JP2012066552A - 樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂成形品においてウェルドラインを目立たなくさせる。
【解決手段】樹脂成形品の製造方法は、着色材料と、着色材料よりも溶融時の粘度が低く且つ着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料とを準備する準備工程と、着色材料及び光透過材料を溶融した状態で成形型に充填する充填工程と、充填した前記着色材料及び光透過材料とを固化させる固化工程とを含んでいる。樹脂成形品1は、着色材料で成形されたメタリック層3と、メタリック層3よりも表層側に設けられ、前記着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料で、メタリック層3と同時に成形されたクリア層4とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂成形品及びその製造方法に関するものである。
従来より、プラスチック等の樹脂で成形された樹脂成形品が知られている。このような樹脂成形品は、一般的には、溶融樹脂を金型内に流し込んだ後に固化させることによって成形される。
このように溶融樹脂を金型に流し込んで固化させる製造方法においては、金型内で溶融樹脂同士の合流が起こると、樹脂成形品にウェルドラインが生じるという問題がある。特に、着色された樹脂の場合、透明な樹脂と比べて、ウェルドラインが目立ってしまい、外観性を損ねてしまう。
それに対して、特許文献1には、ウェルドラインを無くす、樹脂成形品の製造装置が開示されている。具体的には、金型において、溶融樹脂の接合部分に相当する部位に温度調整入子を配設している。そして、金型の当該部位を温度調整入子によって加熱した状態で金型内に溶融樹脂を流し込む。その後、温度調整入子を冷却水によって冷却し、溶融樹脂を固化させる。こうすることによって、樹脂成形品のウェルドラインを無くしている。
特開平07−290540号公報
しかしながら、特許文献1に係る製造装置では、温度調整入子等の金型の温度を調整する機構が必要であるため、製造装置が複雑且つ高価になってしまう。それに加えて、温度調整入子の温度調整のために消費エネルギが大きくなってしまうという問題がある。そこで、ウェルドラインを目立たなくさせるための別の方法が求められる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な手段にて、樹脂成形品においてウェルドラインを目立たなくさせることにある。
本発明は、樹脂成形品の製造方法が対象である。そして、この製造方法は、着色材料と、該着色材料よりも溶融時の粘度(以下、「溶融粘度」という)が低く且つ該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料とを準備する準備工程と、前記着色材料及び光透過材料を溶融した状態で成形型に充填する充填工程と、充填した前記着色材料及び光透過材料を固化させる固化工程とを含むものとする。
前記の製造方法によれば、相対的に溶融粘度の高い着色材料と相対的に溶融粘度の低い光透過材料とが溶融した状態で成形型に充填される。溶融粘度が異なる複数の材料が成形型内に充填されると、溶融粘度が低い材料が表面側に移動し、溶融粘度が高い材料が内方に移動する。つまり、溶融粘度が低い材料である光透過材料が表面側に、溶融粘度が高い材料である着色材料が内方に移動する。その状態で、光透過材料及び着色材料が固化される。その結果、着色材料で構成された着色層と、該着色層よりも表層側に設けられ、光透過材料で構成された光透過層とを備えた樹脂成形品が成形される。
このように成形された樹脂成形品においても、着色層のうち溶融樹脂同士が合流した部分にはウェルドラインが生じ得る。しかし、着色層は光透過層で覆われている。そのため、着色層が最表層として露出している場合と比較して、着色層のウェルドラインの視認性を緩和することができる。一方、光透過層のうち溶融樹脂同士が合流した部分にもウェルドラインが生じ得る。しかし、光透過層は光透過性が高いため、着色層に比べて、ウェルドラインがあまり目立たない。こうして、樹脂成形品全体としてのウェルドラインを目立たなくさせることができる。
そして、金型内においては、キャビティ面に近いほど、金型に熱を吸収されて早く固化し、キャビティ面から離れるほど、遅く固化する。そして、ウェルドラインが発生した際に固化が早いと、はっきりしたウェルドラインが形成されるが、固化が遅いと、合流した樹脂が馴染んでウェルドラインがぼやけていき、目立ちにくくなる。前記の構成では、光透過層の方が早く固化し、着色層の方が遅く固化する。そのため、この点においても、着色層のウェルドラインが目立ち難くなる。
また、別の樹脂成形品の製造方法は、着色材料と、該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料とを準備する準備工程と、射出シリンダに収容した前記着色材料及び光透過材料を、溶融した状態で該射出シリンダの射出口を介して成形型に充填する充填工程と、充填した前記着色材料及び光透過材料とを固化させる固化工程とを含み、前記充填工程では、前記射出シリンダ内において、前記光透過材料を前記着色材料よりも射出口側に配置するものとする。
前記の製造方法によれば、射出シリンダ内において、射出口側に光透過材料が配置され、その後側に着色材料が配置される。この状態で、射出シリンダから成形型へ光透過材料及び着色材料が射出されると、成形型内へ先に射出された樹脂はキャビティ面側に位置し、後に射出された樹脂は先に金型内に存在する樹脂の内方に入り込むようになる。すると、成形型内では、成形品の表面側から内方へ向かって、光透過材料、着色材料がこの順で配列された状態となる。その状態で、光透過材料及び着色材料が固化される。その結果、着色材料で構成された着色層と、該着色層よりも表層側に設けられ、光透過材料で構成された光透過層とを備えた樹脂成形品が成形される。
このように成形された樹脂成形品は、前述の如く、樹脂成形品全体としてのウェルドラインを目立たなくさせることができる。
また、前記着色材料は、光輝材を含み得る。
着色材料に光輝材を含む場合、ウェルドラインに沿って光輝材が配向され得る。その結果、ウェルドラインが目立ってしまう。しかしながら、前述の如く、着色層よりも表層側に光透過層を設けることによって、着色層のウェルドラインを光透過層で目立たなくさせることができる。つまり、前述の製造方法によれば、ウェルドラインが目立ちやすい、着色材料に光輝材を含む樹脂成形品であっても、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。
ここで、前記着色材料の固化速度は、前記光透過材料の固化速度よりも遅いことが好ましい。
この構成によれば、着色材料をゆっくり固化させることができる。固化速度が遅いと、ウェルドラインが発生しても、樹脂が固化するまでの間に、合流した樹脂が馴染んでウェルドラインが少しでも薄くなる。つまり、ウェルドラインが相対的に目立ち易い着色材料の固化速度を遅くすることによって、着色層のウェルドラインを可及的に目立ち難くすることができる。特に、着色材料に光輝材が含まれる場合は、光輝材が成形型内に充填された溶融樹脂の流れに応じてウェルドラインに沿って配列され易い。しかし、ウェルドラインが形成された後、溶融樹脂が固化するまでの時間が長いため、ウェルドラインに沿って配列された光輝材がばらけていく時間を確保することができる。これにより、ウェルドラインがぼやけて、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。特に、光輝材がフレーク状のように薄片状の形状や、楔状、短繊維状等のように長手方向を有する形状の場合には、光輝材がウェルドラインに沿った方向に配向する。すなわち、光輝材が薄片状の場合は、薄片の表面に平行な方向(即ち、薄片の法線方向に直交する方向)がウェルラインに沿うように光輝材が配向する傾向にある。また、長手方向を有する形状の光輝材の場合は、該長手方向がウェルラインに沿うように光輝材が配向する傾向にある。このように、方向性を有する形状の光輝材がウェルドラインに沿って配向すると、ウェルドラインを目立たせてしまう。しかし、ウェルドラインが形成された後、溶融樹脂が固化するまでの時間が長いと、合流した樹脂が馴染むのに伴って、光輝材がランダムな方向を向くようになる。その結果、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。
また、別の本発明は、着色材料で成形された着色層を備える樹脂成形品が対象である。そして、この樹脂成形品は、前記着色層よりも表層側に設けられ、前記着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料で、前記着色層と同時に成形された光透過層をさらに備えているものとする。ここで、「同時に成形」とは、成形型内に充填された着色材料と光透過材料とが何れも溶融しており、その状態で着色層と光透過層とが成形されることを意味する。
前記の構成によれば、前述の如く、着色層が光透過層で覆われている。光透過層は光を透過させるため、着色層を視認できるものの、着色層が最表層として露出している場合と比較して、着色層のウェルドラインの視認性を緩和することができる。一方、光透過層にウェルドラインが生じたとしても、光透過層は光透過性が高いため、ウェルドラインがあまり目立たない。こうして、樹脂成形品全体としてのウェルドラインを目立たなくさせることができる。
また、前記着色材料は、光輝材を含み得る。
このように着色材料に光輝材を含む場合、ウェルドラインに沿って光輝材が配向され得る。その結果、ウェルドラインが目立ってしまう。しかしながら、前述の如く、着色層よりも表層側に光透過層を設けることによって、着色層のウェルドラインを光透過層で目立たなくさせることができる。つまり、ウェルドラインが目立ちやすい、着色材料に光輝材を含む樹脂成形品であっても、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。
本発明に係る製造方法によれば、着色材料で構成された着色層の表層側に、該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料で構成された光透過層を設けた樹脂成形品を成形することができ、その結果、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。
また、本発明に係る樹脂成形品によれば、着色材料で構成された着色層の表層側に、該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料で構成された光透過層を設けることによって、ウェルドラインを目立たせなくさせることができる。
実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。 第1の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図である。 第2の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図である。 第3の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図である。 その他の実施形態に係る樹脂成形品の断面図である。
以下、本発明の例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施形態に係る樹脂成形品の断面図を示す。
樹脂成形品1は、外観性が要求される部材である。例えば、樹脂成形品1は、フォグランプのベゼル等の自動車部品である。樹脂成形品1は、コア層2と、該コア層2の外周を覆うメタリック層3と、該メタリック層3の外周を覆うクリア層4とを備えている。
コア層2は、樹脂成形品1に要求される物性(例えば、強度等)を確保するための層である。すなわち、樹脂成形品1の強度等の物性は、概ね、コア層2の物性によって決まる。コア層2は、所望の物性を有する樹脂で構成されている。例えば、コア層2を構成する樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸を一部添加したアロイ材、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸(SCPLA)、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸を一部添加したポリ乳酸等を採用することができる。
メタリック層3は、樹脂成形品1の外観性を担う層である。メタリック層3は、例えば、母材となる樹脂に顔料を混入させた着色材料で構成されている。また、メタリック層3は、光輝材31を含んでおり、光輝性を有する。光輝材31は、表面に金属が蒸着されたガラスフレークで構成されている。こうして、メタリック層3は、所望の色に発色すると共に、メタリック調の外観をしている。このメタリック層3が、着色層に相当する。例えば、メタリック層3を構成する樹脂としては、ポリ乳酸に顔料及び/又は光輝材を含有させたもの、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸に顔料及び光輝材を含有させたものを採用することができる。
尚、樹脂成形品1に要求される色が、メタリック層3の母材となる樹脂そのものの色の場合には、樹脂そのものが着色材料となり、顔料を省略することができる。光輝材31は、ガラスフレークに限られず、アルミフレーク等で構成してもよい。樹脂成形品1に光輝性が要求されない場合には、光輝材31を省略することができる。図では、光輝材31を識別できるように、光輝材31を実際よりも大きな寸法で描いている。
クリア層4は、樹脂成形品1の最表層を構成している。クリア層4は、メタリック層3と同様に、樹脂成形品1の外観性を担う層である。クリア層4は、メタリック層3の発色性及び光輝性(ただし、メタリック層3が光輝材を含有しない場合には、発色性のみ)を妨げない程度の透明性を有する。すなわち、クリア層4は、光線透過率がメタリック層3に比べて高く設定されている。例えば、クリア層4の光線透過率は、70%以上である。ここで、光線透過率とは、JIS K 7361-1 透明材料の全光線透過率の測定方法に基づいて測定した値である。例えば、クリア層4を構成する樹脂としては、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸、ポリ−L−乳酸(PLLA)を採用することができる。このクリア層4とメタリック層3とを合わせた厚さは、例えば、10μm程度である。
このクリア層4を設けることによって、樹脂成形品1のウェルドラインが目立たなくなる。つまり、メタリック層3は着色層であるため、ウェルドラインが目立つ。特に、メタリック層3が光輝材31を含む場合には、光輝材31がウェルドラインに沿って配向される傾向にあり、ウェルドラインがさらに目立つようになる。そのため、メタリック層3が最表層となる場合には、ウェルドラインによって樹脂成形品1の外観性が損なわれる虞がある。それに対して、メタリック層3の外表面をクリア層4で覆うことによって、メタリック層3のウェルドラインを目立たなくさせることができる。クリア層4の光線透過率が高いためメタリック層3を外側から視認できるものの、メタリック層3が最表層となる場合と比べると、メタリック層3の視認性は低下する。そのため、メタリック層3のウェルドラインの視認性を緩和することができる。このとき、クリア層4は光線透過率が高いため、メタリック層3の発色性や光輝性を確保することができる。また、クリア層4は、ウェルドラインが発生しても、光線透過率が高いため、あまり目立たない。こうして、樹脂成形品1のウェルドラインを目立たなくさせることができる。
続いて、樹脂成形品1の製造方法について説明する。ここでは、3種類の製造方法について説明する。図2は、第1の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図を、図3は、第2の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図を、図4は、第3の製造方法に用いる金型及び射出成形機の概略図を示す。
−第1の製造方法−
第1の製造方法では、金型5と射出成形機6とを用いて樹脂成形品1を射出成形する。
金型5は、第1金型51と第2金型52とを有している。第1金型51と第2金型52との間には、樹脂成形品1の形状に対応した空間が形成される。第1金型51には、射出成形機6から供給される溶融樹脂が注入される注入路51a形成されている。
射出成形機6は、インラインスクリュ式の成形機であって、シリンダ61と、該シリンダ61内へ材料となる樹脂(以下、「材料樹脂」という)を供給するホッパー62と、シリンダ61に供給された材料樹脂を溶融させるヒータ63とを有している。尚、射出成形機6は、スクリュプリプラ式の成形機等、他のタイプの成形機であってもよい。
シリンダ61は、先端には射出口61aが形成されている。シリンダ61の射出口61aは、金型5の注入路51aに接続されている。シリンダ61の後端部には、ホッパー62が設けられている。シリンダ61内には、スクリュ(図示省略)が回転可能に設けられている。ホッパー62は、材料樹脂を投入可能に構成されており、投入された材料樹脂をシリンダ61内へ供給する。シリンダ61における、射出口61aとホッパー62との間の所定の部分には、ヒータ63がシリンダ61の外周を覆うように設けられている。
第1の製造方法では、まず、コア層2を形成する材料樹脂(以下、「コア層用樹脂」という)と、メタリック層3を形成する材料樹脂(以下、「メタリック層用樹脂」という)と、クリア層4を形成する材料樹脂(以下、「クリア層用樹脂」という)とを準備する(準備工程)。
ここで、コア層用樹脂とメタリック層用樹脂とクリア層用樹脂とは、それぞれ異なる樹脂である。具体的には、これらの樹脂は溶融粘度が互いに異なり、コア層用樹脂、メタリック層用樹脂、クリア層用樹脂の順で溶融粘度が低くなっている。例えば、コア層用樹脂として溶融粘度の高いSCPLAを、クリア層用樹脂として溶融粘度の低いSCPLAを、メタリック層用樹脂として、コア層用樹脂とクリア層用樹脂との中間の溶融粘度を有するSCPLAに顔料及び光輝材を含有させたものを採用することができる。別の組み合わせとしては、コア層用樹脂としてSCPLAを、クリア層用樹脂としてPLLAを、メタリック層用樹脂として、コア層用樹脂とクリア層用樹脂との中間の溶融粘度を有するPLAに顔料及び光輝材を含有させたものを採用することができる。ただし、メタリック層用樹脂は、クリア層用樹脂と同じ樹脂を母材として用いてもよい。メタリック層用樹脂は、顔料及び/又は光輝材を含有するため、クリア層用樹脂と同じ樹脂を母材としても用いても、クリア層用樹脂よりも溶融粘度が高くなる。尚、溶融粘度は、MFR(Melt Flow Rate)で判断することができる。例えば、溶融粘度が高いポリ乳酸としては、三井化学株式会社製のLACEA_H-100J(MFR=8[g/10min_190℃])が挙げられ、溶融粘度が低いポリ乳酸としては、NATUREWORKS製のINGEO POKYMER_3001D(MFR=20[g/10min_190℃])が挙げられる。
さらに、これらの樹脂は固化速度が異なり、クリア層用樹脂、メタリック層用樹脂、コア層用樹脂の順で固化速度が遅くなっている。具体的には、これらの樹脂に添加剤を加えることによって固化速度を調整できる。例えば、固化速度を遅くさせる場合には、加水分解抑制剤を添加剤として採用し得る。具体的には、加水分解抑制剤としては、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライトが挙げられる。また、固化速度を速くさせる場合には、結晶化核剤又は結晶化促進核剤を添加剤として採用し得る。具体的には、結晶化核剤としては、新日本理化株式会社製のエヌジェスタが、結晶化促進核剤としては、新日本理化株式会社製のリカフローが挙げられる。
次に、準備したクリア層用樹脂、メタリック層用樹脂及びコア層用樹脂をホッパー62に投入する。ホッパー62に投入された材料樹脂は、ホッパー62からシリンダ61へ供給される。続いて、スクリュを回転させる。すると、シリンダ61へ供給された材料樹脂70は、スクリュの回転によりシリンダ61内を射出口61aへ向かって前進し、その際の摩擦熱及びヒータ63からの熱で溶融していく。そして、溶融し且つ混練された状態のコア層用樹脂、メタリック層用樹脂及びクリア層用樹脂を、シリンダ61の射出口61aから金型5内へ射出する(充填工程)。
前述のように金型5内へ射出されたコア層用樹脂、メタリック層用樹脂及びクリア層用樹脂は、射出直後は混練された状態である。しかし、しだいに粘度が低い樹脂ほど表面側に移動していく。最終的には、コア層用樹脂、メタリック層用樹脂及びクリア層用樹脂は粘度が低い順に、即ち、クリア層用樹脂、メタリック層用樹脂、コア層用樹脂の順で表面側から内方へ向かって並ぶようになる。その状態で、これらの樹脂が固化し、樹脂成形品1が成形される(固化工程)。
このように製造することによって、前述のような、コア層2、メタリック層3、クリア層4が内方から外表面に向かって順に積層された樹脂成形品1ができあがる。つまり、ウェルドラインの目立たない樹脂成形品1を製造することができる。
それに加えて、金型5のキャビティ面5Aに近い層ほど、金型5に吸熱されて早く固化する。具体的には、クリア層4、メタリック層3、コア層2の順に固化していく。それに加えて、樹脂自体の固化速度も、クリア層用樹脂、メタリック層用樹脂、コア層用樹脂の順で固化速度が遅くなっている。この固化速度の大小関係によっても、クリア層4、メタリック層3、コア層2の順に固化していく。ここで、固化速度が遅いと、ウェルドラインが発生しても、ゆっくり固化するため、ウェルドラインがしだいに薄くなっていき、ウェルドラインが目立ち難くなる。つまり、クリア層4のウェルドラインよりもメタリック層3のウェルドラインの方が目立ち難くなる。尚、コア層2は、外側から視認されないため、ウェルドラインを考慮する必要はない。すなわち、コア層2の固化速度が最も遅くなっているが、メタリック層3やクリア層4よりも速くても、遅くてもよい。
さらに、メタリック層3の光輝材31は、ウェルドラインに沿って配列する傾向がある。特に、本実施形態の光輝材31はフレーク状であるため、薄片の表面が広がる方向(即ち、薄片の法線方向に直交する方向)がウェルドラインに沿うように配向する傾向にある。ウェルドラインに沿って光輝材31が配列及び配向すると、ウェルドラインをより目立たせてしまう。しかし、メタリック層3の固化速度が遅いと、ウェルドラインに発生に伴ってウェルドラインに沿って配列及び配向した光輝材31が、しだいにばらけていくと共にランダムな向きを向くようになる。その結果、光輝材31のウェルドラインに沿った配列及び配向が緩和され、ウェルドラインを目立たなくさせることができる。つまり、光輝材31がウェルドラインを目立たせてしまう観点からも、クリア層用樹脂、メタリック層用樹脂の順で固化速度を遅くすることが好ましい。
−第2の製造方法−
第2の製造方法では、金型5と射出成形機206とを用いて樹脂成形品1を射出成形する。金型5は、第1の製造方法で用いたものと同様である。
射出成形機206は、シリンダ261と、該シリンダ261内へ材料樹脂を供給する3つの第1〜第3ホッパー262a,262b,262cと、シリンダ261に供給された材料樹脂を溶融させるヒータ263とを有するインラインスクリュ式の成形機である。3つの第1〜第3ホッパー262a,262b,262cは、シリンダ261の軸方向に沿って先端側から後端側に向かって、この順で配置されている。第1ホッパー262aは、クリア層用樹脂71を供給するためのものであって、シリンダ261の相対的に先端側に位置している。第2ホッパー262bは、メタリック層用樹脂72を供給するためのものであって、シリンダ261の軸方向において第1ホッパー262aと第3ホッパー262cとの間に位置している。第3ホッパー262cは、コア層用樹脂73を供給するためのものであって、シリンダ261の相対的に後端側に位置している。シリンダ261における、第1ホッパー262aよりも先端側の位置に、ヒータ263が設けられている。このシリンダ261が射出シリンダを構成する。
第2の製造方法においては、3種類の樹脂は固化速度が異なり、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73の順で固化速度が速くなっている。尚、溶融粘度については、第1の製造方法のような順になっている必要はない。
第2の製造方法においては、まず、前記クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72及びコア層用樹脂73を準備する(準備工程)。次に、これらクリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72及びコア層用樹脂73を、射出成形機206の第1〜第3ホッパー262a,262b,262cにそれぞれ投入する。すると、第1〜第3ホッパー262a,262b,262cからシリンダ261内へ材料樹脂が供給され、シリンダ261内では、先端側から後端側に向かって、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73が順に配列される。これらの材料樹脂は、所定量がシリンダ261へ供給されると、その供給を停止する。この状態でシリンダ261内のスクリュが回転される。3種類の樹脂は、その配列を保ったまま、前進しつつ溶融される。こうして、溶融した樹脂を、射出口261aから金型5内へ射出し、金型5に樹脂を充填する(充填工程)。
このとき、3種類の樹脂は、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73の順で金型5内へ射出される。すると、金型5内へ先に射出された樹脂ほど表面側に位置し、後に射出された樹脂は先に存在する樹脂の内方に入り込むようになる。すなわち、金型5内では、表面側から内方へ向かって、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73がこの順で配列された状態となる。
そして、その状態で樹脂が固化して樹脂成形品1が成形される(固化工程)。すなわち、クリア層用樹脂71はクリア層4となり、メタリック層用樹脂72はメタリック層3となり、コア層用樹脂73はコア層2となる。こうして、コア層2、メタリック層3、クリア層4が内方から外表面に向かって順に積層された樹脂成形品1が成形される。
このとき、金型51のキャビティ面5Aに近い樹脂ほど早く固化していく。それに加えて、メタリック層用樹脂72の固化速度がクリア層用樹脂71の固化速度よりも遅く設定されているため、金型5のキャビティ面5Aからの距離以上に、メタリック層用樹脂72の方がクリア層用樹脂71よりも遅く固化する。その結果、メタリック層3のウェルドラインの方がクリア層4のウェルドラインよりもぼやけた状態となり、より目立たなくなる。ただし、クリア層4は、そもそもウェルドラインが目立ち難いため、ウェルドラインがはっきりしていたとしても、外観性に与える影響は小さい。さらに、メタリック層用樹脂72の固化速度を遅くすることによって、ウェルドラインに沿って配列及び配向した光輝材31をばらけさせ且つランダムな方向を向かせることができる。つまり、光輝材31によってウェルドラインが目立つことを防止することができる。
こうして、ウェルドラインが目立ち難いクリア層4で外表面が覆われ、且つ、クリア層4よりもメタリック層3のウェルドラインがぼやけており、且つ、ウェルドラインに沿った光輝材31の配列及び配向が緩和された樹脂成形品1を製造することができる。
−第3の製造方法−
第3の製造方法では、金型5と射出成形機306とを用いて樹脂成形品1を射出成形する。金型5は、第1の製造方法で用いたものと同様である。
射出成形機306は、3種類の材料樹脂ごとに設けられた3つの第1〜第3可塑化装置361,362,363と、該第1〜第3可塑化装置361,362,363が連結された1つのプランジャ装置364とを有している。射出成形機306は、所謂、スクリュプリプラ式の成形機である。
プランジャ装置364は、シリンダ364aと、シリンダ364a内に進退可能に設けられたプランジャ364bとを有している。シリンダ364aの先端には射出口364cが形成されている。シリンダ364aの射出口364cは、金型5の注入路51aに接続されている。このシリンダ364aが射出シリンダを構成する。
第1〜第3可塑化装置361,362,363のそれぞれは、シリンダ361a,362a,363aと、該シリンダ361a,362a,363a内に回転可能に設けられたスクリュ(図示省略)と、該シリンダに材料樹脂を供給するためのホッパー(図示省略)と、該シリンダの外周面に設けられたヒータ(図示省略)とを有している。シリンダ361a,362a,363aの先端は、プランジャ装置364のシリンダ364aに接続されている。第1〜第3可塑化装置361a,361b,361cは、シリンダ364aの軸方向に沿って先端側から後端側に向かって、この順で配置されている。詳しくは、第1可塑化装置361は、クリア層用樹脂71を供給するためのものであって、シリンダ364aの相対的に先端側に位置している。第2可塑化装置362は、メタリック層用樹脂72を供給するためのものであって、シリンダ364aの軸方向において第1可塑化装置361と第3可塑化装置363との間に位置している。第3可塑化装置363は、コア層用樹脂73を供給するためのものであって、シリンダ364aの相対的に後端側に位置している。
第3の製造方法においては、3種類の樹脂は固化速度が異なり、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73の順で固化速度が速くなっている。尚、溶融粘度については、第1の製造方法のような順にはなっていない。
第3の製造方法においては、まず、前記クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72及びコア層用樹脂73を準備する(準備工程)。次に、これらクリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72及びコア層用樹脂73を、射出成形機306の第1可塑化装置361、第2可塑化装置362及び第3可塑化装置363に投入する。そして、第1可塑化装置361、第2可塑化装置362、第3可塑化装置363の順に、プランジャ装置364へ樹脂を供給する。詳しくは、まず、プランジャ装置364において、プランジャ364bをシリンダ364a内の先端部に位置させる。こうして、シリンダ364a内には、プランジャ364bよりも先端側に射出室が形成される。次に、溶融したクリア層用樹脂71を第1可塑化装置361からこの射出室へ供給する。その結果、供給される樹脂の圧力によりプランジャ364bが後退するのに伴って射出室が拡大される。こうして、射出室内に溶融したクリア層用樹脂71が充填されていく。プランジャ364bの先端が第2可塑化装置362の位置まで後退すると、第1可塑化装置361からの樹脂の供給が停止され、第2可塑化装置362からのメタリック層用樹脂72の供給が開始される。すると、供給される樹脂の圧力によりプランジャ364bが後退し、それに伴って、充填されたクリア層用樹脂71の後側において射出室が拡大される。この空間にメタリック層用樹脂72が充填され、プランジャ364bをさらに後退させる。やがて、プランジャ364bの先端が第3可塑化装置363の位置まで後退すると、第2可塑化装置362からの樹脂の供給が停止され、第3可塑化装置363からのコア層用樹脂73の供給が開始される。その結果、供給される樹脂の圧力によるプランジャ364bの後退に伴って、メタリック層用樹脂72の後側にコア層用樹脂73が充填されていく。こうして、シリンダ364a内には先端側から後端側に向かって、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73がこの順で且つ溶融した状態で充填される。その後、プランジャ364bをシリンダ364aの先端に向かって押圧する。これにより、シリンダ364aの先端から金型5内へ、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73がこの順で射出され、金型5内が樹脂で充填される(充填工程)。
金型5内へ射出された樹脂は、第2の製造方法と同様の挙動を示す。すなわち、先に射出された樹脂ほど表面側に位置し、後に射出された樹脂は先に存在する樹脂の内方に入り込むようになる。その結果、金型5内では、表面側から内方へ向かって、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73がこの順で配列された状態となる。そして、その状態で樹脂が固化して樹脂成形品1が成形される(固化工程)。
こうして、第2の製造方法と同様に、ウェルドラインが目立ち難いクリア層4で外表面が覆われ、且つ、クリア層4よりもメタリック層3のウェルドラインがぼやけており、且つ、ウェルドラインに沿った光輝材31の配列及び配向が緩和された樹脂成形品1を製造することができる。
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態によれば、樹脂成形品1において、メタリック層3の表層側に、メタリック層3よりも光線透過率が高い光透過材料で構成されたクリア層4を設けることによって、メタリック層3のウェルドラインをクリア層4で覆って目立たなくさせると共にクリア層4自体のウェルドラインも目立たないため、樹脂成形品1全体としてのウェルドラインを目立たなくさせることができる。こうして、樹脂成形品1の外観性を向上させることができる。
また、クリア層4は、光線透過率が高いため、メタリック層3の発色性や光輝性を確保することができる。
さらに、メタリック層3は、単なる着色層ではなく、光輝材31を含む層であって、ウェルドラインが目立ちやすい。つまり、光輝材31が含有されたメタリック層3を備えた樹脂成形品1にとっては、前述の如く、メタリック層3の表層側にクリア層4を設ける構成が特に有効である。
また、樹脂成形品1は、光輝材31として、アルミフレークではなく、ガラスフレークを用いることによって、光輝性を向上させることができる。さらに、ガラスフレークの表面に金属を蒸着させることによって、光輝性をさらに向上させることができる。
また、前記第1の製造方法によれば、溶融粘度を、コア層用樹脂、メタリック層用樹脂、クリア層用樹脂の順に低くすることによって、コア層用樹脂、メタリック層用樹脂及びクリア層用樹脂を一緒に溶融して金型5内に射出した場合であっても、溶融粘度が低いクリア層樹脂を表層側に、溶融粘度が高いコア層用樹脂を内方に配置させることができる。つまり、クリア層4、メタリック層3、コア層2がこの順で表層側から内方に向かって配列された樹脂成形品1を容易に成形することができる。
また、前記第2の製造方法によれば、シリンダ261内に、先端側から順に、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73を配置し、これらの樹脂をこの順で金型5内に射出することによって、金型5内では、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73を表面側から内方へ向かってこの順で配列させることができる。つまり、クリア層4、メタリック層3、コア層2がこの順で表層側から内方に向かって配列された樹脂成形品1を容易に成形することができる。
さらに、前記第3の製造方法によれば、シリンダ364a内に、先端側から順に、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73を配置し、これらの樹脂をこの順で金型5内に射出することによって、金型5内では、クリア層用樹脂71、メタリック層用樹脂72、コア層用樹脂73を表面側から内方へ向かってこの順で配列させることができる。つまり、クリア層4、メタリック層3、コア層2がこの順で表層側から内方に向かって配列された樹脂成形品1を容易に成形することができる。
また、樹脂材料としてポリ乳酸を用い、比較的高温で樹脂材料の固化を実施することによって、高結晶化させて剛性を高めることができる。それに加えて、金型5の冷却量を低減又は冷却を不要とすることができるため、成形時の消費エネルギを抑制することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
前記樹脂成形品1は、3層構造となっているが、これに限られるものではない。つまり、樹脂成形品1は、着色層となる層と、その外側に位置する光透過層とを備える限り、任意の構成を採用することができる。例えば、前記コア層2を省略して、図5に示すように、メタリック層3とクリア層4とで構成された樹脂成形品201であってもよい。かかる場合、メタリック層3は、発色性や光輝性等の外観性だけでなく、樹脂成形品201に求められる物性(例えば、強度等)も要求される。
尚、前記実施形態における具体的な物質は、例示であり、それらに限られるものではない。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、着色層を備える樹脂成形品及びその製造方法について有用である。
1 樹脂成形品
3 メタリック層(着色層)
31 光輝材
4 クリア層(光透過層)
261 シリンダ(射出シリンダ)
364a シリンダ(射出シリンダ)

Claims (6)

  1. 樹脂成形品の製造方法であって、
    着色材料と、該着色材料よりも溶融時の粘度が低く且つ該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料とを準備する準備工程と、
    前記着色材料及び光透過材料を溶融した状態で成形型に充填する充填工程と、
    充填した前記着色材料及び光透過材料を固化させる固化工程とを含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  2. 樹脂成形品の製造方法であって、
    着色材料と、該着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料とを準備する準備工程と、
    射出シリンダに収容した前記着色材料及び光透過材料を、溶融した状態で該射出シリンダの射出口を介して成形型に充填する充填工程と、
    充填した前記着色材料及び光透過材料とを固化させる固化工程とを含み、
    前記充填工程では、前記射出シリンダ内において、前記光透過材料を前記着色材料よりも射出口側に配置することを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の樹脂成形品の製造方法において、
    前記着色材料は、光輝材を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  4. 請求項1乃至3の何れか1つに記載の樹脂成形品の製造方法において、
    前記着色材料の固化速度は、前記光透過材料の固化速度よりも遅いことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
  5. 着色材料で成形された着色層を備える樹脂成形品であって、
    前記着色層よりも表層側に設けられ、前記着色材料よりも光線透過率が高い光透過材料で、前記着色層と同時に成形された光透過層をさらに備えることを特徴とする樹脂成形品。
  6. 請求項5に記載の樹脂成形品において、
    前記着色材料は、光輝材を含むことを特徴とする樹脂成形品。
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