JP2012062605A - 厚手の始端部を有する編地の編成方法および編地 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、厚手の始端部を有する編地の編成方法を提案する。
【解決手段】前後の針床の編針に編目を形成する編出し部を編成する工程Aと、編出し部の一方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Bと、編出し部の他方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Dと、工程Bと工程Dの間で、一方の針床に係止する編目に対し、割増やし編成を行う工程Cと、前記割増やし編成により形成された編目のウェール方向に新たな編目を形成すると共に、割増やし編成による増目またはその増目のウェール方向に繋がる編目を対向する編針に目移しする工程Eと、を備え、前記工程B〜Eを繰り返す工程を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、横編機を用いた厚手の始端部を有する編地の編成方法、およびその方法で編成された編地に関する。
横編機を用いて編成した編地の始端部、例えば、セーターにおいての裾部や袖口部では、編地をしっかりさせるため、あるいは外観を美しくするために、裾や袖口の丈を通常の二倍になるように編成し、後の縫製工程で、編まれた裾の編出し部を内側に二つ折りにしてミシンで縫合することがある。本願出願人は、特許文献1でセーター等、筒状となった編地において、その縫製を省略できる四重構造を有する編地の編成方法について提案している。
特許第2514489号公報
本発明の目的は、上記特許文献とは異なる方法による厚手の始端部を有する編地の編成方法とその方法で編成された編地を提案する。
本発明は、少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用い、厚手の始端部を有する編地の編成方法において、少なくとも前後一方の針床の編針に編出し部を編成する工程Aと、編出し部の一方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Bと、編出し部の他方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Dと、工程Bと工程Dの間で、どちらか一方の針床に係止する編目に対し、割増やし編成を行う工程Cと、前記割増やし編成により形成された前後どちらかの編目のウェール方向に新たな編目を形成すると共に、割増やし編成による増目またはその増目のウェール方向に繋がる編目を対向する編針に目移しする工程Eと、を備え、前記工程B〜Eを繰り返す工程を含むことを特徴とする。
また本発明で、前記工程Eの編成は、前記工程CとDの間で行うことを特徴とする。
また本発明の編地は、少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて編成された厚手の始端部を有する編地であって、編出し部の前後の編目に繋がる袋状の編地を備え、その袋状の一方の編目列から割増やし編成による編目が繋がり、割増やし編成による分岐した増目またはその増目に繋がる各編目が一方の編目列に重なる重ね目列を複数有し、それらの複数の重ね目列が袋状の編地内に収まっていることを特徴とする。
本発明では、横編機の針床に係止される編地の始端部として、袋状に編成する編地の内側に割増やされた編目列を複数配置することで十分な厚みが得られる。また、割増やされた編目が編出し部に繋がりを持つことで、引っ張られた場合には割増やされた編目列から編糸を供給し、引っ張りがなくなった場合には割増やされた編目列に伸びた編糸が戻ることで適度な伸縮性が得られる。
また、前記工程Eの編成を、前記工程CとDの間で行うことで、割増やされた編目列を、編出し部に続く前後の編目内に確実に収めることができ、見栄えを損なわない。
また、本発明による編地は、袋状に編成する編地の内側に割増やされた編目列を複数備えることで、外観の見栄えが良い厚手の始端部が形成できる。
本発明の実施例1である厚手の始端部を有する編地の編成図である。 本発明の実施例2である厚手の始端部を有する編地の編成図である。
以下、本発明の実施の形態を、実施例1および実施例2として説明する。各実施例で編成に使用する横編機は、前後一対の針床を備えた2枚ベッド横編機であり、各針床間で目移しが可能である。編成に使用する横編機は4枚ベッドでもよい。また説明の便宜上、編針の数を実際よりも少なくしている。
図1は、本発明の実施例1として、厚手の始端部を有する編地の編成図である。図中左側の数字は編成ステップ(S)を示し、左右方向の矢印は編成方向を、上下方向の矢印は目移し方向を示す。FBは前針床を、BBは後針床を示す。大文字のA〜JはFBの編針を、小文字のa〜jはBBの編針を示す。また、○印はその編成ステップで形成される編目を、V印は掛目を、●印は割増やし編成時の増目を示す。尚、その編成ステップの編成に関係せず、編針に係止されたままの編目については図示を省略している。これらの表示や条件は、図2に示す実施例2にも適用する。
以下、図1で示す編成ステップS1〜S6について説明する。S1は、編出し部1としてFBの編針A,C,E,G,IとBBの編針b,d,f,h,jを用い、給糸口10を右方向に向けて前後交互に編成し、FBの編針には掛目と、BBの編針には編目が係止している状態を示す。図示はしないが、S1の前ステップでBBの編針b,d,f,h,jに抜き糸による編目が係止し、該編目が係止するBBの編針の位置では編目となり、空針となっていたFBの編針の位置では編目は掛目となる。S1では、後針床に抜き糸としての編目が係止された状態で、編出し部1を前後の針床を用いて編成したが、前針床に編目が係止された状態で行っても良く、片側の針床のみに編出し部1を編成した後、目移しを用いて前後の針床に割り当てても良い。
S2では、左方向に向けて編出し部1の一方のFBに係止する掛目に対し、ウェール方向に続けてFBの編針I,G,E,C,Aで新たな編目列2を形成する。さらにS3では、右方向に編針A,C,E,G,Iで新たな編目列3を形成する。但し、編針A,C,E,G,Iでは割増やし編成を行うことで、それらに対向するBBの編針a,c,e,g,iに分岐した編目列4の増目を形成する。割増やし編成では、S2で形成した編目列2の編目が、目移しされて分岐したBBの編目列4の増目となり、FBには新たな編目列3が形成される。S4では、左向きにBBの編針i,g,e,c,aで新たな編目列5を形成し、続いてそれらの編目列5の編目を、対向するFBの編針I,G,E,C,Aに目移しする。S3で形成したFBの編針A,C,E,G,Iに係止する編目列3への重ね目となる。
S5では、右向きにBBの編針b,d,f,h,jに新たな編目列6を形成する。S1で編成した編出し部1の他方の編目列に繋がる新たな編目列6で、FBに対するS2の編成と同じ関係の、BBに対する編成となり、両編成により、編出し部1に続く袋状の編地を形成する。S1〜S5に至る新たな編目列の形成では、FBで4目、BBで2目が形成され、前後の編目差によりFB側に厚みが加わる。この段階では前後針床に編目を係止しているが、編地の始端部であり、そのまま連続して袋状の編地を形成しても良い。また、一方の針床側に目移しを行い天竺の編地を形成しても良いし、リブ組織を形成しても良い。厚手でありながらも伸縮性を有する始端部である為、編地が伸縮するリブ組織には、伸縮する編出し部1がラッパ状に広がり難い為、特に有効である。
S6では、左向きにFBの編針I,G,E,C,Aに新たな編目列7を形成する。この後に連続する編組織により目移しを行って編目を前後針床の編針に割り当てても良いが、S2からS5までの工程をリピート単位として、その編成を繰り返すことで、編地の始端部に厚みを加えていくことができる。編地のゲージやデザイン、また糸素材などにより調整すればよいが、2〜4回程度が好ましい。厚手のしっかり感が出て、編地が硬くならない。割増やされた編目が編出し部1に繋がることで、引っ張られた場合には割増やされた編目列から編糸を供給し、引っ張りがなくなれば割増やされた編目列に伸びた編糸が戻ることで、適度な伸縮性が得られるからである。
また、S2の編目列2の編成と、S5の編目列6により袋状に編成できるが、その間にS3での割増やし編成を行うことで、その割増やしを行った編目や増目がその内側に収まり、綺麗な外観とすることができる。
図2は、本発明の実施例2としての厚手の始端部を有する編地の編成図である。以下、図2で示す編成ステップS1〜S6について説明する。S1は、図1のS1と同様、編出し部11としてFBの編針A,C,E,G,IとBBの編針b,d,f,h,jを用い、給糸口10を右方向に向けて前後交互に編成し、FBの編針には掛目と、BBの編針には編目が係止している状態を示す。S1の前ステップの状態や編成内容なども、同様である。
S2では、左方向に向けて編出し部11の一方のFBに係止する掛目に対し、ウェール方向に続けてFBの編針I,G,E,C,Aで新たな編目列12を形成する。さらにS3では、右方向に編針A,C,E,G,Iで新たな編目列13を形成する。但し、編針A,C,E,G,Iでは割増やし編成を行う。これらの各ステップにおいても、図1と編成内容が同様である。つまり、S2で形成した編目列12が、目移しされて分岐したBBの編目列14の増目となり、FBには新たな編目列13が形成される。S4では、左向きにFBの編針I,G,E,C,Aで新たな編目列15を形成する。
S5では、右方向に向けてBBの編針b,d,f,h,jに新たな編目列16を形成する。さらに、S2で形成した編目列12の編目が目移しされて分岐したBBの編針a,c,e,g,iに係止する編目列14の増目を、FBの編針A,C,E,G,Iに目移しする。この場合、S5での編目列14の増目の目移しを、BBの編針b,d,f,h,jに新たな編目列16を形成した後に行っているが、その目移しにより、移された編目列14の増目の編糸が、事前に編成した編目列16のコース方向の編糸を押えることで、伸縮性は若干下がるものの、しっかりとした編地とすることが出来る。
S5の新たな編目列16の形成は、S1で編成した編出し部11の他方の編目に繋がる編成となり、FBに対するS2の編成と同様に、BBに対する編成となる。両編成により、編出し部11に続く袋状の編地を形成する。S1〜S5に至る新たな編目の形成では、FBで4目、BBで2目が形成され、前後の編目差によりFB側に厚みが加わる。S6では、左向きにFBの編針I,G,E,C,Aに新たな編目列17を形成する。実施例2においても、S2〜S5までの工程をリピート単位として、その編成を数回繰り返すことで、編地の始端部に厚みを加えることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で実施形態を適宜変更して実施することができる。例えば、上述した実施例1では、S4において、編目列4の増目に続けて新たな編目列5を形成し、その編目列5の編目を目移ししたが、その工程に替えて、S3で形成した編目列3に続けて新たな編目列を形成し、その新たな編目列の編目に編目列4の増目を目移しで重ね目としてもよい。割増やし編成によって分岐した増目を目移しで移動し、編地の始端部で編目の繋がりを持ちながら、前後の編目差が生じるようにすれば良い。一方に多くの編目を集めることで、従来にはない厚みが生じる。また、袋状の編地の内部に重ね目を有する形で編目が存在するので、膨らんだようになって見栄えがよい。
また、各実施形態では単層編地の形成を示したが、筒状の編地に適用しても良く、給糸口を他のものに入替え、弾性糸を添糸として加えて始端部を形成することもできる。そうすることで伸縮性が高まり、始端部に繋がる編地が伸縮性の高いリブ組織などの場合には、始端部がラッパ状に広がり難く伸縮のバランスがとれた綺麗な編地となる。
1,11 編出し部
2〜7,12〜17 編目列
10,20 給糸口

Claims (3)

  1. 少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用い、厚手の始端部を有する編地の編成方法において、 少なくとも前後一方の針床の編針に編出し部を編成する工程Aと、 編出し部の一方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Bと、編出し部の他方の針床に係止する編目のウェール方向に新たな編目を形成する工程Dと、 工程Bと工程Dの間で、どちらか一方の針床に係止する編目に対し、割増やし編成を行う工程Cと 前記割増やし編成により形成された前後どちらかの編目のウェール方向に新たな編目を形成すると共に、割増やし編成による増目またはその増目のウェール方向に繋がる編目を対向する編針に目移しする工程Eと、を備え、 前記工程B〜Eを繰り返す工程を含むことを特徴とする厚手の始端部を有する編地の編成方法。
  2. 前記工程Eの編成は、前記工程CとDの間で行うことを特徴とする請求項1に記載の厚手の始端部を有する編地の編成方法。
  3. 少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な横編機を用いて編成された厚手の始端部を有する編地であって、
    編出し部の前後の編目に繋がる袋状の編地を備え、その袋状の一方の編目列から割増やし編成による編目が繋がり、割増やし編成による分岐した増目またはその増目に繋がる各編目が一方の編目列に重なる重ね目列を複数有し、それらの複数の重ね目列が袋状の編地内に収まっていることを特徴とする厚手の始端部を有する編地。
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