダの保持・摺動に問題が生じた場合であっても、カム装置またはプレス型を破損させない位置までカムスライダを復元させる目的で、設計製作品・市販完成品を問わず強制復元機構が取り付けられる。
この強制復元機構は、例えば、カムスライダに設けられた強制復元部と、カムドライバに設けられた係合部とで構成され、カムスライダが加工前位置にある時には強制復元部と係合部が係合せず、カムスライダが加工方向に前進すると、両者が係合し始める。加工後、上型が上昇し始め、弾性部材の付勢力によってカムスライダが正常に加工前位置に復元すれば、強制復元部と係合部は互いに接触することなく係合しない位置関係に戻り、カムドライバとカムスライダは離れる。一方、カムスライダの動作に問題があり、カムスライダがスムーズに加工前位置に復元しない場合は、強制復元部が係合部に接触することで復元力を生じさせ、強制的にカムスライダを加工前位置に復元させる。
特許第3549771号公報
しかしながら、上記のような構成では、カムスライダの動作に問題が生じているにも関わらず、強制復元機構が機能することによりカム装置は正常に動作するため、逆に問題を発見しにくくなる。また、型の設計ミスにより弾性部材の付勢力が不足していても、強制復元機構によりカム装置が正常に動作するため、上記した型の設計ミスに気付かない可能性もある。そして、強制復元機構は本来量産での継続使用を前提に設計されてはいないため、いずれは機能しなくなり、その際は、より甚大な破損に至ることがある。
そこで、本発明は上記の事情を考慮し、本来の強制復元機能を保持しつつ、カムスライダの動作の異常を検知しうる強制復元機構を得ることを目的とする。
本発明は、上記した目的を達成するため、所定位置に固定された下型と該下型に対して上下動可能な上型とを備えたプレス型に設けられて、成形品に対して加工処理を行うカム装置であって、前記上型の下降に伴って前記成形品への加工前位置から加工位置まで前記成形品の加工方向に沿って変位するカムスライダと、該カムスライダを前記加工前位置に付勢する付勢部材と、前記カムスライダを前記加工位置から前記加工前位置に復元させる強制復元機構と、を備え、該強制復元機構は、前記上型の上下動に対応して上下動する強制復元部と、該強制復元部に係脱可能に連結された異常発生検知部と、前記強制復元部及び前記異常発生検知部と係合可能に設けられた係合部と、を備え、前記上型の上昇に伴って前記カムスライダが前記加工位置から前記加工前位置まで復元する正常作動状態においては、前記強制復元部及び前記異常発生検知部が前記係合部と接触せずに上昇して前記強制復元部に対する前記異常発生検知部の連結姿勢が一定に保持され、前記上型が上昇しても前記カムスライダが前記加工位置から前記加工前位置まで復元しない異常作動状態においては、前記強制復元部及び前記異常発生検知部が上昇して前記係合部と当接し、この当接によって生じる復元力により前記カムスライダを前記加工位置から前記加工前位置へと強制的に復元させるとともに、前記強制復元部と前記係合部との当接状態が解除された後においても前記異常発生検知部と前記係合部の当接状態を継続させることにより前記異常発生検知部に分離力を生じさせ、この分離力により前記異常発生検知部を変位又は脱落させることを特徴とする。
この特徴によれば、本来の強制復元機能を保持しつつ、カムスライダの動作の異常を検知しうる強制復元機構を得ることができる。
また、前記カムスライダをスライド可能に保持するとともに前記上型に固定されたホルダと、前記カムスライダを前記加工方向に沿って摺動可能に支持するとともに前記下型に固定されたカムドライバと、を備え、前記ホルダと前記カムスライダの間に前記付勢部材が介装され、前記カムスライダと前記カムドライバの間に前記強制復元機構が設けられるものであっても良い。
この構成は、本発明のカム装置を、いわゆる上吊りカムに適用する際に好適である。
また、前記カムスライダを前記加工方向に沿ってスライド可能に保持するとともに前記下型に固定されたホルダと、前記カムスライダを押圧可能な押圧面が設けられるとともに前記上型に固定されたカムドライバと、を備え、前記ホルダと前記カムスライダの間に前記付勢部材が介装され、前記カムスライダと前記カムドライバの間に前記強制復元機構が設けられるものであっても良い。
この構成は、本発明のカム装置を、いわゆる置きカムに適用する際に好適である。
また、前記強制復元部には、連結凹部が設けられた突条が前面の外側部分に設けられ、前記異常発生検知部には、連結突起が設けられた凹溝が後面の外側部分に設けられ、前記突条と前記凹溝を密接させるとともに前記連結凹部と前記連結突起を嵌合させることにより、前記強制復元部と前記異常発生検知部が連結されるものであっても良い。
このような構成を採用することにより、分離力以外の力では、強制復元部と異常発生検知部とが外れにくくなる。従って、強制復元部及び異常発生検知部が係合突起と当接しない正常作動状態において、強制復元部と異常発生検知部との連結状態が外れてしまう不具合を抑制することが可能となる。
本発明のカム装置によれば、本来の強制復元機能を保持しつつ、カムスライダの動作の異常を検知しうる強制復元機構を得ることが可能となる。
本発明の第1の実施形態に係るカム装置を備えたプレス型を示す側面図である。 本発明の第1の実施形態に係るカム装置を示す側面図である。 図2のA−A断面図である。 本発明の第1の実施形態に係るカム装置において、カムスライダの後下部、強制復元部及び異常発生検知部を示す分解斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係るカム装置において、カムスライダ及びカムドライバを示す正面図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態に係るプレス型において、上型が最上点に配置された状態を示す側面図であり、(b)は、上型が最上点と最下点の中間に配置された状態を示す側面図であり、(c)は、上型が最下点に配置された状態を示す側面図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態に係るカム装置の正常作動状態において、強制復元部及び異常発生検知部が係合突起に係合する前の状態を示す側面図であり、(b)は、異常発生検知部のみが係合突起に係合した状態を示す側面図であり、(c)は、異常発生検知部及び強制復元部の両方が係合突起に係合した状態を示す側面図である。 本発明の第1の実施形態に係るカム装置において、上型が最下点から上昇を開始する際に、カムスライダに作用する力の関係を示す概念図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態に係るカム装置の異常作動状態において、強制復元部及び異常発生検知部が摺動を開始する前の状態を示す側面図であり、(b)は、強制復元部及び異常発生検知部が摺動を開始した直後、強制復元部及び異常発生検知部の両方が係合突起と摺接している状態を示す側面図であり、(c)は、異常発生検知部のみが係合突起と摺接している状態を示す側面図である。 (a)は、本発明の第1の実施形態に係るカム装置において、カムスライダ、強制復元部及び異常発生検知部を示す側面図であり、(b)は、(a)のB−B断面図であり、(c)及び(d)は、他の異なる実施形態に係るカム装置において、カムスライダ、強制復元部及び異常発生検知部を示す断面図である。 本発明の第2の実施形態に係るカム装置を備えたプレス型を示す側面図である。 (a)は、本発明の第2の実施形態に係るプレス型において、上型が最上点に配置された状態を示す側面図であり、(b)は、上型が最上点と最下点の中間に配置された状態を示す側面図であり、(c)は、上型が最下点に配置された状態を示す側面図である。 (a)は、本発明の第2の実施形態に係るカム装置の正常作動状態において、係合溝が強制復元部及び異常発生検知部に係合する前の状態を示す側面図であり、(b)は、係合溝が異常発生検知部のみに係合した状態を示す側面図であり、(c)は、係合溝が異常発生検知部及び強制復元部の両方に係合した状態を示す側面図である。 本発明の第2の実施形態に係るカム装置において、上型が最下点から上昇を開始する際に、カムスライダに作用する力の関係を示す概念図である。 (a)は、本発明の第2の実施形態に係るカム装置の異常作動状態において、係合溝が摺動を開始する前の状態を示す側面図であり、(b)は、係合溝が摺動を開始した直後、係合溝が強制復元部及び異常発生検知部の両方と摺接している状態を示す側面図であり、(c)は、係合溝が異常発生検知部のみと摺接している状態を示す側面図である。
<第1の実施形態>
まず、図1〜図10を用いて、本発明の第1の実施形態に係るカム装置5を備えたプレス型1について説明する。以下、図1、図2における右側を前側とした場合について説明する。
プレス型1は、板金成形用であって、図1に最も良く示されるように、所定の位置に固定された下型2と、この下型2の上方に設けられた上型3と、下型2と上型3の間の空間内において成形品4の後方に配置されたカム装置5と、を備えている。
上型3は、昇降シリンダ等の昇降手段(図示せず)と接続されており、下型2に対して上下動可能となっている。上型3の下面の後部には取付座6が設けられ、下型2の上面の後部には取付座7が設けられている。
本実施形態のカム装置5は、いわゆる上吊りカムであって、図2に最も良く示されるように、上型3の取付座6の下面に上面が固定されるホルダ8と、ホルダ8の下端に保持されるカムスライダ10と、カムスライダ10の下方に配置されて下型2の取付座7の上面に下面が固定されるカムドライバ11と、カムスライダ10とカムドライバ11に設けられる強制復元機構12と、を主体として構成されている。
ホルダ8の下端には、上前方に傾斜するカムスライダ10との摺動面13が形成され、この摺動面13の前端部には、前下方に向かって突片14が設けられている。突片14の後面には、付勢部材としてのコイルスプリング15の前端部がバネ受け(図示せず)を介して摺接面13と平行に固定されている。摺接面13には、その左右方向両端部から下方に向けて両端板16が突設されており、各両端板16の下端部には、内側に向かって嵌合突起17が設けられている(図3参照)。両端板16の後面には、係止片18が取り付けられている。
カムスライダ10は、上前方に傾斜する姿勢で設けられており、カムスライダ10の前面には、支持台20を介して工具21が固定されている。カムスライダ10の後上部には、ホルダ8の摺接面13と平行な傾斜面22が設けられており、この傾斜面22の前部から後端部には、突当部23が後上方に向かって突設されている。突当部23の下端両側には、嵌合溝24が内側に向かって凹設されており、この嵌合溝24にホルダ8の嵌合突起17を嵌合させることで、ホルダ8の下端にカムスライダ10がスライド可能に保持されている(図3参照)。
突当部23の前部には、上端部から下部にかけて断面L字状の切欠部25が設けられており、カムスライダ10とホルダ8とを連結した状態で、切欠部25にコイルスプリング15の後端部が接触している。また、突当部23の後面は、ホルダ8の係止片18に当接しており、これにより、カムスライダ10のホルダ8からの脱落が防止されている。
カムスライダ10の右側面の後下部には、略横長直方体形状の取り付け溝26が凹設されている。図4に最も良く示されるように、取り付け溝26の下面27の外側部分には連通溝28がカムスライダ10の底面まで設けられており、取り付け溝26の下面27は平面視コ字状を成している。取り付け溝26の側面の中央には固定ねじ穴30が水平方向に設けられ、取り付け溝26の後部上端には、傾斜面22まで連通開口31が設けられている。図5に示されるように、カムスライダ10の底面の幅方向中央には、上方に向かって縮径するガイド面32が凹設されている。
カムドライバ11の上面には、上方に向かって縮径するスライド面33が、前方に向かって僅かに下方に傾斜するように設けられており、このスライド面33にカムスライダ10のガイド面32を当接させることにより、カムスライダ10がカムドライバ11に摺動可能に支持されるように構成されている。
強制復元機構12は、ガイド面32に垂直な姿勢でカムスライダ10に固定される強制復元部34と、この強制復元部34の前側に連結される異常発生検知部35と、カムドライバ11に設けられた係合部としての係合突起36と、を備えている。
図4に最も良く示されるように、強制復元部34の内面には、中央部上方から下部にかけて、側面視で縦長な長方形状の一方摺接溝37が設けられており、この一方摺接溝37の上方には、取り付け溝26の固定ねじ穴30と対応する位置に、強制復元部34の外面から内面まで取付ねじ穴38が水平方向に穿設されている。そして、取り付け溝26の下面27に一方摺接溝37の上端面39を当接させた状態で、固定ねじ穴30及び取付ねじ穴38に固定ボルト40を貫挿させることで、取り付け溝26に対して強制復元部34が固定されるようになっている。
強制復元部34の取付ねじ穴38の後上方には、上前方に傾斜する上方傾斜面41が設けられている。強制復元部34の前面の外側部分には上端から下端まで突条42が設けられ、この突条42の上部には連結凹部43が設けられている。
異常発生検知部35の後面の外側部分には、強制復元部34の突条42と対応する位置に、凹溝44が上端から下端まで設けられ、この凹溝44の上部には、突条42の連結凹部43と対応する位置に、連結突起45が突設されている。そして、突条42と凹溝44の位置を合わせた状態で、連結突起45を連結凹部43に嵌合させることにより、強制復元部34に対して異常発生検知部35が係脱可能に連結されるようになっている。
異常発生検知部35の内面には、上部から下部にかけて、側面視で縦長な長方形状の他方摺接溝50が設けられている。他方摺接溝50の下端面51は、一方摺接溝37の下端面52と略同一高さに設定され、他方摺接溝50の上端面53は、一方摺接溝37の上端面39よりも高い位置に設定されている。そのため、強制復元部34に対して異常発生検知部35を係合させると、一方摺接溝37の下端面52と他方摺接溝50の下端面51は同一平面状を成し、一方摺接溝37の上端面39と他方摺接溝50の上端面53は段差状を成すようになっている。
係合突起36は、カムドライバ11の右側部の前部から中央部後方に亘って、スライド面33と略平行に設けられている。また、後述の如く強制復元部34及び異常発生検知部35を係合突起36に係合させた際に、係合突起36の下面54が、一方摺接溝37の下端面52及び他方摺接溝50の下端面51と、所定のクリアランスαを介して対向するように、係合突起36の設定位置が調整されている(図7(c)参照)。なお、上記クリアランスαの大きさは、カム形式等により異なる。
上述の如く構成されたカム装置5を用いて、成形品4に穿孔等の加工処理を行う方法について、図6を用いて、以下に説明する。
図6(a)は、加工処理開始前の段階において、上型3が最上点に配置された状態を示している。この状態から、昇降手段により上型3を下降させると、図6(b)に示されるように、カムスライダ10のガイド面32がカムドライバ11のスライド面33に当接し、カムスライダ10がカムドライバ11に摺動可能に支持される。なお、この状態では、カムスライダ10は加工前位置に配置されている。
更に、上型3を最下点まで下降させると、ホルダ8がカムスライダ10を傾斜面22に沿って押圧する。この押圧により、図6(c)に示されるように、カムスライダ10が、コイルスプリング15を収縮させながら成形品4への加工前位置から加工位置まで成形品4の加工方向に沿って前進する。このカムスライダ10の前進に伴って、カムスライダ10の前面に取り付けられた工具21の先端が成形品4に当接し、成形品4に対して加工処理が行われる。
次に、上記したカムスライダ10の前進に伴う強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との位置関係の変化について、図7を用いて説明する。
カムスライダ10が加工前位置に配置されている際には、図7(a)に示されるように、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36の後方に配置されており、係合突起36と係合していない。そして、カムスライダ10が加工方向に前進していくと、図7(b)に示されるように、まず異常発生検知部35が係合突起36と係合する。更に、カムスライダ10が前進して加工位置に配置されると、図7(c)に示されるように、異常発生検知部35だけでなく強制復元部34も、係合突起36と係合する。なお、この係合過程において、係合突起36の下面54は、強制復元部34の一方摺接溝37の下端面52及び異常発生検知部35の他方摺接溝50の下端面51と所定のクリアランスαを保持したまま変位し、一方摺接溝37の下端面52及び他方摺接溝50の下端面51と接触しない。
上述のように成形品4への加工処理が完了したら、上型3を最下点から最上点まで上昇させるとともにカムスライダ10を加工位置から加工前位置まで復元させて、次の加工処理作業に備える。この復元動作について説明する前に、上型3が最下点から上昇を開始する際に、カムスライダ10に作用する力について、図8を用いて説明する。
上記したカムスライダ10の前進により、コイルスプリング15が収縮し、カムスライダ10を加工前位置に向かって付勢する。換言すれば、カムスライダ10に対して、カムスライダ10のホルダ8に対するスライド方向Xに沿って、コイルスプリング15の弾性力<1>が働く。また、このコイルスプリング15の弾性力<1>と正反対の方向に、ホルダ8とカムスライダ10の間の静止摩擦力<2>が働く。この<1>と<2>の合力を<3>とすると、この合力<3>は、成形品4に対する加工方向Yと水平な分力<4>と、加工方向Yと垂直な分力<5>に分解される。
一方で、工具21と成形品4との間、カムスライダ10とカムドライバ11の間にはそれぞれ、静止摩擦力<2>とは別の静止摩擦力が生じている。上記した工具21と成型品4との間の静止摩擦力及びカムスライダ10とカムドライバ11との間の静止摩擦力の合力を、静止摩擦力<6>とする。この静止摩擦力<6>よりも分力<4>が大きい状態を通常作動状態とし、静止摩擦力<6>よりも分力<4>が小さい状態を異常作動状態とする。この異常作動状態は、例えば、静止摩擦力<6>の見積もりにミスがあり、静止摩擦力<6>の実際の大きさが設計上の大きさよりも大きい場合、何らかのトラブルにより静止摩擦力<6>や静止摩擦力<2>が上昇した場合、又は、何らかのトラブルによりコイルスプリング15の弾性力<1>が低下した場合等に発生する。
まず、上記した正常作動状態におけるカムスライダ10の復元動作について、図6、図7を用いて説明する。
図6(c)に示されるように上型3が最下点に配置された状態から、昇降手段により上型3を上昇させる。その際、正常作動状態においては、コイルスプリング15の付勢力によって生じる分力<4>が静止摩擦力<6>よりも大きいから、カムスライダ10は分力<4>の方向に付勢されている。そのため、上型3の上昇に伴ってカムスライダ10が後退し、図6(b)に示されるように、加工前位置まで復元する。
このカムスライダ10の後退に伴い、図7(c)に示す如く係合突起36と係合していた強制復元部34及び異常発生検知部35が、図7(b)に示す如く係合突起36に対して後退していき、図7(a)に示す如く強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との係合が解除される。その際、カムスライダ10は、前記した分力<5>によってカムドライバ11側に押し付けられながら後退するため、強制復元部34及び異常発生検知部35は、前述した前進時と同様に、係合突起36との間のクリアランスαを保ちつつ後退する。従って、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36と接触せずに上昇するため、強制復元部34に対する異常発生検知部35の連結姿勢は一定に保持される。
このように強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との係合が解除された状態で、更に上型3を上昇させると、上型3に連結されたホルダ8及びカムスライダ10がカムドライバ11と分離され、図6(a)に示されるように、加工処理開始前の状態に復元する。
次に、異常作動状態におけるカムスライダ10の復元動作について、主に図9を用いて説明する。
前述の如く、上型3が最下点に配置された状態では、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との間には、クリアランスαが形成されている(図7(c)参照)。この状態から、昇降手段により上型3を上昇させる。その際、異常作動状態においては、コイルスプリング15の弾性力によって生じる分力<4>が静止摩擦力<6>よりも小さいから、上型3を上昇させても、カムスライダ10は加工位置から加工前位置まで復元せず、加工位置に止まる。そのため、カムスライダ10に固定された強制復元部34及び異常発生検知部35も後退せず、係合突起36との係合状態を維持したまま係合突起36に対して上昇する。これにより、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との間のクリアランスαが減少していき、図9(a)に示されるように、強制復元部34の一方摺接溝37の下端面52及び異常発生検知部35の他方摺接溝50の下端面51が、係合突起36の下面54と当接する。
更に上型3を上昇させると、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36を上方に押圧し、この押圧力に対する抗力Fが生じる。この抗力Fは、カムスライダ10のホルダ8に対するスライド方向に水平な分力F1と上記スライド方向に垂直な分力F2に分解される。上記分力F1がホルダ8とカムスライダ10の当接面に伝達され、カムスライダ10をホルダ8に対するスライド方向に沿って復元させる力(以下、単に「復元力」という。)が生じる。
この復元力によってカムスライダ10が後退し始めると、前記した静止摩擦力<6>は動摩擦力に移行するため、摩擦抵抗が小さくなる。以下、静止摩擦力<6>から移行した動摩擦力よりも前記した合力<4>が小さい場合を重度の異常作動状態とし、大きい場合を軽度の異常作動状態とする。
まず、重度の異常作動状態について説明する。重度の異常作動状態においては、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との当接状態は解除されず、図9(b)に示されるように、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36と摺接しながら徐々に後退していき、図9(c)に示されるように、異常発生検知部35のみが係合突起36と接触する位置まで、強制復元部34及び異常発生検知部35が後退する。その間、前記した復元力が継続的に発生するため、カムスライダ10が、加工位置から加工前位置まで強制的に後退させられる。なお、この場合の「加工前位置」には、完全に加工前と同一の位置だけでなく、カム装置5及びプレス型1を破損させない程度に、カムスライダ10が後退した位置が含まれる。
また、この重度の異常作動状態においては、以下のようにして、異常の発生が顕示される。
強制復元部34と異常発生検知部35が後退を開始した直後は、図9(b)に示されるように、強制復元部34と異常発生検知部35の両方が係合突起36と当接している。この間、抗力Fは主に強制復元部34にかかっている。
一方で、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36に対して更に後退していくと、図9(c)に示す如く、強制復元部34と係合突起36との当接状態が解除され、異常発生検知部35のみが係合突起36との当接状態を継続する。この状態においては、強制復元部34と係合突起36の間にはもはや抗力Fが生じていないのに対して、異常発生検知部35には継続的に抗力Fが生じている。そのため、異常発生検知部35を引き下げる方向に分離力が生じる。
この分離力により、強制復元部34の連結凹部43と異常発生検知部35の連結突起45との係合が連結突起45の変形・破損などで解除されて異常発生検知部35が強制復元部34から分離し、異常発生検知部35が下方に落下する。これにより、プレス型1の操作者は、異常作動状態の発生を視認することができる。
本実施形態ではこのように、本来の強制復元機能を備えた強制復元部34と分離可能で、異常発生の有無を検知する機能に特化した異常発生検知部35を、強制復元機構12に設けている。そのため、異常発生の有無を機械的に増幅して顕示することが可能となる。
また、強制復元部34によりカムスライダ10の強制的な復元動作を行うことができ、加工位置から加工前位置に復元されないままカムスライダ10が持ち上げられることに起因するカム装置4やプレス型1の破損を抑制することができる。このように、本来の強制復元機能を損なわないまま、異常検知の機能を強制復元機構12に付与することが可能となる。
次に、上記した軽度の異常作動状態について説明する。この軽度の異常作動状態においては、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合突起36との接触状態(図9(a)参照)は一瞬で解消され、クリアランスαが再び生じる。そのため、重度の異常作動状態のような異常発生検知部35のみが係合突起36と当接する状態(図9(c)参照)は発生せず、上記した分離力も生じない。従って、強制復元部34に対する異常発生検知部35の連結姿勢は一定に保たれる。本実施形態ではこのように、軽度の異常作動状態では異常発生検知部35が脱落せず、重度の異常作動状態が生じた場合にのみ、異常発生検知部35が脱落して、異常を知らせるような構成となっている。
また、本実施形態では図4に示されるように、強制復元部34と異常発生検知部35の連結について、強制復元部34の前面の外側部分に設けた突条42と、異常発生検知部35の後面の外側部分に設けた凹溝44を密接させるとともに、突条42に設けられた連結凹部43と凹溝44に設けられた連結突起45を嵌合させている。このような構成を採用することにより、分離力以外の力では、強制復元部34と異常発生検知部35とが外れにくくなる。そのため、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合突起36と当接しない正常作動状態において、強制復元部34と異常発生検知部35との連結状態が外れてしまう不具合を抑制することが可能となる。
なお、本実施形態では図10(a)、図10(b)に示されるように、強制復元部34の前面の外側部分に設けた突条42と、異常発生検知部35の後面の外側部分に設けた凹溝44を密接させているが、他の異なる実施形態においては、図10(c)に示されるように、強制復元部34の前面に内向きテーパ面56を設け、異常発生検知部35の後面に外向きテーパ面57を設け、内向きテーパ面56と外向きテーパ面57を接合する構成としても良い。また、他の異なる実施形態では、図10(d)に示されるように、カムスライダ10の側面にワッシャー58を介して固定されたボルト60を異常発生検知部35の前面に当接させる構成としても良い。
また、本実施形態では、カムスライダ10に強制復元部34及び異常発生検知部35を設けるとともにカムドライバ11に係合突起36を設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、カムスライダ10に係合突起36を設けるとともにカムドライバ11に強制復元部34及び異常発生検知部35を設けることも可能である。
<第2の実施形態>
次に、図11〜図15を用いて、本発明の第2の実施形態に係るカム装置5を備えたプレス型1について説明する。以下、図11における右側を前側とした場合について説明する。
プレス型1は、所定の位置に固定された下型2と、この下型2の上方に設けられた上型3と、下型2と上型3の間の空間内において成形品4の後方に配置されたカム装置5と、を備えている。下型2及び上型3の構成については、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
第2の実施形態のカム装置5は、いわゆる下置きカムであって、下型2の取付座7の上面に下面が固定されるホルダ8と、ホルダ8に摺動可能に支持されるカムスライダ10と、カムスライダ10と分離可能に設けられて上型3の取付座6の下面に上面が固定されるカムドライバ11と、カムスライダ10とカムドライバ11の間に設けられた強制復元機構12と、を主体として構成されている。
ホルダ8の上端には、上面が開口されるとともに後上方に向かって傾斜する摺接面72が下面に設けられた断面コ字状の挿入溝65が設けられている。そして、この挿入溝65にカムスライダ10を挿入し、カムスライダ10の下面を摺接面72に当接させることにより、カムスライダ10がホルダ8にスライド可能に支持されている。挿入溝65の前部壁66には、バネ受け(図示せず)を介して、コイルスプリング15の前端部が摺接面72と平行に固定されている。
カムスライダ10は、上前方に僅かに傾斜する姿勢で設けられている。カムスライダ10の後上部には、被押圧面62が設けられている。カムスライダ10の前面の上部には、前方に向かって突出する固定部63が設けられ、この固定部63に、支持台20を介して工具21が固定されている。カムスライダ10の前面の下部には、後上方に向かって装着穴64が凹設されている。装着穴64の後面67には、コイルスプリング15の後端部が接触している。
カムドライバ11の下端には、カムスライダ10の被押圧面62と平行に押圧面61が形成されている。カムドライバ11の右側面の前上部には、押圧面61と平行に長円状の取り付け溝26が凹設されている。取り付け溝26の下面には、側面視で長方形状の連通溝28が、前下方に向かって押圧面61まで凹設されている。
強制復元機構12は、カムドライバ11に固定されて上型の上下動に対応してカムドライバ11とともに上下動する強制復元部34と、この強制復元部34の後側に連結される異常発生検知部35と、カムスライダ10に設けられた係合部としての係合溝68と、を備えている。係合溝68は、カムスライダ10の前部の上端から中央部上方に亘って、被押圧面62と平行に凹設されている。強制復元部34の取り付け溝26への固定方法及び異常発生検知部35の強制復元部34への連結方法については、第1の実施形態と同様であるため、記載を省略する。
上述の如く構成されたカム装置5を用いて、成形品4に穿孔等の加工処理を行う方法について、図12を用いて、以下に説明する。
図12(a)は、加工処理開始前の段階において、上型3が最上点に配置された状態を示している。この状態から、昇降手段により上型3を下降させると、図12(b)に示されるように、カムドライバ11の押圧面61がカムスライダ10の被押圧面62に当接する。なお、この状態では、カムスライダ10は加工前位置に配置されている。
更に、上型3を最下点まで下降させると、カムドライバ11の押圧面61がカムスライダ10の被押圧面62を下方に押圧する。この押圧により、図12(c)に示されるように、カムスライダ10が、コイルスプリング15を収縮させながら、加工前位置から加工位置まで成形品4の加工方向に沿って前進する。このカムスライダ10の前進に伴って、カムスライダ10に取り付けられた工具21の先端が成形品4に当接し、成形品4に対して加工処理が行われる。
次に、上記したカムスライダ10の前進に伴う強制復元部34及び異常発生検知部35と係合溝68との位置関係の変化について、図13を用いて説明する。
カムスライダ10が加工前位置に配置されている際には、図13(a)に示されるように、係合溝68が強制復元部34及び異常発生検知部35の後方に配置されており、強制復元部34及び異常発生検知部35に係合していない。そして、カムスライダ10が加工方向に前進していくと、図13(b)に示されるように、まず係合溝68が異常発生検知部35と係合する。更に、カムスライダ10が前進して加工位置に配置されると、図13(c)に示されるように、係合溝68が強制復元部34及び異常発生検知部35に係合する。なお、この係合過程において、係合溝68の上面70は、強制復元部34の一方摺接溝37の下端面52及び異常発生検知部35の他方摺接溝50の下端面51との間に所定のクリアランスαを保持しつつ前進するため、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合溝68とは接触しない。
上述のように成形品4への加工処理が完了したら、上型3を最下点から最上点まで上昇させるとともにカムスライダ10を加工位置から加工前位置まで復元させて、次の加工処理作業に備える。この復元動作について説明する前に、上型3が最下点から上昇を開始する際に、カムスライダ10に作用する力について、図14を用いて説明する。
上記したカムスライダ10の前進により、コイルスプリング15が収縮し、カムスライダ10を加工前位置に向かって付勢する。換言すれば、ホルダ8に対するカムスライダ10の摺動方向と平行な方向Xに、コイルスプリング15の弾性力<1>が働く。また、このコイルスプリング15の弾性力と正反対の方向に、ホルダ8とカムスライダ10の間の静止摩擦力<2>が働く。この<1>と<2>の合力を<3>とする。そして、工具21と成形品4との間に生じる静止摩擦力<4>よりも合力<3>が大きい状態を通常作動状態とし、静止摩擦力<4>よりも合力<3>が小さい状態を異常作動状態とする。この異常作動状態は、例えば、静止摩擦力<4>の見積もりにミスがあり、静止摩擦力<4>の実際の大きさが設計上の大きさよりも大きくなった場合、何らかのトラブルにより静止摩擦力<2>や静止摩擦力<4>が上昇した場合、又は、何らかのトラブルによりコイルスプリング15による弾性力<1>が低下した場合等に発生する。
まず、上記した正常作動状態におけるカムスライダ10の復元動作について、図12及び図13を用いて説明する。
図12(c)に示されるように上型3が最下点に配置された状態から、昇降手段により上型3を上昇させる。その際、正常作動状態においては、合力<3>が静止摩擦力<4>よりも大きいため、カムスライダ10は、合力<3>の方向に付勢されている。そのため、上型3の上昇に伴って、カムスライダ10が後退し、図12(b)に示されるように、加工前位置まで復元する。
このカムスライダ10の後退に伴い、図13(c)に示されるように強制復元部34及び異常発生検知部35と係合していた係合溝68が、図13(b)に示されるように強制復元部34及び異常発生検知部35に対して後退していき、図13(a)に示されるように、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合溝68との係合が解除される。その際、カムスライダ10が合力<3>によりカムドライバ11に押しつけられるため、係合溝68は、前述した前進時と同様に、強制復元部34及び異常発生検知部35との間のクリアランスαを保ちつつ後退する。従って、係合溝68は強制復元部34及び異常発生検知部35と接触することがなく、強制復元部34に対する前記異常発生検知部35の連結姿勢は一定に保持される。更に、上型3を上昇させると、図12(a)に示されるように、上型3に連結されたカムドライバ11がカムスライダ10と分離され、加工処理開始前の状態に復元する。
次に、異常作動状態におけるカムスライダ10の復元動作について、主に図15を用いて説明する。
前述の如く、上型3が最下点に配置された状態では、強制復元部34及び異常発生検知部35と係合溝68との間には、クリアランスαが形成されている(図13(c)参照)。この状態から、昇降手段により上型3を上昇させる。その際、異常作動状態においては、コイルスプリング15の弾性力によって生じる合力<3>が静止摩擦力<4>よりも小さいから、上型3を上昇させても、カムスライダ10は加工位置から加工前位置まで復元せず、加工位置に止まる。従って、カムスライダ10に設けられた係合溝68も後退せず、強制復元部34及び異常発生検知部35との係合状態を維持する。そのため、上型3の上昇に伴って、強制復元部34及び異常発生検知部35が係合溝68に対して上昇する。これにより、係合溝68と強制復元部34及び異常発生検知部35との間のクリアランスαが減少していき、図15(a)に示されるように、強制復元部34の一方摺接溝37の下端面52及び異常発生検知部35の他方摺接溝50の下端面51が係合溝68の上面70と当接する。
更に上型3を上昇させると、強制復元部34の一方摺接溝37の下端面52及び異常発生検知部35の他方摺接溝50の下端面51が、係合溝68の上面70を押圧力Fで押圧する。この押圧力Fは、加工方向Xに水平な分力F1と加工方向に垂直な分力F2に分解される。上記分力F1がホルダ8とカムスライダ10の当接面に伝達され、加工方向に沿って復元力が生じる。
この復元力によってカムスライダ10が後退し始めると、前記した静止摩擦力<4>は動摩擦力に移行するため、摩擦抵抗が小さくなる。以下、静止摩擦力<4>から移行した動摩擦力よりも前記した合力<3>が小さい場合を重度の異常作動状態とし、大きい場合を軽度の異常作動状態とする。
まず、重度の異常作動状態について説明する。重度の異常作動状態においては、係合溝68と強制復元部34及び異常発生検知部35との当接状態は解除されず、図15(b)に示されるように、係合溝68が強制復元部34及び異常発生検知部35と摺接しながら徐々に後退していき、図15(c)に示されるように、異常発生検知部35のみが係合溝68と接触する位置まで、係合溝68が後退する。その間、前記した復元力が継続的に発生するため、カムスライダ10が加工位置から加工前位置まで強制的に後退させられる。なお、この場合の「加工前位置」には、完全に加工前と同一の位置だけでなく、カム装置5及びプレス型1を破損させない程度に、カムスライダ10が後退した位置が含まれる。
また、この重度の異常作動状態においては、以下のようにして、異常の発生が顕示される。
係合溝68が後退を開始した直後は、図15(b)に示されるように、係合溝68が強制復元部34と異常発生検知部35の両方と当接している。この間、抗力Fは主に強制復元部34にかかっている。
一方で、係合溝68が強制復元部34及び異常発生検知部35に対して更に後退していくと、図15(c)に示す如く、強制復元部34と係合溝68との当接状態が解除され、異常発生検知部35のみが係合溝68との接触を継続する。この状態においては、強制復元部34と係合溝68の間にはもはや抗力Fが生じていないのに対して、異常発生検知部35には継続的に抗力Fが生じている。そのため、異常発生検知部35を引き下げるように分離力が生じる。
この分離力により、強制復元部34の連結凹部43と異常発生検知部35の連結突起45との係合が連結突起45の変形・破損などで解除されて異常発生検知部35が強制復元部34から分離し、異常発生検知部35が下方に落下する。これにより、プレス型1の操作者は、異常作動状態の発生を視認することができる。
次に、上記した軽度の異常作動状態について説明する。この軽度の異常作動状態においては、係合溝68と強制復元部34及び異常発生検知部35との接触は一瞬で解消され、クリアランスαが再び生じる。そのため、重度の異常作動状態のような異常発生検知部35のみが係合溝68と当接する状態は発生せず、上記した分離力も生じない。従って、強制復元部34に対する異常発生検知部35の連結姿勢は一定に保たれる。この点は、前記第1の実施形態における軽度の異常作動状態と同様である。
なお、前記第1の実施形態及び本実施形態では、異常発生検知部35を脱落させることで、異常作動状態の発生を検知する構成としたが、他の異なる実施形態では、異常発生検知部35を変位させて、異常作動状態の発生を顕示する構成としても良い。なお、異常発生検知部35の変位には、強制復元部34に対する異常発生検知部35の連結姿勢が変化する場合だけでなく、係合部との接触により、異常発生部35の形状に、何らかの変形又は破損が生じる場合も含まれる。
また、前記第1の実施形態及び本実施形態では、ユニット化されたカム装置5に対して本発明のカム装置5を適用する場合に付いて説明したが、他の異なる実施形態では、個別に設計製作されるカム装置5に本発明のカム装置5を適用することも可能である。また、異常発生検知部35の変位又は脱落を認識されやすいようにするには、異常発生検知部35を蛍光色の樹脂部品にする等、異常発生検知部35に色付けをするのが好ましい。
また、本実施形態では、カムスライダ10に係合溝68を設けるとともにカムドライバ11に強制復元部34及び異常発生検知部35を設ける場合について説明したが、他の異なる実施形態では、カムスライダ10に強制復元部34及び異常発生検知部35を設けるとともにカムドライバ11に係合溝68を設けることも可能である。
1 プレス型
2 下型
3 上型
4 成形品
5 カム装置
8 ホルダ
10 カムスライダ
11 カムドライバ
12 強制復元機構
15 コイルスプリング(付勢部材)
34 強制復元部
35 異常発生検知部
36 係合突起(係合部)
42 突条
43 連結凹部
44 凹溝
45 連結突起
61 押圧面
68 係合溝(係合部)

Claims (4)

  1. 所定位置に固定された下型と該下型に対して上下動可能な上型とを備えたプレス型に設けられて、成形品に対して加工処理を行うカム装置であって、
    前記上型の下降に伴って前記成形品への加工前位置から加工位置まで前記成形品の加工方向に沿って変位するカムスライダと、該カムスライダを前記加工前位置に付勢する付勢部材と、前記カムスライダを前記加工位置から前記加工前位置に復元させる強制復元機構と、を備え、
    該強制復元機構は、前記上型の上下動に対応して上下動する強制復元部と、該強制復元部に係脱可能に連結された異常発生検知部と、前記強制復元部及び前記異常発生検知部と係合可能に設けられた係合部と、を備え、
    前記上型の上昇に伴って前記カムスライダが前記加工位置から前記加工前位置まで復元する正常作動状態においては、前記強制復元部及び前記異常発生検知部が前記係合部と接触せずに上昇して前記強制復元部に対する前記異常発生検知部の連結姿勢が一定に保持され、
    前記上型が上昇しても前記カムスライダが前記加工位置から前記加工前位置まで復元しない異常作動状態においては、前記強制復元部及び前記異常発生検知部が上昇して前記係合部と当接し、この当接によって生じる復元力により前記カムスライダを前記加工位置から前記加工前位置へと強制的に復元させるとともに、前記強制復元部と前記係合部との当接状態が解除された後においても前記異常発生検知部と前記係合部の当接状態を継続させることにより前記異常発生検知部に分離力を生じさせ、この分離力により前記異常発生検知部を変位又は脱落させることを特徴とするカム装置。
  2. 前記カムスライダをスライド可能に保持するとともに前記上型に固定されたホルダと、
    前記カムスライダを前記加工方向に沿って摺動可能に支持するとともに前記下型に固定されたカムドライバと、を備え、
    前記ホルダと前記カムスライダの間に前記付勢部材が介装され、
    前記カムスライダと前記カムドライバの間に前記強制復元機構が設けられることを特徴とする請求項1に記載のカム装置。
  3. 前記カムスライダを前記加工方向に沿ってスライド可能に保持するとともに前記下型に固定されたホルダと、
    前記カムスライダを押圧可能な押圧面が設けられるとともに前記上型に固定されたカムドライバと、を備え、
    前記ホルダと前記カムスライダの間に前記付勢部材が介装され、
    前記カムスライダと前記カムドライバの間に前記強制復元機構が設けられることを特徴とする請求項1に記載のカム装置。
  4. 前記強制復元部には、連結凹部が設けられた突条が前面の外側部分に設けられ、前記異常発生検知部には、連結突起が設けられた凹溝が後面の外側部分に設けられ、
    前記突条と前記凹溝を密接させるとともに前記連結凹部と前記連結突起を嵌合させることにより、前記強制復元部と前記異常発生検知部が連結されることを特徴とする請求項1に記載のカム装置。
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WO2018159884A1 (ko) * 2017-03-03 2018-09-07 이윤선 보조리턴장치를 구비한 금형용 캠 유니트

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