JP2012068159A - 自動分析装置用分注ノズル、当該ノズルを搭載した自動分析装置及び自動分析装置用分注ノズルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】尿や血液などの検体を分析する自動分析装置において、分析測定値が繰り返し使用する分注ノズルによる影響を受けないようにする。
【解決手段】分注ノズルの表面に対してホスホン酸誘導体又は燐酸誘導体を化学吸着させることにより、生体高分子の吸着又は検体自体の付着を抑制する分子層をノズル表面に形成し、分析精度に影響が出ないようにする。
【選択図】図3
【解決手段】分注ノズルの表面に対してホスホン酸誘導体又は燐酸誘導体を化学吸着させることにより、生体高分子の吸着又は検体自体の付着を抑制する分子層をノズル表面に形成し、分析精度に影響が出ないようにする。
【選択図】図3
Description
本発明は、自動分析装置用分注ノズル、当該ノズルを搭載した自動分析装置及び自動分析装置用分注ノズルの製造方法に関する。
医療診断用の臨床検査においては、血液や尿などの生体検体中のタンパク、糖、脂質、酵素、ホルモン、無機イオン、疾患マーカー等の生化学分析や免疫学的分析が行なわれる。臨床検査では、複数の検査項目を信頼度高くかつ高速に処理する必要がある。このため、分析の大部分を自動分析装置で実行している。
自動分析装置としては、例えば血清や尿等の検体に所望の試薬を混合して反応させた反応溶液を分析対象とし、その吸光度を測定することで生化学分析を行う生化学分析装置が知られている。この種の生化学分析装置には、(1) 検体及び試薬を収納する容器、検体及び試薬を注入する反応セルを保持する収納部機構と、(2) 検体及び試薬を反応セルに自動注入する分注ノズルを備えた分注機構と、(3) 反応セル内の検体及び試薬を混合する攪拌棒を持つ自動攪拌機構と、(4) 反応中又は反応が終了した検体の吸光度を計測する機構と、(5) 計測終了後の反応溶液を吸引・排出し反応セルを洗浄する自動洗浄機構等が設けられている(例えば特許文献1)。近年の自動分析装置には、検体及び試薬の微量化、測定の高感度化が求められている。
自動分析装置では、同一の分注ノズルにより多数の検体及び試薬を次々に分注するのが一般的である。例えば検体分注ノズルは、採血管などの検体を収納する容器から所定量の検体を分取し、試薬を反応させる反応セルに検体を吐出する。一方、試薬分注ノズルは、試薬を収納する容器から分取した所定量の試薬を検体反応セルへ吐出する。
この際、分注ノズル表面に残留した被分注液体の成分が次の被分注液体に混入すると、測定結果に影響を及ぼす場合がある。こうした残留成分の影響を低減し、ノズル表面の清浄度を上げることで、微量化・高感度化へ向けて分析の信頼性を向上することができる。
ノズル表面の清浄度を上げる方法としては従来、純水や界面活性剤を含む洗剤による洗浄が実施されてきた(特許文献2)。しかし、こうした方法ではタンパク質に代表される検体中の生体高分子の洗浄が困難な場合がある。他にも活性酸素により付着した検体の残渣を失活させるという方法がある(特許文献3)。しかし、この方法は失活した検体の残渣が表面に堆積してしまうため、長期間の使用には耐えられない。
さらに、使い捨て可能なディスポーザブルノズル(ディスポーザブルティップ)を用いる方法も知られている。しかし、ディスポーザブルノズルは強度、加工精度の観点から、微細な構造を形成することは難しい。また、ディスポーザブルノズルの使用は大量の廃棄物を出し、環境負荷を増大させてしまうという問題点もある。
また、ノズルの表面を低表面エネルギーの樹脂で被覆する方法もある(特許文献4)。これにより、被分注液体の付着量を低減することを狙っている。この方法によってノズル表面の静的接触角を大きくすることはできる。しかし、静的接触角が大きいことは、必ずしも液体が付着を防止する効果を向上させるわけではない。これは、液体の付着しやすさは静的接触角以外にも表面粗さが影響するためである(非特許文献3)。
Chemical Reviews, 96, pp.1533-1554 (1996)
Journal of the American Chemical Society, 115, pp.10714-10721 (1993)
Thin Solid Films, 351, pp.279-283 (1999)
前述したように、検体中の成分であるタンパク質などの生体高分子は分注ノズルの表面に吸着することが知られており、この吸着が分析の信頼性を向上する上での課題となっている。
そこで、本発明者らは、分析の信頼性を向上させるために、タンパク質等の生体高分子が分注ノズルの表面に吸着するのを抑制する表面処理、又は、検体自体が分注ノズルの表面に付着するのを抑制する表面処理を分注ノズルの表面に付することにより、課題を解決することを検討した。すなわち、本発明の目的は、ディスポーザブルノズルを使用しなくても表面の清浄度を高め、分析の信頼性を向上できる分注ノズル及びその製造方法、並びに当該分注ノズルを用いた自動分析装置を提供することである。
前述した課題を鋭意研究した結果、発明者らは、分注ノズルの表面にホスホン酸誘導体を化学吸着させて被覆することにより、検体成分のタンパク質や検体自体がノズル表面に残存するのを効果的に抑制できることを想到するに至った。ホスホン酸誘導体の化学構造は、次の一般式1で表される。
ここで、化学吸着とは共有結合やイオン結合などの化学結合を原因とする、吸着熱が20〜100kcal/mol程度の固体表面での吸着様式のことを意味する。なお、物理吸着とは吸着熱が通常10kcal/mol以下のファンデルワールス力を結合力とするものであり、この意味において化学吸着と物理吸着は区別される。
仮に、物理吸着により分注ノズルを表面処理した場合、分注ノズルが被分注液体に浸された際に表面処理層の一部が剥がれ落ちてしまう。従って、物理吸着により表面処理した場合には、分注を繰り返すうちに、やがて表面処理層が完全に剥がれてしまう。
そこで、発明者らは、自動分析装置用の分注ノズルの表面処理に化学吸着を採用し、分子を分注ノズルの表面に強固に表面処理層を形成することに成功した。なお、発明者らは、燐酸誘導体を表面に化学吸着させる場合にも、ホスホン酸誘導体を化学吸着させる場合と同様に、強固な表面処理層をノズル表面に形成できることを確認した。
本発明によれば、検体成分のタンパク質などの生体高分子及び検体自体のノズル表面への吸着を効果的に抑制することができる。このため、分注ノズル表面の清浄度が高まり、自動分析装置の分析信頼性を向上させることができる。その結果、検体や試薬の微量化・装置の高感度化を実現でき、自動分析装置のランニングコストも低減することができる。
以下、図面に基づいて本発明の内容を詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(装置構成)
図1に、本発明に係る自動分析装置の構成例を示す。自動分析装置には、検体収納部機構1が配置されている。検体収納部機構1には、一つ以上の検体容器25が配置される。図1に示す検体収納部機構1は、ディスク状の本体に検体容器25を着脱自在に搭載できる、いわゆる検体ディスク機構の例を示している。もっとも、検体収納部機構1には、自動分析装置で一般的に用いられている検体ラック又は検体ホルダー等の他の機構を用いることもできる。
(装置構成)
図1に、本発明に係る自動分析装置の構成例を示す。自動分析装置には、検体収納部機構1が配置されている。検体収納部機構1には、一つ以上の検体容器25が配置される。図1に示す検体収納部機構1は、ディスク状の本体に検体容器25を着脱自在に搭載できる、いわゆる検体ディスク機構の例を示している。もっとも、検体収納部機構1には、自動分析装置で一般的に用いられている検体ラック又は検体ホルダー等の他の機構を用いることもできる。
ここで言う検体とは、反応容器で反応させるために使用する被検査溶液のことを指し、採集検体原液でも良いし、当該原液を希釈、前処理等により加工処理した溶液であっても良い。検体容器25内の検体は、検体供給用分注機構2の検体用分注ノズル27によって抽出され、所定の反応容器に注入される。この実施例の場合、検体用分注ノズル27は、ホスホン酸誘導体により表面処理されている。表面処理の具体例については、後述する実験例1、2、3、4、5、6、7、8に示す。
試薬ディスク機構5には、多数の試薬容器6が着脱自在に配置される。試薬ディスク機構5には、試薬供給用分注機構7が配置されている。試薬は、当該機構の試薬用分注ノズル28により吸引され、所定の反応セルに注入される。
この他、自動分析装置には、分光光度計10及び集光フィルタ付き光源26が配置される。分光光度計10と集光フィルタ付き光源26との間には、測定対象を収容する反応ディスク3が配置される。この反応ディスク3の外周上には、例えば120個の反応セル4が設置されている。また、反応ディスク3の全体は、恒温槽9によって、所定の温度に保持されている。なお、反応ディスク3の近傍には、撹拌棒29を有する撹拌機構8が配置されている。
反応ディスク3の周辺には、反応セル洗浄機構11が配置される。反応セル洗浄機構11には洗浄剤容器13から洗浄剤が供給される。セル内の溶液の吸引には、吸引ノズル12が用いられる。
更に、自動分析装置には、コンピュータ19、インターフェース23、Log変換器及びA/D変換器18、試薬用ピペッタ17、洗浄水ポンプ16、検体用ピペッタ15が配置される。また、自動分析装置には、プリンタ20、CRT21、記憶装置22(例えばフロッピーディスク、ハードディスク等)、操作パネル24が配置される。
なお、検体ディスク機構は駆動部200により、試薬ディスク機構は駆動部201により、反応ディスクは駆動部202により、それぞれインターフェースを介して制御並びに駆動される。また、自動分析装置の各部はインターフェースを介してコンピュータ19により制御される。
なお、上述の構成を有する自動分析装置において、操作者は、操作パネル24を用いて分析依頼情報の入力を行う。操作者が入力した分析依頼情報は、コンピュータ19内のメモリに記憶される。
次に、自動分析装置において実行される分析動作の概要を説明する。まず、測定対象検体の入った検体容器25が検体収納部機構1の所定の位置にセットされる。すると、検体用分注ノズル27が下降し、検体容器25内の測定対象検体と接触する。このとき、検体用分注ノズル27の静電容量が大きく変化する。この変化の検出により、コンピュータ19は、検体用分注ノズル27と測定対象検体とが接したことを検知し、検体用分注ノズル27の下降を停止する。
続いて、コンピュータ19は、そのメモリに記憶された分析依頼情報に従い、検体ピペッタ15及び検体供給用分注機構2を駆動制御し、表面処理された検体用分注ノズル27によって検体を所定量ずつ取り分ける。
その後、検体用分注ノズル27は反応セルまで移動され、所定の反応容器内に測定対象検体を分注する。分注後、表面処理されている検体用分注ノズル27は水洗浄され、次の検体の分注に使用される。
この実施例のように、ホスホン酸誘導体により被覆された検体用分注ノズル27を用いることで、タンパク質に代表される生体高分子の吸着や検体自体の付着を抑制し、従来のステンレススチール製分注ノズルに比較して分析精度を向上することができる。
続いて、測定対象検体が分注された反応セルに、試薬供給用分注機構7の試薬用分注ノズル28が位置決めされ、所定量の試薬が分注される。その後、試薬用分注ノズル28は水洗浄され、次の反応セルのための試薬を分注する。測定対象検体と試薬の混合液は、撹拌機構8の攪拌棒29によって撹拌される。撹拌機構8は順次、次の反応セルの混合液を撹拌する。
なお、溶液の撹拌後、集光フィルタ付き光源26から反応セルに検査光が照射され、分光光度計10によって吸光度などが測定される。
(分注ノズル)
自動分析装置の分注ノズルには、加工性の良さ、耐食性などの観点を踏まえて、ステンレススチールが広く用いられている。従って、分注ノズルに表面処理を行うためには、所望の機能を持つ分子をステンレススチールに固定すれば良い。しかし、直接ステンレススチールに分子を固定するのは困難である。例えば金属や半導体の表面処理に広く用いられているシランカップリング剤によってステンレススチールを表面処理すると、基板とシランカップリング剤の反応の他に、シラノール末端の分子間でも反応が起きる。このため、多層膜を形成してしまい、所望の機能を得ることができない場合がある。
自動分析装置の分注ノズルには、加工性の良さ、耐食性などの観点を踏まえて、ステンレススチールが広く用いられている。従って、分注ノズルに表面処理を行うためには、所望の機能を持つ分子をステンレススチールに固定すれば良い。しかし、直接ステンレススチールに分子を固定するのは困難である。例えば金属や半導体の表面処理に広く用いられているシランカップリング剤によってステンレススチールを表面処理すると、基板とシランカップリング剤の反応の他に、シラノール末端の分子間でも反応が起きる。このため、多層膜を形成してしまい、所望の機能を得ることができない場合がある。
これに対し、ホスホン酸誘導体は化学結合により、ステンレススチールに吸着をすることができる。また、ホスホン酸同士による分子間の反応は起きず、安定な被覆を行うことができるという特徴を持つ。
また、本実施例の場合、測定対象検体の成分を構成する主要素は血清である。検体成分のタンパク質の残存を抑制するためにはポリエチレングリコールをノズル表面に固定することが効果的である。
従って、ポリエチレングリコールを片方の末端に持つホスホン酸をノズル表面に吸着することが有効である。ポリエチレングリコールは親水性でかつ非イオン性であり、その立体的な斥力によりタンパク質などの生体高分子の吸着を抑制する効果が期待できる。
必要なエチレンオキシド基の数が2以上であること及び分子が配列するための分子間相互作用が十分であるという要請からポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は100以上、さらには200以上であることが望ましい。
その一方で、分子間の立体的な斥力が大きすぎると、ノズル表面へのポリエチレングリコール誘導体の吸着量が低減してしまう。このためポリエチレングリコール誘導体の数平均分子量は20000以下、より好ましくは5000以下であることが望ましい。
被覆するポリエチレングリコール誘導体の化学構造は単一である必要はなく、混合物であっても良い。タンパク質吸着の抑制効果の検証は、タンパク質の吸着量をIRAS(Infra Red Absorption Spectroscopy)で測定することにより実施した。具体的にはウマ血清中のタンパク質の吸着量をアミドIのピーク強度から見積もった。上記の表面処理を行った基板では、従来のステンレススチールと比較して、タンパク質の吸着量を1/3以下に低減し、従来例との間に有意差が認められた。
さらに、検体自体の残存を抑制するためにはトリフルオロ基又はメチル基を片方の末端に持つホスホン酸をノズル表面に吸着することが有効である。これらの官能基を片方の末端に持つホスホン酸で表面処理すると、最表面にトリフルオロ基またはメチル基が露出することになる。これにより、表面が撥水化される。液体を分注した際にノズル側面に液体が付着するが、その液体の付着量自体を低減することができる。これにより、分注の信頼性を向上することができる。
以下では、これらの観点から行った実験例の幾つかの具体例について説明する。
(ノズルの構造)
図2に、本実施例及び後述する各実験で使用する分注ノズルの概略構造例を示す。分注ノズルは管状の分注ノズル本体部101である。分注ノズル本体部101には、耐腐食性が高く、加工性の良い材料としてステンレススチールが広く用いられる。この実施例の場合、分注ノズル本体部101はポイント102で曲げられ、略L字形状を形成する。図中水平方向に延びる側の端部は吸引機構に接続される。一方、図中垂直方向に延びる側の端部は開放端のまま、溶液の吸引と分注に用いられる。
図2に、本実施例及び後述する各実験で使用する分注ノズルの概略構造例を示す。分注ノズルは管状の分注ノズル本体部101である。分注ノズル本体部101には、耐腐食性が高く、加工性の良い材料としてステンレススチールが広く用いられる。この実施例の場合、分注ノズル本体部101はポイント102で曲げられ、略L字形状を形成する。図中水平方向に延びる側の端部は吸引機構に接続される。一方、図中垂直方向に延びる側の端部は開放端のまま、溶液の吸引と分注に用いられる。
検体や試薬は、開口端から中空部103に所定量だけを吸引される。分注時には、検体や試薬に対して分注ノズルの外面も溶液中に浸漬される。このため、ホスホン酸誘導体を化学吸着させて被覆すべき領域は、端部105及び外面となる。また、被覆すべき領域は、分注ノズルが検体又は試薬を分注する際に検体又は試薬に浸漬する領域104よりも十分に大きく設定する。可能ならば、分注ノズル本体部101の内側表面も被覆処理することが望ましい。
図3に、ホスホン酸誘導体で被覆処理された分注ノズルを、図2中の点線位置で軸方向に対して垂直に切断した横断面図を示す。図中、111は分注ノズル本体部であり、ステンレススチールなどからなる。112はホスホン酸誘導体からなる層であり、タンパク質などの生体高分子の吸着を抑制する役割を果たす。図2の場合、ホスホン酸誘導体は、分注ノズル本体部111の外側表面と内側表面の両方を被覆している。113は分注ノズルの中空部である。
図4に、領域104の部分を分注ノズルの軸方向に沿って破断した縦断面構造を示す。図中、121は分注ノズル本体部であり、ステンレススチールなどからなる。122はホスホン酸誘導体からなる層であり、タンパク質などの生体高分子の吸着を抑制する役割を果たす。図に示すように、層122は、分注ノズル本体121の開口端面も被覆する。なお、123は分注ノズルの中空部である。
ホスホン酸は後述の通り、溶液法により、ステンレススチールの表面に吸着させることができる。このため、図4に示すように、その開口端面の部分まで表面処理することができる。
なお、表面処理時には、先ず最初に、ステンレススチールの表面をNaOH水溶液及びエタノールで洗浄する。その後、ホスホン酸誘導体の溶液に十分な時間、分注ノズル本体121を浸漬すると、ホスホン酸誘導体をノズル本体表面に吸着させることができる。この表面処理法を採用すると、ホスホン酸誘導体を非常に薄く、例えば単分子の膜厚で吸着させることができる。ホスホン酸誘導体はホスホン酸の部分でノズル表面に吸着し、単分子層が完成した後は、それ以上の分子がノズル表面に化学吸着できないためである。
こうした現象はXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、ToF-SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectroscopy)や分光エリプソメトリーなどの実験により確かめられている。従って、表面粗さが表面処理の前後で変化しない。ノズル表面を研磨した後、研磨後のノズル表面をホスホン酸誘導体で表面処理すれば、表面粗さが小さいノズル処理表面を形成することができる。具体的には、ステンレススチールのノズル表面を予め研磨しておき、その研磨した表面にトリフルオロ基又はメチル基を片方の末端に持つホスホン酸誘導体を吸着させる。これにより、静的接触角が大きく、かつ表面粗さが小さい表面を形成することができる。これにより、液体の付着が抑制できる。このとき、表面粗さRaは、15nm以下であることが望ましい。
また、研磨後に表面処理する場合には、ノズルの表面積を小さくすることができるので、片方の末端にポリエチレングリコールを持つホスホン酸誘導体をノズル表面に固定すれば、検体成分のタンパク質の吸着量をさらに抑制することもできる。この際も、表面粗さRaは15nm以下であることが望ましい。
以下では、図2に示す構造を有する分注ノズルについての具体的な実験例を説明する。なお、前述の通り、自動分析装置の分注ノズル本体には加工性の良さ、耐食性などの観点を踏まえて、ステンレススチールが広く用いられる。そこで、本実験例では、ステンレススチールとしてSUS304(ステンレススチール304)基板を用いて表面処理を行った。なお、各実験例における表面処理は室温(約25℃)で行った。
(実験例1)
まず、解析の信頼性を高めるため、平面基板を用いて効果の検証を行った。用いた基板の大きさは30mm×30mm×0.5mmであり、効果の検証のための測定面は30mm×30mmの面を用いた。
図5に、表面処理工程のフローチャートを示す。
まず、解析の信頼性を高めるため、平面基板を用いて効果の検証を行った。用いた基板の大きさは30mm×30mm×0.5mmであり、効果の検証のための測定面は30mm×30mmの面を用いた。
図5に、表面処理工程のフローチャートを示す。
工程1.ステンレススチールの洗浄
SUS304基板を0.1%NaOH水溶液及びエタノールで15分間超音波洗浄し、水洗いした。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させた。
SUS304基板を0.1%NaOH水溶液及びエタノールで15分間超音波洗浄し、水洗いした。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させた。
工程2.ホスホン酸誘導体の溶液に浸漬
工程1で洗浄したSUS304基板をホスホン酸誘導体の溶液に24時間浸漬する。その後、溶液から取り出し、溶媒による洗浄の後、純水で洗浄する。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させる。
工程1で洗浄したSUS304基板をホスホン酸誘導体の溶液に24時間浸漬する。その後、溶液から取り出し、溶媒による洗浄の後、純水で洗浄する。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させる。
効果の検証は、ウマ血清中のタンパク質成分の吸着量をIRASにより見積もった。その結果、分注後の分注ノズル表面に残存するタンパク質は、従来のステンレススチール製のノズルと比較して、1/3以下に低減されることを確認した。その結果を図6に示す。131は従来例(ステンレススチール製のノズル)であり、132は実験例1である。
(実験例2)
前述した実験例1の場合には、1段階の反応でホスホン酸誘導体を吸着するプロセスにより表面処理を行った。この実験例2の場合には、多段階の反応により表面処理を行う手法について記述する。
前述した実験例1の場合には、1段階の反応でホスホン酸誘導体を吸着するプロセスにより表面処理を行った。この実験例2の場合には、多段階の反応により表面処理を行う手法について記述する。
図7に、表面処理工程のフローチャートを示す。この表面処理工程は、おおよそ2つの処理工程で構成される。1つ目は、反応活性な官能基を末端に持つホスホン酸誘導体によりステンレススチールの表面を被覆する工程であり、2つ目は、反応活性な官能基に対して所望の機能を持つ分子を固定化する工程である。
本実験例の場合、先ず最初に、カルボキシル基を末端に持つホスホン酸をノズル表面に固定し、次に、カルボキシル基を反応活性化する方法について説明する。なお、タンパク質の吸着を抑制する分子として、ポリエチレングリコール(PEG)の誘導体を用いるものとする。
具体的な実験方法を以下に述べる。実験例1と同様に、解析の信頼性を高めるため、SUS304基板を用いて効果の検証を行った。用いた基板の大きさは30mm×30mm×0.5mmであり、効果の検証のための測定面は30mm×30mmの面を用いた。
用いた試薬は以下の通りである。カルボン酸末端のホスホン酸として、16-Phosphono-hexadecanoic acidを使用した。この分子を溶解する溶媒には、脱水Tetrahydrofuran (THF)を用いた。末端のカルボキシル基を反応活性化するための試薬には、N-Hydroxysuccinimide (NHS)及び1-(3-Dimethylaminopropyl)-3-ethylcarbodiinide(EDC)を使用した。反応活性化したカルボキシル基との反応基にはアミノ基を用いることとした。アミノ基を末端に持つPEGは、平均分子量2000及び5000の2種類とした。模擬血清にはウマ由来血清を用いた。燐酸緩衝溶液は燐酸緩衝剤粉末により調整し、pHメータによりpH7.4となっていることを確認した。
工程1.ステンレススチールの洗浄
SUS304基板を0.1%NaOH水溶液及びエタノールで15分間超音波洗浄し、水洗いした。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させた。
SUS304基板を0.1%NaOH水溶液及びエタノールで15分間超音波洗浄し、水洗いした。その後、窒素ブローによりSUS304基板を乾燥させた。
工程2.ホスホン酸誘導体の溶液に浸漬
工程1で洗浄したSUS304基板を16-Phosphono-hexadecanoic acidのTHF溶液に48時間浸漬する。その後、SUS304基板を溶液から取り出し、THFで洗浄した後、窒素ブローで乾燥し、さらに純水で洗浄する。その後、SUS304基板を窒素ブローで再度乾燥させた。これにより、16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜をSUS304基板上に形成した。
工程1で洗浄したSUS304基板を16-Phosphono-hexadecanoic acidのTHF溶液に48時間浸漬する。その後、SUS304基板を溶液から取り出し、THFで洗浄した後、窒素ブローで乾燥し、さらに純水で洗浄する。その後、SUS304基板を窒素ブローで再度乾燥させた。これにより、16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜をSUS304基板上に形成した。
固定化の検証は、TOF-SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectroscopy)、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)、IRAS(Infra Red Reflection Absorption Spectroscopy)により確認した。
ToF-SIMS分析は、ION-TOF社のTOF.SIMS5で行った。一次イオン源としてはBiを用いた。一次イオン照射量は10−12/cm2以下のスタティクな条件とした。スペクトルは正負イオンいずれについてもm/z=0〜1000の範囲で測定した。分析領域は500μm×500μmである。分解能はm/Δm>7000(正イオン PFe3O4 +、負イオン P2FeO5 −)である。キャリブレーションは正イオンについてはH+、C8H5O3 +、Fe4O4 +で行い、負イオンはH−、C4H−で行った。キャリブレーションでの誤差は10ppm以下である。
ToF-SIMSの測定は、16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜の他、参照のため未処理のSUS304基板についても測定を行った。測定の結果、分子膜に特徴的なフラグメントとして、PaFebOc及びPaFebOcHdの組成を持つフラグメントが観察された。具体的には、正イオンとして、PFeO2、PFe3O4、PFe3O5、PFe5O7、PFe6O8、負イオンとしてPFeO3H、PFe4H、P2FeO5、P2FeO6、PFe2O5H、P2FeO7H、PFe2O9、PFe3O6、P2Fe2O8H、P3Fe3O10、P2Fe4O9、P3Fe3O11、P3Fe4O12、P3Fe5O13、P3Fe6O14が検出された。
また、未処理のSUS304基板と比較して分子膜でのCaFebOc及びCaFebOcHdのピーク強度の顕著な増加は認められなかった。分子がカルボキシル基によりSUS304基板と結合しているとすると、CaFebOc及びCaFebOcHdの組成を持つフラグメントが観察されるべきである。しかし、CaFebOc及びCaFebOcHdのフラグメントではなく、PaFebOc及びPaFebOcHdのフラグメントが顕著に増加した結果は、分子がSUS304基板に対してホスホン酸で化学結合していることを示している。
基板とホスホン酸の化学結合の様式には、大きく分けて2つの可能性が考えられる。一つはP−Oの酸素と基板金属原子間でのイオン結合であり、もう一つはP−O−Hの水酸基とSUS304基板の表面酸素間の水素結合である。もし、水素結合のように弱い結合で化学結合している場合、PaFebOc及びPaFebOcHdの組成を持つフラグメントが、さらにフラグメント化されることなく検出される可能性は低い。従って、ホスホン酸とSUS304表面の化学結合は、P−Oの酸素と基板の金属原子間でのイオン結合によるものである。
XPS分析にはPHI社製QuanteraSXMを用いた。X線源としては単色化Al(1486.6eV)を使用した。検出領域の大きさは100μmφで、光電子の取り出し角度は45度である。まず、ワイドスキャンによる元素分析を行った。測定条件は、結合エネルギーの範囲:0〜1350eV、パスエネルギー:280eVである。さらに、吸着構造と電子状態を詳細に解析するため、ナロースキャンをP2pについて実施した。測定条件は、結合エネルギーの範囲:0〜1350eV、パスエネルギー:112eVとした。P2pナロースキャンの結合エネルギーはC1sのC−C/C−Hに由来するピークのエネルギーを284.8eVとすることで補正した。
XPSの測定は16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜の測定に加えて、参照として未処理のSUS304基板及び16-Phosphono-hexadecanoic acid粉末についての測定も行った。
図8に、XPSワイドスキャンの結果を示す。141が16-Phosphono-hexadecanoic acidのXPSワイドスキャン測定結果であり、142がSUS304基板のXPSワイドスキャン測定結果であり、143が16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のXPSワイドスキャン測定結果である。図8に示すように、16-Phosphono-hexadecanoic acid粉末ではC、O、Pが検出された。その組成比は74.9%、20.5%、4.7%であり、構成元素の比である72.7%、22.7%、4.5%とよく一致している。SUS304基板では、C、O、Fe、Cr、Ni、Siが検出された。それぞれの比率は19.7%、46.9%、27.1%、4.1%、0.5%、1.6%であった。
16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜では、SUS304基板で検出されたC、O、Fe、Cr、Niに加えてPが検出された。それぞれの比率は、42.7%、34.8%、15.6%、4.5%、1.0%、1.4%であった。新たに検出されたPはホスホン酸中のPであり、16-Phosphono-hexadecanoic acidの分子膜の形成を示すものである。分子膜では、基板において汚染として検出されたSiは検出されなかった。炭素とリンの構成比C/Pは、粉末においては15.9であった。これは分子構造から求められるC/Pの値16.2とよく一致している。しかし、分子膜においてはC/Pの値が30.5であり、粉末よりも大きな値となっている。この原因はSUS304基板中に含まれていたCが検出されたためであると考えられる。
次に、図9に、XPSのP2pのナロースキャンの解析結果を示す。151が16-Phosphono-hexadecanoic acidのP2pのXPSナロースキャン測定結果であり、152がSUS304基板のP2pのXPSナロースキャン測定結果であり、153が16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のP2pのXPSナロースキャン測定結果である。
図9に示すように、16-Phosphono-hexadecanoic acidのP2pピークは化学結合していないフリーなホスホン酸に帰属される。これに対して、分子膜では結合エネルギーが低エネルギー側に約1eVシフトし、133.0eVになっている。この結合エネルギーの顕著なシフトはPの周りの化学的な環境の変化を示唆するものである。本実験例での分子膜におけるエネルギーシフトは、ホスホン酸とSUS304表面との化学結合の生成を示すものと考えられる。
IRASの測定には、フーリエ変換赤外分光装置(Nicolet Nexus470)を用いた。測定条件は分解能4cm−1、積算回数は512回又は1024回で行った。洗浄のみをした参照基板のスペクトルをバックグランドとした。図10に、測定結果を示す。図中、161が16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のIRAS測定結果である。
まず、2930cm−1及び2850cm−1のピークはそれぞれ、16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜中のアルキル鎖のCH2非対称伸縮及び対称伸縮に帰属される。アルキル鎖の秩序性が十分でない場合、すなわち、ゴーシュ型の配座がアルキル鎖中にある非秩序構造ではCH2非対称伸縮のピーク波数は2924cm−1(液体アルカンでのCH2非対称伸縮のピーク位置)付近に現れる。これに対し、全てがトランス型の配座をとる場合には2918〜2914cm−1(固体結晶アルカンでのCH2非対称伸縮のピーク位置)付近にピークが現れる。16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜ではピークが2930cm−1に観測されたことから、ゴーシュ型の配座がアルキル鎖中に存在する非秩序構造をとるものと考えられる。
次に、1800〜1350cm−1の波数範囲には、水素結合状態にあるカルボン酸のC=O伸縮振動のピークが1721cm−1に、CH2の変角振動のピークが1466cm−1に、カルボン酸イオンC=Oの伸縮振動が1415cm−1に、それぞれ観測された。
1300〜800cm−1の波数範囲には、ホスホン酸中にあるPOの伸縮振動に由来するピークが現れる。1030cm−1及び1234cm−1のピークは、それぞれP-O、P=O伸縮振動に帰属される。以上から、16-Phosphono-hexadecanoic acid分子のSUS304基板への結合を確認した。
工程3.末端の官能基を活性化
カルボン酸を反応活性化するため、0.4M NHS水溶液と、0.1M EDC水溶液を1:1で混合し、これに対して16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜を浸漬し、45分間静置した。取り出した基板は水洗後、窒素ブローにより乾燥した。
カルボン酸を反応活性化するため、0.4M NHS水溶液と、0.1M EDC水溶液を1:1で混合し、これに対して16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜を浸漬し、45分間静置した。取り出した基板は水洗後、窒素ブローにより乾燥した。
これにより、カルボン酸は活性エステル(NHSエステル)基となる。取り出した基板は水洗し、窒素ブローで乾燥する。NHSエステル化の検証は、IRASで以下のピークを観測したことにより確認した。結果は図11に示す。171が16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のIRAS測定結果であり、172がNHS化した分子膜のIRASの測定結果であり、173がポリエチレングリコール誘導体を固定化した表面のIRAS測定結果ナロースキャンの結果である。それぞれのピークの帰属は以下の通りである。1042cm−1:P-O伸縮、1077cm−1:N-C-O伸縮、1211cm−1:P=O伸縮、1364cm−1:C-N-C伸縮、1437cm−1:CH2変角、1743cm−1:C=O非対称伸縮、1791cm−1:C=O対称伸縮、1822cm−1:C=O伸縮、2857cm−1、2930cm−1:CH2伸縮。
工程4.分子を固定
工程4により導入された活性エステル基はアミノ基と反応し、アミド結合を作ることができる。本実験例では、アミノ基を末端に持ち、タンパク質の吸着を抑制する分子としてエタノールアミン(以下「EA」という。)、アミノ基末端のPEG(平均数分子量2000.以下「PEG2000」という。)、アミノ基末端のPEG(平均分子量5000。以下「PEG5000」という。)の三種類を検討した。反応条件は以下の通りとした。
工程4により導入された活性エステル基はアミノ基と反応し、アミド結合を作ることができる。本実験例では、アミノ基を末端に持ち、タンパク質の吸着を抑制する分子としてエタノールアミン(以下「EA」という。)、アミノ基末端のPEG(平均数分子量2000.以下「PEG2000」という。)、アミノ基末端のPEG(平均分子量5000。以下「PEG5000」という。)の三種類を検討した。反応条件は以下の通りとした。
まず、EAの1M水溶液に10分間浸漬した。その後、基板を取り出し、水洗の後、窒素ブローにより乾燥した。
次に、1mMのアミノ末端のPEGのリン酸緩衝溶液(pH=7.4)に3時間浸漬した。基板を取り出した後、リン酸緩衝溶液(pH=7.4)で洗浄し、その後、基板を水洗して窒素ブローで乾燥した。
膜の形成はIRASで測定した以下のピークにより確認した。図11には例として、PEG2000を固定化したときのIRASスペクトルを示す。
EAを固定化した表面では、以下のピークが観測された。1030cm−1:P-O伸縮、1559cm−1:アミドII、1650cm−1:アミドI、2854cm−1、2930cm−1:CH2伸縮。
EAを固定化した表面では、以下のピークが観測された。1030cm−1:P-O伸縮、1559cm−1:アミドII、1650cm−1:アミドI、2854cm−1、2930cm−1:CH2伸縮。
PEG2000を固定化した表面では、以下のピークが観測された。1046cm−1:P-O伸縮、1074cm−1:N-C-O伸縮、1110cm−1:C-O伸縮、1208cm−1:P=O伸縮、1240cm−1:C-N-C伸縮、1278cm−1:CH2変角(PEG)、1466cm−1:CH2変角、1533cm−1:アミドII、1644cm−1:アミドI、1743cm−1:C=O非対称伸縮、1784cm−1:C=O対称伸縮、1820cm−1:C=O伸縮、2850cm−1、2921cm−1:CH2伸縮。
PEG5000を固定化した表面では、以下のピークが観測された。1023cm−1:P-O伸縮、1074cm−1:N-C-O伸縮、1110cm−1:1208cm−1:P=O伸縮、1240cm−1:C-N-C伸縮、1275cm−1:CH2変角(PEG)、1463cm−1:CH2変角、1549cm−1:アミドII、1638cm−1:アミドI、1743cm−1:C=O非対称伸縮、1784cm−1:C=O対称伸縮、1816cm−1:C=O伸縮、2854cm−1、2927cm−1:CH2伸縮。
ここで、アミドIピークとは、主にアミド結合に含まれるC=Oに帰属されるピークである。アミドIIピークは、主にアミド結合に含まれるC-N伸縮振動及びN-H変角振動に帰属される。
測定結果のIRASスペクトルを図12に、それぞれのタンパク質由来のアミドIのピーク強度の棒グラフを図13に示す。図12中、180がアミドIの領域の測定結果であり、181がSUS304基板での測定結果であり、182がEAでの測定結果であり、183がPEG2000での測定結果であり、184がPEG5000での測定結果である。図13からは、最もタンパク質の吸着量が多いのが未処理のSUS304基板191であることが分かる。EAを固定化した分子膜(192)では未処理のSUS304基板に対して吸着量は2/3程度になっている。PEGを固定化した分子膜では、EAを固定化した表面よりもさらにタンパク質の吸着抑制効果が高く、EAに対して2/3以下の吸着量に低減できている。PEGの分子量の依存性については、PEG2000(193)と比較して、PEG5000(194)でより吸着を抑制する効果が見られ、未処理SUS304の1/3以下であった。これにより、ポリエチレングリコールの分子量は2000以上であることが望ましいことが分かる。
ノズル形状に表面処理を行う場合には、内部に処理溶液が入り込むことができるようにすることで外面だけでなく、内面及び端部も処理をすることができる。
(実験例3)
本実験例においても、分注ノズルに、前述の実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。まずステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法で、ホスホン酸の誘導体層をノズル表面に形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を、0.1%NaOH水溶液とエタノールにより超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。
本実験例においても、分注ノズルに、前述の実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。まずステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法で、ホスホン酸の誘導体層をノズル表面に形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を、0.1%NaOH水溶液とエタノールにより超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。
次に清浄化処理を終えた分注ノズルのうち検体に浸漬される末端側に、ポリエチレングリコール誘導体を持つホスホン酸誘導体を固定化した。固定化の方法は、実験例1及び2と同様にした。
効果の検証は、実験例1及び2と同様に、ウマ血清中のタンパク質成分の吸着量をIRASにより見積もった。その結果、分注後の分注ノズル表面に残存するタンパク質が従来のステンレススチール製のノズルと比較して1/3以下に低減されることを確認した。
(実験例4)
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。このとき、最終仕上げのRaは15nmとした。
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。このとき、最終仕上げのRaは15nmとした。
次に、ノズル表面を、0.1%NaOH水溶液とエタノールにより超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のTHF溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、ポリエチレングリコール誘導体を持つホスホン酸誘導体のTHF溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
効果の検証は、実験例と同様に、ウマ血清中のタンパク質成分の吸着量をIRASにより見積もった。その結果、分注後の分注ノズル表面に残存するタンパク質が従来のステンレススチール製のノズルと比較して1/10以下に低減されることを確認した。
(実験例5)
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を、0.1%NaOH水溶液とエタノールにより超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のTHF溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、アルキルホスホン酸誘導体のTHF溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を、0.1%NaOH水溶液とエタノールにより超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のTHF溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、アルキルホスホン酸誘導体のTHF溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
効果の検証は、ノズルを検体から引き上げた際にノズル表面に付着している検体の量で比較した。その結果、分注後の分注ノズル表面に残存するタンパク質が従来のステンレススチール製のノズルと比較して検体自体の付着が1/3以下に低減されることを確認した。
(実験例6)
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。この時、最終仕上げのRaは15nmとした。次に、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のTHF溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、アルキルホスホン酸誘導体を持つホスホン酸のTHF溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。この時、最終仕上げのRaは15nmとした。次に、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のTHF溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、アルキルホスホン酸誘導体を持つホスホン酸のTHF溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
効果の検証は、ノズルを検体から引き上げた際にノズル表面に付着している検体の量で比較した。その結果、引き上げ後の分注ノズル表面に付着する検体は認められなかった。
(実験例7)
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のエタノール溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、片末端にトリフルオロ基を持つアルキルホスホン酸誘導体のエタノール溶液に24時間浸漬した後、エタノールにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のエタノール溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、片末端にトリフルオロ基を持つアルキルホスホン酸誘導体のエタノール溶液に24時間浸漬した後、エタノールにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
効果の検証は、ノズルを検体から引き上げた際にノズル表面に付着している検体の量で比較した。その結果、分注後の分注ノズル表面に残存するタンパク質が従来のステンレススチール製のノズルと比較して検体自体の付着が低減されることを確認した。
(実験例8)
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。このとき、最終仕上げのRaは15nmとした。次に、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のエタノール溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、片末端にトリフルオロ基を持つアルキルホスホン酸誘導体のエタノール溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
本実験例においても、分注ノズルに実験例1及び2と同様の処理を行う場合について説明をする。表面を研磨後、ステンレススチール製分注ノズルの表面に、実験例1及び2と同様の方法でホスホン酸の誘導体層を形成した。処理する領域は、図2の分注ノズルの端部105及び検体に浸漬される領域104とした。まず、ノズル表面を研磨した。このとき、最終仕上げのRaは15nmとした。次に、ノズル表面を0.1%NaOH水溶液とエタノールで超音波洗浄した。この際、超音波によりノズルが損傷しないように、支持台を設けて容器及び隣接したノズルと接しない配置にした。この後、清浄化処理を終えた分注ノズルを、ホスホン酸誘導体のエタノール溶液に浸漬した。ここでは、分注ノズルのうち検体に浸漬される側の末端を、片末端にトリフルオロ基を持つアルキルホスホン酸誘導体のエタノール溶液に24時間浸漬した後、THFにて洗浄し、次に純水で洗浄した。その後、分注ノズルを窒素ブローにより乾燥させた。
効果の検証は、ノズルを検体から引き上げた際にノズル表面に付着している検体の量で比較した。その結果、引き上げ後の分注ノズル表面に付着する検体は認められなかった。
<実施例2>
実施例1の場合、ノズル表面が何らかの物体にぶつかる等の機械的衝撃を受けた場合、ノズル表面に化学吸着したホスホン酸誘導体が剥がれ落ちてしまうことがある。しかし、前述した表面処理法を用いて製造した分注ノズルの場合には、ホスホン酸誘導体を簡便に分注ノズルに化学吸着させることができる。そこで、本実施例では、ホスホン酸誘導体を化学吸着させる機構を組み込んだ自動分析装置について説明する。
実施例1の場合、ノズル表面が何らかの物体にぶつかる等の機械的衝撃を受けた場合、ノズル表面に化学吸着したホスホン酸誘導体が剥がれ落ちてしまうことがある。しかし、前述した表面処理法を用いて製造した分注ノズルの場合には、ホスホン酸誘導体を簡便に分注ノズルに化学吸着させることができる。そこで、本実施例では、ホスホン酸誘導体を化学吸着させる機構を組み込んだ自動分析装置について説明する。
図14に、本実施例で用いる他の自動分析装置の概略図を示す。図14には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。本実施例に係る自動分析装置の基本的な構成は、図1に示す自動分析装置の構成と同じである。違いは、検体用分注ノズル27の可動範囲内に、第一処理液槽401、第二処理液槽402、分注ノズル洗浄槽403を設ける点である。以下では、この実施例2に特有の構成に関連する機能動作について説明する。
まず、検体用分注ノズル27を第一処理液槽401の位置に回転移動する。この後、検体用分注ノズル27を下降させ、第一処理液に浸漬する。この際の浸漬領域は、分注時に検体用分注ノズル27が検体に浸漬する領域よりも十分に大きくなるように設定する。第一処理液には、ホスホン酸誘導体のTHF溶液を用いる。浸漬する時間は、浸漬頻度に応じて変化する。例えば分注に際し、検体用分注ノズル27を毎回浸漬する場合、浸漬時間は1秒程度で十分である。これに対し、一日の分析終了後に検体用分注ノズル27を浸漬する場合、浸漬時間を24時間程度に設定する。次に、検体用分注ノズル27を第二処理液槽402の位置に回転移動する。この後、検体用分注ノズル27を降下し、第二処理液に浸漬する。この際、浸漬領域は、先の第一処理液に浸漬した領域よりも十分に大きく設定する。第二処理液槽402で用いる溶液には、第一処理液槽401の処理液に溶媒として用いられたTHFを用いる。
以上の第二処理液槽402での動作により、第一処理液槽401で処理した際に余剰に付着したホスホン酸誘導体を除去することができる。この後、分注ノズル洗浄槽403において洗浄し、窒素ブローにより乾燥させた。この時点で、分注ノズルの表面にホスホン酸の被覆が再形成される
この後、これらの処理の終了した分注ノズルを用いて検体を分注することで、タンパク質に代表される生体高分子の吸着及び検体自体の付着を抑制し、分析精度を向上できる。
1…検体収納部機構、2…検体供給用分注機構、3…反応ディスク、4…反応セル、5…試薬ディスク機構、6…試薬容器、7…試薬供給用分注機構、8…撹拌機構、9…恒温槽、10…分光光度計、11…反応セル洗浄機構、12…吸引ノズル、13…洗浄剤容器、15…検体用ピペッタ、16…洗浄水ポンプ、17…試薬用ピペッタ、25…検体容器、26…集光フィルタ付き光源、27…検体用分注ノズル、28…試薬用分注ノズル、29…撹拌棒、101…分注ノズル本体部、102…分注ノズル折り曲げ部、103…分注ノズル中空部、111…分注ノズル本体部、112…ホスホン酸誘導体層、113…分注ノズルの中空部、121…分注ノズル本体部、122…ホスホン酸誘導体層、123…分注ノズルの中空部、131…ステンレススチールの結果、132…ホスホン酸誘導体を固定した結果、141…16-Phosphono-hexadecanoic acidのXPSワイドスキャン測定結果、142…SUS304基板のXPSワイドスキャン測定結果、143…16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のXPSワイドスキャンの測定結果、151…16-Phosphono-hexadecanoic acidのP2pのXPSナロースキャン測定結果、152…SUS304基板のP2pのXPSナロースキャン測定結果、153…16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のP2pのXPSナロースキャン測定結果、161…16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のIRAS測定結果、171…16-Phosphono-hexadecanoic acid分子膜のIRAS測定結果、172…NHS化した分子膜のIRASの測定結果、173…ポリエチレングリコール誘導体を固定化した表面のIRAS測定結果ナロースキャンの結果、180…アミドIの領域の測定結果、181…SUS304基板での測定結果、182…EAでの測定結果、183…PEG2000での測定結果、184…PEG5000での測定結果、191…SUS304基板での測定結果、192…EAでの測定結果、193…PEG2000での測定結果、194…PEG5000での測定結果、200…駆動部、201…駆動部、202…駆動部、401…第一処理液槽、402…第二処理液槽、403…分注ノズル洗浄槽
Claims (12)
- それぞれが検体を収納する複数の検体容器と、
それぞれが試薬を収納する複数の試薬容器と、
検体と試薬が注入される複数の反応セルと、
前記検体容器中の検体を前記反応セルに注入する検体分注機構と
前記試薬容器中の試薬を前記反応セルに注入する試薬分注機構とを有し、
前記検体分注機構は、ホスホン酸誘導体を表面に化学吸着した分注ノズルを備える
ことを特徴とする自動分析装置。 - 請求項1に記載の自動分析装置において、分注ノズル本体部の材質がステンレススチールであることを特徴とする自動分析装置。
- 請求項1に記載の自動分析装置において、分注ノズルの表面に化学吸着したホスホン酸誘導体の末端がポリエチレングリコールであることを特徴とする自動分析装置。
- 請求項1に記載の自動分析装置において、分注ノズルの表面に化学吸着したホスホン酸誘導体の末端がトリフルオロ基又はメチル基であることを特徴とする自動分析装置。
- 請求項1に記載の自動分析装置において、前記分注ノズルの表面粗さRaが15nm以下であることを特徴とする自動分析装置。
- 請求項1に記載の自動分析装置において、前記分注ノズルに対して前記ホスホン酸誘導体を化学吸着させる表面処理を行う機構を備えることを特徴とする自動分析装置。
- ホスホン酸誘導体がノズル基材表面に化学吸着された自動分析装置用分注ノズル。
- 検体容器中の検体を反応セルに注入するために用いられる自動分析装置用分注ノズルの製造方法において、
自動分析装置用分注ノズルの表面をNaOH水溶液及びエタノールで超音波洗浄する工程と、
自動分析装置用分注ノズルの少なくとも一端側をホスホン酸誘導体の溶液に浸漬する工程と
を有することを特徴とする自動分析装置用分注ノズルの製造方法。 - 検体容器中の検体を反応セルに注入するために用いられる自動分析装置用分注ノズルの製造方法において、
自動分析装置用分注ノズルの本体表面を洗浄する工程と、
前記洗浄した本体表面をホスホン酸誘導体の溶液に浸漬し、前記本体表面を前記ホスホン酸誘導体で被覆する工程と、
前記被覆したホスホン酸誘導体の末端の官能基を活性化する工程と、
前記活性化したホスホン酸誘導体末端の官能基に分子を固定する工程と
を有することを特徴とする自動分析装置用分注ノズルの製造方法。 - 請求項9に記載の自動分析装置用分注ノズルの製造方法において、前記ホスホン酸誘導体の活性化させる末端の官能基はカルボン酸であり、活性かされて活性エステルになることを特徴とする自動分析装置用分注ノズルの製造方法。
- 請求項9又は請求項10に記載の自動分析装置用分注ノズルの製造方法において、前記固定される分子はアミノ基を有することを特徴とする自動分析装置用分注ノズルの製造方法。
- それぞれが検体を収納する複数の検体容器と、
それぞれが試薬を収納する複数の試薬容器と、
検体と試薬が注入される複数の反応セルと、
前記検体容器中の検体を前記反応セルに注入する検体分注機構と
前記試薬容器中の試薬を前記反応セルに注入する試薬分注機構とを有し、
前記検体分注機構は、リン酸誘導体が表面に化学吸着した分注ノズルを備えることを特徴とする自動分析装置。
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