JP2012059428A - 圧接端子 - Google Patents
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Abstract
【課題】スロット部に圧入される被覆電線の絶縁被覆が比較的靭性の高い材料で構成されていても、絶縁被覆を良好に除去し、被覆電線の芯線と圧接刃との確実な導通を図ることができる、新規な構造の圧接端子を提供すること。
【解決手段】一対の圧接部20,20はスロット部14の開口側の端部から拡開状に延び出す一対の案内刃28,28を有すると共に、圧接刃12と案内刃28の接続部位において被覆電線16を当接状態で位置決めする一対の尖鋭部30,30を有するようにした。
【選択図】図2
【解決手段】一対の圧接部20,20はスロット部14の開口側の端部から拡開状に延び出す一対の案内刃28,28を有すると共に、圧接刃12と案内刃28の接続部位において被覆電線16を当接状態で位置決めする一対の尖鋭部30,30を有するようにした。
【選択図】図2
Description
本発明は、一対の圧接刃の間に被覆電線が圧入されて導通される圧接端子に関する。
従来から、自動車等の電装系において、導体からなる芯線が絶縁被覆されてなる被覆電線を、一対の圧接刃を対向配置して設けたスロット部に圧入することにより被覆電線の絶縁被覆を切り裂いて、一対の圧接刃と絶縁被覆内の芯線との導通を図るようにした圧接端子が知られている。このような圧接端子は、例えば、特許文献1(特開2001−176568号公報)に記載されているように、一対の圧接刃を対向配置して設けたスロット部と、該スロット部の開口側の端部から拡開状に延び出す一対の案内刃を備えている。そして、案内刃によってスロット部の開口側
に案内された被覆電線が、スロット部の開口側からスロット部の深さ方向に圧入されるようになっている。
に案内された被覆電線が、スロット部の開口側からスロット部の深さ方向に圧入されるようになっている。
ところで、このような従来構造の圧接端子では、被覆電線のスロット部への圧入に際して、被覆電線が案内刃によりスロット部の開口側外方に位置決め保持されるようになっている。この際、案内刃が広い接触面積で被覆電線の外周面に当接するようにされている。即ち、従来では、被覆電線の絶縁被覆は塩化ビニル等の比較的靭性の低い材料で比較的厚肉に構成されており、芯線との密着性が弱かった。それ故、スロット部に被覆電線が圧入される前に、案内刃に絶縁被覆を積極的に接触させて、その摩擦抵抗により絶縁被覆を引き剥がすように破断させることが有効であった。これにより、スロット部に圧入される被覆電線の芯線と一対の圧接刃を確実に当接させることができ、スロット部において被覆電線の芯線と圧接刃との導通が確実に図られるようにされている。
ところが、近年の自動車の電装系に対する更なる小型化・軽量化の要望に対して、比較的に厚肉となり大型化が避けられない塩化ビニルの絶縁被覆を有する被覆電線に代えて、単芯線等の芯線の外周面に、エナメルを薄肉に塗布して絶縁被覆を構成した被覆電線が採用されるようになってきている。そして、このようなエナメルの絶縁被覆を有する被覆電線にあっては、従来構造の圧接端子では、絶縁被覆の破断が確実に行われず、スロット部において被覆電線の導体と圧接刃との導通に不具合が生じるおそれがあった。
すなわち、エナメルの絶縁被覆は、従来の塩化ビニルの絶縁被覆に比して靭性が高く芯線との密着性も高いことから、従来の塩化ビニルの絶縁被覆のように、案内刃との摩擦抵抗により絶縁被覆を引きちぎるように破断することが困難であった。それ故、スロット部に圧入される被覆電線において、エナメルの絶縁被覆の除去が充分に行われず、スロット部において被覆電線の導体と圧接刃との確実な導通が図れないおそれがあった。
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、スロット部に圧入される被覆電線の絶縁被覆が比較的靭性の高い材料で構成されていても、絶縁被覆の確実な除去が達成されて、被覆電線の芯線と圧接刃との確実な導通を図ることができる、新規な構造の圧接端子を提供することにある。
本発明の第一の態様は、対向位置に圧接刃が形成された一対の圧接部の間にスロット部を備えており、該スロット部の開口側から深さ方向に被覆電線が圧入されて導通される圧接端子において、前記一対の圧接部は前記スロット部の開口側の端部から拡開状に延び出す一対の案内刃を有すると共に、前記圧接刃と前記案内刃の接続部位において前記被覆電線を当接状態で位置決めする一対の尖鋭部を有することを特徴とする。
本態様によれば、被覆電線が案内刃によりスロット部の開口部に案内された状態で、圧接刃と案内刃の接続部位により構成される一対の尖鋭部が被覆電線に当接されて、被覆電線がスロット部の開口側端部に位置決めされることとなる。このような位置決め状態から被覆電線がスロット部に圧入されることから、例えば、絶縁被覆がエナメル等の靭性が高い素材で構成された場合でも、一対の尖鋭部が被覆電線の絶縁被覆に確実に食い込んで、絶縁被覆を確実に除去して圧接刃と被覆電線の芯線との導通を確実に実現することができる。従って、絶縁被覆の材質に係わらず、圧接端子の被覆電線との導通安定性を確保することができる。
要するに、従来構造の圧接端子では、圧入当初に案内刃に絶縁被覆を接触させて摩擦抵抗により絶縁被覆を変形させる必要があることから、スロット部の開口部が被覆電線の圧入抵抗により開いてしまい、絶縁被覆の靭性が高い場合に圧接刃が絶縁被覆に上手く食い込めないおそれがあった。この点、本態様においては、被覆電線をスロット部に圧入するに際して、圧入当初から一対の尖鋭部が被覆電線に確実に当接している。従って、絶縁被覆の靭性が大きい場合でも、尖鋭部が確実に絶縁被覆に食い込んで、圧接刃により絶縁被覆を切断して芯線との導通を図ることができる。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載の圧接端子において、前記一対の案内刃が、前記スロット部の前記開口側の端部から外方に向かって次第に対向間距離が大きくなる傾斜形状とされているものである。
本態様によれば、傾斜による案内作用によって、一対の尖鋭部が形成されたスロット部の幅方向内方側へ向けて被覆電線を有利に誘導することができる。従って、被覆電線の絶縁被覆に対して一対の尖鋭部を確実に当接させて食い込ませることができ、絶縁被覆の除去を安定的に実施することが可能となる。
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載の圧接端子において、前記一対の案内刃の先端側において、互いに平行に対向位置して前記スロット部の前記開口側の外方に向かって延び出す一対の保持刃が形成されているものである。
本態様によれば、一対の保持刃によって被覆電線の離脱を防止しつつ、圧接作業を行うことが可能となる。これにより、圧接作業がより確実且つ簡単に実行可能となり、作業性を大きく向上させることができる。
本発明に従う圧接端子によれば、被覆電線がスロット部の一対の圧接刃の間へ圧入されるにあたって、先ず被覆電線が一対の尖鋭部に当接した状態で位置決めされた後に、圧入が行われる。これにより、絶縁被覆が靭性の高いエナメル等の素材で形成されている場合であっても、圧入に際して一対の尖鋭部を被覆電線の絶縁被覆に対して確実に食い込ませることができ、被覆電線の芯線と圧接端子との導通が安定して達成される。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜3に、本発明の第一の実施形態としての圧接端子10を示す。圧接端子10は、一対の圧接刃12,12が対向配置されたスロット部14を備えている。図2,3の拡大説明図に示されるように、圧接端子10の使用状態においては、このスロット部14に対して被覆電線16が圧入されて、圧接端子10と被覆電線16の内部の芯線18とが互いに導通されることとなる。なお、図2,3においては、被覆電線16の断面を模式的に示している。
より詳しくは、圧接端子10は、金属平板をプレス打ち抜き加工等することにより作製されており、全体として薄肉の矩形板形状を呈している。図1に示すように、圧接端子10の長さ方向の一方の端部には、互いに隙間を隔てて長さ方向に延び出す一対の圧接部20,20が設けられている。一対の圧接部20,20の外周側の端面は相互に接近するように僅かに傾斜しており、延出先端側がより先細となるように形成されている。さらに、各圧接部20の延出先端部付近においては、幅寸法が幅方向外方に広がるようにして、外周面に滑らかな段差部が形成されている。これにより、各圧接部20の先端部付近において、やや幅広の係止部22が形成されている。また、圧接端子10の長手方向中間部分には、圧接端子10の幅方向両側に突出する係合突起24が形成されている。これら係止部22及び係合突起24は、後述するように、圧接端子10の使用時において、圧接端子10を図示しない電気接続箱に対して固定するために用いられる。なお、一対の圧接部20,20が延び出した側とは反対側の、圧接端子10の長さ方向の他方の端部においては、タブ部26が突出して延び出している。また、一対の圧接部20,20の対向位置となる内側の端面によって、一対の圧接刃12,12が形成されている。そして、一対の圧接刃12,12の対向面間、即ち、一対の圧接部20,20の間には、スロット部14が形成されている。
図2に示されるように、一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1は、スロット部14に圧入される被覆電線16の芯線18の直径D2、及び、被覆電線16全体の直径D3よりも小さくされている。
また、スロット部14は、一対の圧接刃12,12の対向面間をストレートに延びて圧接端子10の一方の端部(図2中下側の端部)に開口する凹形状とされている。そして、図2,3に示すように、このスロット部14の開口側の端部から、被覆電線16がスロット部14の深さ方向に圧入されることとなる。
一対の圧接部20,20の延出先端部は、幅方向外側に向かうに従い延出長さが大きくなる拡開形状とされており、このような一対の圧接部20,20の延出先端部における互いに対向する内側端面により、一対の案内刃28,28がそれぞれ構成されている。即ち、一対の案内刃28,28は、一対の圧接刃12,12の対向面間に形成されたスロット部14の開口側の端部から、それぞれ拡開状に延び出すように形成されており、一対の案内刃28,28の対向面間の距離は、スロット部14の開口側の端部から延出先端側(図2の下側)に行くに従って次第に大きくなっている。
なお、各圧接部20にそれぞれ形成された圧接刃12と案内刃28は何れも直線状に延びており、図2に示すように、スロット部14の開口端部において、相互に角αをなすように接続されている。このような圧接刃12と案内刃28との相互の接続部位によって、一対の尖鋭部30,30が角状に形成されている。そして、被覆電線16をスロット部14に圧入する際には、被覆電線16が先ずこの一対の尖鋭部30,30に対して当接して位置決め固定されることとなる。
このような構造とされた本実施形態の圧接端子10は、例えば以下のようにして用いられる。即ち、本実施形態では、圧接端子10は図示しない自動車用電気接続箱の内部に収容された絶縁板に配索された被覆電線16に対して圧接されて、電気接続箱の内部回路を構成する。
このような被覆電線16は、銅製の単芯線からなる導電性の芯線18の表面に対して、絶縁被覆32が設けられた構造とされている。図2に示すように、芯線18と絶縁被覆32とを含む被覆電線16全体の直径D3は、一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1よりも大きくされている。また、被覆電線16の芯線18の直径D2は、一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1よりも僅かに大きくされている。
なお、本実施形態においては、絶縁被覆32を形成する絶縁素材として、エナメルが採用されている。このようなエナメル製の絶縁被覆32を採用すれば、従来の塩化ビニル製の絶縁被覆よりも耐熱性に優れていることから、絶縁被覆32の厚さ寸法をより小さくでき、その結果、被覆電線16全体の直径寸法を小さく抑えることができる。本実施形態においては、エナメル製の絶縁被覆32の厚さは0.01mm〜0.1mm程度とされており、より好ましくは0.01〜0.05mmの範囲とされる。これに対して、従来の塩化ビニル製の絶縁被覆に厚さは0.2〜0.3mm程度である。なお、図2,3等の各図面においては、理解を容易にするために、絶縁被覆32の厚さ寸法を誇張して図示している。
また、このようなエナメル製の絶縁被覆32が採用されていることにより、絶縁被覆32の厚さ寸法(D3−D2)の値は、図2に示す芯線18の直径D2に対して、極めて小さくされている。具体的には、芯線18の直径D2の値は、要求される電流量等の条件に応じて適宜変更されるものであるが、芯線18の直径D2に対して、絶縁被覆32の厚さ寸法(D3−D2)の値は、好ましくはD2:(D3−D2)=1:0.01〜0.2、より好ましくはD2:(D3−D2)=1:0.01〜0.06の範囲とされる。なお、従来の塩化ビニル製の絶縁被覆が用いられている場合には、絶縁被覆の厚さ寸法(D3−D2)の値は、一般に、D2:(D3−D2)=1:0.15〜0.6程度であり、芯線の直径D2に対して絶縁被覆がかなり肉厚となっている。
そして、圧接端子10の被覆電線16に対する圧接は、次のようにして実施される。図2に示すように、被覆電線16への圧入に際して、先ずスロット部14が設けられた側の圧接端子10の先端部、即ち、一対の圧接部20,20の延出先端部が被覆電線16と相互に当接する。ここにおいて、圧接端子10の先端部分には、スロット部14の開口端部から拡開形状で延びだす一対の案内刃28,28が傾斜状に形成されている。これにより、圧接端子10と被覆電線16との当接位置が幅方向の何れかの側に多少ずれていたとしても、一対の案内刃28,28の傾斜による案内作用に従って、被覆電線16がより圧接端子10の幅方向中央側で圧接端子10と当接するように適切に案内される。その結果、被覆電線16は、スロット部14の開口端部に形成された一対の尖鋭部30,30側へと案内され、一対の尖鋭部30,30とそれぞれ当接した状態で位置決め保持されることとなる。
次に、被覆電線16に対して圧接端子10がさらに押圧されると、上述の如く、被覆電線16全体の直径D3よりも一対の圧接刃12,12の対向面間距離D1が小さくされていることから、圧接端子10の一対の尖鋭部30,30が、絶縁被覆32に対して食い込むようにして進入して、絶縁被覆32を確実に破断させることができる。そして、圧接端子10をさらに押し込むと、被覆電線16の芯線18の直径D2よりも一対の圧接刃12,12の対向面間距離D1が小さくされていることから、図3に示すように、被覆電線16の表面の絶縁被覆32が除去されつつ、芯線18が一対の圧接刃12,12の対向面間のスロット部14に進入して、芯線18と一対の圧接刃12,12とが完全に接触した状態となる。これにより、圧接端子10と被覆電線16の内部の芯線18との導通が良好に達成される。図3に示す状態まで押圧が進行して圧接が完了すると、圧接端子10は係止部22及び係合突起24の作用により図示しない絶縁板や電気接続箱のケース等に対して係合して固定される。このようにして、絶縁板上に配索された被覆電線16と圧接端子10が相互に導通されて、電気接続箱の内部回路が完成することとなる。なお、タブ部26の先端は電気接続箱の外部へと突出し、図示しないコネクタ等と相互に導通するのに用いられる。
上述のような圧接工程において、特に、本実施形態では、先ず被覆電線16が一対の尖鋭部30,30に当接した状態で位置決め保持された後に、被覆電線16の絶縁被覆32に対して一対の尖鋭部30,30が押し込まれて、絶縁被覆32が破断されるようになっている。これにより、従来構造の圧接端子に比して絶縁被覆32の除去がより確実に行われるようになっている。
すなわち、従来の圧接端子においては、被覆電線のスロット部への圧入に際して、例えば、特許文献1(特開2001−176568号公報)の図4に示されているように、被覆電線がスロット部の開口端部に形成された尖鋭部ではなく、より幅方向外方の、案内刃の幅方向中間位置において位置決め保持されるようになっている。そして、この状態で被覆電線がさらに押し込まれることにより、案内刃と被覆電線が先ず広い接触面積で面状に相互に当接する。このような従来の圧接端子においては、先ず面状の広い接触面積で被覆電線と圧接端子とを当接させ、その接触面の全体での大きな摩擦抵抗を利用して、被覆電線の引き剥がしによる破断が行われる。このような摩擦抵抗に基づく絶縁被覆の除去は、比較的靭性が低く、芯線との密着が弱い塩化ビニル製等の絶縁被覆であればある程度有効であったものの、エナメル製等の絶縁被覆32に対しては有効性が低かった。即ち、エナメル製の絶縁被覆32は、芯線18との密着性が高く、しかも、より靭性が高いことから、大きな摩擦力を及ぼしても、絶縁被覆32を芯線18から確実に除去することが難しいのである。特に、エナメル製の絶縁被覆32を備えた被覆電線16は全体の直径D3が比較的小径であることも相俟って、絶縁被覆32が取り除かれないまま被覆電線16の全体がスロット部14に進入してしまい、芯線18と圧接端子との導通が達成されないおそれがあったのである。
一方、本実施形態の圧接端子10によれば、被覆電線16は、先ず、一対の尖鋭部30,30と線接触した状態に位置決め保持される。そして、その状態から一対の尖鋭部30,30が絶縁被覆32に対して押し込まれることにより、一対の尖鋭部30,30が絶縁被覆32に対して食い込み、絶縁被覆32が破断されるようになっている。即ち、本実施形態では、圧接端子10の絶縁被覆32への当接圧力が、従来のように一対の案内刃28,28と絶縁被覆32との広い当接面上に分散することなく、一対の尖鋭部30,30と絶縁被覆32とが接触する線状の限られた接触部位に対して集中的に作用する。これにより、尖鋭部30,30は、絶縁被覆32に対して有効に食い込むようにして進入し、絶縁被覆32を確実に破断することができるのである。そして、芯線18の表面に接触した一対の尖鋭部30,30と、それに続く一対の圧接刃12,12によって、絶縁被覆32が芯線18の表面から削り取られるようにして除去される。その結果、図3に示すように、芯線18の表面から絶縁被覆32を良好に取り除き、芯線18と一対の圧接刃12,12とを充分な接触面積で相互に接触させることができるのである。
要するに、本実施形態の圧接端子10によれば、絶縁被覆32が従来の塩化ビニルに比して靭性の高いエナメル製とされている場合にも、絶縁被覆32を確実に破断させ、芯線18の表面から絶縁被覆32を良好に除去することができる。従って、電気接続箱の内部回路を構成する被覆電線16として、全体の径寸法が従来よりも小径とされたエナメル線を採用する場合においても、被覆電線16の小径化により全体の省スペース化を達成しつつ、圧接端子10と芯線18との導通を安定して達成することが可能となるのである。
また、本実施形態によれば、一対の案内刃28,28や一対の尖鋭部30,30の位置決め作用により、被覆電線16のスロット部14に対する芯線18の侵入位置の位置ずれが防止される。即ち、芯線18がスロット部14に圧入される際、圧接端子10の幅方向(図2中の左右方向)に位置ずれが生じていると、スロット部14へ芯線18が上手く圧入されず、一対の圧接刃12,12等が芯線18と過度に接触して芯線18が損傷してしまうおそれがある。本実施形態によれば、被覆電線16の位置合わせが簡単に行われることにより、芯線18の損傷や破断を有効に防止することができる。
なお、本実施形態においては、圧接端子10と被覆電線16との当接に際して、被覆電線16が一対の尖鋭部30,30に対して良好に接触するように、圧接端子10の一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1と被覆電線16の直径D3との相互関係や、一対の尖鋭部30,30における圧接刃12と案内刃28のなす角αが、適切に設定されることが望ましい。即ち、使用する被覆電線16の直径D3や芯線18の直径D2の値は、必要な電流量等の諸条件に応じて適宜設定され、これらD2,D3の値に基づいて、一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1の値は、公知のように一対の圧接刃12,12と芯線18との圧接が良好に行われる範囲で適宜設定されることとなる。しかしながら、特に、一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1に対して被覆電線16の直径D3の値が大きすぎると、圧接端子10が被覆電線16をスロット部14の開口部に対して位置決め保持したとき、被覆電線16に対して一対の尖鋭部30,30を当接させることができず、絶縁被覆32に対して一対の尖鋭部30,30を有効に食い込ませることが難しくなるおそれがある。このため、特に、絶縁被覆32の厚さ寸法(D3−D2)の値がある程度薄くされていることが望ましい。具体的には、前述したように、芯線18の直径D2に対する絶縁被覆32の厚さ寸法(D3−D2)の値が、D2:(D3−D2)=1:0.01〜0.2、より好ましくはD2:(D3−D2)=1:0.01〜0.06となる範囲で設定されていることが望ましい。また、被覆電線16の直径寸法D3等の設定によっては、尖鋭部30の形成角度αが大きすぎる場合にも、一対の尖鋭部30,30と絶縁被覆32との当接が良好に生じなくなる可能性がある。このため、尖鋭部30の形成角度αは、一対の案内刃28,28の傾斜による案内作用が有効に作用し得る範囲において、ある程度小さくされている方が好ましい。
次に、図4に、本発明の第二の実施形態としての圧接端子40の要部を拡大して示す。なお、この圧接端子40は、図4に示される圧接端子40の先端部分の形状以外は、第一の実施形態の圧接端子10と同様の構造とされている。従って、以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
圧接端子40においては、スロット部14の開口端部から円弧状に拡開して延び出すようにして、一対の案内刃42,42が形成されている。さらに、一対の案内刃42,42の先端側においては、互いに平行に対向位置してスロット部14の開口側の外方に向かって延び出す一対の保持刃44,44が形成されている。
このような一対の保持刃44,44が形成されていることにより、圧接端子40を被覆電線16に対して圧接する際に、一対の保持刃44,44の対向面間に被覆電線16を保持することができる。これにより、被覆電線16の抜け出しを防止し、被覆電線16をより安定してスロット部14へと圧入することができる。
また、本実施形態においては、案内刃42が円弧状とされていることにより、図4に示されているように、案内刃42と圧接刃12との接続部位に形成される一対の尖鋭部46,46の形成角度αが、第一の実施形態の尖鋭部30,30に比して、より鋭角に形成されている。このように、第一の実施形態に比して一対の尖鋭部46,46の形成角度αが小さくされていることにより、被覆電線16の直径D3が一対の圧接刃12,12の対向面間の距離D1に対してある程度大きい場合にも、被覆電線16を圧接端子40の先端部に当接させて位置決めした状態において、被覆電線16を一対の尖鋭部46,46に対して当接させ易くなっている。これにより、絶縁被覆32が肉厚とされている場合にも、絶縁被覆32の破断を安定して生じさせることができる。
なお、上述の第一及び第二の実施形態における圧接端子10,40は、何れも電気接続箱の内部回路を形成するのに用いられる平板状の端子とされていたが、圧接端子は、例えば特許文献1に記載されているような自動車用のワイヤハーネス等の先端部において用いられ、ワイヤハーネスの芯線に対して圧接接続されるものであってもよい。
図5に、本発明の第三の実施形態としての圧接端子50の要部を示す。圧接端子50は、芯線18との圧接部分以外の構造は、特許文献1の図1等に示されるような自動車用のワイヤハーネス等の先端部において用いられる一般的な圧接端子と同様の構造を備えているため、ここでは要部の拡大断面図のみを示す。また、以下の説明において、第一及び第二の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことで説明を省略する。
圧接端子50は、金属板を打ち抜き加工した後所定形状に曲げ加工を施して作成されており、底壁52と、互いに対向する側壁54,54とを備えて略コの字状の断面で延びる構造とされている。さらに、圧接端子50は、側壁54,54から対向方向に板状に突出する一対の圧接部56,56を備えている。
一対の圧接部56,56は、それぞれ略一定の幅寸法で図5中の上下方向に互いに平行に延び出しており、この一対の圧接部56,56の互いに対向する内側の端面によって、一対の圧接刃12,12が構成されている。そして、この一対の圧接刃12,12の対向面間において、スロット部14が形成されている。即ち、一対の圧接部56,56は、第一の実施形態の一対の圧接部20,20と略同様の構造とされているが、本実施形態においては、図5に示されるように、被覆電線16がスロット部14の図5中の上側の開口端部から図5中の下側方向に向かって圧入される。
また、一対の圧接部56,56の図5中上側の端部においては、スロット部14の図5中上側の開口端部から拡開状に伸びだすようにして、一対の案内刃28,28が形成されている。そして、一対の案内刃28,28と一対の圧接刃12,12との接続部位においては、第一の実施形態と同様に、尖鋭部30,30が形成されている。これにより、スロット部14に対して被覆電線16が圧入される際には、一対の案内刃28,28の案内作用によって、先ず被覆電線16が一対の尖鋭部30,30に当接した状態で位置決め保持される。そして、このような当接状態において被覆電線16が図5における下側方向に向かってさらに圧入されることにより、第一の実施形態と同様に、絶縁被覆32に対して一対の尖鋭部30,30が食い込み、絶縁被覆32を確実に破断させることができるのである。これにより、芯線18の表面の絶縁被覆32が良好に除去され、圧接端子50と被覆電線16の芯線18とが相互に導通される。
なお、圧接端子50は、図示しないかしめ片を備えた圧着部と、外部の端子と接続するための嵌合部を備えており、圧着部によって被覆電線16をかしめ固定して保持することができると共に、嵌合部において相手側の端子と相互に接触できるようになっている。ここにおいて、本実施形態では、一対の圧接刃12,12に加えて一対の案内刃28,28と一対の尖鋭部30,30が設けられていることにより、第一の実施形態と同様に、絶縁被覆32の靭性が高く芯線18への密着性が高い場合であっても絶縁被覆32を確実に破断して、芯線18と圧接端子50との導通が高い安定性をもって達成されるようになっている。その結果、被覆電線16の芯線18と、図示しない相手側端子との相互の導通が確実に行われるのである。
以上のように、本発明の第一〜第三の実施形態によれば、スロット部14の開口端部から拡開して延びる一対の案内刃28,28,42,42が形成されていることにより、被覆電線16の圧入時において、被覆電線16が一対の尖鋭部30,30に当接した状態で安定的に位置決め保持される。そして、このような一対の尖鋭部30,30に当接した状態から被覆電線16がスロット部14の深さ方向に圧入されることにより、一対の尖鋭部30,30が絶縁被覆32に対して効率的に食い込み、その結果、絶縁被覆32を一対の尖鋭部30,30によって破断させることができるのである。これにより、スロット部14の内部へ圧入される芯線18は、絶縁被覆32が表面から適切に除去された状態となり、一対の圧接刃12,12と芯線18との接触面において芯線18の芯線18と一対の圧接刃12,12との導通が良好に行われることとなる。
すなわち、本発明の第一〜第三の実施形態によれば、従来の圧接端子のように、圧接端子との大きな接触面積での接触抵抗によって絶縁被覆32を引き剥がすのではなく、一対の尖鋭部30,30を絶縁被覆32に当接させて、尖鋭部30における圧入力の集中荷重を利用して絶縁被覆32を確実に破断させ、その破断箇所を起点として絶縁被覆32を芯線18の表面から取り除くことができる。これにより、絶縁被覆32が従来の塩化ビニル等よりも比較的靭性が高く、芯線18への密着性が高い(即ち、引き剥がしに強い)エナメル等の素材によって形成されている場合にも、圧接に際して一対の圧接刃12,12と芯線18との接触表面から絶縁被覆32を良好に取り除くことができ、安定した導通状態を達成できる。これにより、例えば、電気接続箱の内部回路を形成するために薄肉のエナメル製の絶縁被覆32を備えた小径の被覆電線16を採用する場合においても、これまで難しかったエナメル製の絶縁被覆32の除去を確実に行うことができるのである。
また、前記第一及び第三の実施形態においては、一対の案内刃28,28が、スロット部14の開口側の端部から外方に向かって次第に対向間距離が大きくなる傾斜形状とされていることにより、被覆電線16がスロット部14の開口側の端部に向かって適切に案内されるようになっている。これにより、被覆電線16の一対の尖鋭部30,30との当接状態での位置決めが良好に実施され、一対の尖鋭部30,30による絶縁被覆32の破断を確実に行い得る。
また、前記第二の実施形態に記載の圧接端子40においては、一対の案内刃42,42に加えて、さらに一対の保持刃44,44が形成されていることから、被覆電線16の圧入に際して、被覆電線16を一対の保持刃44,44の間に保持しつつ、スロット部14の開口端部へと被覆電線16を案内することができる。これにより、被覆電線16の圧接時における被覆電線16の抜け出しを良好に防止することができ、圧接端子40と被覆電線16との圧接作業性が大きく向上される。
以上、本発明の幾つかの実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態においては、絶縁被覆32はエナメル製とされていたが、絶縁被覆32は従来の塩化ビニル製であってもよい。また、絶縁被覆32の被覆材料としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、錫等の公知の被覆材料が採用されていてもよい。
また、前記各実施形態においては、被覆電線16として、芯線18が単一の金属線材から構成された単芯線が採用されていたが、芯線18が複数の線材から構成された撚り線が採用されていてもよい。
また、前記実施形態においては、一対の圧接刃12,12は、互いに対向して平面状に延びる端面とされていたが、一対の圧接刃12,12は、全体、またはその一部に、それぞれ対向方向に向かって山形状に突出する凸部が形成されていてもよい。これにより、被覆電線16の絶縁被覆32をより有利に剥離することができる。
10:圧接端子、12:圧接刃、14:スロット部、16:被覆電線、20:圧接部、28:案内刃、30:尖鋭部、40:圧接端子、42:案内刃、44:保持刃、46:尖鋭部、50:圧接端子、56:圧接部
Claims (3)
- 対向位置に圧接刃が形成された一対の圧接部の間にスロット部を備えており、該スロット部の開口側から深さ方向に被覆電線が圧入されて導通される圧接端子において、
前記一対の圧接部は前記スロット部の開口側の端部から拡開状に延び出す一対の案内刃を有すると共に、前記圧接刃と前記案内刃の接続部位において前記被覆電線を当接状態で位置決めする一対の尖鋭部を有することを特徴とする圧接端子。 - 前記一対の案内刃が、前記スロット部の前記開口側の端部から外方に向かって次第に対向間距離が大きくなる傾斜形状とされている請求項1に記載の圧接端子。
- 前記一対の案内刃の先端側において、互いに平行に対向位置して前記スロット部の前記開口側の外方に向かって延び出す一対の保持刃が形成されている請求項1又は2に記載の圧接端子。
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