JP2012062282A - 前立腺肥大症の予防または治療剤 - Google Patents

前立腺肥大症の予防または治療剤 Download PDF

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Takayuki Noguchi
隆之 野口
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Hideo Iwasaka
日出男 岩坂
Satoshi Hagiwara
聡 萩原
Hironori Koga
寛教 古賀
Masatane Moriyama
正胤 守山
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智久 内田
Ryoji Hamanaka
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久美子 酒井
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Abstract

【課題】前立腺肥大症の予防または治療剤を提供すること。
【解決手段】次の式(1)
Figure 2012062282

で示されるαリポ酸誘導体、その薬理学的に許容される塩またはそれらの溶媒和物を有効成分とする前立腺肥大症の予防または治療剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、αリポ酸誘導体を有効成分とする前立腺肥大症の予防または治療剤(抗前立腺肥大症剤)に関する。
前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)は主に50歳以上の高齢男性に出現する排尿障害を伴う疾患であり、加齢と共に発症頻度が増加する。日本におけるBPH患者数は、人口構成の急速な高齢化に伴い、近年増加の一途をたどっている。BPHは、その排尿障害により高齢男性の生活の質を著しく低下させる。このため、患者のQOLを向上させる目的からも、また上記するように患者数が多いため医療経済的な観点からも有効な治療薬が求められている。
BPHに伴う排尿障害の原因として、前立腺の肥大による直接的な尿道圧迫(機械的閉塞)と、交感神経を介した前立腺平滑筋の過剰収縮による尿道内圧の上昇(機能的閉塞)の2つの要因が同時に関与することが明らかになっている。薬物療法はその両方の機序に対応可能であり、機械的閉塞には5α−リダクターゼ阻害薬、機能的閉塞にはα1交感神経遮断薬が主に用いられている。
α1交感神経遮断薬は、前立腺の平滑筋を弛緩することで尿道抵抗を低下させ、排尿障害を改善する薬剤として、現在、前立腺肥大症の治療薬として第一選択薬になっている。しかし、α1交感神経遮断薬は、自覚症状は改善するものの前立腺そのものを縮小する作用は有していない。
一方、5α−リダクターゼ阻害薬は、5α−リダクターゼによるテストステロンからより強力なアンドロゲンである5αデヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑制する抗アンドロゲン作用により、前立腺を縮小する効果はあるものの、勃起不全を引き起こしたり、前立腺癌のマーカーである血清PSA(前立腺特異抗原)値を低下させ、前立腺がんの早期診断を困難にするという問題が指摘されている。また従来の5α−リダクターゼ阻害薬は、フィナステリド(finasteride)で代表されるようにステロイド構造またはステロイド類似構造を有しており、ホルモン様作用や肝機能障害等の副作用が問題となっている。さらにフィナステリドには前立腺がん発生率減少効果があり、前立腺がん予防薬としての効果が期待されている反面、組織学的悪性度の高いがんの発生が増加するという問題も指摘されており(非特許文献1)、前立腺細胞内での低5α−リダクターゼ活性と前立腺がん発生との関連を警告する報告も出されている(非特許文献2)。
酒井英樹、「5α還元酵素阻害薬」、泌尿器外科、2007年20(12)、1501-1506 Pitts WR Jr: The clinical implications of the Prostate Cancer Prevention Trial (PCPT). BJU Int 93:1120-1121,2004
本発明は、αリポ酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分とする前立腺肥大症の予防または治療剤を提供することを目的とする。より好ましくは、本発明は、従来5α−リダクターゼ阻害薬、特にフィナステリドの問題点である肝機能障害がなく、むしろ肝臓保護作用があり、しかも前立腺がんに対しても有効な前立腺肥大症の予防または治療剤(以下、これを総称して「抗前立腺肥大症薬」ともいう。)を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、下記の式(1)で示される化合物、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物(本明細書中、これらを「本発明の化合物(1)」または「本化合物(1)」と総称する場合がある。)に、5α−リダクターゼ阻害作用があり、前立腺肥大症に対して予防または治療作用を発揮しえることを見出した。さらに本発明者らは、当該本化合物(1)は、従来より前立腺肥大症の治療に使用されている5α−リダクターゼ阻害薬であるフィナステリドなどとは異なり、ステロイド骨格を有しない化合物であるためステロイド剤特有の副作用(肝機能障害)がないだけでなく、それ自身が肝臓保護作用を有することを見出し、長期服用しても肝機能障害を生じにくい前立腺肥大症の予防または治療薬として有用であること、また悪性前立腺がんの発生が懸念されるフィナステリドとは異なり、がん細胞の増殖に対して有意に抑制作用を発揮し、前立腺肥大症の予防または治療とともに前立腺がんの発生を予防する薬としても有効であることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであって、下記の実施形態を包含するものである。
(I)前立腺肥大症の予防または治療薬(抗前立腺肥大症薬)
(I-1)次の式(1)
Figure 2012062282
で示されるαリポ酸誘導体、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物(化合物(1))を有効成分とする前立腺肥大症の予防または治療薬(抗前立腺肥大症薬)。
(I-2)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がα−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(I-1)記載の抗前立腺肥大症薬。
(I-3)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リジン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(I-1)または(I-2)記載の抗前立腺肥大症薬。
(I-4)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がジペプタイド残基である、上記(I-1)記載の抗前立腺肥大症薬。
(I-5)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がアスパルチルグリシン残基又はスレオニルグリシン残基である、上記(I-4)記載の抗前立腺肥大症薬。
(I-6)式(1)中、Mで示される金属が亜鉛である上記(I-1)ないし(I-5)の何れかに記載の抗前立腺肥大症薬。
(II)前立腺肥大症の予防または治療方法(抗前立腺肥大症療法)
(II-1)次の式(1)
Figure 2012062282
で示されるαリポ酸誘導体、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物(化合物(1))の有効量を、前立腺肥大症に罹患しているか、前立腺肥大症に罹患する可能性のある雄性哺乳動物に投与することを含む、当該雄性哺乳動物に対する前立腺肥大症の予防または治療方法(抗前立腺肥大症療法)。
(II-2)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がα−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(II-1)記載の抗前立腺肥大症療法。
(II-3)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リジン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(II-1)または(II-2)記載の抗前立腺肥大症療法。
(II-4)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がジペプタイド残基である、上記(II-1)記載の抗前立腺肥大症療法。
(II-5)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がアスパルチルグリシン残基又はスレオニルグリシン残基である、上記(II-4)記載の抗前立腺肥大症療法。
(II-6)式(1)中、Mで示される金属が亜鉛である上記(II-1)ないし(II-5)の何れかに記載の抗前立腺肥大症療法。
(III)抗前立腺肥大症療法に用いられる化合物(1)
(III-1)前立腺肥大症の予防または治療に用いられる、式(1)
Figure 2012062282
で示されるαリポ酸誘導体、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物(化合物(1))。
(III-2)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がα−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(III-1)記載の化合物(1)。
(III-3)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リジン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(III-1)記載の化合物(1)。
(III-4)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がジペプタイド残基である、上記(III-1)記載の化合物(1)。
(III-5)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がアスパルチルグリシン残基又はスレオニルグリシン残基である、上記(III-4)記載の化合物(1)。
(III-6)式(1)中、Mで示される金属が亜鉛である上記(III-1)ないし(III-5)の何れかに記載の化合物(1)。
(IV)前立腺肥大症の予防または治療剤(抗前立腺肥大症薬)の製造のための化合物(1)の使用
(IV-1)抗前立腺肥大症薬の製造のための、式(1)
Figure 2012062282
で示されるαリポ酸誘導体、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物(化合物(1))の使用。
(IV-2)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がα−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(IV-1)記載の使用。
(IV-3)式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リジン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、上記(IV-1)記載の使用。
(IV-4)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がジペプタイド残基である、上記(IV-1)記載の使用。
(IV-5)式(1)中、Rで示されるペプタイド残基がアスパルチルグリシン残基又はスレオニルグリシン残基である、上記(IV-4)記載の使用。
(IV-6)式(1)中、Mで示される金属が亜鉛である上記(IV-1)ないし(IV-5)の何れかに記載の使用。
本発明の化合物(1)は、5α−リダクターゼに対してその活性を阻害する作用を有することから、雄の哺乳動物(例えば、ウシ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ヒトなど)の前立腺肥大症の予防または治療に有用である。なお、本発明において、前立腺肥大症の予防とは、前立腺細胞が腫瘍(良性腫瘍)へと増殖することを抑制すること、及び増殖する以前に消滅させてしまうことを含むものである。
本発明の化合物(1)は、従来より前立腺肥大症の治療に使用されている5α−リダクターゼ阻害薬であるフィナステリドなどとは異なり、ステロイド骨格を有しない化合物であるため、ステロイド剤特有の副作用(例えば肝機能障害等)を有しないと考えられるが、そればかりではなく、実験例2に示すように、それ自身が肝臓に対して保護作用を発揮する。さらに本発明の化合物(1)は極めて毒性が低く、例えば、N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジン亜鉛キレート化合物のラットでの急性毒性LD50は、経口投与で2000mg/kg以上であり、無毒性の分類に属する。これらのことから、本発明の化合物(1)は、前立腺肥大症の予防及び治療を目的として長期に亘って服用することができる。
さらに悪性前立腺がんの発生が懸念されるフィナステリドとは異なり、がん細胞の増殖に対して有意に抑制作用を発揮し、前立腺肥大症の予防または治療薬として使用されると同時に前立腺がんの発生を予防する薬としても服用することができる。
本発明の各種の化合物(1)(Glu:調製例12の化合物(DHLGluZn)、NL:調製例16の化合物(DHLNLZn)、Ser:調製例15の化合物(DHLSerZn)、Ant:調製例8の化合物(DHLAntZn)、Tau:調製例9の化合物(DHLTauZn)、Pen:調製例18の化合物(DHLPenZn)、H:調製例11の化合物(DHLHZn))について、5α−リダクターゼ阻害活性を測定した結果を示す(実験例1)。 (A)男性ホルモン依存性前立腺がん細胞(LNCAP)の増殖に対する、調製例11の化合物(DHLTauZn)(10,50,100,500,1000μg/ml)の抑制効果を示す(実験例2)。(B)男性ホルモン非依存性前立腺がん細胞(PC3)の増殖に対する、調製例11の化合物(DHLTauZn)(10,50,100,500,1000μg/ml)の抑制効果を示す(実験例2)。 (A)は、APO-BrdU(登録商標)キットに附属の陽性コントロール細胞のアポトーシス誘導結果を示す(フローサイトメトリー分析結果)。(B)は、左から、0.5mM DHLHZnの存在下で培養する前の大腸がん細胞の分析結果(0h)、培養開始後24時間後の大腸がん細胞の分析結果(24h)、及び培養開始後48時間後の大腸がん細胞の分析結果(48h)をそれぞれ示す(フローサイトメトリー分析結果)(参考実験例1(2))。 DHLHZnで0時間、24時間及び48時間処理した大腸がん細胞の細胞周期を、フローサイトメトリーで分析した結果を示す(参考実験例2(3))。各図中に、G1期、S期、及びG2/M期にある細胞の割合を示す。 本化合物((A)DHLHZn、(B)DHLTauZn)による大腸がん細胞におけるp53タンパク質のリン酸化に与える影響を調べた結果を示す(参考実験例3)。縦軸は、大腸がん細胞中のp53タンパク質総量に対するリン酸化p53タンパク質の割合を、本化合物(DHLHZn、DHLTauZn)で処理しない大腸がん細胞(図中、0hで示す)での割合を100%として換算して示したものである。横軸は、50mMのDHLHZnまたはDHLTauZnで0時間(0h)、6時間(6h)及び24時間(24h)処理した大腸がん細胞を意味する。 細胞周期に対するDHLHZnの影響を調べた結果を示す(参考実験例3)。DHLHZnで0時間、6時間及び24時間処理した大腸がん細胞中の、p21タンパク質、リン酸化Rb(p-Rb)、総Rbタンパク質の発現量をウエスタンブロット分析により測定した結果を示す。
本発明が対象とする抗前立腺肥大症薬は、下式(1)で示されるαリポ酸誘導体、またはその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物を有効成分とする。
Figure 2012062282
上記式(1)において、Rで示されるアミノ酸残基とは、同一分子内にカルボキシル基とアミノ基を有する化合物、または同一分子内にスルホン酸基とアミノ基を有する化合物の残基をいい、アミノ酸として、例えば、いわゆるα−アミノ酸の他、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸が挙げられる。なお、アミノ酸残基とは、アミノ酸において一つのアミノ基から水素原子が一つとれた部分構造をいう。
α−アミノ酸とは、カルボキシル基(又はスルホン酸基)が結合した炭素(α−炭素)にアミノ基も結合した化合物をいい、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファンなど並びにこれらの異性体及び誘導体が挙げられる。異性体としてはノルロイシンなどが挙げられ、誘導体としては4−ヒドロキシプロリン、ペニシラミン、5−ヒドロキシトリプトファンペニシラミンなどが挙げられる。
ω−アミノ酸とは、カルボキシル基(又はスルホン酸基)の結合した炭素と反対側の炭素鎖末端の炭素にアミノ基が結合した化合物をいい、例えば4−アミノ酪酸(γ−アミノ酪酸)、6−アミノヘキサン酸、2−アミノエタンスルホン酸(タウリン)、3−アミノプロピオン酸、トランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸などが挙げられる。なお、例えばリジンの如き同一分子内に複数のアミノ基を有するアミノ酸については、式(1)においてα−炭素に結合したアミノ基が結合する場合はα−アミノ酸に、ε−炭素に結合したアミノ基が結合する場合はω−アミノ酸に分類される。
特殊アミノ酸とは、その構造上、α−アミノ酸にもω−アミノ酸にも分類されないアミノ酸をいい、例えばアントラニル酸、4−アミノベンゼン−1−スルホン酸などが挙げられる。
制限はされないものの、これらアミノ酸のうち、好ましくはヒスチジン、グルタミン酸、ペニシラミン、及びノルロイシン等のα−アミノ酸;2−アミノエタンスルホン酸、トランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸等のω−アミノ酸;及びアントラニル酸等の特殊アミノ酸を挙げることができる。好ましいアミノ酸としてはグルタミン酸、ノルロイシン、セリン、アントラニル酸、2−アミノエタンスルホン酸、ペニシラミン及びヒスチジンを;より好ましくはグルタミン酸、ノルロイシン、セリン、アントラニル酸、2−アミノエタンスルホン酸、及びペニシラミンを;特に好ましくはグルタミン酸、ノルロイシン、及びセリンを挙げることができる。
また 上記式(1)において、Rで示されるペプタイド残基とは、ペプタイドにおいてN末端のアミノ酸のアミノ基から水素原子が一つとれた部分構造をいう。
ここでペプタイドとは、複数のアミノ酸がアミド結合により結合した化合物をいい、このうち、二つのアミノ酸がアミド結合したジペプタイドが好ましい。ジペプタイドとしては、例えばアスパルチルグリシン、スレオニルグリシンが挙げられる。
上記式(1)において、Mで示される金属としては、パラジウム以外の薬学的に許容される金属を挙げることができ、具体的には亜鉛、コバルト、鉄、ゲルマニウム、セレンが挙げられる。これらのうち亜鉛が好ましい。
本発明に係るαリポ酸誘導体(1)は、立体異性体の混合物または純粋若しくは実質的に純粋な状態の各立体異性体を包含する。例えば、炭素原子のいずれかに不斉中心を有するαリポ酸誘導体(1)は、エナンチオマー若しくはジアステレオマー又はこれらの混合物として存在し得る。
αリポ酸誘導体(1)の薬理学的に許容される塩としては、無機塩基、例えばナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩およびカルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、並びに、有機塩基、例えばモノエタノールアミンなどのアミン類との塩が挙げられるが、これら以外の塩であっても薬理学的に許容される塩であれば何れのものであっても本発明の目的のため適宜に用いることが出来る。またαリポ酸誘導体(1)の薬理学的に許容される塩には、その分子内塩も含まれる。
αリポ酸誘導体(1)またはその薬理学的に許容される塩の溶媒和物には、水和物が含まれる。かかる水和物としては、例えば、1水和物,2水和物、1/2水和物、1/3水和物、1/4水和物、2/3水和物、3/2水和物、5/6水和物が含まれる。
本発明の有効成分であるαリポ酸誘導体(1)の合成法を次に掲げる。
Figure 2012062282
本発明に係るαリポ酸誘導体(1)は、α−リポ酸を所望によりアミノ酸若しくはペプタイドと反応させアミド体としたものを、酸で還元し金属と反応(金属キレート化)させることにより、製造することができる。
具体的には、α−リポ酸を有機溶媒(例えば、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなど)に溶かし、これに3級アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリンなど)の存在下、−15℃〜−5℃で、ハロゲン化炭酸エステル(例えば、クロル炭酸エチル、クロル炭酸ブチルなど)、イソブチルオキシカルボニルクロリド、塩化ジエチルアセチル又は塩化トリメチルアセチルなどの混合酸無水物試薬と反応させてα−リポ酸の混合酸無水物とする。反応時間は1〜2分から数10分程度である。さらに、これに所望のアミノ酸やペプタイドを、必要に応じて塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムや、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの三級アミンなど)の存在下、水又はアルコール又はそれらの混液などの溶媒に溶かしたものを加えて反応させた後、適当な溶媒、例えば水又はアルコールから再結晶させて、α−リポ酸に所望のアミノ酸またはペプタイドがアミド結合したα−リポ酸誘導体を得ることができる。
金属キレート化は、上記で得られたα−リポ酸誘導体を、適当な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、水、アルコールなど)中、酸で還元し金属と反応させることにより、実施することができ、これにより、ジヒドロ体を経て、式(1)で示されるαリポ酸誘導体(1)を得ることができる。酸としては、塩酸、硫酸などの無機酸及び酢酸、クエン酸などの有機酸を使用することができる。
さらに,このようにして得たαリポ酸誘導体(1)は、これを水に溶解または懸濁しておき、水酸化アルカリで中和して溶かした後、溶液を濃縮し、これにアルコールを加え、析出する結晶を濾取することによりアルカリ塩とすることができる。
ジヒドロリポ酸、すなわち,6,8−ジメルカプトオクタン酸は、本来、空気中で非常に不安定であるが、上記のようにして得た本発明に係るαリポ酸誘導体(1)及びその薬理学的に許容される塩やそれらの溶媒和物は、チオール部位を金属でキレート化したものであり、例えば金属が亜鉛の場合には、六員環の結晶性の良い安定な化合物となる。かかるαリポ酸誘導体(1)及びその薬理学的に許容される塩やそれらの溶媒和物は、還元作用並びにラジカル抑制作用も強く、また安全性面に問題ない優れた化合物である。
斯くして調製される本発明の化合物(1)は、これを有効成分として適宜製剤化することにより、前立腺肥大症の予防または治療剤(抗前立腺肥大症薬)として、経口的にあるいは非経口的に投与することができる。経口投与のための製剤の形態としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)等の固形製剤、又はシロップ剤、乳剤、懸濁剤等の液剤が挙げられる。非経口投与のための製剤の形態としては、例えば、注射剤、坐剤等が挙げられる。
これらの製剤は、いずれも公知の方法により調製することができ、製剤分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤、pH調整化剤等の各種添加剤を適宜含むものである。
本化合物(1)を前立腺肥大症がんの予防若しくは治療剤として使用する際の投与量は、使用する本化合物(1)の種類、患者の体重、年齢、対象とする疾患の状態、並びに投与方法などによって異なり得るが、例えば注射剤の成人男性への投与量は、1日1回約10mg〜約100mg、内服剤の成人男性への投与量は、1日数回、1回に約10mg〜約1000mg程度とするのがよい。
本化合物(1)を、前立腺肥大症の予防若しくは治療剤として用いる場合、目的と必要に応じて、本化合物(1)のうち1種または2種以上を適宜組み合わせて含有させて用いることもでき、更に、本発明の目的に反しない限り、その他の同種又は別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
また、本発明の薬剤は、既存の抗前立腺肥大症薬と組み合わせて用いることができる。この際、それぞれの投与時期は限定されず、同時に又はある時間差をおいて投与しても良い。本発明の薬剤と該抗前立腺肥大症薬との配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせ等に応じて適宜選択することができる。
次に、参考例、調製例、実験例および製剤実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はそれら実施例に限定されない。なお、後述する試験のうち、動物を用いた試験は、大分大学の動物実験倫理委員会の承認のもと、動物実験倫理規定に従って行った。
参考例1 6,8−ジメルカプトオクタン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸6.2gをメタノール70mLに溶かし、亜鉛末3.0gおよび1N−塩酸40mLを加えて50℃、1時間撹拌した。つぎに、未反応の亜鉛を濾別し、濾液を減圧下で濃縮し、これに水を加えて析出した白色結晶を濾取した。これを水150mLに懸濁して置き、2N−水酸化ナトリウムで約pH9として溶かし、不溶物を濾別し、濾液を濃縮し、これにエタノールを加えて析出する白色結晶を濾取した。これを水/エタノールから再結晶させて、標記化合物6.0gを得た。mp.300℃以上。TLC,Rf =0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
参考例2 6,8−ジメルカプトオクタン酸・亜鉛キレート・モノエタノールアミン(2−アミノエタノール)塩
参考例1において、水酸化ナトリウムの代わりに、モノエタノールアミンを用い、その他は同様に処理して、標記化合物8.5gを得た。mp.137〜139℃。
参考例3 6,8−ジメルカプトオクタン酸エチル・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸エチル3.5gをテトラヒドロフラン60mLに溶かし、これに亜鉛末2.0gおよび70%酢酸水溶液40mLを加えて、50℃で2時間撹拌した。その後、未反応の亜鉛を濾別し、濾液を濃縮し、これに水を加えて析出した白色結晶を濾取した。これを、酢酸/水から再結晶させて、標記化合物3.6gを得た。mp.290℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
参考例4 6,8−ジメルカプトオクタン酸アミド・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸アミド4.2gをテトラヒドロフラン70mLに溶かし、これに亜鉛末2.5gおよび50%酢酸水溶液30mLを加えて50℃で2時間撹拌した。溶媒を留去した後、析出した亜鉛混じりの結晶を濾取し、水およびエタノールで洗い、酢酸/水から再結晶させて標記化合物4.5gを白色結晶として得た。mp.257〜259℃。TLC,Rf=0.80(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例1 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グリシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびグリシン1.9gを用い、N−α−リポイルグリシンナトリウム(mp.218〜220℃)を経て、これを参考例4と同様に処理して標記化合物3.9gを白色結晶として得た。mp.297℃付近から分解。TLC,Rf=0.64(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
調製例2 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパラギン酸モノナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−アスパラギン酸2.9gを用いて,N−α−リポイルアスパラギン酸ナトリウム(mp.300℃以上)を経て、これを参考例4と同様に 処理して標記化合物4.2gを白色結晶として得た。mp.295℃付近から分解。TLC,Rf=0.53(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
調製例3 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)メチオニンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−メチオニン3.5gを用い、N−α−リポイルメチオニン(mp.108〜109℃)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物2.8gを白色結晶として得た。mp.260℃付近から分解。TLC,Rf=0.82(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例4 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)システイン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−システイン2.6gを用い、N−α−リポイルシステインナトリウム(mp.150℃付近から分解)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物4.1gを白色結晶として得た。mp.280℃付近から分解。TLC,R f=0.71(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
調製例5 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)フェニルアラニンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−フェニルアラニン3.5gを用い、N−α−リポイルフェニルアラニン(mp.154〜156℃)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物3.9gを白色結晶として得た。mp.270℃付近から分解。TLC,Rf=0.82(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例6 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−4−アミノ酪酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよび4−アミノ酪酸2.3gを用い、N−α−リポイル−4一アミノ酪酸(mp.235℃付近から分解)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物5.2gを白色結晶として得た。mp.297℃付近から分解。TLC,Rf=0.70(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
調製例7 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−6−アミノヘキサン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよび6−アミノヘキサン酸3.0gを用い、N−α−リポイル−6−アミノヘキサン酸ナトリウム(mp.200〜202℃)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物2.0gを白色結晶として得た。mp.295℃付近から分解。TLC,Rf=0.84(クロロホルム:メタノール:水=5:4:1)。
調製例8 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アントラニル酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびアントラニル酸2.9gを用い,N−α−リポイルアントラニル酸ナトリウム(mp.300℃以上)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物2.1gを白色結晶として得た。mp.290℃付近から分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例9 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−2−アミノエタンスルホン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸6.2gおよび2−アミノエタンスルホン酸4.5gを用い、N−α−リポイルアミノエタンスルホン酸ナトリウム(mp.235〜237℃)を経て、これを参考例4と同様に処理して、標記化合物4.5gを白色結晶として得た。mp.293 ℃付近から分解。TLC,Rf=0.51(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例10 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−4−ヒドロキシプロリンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−4−ハイドロキシプロリン2.8gから、調製例9と同様にして、標的化合物4.9gを白色結晶として得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.66(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例11 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ヒスチジンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−ヒスチジン3.4gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.8gを白色結晶として得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.39(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例12 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)グルタミン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−グルタミン酸3.5gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.7gを白色結晶として得た。mp.3000℃以上。TLC,Rf=0.74(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例13 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スレオニンナトリウム亜鉛・キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−スレオニン2.6gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.5gを白色結晶として得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.73(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例14 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アラニンナトリウム亜鉛・キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−アラニン2.1gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.4gを白色結晶として得た。mp.290℃付近から分解。TLC,Rf=0.78(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例15 N−(6,8一ジメルカプトオクタノイル)セリンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−セリン2.4gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.0gを白色結晶として得た。mp.285℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.64(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例16 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ノルロイシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−ノルロイシン3.0gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.1gを白色結晶として得た。mp.295℃付近から徐々に分解。 TLC,Rf=0.90(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例17 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−5−ヒドロキシトリプトファンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびL−5−ハイドロキシトリプトファン5.0gから、調製例9と同様にして、標記化合物6.5gを灰白色結晶として得た。mp.290℃ 付近から分解。TLC,Rf=0.81(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例18 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)ペニシラミンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびD−ペニシラミン3.5gから、調製例9と同様 にして、標記化合物6.0gを白色結晶として得た。mp.280℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.80(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例19 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−3−アミノプロピオン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびβ−アラニン2.0gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.8gを白色結晶として得た。mp.295℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.83(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例20 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)−トランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物(別名:N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)トラネキサム酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物)
DL−α−リポ酸4.2gおよびトランス−4−(アミノメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸3.5gから、調製例9と同様にして、標記化合物5.8gを白色結晶として得た。mp.297℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.81(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例21 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スルファニル酸ナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびスルファニル酸(4−アミノベンゼン−1−スルホン酸)3.8gから、調製例9と同様に、標記化合物5.4gを白色結晶として得た。mp.300℃以上。TLC,Rf=0.57(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
参考例5 N−イソプロピル−6,8−ジメルカプトオクタン酸アミド・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2gおよびトリエチルアミン2.4gをアセトニトリル50mLに溶かして攪拌下−5℃に冷却し、これにクロル炭酸エチル2.4gを徐々に滴下し、滴下終了20分後、さらに、イソプロピルアミン1.5gをアセトニトリル30mLに溶かしたものを、速やかに加え、これを30分間、さらに、室温に戻して1時間攪拌した。該混合物から減圧下溶媒を留去し、残渣に水を加えて冷却し、析出した淡黄色結晶を濾取した。これをテトラヒドロフラン(THF)60mLに溶かし、50%酢酸水溶液20mLおよび亜鉛末2.0gを加えて、50℃、2時間攪拌した後、未反応の亜鉛を濾別し、濾液を濃縮した。残渣に水を加えて析出した白色結晶を濾取し、これをTHF/酢酸/水から再結晶させて標記化合物5.0gを白色結晶として得た。mp.271〜273℃。T LC,R f=0.89(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例22 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)メラトニン・亜鉛キレート化合物
イソプロピルアミン1.5gに代えてメラトニン4.0gを用い、参考例5と同様にして、標記化合物6.5gを白色結晶として得た。mp.210〜212℃。TLC,R f=0.84(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例23 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アントラニル酸エチル・亜鉛キレート化合物
イソプロピルアミン1.5gに代えてアントラニル酸エチル3.6gを用い、参考例5と同様にして、標記化合物4.6gを白色結晶(THF−酢酸−水から再結晶)として得た。mp.290℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.88(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)
調製例24 N ε −(6,8−ジメルカプトオクタノイル)リシン・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸4.2g、トリエチルアミン2.4gおよびクロル炭酸エチル2.4gをアセトニトリル50mL中、冷却下で混合酸無水物とし、これにL−リシン3.1g、硫酸銅(5水和物)5.5gおよび水酸化ナトリウム2.0gを水60mLに溶かしたものを加えて反応させた。析出したNε−(α−リポイル)リシンの銅塩を濾取し、水およびメタノールで洗った後,これを70%の酢酸水溶液にサスペンドしてしばらく放置した。これに硫化水素を通じて銅を硫化銅として濾別し、濾液を濃縮した。残渣にメタノールを加えて析出物を濾取し,淡黄色結晶3.5gを得た。mp.254〜255℃。
つぎに、これを60%酢酸水溶液に溶かし、亜鉛末2.0gを加えて、50℃で3時間攪拌した。反応混合物から亜鉛を濾別した後、濾液を濃縮し、これにメタノールを加えて析出物を濾取し、標記化合物3.4gを白色結晶として得た。mp.295℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.47(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例25 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)アスパルチルグリシンジナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸2.1gおよびL−アスパルチルグリシン2.1gを用い、参考例5と同様にして、N−(α−リポイル)アスパラチイルグリシンナトリウムを径由して、標記化合物3.1gを白色結晶として得た。mp.270℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.54(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
調製例26 N−(6,8−ジメルカプトオクタノイル)スレオニルグリシンナトリウム・亜鉛キレート化合物
DL−α−リポ酸2.1gおよびL−スレオニルグリシン2.1gを用い、参考例5と同様にして、標記化合物2.6gを淡黄白色結晶として得た。mp.260℃付近から徐々に分解。TLC,Rf=0.60(n−ブタノール:酢酸:水=4:1:2)。
実験例1 5α−リダクターゼに対する阻害作用
5α−リダクターゼに対する本化合物(1)の阻害作用を、試験化合物として下記の化合物を使用して測定した。
(試験化合物)
調製例8の化合物:略号「DHLAntZn」または「Ant」
調製例9の化合物:略号「DHLTauZn」または「Tau」
調製例11の化合物:略号「DHLHZn」または「H」
調製例12の化合物:略号「DHLGluZn」または「Glu」
調製例15の化合物:略号「DHLSerZn」または「Ser」
調製例16の化合物:略号「DHLNLZn」または「NL」
調製例18の化合物:略号「DHLPenZn」または「Pen」。
(1)試験方法
蓋付V底試験管にて、プロピレングリコールで調製した4.2mg/mLテストステロン20μL、1mg/mL NADPHを配合した5mmol/LのTris-HCl緩衝液(pH7.13)825μLを混合した。これにエタノール、50%濃度の含水エタノール、または精製水で調製した試験化合物(50,250,500μg/mL)80μL、及び5α−リダクターゼ(S-9分画)75μLを加えて、再び混合庫し、37℃で30分間反応させた後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止した。これを遠心して(1600×g、10分間)、分離した塩化メチレン層をガスクロマトグラフィーに供して、基質として使用したテストステロンと反応生成物(DHT:Dihydrotestosterone)の割合から、各試験化合物の5α−リダクターゼに対する阻害活性を評価した。
(2)試験結果
結果を図1に示す。これからわかるように、DHLGluZn、DHLNLZn、DHLSerZn、DHLAntZn、DHLTauZn、DHLPenZn及びDHLHZnの順番で、5α−リダクターゼに対して強い阻害活性が認められた。中でもDHLGluZn、DHLNLZn、及びDHLSerZnの5α−リダクターゼ阻害活性は極めて高いことが確認された。
このことから上記試験化合物を始めとする本発明の化合物(1)は、その5α−リダクターゼ阻害作用に基づいて、前立腺肥大症に対して予防または治療効果があると考えられる。
実験例2 前立腺がん細胞増殖能に対する抑制効果
本化合物(1)として調製例9の化合物(DHLTauZn)を用いて、本発明の化合物(1)の前立腺がん細胞の増殖に対する抑制効果を評価した。前立腺がん細胞として、男性ホルモン依存性前立腺がん細胞(LNCAP)及び男性ホルモン非依存性前立腺がん細胞(PC3)を使用した。
(1)試験方法
6ウェル・ディッシュの各ウェルに、10%牛胎仔血清、抗菌剤(100 IU/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン、及び2.5×104mg/LアムホテリシンB)を加えて調製したRPMI1640培地を加え、これに男性ホルモン依存性前立腺がん細胞(LNCAP)または男性ホルモン非依存性前立腺がん細胞(PC3)を、それぞれ2.0×105個/ウェルの割合で加え、これを5%二酸化炭素,37℃の条件下で培養した。24時間培養した後、これに各濃度の調製例9の化合物(DHLTauZn)(最終濃度:10,50,100,500,1000μg/ml)を加え、さらにこれを48時間、5%二酸化炭素、37℃の条件下で培養した。対照試験用にDHLTauZnを加えない培地も併せて調製して培養した(DHLTauZn最終濃度:0μg/ml)。
培養から48時間後に、0.25%トリプシンを用いて細胞を剥離し、トリパンブルー色素排除試験法にて、へモサイトメーター(Haemocytometer)を用いて生細胞数を測定した。
(2)試験結果
男性ホルモン依存性前立腺がん細胞(LNCAP)の増殖に対する化合物(DHLTauZn)の作用を図2(A)に、男性ホルモン非依存性前立腺がん細胞(PC3)の増殖に対する化合物(DHLTauZn)の作用を図2(B)に示す。この結果から、本化合物(DHLTauZn)は男性ホルモン依存型及び非依存型に関わらず、いずれの前立腺がん細胞に対しても細胞増殖を抑制する作用があることがわかる。このように、本化合物(1)は男性ホルモン非依存性前立腺がん細胞(PC3)の増殖をも抑制することから、本化合物(1)の前立腺がん細胞の増殖抑制作用は、5α−リダクターゼ阻害作用だけに起因するものではないと考えられる。後述する参考実験例1〜3に示すように、本化合物(1)は細胞周期を阻害することにより、がん細胞の増殖を抑制する作用を発揮する。このことから、本化合物(1)は細胞周期阻害作用と5α−リダクターゼ阻害作用の両作用に基づいて前立腺がん細胞の増殖抑制効果を発揮すると考えられる。
参考実験例1 細胞周期及びアポトーシス誘導に関する評価
調製例11の化合物(DHLHZn)を用いて、本化合物(1)の細胞周期とアポトーシス誘導に対する作用を評価した。
(1)細胞の調製
大腸がん細胞(HT29)(human colon cancer cell line HT29)1.0×106個を、0.5mM DHLHZnの存在下で、5%二酸化炭素及び37℃の条件で培養した。培養開始後24時間及び48時間後に、0.25%トリプシンを用いて細胞を剥離し、1%パラホルムアルデヒド処理と70%冷エタノール処理をして固定化した。
(2)アポトーシス誘導作用の評価
上記で固定化した細胞について、APO-BrdU(登録商標)キット(Becton Dickinson)を用いて、指示書に沿ってアポトーシス誘導作用を評価した。
簡単に説明すると、まず固定化した細胞を洗浄し、terminal deoxynucleotidyl transferase(TdT)及びbromodeoxyuridine triphosphate nucleotides(Br-dUTP)を含むDNA標識溶液に懸濁し、37℃で60分間インキュベートした。細胞を再び洗浄し、室温下、暗室で30分間、蛍光標識した抗BrdU抗体(fluorescein標識した抗BrdUモノクローナル抗体)とともにインキュベートした。次いで、室温下、暗室で30分間、プロピジウムヨウ素(PI:Propidium idodide)とRNase Aともにインキュベートした。得られた細胞を、1試料あたり少なくとも10,000個になるように調製し、FACSCalibur フローサイトメーター (Becton Dockinson)を用いて分析した。
結果を図3に示す。アポトーシス細胞は、細胞中のDNAがアポトーシスによって断片化している。このため、上記APO-BrdUキットによる反応によれば、断片化によって表出した3’-OH末端にTdTの作用によりBr-dUTPが結合・連結する。Br-dUTPが結合したアポトーシス細胞は、蛍光標識した抗BrdU抗体を用いて標識することでフローサイトメーターで容易に検出することができる。
図3の(A)は、APO-BrdU(登録商標)キットに附属の陽性コントロール細胞の結果を示す。図3の(B)は、左から、0.5mM DHLHZnの存在下で培養する前の大腸がん細胞の分析結果(0h)、培養開始後24時間後の大腸がん細胞の分析結果(24h)、及び培養開始後48時間後の大腸がん細胞の分析結果(48h)をそれぞれ示す。この結果からわかるように、この結果から、大腸がん細胞を0.5mMのDHLHZnで処理してもアポトーシスの誘発は認められなかった。このことから、本化合物(DHLHZn)のがん細胞増殖抑制作用はアポトーシス誘導に起因するものではないことが示唆される。
(3)細胞周期の評価
0.5mM DHLHZnの存在下で培養する前の大腸がん細胞(0h)、培養開始後24時間後の大腸がん細胞(24h)、及び培養開始後48時間後の大腸がん細胞(48h)のそれぞれを、蛍光色素(プロピジウムヨウ素(PI:Propidium idodide))で処理して、細胞内全DNAを染色した。これをフローサイトメーターにかけて各細胞の細胞周期(G0-G1、S、G2-M)を分析した。
結果を図4に示す。図4の左から、0.5mM DHLHZnの存在下で培養する前の大腸がん細胞の分析結果(0h)、培養開始後24時間後の大腸がん細胞の分析結果(24h)、及び培養開始後48時間後の大腸がん細胞の分析結果(48h)をそれぞれ示す。この結果からわかるように、大腸がん細胞を本化合物(DHLHZn)で処理することで、G1期にある大腸がん細胞の数が時間依存的に増加することがわかる。
参考実験例2 p53蛋白質のリン酸化に対する作用
本化合物(1)として、調製例11の化合物(DHLHZn)及び調製例9の化合物(DHLTauZn)を用いて、細胞増殖に対する抑制作用のメカニズム(細胞周期G1期制御機序)を解明するために、大腸がん細胞(HT29)を0.5mMのDHLHZnまたはDHLTauZnの存在下で0時間、6時間または24時間培養して、大腸がん細胞中のp53タンパク質のリン酸化を測定した。
具体的には、大腸がん細胞(1×106)を0.5mMのDHLHZnまたはDHLTauZnの存在下で、5%二酸化炭素及び37℃の条件で培養した。培養開始から24時間後及び48時間後に、細胞溶解キット(Bio-Rad)を用いて採取した試料から蛋白溶解物を取得した。当該蛋白溶解物について、Bio-Plex Phosphoprotein Assay(Bio-Rad)及びPhosphoprotein Testing Reagent kit(Bio-Rad)を用いて、指示書に従ってリン酸化されたp53タンパク質を検出した。簡単に説明すると、50μlの細胞溶解物(200〜900μg/ml protein)を、抗リン酸基抗体でコートした96穴のウエルに添加し、室温で振盪(300rpm)した。非結合タンパク質を洗浄除去した後、ビオチン化された検出抗体の混合物を添加して、標的抗体(抗リン酸基抗体)とサンドイッチ構造を形成させた。ビオチン化した抗リン酸基抗体を検出するために、ストレプトアビジン−フィコエリトリン(streptavidin-PE)を添加した。リン酸化p53タンパク質は、Bio-Plex suspension array system(Luminex 100, Bio-Rad)で分析し、p53タンパク質の総量は、Bio-Plex total protein assay kit (Bio-Rad)を用いて測定した。
DHLHZnの結果を図5(A)に、DHLTauZnの結果を図5(B)に示す。各図の縦軸は、大腸がん細胞中のp53タンパク質総量に対するリン酸化p53タンパク質の割合を、試験化合物(DHLHZn、DHLTauZn)で処理しない大腸がん細胞(図中、0hで示す)での割合を100%として換算して示したものである。図5(A)に示すように、大腸がん細胞中のリン酸化されたp53タンパク質の量は、大腸がん細胞をDHLHZnで6時間処理することで2倍に上昇することが判明した。また図5(B)に示すように、大腸がん細胞中のリン酸化されたp53タンパク質の量は、大腸がん細胞をDHLTauZnで6時間以上処理することで4倍以上に上昇することが判明した。
参考実験例3 がん細胞の核タンパク質のウエスタンブロット分析
0.5mMのDHLHZnの存在下、5%二酸化炭素及び37℃の条件で6時間または24時間処理した大腸がん細胞(HT29)の核タンパク質をウエスタンブロットにより分析した。
細胞の核画分は、NE-PERTM NuclearとCytoplasmic Extraction Reagents(Pierce Chemical Co.,)を用いて採取し、15,000×gで10分間遠心分離した。上清のタンパク質濃度をDC Protein Assay Reagent (Bio-Rad)で測定した。1試料あたりの等量(75μg)のタンパク質をSDS-PAGEにかけ、ニトロセルロース膜に転写した。得られた膜を、0.5%の無脂肪乾燥乳を配合したTris-緩衝生理食塩水(TBS)(0.1%のTween-20添加)でブロックして、p21タンパク質に対する第1抗体(C-19;Santa Cruz Biotechnology, Inc.,)、リン酸化Rbに対する第1抗体(Ser608;Santa Cruz Biotechnology, Inc.,)、総Rbに対する第1抗体(C-15;Santa Cruz Biotechnology, Inc.,)と室温で10分間インキュベートした。次いで、膜を0.1%のTween 20を添加したTBSで洗浄し、抗マウスの第2抗体及び抗ウサギの第2抗体(Immuno-Biological Laboratories Co.,)とともに室温で10分間インキュベートした。各タンパク質は、ECL Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare UK Ltd.,)を用いて視覚化した。
ウエスタンブロットの結果を図6に示す。図6に示すように、大腸がん細胞をDHLHZnで処理することにより、時間依存的にp21タンパク質の発現量が増加した。一方、リン酸化Rb量及び総Rb量はいずれも時間依存的に有意に減少した。
Rbの発現とそのリン酸化はいずれも、G1/S細胞周期のチェックポイント制御に極めて重要な役割を担っている(C.J. Sherr, Principles of tumor suppression, Cell 116 (2004) 235-246.;T. Sandal, Molecular aspects of the mammalian cell cycle and cancer, Oncologist 7 (2002) 73-81.)。これらのことから、本化合物(DHLHZn)によって、p21タンパク質の発現量が増加することでサイクリンD(CDK)が阻害され、Rbの発現とそのリン酸化が抑制されて、その結果、G1期からS期への移行が阻止されて、細胞周期が抑制的に制御されると考えられる。参考実験例1(3)で示した本化合物(DHLHZn)処理によるG1期にある大腸がん細胞数の増加、参考実験例2で示した本化合物(DHLHZn)処理によるリン酸化p53タンパク質の増加は、いずれもこのことから説明することが可能である。
以上の参考実験例1〜3の結果からわかるように、本発明の化合物(1)は,細胞周期を阻害することによってがん細胞増殖を抑制する作用を有し、この作用に基づいて前立腺がんを始めとする各種のがん細胞の増殖を抑制する作用を発揮する。このことから、本発明の化合物(1)は、5α−リダクターゼ阻害作用に基づいて前立腺肥大症の予防または治療に有効であるとともに、がん細胞の増殖に対して抑制作用(抵抗作用)を発揮するため、前立腺がん発症を予防しながら、前立腺肥大症を予防または治療するための医薬品として有効に使用することができる。
実験例3 本化合物(1)の肝機能保護作用
上記実験例1で5α−リダクターゼに対して阻害作用が確認された試験化合物のうち、「DHLHZn」を用いて、肝機能保護作用を評価した。
(1)試験方法
マウスを3群に分け(1群:n=6)、コントロール群、「アセトアミノフェン」投与群、「アセトアミノフェン+DHLHZn」投与群とした。アセトアミノフェン及びDHLHZnは事前に生理食塩水に溶解し、水溶液として調製しておいた。
「アセトアミノフェン+DHLHZn」投与群または「アセトアミノフェン」投与群には、アセトアミノフェンを投与する30分前に予め10mg/kgのDHLHZnまたは生理食塩水をそれぞれ皮下投与し、またアセトアミノフェンを投与する1分前に、10mg/kgのDHLHZnまたは生理食塩水をそれぞれ静脈投与した。DHLHZnまたは生理食塩水を投与した後、各群のマウスにアセトアミノフェンを1.2g/kg/日の割合で腹腔内投与した。腹腔内投与から24時間後に採血して、血清中の肝毒性指標酵素であるアラニンアミノトランスフェラーザ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を測定した。また、DHLHZn及びアセトアミノフェンのいずれも投与しないコントロール群も、同様に採血して、血清ALT、AST及びLDHを測定した。
(2)試験結果
結果を表1に示す。
Figure 2012062282
この結果からわかるように、アセトアミノフェン投与によって血清中の肝毒性指標酵素(ALT、ASTおよびLDH)量は増加するが(「アセトアミノフェン」投与群の結果参照)、事前にDHLHZnを投与しておくことで、その増加量を有意に抑制することができた。つまり、DHLHZn等の本化合物(1)には、アセトアミノフェン等の薬物誘発の肝毒性に対して保護作用を有すること、言い換えると肝機能障害に対する防御作用(肝臓保護作用)を有すると考えられる。
[製剤実施例]
以下、本発明の前立腺肥大症の予防または治療剤の製剤処方例を挙げる。但し、本発明の予防または治療剤はかかる処方や製剤形態に何ら限定されるものではない。なお、下記に記載する「本発明の化合物(1)」には、一般式(1)で示されるαリポ酸誘導体、その薬理学的に許容される塩、またはそれらの溶媒和物のいずれかを意味する。
製剤実施例1 内服錠
本発明の化合物(1) 30mg
乳糖 80mg
馬鈴薯澱粉 17mg
ポリエチレングリコール6000 3mg
以上の成分を1錠分の材料として常法により成型する。
製剤実施例2 注射剤
本発明の化合物(1) 1.0g
マンニトール 4.0g
注射用蒸留水 全量100mL
以上を常法により混合溶解させ注射剤とする。
本発明に係るαリポ酸誘導体(1)、及びその薬理学的に許容される塩またはその溶媒和(本化合物(1))は、実験例1に示すように、5α−リダクターゼに対して阻害活性を有することから、男性哺乳動物の前立腺肥大症を予防または治療するうえで有用である。また、本化合物(1)は、実験例3に示すように、それ自体に毒性がないばかりか、それ自身に肝機能保護作用があるため長期服用に対しても安全である。

Claims (4)

  1. 次の式(1)
    Figure 2012062282
    で示されるαリポ酸誘導体、又はその薬理学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和物を有効成分とする前立腺肥大症の予防または治療剤。
  2. 式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がα−アミノ酸、ω−アミノ酸及び特殊アミノ酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、請求項1記載の前立腺肥大症の予防または治療剤。
  3. 式(1)中、Rで示されるアミノ酸残基がグリシン、アラニン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、メチオニン、ノルロイシン、システイン、ハイドロキシプロリン、ヒスチジン、5−ハイドロキシトリプトファン、ペニシラミン、リジン、3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸、トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−アミノエタンスルホン酸、スルファニル酸及びアントラニル酸からなる群から選ばれるアミノ酸の残基である、請求項1または2に記載する前立腺肥大症の予防または治療剤。
  4. 式(1)中、Mで示される金属が亜鉛である請求項1乃至3の何れかに記載の前立腺肥大症の予防または治療剤。
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