JP2012066137A - 被酸化性シート及び被酸化性物品 - Google Patents

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Abstract

【課題】被酸化性抄造体に含まれる成分の偏りがなく均一な特性を得ることができるとともに、酸化反応の効率を高めることができ、酸化反応終了後においても充分な柔軟性を維持することができる被酸化性シートを提供すること。
【解決手段】本発明の被酸化性シートは、被酸化性シート2の中間シートに、酸化助剤となる電解質を含んでいる。中間シートは、被酸化性シート被酸化性金属及び繊維状物を含み且つ酸化助剤となる電解質を含まない被酸化性抄造体21と、基材シート22とが接合されて一体化されており、被酸化性抄造体21が複数のセグメントに区分けされている。基材シート22は、繊維シートからなることが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気中の酸素と反応して酸化する被酸化性物品、並びに被酸化性シート及びその中間シート、被酸化性のセグメントシート及びその中間セグメントシートに関する。
鉄粉等の被酸化性金属の酸化反応で発生する熱を利用したいわゆる使い捨てカイロとして使用される粉粒状型発熱体が種々知られている(特許文献1参照)。また、被酸化性金属等の発熱成分を抄紙によりシート化した発熱体も知られている(特許文献2参照)。
特許文献1に開示されている発熱袋のように、使い捨てカイロとして使用される粉粒状型発熱体は、被加熱体(人体等)に密着して使用するため、酸化に使用するための酸素の主たる取り入れ面は、被加熱体の反対側であることが多い。該粉粒状型発熱体は、酸化反応が進行するにつれて、発熱体中の被酸化性金属表面に酸化皮膜が成長し、それが、未酸化の被酸化性金属の酸化反応を阻害し、その結果、発熱体中に未酸化反応の金属が存在したまま、発熱が終了していた。さらに、該粉粒状型発熱体は、被酸化性金属と保水剤、電解質等がその比重の大きさの相異で、輸送中の振動等で均一に発熱体に分布されておらず、そのことも発熱性能を低下させる原因となっていた。特許文献2の抄紙シートタイプの発熱体は、上記の粉粒状型発熱体と比較して、被酸化性金属と保水剤、電解質等が均一に分散しているため、発熱性能は向上しているが、発熱体中に未酸化反応の金属がある程度存在したまま、発熱が終了していた。
実公昭56−34735号公報 特開2004−202198号公報
本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る被酸化性物品、並びに被酸化性シート及びその中間シート、被酸化性セグメントシート及びその中間セグメントシートを提供することにある。
本発明は、被酸化性金属及び繊維状物を含み且つ酸化助剤となる電解質を含まない被酸化性抄造体と、基材シートとが接合されて一体化されている被酸化性シートの中間シートであって、前記被酸化性抄造体が複数のセグメントに区分けされている被酸化性シートの中間シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
また、本発明は、上記本発明の被酸化性シートの中間シートに、酸化助剤となる電解質を含んでいる被酸化性シートを提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の被酸化性シートが、通気性を有する収容体に収容されている被酸化性物品を提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の被酸化性シートに、前記被酸化性抄造体を覆うように通気性の被覆シートが接合されている被酸化性物品を提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の被酸化性シートの中間シートが、前記セグメント単位で前記基材シートで分割されてなる中間セグメントシートを提供するものである。
また、本発明は、上記本発明の被酸化性シートが、前記セグメント単位で前記基材シートで分割されてなるセグメントシートを提供するものである。
本発明によれば、被酸化性抄造体と、基材シートとが一体化されているので、被酸化性シートの中間シートを輸送する際に被酸化性抄造体の脱落がなく、該中間シートをロールに巻き取ることもでき、ハンドリング性が向上する。また、酸化助剤となる電解液を該中間シートに含浸させて被酸化性シートとする場合に、基材シートが液浸透性を有する場合には、該基材シート全体に電解液が行き渡り、該基材シートと一体化されている被酸化性抄造体全体に均一に電解液を供給することができ、従って被酸化性シート全体を均一に酸化反応させることができる。また、被酸化性抄造体が複数のセグメントに区分けされており、セグメント周囲からも酸素を供給することができるので、被酸化性抄造体に含まれている被酸化性金属が未反応のまま残留する量を低減できるほか、酸化反応終了後においても、充分な柔軟性を維持することができる。
図1は、本発明の被酸化性物品の第1実施形態を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。 図2は、第1実施形態の被酸化性物品の要部を示す模式図であり、(a)は部分断面図、(b)は被覆層をセグメントの単位で基材シートで分離したセグメントシートである。 図3は、被酸化性シートの中間シートの製造工程を装置とともに断面図で示した模式図である。 図4は、第2実施形態の被酸化性物品の要部を示す模式図(図2(a)相当図)である。 図5は、本発明のセグメントシートの一実施形態を断面で示した模式図である。 図6は、実施例1〜3の温度特性を示すグラフである。 図7は、比較例1〜3の温度特性を示すグラフである。 図8は、実施例1で作製した試験体を縦方向に切断した時の切断面の拡大写真である。 図9は、実施例4と比較例4の温度分布測定結果を示すサーモグラフィ写真である。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1及び2は、本発明の第1実施形態の被酸化性物品を示したものである。これらの図において、符号1は被酸化性物品を示している。
図1及び2に示すように、本実施形態の被酸化性物品1は、被酸化性シート2が、通気性を有する収容体3に収容されている。
被酸化性シート2は、被酸化性抄造体21と、繊維シートからなる基材シート22とが接合されて一体化されている。被酸化性抄造体21は、複数のセグメント21Aが目地21Bによって区分けされている。目地21Bは通常では基材シート22の表面で構成されるが、本願発明の効果が奏される範囲ならば、目地21Bに被酸化性抄造体が多少はみ出していたり、点在していても良い。また、着色された繊維シート等の別の物が目地上に存在していても良い。ここで、被酸化性抄造体21と基材シート22とが接合されて一体化されているとは、これらの被酸化性抄造体及び基材シートの形態によって一体化の形態は異なるが、本実施形態のように、基材シートが繊維シートである場合には、被酸化性抄造体に含まれる繊維状物と該繊維シートを構成する繊維とが交絡している形態、該繊維状物と該繊維とが水素結合によって結合している形態、被酸化性抄造体及び基材シート何れかの内部或いは被酸化性抄造体及び基材シートの接する面にバインダーを配した場合において該バインダーを介して被酸化性抄造体及び基材シートが接合している形態をいう。被酸化性抄造体及び基材シートが一体化されているということは、具体的には、後述の実施例に記載の手法(振動試験による一体化評価)によって、判断することができる。なお、本明細書において、抄造体とは後述のように、抄紙によって製造された物体をいう。
セグメント21Aの形態は、本実施形態のような平面視して矩形の形態に限られず、被酸化性シートの形態等に応じて任意に設定することができる。一つのセグメント21Aの面積は、セグメントの周囲からの酸素供給と発熱効率との相関等を考慮すると1〜2500mm2が好ましく、4〜900mm2がより好ましい。また、セグメント21Aの代表長さは1〜50mmが好ましく、2〜30がより好ましい。ここで、代表長さとは、セグメント21Aの形態が、本実施形態のような平面視して矩形の場合には、1辺の長さのことであり、平面視して円形状の場合には直径のことを指す。その他の形状の場合(多角形等)には円相当直径(セグメント21Aの投影面積と同じ面積を持つ円の直径)を代表長さとする。また、隣り合うセグメント同士の間隔(目地の幅)は、隣り合うセグメントから発する熱量ならびに、商品とした際の柔軟性・屈曲性を考慮すると0.5〜50mmが好ましく、1〜20mmがより好ましい。
被酸化性抄造体21の厚みは、酸化性能(発熱体として使用する場合には発熱量等、脱酸素剤とて使用する場合には脱酸素量等)を考慮すると0.01〜10mmが好ましく、0.1〜5mmがより好ましい。ここで、被酸化性抄造体21の厚みとは、一体化された被酸化性抄造体と基材シートとを合わせた厚みから、一体化する前の基材シートの厚みを差し引いた値をいう。該厚みは、JIS P8118に準じ、各部分の5点以上を測定し、その平均値を算出することによって測定される。
被酸化性シート2は、被酸化性抄造体21に、被酸化性金属及び繊維状物含み、酸化助剤となる電解質を実質的に含まない中間シートに、電解質を含ませたものである。ここで、酸化助剤となる電解質を実質的に含まないとは、酸化助剤となる電解質、即ち、空気中の酸素によって被酸化性金属の酸化反応を進行させる含有量で電解質を含まないことをいう。よって該酸化反応を進行させない範囲で電解質を含んでいても良く、或いは、該酸化反応に全く関与しない電解質を含んでいてもよい。
なお後述のように、電解質は電解液の場合に、被酸化性シートの中間シートに含浸やスプレー等により供給し易い点で好ましいが、電解質が固体であってもよい。固体の場合には、前記中間シート上に散布した後に、電解質を溶解させることができる溶媒を後からスプレー等すれば良い。
被酸化性抄造体21に含まれる被酸化性金属としては、酸化反応熱を発する金属を特に制限無く用いることができる。該被酸化性金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、亜鉛等が挙げられる。この中でも、酸化反応の制御のしやすさやコスト等の点から鉄粉を使用するのが望ましい。よって以下においては、被酸化性金属として鉄粉を用いた実施形態に基づいて説明する。
本実施形態において用いる鉄粉の粒径(以下、本明細書において、粒径というときには、粉体の形態における最大長さ、又は動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される平均粒径をいう。)は、0.1〜300μmが好ましく、1〜150μmがより好ましい。鉄粉の粒径が斯かる範囲であると、鉄粉の酸化反応が効率的に行われるため好ましい。また、被酸化性抄造体に後述の繊維状物を含ませる場合には、当該繊維状物への定着性、反応のコントロールが良好なことから、用いる鉄粉は、粒径が好ましくは0.1〜300μm、より好ましくは0.1〜150μmのものを50質量%以上含有するものを用いることが好ましい。
被酸化性抄造体21中の前記鉄粉の含有量は、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。該鉄粉の含有量が斯かる範囲であると、得られる被酸化性シートの発熱温度を、所望の温度に上昇させることができる。また、繊維状物、後述する接着成分(凝集剤等)の量を抑えることができるため、被酸化性抄造体の通気性が十分なものとなり、その結果被酸化性抄造体の内部まで十分に反応が起こり発熱温度を十分に上昇させることができる。また、発熱時間を十分な長さにできるほか、後述の保水剤による水分供給も十分なものとすることができ、鉄粉の脱落も生じ難い。また、被酸化性抄造体を構成する後述の繊維状物、後述する接着成分をある程度の量に維持することができるため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度を十分なものとすることができる。ここで、被酸化性抄造体中の鉄粉の含有量は、JIS P8128に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。他に外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
被酸化性抄造体21中の前記繊維状物の含有量は、1〜50質量%であることが好まし

く、3〜40質量%であることがより好ましい。該繊維状物の含有量が斯かる範囲であると、鉄粉、保水剤等の成分の脱落を十分に防止できる。また、被酸化性抄造体の発熱量に対する熱容量を抑えることができ、温度上昇を十分なものとすることができるほか、得られる被酸化性抄造体中の該成分の比率をある程度以上に確保できるため、所望の発熱性能を十分に得ることができるので好ましい。
前記繊維状物は、そのカナディアン・スタンダード・フリーネス(Canadian Standard Freeness:CSF)が、600ml以下であることが好ましく、450ml以下であることがより好ましい。600ml以下であると繊維状物と前記鉄粉、後述する保水剤等の成分との定着性も十分に良好であり、所定の配合量を保持でき発熱性能を十分に発揮させることができる。また、均一な厚みのシートが得られ、繊維状物と該成分との定着が良好となり、該成分の脱落がし難く、該成分と該繊維状物との絡み合いや水素結合に由来する結合強度を持たせることができる。また、曲げ強度や引張強度等の機械的強度も十分なものとすることができ、加工性も良好である。
前記繊維状物のCSFは、低い程好ましいが、通常のパルプ繊維のみの抄紙では、繊維状物以外の成分比率が低い場合、CSFが100ml以上であると濾水性が十分に良好であり、脱水も十分に行うことができ均一な厚みの被酸化性抄造体が得られ、乾燥時にブリスター破れが生じず成形性も良好となる。本発明においては、繊維状物以外の成分比率が高いことから、濾水性も良好で均一な厚みの被酸化性抄造体を得ることができる。また、CSFが低い程、フィブリルが多くなるため、繊維状物と該繊維状物以外の成分との定着性が良好となり、高いシート強度を得ることができる。
繊維状物のCSFの調整は、叩解処理などによって行うことができる。CSFの低い繊維と高い繊維とを混ぜ合わせ、CSFの調整を行っても良い。なお、CSFはJIS P8121(パルプのろ水度試験方法)に示す方法で測定することにより得ることができ、0以上の値を示す繊維状物の水切れの程度を表す指標である。
前記繊維状物は、そのゼータ電位がマイナス(負)であることが好ましい。ここで、ゼータ電位とは、荷電粒子界面と溶液間のずり面におけるみかけの電位をいい、流動電位法、電気泳動法等により測定される。そのゼータ電位がマイナスであると、繊維状物への前記鉄粉、後述する保水剤等の成分の定着が良好であり、所定の配合量を保持できて発熱性能が優れたものとなるほか、排水に多量の該成分が混じることを抑えることができ、生産性、環境保全にも悪影響を及ぼすことがない。
前記繊維状物には、平均繊維長が0.1〜50mmのものを用いることが好ましく、0.2〜20mmのものを用いることがより好ましい。該平均繊維長を斯かる範囲とすることで、得られる発熱抄造体の曲げ強度や引張強度等の機械的強度が十分に確保できるほか、繊維状物の層が密になりすぎず被酸化性抄造体の通気性が良好となり、酸素供給が良好で発熱性に優れるものとなる。また、被酸化性抄造体中に該繊維状物を均一に分散できるため、一様な機械的強度が得られるほか、均一な肉厚の被酸化性抄造体が得られる。また、繊維間隔が広くなりすぎず、繊維による前記鉄粉、後述する保水剤等の成分の保持能力が維持されて該成分が脱落し難くなる。
前記繊維状物としては、例えば、天然繊維状物としては植物繊維(コットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等)、動物繊維(羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等)、鉱物繊維(セピオライト、ワラストナイト、ロックウール等)が挙げられ、合成繊維状物としては、例えば、半合成繊維(アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等)、金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、デンプン、ポリビニルアルコール若しくはポリ酢酸ビニル又はこれらの共重合体若しくは変性体等の単繊維、又はこれらの樹脂成分を鞘部に有する芯鞘構造の複合繊維を用いることができる。そしてこれらの中でも、繊維どうしの接着強度が高く、繊維どうしの融着による三次元の網目構造を作り易すく、パルプ繊維の発火点よりも融点が低い点からポリオレフィン、変性ポリエステルが好ましく用いられる。また、枝分かれを有するポリオレフィン等の合成繊維も鉄粉や保水剤との定着性が良好なことから好ましく用いられる。これらの繊維は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの繊維は、その回収再利用品を用いることもできる。そして、これらの中でも、鉄粉や保水剤の定着性、空隙の存在からくる酸素透過性、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットンが好ましく用いられる。
被酸化性抄造体21中の前記酸化助剤となる電解質の含有量は、被酸化性抄造体中の対水質量比で0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましい。該電解質の含有量が斯かる範囲であると、得られる被酸化性抄造体の酸化反応を十分に進行させることができるため好ましい。また、電解質の析出も起こり難く、被酸化性抄造体の通気性が良好であり、酸化性能に必要な電解質を確保することができ、十分な水が鉄粉等に供給され、酸化性能に優れ、被酸化性抄造体に均一に電解質を配合することができるので好ましい。
前記電解質には、従来から発熱体に通常用いられている電解質を特に制限なく用いることができる。該電解質としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属若しくは重金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。そしてこれらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点から塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、第1塩化鉄、第2塩化鉄等の各種塩化物が好ましく用いられる。これらの電解質は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
被酸化性抄造体21には、保水剤を含ませることができる。被酸化性抄造体中の保水剤の含有量は、1〜60質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましい。斯かる範囲内であると、酸化反応を持続させるために必要な水分を被酸化性抄造体中に蓄積できる。また、被酸化性抄造体の通気性が十分に確保されるため、酸素供給が十分に得られて発熱効率が高い被酸化性抄造体となる。また、得られる発熱量に対する被酸化性抄造体の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、所望の温度上昇が得られる。また、被酸化性抄造体からの、保水剤の脱落の発生や繊維状物、後述する接着成分の減少が抑えられるため、曲げ強度や引張強度等の機械的強度も十分に得られる。
前記保水剤には、従来から発熱体に通常用いられている保水剤を特に制限無く用いることができる。例えば、吸水ポリマー、木粉等が挙げられる。また、該保水剤は、水分保持剤として働く他に、鉄粉への酸素保持/供給剤としての機能も有しているものもある。該保水剤としては、例えば、活性炭(椰子殻炭、木炭粉、暦青炭、泥炭、亜炭)、カーボンブラック、アセチレンブラック、黒鉛、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、シリカ、カンクリナイト、フローライト等が挙げられ、これらの中でも保水能、酸素供給能、触媒能を有する点から活性炭が好ましく用いられる。該保水剤には、鉄粉との有効な接触状態を形成できる点から粒径が0.1〜500μmの粉体状のものを用いることが好ましく、0.1〜200μmのものを50質量%以上含有するものを用いることがより好ましい。保水剤には、上述のような粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、活性炭繊維等の繊維状の形態のものを用いることもできる。
被酸化性抄造体21の含水率(質量含水率、以下同じ。)は、5〜80%であることが好ましく、10〜60%であることがより好ましい。該含水率が斯かる範囲であると、酸化反応を持続するために必要な水分が十分に確保でき、酸化反応が途中で終了してしまうことを抑えることができるほか、被酸化性抄造体に均一に水分を供給することができるため、均一な発熱性能を得ることができる。該含水率が80%以下であると得られる被酸化性抄造体の発熱量に対する熱容量を低く抑えることができ、発熱温度を十分に上昇させることができるほか、被酸化性抄造体の通気性が十分に得られるため、発熱性能に優れるとともに、保形性や機械的強度も十分に得られる。
被酸化性抄造体21に含ませる成分は、被酸化性金属、保水剤、水分、及び酸化助剤となる電解質に限定されず他の組成物が添加されてもよい。例えば、被酸化性抄造体には、後述するように凝集剤が添加されていることが好ましい。
また、被酸化性抄造体21には、必要に応じ、基材シート22と一体化するためのバインダー、サイズ剤、着色剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等の抄紙の際に通常用いられる添加物を特に制限無く添加することができる。該添加物の添加量は、添加する添加物に応じて適宜設定することができる。
基材シート22は、繊維シートからなり、その材質に特に制限はないが、被酸化性抄造体との一体化を考慮すると、基材シートとして好ましい繊維シートとしては、被酸化性抄造体中の繊維との交絡の観点から、木材パルプやコットン等の天然繊維、アセテート、トリアセテート、レーヨン等の半合成繊維、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等の合成繊維等を用いて湿式抄紙によって得られる紙や、乾式もしくは湿式により製造される不織布等が挙げられる。また、水素結合による被酸化性抄造体との一体化の観点から、木材パルプやコットン等の天然繊維、アセテート、トリアセテート、レーヨン等の半合成繊維を用いた紙、不織布等が挙げられる。また、基材シート22は、セグメント分けされた被酸化性抄造体に電解液を均一に分散供給させる観点から、液浸透性を有することが好ましい。この場合には、上記の各繊維シートを用いることができる他、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂からなるシートに機械的に孔を形成させたもの、前記樹脂と酸化チタン等の無機フィラーとの混合シートを延伸により界面剥離させ微孔を設けたもの、発泡成形による連続気泡を利用し微孔を連通させたもの等も用いることができる。
前記収容体3は、通気性を有していれば、その材質に特に制限はないが、被酸化性シート2からの成分の脱落防止、酸化反応速度や発熱温度のコントロール等を考慮すると、好ましい収容体の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂からなるシートに機械的に孔を形成させたもの、前記樹脂と酸化チタン等の無機フィラーとの混合シートを延伸により界面剥離させ微孔を設けたもの、発泡成形による連続気泡を利用し微孔を連通させたもの等が挙げられる。また、ポリオレフィン等の合成パルプ、木材パルプ、非木材パルプ、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維等から形成された不織布、織布、合成紙、紙等が挙げられる。また、収容体3は、酸化反応に必要な酸素の供給、または商品設計において蒸気の発生が必要な場合等を考慮すると、透気度の好ましい範囲は商品仕ようによって広くなるが、0.01〜50000秒が好ましく、1〜20000秒がより好ましい。ここで透気度とは、JIS P 8117 「紙及び板紙の透気度試験方法」で規定する通気性の程度のことである。
収容体3は、被酸化性シート2をその成分の脱落を防いで収容でき、酸化反応に必要な酸素を取り込める形態であれば、その形態に特に制限はない。収容体3の形態としては、

本実施形態のような、二枚のシート31、32を被酸化性シート2の上下に重ね合わせ、その周縁部を接合した形態が挙げられる。
次に、被酸化性物品1の製造方法について説明する。
被酸化性物品1は、被酸化性シート2を作製し、これを収容体3に収容して封止することによって、製造される。
被酸化性シート2は、例えば、手漉きの湿式抄造装置によって湿潤状態の中間シートを製造し、該中間シートを乾燥させた後に、前記酸化助剤となる電解質を含ませて製造することができる。
図3は、中間シートの抄造工程を模式的に示したものであり、湿式抄造装置11の吸引排出ボックス12の上面に支持ネット13を配置し、支持ネット13の上に基材シート22を配置する。この場合、基材シート22は抄紙できる程度の通水性があるものを使用する(前述の各繊維シートを使用することができる)。そして、その上に、被酸化性抄造体21の複数のセグメント21Aに対応したパターンの複数の貫通孔140を有する仕切り14を設置した後、仕切り14の外側に外枠15を配置する。また、吸引排出ボックス12の吸引排出口120付近には真空ポンプやブロワー等の吸引装置(図示しない)を配置する。
次に、外枠15内に、被酸化性抄造体21の構成成分である、前記鉄粉、前記繊維状物を含み、前記酸化助剤となる前記電解質を含まない原料組成物(スラリー)210(必要に応じて、上記保水剤、上記添加物を含ませたもの)を注ぎ入れ、吸引排出ボックス12の吸引排出口120から排出成分を前記吸引装置にて排出し、基材シート22の上に前記電解質を含まない被酸化性抄造体21の複数のセグメント21Aを抄造によって積層させて湿潤状態の中間シート20を製造する。なお、前記吸引装置を使用する理由は、被酸化性抄造体21と基材シート22とを強固に一体化させるためである。また、前記吸引装置の代わりに、外枠15内に板状物を浮かべて該板状物に圧力を加えることにより、原料組成物(スラリー)に圧力を加えても良い。
また、被酸化性抄造体21の原料組成物210には、他の成分を含ませることもできる。例えば、前記原料組成物には、前記凝集剤を添加することが好ましい。該凝集剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸第一鉄等の金属塩からなる無機凝集剤;ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアクリルアミドのマンニッヒ変性物、ポリ(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル系、カルボキシメチルセルロースナトリウム系、キトサン系、デンプン系、ポリアミドエピクロヒドリン系等の高分子凝集剤;ジメチルジアリルアンモニウムクロライド系若しくはエチレンイミン系のアルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物等の有機凝結剤;モンモリロナイト、ベントナイト等の粘土鉱物;コロイダルシリカ等の二酸化珪素若しくはその水和物;タルク等の含水ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。そして、これら凝集剤の中でもシートの表面性、地合い形成、成形性の向上、鉄粉、繊維状物、保水剤等の材の定着性、紙力向上の点からアニオン性のコロイダルシリカやベントナイト等とカチオン性のデンプンやポリアクリルアミド等の併用やアニオン性のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩やポリアクリルアミドとカチオン性のポリアミドエピクロルヒドリン系やポリアクリルアミド等のカチオン性とアニオン性の薬剤の併用が特に好ましい。上述の組み合わせ以外でも、これらの凝集剤は一種を単独で使用することもできるし、二種以上を併用することもできる。
前記凝集剤の添加量は、原料組成物210の固形分に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1質量%であることがより好ましい。0.01質量%以上であると、凝集効果に優れ、抄造時の鉄粉、繊維状物、保水剤等の成分の脱落も抑えることができ原料組成物が均一となり、肉厚及び組成の均一な被酸化性抄造体を得ることができる点で優れている。該添加量が5質量%以下であると、乾燥時の乾燥ロールに貼り付き、破れ、焼け、焦げ等の発生を抑えることができ、生産性に優れ、原料組成物の電位バランスを良好に保ち、抄造時の白水への該成分の脱落量も抑えることができる点で優れている。また、被酸化性抄造体の酸化反応が進行し、発熱特性や強度等の保存安定性に優れる。
原料組成物210の濃度は、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。該濃度が斯かる範囲であると、大量の水を必要とせず、被酸化性抄造体の成形に長時間を要せず、均一な厚みの被酸化性抄造体を成形することができる点で好ましい。また、原料組成物の分散状態も良好であり、最終的に得られる被酸化性抄造体の表面性にも優れ、均一な厚みの被酸化性抄造体が得られる点で好ましい。
上述のようにして製造した湿潤状態の中間シート20を乾燥させ、水分を分離することにより、製造工程中における鉄粉の酸化抑制、長期の保存安定性に優れた中間シートを得ることができる。また、乾燥後の前記繊維状物への鉄粉の担持力を高めてその脱落を抑えることができる点から、湿潤状態の中間シートの製造後で前記電解質の電解液を含有させる前に該中間シートを乾燥させることが好ましい。
湿潤状態の中間シートは、加熱乾燥によって乾燥することが好ましい。この場合、加熱乾燥温度は、60〜300℃であることが好ましく、80〜250℃であることがより好ましい。中間シートの加熱乾燥温度を斯かる温度範囲とすることで、乾燥時間を短くできるため、水分の乾燥に伴う鉄粉の酸化反応を抑えることができ、得られる被酸化性シートの発熱性の低下を防ぐことができる。また同時に、鉄粉の酸化による被酸化性抄造体の変色を防止することができる。さらに保水剤等を加えた場合にはその性能劣化を抑えることができるため、被酸化性抄造体の発熱効果を維持することができるほか、被酸化性抄造体内部で急激に水分が気化して被酸化性抄造体の構造が破壊されたりすることを防ぐことができる。
乾燥後における中間シートの含水率は、20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。含水率が20%以下であると長期保存安定性に優れ、例えば巻きロール状態で一時保存しておく場合等においても該ロールの厚み方向で水分の移動が起こり難く、発熱性能、機械的強度に変化がなく、優れている。
湿潤状態の中間シートの乾燥方法は、基材シート22の材質、物性等に応じて適宜に選択することができる。該乾燥方法としては、例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等の乾燥方法が挙げられる。
前記中間シートの乾燥は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましいが、上述のように中間シートに酸化助剤となる電解質を含有していないので、必要に応じて通常の空気雰囲気下で成形を行うこともできる。このため、製造設備を簡略化することができる。得られた中間シートは、薄くて破れにくいので、必要に応じ、ロール状に巻き取ることができる。
乾燥した中間シートには、必要に応じて、クレープ処理、スリット加工、トリミングを施したり、ニードルパンチ加工を行うことにより孔あけを行うこともできる。また、前記原料組成物にバインダー成分として熱可塑性樹脂成分や熱水解成分を含有させることにより、ヒートシール加工を施して被酸化性抄造体と基材シートとを接合による一体化をしやすくすることもできる。
次に、前記中間シートに、前記電解質を含ませる。中間抄造体にこれら電解質を含ませる方法に特に制限はないが、水溶性である点を考慮すると、電解質を含む水溶液(以下、電解液ともいう。)を調製し、中間シートに含ませることが好ましい。
前記電解質をこれらの電解液で含有させる方法は、基材シート22の材質、物性等に応じて適宜に選択することができる。例えば、所定濃度の電解液を該中間シートにスプレー塗工する方法、該電解液をシリンジ等で該中間シートの一部分に注入し、該中間シート全体に浸透させる方法、刷毛等で塗工する方法、該電解液に中間シートを浸漬する方法、グラビアコート法、リバースコート法、ドクターブレード法等が挙げられ、これらの中でも、電解質を均一に分布でき、簡便で、設備コストも比較的少なくて済む点からスプレー塗工する方法が好ましい。また、複雑な形状、層構成の商品においては生産性が向上する点や、最終仕上げを別工程とできることにより生産のフレキシブル性が良好となる点、設備が簡便となる点からは、所定濃度の電解液をシリンジ等で注入する方法が好ましい。この電解液を注入する方法は、中間シートを収容体に収容体に収容した後に行うこともできる。
上述のように中間シートに電解液を含有させた後、必要に応じて含水率を調整し、安定化させて被酸化性シートとし、収容体3内に収容して封止し、被酸化性物品とする。この場合、各セグメント間のいわゆる目地の部分においては、基材シート22と収容体3を構成するシート31、32は接合されていない。このため、被酸化性物品全体としての柔軟性が維持される。被酸化性シート2を複数枚重ねて収容することもできる。得られた被酸化性物品1は、未使用状態では、例えば、酸素不透過性の包装材(図示せず)で包装されて提供される。
以上説明したように、本実施形態の被酸化性物品1は、被酸化性シート2が、繊維状物を含む被酸化性抄造体21と繊維シートからなる基材シート22とが接合されて一体化されているため、中間シートに電解液を含ませるときに、基材シート22に電解液を含ませることで、中間シート全体に電解液を均一に含ませることができる。また、被酸化性シート2の被酸化性抄造体21が複数のセグメント21Aに区分けされているので、各セグメントの周りのいわゆる目地の部分からも酸化反応に必要な酸素の供給が十分に行える。よって、酸化反応効率を向上させることができる。また、被酸化性抄造体21と基材シート22とが一体化されているため、被酸化性抄造体21の位置ずれや偏りを防ぐことができる。また、被酸化性抄造体21が複数のセグメント21Aに区分けされているため、酸化反応の終了後においても、柔軟性を維持させることができる。また、基材シート22としての繊維シート及び収容体3を伸縮性を有するシートで構成した場合には、被酸化性抄造体21の剥離を抑え且つ被酸化性物品全体としての伸縮性を付与することができる。また、被酸化性抄造体21が複数のセグメント21Aに区分されているため、適用の対象に応じてセグメントの数及び配置を選択して多様なバリエーションの被酸化性物品を提供することができる。
図4は、本発明の被酸化性物品の第2実施形態を示す図である。図4に示す実施形態の被酸化性物品1’は、被酸化性シート2に、被酸化性抄造体21を覆うように通気性の被覆シート31が接合されている以外は、第1実施形態の被酸化性物品と同様の構成である。被酸化性シート2の基材シート22側は、被覆シートでは被覆されていない。被覆シート31としては、前記収容体3に使用されるシートと同様のシートが使用される。また、基材シート22には、被覆シート31との接合を考慮するとポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いた紙、または不織布等の繊維シートを使用することが好ましい。
本実施形態の被酸化性物品1’によれば、第1実施形態の被酸化性物品と同様の効果が得られるほか、製造が簡便であることに加え、被覆シートの数が減少することにより、さらなる柔軟化の効果が奏される。
次に、本発明のセグメントシート及び中間セグメントシートの好ましい実施形態について説明する。
本実施形態の中間セグメントシートは、図5に示すように、前記実施形態の被酸化性シートの中間シート20が、セグメント21A単位で基材シート22の目地の部分で分割されてなるものである。また、本実施形態のセグメントシート(2)は、被酸化性シートが、セグメント21A単位で基材シート22の目地の部分で分割されてなるものであり、中間セグメントシートの被酸化性抄造体22に酸化助剤となる電解質が含まれているものである。
図5に示すように、本実施形態の中間セグメントシート及びセグメントシートでは、基材シート22の裏面(被酸化性抄造体の形成されていない面)に別の接着剤層24が形成されていてもよい。これにより、中間セグメントシート及びセグメントシートを、ラベルシールのように、対象物に貼付することができる。接着剤層は、基材シートに合わせて従来から知られている接着剤を使用することができる。
本発明は、前記実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
前記実施形態では、基材シートとして繊維シートを使用したが、基材シートは、繊維シート以外に、樹脂シートを使用することもできる。基材シートとしての該樹脂シートは、前記繊維シートと同様、被酸化性抄造体と一体化できるものであれば特に制限はない。好ましい樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂等からなるシートが挙げられる。また前述のように、基材シートに液浸透性を有する場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂からなるシートに機械的に孔を形成させたもの、前記樹脂と酸化チタン等の無機フィラーとの混合シートを延伸により界面剥離させ微孔を設けたもの、発泡成形による連続気泡を利用し微孔を連通させたもの等も用いることができる。
また、前記実施形態では、被酸化性抄造体22のセグメントを平面視して矩形の形態としたが、セグメントの平面視の形態に特に制限はない、例えば、三角形以上の多角形とすることもできる。異なる形態を二種以上組み合わせることもできる。高い柔軟性が得やすい点から、セグメントを平面視して六角形形状とし、セグメント間の目地の部分をハニカム形態とすることもできる。また、使用する部位に応じて不定形状とすることもできる。
図4に示す第2実施形態の被酸化性物品1’は、基材シート22が透気性を有している場合には、被覆シート31は通気性は必ずしも必要ではなく、非通気性または難通気性でも良い。
本発明の被酸化性物品並びに、被酸化性シート及びその中間シート、被酸化性セグメント及びその中間セグメントシートは、発熱体としての使用のほか、脱酸素剤としても好適に使用することができる。また、被酸化性抄造体に含ませる水分量を調整することによって、水蒸気発生体としても好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
下記実施例1〜4のようにして被酸化性シートを作製し、被酸化性抄造体と基材シートとの一体化を下記のように評価するとともに、未酸化反応鉄含有率、発熱特性を下記のように調べた。実施例1〜3の試験体の形態を表1に、結果を表2にそれぞれ示した。また、実施例4の試験体の形態及び結果を表3にそれぞれ示した。なお、下記のようにして作製した比較例1〜3及び比較例4についても、それぞれについての形態及び評価結果を表1、2及び表3に示した。
〔実施例1〕
<被酸化性抄造体用の原料組成物の調製>
被酸化性金属:鉄粉、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、83質量%
繊維状物:パルプ繊維(NBKP、製造者:フレッチャー・チャレンジ・カナダ、商品名「Mackenzi」、CSF150ml)、8質量%
保水剤:活性炭(平均粒径45μm、日本エンバイロケミカルズ(株)製、商品名「カルボラフィン」)、9質量%
凝集剤:上記被酸化性金属、繊維状物及び保水剤の合計100質量部に対し、カルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業薬品(株)製、商品名「セロゲン HE1500F」)0.22質量部、及びポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(日本PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.8質量部
水:工業用水を固形分濃度0.3質量%となるまで添加
<抄紙工程>
上記原料組成物を用い、JIS P8209に準じた手抄き機を用いて湿潤状態のシートを得た。その際に、支持ネットとして80メッシュの金属網の上に、下記基材シートを配置し、更にその上に平面視で正方形の複数の貫通孔(6mm角)を有し、貫通孔の間隔が1mmである仕切りを配置し、該仕切りの外側に外枠を配置した。次いで、上記の原料組成物を外枠に注ぎ入れ、吸引排出ボックスの吸引排出口から排出成分を吸引装置(掃除機用のブロワー)で排出した。上記の手順によって、被酸化性抄造体が複数のセグメントに区分けされて基材シートと一体化されてなる湿潤状態の被酸化性シートの中間シートを得た。
基材シート:レーヨンのスパンレース不織布(坪量50g/m2
<脱水、乾燥工程>
得られた湿潤状態の前記中間シートをJIS P8209に準じた140℃の乾燥ロールにて乾燥し、含水率が3%以下の中間シートを得た。
中間シートの乾燥質量と基材シートの質量の差を中間シートの面積で除して算出される被酸化性抄造体の坪量は460g/m2であった。
<一体化の評価>
得られた中間シートを50×50mmの試験片に切り出した後、振動機(ヤマト科学株式会社製 タッチミキサーMT−51)を用いてスピードセットメモリ「1」で連続駆動にて振動を加えた。その後、以下の基準で評価を行った。
○:1分間の振動を加えてもセグメントに区分けされた被酸化性抄造体の形状・位置に変化が見られない。
×:1分間以内にセグメントに区分けされた被酸化性抄造体の形状が崩れる。もしくは基材シートから脱離してしまう。
<被酸化性試験体の調製>
得られた中間シートを43×85mmにカットし(6mm角のセグメントが1mmの目地幅で、縦5×横11個配置されている。)、該中間シートを2枚重ねた(一方の中間シートの被酸化性抄造体と他方の中間シートの基材シートが接するように重ねた)。次いで、被酸化性抄造体100質量部に対して、5%NaCl溶液60質量部をシリンジを用いて2枚重ねの中間シートに基材シート側から添加した。次いで、下記通気性のシートと非通気性のシートの間に、上記の2枚重ねの中間シートをはさみ、通気性シートと非通気性シートの外周をヒートシールによって接合し、試験体を作製した。
試験体に用いられた被酸化性抄造体の総質量は3.2g(=2枚重ねの中間シート質量−使用された2枚分の基材シート質量)と算出された。
表面シート:ポリプロピレンのスパンボンド不織布(坪量20g/m2
通気性シート:ポリエチレン製の微多孔シート、透気度10000秒
非通気性シート:ポリエチレンシート
<発熱特性>
前述で得られた試験体を、JIS S4100に準拠した簡易型温度測定装置を用いて発熱による温度を測定した。簡易型温度測定装置は、厚さ1mmのポリプロピレンシートを6枚、日本薬局方で規定するタイプ1のガーゼを2枚重ね、表面を37℃に保った測定台を水平に設置したものである。該測定装置の上に上記試験体を通気性シートを下面として静置し、その上から「綿100%、テックス番手5.905双糸のネル」を8枚重ねて発熱反応評価を行った。
ここで、発熱開始から5時間迄の間で、40℃以上の温度を、40℃を継続した時間で積分することにより得られる温度積分値を総発熱量とみなして発熱反応評価とした(温度積分値の単位は℃×分)。温度積分値は、縦軸を試験体温度、横軸を発熱開始からの経過時間として描かれた試験体温度変化グラフ(図6、図7)の40℃以上における面積となる。
<未酸化反応鉄含有率>
未酸化反応鉄含有率を測定するにあたり、あらかじめ、実施例で用いた鉄粉を所定質量取り、高感度振動試料型磁力計(東英工業(株)製、VSM−P7−15PC)を用いて保磁力を測定し、未酸化反応鉄の質量と保磁力の検量線を作成した。次に発熱反応評価前後のサンプルの保磁力を測定し、検量線を用いて未酸化反応鉄の質量を算出した。そして得られた未酸化反応鉄の質量を測定質量で除することにより、発熱反応評価前後の未酸化反応鉄の比率を算出した。
〔実施例2〕
8mm角のセグメントを目地の幅が1mmで、縦4×横8個配置した試験体とした以外は実施例1と同ように試験体を作製した。
〔実施例3〕
15mm角のセグメントを目地の幅が5mmで、縦2×横4個配置した試験体とした以外は実施例1と同ように試験体を作製した。
〔比較例1〕
セグメント形状の貫通孔を有した仕切り、並びに基材シートを用いなかった以外は実施例1と同ようにして抄紙を行い、セグメントに区分けされていない中間シートを得た。中間シートは基材シートと一体化されていない、前記特許文献2と同様な抄紙シートタイプとなる。得られた中間シート2枚と実施例1と同じ基材シート2枚を43×85mmにカットし、1枚目の基材シート、1枚目の中間シート、2枚目の基材シート、2枚目の中間シートの順番に積層した後に、実施例1と同ように試験体を作製した。ここで、基材シートを2枚積層した理由は、試験体としての熱容量を実施例1と同じにし、比較を正確に行うためである。
〔比較例2〕
実施例1で用いたパルプ繊維の代わりに、以下の吸水ポリマーを用い、実施例1と同量の粉粒状発熱組成物を作製した。吸水ポリマーは、パルプ繊維に吸収されていたNaCl溶液を吸水ポリマーに吸収させるために使用した。吸水ポリマーは使いすてカイロでは保水剤として一般的に使用されている。
被酸化性金属:鉄粉、同和鉄粉鉱業(株)製、商品名「RKH」、83質量%
吸水ポリマー:平均粒径20〜30μm、住友精化(株)製、商品名「アクアキープ 10SH−NF」)、8質量%
保水剤:活性炭(平均粒径45μm、日本エンバイロケミカルズ(株)製、商品名「カルボラフィン」)、9質量%
続いて、実施例1と同質量の粉粒状発熱組成物を、実施例2と同様の仕切りを用いて、8mm角のセグメントで目地の幅が1mm、縦4×横8個配列した発熱体を実施例1と同様の基材シート上に配置した。粉粒状発熱組成物が基材シートと一体化されておらず、セグメント形状を維持できないため、通気性の高いポリエチレン製の微多孔シート(透気度60秒、坪量25g/m2)を用いて、配置された発熱体と共に該基材シートを覆い、セルを形成するように微多孔シートと基材シートとをヒートシールで接合して中間試験体を製作した。次いで、該中間試験体を2枚用意し、一方の中間試験体の微多孔シートが他方の中間試験体の基材シートと接するように積層した。次いで粉粒状発熱組成物100質量部に対して、5%NaCl溶液60質量部を、シリンジを用いて基材シート側から添加した。次いで、実施例1と同ように通気性シートと非通気性シートの間に、上記の2枚重ねの中間試験体をはさみ、通気性シートと非通気性シートの外周をヒートシールによって接合し、試験体を作製した。試験体が含有する粉粒状発熱組成物の総質量は3.2gとした。
〔比較例3〕
43×85mmの大きさの実施例1と同じ基材シート上に比較例2で使用した粉粒状発熱組成物を均一に散布して中間試験体とした。次いで、該中間試験体を2枚用意し、一方の中間試験体の上側の基材シートが他方の中間試験体の下側の基材シートと接するように積層した。次いで粉粒状発熱組成物100質量部に対して、5%NaCl溶液60質量部を、シリンジを用いて基材シート側から添加した。次いで、実施例1と同ように通気性シートと非通気性シートの間に、上記の2枚重ねの中間試験体をはさみ、通気性シートと非通気性シートの外周をヒートシールによって接合し、試験体を作製した。
〔実施例1〜3と比較例1〜3の評価結果〕
図6に各実施例の試験体の温度変化を図7に各比較例の試験体の温度変化を示す。図6及び図7より、表2に記載の温度特性(最大温度、40℃以上継続時間、温度積分値)を求めた。表2の温度積分値結果から、各実施例で得られた試験体は、各比較例で得られた試験体と比較して高い発熱量を示すことが明らかとなった。また、発熱反応評価後の未酸化反応鉄含有量は、実施例1では9.6%の含有量であるのに対して、比較例1では15.5%であり、被酸化性抄造体を複数のセグメントに区分けした効果が確認できた。一体化の評価は、比較例2及び3では“×”の評価となり、基材シートとの一体化の効果が確認できた。また、各実施例は被酸化性抄造体をセグメントに区分けしているため、発熱反応後も目地の部分で自由に折り曲げることができ、柔軟性を維持していた。
〔被酸化性抄造体と基材シートとの一体化の評価〕
図8は、実施例1で作製した試験体を縦方向に切断した時の切断面の拡大写真である。図8から明らかなように、被酸化性抄造体に含まれる繊維状物と基材シートを構成する繊維シートの繊維とが交絡していることが判る。
〔実施例4〕
保水剤と通気シートを以下のようにした以外は実施例1と同ようにして試験体を作製した。
保水剤:活性炭(平均粒径9μm、二村化学(株)製、商品名「SA1000」)
透気性シート:ポリエチレン製の微多孔シート、透気度60秒
保水剤と通気性シートを上記のようにした理由は、短時間で発熱させて、温度分布測定を行うためである。
〔比較例4〕
保水剤と透気シートを以下のように変えた以外は比較例1と同ようにして試験体を作製した。
保水剤:活性炭(平均粒径9μm、二村化学(株)製、商品名「SA1000」)
透気性シート:ポリエチレン製の微多孔シート、透気度60秒
<発熱の均一性評価>
得られた試験体を、30℃に保持したホットプレート上に透湿シートを下面として静置し、発熱を開始する。そして上部から、赤外線サーモグラフィ(アビオニクス社製「TVS−600」、放射率=0.8)を用いて温度分布を観察した。図9は、発熱開始時から18分経過後の試験体を、赤外線サーモグラフィにて温度分布を観察した結果である。
図9に示したように、比較例4に比べ、実施例4の方が、温度分布が均一であることが明らかであり、被酸化性抄造体を複数のセグメントに区分けした効果が確認できた。
1 被酸化性物品
2 被酸化性シート
21 被酸化性抄造体
21A セグメント
22 基材シート
3 収容体

Claims (7)

  1. 被酸化性金属及び繊維状物を含み且つ酸化助剤となる電解質を含まない被酸化性抄造体と、基材シートとが一体化されている被酸化性シートの中間シートであって、
    前記被酸化性抄造体が複数のセグメントに区分けされている被酸化性シートの中間シート。
  2. 前記基材シートが繊維シートからなる請求項1に記載の被酸化性シートの中間シート。
  3. 請求項1又は2に記載の被酸化性シートの中間シートに、酸化助剤となる電解質を含んでいる被酸化性シート。
  4. 請求項3に記載の被酸化性シートが、通気性を有する収容体に収容されている被酸化性物品。
  5. 請求項3に記載の被酸化性シートに、前記被酸化性抄造体を覆うように通気性の被覆シートが接合されている被酸化性物品。
  6. 請求項1に記載の被酸化性シートの中間シートが、前記セグメント単位で前記基材シートで分割されてなる中間セグメントシート。
  7. 請求項3に記載の被酸化性シートが、前記セグメント単位で前記基材シートで分割されてなるセグメントシート。
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