JP2012061538A - 硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備える表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】高速重切削加工において硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピングを備え、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】WC超硬合金、TiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、(a)Ti化合物層からなる下部層、(b)酸化アルミニウム層からなる上部層、からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、上記上部層の層厚方向に0.02μmの厚み幅間隔で、各厚み幅領域における平均粒径Dを求めて平均粒径Dの層厚方向変化を調べた場合に、平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上部層の酸化アルミニウムの平均粒径Dが層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を備える。
【選択図】 図2

Description

この発明は、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に高負荷が作用する各種の鋼や鋳鉄の高速重切削加工において、硬質被覆層がすぐれた靭性と耐チッピング性を備えることにより、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、上記の被覆工具の切削性能は、特に、上部層を構成するAl粒の組織構造によって大きな影響を受けることから、上部層の結晶粒組織構造について、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、引用文献1には、上部層を構成するAl層の成膜にあたり、その成膜過程で、炉内にHClガスを導入してエッチングを行い、新たなAl粒子の核生成を行なわせ、これを繰り返すことにより、Al粒の非柱状晶組織を形成して上部層の靭性を高めることが提案されている。
また、引用文献2には、上部層を構成するAl層の成膜にあたり、その成膜過程で、Alの成膜を一時停止し、炉内にTiClガスを導入して新たなAl粒子の核生成を行わせ、粗粒のAlと微細粒のAlとの混合組織からなる上部層を形成することが提案されている。
さらに、引用文献3には、上部層を構成するAl層の成膜にあたり、その成膜過程で、炉内にSiClガスを周期的に導入して超微細粒層を成長させることにより、等軸で微細粒のκ−Al組織からなる上部層を形成し耐摩耗性を改善することが提案されている。
特開平1−83667号公報 特開2002−205205号公報 特開2003−39212号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、例えば、前記特許文献1〜3に示される被覆工具においても、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いられた場合には、上部層の靭性が十分ではないために、切削加工時の高負荷によって切れ刃にチッピングが発生しやすく、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いられた場合でも、硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備え、しかも、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得たのである。
即ち、本発明者等は、被覆工具の硬質被覆層、特に、Al層からなる上部層の結晶粒組織構造を、柱状組織と微粒組織の混合組織として構成し、しかも、該柱状組織と微粒組織が、層厚方向に周期的に交互に現出するような結晶粒組織構造として構成することにより、Al層からなる上部層の高温硬さと耐熱性を何ら損なうことなく、上部層の靭性及び耐チッピング性を向上させ得ることを見出したのである。
そして、上記結晶粒組織構造を有するAl層は、例えば、以下の化学蒸着法によって成膜することができる。
(a)工具基体表面に、通常のTi化合物層からなる目標厚さの下部層を蒸着形成し、
(b)下部層の上に、AlCl−HCl−HS−CO系反応ガスを用いてAl層を蒸着形成し、
(c)上記(b)の成膜過程で、上記反応ガスの導入を停止すると同時に、SF系ガスを導入してSFエッチングを行い、
(d)次いで、上記(b)の工程と上記(c)の工程を繰り返し行ない、目標厚さのAl層を形成する。
上記(a)〜(d)によって、工具基体表面には、目標層厚の下部層と上部層が形成されるが、上記上部層について透過型電子顕微鏡で組織観察を行うと、柱状組織と微粒組織の混合組織からなり、しかも、該柱状組織と微粒組織が、層厚方向に周期的に交互に現出するような結晶粒組織構造が形成されていることが確認される。
そして、硬質被覆層の上部層として、上記の結晶粒組織構造を有するAl層を蒸着形成したこの発明の被覆工具は、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速重切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層がすぐれた靭性、耐チッピング性を備え、しかも、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
上記(b)の上部層を構成する酸化アルミニウムの平均粒径が層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記(b)の上部層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、層厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求めた場合に、
平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上部層を構成する酸化アルミニウムの平均粒径Dが層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
下部層のTi化合物層:
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができ、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体とAlからなる上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を1〜20μmと定めた。
上部層のAl層:
上部層を構成するAl層が、高温硬さと耐熱性を備えることは既に良く知られているが、この発明のAl層で構成された上部層、即ち、Al層の平均粒径が層厚方向に沿って周期的に変化する結晶粒組織構造を有するAl層からなる上部層は、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工においても、すぐれた靭性とすぐれた耐チッピング性を発揮する。
なお、この発明のAl層からなる上部層は、その平均層厚が1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が25μmを越えるとAl結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、高速重切削加工時の耐チッピング性が低下するようになることから、その平均層厚を1〜25μmと定めた。
上部層(Al層)の成膜:
この発明の上部層は、通常の化学蒸着条件で成膜した下部層の表面に、例えば、以下の化学蒸着条件によって成膜することができる。
まず、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)反応ガス組成(容量%):
AlCl:2〜3 %,
CO:5〜6 %,
HCl:2〜3 %,
S:0.1〜0.5 %,
:残
反応雰囲気温度:960〜1000℃、
反応雰囲気圧力:40〜60Torr、
の条件で30〜60分間蒸着し、所定層厚のAl層を蒸着形成する。
(b)ついで、上記反応ガスの導入を停止し、その代わりに、0.1〜2容量%のガス組成となるようにSFガスを添加したHガスを導入し、このSFガスにより以下の条件、即ち、
反応ガス組成(容量%):
SF:0.1〜2 %,
:残
反応雰囲気温度:800〜1200 ℃、
反応雰囲気圧力:50〜200 Torr、
の条件で5〜60分間SFエッチングを行う。
(c)ついで、上記SF系ガスの導入を停止し、装置内に、上記(a)の反応ガスを導入し、上記(a)と同じ条件で30〜60分間蒸着し、再度Al層を蒸着形成する。
以下、上記(b)と(c)を繰り返し行ない、最終的に目標層厚のAl層を蒸着形成する。
上部層(Al層)の結晶粒組織構造:
図1に、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の上部層(Al層)の結晶粒組織構造の概略摸式図を示す。
図1に示されるように、この発明の上部層(Al層)では、柱状組織のAl粒が層厚方向に複数段に形成され、しかも、各段の上下の柱状組織Al粒の境界には、微粒組織のAl粒が集積形成された組織構造を備えている。
図2には、上記の化学蒸着条件で形成されたこの発明の結晶粒組織構造を有する上部層(Al層)における、平均粒径の分布図を示す。
この平均粒径の分布図は、以下の方法で求めることができる。
まず、上部層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に夫々区分し(図3において、工具基体表面に平行に引かれた複数の平行線で仕切られた区画が、0.02μmの厚み幅領域に相当する。)、区分された各厚み幅領域に存在する粒界の数nを透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)にて合計10μmにわたって測定し、このnを1μm当たりの粒界の数N(=n/10)に換算し、その換算値の逆数を平均粒径D(=1/N)として求め、各厚み幅領域で求められた平均粒径Dを層厚方向に沿ってグラフ化することにより、図2として示される層厚方向平均粒径分布図を作成する。
そして、この発明の上部層(Al層)の結晶粒組織構造によれば、該層厚方向平均粒径分布図において、平均粒径Dの値が極大値(0.5〜1.5μmの範囲内)となる厚み幅領域と、平均粒径Dの値が極小値(0.05〜0.3μmの範囲内)となる厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、周期的かつ交互に少なくとも複数領域形成される。
例えば、図2においては、平均粒径Dの値が極大値Dmax(0.5〜1.5μmの範囲内)を示す厚み幅領域が、層厚方向に3箇所形成され、また、平均粒径Dの値が極小値Dmin(0.05〜0.3μmの範囲内)を示す厚み幅領域が、層厚方向に3箇所形成されている。
そしてこの層厚方向平均粒径分布図から、この発明の上部層(Al層)では、層厚方向に沿ってAl結晶粒の平均粒径が周期的に変化する結晶粒組織構造が形成されていることがわかる。
この発明で、Alの平均粒径の変化の周期を0.5μm〜5μmとしたのは、上記周期が0.5μm未満になると周期が短すぎるために周期構造の有するすぐれた靭性とすぐれた耐チッピング性の特徴を十分に発揮できなくなるためであり、一方、上記周期が5μm以上になると周期が長くなり過ぎてしまい周期構造の有する上記特徴を十分に発揮できなくなるため、という理由による。
また、この発明で、平均粒径Dの値の極大値Dmaxを0.5〜1.5μmの範囲内と定めたのは、0.5μm未満になると極小領域との差が小さくなりすぎて周期構造の有する特徴を十分に発揮しえなくなり、一方、1.5μm以上になると粗粒になり高い靭性を維持できなくなるからである。
また、平均粒径Dの値の極小値Dminを0.05〜0.3μmの範囲内と定めたのは、0.05μm未満になると極小領域内でのAlの粒子間歪みが増大しAl層中の粒子の密着性が低下することによりAlの高い靭性を維持できなくなり、一方、0.3μm以上になると粗粒になることにより高い靭性を維持できなくなるという理由による。
この発明では、硬質被覆層の上部層(Al層)として、平均粒径Dが上記の極大値と極小値を示す厚み幅領域が周期的に交互に現出する結晶粒組織構造を備えていることから、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工においても、Al層が有する本来の高温硬さと耐熱性とを損なうことなく、すぐれた靭性、耐チッピング性を発揮するようになる。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層とAl層からなる上部層を被覆形成し、かつ、上部層のAl層の平均粒径が層厚方向に沿って周期的に変化する結晶粒組織構造を有していることにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合でも、靭性、耐チッピング性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成されるものである。
この発明の上部層(Al層)の結晶粒組織構造の概略摸式図を示す。 この発明の結晶粒組織構造を有する上部層(Al層)についての層厚方向の平均粒径分布図を示す。 この発明の上部層(Al層)を、工具基体表面に平行に引かれた複数の(仮想)平行線で、0.02μmの厚み幅領域に仕切り、区画した状態の摸式図を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表5に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成する。
(b)次いで、硬質被覆層の中間層として、表3に示される条件で所定の層厚のAl層を蒸着形成する。
(c)次いで、表4に示される条件で、Al層を所定時間SFエッチングを行う。
(d)上記(b)、(c)を所定の上部層層厚が得られるまで繰り返し行なう。
上記(a)〜(d)によって、表6に示される下部層、および、Al層の平均粒径が層厚方向に沿って周期的に変化する結晶粒組織構造を有する同じく表5に示される上部層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15を製造した。
上記本発明被覆工具1〜15のAl層からなる上部層について、透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて複数視野に渡って観察し、図1の概略摸式図に示される結晶粒組織構造が観察された。
また、同じく透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、上記本発明被覆工具1〜15のAl層からなる上部層について、図3に示されるように層厚方向に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、層厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求め、横軸を平均粒径D、縦軸を層厚方向深さとして、図2に示される平均粒径分布図を作成した。
上記図2において、平均粒径Dが0.5〜1.5μmの間に存在する場合の平均粒径Dの最大の値を平均粒径の極大値Dmaxとし、一方、平均粒径Dが0.05〜0.3μmの間に存在する場合の平均粒径Dの最小の値を平均粒径の極小値Dminとし、図2として作成した平均粒径分布図から、DmaxとDminを求め、さらに、Dmaxを示す層厚方向の深さ位置とDminを示す層厚方向の深さ位置とから、層厚方向にわたって、Alの平均粒径が変化する周期Cを求めた。
表6に、上記極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの値を示す。
また、比較の目的で、工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、表3に示される条件かつ表5に示される目標層厚で本発明被覆工具1〜15と同様に、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層を蒸着形成した。
次いで、硬質被覆層の上部層として、いくつかのものについては、表3に示される条件かつ表7に示される目標層厚でAl層からなる上部層を蒸着形成することにより、表7の比較被覆工具1〜10を作製した。
また、残りのものについては、表3に示される条件によるAl層の蒸着形成と、表4に示される条件でSFエッチングとを繰り返し行なうことにより、Alの平均粒径が変化するAl層からなる上部層を蒸着形成することにより、表7の比較被覆工具11〜15を作製した。
比較被覆工具1〜10及び11〜15のAl層からなる上部層について、透過型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、Alの平均粒径を測定した。
比較被覆工具1〜10については、Alの平均粒径は層厚方向に有意な差は認められず、ほぼ均一平均粒径であった。
表7には、比較被覆工具1〜10についての層厚方向全体にわたり均一な平均粒径の値を示す。
比較被覆工具11〜15については、本発明被覆工具1〜15の場合と同様に層厚方向にわたる平均粒径の変化を測定した。
表7に、比較被覆工具11〜15について求めた極大値Dmax、極小値Dmin及び周期Cの値を示す。
また、本発明被覆工具1〜15及び比較被覆工具1〜15の各構成層の層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、いずれも表5〜表7に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
Figure 2012061538
Figure 2012061538
Figure 2012061538
Figure 2012061538
Figure 2012061538
Figure 2012061538
Figure 2012061538
つぎに、上記本発明被覆工具1〜15及び比較被覆工具1〜15について、表8に示す条件で切削加工試験を実施し、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
表9に、この測定結果を示した。
Figure 2012061538
Figure 2012061538
表5〜9に示される結果から、この発明の被覆工具は、硬質被覆層の上部層として、Al層の平均粒径が層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有していることにより、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合でも、靭性、耐チッピング性にすぐれ、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することが明らかである。
これに対して、上部層のAlがほぼ均一平均粒径である比較被覆工具1〜10、また、本発明範囲外の結晶粒組織構造を有する比較被覆工具11〜15については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命にいたることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、例えば鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工において、すぐれた靭性、耐チッピング性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるが、高速重切削加工条件ばかりでなく、高速切削加工条件、高速断続切削加工条件等で使用することも勿論可能である。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層は、1〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    上記(a)、(b)からなる硬質被覆層を化学蒸着した表面被覆切削工具において、
    上記(b)の上部層を構成する酸化アルミニウムの平均粒径が層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記(b)の上部層を、工具基体表面と平行に0.02μmの厚み幅領域に区分し、該厚み幅領域に存在する粒界の数を測定し、1μm当たりの粒界の数の逆数を平均粒径Dとして、層厚方向に沿う各厚み幅領域の平均粒径Dの変化を求めた場合に、
    平均粒径Dが0.5〜1.5μmである厚み幅領域と、平均粒径Dが0.05〜0.3μmである厚み幅領域とが、上部層の層厚方向に沿って、交互に少なくとも複数領域形成されていることによって、上部層を構成する酸化アルミニウムの平均粒径Dが層厚方向に沿って0.5μm〜5μmの周期で周期的に変化する結晶粒組織構造を有することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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