JP2012061643A - ダクトの成形方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2枚のシートの溶着強度を向上させることが可能なダクトの成形方法を提供する。
【解決手段】溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シート(16,16)を一対の分割金型(13,13)間に配置する。次に、分割金型(13,13)周囲に位置する型枠(17,17)を分割金型(13,13)に対して相対的に前進させて型枠(17,17)を熱可塑性発泡樹脂シート(13,13)に密着させる。次に、一対の分割金型(13,13)のキャビティ(14,14)に熱可塑性発泡樹脂シート(16,16)を真空吸引させると共に、一対の分割金型(13,13)を型締めしてダクトを成形する。
【選択図】図1

Description

本発明は、一対の熱可塑性発泡樹脂シートにより形成されたダクトの成形方法に関する。
ダクトの製造方法としては、上下一対の金型間に、予め成形された2枚のシートを再加熱して溶融状態として配置し、その2枚のシートを型締めしてシート間に加圧流体を吹き込むことで、第一の半体と第二の半体とが一体に溶着された空調ダクトを成形する方法がある。
例えば、特許文献1、2には発泡樹脂シートを用いた所謂シートブロー成形方法について開示されている。
シートブロー成形方法は、予め所定の大きさに裁断された2枚の熱可塑性樹脂シートを赤外線ヒータにより加熱して軟化状態とした後に型締めし、金型によりピンチオフさせると共にシート間に加圧流体を吹き込んでシートをキャビティに密着させて所望の形状に形成する成形方法である。
特開2001−239824号公報 特開2000−289093号公報
しかし、上述したシートブロー成形方法においては、予め用意した常温のシートを、シートブロー成形時に赤外線ヒータなどの輻射熱により再度加熱して軟化状態にしている。このため、特に、発泡樹脂シートを用いた場合は、シートの内部まで均一に溶融状態にすることが困難であり、溶融して押し出されたシートに比べて熱量が小さく、金型キャビティへの追随性が悪いだけでなく、2枚のシートのピンチオフ部分(パーティングライン)の溶着強度が不十分になってしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、2枚のシートの溶着強度を向上させることが可能なダクトの成形方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有することとする。
<ダクトの成形方法>
本発明にかかるダクトの成形方法は、
溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シートを一対の分割金型間に配置する配置工程と、
前記分割金型周囲に位置する型枠を前記分割金型に対して相対的に前進させて前記型枠を前記熱可塑性発泡樹脂シートに密着させる密着工程と、
一対の前記分割金型のキャビティに前記熱可塑性発泡樹脂シートを真空吸引させると共に、一対の前記分割金型を型締めしてダクトを成形する成形工程と、
を有することを特徴とする。
本発明によれば、2枚のシートの溶着強度を向上させることができる。
本実施形態の空調ダクトの成形方法を実施する成形装置の構成例を示す図である。 図1に示す成形装置において、一対の分割金型13,13内に一対の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を配置し、分割金型13,13のキャビティ14,14間を型枠17,17により閉じた工程を示す図である。 図2に示す態様からそれぞれの熱可塑性発泡樹脂シート16,16を、分割金型13,13のキャビティ14,14に真空吸引させた工程を示す図である。 図3に示す態様から分割金型13,13を閉じ、空調ダクト18の成形品を成形する工程を示す図である。 図4に示す態様から分割金型13,13を開き、空調ダクト18の成形品を取り出す工程を示す図である。 図1に示す成形装置において成形された空調ダクト18の斜視図である。 図6に示す空調ダクト18の拡大断面図である。 本実施形態の空調ダクトの成形方法を実施する成形装置の他の構成例を示す図である。 成形装置を構成するTダイの構造例を示す図であり、シングルマニホールド方式の構造例を示す図である。 成形装置を構成するTダイの構造例を示す図であり、マルチマニホールド方式の構造例を示す図である。
<本実施形態のダクトの成形方法の概要>
まず、図1〜図4を参照しながら、本実施形態のダクトの成形方法の概要について説明する。
本実施形態のダクトの成形方法は、図1に示す成形装置等を用いて行うことになり、まず、図1に示すように、溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13間に配置する。
次に、図2に示すように、分割金型13,13周囲に位置する型枠17,17を分割金型13,13に対して相対的に前進させて型枠17,17を熱可塑性発泡樹脂シート13,13に密着させる。
次に、図3に示すように、一対の分割金型13,13のキャビティ14,14に熱可塑性発泡樹脂シート16,16を真空吸引させると共に、図4に示すように、一対の分割金型13,13を型締めしてダクトを成形する。
本実施形態のダクトの成形方法は、溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13間に配置し、一対の分割金型13,13を型締めしてダクトを成形するため、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16の溶着強度を向上させることができる。以下、添付図面を参照しながら、本実施形態のダクトの成形方法について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、空調ダクトの成形方法を例に説明する。
まず、図1〜図5を参照しながら、図6、図7に示す空調ダクト18の成形方法例について説明する。図1は、図6、図7に示す空調ダクト18を成形する成形装置の構成例を示し、図2〜図5は、空調ダクト18の成形工程を示す図である。
図6、図7に示す空調ダクト18は、エアコンユニットより供給される空調エアを所望の部位へ通風させるための軽量な空調ダクトである。本実施形態の空調ダクト18は、発泡状態の壁面(第1の壁面19,第2の壁面20、以下同じ)で構成し、発泡倍率2.0倍以上で複数の気泡セル有する独立気泡構造(独立気泡率が70%以上)を有している。21はパーティングライン、22は取付片である。
本実施形態の空調ダクト18の壁面19,20の平均肉厚は3.5mm以下であり、壁面19,20の厚み方向における気泡セルの平均気泡径は300μm未満、好ましくは、100μm未満である。
本実施形態の空調ダクト18は、ポリプロピレン系樹脂で構成することができ、好ましくは、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混合樹脂で構成し、−10℃における引張破壊伸びが40%以上で、かつ、常温時における引張弾性率が1000kg/cm2以上であることが好ましい。更に、−10℃における引張破壊伸びが100%以上であることが好ましい。本実施形態で用いる各用語について以下に定義する。
引張破壊伸び:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト18の壁面19,20を切り出し、マイナス10℃で保管後に、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った。
引張弾性率:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト18の壁面19,20を切り出し、常温(23℃)で、JIS K-7113に準じて2号形試験片として引張速度を50mm/分で測定を行った。
発泡倍率:本実施形態の成形方法に用いた熱可塑性樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト18の壁面19,20の見かけ密度で割った値を発泡倍率とした。
メルトフローレイト(MFR):JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定を行った。
アイゾット衝撃強度:本実施形態の成形方法により得られた空調ダクト18の壁面19,20を切り出し、マイナス20℃で保管後に、80×10(長さ×幅mm)の試験片として切り出し、厚さが4mmとなるように切り出した試験片を重ねてこれを用いてJIS K-7110(ノッチ付き)に準じて測定を行った。
<成形装置の構成例>
まず、図1を参照しながら、本実施形態の空調ダクト18を成形する成形装置の構成例について説明する。
図1に示す成形装置は、押出装置101と、型締装置102と、を有して構成し、押出装置101から溶融状態の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を型締装置102に押し出し、型締装置101で熱可塑性発泡樹脂シート16,16を型締めし、図6、図7に示す空調ダクト18を成形する。
押出装置101は、第1のアキュムレータ1と、第2のアキュムレータ2と、第1のプランジャー3と、第2のプランジャー4と、第1のTダイ5と、第2のTダイ6と、第1の押出機7と、第2の押出機8と、第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ9と、第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ10と、第1の一対のローラ11と、第2の一対のローラ12と、を有して構成する。
型締装置102は、分割金型13,13と、型枠17,17と、を有して構成する。型枠17,17は、分割金型13,13の外周に位置している。分割金型13,13は、キャビティ14,14と、ピンチオフ形成部15,15と、を有して構成する。
<空調ダクト18の成形工程例>
次に、図1〜図5を参照しながら、本実施形態の空調ダクト18の成形工程例について説明する。
まず、図1に示すように、第1の壁面19及び第2の壁面20を形成するための2枚の熱可塑性発泡樹脂シート(溶融状態で、且つ、気泡セルを有する熱可塑性発泡樹脂シート)16,16を第1のTダイ5,第2のTダイ6から押し出し、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13の間に垂下させる。
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図2に示すように、一対の分割金型13,13の外周に位置する型枠17,17を、熱可塑性発泡樹脂シート16,16に密着させる。これにより、型枠17,17により熱可塑性発泡樹脂シート16,16を吸引して保持することができる。また、熱可塑性発泡樹脂シート16,16と分割金型13,13のキャビティ14,14との間に密閉空間を形成することができる。
次に、熱可塑性発泡樹脂シート16,16を型枠17,17により保持した状態で、一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図3に示すように、熱可塑性発泡樹脂シート16,16をそれぞれ一対の分割金型13,13のキャビティ14,14に真空吸引し、熱可塑性発泡樹脂シート16,16をキャビティ14に沿った形状にする。
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に前進させ、図4に示すように、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を閉じて型締めする。これにより、一対の分割金型13,13のピンチオフ形成部15,15が当接し、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16が接合して熱融着し、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16の接合面にパーティングラインが形成され、空調ダクト18の成形品を成形することになる。
尚、型締めした後に、シート間にブローエアを吹き込んでもよい。例えば、1〜3kgf/cm2程度の圧力で吹き込むことができる。これにより、金型形状に対応した形状のダクトをより確実に成形することができる。
次に、空調ダクト18の成形品を一対の分割金型13,13内で冷却する。
次に、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を水平方向に後退させ、図5に示すように、型枠17,17及び一対の分割金型13,13を空調ダクト18の成形品から離型させる。
次に、ピンチオフ形成部15,15によって形成されたパーティングラインの外周でバリを切除し、図6、図7に示す空調ダクト18を得ることになる。
なお、一対の分割金型13,13の間に垂下された2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止するため、樹脂シートの厚み、押出速度、押出方向の肉厚分布などを個別に調整することが必要になる。
発泡状態の各熱可塑性発泡樹脂シート16,16は、発泡剤を添加した熱可塑性発泡樹脂を第1の押出機7及び第2の押出機8により溶融混練した後、第1のアキュムレータ1のアキュム室、第2のアキュムレータ2のアキュム室に一時的に貯留され、一定間隔毎に第1のプランジャー3によって第1のTダイ5に供給され、また、第2のプランジャー4によって第2のTダイ6に供給される。なお、発泡の起点となる発泡核剤や着色用の顔料(カーボンブラック)などを第1の押出機7及び第2の押出機8において熱可塑性発泡樹脂に混合することも可能である。
第1のTダイ5及び第2のTダイ6により押し出された熱可塑性発泡樹脂シート16,16は、それぞれ、第1の一対のローラ11,11、及び、第2の一対のローラ12,12によって挟圧されて一対の分割金型13,13間に配置される。この時、それぞれの熱可塑性発泡樹脂シート16,16の厚み、肉厚分布などを個別に調整することになる。
具体的には、まず、第1のアキュムレータ1及び第2のアキュムレータ2、第1のTダイ5及び第2のTダイ6により押出速度がそれぞれ別個に設定される。
第1のアキュムレータ1及び第2のアキュムレータ2にそれぞれ接続される第1の押出機7及び第2の押出機8の押出能力は、最終的に成形する空調ダクト18の大きさにより適宜選択することが可能である。しかし、第1の押出機7及び第2の押出機8の押出能力は、50kg/時以上であることが、空調ダクト18の成形サイクルを短縮させる観点から好ましい。
また、ドローダウンの発生を防止する観点から、第1のTダイ5及び第2のTダイ6からの熱可塑性発泡樹脂シート16,16の押し出しは、40秒以内、さらに好ましくは、30秒以内に完了する必要がある。
このため、第1のアキュムレータ1のアキュム室及び第2のアキュムレータ2のアキュム室に貯留された熱可塑性発泡樹脂は、第1のTダイ5及び第2のTダイ6のスリットの開口から1cm2当り50kg/時以上、好ましくは、60kg/時以上で押し出されることになる。この際、第1のTダイ5及び第2のTダイ6の各スリット隙間を熱可塑性発泡樹脂シート16,16の押し出しに併せて変動させることによりドローダウンの影響を最小限に抑えることができる。
つまり、ドローダウン現象により熱可塑性発泡樹脂シート16,16の上方へ行くに従い自重により引き伸ばされて薄くなる肉厚に対して、第1のTダイ5及び第2のTダイ6の各スリット間隔を、樹脂シートの押出開始から徐徐に広げて、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の上方ほどスリット隙間を広くすることで、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
さらに、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出された熱可塑性発泡樹脂シート16,16の押出速度に対して、第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12の回転速度を変動させることで、第1のTダイ5及び第2のTダイ6からの熱可塑性発泡樹脂シート16,16の押出速度と、第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12による熱可塑性発泡樹脂シート16,16の送り速度と、の差により、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から第1の一対のローラ11,11及び第2の一対のローラ12,12まで熱可塑性発泡樹脂シート16,16を延伸させて樹脂シートの厚みを薄く調整することができる。
第1のTダイ5及び第2のTダイ6にそれぞれ供給された熱可塑性発泡樹脂は、図示しない各Tダイ本体のマニホールドから樹脂流路を通ってスリットから熱可塑性発泡樹脂シート16としてTダイ本体から押し出される。各Tダイ本体は、一方のダイ及び他方のダイを重ね合わせて構成し、各Tダイ本体の先端部分において一方のダイリップ及び他方のダイリップがスリット隙間をもって対向しており、スリット隙間の間隔は、スリット隙間調整装置23により設定される。
第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出される樹脂シートの厚みは、スリット隙間により決定されるが、具体的には、第1のTダイ5および第2のTダイ6からそれぞれ0.6〜6.0mmの厚さの熱可塑性発泡樹脂シート16,16として押し出される。
また、スリット隙間は、公知のスリット隙間調整装置23によって樹脂シートの幅方向における均一性を調整することになる。更に、図示しないスリット隙間駆動装置により、間欠的に押し出される樹脂シートの押出開始から樹脂シートの押出終了までの間で他方のダイリップを変動させて、樹脂シートの押出方向の厚みを調整することになる。
スリット隙間調整装置23としては、熱膨張式または機械式があり、その両方の機能を併せ持つ装置を用いることが好ましい。
スリット隙間調整装置23は、スリットの幅方向に沿って等間隔に複数配置され、各スリット隙間調整装置23によってスリット隙間をそれぞれ狭くしたり、広くしたりすることで幅方向における樹脂シートの厚みを均一なものにすることができる。
スリット隙間調整装置23は、一方のダイリップに向けて進退自在に設けたダイボルトを有し、その先端に圧力伝達部を介して調整軸が配置されている。調整軸には締結ボルトにより係合片が結合されており、係合片は一方のダイリップに連結されている。ダイボルトを前進させると圧力伝達部を介して調整軸が先端方向に押し出されて一方のダイリップが押圧される。これにより、ダイリップは凹溝の部位で変形されてスリット隙間が狭くなる。スリット隙間を広くするにはこれと逆にダイボルトを後退させる。
さらに、上記機械式の調整手段に合わせて熱膨張式の調整手段を用いることで精度良くスリット隙間を調整することができる。具体的には、図示しない電熱ヒータにより調整軸を加熱して熱膨張させることで一方のダイリップが押圧され、スリット隙間が狭くなる。
また、スリット隙間を広くするには電熱ヒータを停止させ、図示しない冷却手段により調整軸を冷却して収縮させる。
第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出された樹脂シートは、一対の分割金型13,13間に垂下された状態で、つまり、型締めされる時点において押出方向の厚みが均一となるように調整することが好ましい。この場合、スリット隙間を、樹脂シートの押出開始から徐々に広げ、樹脂シートの押出終了時に最大となるように変動させる。
これにより、第1のTダイ5及び第2のTダイ6から押し出される樹脂シートの厚みは、樹脂シートの押出開始から徐々に厚くなるが、溶融状態で押し出された樹脂シートは、自重により引き伸ばされて樹脂シートの下方から上方へ徐々に薄くなるため、スリット隙間を広げて厚く押し出した分とドローダウン現象により引き伸ばされて薄くなった分とが相殺されて、樹脂シート上方から下方にわたって均一な厚みに調整することができる。
上述したように、Tダイからの樹脂シートを押し出すときの圧力(射出圧力)、樹脂を押し出す速度(射出速度)、ローラ回転速度、Tダイのスリットの隙間が、射出中一定であると、自重により押し出した樹脂シートがドローダウン(ネッキング)し、下の方は厚肉で、上に行くにしたがって、薄肉となりやすい。そこで、射出圧力と射出速度とローラの送り速度とを、射出中に多段にして、樹脂シートの肉厚を調整することができる。具体的には、射出圧力、射出速度の設定を射出中に徐々に上げることで、樹脂シートの上側が肉薄になることを抑制できる。また、射出中にローラの回転速度(送り速度)を上げることにより、自重による樹脂シートのネッキングを抑制できる。
これらのパラメータ(射出圧力、射出速度、ローラ回転速度)は、押出機やアキュムレータをプログラムで制御することで、比較的容易に調整可能であるので、樹脂シートの肉厚を調整するためのパラメータとして適している。
なお、樹脂シートの製膜性が高い樹脂(例えば、PPにタルク等の無機フィラーを添加した場合)の場合、射出圧力、射出速度、ローラ回転速度などの大幅な調整を射出中に行うことなく、樹脂シートを均一の厚みとすることができる。
なお、上述した図1に示す成形装置は、第1のTダイ5及び第2のTダイ6への熱可塑性発泡樹脂の供給経路がそれぞれ独立した構成にした。しかし、図8に示すように、第1のTダイ5及び第2のTダイ6に対して1つの押出機8とそれに連結される1つのアキュムレータ2を用いて、アキュムレータ2の先に分岐路を設けて第1のTダイ5及び第2のTダイ6へ熱可塑性発泡樹脂を供給するように構成することも可能である。更に、アキュムレータの種類はサイドアキュム方式またはリングアキュム方式を用いることができる。
また、図1や図8に示す第1のTダイ5及び第2のTダイ6は、図9に示す構造にすることも可能である。例えば、第2のTダイ6が図9に示す構造の場合は、第2のアキュムレータ2から供給された熱可塑性発泡樹脂が流路71に導入、案内され、マニホールド72を流れてダイ幅方向に広げられる。そして、マニホールド72の下流の樹脂流路を通ってスリット73から熱可塑性発泡樹脂シート16を一対の分割金型13,13の間に垂下させることになる。
また、図9に示す構造の場合は、スリット73の開閉を制御するための開閉機構74,75を有し、開閉機構74,75を左右にスライドさせ、スリット73を開いた状態にしたり、閉じた状態にしたりすることができる。通常、アキュムレータ2のアキュム室の出口を閉じることで、当該アキュム室に溶融樹脂が貯留され、アキュム室内の樹脂圧を上昇させることができる。一方、図9に示す構造の場合は、樹脂圧を上昇させる際、アキュム室とTダイ内の流路とが連通した状態でTダイ先端が閉塞される。これにより、アキュム室とTダイ内の流路に貯留された樹脂の圧力を上昇させることができる。即ち、開閉機構74,75によりスリット73を閉じた状態にすることで、Tダイ6の出口直前までの溶融樹脂の圧力を上昇させることができる。そして、Tダイ6の内部圧力が所定の値まで上昇したときに、開閉機構74,75によりスリット73を開いた状態にし、スリット73から熱可塑性発泡樹脂シート16を一対の分割金型13,13の間に垂下させる。これにより、Tダイ6の内部圧力を上昇させることができるため、Tダイ6から熱可塑性発泡樹脂シート16を押し出すまでは、熱可塑性発泡樹脂シート16が発泡するのを防止でき、Tダイ6から熱可塑性発泡樹脂シート16を押し出した段階で、熱可塑性発泡樹脂シート16を発泡させることができる。なお、開閉機構74,75の構成や制御方法は、スリット73を開閉することが可能であればあらゆる構成や制御方法を適用することが可能である。また、マニホールド72の下流の樹脂流路にチョークバー(図示せず)を設け、熱可塑性発泡樹脂に対して幅方向の流量、厚みを調整することができるようにすることも可能である。
また、図1、図8に示す成形装置は、シングルマニホールド方式の2つのTダイ5,6を用いて2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13の間に垂下させることにしている。しかし、図10に示すマルチマニホールド方式の1つのTダイ60を用いて2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13の間に垂下させることも可能である。図10に示すTダイ60は、アキュムレータ2から供給された熱可塑性発泡樹脂が2つの流路61,61に導入、案内され、それぞれのマニホールド62,62を流れてダイ幅方向に広げられる。各マニホールド62,62の下流には、チョークバー63,63が設けられており、各熱可塑性発泡樹脂に対して個別に幅方向の流量、厚みを調整することができるようになっている。これにより、図10に示すTダイ60から2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13の間に垂下させることができる。また、チョークバー63,63により樹脂流路を閉じ、Tダイ60の内部圧力を上昇させることができる。これにより、Tダイ6の内部圧力を上昇させることができるため、Tダイ60から熱可塑性発泡樹脂シート16を押し出すまでは、熱可塑性発泡樹脂シート16が発泡するのを防止でき、Tダイ60から熱可塑性発泡樹脂シート16を押し出した段階で、熱可塑性発泡樹脂シート16を発泡させることができる。
また、図1、図8に示す成形装置は、第1の一対のローラ11,11、第2の一対のローラ12,12を配置し、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の厚さを調整できるようにしている。しかし、一対のローラ11,11,12,12を配置しないようにすることも可能である。
熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対のローラ11,11,12,12で挟持すると、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の気泡セルを潰してしまう場合がある。このため、一対のローラ11,11,12,12を配置しないようにすることで、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の気泡セルを潰してしまうことがないため、熱可塑性発泡樹脂シート16,16の発泡倍率を向上させることができる。
本実施形態の空調ダクト18を成形する際に適用可能なポリプロピレン系樹脂としては、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレンが好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが好ましく、エチレン−プロピレンブロック共重合体を添加することが更に好ましい。
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされる水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、耐衝撃性を改善すると共に空調ダクト18としての剛性を維持するために、ポリプロピレン系樹脂に対して5〜40wt%、好ましくは、15〜30wt%の範囲で添加する。
具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などの水素添加ポリマーを用いる。また、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは、20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は10g/10分以下、好ましくは、5.0g/10分以下で、かつ、1.0g/10分以上である。
また、ポリプロピレン系樹脂にブレンドされるポリオレフィン系重合体としては、低密度のエチレン−α−オレフィンが好ましく、1〜20wt%の範囲で配合することが好ましい。低密度のエチレン−α−オレフィンは、密度0.91g/cm3以下のものを用いることが好ましく、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体が好適であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があり、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好適である。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いたり、2種以上を併用したりすることも可能である。エチレン−α−オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、50〜99wt%の範囲である。また、α−オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィン共重合体に対して、1〜50wt%の範囲である。特に、メタロセン系触媒を用いて重合された直鎖状超低密度ポリエチレン又はエチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマーを用いることが好ましい。
一対の分割金型13,13内に垂下させる熱可塑性発泡樹脂シート16,16は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生するのを防止し、高い発泡倍率とすることにより良好な軽量性、断熱性を有する空調ダクト18を得る観点から溶融張力の高い材料を用いることが必要である。
具体的には、230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が5.0g/10分以下、更に好ましくは、1.5〜3.0g/10分とする。なお、一般に、Tダイのスリットから薄く押し出す観点から、フィルム等の成形では230℃におけるMFR(JIS K-7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分より大きく、具体的には5.0〜10.0g/10分のものが用いられている。
また、本実施形態の空調ダクト18を成形する際は、長鎖分岐構造のポリプロピレン(以下、長鎖分岐PPと記載する)と、長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(以下、長鎖分岐HDPEと記載する)を含むポリエチレン系樹脂と、を混合した混合樹脂を用いることも可能である。
なお、『長鎖分岐HDPEを含むポリエチレン系樹脂』は、長鎖分岐HDPEのみであってもよいし、長鎖分岐HDPEと他のポリエチレン系樹脂との混合材料であってもよい。例えば、密度0.94g/cm3以下のポリエチレン(低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等)を混合してもよい。
上記の混合樹脂を用いて空調ダクト18を成形することで、高発泡の空調ダクト18を成形することができる。
なお、長鎖分岐PPは、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体(ホモPP)であることが、発泡倍率向上の観点から好ましい。また、重量平均分岐指数は、v1/v2で表され、v1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、v2が分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する線状ポリオレフィンの極限粘度数である。
また、長鎖分岐HDPEは、230℃における、メルトテンション(MT)が30mN以上のエチレン単独重合体(ホモPE)であることが、発泡倍率向上の観点から好ましい。
また、混合樹脂に配合する長鎖分岐HDPE以外のポリエチレンとしては、剛性を保ちつつバリ取り性を向上させる観点から非長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(密度0.94g/cm3以上のもの)を用いることができる。また、低温時の衝撃強度の観点から、密度0.91g/cm3以下のポリエチレンを適用してもよい。この場合、特に、メタロセン系触媒により重合された直鎖状超低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
また、混合樹脂は、230℃におけるメルトテンション(MT)が30〜350mNの範囲内になるように複数の樹脂を混合したものであることが好ましい。ここで、MTとは、溶融張力を意味する。混合樹脂のMTが30〜350mNの範囲内であると、高い発泡倍率を得ることができる。なお、MTは、メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す。
また、混合樹脂は、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が1〜10g/10分であることが好ましい。ここで、MFRとは、JIS K-7210に順じて測定した値である。MFRが1g/10分未満であると、MFRが1〜10g/10分の範囲内にある場合と比較して、押出速度を上げることが困難になる傾向があり、MFRが10g/10分を超えると、MFRが1〜10g/10分の範囲内にある場合と比較して、ドローダウン等の発生により成形が困難になる傾向がある。
また、熱可塑性エラストマーを5〜40wt%混合した混合樹脂を用いて発泡成形体を成形することで、発泡倍率を高めることができる。この場合の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーや、エチレンプロピレンゴム(以下、EPRと記載する)、オレフィンブロックコポリマー(以下、OBCと記載する)などを用いることができる。
スチレン系エラストマーとしては、分子内に水素が添加されたスチレン単位を有するエラストマーが適用可能である。例えば、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEBSと記載する)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体等の水素添加エラストマーが適用可能である。
また、OBCを5〜20wt%混合した混合樹脂を用いて空調ダクト18を成形することで、発泡倍率を約4.0倍以上に向上させることができる。なお、OBC(オレフィンブロックコポリマー)とは、2種類の触媒からなる触媒システムにより、2種類のポリオレフィンが一本の分子内に交互にブロック状に形成されたものをいう。
発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、あるいは、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド(以下、ADCAと記載する)等の化学発泡剤、さらに、それら、物理発泡剤と化学発泡剤を併用して用いることが出来る。
特に、発泡剤として、炭酸ガス、又は、重炭酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム等の炭酸ガスを発生する化学発泡剤を用いることで、シャークスキンの発生が抑制され、発泡成形体の表面をきれいにすることができる。ここで、シャークスキンとは、ダイスリットから均一に溶融樹脂が流れ出ないために発生する成形体表面の凹凸をいう。
なお、物理発泡剤としての炭酸ガスと、炭酸ガスを発生する化学発泡剤とを併用して用いることで、化学発泡剤が物理発泡剤による発泡の核材としての役割を果たすため、気泡を微細分散させることができるため、バリ取り性を向上させつつ、発泡成形体の強度を増加させることができる。
また、物理発泡剤を混合樹脂に混練する場合は、物理発泡剤を超臨界流体として混合樹脂に混練することが好ましい。特に、炭酸ガス、または、窒素ガスを超臨界状態とし、混合樹脂に混練させることが好ましい。この場合、均一かつ確実に発泡することができる。なお、窒素の超臨界流体は、窒素を臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすることにより得られ、二酸化炭素の超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。
<本実施形態の空調ダクトの成形方法の作用・効果>
このように、本実施形態の空調ダクトの成形方法は、図1に示す押出機7,8から供給された発泡剤を混練した熱可塑性発泡樹脂をアキュムレータ1,2に貯留して一定間隔でプランジャー3,4を用いてTダイ5,6に供給し、溶融状態で且つ気泡セルを有する熱可塑性発泡樹脂シート16,16をTダイ5,6から押し出し、一対の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を、一対の分割金型13,13間に配置する。そして、図2に示すように、分割金型13,13周囲に位置する型枠17,17を分割金型13,13に対して相対的に前進させて型枠17,17を熱可塑性発泡樹脂シート13,13に密着させる。次に、図3に示すように、一対の分割金型13,13のキャビティ14,14に熱可塑性発泡樹脂シート16,16を真空吸引させると共に、図4に示すように、一対の分割金型13,13を型締めして空調ダクト18を成形し、図5に示すように、一対の分割金型13,13を離型して空調ダクト18を取り出すことにしている。
本実施形態のダクトの成形方法は、溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を一対の分割金型13,13間に配置し、一対の分割金型13,13を型締めしてダクトを成形するため、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16の溶着強度を向上させることができる。
次に、上述した空調ダクト18の成形方法例に関する具体的な実施例について説明する。但し、以下の実施例は、一例であり、本発明の技術思想は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
表1には、実施例1〜5における(1)混合樹脂の原料配合比、(2)成形された発泡ダクトの発泡倍率、を示している。
Figure 2012061643
表1及び以下の実施例に示す樹脂A〜Cは、次の樹脂に対応する。
樹脂A:長鎖分岐HDPE(単独重合体)、東ソー(株)製「08S55A」
樹脂B:長鎖分岐PP(単独重合体)、ボレアリス社製「WB140」
樹脂C:OBC、ダウケミカル社製「OBC9000」
(実施例1)
樹脂A、樹脂Bを、50:50の割合で混合した混合樹脂100重量部に、発泡剤として超臨界状態の炭酸ガス、核剤としてタルクマスターバッチ1.5重量部および着色剤としてカーボンブラックマスターバッチ1.5重量部を添加して発泡樹脂とした。これを、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16として分割金型13,13間に押出し、分割金型13,13で型締めして、2枚の熱可塑性発泡樹脂シート16,16を接合して熱融着し、空調ダクト18の成形品を成形した。表1に示すように、成形された空調ダクト18は、発泡倍率が2.9倍であった。
(実施例2)
樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:45:5の割合で混合した混合樹脂を用いた点で、実施例1と異なるが、その他の製法は同じである。表1に示すように、成形された発泡ダクトは、発泡倍率が4.2倍であった。
(実施例3)
樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:40:10の割合で混合した混合樹脂を用いた点で、実施例1と異なるが、その他の製法は同じである。表1に示すように、成形された発泡ダクトは、発泡倍率が4.7倍であった。
(実施例4)
樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:30:20の割合で混合した混合樹脂を用いた点で、実施例1と異なるが、その他の製法は同じである。表1に示すように、成形された発泡ダクトは、発泡倍率が4.0倍であった。
(実施例5)
樹脂A、樹脂B、樹脂Cを、50:10:40の割合で混合した混合樹脂を用いた点で、実施例1と異なるが、その他の製法は同じである。表1に示すように、成形された発泡ダクトは、発泡倍率が3.7倍であった。
実施例1は、長鎖分岐構造の高密度ポリエチレン(樹脂A)を含むポリエチレン系樹脂を50wt%含有し、長鎖分岐構造のポリプロピレン(樹脂B)を50wt%含有した混合樹脂を発泡させたものである。この場合、長鎖分岐構造のポリプロピレン(樹脂B)のみの樹脂を発泡させたものより発泡倍率を高めることが可能である。
また、実施例2〜5のように、熱可塑性エラストマーとして、OBCを5〜40wt%の割合で混合した場合は、他の熱可塑性エラストマーを混合した場合に比べて、発泡倍率を向上させることができる。
特に、実施例2〜4のように、OBCを5〜20wt%の割合で混合した場合は、発泡倍率がより向上する(4.0倍以上)ため好ましい。更に好ましくは、OBCを約10wt%(8〜12%)とすることで、4.2〜4.7倍程度の高発泡の空調ダクトを得ることができる。
なお、長鎖分岐HDPE(単独重合体)が40〜60wt%、長鎖分岐PP(単独重合体)が30〜45wt%、OBCが5〜15wt%(長鎖分岐HDPEと長鎖分岐PPとOBCとで100wt%)となるように配合した混合樹脂を発泡成形することで、発泡倍率4.0倍以上の空調ダクト18を容易に得ることができる。
なお、上述する実施形態や実施例は、本発明の好適な実施形態、実施例であり、上記実施形態、実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
例えば、本実施形態の空調ダクト18は、自動車に限定するものではなく、空調ダクト18の形状を適宜設計変更し、列車、船舶、航空機等の輸送機にも適用することができる。なお、本実施形態の空調ダクト18は、ある程度の強度を確保しつつ、且つ、軽量化及び低コスト化を図ることができるため、輸送機のコストを低減することができると共に、輸送機の燃費も向上させることができる。
また、押し出した一対のシート間に、風向きを制御するフィンを配置し、インサート成形することにより、内部にフィンを備えるダクトを成形することもできる。この場合、ブロー成形で風向きを制御するためのリブを一体に成形する場合に比べて、同一外形のダクトであっても、風路断面積をより広く確保でき、圧力損失が抑えられる。
また、上述した実施形態のように、分割金型よりも上側に設けられたTダイから下方に向かって樹脂シートを押し出し、分割金型で挟み込む構成とした場合、樹脂シートを保持する機構が不要であり、装置を簡易化することができる。即ち、Tダイから水平方向に樹脂シートを押し出して、分割金型で上下からシートを挟み込む構成も考えられるが、この場合、シートのたわみを防止して、分割金型間に配置するための機構が必要になる。これに対し、上述した実施形態では、押し出した樹脂シートは自重により、たわむことなく、分割金型間に配置されるため、簡易な機構で成形可能である。
また、上述した実施形態は、型枠17,17により熱可塑性発泡樹脂シート16,16を吸引して保持する構成であるため、熱可塑性発泡樹脂シート16,16と分割金型13,13のキャビティ14,14との間に密閉空間を確実に形成することができるので、キャビティ14,14からシート16,16を吸引することで、より確実にキャビティ形状を転写することができる。
本発明は、自動車、列車、船舶、航空機等の輸送機の床面に沿って設置される空調ダクトに好適である。
1 第1のアキュムレータ
2 第2のアキュムレータ
3 第1のプランジャー
4 第2のプランジャー
5 第1のTダイ
6 第2のTダイ
7 第1の押出機
8 第2の押出機
9 第1の熱可塑性樹脂供給ホッパ
10 第2の熱可塑性樹脂供給ホッパ
11,11 第1の一対のローラ
12,12 第2の一対のローラ
13,13 分割金型
14,14 キャビティ
15,15 ピンチオフ形成部
16,16 熱可塑性発泡樹脂シート
17,17 型枠
18 空調ダクト
19 第1の壁面
20 第2の壁面
21 パーティングライン
22 取付片
23 スリット隙間調整装置

Claims (4)

  1. 溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シートを一対の分割金型間に配置する配置工程と、
    前記分割金型周囲に位置する型枠を前記分割金型に対して相対的に前進させて前記型枠を前記熱可塑性発泡樹脂シートに密着させる密着工程と、
    一対の前記分割金型のキャビティに前記熱可塑性発泡樹脂シートを真空吸引させると共に、一対の前記分割金型を型締めしてダクトを成形する成形工程と、
    を有することを特徴とするダクトの成形方法。
  2. 前記配置工程は、
    押出機から供給された発泡剤を混練した熱可塑性発泡樹脂を、スリットを閉じた状態のTダイ内の流路に貯留した後、前記Tダイのスリットを開いて、溶融状態の一対の熱可塑性発泡樹脂シートを前記Tダイから押出し、一対の前記熱可塑性発泡樹脂シートを、一対の前記分割金型間に配置することを特徴とする請求項1記載のダクトの成形方法。
  3. 前記配置工程は、
    押出機から供給された発泡剤を混練した熱可塑性発泡樹脂をアキュムレータに貯留して一定間隔でプランジャーを用いてTダイに供給し、溶融状態で且つ気泡セルを有する前記熱可塑性発泡樹脂シートを前記Tダイから押し出し、一対の前記熱可塑性発泡樹脂シートを、一対の前記分割金型間に配置することを特徴とする請求項1記載のダクトの成形方法。
  4. 前記熱可塑性発泡樹脂シートは、ポリエチレンと、ポリプロピレンと、オレフィンブロックコポリマーと、発泡剤と、を混練した熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のダクトの成形方法。
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