JP2012062413A - 塗料用水性樹脂、および水系塗料 - Google Patents

塗料用水性樹脂、および水系塗料 Download PDF

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Abstract

【課題】塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与でき、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗料用水性樹脂、および優れた耐汚染性と耐水性を有し、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗膜を形成できる水形塗料の提供。
【解決手段】本発明の塗料用水性樹脂は、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマー(A)と、カルボジイミド基を有する水性ポリマー(B)とを含有し、モノマー混合物100質量%中、モノマー(a1)の含有量が5.00〜95.00質量%、 モノマー(a2)の含有量が0.01〜5.00質量%、 モノマー(a3)の含有量が0.50〜20.00質量%であり、水性ポリマー(B)のカルボジイミド基モル数とモノマー(a3)のカルボキシル基モル数との比率が、0.28〜3.20である。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗料用水性樹脂、および水系塗料に関する。
建築物の外壁など長時間屋外に曝されるものには、雨、光、熱、湿気などの外的要因から建築物などを保護することを目的として、耐水性や耐候性に優れた塗膜を形成できる疎水性の塗料が塗布される場合が多い。
しかし、疎水性の塗料が塗布された外壁などは、車の排気ガス等による油性の汚れや土埃などの汚染物が付着したり、付着した汚染物が雨で流され、その跡が雨筋汚れとして目立ったりしやすかった。特に、建築物の形状により雨筋汚れが付きやすいと、建築物の外観や価値を低下させることとなる。そのため、定期的な洗浄や塗料の塗り替えなどの作業が欠かせなかった。
近年、省資源の観点から、油性の汚れや土埃などの汚染物、雨筋汚れなどが付着しにくい性能、すなわち耐汚染性を備えた塗膜を形成できる、いわゆるメンテナンスフリー塗料の需要が高まっている。
塗膜に耐汚染性を付与する方法としては、塗膜の表面を親水化する方法が知られている。塗膜の表面が親水性を帯びることで、親和性の異なる油性の汚れが付着しにくくなる。しかも雨が降った際には雨滴が親水性の塗膜表面を洗い流し、油性の汚れや土埃などの汚染物を容易に除去でき、雨筋汚れの付着をも防止できる。
しかし、親水性を帯びた塗膜は、疎水性を帯びた塗膜に比べて耐水性や耐候性に劣るため、保護機能の面で問題があった。
このように、疎水性を帯びた塗膜は耐水性や耐候性に優れるものの耐汚染性に劣り、一方、親水性を帯びた塗膜は耐汚染性に優れるものの耐水性や耐候性に劣り、これら相反する性能を両立するための検討がなされてきた。
塗膜の表面を親水化して耐汚染性を付与する方法としては、コロイダルシリカを用いる方法が知られている。例えば特許文献1には、水系ポリシロキサンおよび水分散コロイダルシリカを含有する組成物と、加水分解性シリル基含有ビニル系エマルション樹脂を含有する組成物と、水系ポリシロキサンを含有する組成物を順次塗布する方法が開示されている。該方法によれば、耐候性、耐汚染性、耐温水性等に優れた塗膜を形成できる。
また、特許文献2には、親水基を含有する化合物で表面処理されたコロイダルシリカを含有する水性塗料組成物が開示されている。該水性塗料組成物によれば、耐汚染性、耐水性、耐候性等に優れた塗膜を形成できる。
また、耐汚染性に優れた塗料の原料として、例えば特許文献3には、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルを共重合してなる共重合体が開示されている。
さらに、耐汚染性、耐候性等に優れた塗膜を形成できる塗料として、特許文献4には、フッ素系樹脂に、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体を共重合してなる低汚染化剤を配合した塗料用組成物が開示されている。
特開2002−263559号公報 特開2003−55611号公報 特開2007−197644号公報 特開2003−246961号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載のように、コロイダルシリカを含有する塗料組成物では、耐汚染性と耐水性のバランスが必ずしも十分ではなく、特に耐水性を満足することは容易ではなかった。耐水性が低いと、塗膜が水を吸収して白化しやすくなるため、白化が目立ちやすい濃色系塗料の場合には特に重大な問題となる。
また、コロイダルシリカは顔料結合力を有さないため、塗料の臨界顔料容積濃度(臨界PVC)が低下してチョーキングが発生したり、塗料の流動安定性が低下したりしやすかった。
特許文献3に記載の共重合体を原料とする塗料より形成される塗膜は、耐水性が十分ではなく、塗膜が水を吸収して白化しやすかった。
特許文献4に記載の塗料用組成物では、耐汚染性に優れる塗膜を形成することはできるものの、塗膜の耐水性を満足することはできなかった。
このように、耐汚染性と耐水性の両方を満足する塗膜を形成することは困難であった。
また、塗膜に耐汚染性を付与できたとしても、その性能を長期にわたって持続させることは困難であった。
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与でき、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗料用水性樹脂、および優れた耐汚染性と耐水性を有し、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗膜を形成できる水系塗料の提供を目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、アミノ基、アルコキシシリル基、およびカルボキシル基をそれぞれ有するエチレン性不飽和モノマーを共重合させてなるポリマー(A)を添加剤として塗料に用いることで、塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与できることを見出した。この耐汚染性を長期にわたって持続させるためには、架橋剤の役割を果たすアルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマーの割合を増やして、塗膜の架橋密度を高めればよい。
しかし、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマーの割合を増やすと、造膜性が低下して造膜時にクラックが発生したり、塗膜の耐水性が低下したりするという欠点があった。
そこで、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、上述したポリマー(A)と、さらにカルボジイミド基を有する水性ポリマー(B)を添加剤として塗料に用いることで、塗膜に付与された耐汚染性が長期にわたって持続されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の塗料用水性樹脂は、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマー(A)と、カルボジイミド基を有する水性ポリマー(B)とを含有する塗料用水性樹脂であって、前記モノマー混合物100質量%中、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)の含有量が5.00〜95.00質量%、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量が0.01〜5.00質量%、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量が0.50〜20.00質量%であり、かつ、前記水性ポリマー(B)のカルボジイミド基モル数と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)のカルボキシル基モル数との比率(カルボジイミド基モル数/カルボキシル基モル数)が、0.28〜3.20であることを特徴とする。
また、本発明の水系塗料は、前記塗料用水性樹脂を含むことを特徴とする。
本発明によれば、塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与でき、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗料用水性樹脂が得られる。
また、本発明の水系塗料によれば、優れた耐汚染性と耐水性を有し、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗膜を形成できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[塗料用水性樹脂]
本発明の塗料用水性樹脂(以下、「水性樹脂」という。)は、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)を含有するモノマー混合物を共重合して得られるポリマー(A)と、カルボジイミド基を有する水性ポリマー(B)とを含有する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の両方を示し、「(メタ)アクリロキシ」とは、メタクリロキシとアクリロキシの両方を示すものとする。
<ポリマー(A)>
ポリマー(A)は、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)を含有するモノマー混合物を共重合したポリマーである。
(アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1))
アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)(以下、「(a1)成分」という。)は、ポリマー(A)を含有する水性樹脂を塗料に用いることで、形成される塗膜を親水化して耐汚染性を付与すると共に、塗膜の耐水性をも向上させることを目的として用いる。
上述したように、塗膜の耐水性が低いと塗膜が水を吸収して白化しやすくなる。これは、塗膜に吸収された水が塗膜中に不均一に分布することで、水を吸収した部分と吸収していない部分とで屈折率に差が生じ、その結果、塗膜が白く変色することが原因である。よって、塗膜の白化、すなわち耐吸水白化性は耐水性の指標となる。
(a1)成分を含むモノマー混合物を共重合してなるポリマー(A)を含有する本発明の水性樹脂は、添加剤として塗料に用いられるが、該水性樹脂を添加剤として用いた塗料より形成される塗膜は、水を吸収するものの、吸収された水が塗膜中に均一に分布するため、塗膜の白化を抑制でき、耐吸水白化性に優れる。
(a1)成分としては、親水性を示すアミノ基を有するモノマーが好ましく、例えば三級アミノ基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。具体的には(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノブチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノブチルなどが挙げられる。これらの中でも親水性に優れるという観点から、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルが好ましい。
これら(a)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a1)成分の含有量は、モノマー混合物100質量%中、5.00〜95.00質量%である。(a1)成分の含有量が5.00質量%以上であれば、塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与できる水性樹脂が得られる。一方、(a1)成分の含有量が95.00質量%以下であれば、ポリマー(A)を安定して容易に製造できる。(a1)成分の含有量の下限値は30.00質量%以上が好ましい。一方、(a1)成分の含有量の上限値は90.00質量%以下が好ましい。
(アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2))
アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)(以下、「(a2)成分」という。)は、ポリマー(A)を架橋することを目的として用いる。架橋したポリマー(A)を含有する水性樹脂を塗料に用いることで、塗膜に耐水性、耐候性、耐汚染性を付与できる。
ポリマー(A)が架橋すると、光、熱、水、酸、アルカリなどの外的要因に起因したポリマー鎖の切断が緩和される。従って、架橋したポリマー(A)を含有する水性樹脂を添加剤として用いた塗料より形成される塗膜は耐候性が向上する。
また、塗膜において造膜界面(すなわち、塗膜形成時の粒子融着部分)は、親水基が局在化するため最も水を吸収しやすい部分であるが、架橋により補強されたポリマー(A)を含有する水性樹脂を添加剤として塗料に用いると、それより形成される塗膜に水が浸水しても塗膜中の水分局在化が抑制されるため、塗膜の白化を抑制できる。さらに、架橋によりポリマー(A)が補強されることで、油性の汚れや土埃などの汚染物の水性樹脂への付着を防止でき、その結果、塗膜の耐汚染性が向上する。
(a2)成分としては、架橋可能なシラノール基を有するモノマーが好ましく、例えば三官能または二官能のアクリル系シランモノマーが挙げられる。具体的には3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシランなどが挙げられる。これらの中でも架橋反応速度が比較的早いという観点から、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
これら(a2)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(a2)成分の含有量は、モノマー混合物100質量%中、0.01〜5.00質量%である。(a2)成分の含有量が0.01質量%以上であれば、塗膜により優れた耐水性、耐候性、耐汚染性を付与できる水性樹脂が得られる。一方、(a2)成分の含有量が5.00質量%以下であれば、ポリマー(A)の架橋が過度に進行するのを抑制でき、塗料中での水性樹脂の流動性が阻害されにくくなるので、造膜時にクラックが発生しにくくなる。(a2)成分の含有量の下限値は0.50質量%以上が好ましい。一方、(a2)成分の含有量の上限値は2.00質量%以下が好ましい。
(カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3))
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)(以下、「(a3)成分」という。)は、ポリマー(A)の安定性を維持することを目的として用いる。
ところで、水性樹脂を塗料に用いる際には、水性樹脂が水に分散または溶解した状態で用いる場合が多いが、(a1)成分のみ、または(a1)成分を多量に含む混合物を重合して得られるポリマーは、水に分散または溶解させるとゲル化などを生じて安定性が低下しやすかった。
しかし、本発明では(a3)成分を併用することで、得られるポリマー(A)に適度な電荷が付与されるので、ポリマー(A)を含有する水性樹脂が水に分散または溶解した際に、ポリマー(A)同士の電荷の反発により水中で安定した状態を維持できる。
(a3)成分としては、共重合によりカルボキシル基がポリマー骨格に組み込まれ、水媒体に対する安定性を付与できるモノマーが好ましい。具体的には(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。これらの中でも(a1)成分および(a2)成分との反応がより円滑に進むという観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
(a3)成分の含有量は、モノマー混合物100質量%中、0.50〜20.00質量%である。(a3)成分の含有量が0.50質量%以上であれば、ポリマー(A)の凝集やゲル化の発生を抑制できる。一方、(a3)成分の含有量が20.00質量%以下であれば、塗膜により優れた耐水性、耐候性を付与できる水性樹脂が得られる。(a3)成分の含有量の下限値は2.00質量%以上が好ましい。一方、(a3)成分の含有量の上限値は15.00質量%以下が好ましい。
(その他)
モノマー混合物には、上述した(a1)成分、(a2)成分、および(a3)成分以外のその他のモノマーが含まれていてもよい。
その他のモノマーとしては、(a1)成分、(a2)成分、および(a3)成分と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーが挙げられ、具体的には以下に示す化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類。
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物。
(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ジアセトンアクリルアミド、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基を有するモノマー。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエトキシ(メタ)アクリレート等のスルホ基を有するモノマー。
ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、アリル(メタ)アクリレート、フタル酸ジアリル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能重合性モノマー。
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等のビニル化合物。
(ポリマー(A)の調製)
ポリマー(A)は、例えば以下のようにして調製できる。
反応容器に、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分と、必要に応じてその他のモノマーを含むモノマー混合物と、重合開始剤と、有機溶媒とを投入し、攪拌しながら70〜80℃に加熱して3〜4時間保持し、重合反応を行う。反応が終了した後、冷却し、中和剤を添加して中和する。その後、水を加え、さらに有機溶媒をエバポレーター等で除去し、ポリマー(A)を得る。なお、このようにして得られるポリマー(A)の状態は、微細なポリマー粒子が水に分散したエマルジョンの状態である。
有機溶媒としては、水溶性の溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどが挙げられる。これらの中でも、重合安定性、溶媒の水置換性、溶媒除去性の観点から、1−プロパノール、2−プロパノールが好ましい。
これら有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチル−α−クミルパーオキシド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。
これら重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、還元剤と組み合わせることで、重合反応の速度を速める場合もある。
さらに、得られるポリマー(A)の分子量を調整することを目的として、連鎖移動剤を併用してもよい。連鎖移動剤としては、例えばn−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどが挙げられる。
これら連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中和剤としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノールなどが挙げられる。これらの中でも塗膜に優れた耐水性および耐汚染性を付与する観点から、アンモニアが好ましい。
このようにして得られたポリマー(A)は、水に分散したエマルジョンの状態で用いることができる。エマルジョン中の固形分は15〜30質量%が好ましい。
<水性ポリマー(B)>
水性ポリマー(B)は、カルボジイミド基を有するポリマーである。
ここで、カルボジイミド基とは、下記式(1)で表される官能基である。
−N=C=N− ・・・(1)
水性ポリマー(B)は上述したポリマー(A)をさらに架橋することを目的として用いる。水性ポリマー(B)は、ポリマー(A)中のカルボキシル基((a3)成分に由来)と常温で反応しやすく、ポリマー(A)と水性ポリマー(B)を混合することでポリマー(A)がさらに架橋する。従って、ポリマー(A)と水性ポリマー(B)を含有する本発明の水性樹脂を塗料に用いることで、塗膜の架橋密度が高まり、塗膜に付与された耐汚染性が長期にわたって持続する。すなわち、本発明の水性樹脂は、塗膜に単なる耐汚染性ではなく、持続的な耐汚染性(以下、「耐汚染持続性」という。)を付与することができる。
塗膜の架橋密度は、架橋剤の割合を増やすことで高めることができるものの、上述したように架橋剤の役割を果たす(a2)成分の含有量を増やすと、造膜性が低下して造膜時にクラックが発生しやすかった。これは、(a2)成分が自己架橋型であるため、含有量が増えると架橋が過度に進行し、その結果、塗料中で水性樹脂(特にポリマー(A))の流動性が阻害され、造膜性が低下するものと考えられる。また、(a2)成分の含有量が増えると、過剰分の(a2)成分が塗膜中に残ってしまい、その結果、塗膜の耐水性も低下しやすくなる。従って、造膜性や耐水性を考慮すると、ポリマー(A)に用いられるモノマー混合物中の(a2)成分の含有量の上限は、5.00質量%以下に制限する必要がある。
対して、水性ポリマー(B)も架橋剤の役割を果たすが、その架橋のメカニズムは(a2)成分とは異なり、ポリマー(A)中のカルボキシル基との反応によって行われる。従って、含有量を増やしても造膜性を維持しつつ架橋密度を高めることができる。
水性ポリマー(B)としては、カルボジイミド基を有するものであれば特に制限されないが、カルボジイミド基を有するモノマー(b1)の単独または共重合体、該モノマー(b1)と共重合可能なモノマー(b2)との共重合体などが挙げられる。
また、水性ポリマー(B)としては、市販品を用いてもよい。例えば日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライトシリーズ(「E−01」、「E−02」、「E−04」、「SV−02」、「V−02」、「V−04」;いずれも固形分40質量%)などが好適である。
水性樹脂中の水性ポリマー(B)の含有量(固形分換算)は、カルボジイミド基モル数と(a3)成分のカルボキシル基モル数との比率により定まる。
すなわち、水性ポリマー(B)の含有量は、当該水性ポリマー(B)のカルボジイミド基モル数と(a3)成分のカルボキシル基モル数との比率(カルボジイミド基モル数/カルボキシル基モル数)が0.28〜3.20となる量であり、好ましくは0.40〜2.00である。比率が0.28以上であれば、塗膜に耐汚染持続性を付与できる水性樹脂が得られる。一方、比率が3.20以下であれば、本発明の水性樹脂を添加剤として含む塗料の造膜性を維持でき、平滑性に優れる塗膜を形成できる。
なお、(a3)成分のカルボキシル基モル数、および水性ポリマー(B)のカルボジイミド基モル数は、例えばポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物を100gに換算し、下記式(i)、(ii)よりそれぞれ求められる。
カルボキシル基モル数[mol]=モノマー混合物を100gとしたときの(a3)成分の量[g]/(a3)成分の分子量 ・・・(i)
カルボジイミド基モル数[mol]=ポリマー(A)に添加した水性ポリマー(B)の固形分量[g]/水性ポリマー(B)のカルボジイミド基当量[g/mol] ・・・(ii)
以上説明した本発明の水性樹脂は、特定量の(a1)成分と、(a2)成分と、(a3)成分とを共重合して得られるポリマー(A)を含有するので、塗料に用いたときに、形成される塗膜に優れた耐汚染性と耐水性を付与することができる。加えて、水性ポリマー(B)を含有するので、塗膜に付与された耐汚染性が持続する。
本発明の水性樹脂は、水系塗料の添加剤として好適である。水性樹脂は後述するバインダー樹脂に配合して水系塗料としてもよいし、市販の塗料に添加して用いることもできる。
[水系塗料]
本発明の水系塗料は、バインダー樹脂と、上述した水性樹脂とを含む。
バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等のエマルジョン樹脂などが挙げられる。
水性樹脂の含有量は、バインダー樹脂との質量比(固形分比)がバインダー樹脂:水性樹脂=100:5〜100:15となる範囲が好ましい。
なお、水性樹脂を市販の塗料に添加して用いる場合、その添加量は、塗料に含まれるバインダー樹脂との質量比(固形分比)が、上記範囲内となるように適宜決定すればよい。
また、水系塗料は、体質顔料、着色顔料、光輝性顔料、シリカ等の無機充填剤;アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ等の樹脂粒子;疎水性造膜助剤や、親水性造膜助剤等の造膜助剤;有機顔料や無機顔料等の着色のための着色剤;消泡剤;増粘剤などの、その他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
水系塗料は、バインダー樹脂に本発明の水性樹脂を添加して調製してもよいし、予めバインダー樹脂とポリマー(A)を混合しておき、得られた混合物に水性ポリマー(B)を添加して調製してもよい。
以上説明した本発明の水系塗料は、上述した水性樹脂を含有するので、優れた耐汚染性と耐水性を有し、しかも耐汚染性が長期にわたって持続する塗膜を形成できる。
本発明の水系塗料は、建築物の外壁など長時間屋外に曝されるものへの塗装用の塗料として好適である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例中「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
[ポリマー(A)の調製]
<ポリマー(A1)>
攪拌機を備えた内容量2Lのセパラブルフラスコに、(a1)成分としてメタクリル酸ジメチルアミノエチルを180部、(a2)成分として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2部、(a3)成分としてメタクリル酸を12部、およびその他のモノマーとしてメチルメタクリレートを6部と、有機溶媒として2−プロパノールを600部と、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン2部を仕込み、攪拌しながら70℃まで昇温した。その後70℃にて、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを2部添加し、内温75℃にて4時間保持し、重合反応を行った。その後、40℃まで冷却し、25%アンモニア水16部および水784部を加え、均一になるまで攪拌を続け、樹脂固形分12.5%の液体を得た。ついで、ロータリーエバポレーターで2−プロパノールを留去し、樹脂固形分19.9%のポリマー(A1)を得た。
<ポリマー(A2〜A18)>
各成分の量を表1、2に示す値に変更した以外は、ポリマー(A1)と同様にして樹脂固形分19.9%のポリマー(A2〜A18)を調製した。
ただし、ポリマーA15は、(a1)成分の含有量が98%と多いモノマー混合物を用いたため、重合反応後に水を加えた際にゲル化してしまい、調製できなかった。また、ポリマーA17は、(a3)成分を含有しないモノマー混合物を用いたため、合成中に凝集が生じ、調製できなかった。
Figure 2012062413
Figure 2012062413
[白ベース塗料(I)の調製]
水12部、ノプコスパース44Cを1部、プロピレングリコールを2部、SNデフォーマー1320を0.1部、ヒドロキシエチルセルロースSP400を0.2部混合し、さらに25%アンモニア水を0.1部と、ベンゾチアゾール系防腐剤を0.1部加えて混合した後、ガラスビーズと共に高速ディスパーで攪拌しつつ、酸化チタン30部を徐々に添加して、白ペーストを得た。
得られた白ペーストを45.5部、アクリルシリコーン系エマルジョン(固形分45%、最低造膜温度0℃、粒子径0.1μm、pH8.5)を150部、テキサノールを4部、SNシックナー641を1部混合し、白ベース塗料(I)を調製した。
[クリアベース塗料(I)の調製]
アクリルシリコーン系エマルジョン(固形分45%、最低造膜温度0℃、粒子径0.1μm、pH8.5)を100部と、テキサノールを2部混合し、クリアベース塗料(I)を調製した。
[白ベース塗料(II)調製]
白ベース塗料(I)の調製で得た白ペーストを45.5部、フッ素系エマルジョン(固形分50%、最低造膜温度30℃、粒子径0.2μm、pH8.0)を67.5部、アクリルエマルジョン(固形分50%、最低造膜温度0℃、粒子径0.2μm、pH8.0)を67.5部、テキサノールを6部、SNシックナー641を1部混合し、白ベース塗料(II)を調製した。
[クリアベース塗料(II)の調製]
フッ素系エマルジョン(固形分50%、最低造膜温度30℃、粒子径0.2μm、pH8.0)を50部と、アクリルエマルジョン(固形分50%、最低造膜温度0℃、粒子径0.2μm、pH8.0)を50部混合し、これにテキサノールを4部添加して、クリアベース塗料(II)を調製した。
[実施例1−1]
<白塗料(I)の調製>
白ベース塗料(I)2953g(樹脂固形分:1004g)と、ポリマー(A)としてポリマー(A1)502g(樹脂固形分:100g)とを混合した。得られた混合物に、水性ポリマー(B)として表3に示す量の日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトE−04」(固形分40%、カルボジイミド基当量274g/mol)を添加し、白塗料(I)を調製した。
なお、表3に示す「カルボキシル基モル数」は、ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物を100gとしたときの(a3)成分のカルボキシル基モル数(mol)であり、上記式(i)より求めた。また、「水性ポリマー(B)の添加量」は、ポリマー(A)の調製に用いたモノマー混合物を100gとしたときの固形分換算量(g)であり、「カルボジイミド基モル数」は、上記式(ii)より求めた。以下に示す表4〜6についても同様である。
<クリア塗料(I)の調製>
クリアベース塗料(I)2282g(樹脂固形分:1004g)と、ポリマー(A)としてポリマー(A1)502g(樹脂固形分:100g)とを混合した。得られた混合物に、水性ポリマー(B)として表3に示す量の日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトE−04」(固形分40%、カルボジイミド基当量274g/mol)を添加し、クリア塗料(I)を調製した。
<評価>
(造膜性の評価)
ポリエチレン製の板(100×100×5mm)に、乾燥膜厚が0.5mmになるように白塗料(I)を塗布した。その後、温度23℃、湿度65%RHの条件下で1日間乾燥させて塗膜を形成した。塗膜の状態を目視にて観察し、以下に示す評価基準にて評価した。結果を表3に示す。
◎:連続膜が形成された。
○:連続膜は形成されたが、平滑さにやや欠ける。
△:連続膜は形成されたが、平滑さに著しく欠ける。
×:塗膜表面に深いクラックが発生した。
(促進耐汚染性の評価)
スレート板(70×150×3mm)の表面に、溶剤ウレタン系下塗り塗料(2液)を塗布した。室温下で1日間乾燥させた後、水系下塗り塗料(1液)をさらに塗布し、室温下で4時間乾燥させて下塗り塗膜を形成した。その後、乾燥膜厚が0.5mmになるように下塗り塗膜上に白塗料(I)を塗布し、室温下で1週間乾燥させて促進耐汚染性評価用の試験片を作製した。得られた試験片について、Lab値を測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、「CM−2500d」)を用いて測定した。
ついで、70℃で石油を燃焼させたススが舞う煤煙試験機内に試験片を1時間放置し、煤煙処理を施した。その後、エアブローでススを払い、スポンジで水洗した。煤煙処理後の試験片について、先と同様にしてLab値を測定し、煤煙処理後のLab値と煤煙処理前のLab値からΔEを求めた。結果を表3に示す。なお、ΔEは数値が小さいほど耐汚染性に優れることを意味する。
(耐汚染持続性の評価)
促進耐汚染性の評価と同様の手順にて試験片を作製した。なお、白塗料(I)を塗布後の乾燥過程において、試験片の側面および裏面(すなわち、白塗料(I)が塗布されていない面)をエポキシ塗料(2液)にて塗り固めておいた。ついで、試験片を50℃の温水中に3日間浸漬させた後、1日以上乾燥させたものを耐汚染持続性評価用の試験片とした。なお、温水は1日毎に新しい温水と交換した。
得られた試験片について、促進耐汚染性の評価と同様にして煤煙処理を施し、煤煙処理前後におけるLab値を測定してΔEを求め、促進耐汚染性の評価で求めたΔEとの差(ΔE−ΔE)を算出し、この値を耐汚染持続性の指標とした。差(ΔE−ΔE)が小さいほど耐汚染持続性に優れることを意味する。
(耐水性の評価)
ポリエチレン製の板(100×100×5mm)に、乾燥膜厚が0.5mmになるようにクリア塗料(I)を塗布した。その後、温度23℃、湿度65%RHの条件下で1日間乾燥させ、ついで50℃で1日間乾燥させて塗膜を形成した。
得られた塗膜を25mm角に切断し、これを純水に1日間浸漬させた。浸漬後の塗膜の色調を目視にて観察し、以下に示す評価基準にて評価した。結果を表3に示す。
○:塗膜は透明である。
△:塗膜にやや青みがある。
×:塗膜が白化し、不透明である。
[実施例1−2〜1−15、比較例1−1〜1−6]
ポリマー(A)として表3、4に示す種類のポリマー(A)を用い、水性ポリマー(B)の添加量を表3、4に示す値に変更した以外は、実施例1−1と同様にして白塗料(I)およびクリア塗料(I)を調製し、各評価を行った。結果を表3、4に示す。
Figure 2012062413
Figure 2012062413
表3、4から明らかなように、各実施例で得られた白塗料(I)およびクリア塗料(I)は、造膜性が良好で、優れた耐汚染性と耐水性を兼ね備えた塗膜を形成できた。しかも、塗膜に付与された耐汚染性が持続した。
従って、本発明の水性樹脂であれば、初期のおける耐汚染性はもちろんのこと、長期にわたる耐汚染性(耐汚染持続性)と耐水性を塗膜に付与できる。
一方、(a1)成分の含有量が3%と少ないモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A14)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例1−1の白塗料(I)は、塗膜の耐汚染性が低かった。
(a2)成分を含有しないモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A16)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例1−2の白塗料(I)は、塗膜の耐汚染持続性が低かった。また、また、比較例1−2で得られたクリア塗料(I)は、塗膜の耐水性が低かった。
(a2)成分の含有量が7%と多いモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A18)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例1−3の白塗料(I)は、造膜時に塗膜にクラックが発生し、造膜性に劣っていた。そのため、塗膜の促進耐汚染性および耐汚染持続性の評価は行わなかった。また、比較例1−3で得られたクリア塗料(I)は、白塗料(I)と同様に造膜時に塗膜にクラックが発生したため、塗膜の耐水性の評価は行わなかった。
水性ポリマー(B)を含有しない、または水性ポリマー(B)の含有量が少ない(すなわち、カルボジイミド基モル数とカルボキシル基モル数の比率が0.24と小さい)水性樹脂を用いて調製した比較例1−4、比較例1−5の白塗料(I)は、塗膜の耐汚染持続性が低かった。
水性ポリマー(B)の含有量が多い(すなわち、カルボジイミド基モル数とカルボキシル基モル数の比率が3.40と大きい)水性樹脂を用いて調製した比較例1−6の白塗料(I)は、塗膜の平滑性が著しく劣っていた。そのため、煤煙処理を施してLab値を測定することが困難であったため、塗膜の促進耐汚染性および耐汚染持続性の評価は行わなかった。なお、比較例1−6で得られたクリア塗料(I)は、白塗料(I)と同様に塗膜の平滑性が著しく劣っていたが、耐水性の評価には耐えうると判断したので耐水性の評価を行ったところ、塗膜は白化し、耐水性に劣っていた。
[実施例2−1]
<白塗料(II)の調製>
白ベース塗料(II)2789g(樹脂固形分:1004g)と、ポリマー(A)としてポリマー(A1)502g(樹脂固形分:100g)とを混合した。得られた混合物に、水性ポリマー(B)として表5に示す量の日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトE−04」(固形分40%、カルボジイミド基当量274g/mol)を添加し、白塗料(II)を調製した。
<クリア塗料(II)の調製>
クリアベース塗料(II)2092g(樹脂固形分:1004g)と、ポリマー(A)としてポリマー(A1)502g(樹脂固形分:100g)とを混合した。得られた混合物に、水性ポリマー(B)として表5に示す量の日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトE−04」(固形分40%、カルボジイミド基当量274g/mol)を添加し、クリア塗料(II)を調製した。
得られた白塗料(II)およびクリア塗料(II)について、実施例1−1と同様にして各評価を行った。結果を表5に示す。
[実施例2−2〜2−15、比較例2−1〜2−6]
ポリマー(A)として表5、6に示す種類のポリマー(A)を用い、水性ポリマー(B)の添加量を表5、6に示す値に変更した以外は、実施例2−1と同様にして白塗料(II)およびクリア塗料(II)を調製し、各評価を行った。結果を表5、6に示す。
Figure 2012062413
Figure 2012062413
表5、6から明らかなように、各実施例で得られた白塗料(II)およびクリア塗料(II)は、造膜性が良好で、優れた耐汚染性と耐水性を兼ね備えた塗膜を形成できた。しかも、塗膜に付与された耐汚染性が持続した。
従って、本発明の水性樹脂であれば、初期のおける耐汚染性はもちろんのこと、長期にわたる耐汚染性(耐汚染持続性)と耐水性を塗膜に付与できる。
一方、(a1)成分の含有量が3%と少ないモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A14)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例2−1の白塗料(II)は、塗膜の耐汚染性が低かった。
(a2)成分を含有しないモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A16)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例2−2の白塗料(II)は、塗膜の耐汚染持続性が低かった。また、また、比較例2−2で得られたクリア塗料(II)は、塗膜の耐水性が低かった。
(a2)成分の含有量が7%と多いモノマー混合物を共重合して得たモノマー(A18)を含む水性樹脂を用いて調製した比較例2−3の白塗料(II)は、造膜時に塗膜にクラックが発生し、造膜性に劣っていた。そのため、塗膜の促進耐汚染性および耐汚染持続性の評価は行わなかった。また、比較例2−3で得られたクリア塗料(II)は、白塗料(II)と同様に造膜時に塗膜にクラックが発生したため、塗膜の耐水性の評価は行わなかった。
水性ポリマー(B)を含有しない、または水性ポリマー(B)の含有量が少ない(すなわち、カルボジイミド基モル数とカルボキシル基モル数の比率が0.24と小さい)水性樹脂を用いて調製した比較例2−4、比較例2−5の白塗料(II)は、塗膜の耐汚染持続性が低かった。
水性ポリマー(B)の含有量が多い(すなわち、カルボジイミド基モル数とカルボキシル基モル数の比率が3.40と大きい)水性樹脂を用いて調製した比較例2−6の白塗料(II)は、塗膜の平滑性が著しく劣っていた。そのため、煤煙処理を施してLab値を測定することが困難であったため、塗膜の促進耐汚染性および耐汚染持続性の評価は行わなかった。なお、比較例2−6で得られたクリア塗料(II)は、白塗料(II)と同様に塗膜の平滑性が著しく劣っていたが、耐水性の評価には耐えうると判断したので耐水性の評価を行ったところ、塗膜は白化し、耐水性に劣っていた。

Claims (2)

  1. アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)、およびカルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)を含むモノマー混合物を共重合して得られるポリマー(A)と、カルボジイミド基を有する水性ポリマー(B)とを含有する塗料用水性樹脂であって、
    前記モノマー混合物100質量%中、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(a1)の含有量が5.00〜95.00質量%、アルコキシシリル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量が0.01〜5.00質量%、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量が0.50〜20.00質量%であり、
    かつ、前記水性ポリマー(B)のカルボジイミド基モル数と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和モノマー(a3)のカルボキシル基モル数との比率(カルボジイミド基モル数/カルボキシル基モル数)が、0.28〜3.20であることを特徴とする塗料用水性樹脂。
  2. 請求項1に記載の塗料用水性樹脂を含むことを特徴とする水系塗料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016138223A (ja) * 2015-01-29 2016-08-04 旭硝子株式会社 水性塗料組成物および塗装物品
JP2019019270A (ja) * 2017-07-20 2019-02-07 藤倉化成株式会社 多彩塗料組成物
JP2019019269A (ja) * 2017-07-20 2019-02-07 藤倉化成株式会社 多彩塗料組成物
JP2019189713A (ja) * 2018-04-23 2019-10-31 横浜ゴム株式会社 プライマー組成物

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