JP2012057053A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、微量の無機化合物もしくは有機化合物を連続重合設備において均一に付着させることができるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶融重縮合によって得られたポリエステルチップに有機化合物および/または無機化合物を付与させる工程を含むポリエステルの製造方法であって、ポリエステル重量に対する有機化合物および無機化合物の合計付着重量の(標準偏差値/平均値)が0.01〜1.20になる(試料数30点以上測定の結果による)ことを特徴とするポリエステルの製造方法によって上記課題を解決できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリエステルの製造方法に関する。特に重縮合工程までに添加が困難な有機または無機化合物成分を微量且つ均一に分散することが必要なポリエステルの製造方法に関する技術分野に属する。
芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略する。)は、その優れた機械的性質、化学的性質から、繊維、フィルム、工業用樹脂、ボトル、カップ、トレイ等に成形されて広く用いられている。さらに近年、ポリエチレンテレフタレートを中心とするポリエステル製容器は、その優れた透明性、卓越した力学的物性、均衡のとれたガスバリヤ性及び優れた衛生性に着目され、醤油、ソース、食油、ジュース、ビール、炭酸飲料等の食品容器や洗剤、化粧品、医薬品等の容器に使用され、目覚しい展開がなされている。これらのポリエステル樹脂のボトルは、通常、射出成形した有底管状のプリフォームをブロー金型内で延伸ブロー成形して製造される。果汁飲料等のように熱充填を必要とする内容物のボトルにおいては、ボトル口栓部の剛性を上げて耐熱性を付与するために、プリフォームまたはボトルの口栓部を赤外線ヒーター等で加熱処理して結晶化させることが行われている。また、ボトル胴部の耐熱性を上げるために、ブロー金型の温度を120〜200℃程度の高温に設定して胴部を加熱処理して延伸による分子鎖の配向結晶を熱固定することが行われている。
そのポリエステル樹脂は通常、芳香族ポリエステルはテレフタル酸などのジカルボン酸と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール類とを原料として製造される。具体的には、まず、芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また、場合によっては固相重縮合を行い、更に分子量を高めている。
しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、前者の口栓部の結晶化においては、この処理に時間を要すると共に、口栓部の内側と外側間等に局所的な結晶化度の差を生じ、口栓部の寸法精度が安定しないという問題があり、また、後者の胴部の熱固定においては、得られるボトル胴部の透明性が低下するとか、或いは、高温に設定されたブロー金型が汚染されて得られるボトルの表面平滑性が損なわれ、結果として胴部の透明性が劣るものとなる等の問題があった。
ポリエステル樹脂製ボトルの製造においては、前記加熱処理時間を短縮し、且つ、加熱処理による付与される耐熱性等の諸物性と、透明性との両立を図るべく、ポリエチレンテレフタレート樹脂に共重合成分を導入することが検討され、例えば、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分とエチレングリコールを主成分とするジオール成分に対して、共重合ジオール成分としてポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールを用いた共重合ポリエステル樹脂、及びそれからなるボトルが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかしながら、本発明者の検討によると、これらを提案する各公報に記載される共重合ポリエステル樹脂のボトルは、口栓部結晶化特性及び胴部熱固定特性が必ずしも十分とは言い難く、耐熱性、透明性、及び耐金型汚染性等において市場の要求を十分に満足させ得るには到っていないことが判明した。
そこで、特定の化合物を微量スプレーにより添加するという方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかし、この方法においては、製品全体に剤を均一に付着させることが必要である。もし均一に付着していなければ、ボトル等の成形品にした際、品質にバラつきが生じる。また、剤の付着に偏りが生じた場合、種類によっては成形品中における異物原になり得る。
さらに、製造コストを考慮した場合、ポリエステルの生産方法として現在主流である、連続式重合設備に対応する必要がある。現在、ポリエステルの製造プラントは、その用途に応じ、様々な規模・様態のものが存在する。それらに、多様な設備に低コストで幅広く応用できなければならない。特許文献4に記載の製造方法を実施するにあたっては、数百トン/日の生産量を誇る、昨今の連続重合設備において、どのように剤を均一に付着させるかがポイントであった。
特開平09−227663号公報 特開平09−277358号公報 特開平09−278871号公報 特開2002−097351号公報
本発明のポリエステルの製造方法では、微量の無機化合物もしくは有機化合物を連続重合設備において均一に付着させることができる製造方法を提供することを目的とする。
上記のような本発明の課題を解決するため、鋭意検討した結果、溶融重縮合によって得られたポリエステルチップに有機化合物および/または無機化合物を付与させる工程を含むポリエステルの製造方法であって、ポリエステル重量に対する有機化合物および無機化合物の合計付着重量の(標準偏差値/平均値)が0.01〜1.20になる(試料数30点以上測定の結果による)ことを特徴とするポリエステルの製造方法によって上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明によれば、以下に示すような装置・方法を採用することで、重縮合工程終了までに添加する事が困難な無機化合物または有機化合物成分をポリエステルに対して微量であっても均一に付与することができる。即ち、重縮合工程終了までに添加する事が困難な無機化合物または有機化合物を溶液・分散液等とし、一方本発明の製造方法の一態様であるが、ポリエステルチップを配列させ、引き続き噴霧槽内でチップに対してその溶液・分散液等を噴霧することで、チップ状態のポリエステル樹脂が厚みムラなく均一に広がり、偏りが生じない。したがって、溶液・分散液等の噴霧液を樹脂に均一に付着させることが可能となる。しかも分散装置、噴霧装置を設けるというわずかな変更であるから、既存の連続重合設備に低コストで容易に適用することができるという効果も同時に有する。
平面状の配列させる分散装置の一例である。 分散用突起のある平板状分散板の一例である。 円周状に配列させる分散装置の一例である。 分散用突起のある円錐状分散板一例である。 図1の分散装置を用いた噴霧装置全体の一例である。 図3の分散装置を用いた噴霧装置全体の一例である。 本発明のポリエステルの製造方法に好適なポリエステルチップの形状一例である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法におけるポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート及びポリテトラメチレンナフタレートからなる群から少なくとも1種選ばれるポリエステルまたはこれらの共重合体またはブレンドが採用することができる。特にポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。以下、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合について主に説明する。
ポリエチレンテレフタレートは主たる繰返し単位がエチレンテレフタレート単位のポリエチレンテレフタレートである。ここで「主たる」とは、ポリエチレンテレフタレートを構成している繰返し単位の中で80モル%以上100モル%以下であることを示す。従って本発明のポリエチレンテレフタレートにおいては残りの0〜20モル%をエチレンテレフタレート成分以外の共重合成分が共重合されていても良い。ここで他の共重合成分とは、無置換若しくは置換基があるイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、若しくはこれらの低級アルキルエステル、これらの低級アリールエステル若しくはこれらの酸ハライドのエステル形成性誘導体、トリメチレングリコール、1,2−プロパンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカンメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジ(テトラメチレン)グリコール、トリ(テトラメチレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール、ペンタエリスリトール、または2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンを挙げることができる。
(重縮合触媒)
本発明のポリエステルは、通常用いられる製造方法である直接エステル化法またはエステル交換反応を行った後、触媒化合物存在下で重縮合して得ることができる。その、触媒化合物はアンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物を主に、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、スズ化合物、マンガン化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、ジルコニウム化合物等を組合わせることができる。
その中でも本発明においては、チタン化合物として下記式(I)で表される化合物を重縮合触媒として使用することが好ましい。更に固相重縮合後に得られるポリエチレンテレフタレートに対してチタン原子濃度で1〜50ppmとなるように重縮合触媒を使用することが好ましい。その重縮合触媒となる化合物は、例えばチタン化合物とリン化合物とをグリコールを溶媒として加熱することにより製造することができる。その場合、重縮合触媒となる化合物は、グリコール中に析出物として得られる。
Figure 2012057053
[但し、上記一般式(I)中、R1は、2〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表す。]
一般式(I)中の2つのR基はそれぞれ互いに独立に、チタン化合物に由来するアルキル基またはリン化合物に由来するアルキル基であり、3〜6個の炭素原子を有するアルキル基が好ましい。
上記式(I)で表されるチタン化合物を製造する際に用いるチタン化合物としては、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルプロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、チタンテトラキスアセチルアセトナート錯体、チタンテトラキス(2,4−ヘキサンジオナト)錯体、チタンテトラキス(3,5−ヘプタンジオナト)錯体、チタンジメトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジエトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジイソプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジノルマルプロポキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジブトキシビスアセチルアセトナート錯体、チタンジヒドロキシビスグリコレート、チタンジヒドロキシビスラクテート、チタンジヒドロキシビス(2−ヒドロキシプロピオネート)、乳酸チタン、チタンオクタンジオレート、チタンジメトキシビストリエタノールアミネート、チタンジエトキシビストリエタノールアミネート、チタンジブトキシビストリエタノールアミネート、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサフェニルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタフェニルトリチタネート、ヘキサアルコキシジチタネート、またはオクタアルキルトリチタネートを挙げることができる。
また、上記式(I)で表されるチタン化合物を製造する際に用いるリン化合物としては、モノエチルホスフェート、モノプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、モノラウリルホスフェート、モノオレイルホスフェート、若しくはモノテトラデシルホスフェートといったモノアルキルホスフェート類またはモノフェニルホスフェートが好ましい。これらのリン化合物は、混合物で用いてもよく、例えばモノアルキルホスフェートとモノフェニルホスフェートの混合物の組合せを好ましくあげることができる。なかでも、モノアルキルホスフェートの比率が90モル%以上100モル%以下で構成されていることが特に好ましい。
また一般式(I)の重縮合触媒を製造する際に溶媒として用いるグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、またはシクロヘキサンジメタノールを例示することができる。重縮合触媒の製造に用いるグリコールは、その重縮合触媒を用いて製造するポリエチレンテレフタレートの原料として使用するグリコールと同じグリコールを使用することが好ましい。
本発明で使用する重縮合触媒は、チタン化合物、リン化合物及びグリコールの3つを同時に混合し加熱する方法、またはチタン化合物とリン化合物のそれぞれグリコールの溶液を作成しその後それらのグリコール溶液を混合し加熱させる方法で製造することが出来る。これらの中で、後者の方法が好ましい。
重縮合触媒を製造する際の反応温度を常温で行うと、反応が十分に進行しないこと、または反応に過大に時間を要することがある。従って通常反応温度は50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましく、反応時間は、1分〜4時間で完結させるのが好ましい。具体的には、グリコールとしてエチレングリコールを用いるときの反応温度は50℃〜150℃が好ましく、ヘキサメチレングリコールを用いるときの反応温度は100℃〜200℃が好ましい。また、これらのグリコールを用いるときの反応時間は、30分〜2時間がより好ましい範囲である。反応温度が高すぎるとき、または反応時間が長すぎるときには製造された重縮合触媒の劣化がおこるため好ましくない。
またチタン化合物とリン化合物を反応させ、重縮合触媒を製造するにあたり、チタン原子に対するリン原子のモル比率(リン原子モル量/チタン原子モル量)が1.5以上2.5未満であることが好ましく、1.7以上2.3未満であることがより好ましい。モル比率が1.5未満のとき、未反応チタン化合物が多く存在することにより、ポリエチレンテレフタレートの物性が劣化することがある。逆にモル比率が2.5以上のとき、未反応のリン化合物が多く存在することにより、ポリエチレンテレフタレートの重合速度が遅くなること、ポリエチレンテレフタレートの物性が劣化することがある。
このような操作で得られた本発明に用いる重縮合触媒を析出物として含有する液体は、固液分離することなくそれをそのままポリエチレンテレフタレート製造用触媒として用いてもよい。一方遠心分離処理または濾過処理により析出物と溶媒を分離した後、この分離された析出物を精製し重縮合触媒として用いても良い。具体的な精製方法としては、アセトン、メチルアルコール、またはメチルアルコールと水の混合溶媒を用いて再結晶する方法を挙げる事ができる。
上記の本発明に用いる重縮合触媒はフィルターを用いて容易にグリコールと分離できるため、分離後固体NMR及びXMAの金属定量分析でその化学構造及びその重縮合触媒中のチタン原子含有率を分析することができる。一方、未反応のチタン化合物とリン化合物はグリコールに可溶である為、濾液成分中のチタン原子濃度またはリン原子濃度を分析することで未反応率を求めることできる。
上記の重縮合触媒を使用したポリエチレンテレフタレートの製造においては、固相重縮合後に得られるポリエチレンテレフタレートに対してチタン原子濃度で1〜50ppmとなるように重縮合触媒を使用することが好ましい。さらに最終的に得られる固相重縮合ポリエチレンテレフタレート中にチタン原子濃度換算で5〜25ppmになる量で重縮合触媒として使用するのが好ましく、6〜20ppmになる量で使用するのがさらに好ましい。後述するナトリウム、カリウム、セシウムのうち、少なくとも1種の原子を含む化合物を添加する操作を行う際には特に5〜25ppmの範囲の量で重縮合触媒を用いるのが好ましい。重縮合触媒を50ppm以上含まれるように使用したとき、液相重縮合若しくは固相重縮合の重合速度が速すぎること、ポリエチレンテレフタレートが強く着色することがある。一方重縮合触媒を1ppm未満となる様に用いたときには、液相重縮合若しくは固相重縮合の重合速度が遅すぎるまたは重縮合反応が全く進行しないことがあり好ましくない。そして、得られるポリエチレンテレフタレート中の金属原子として、チタン原子以外の金属原子は、金属原子濃度換算で10ppm以下が好ましく、更には5ppm以下が好ましい。なお、上記重縮合触媒は重縮合反応時に存在していればよい。このため重縮合触媒の添加は、溶融重縮合の工程内、すなわち原料スラリー調製工程、エステル化反応工程、液相重縮合工程その他の工程のいずれの工程で行ってもよい。また、重縮合触媒全量を一括で反応器に添加しても、複数回に分けて反応器に添加してもよい。以下本発明のポリエチレンテレフタレート製造方法について工程ごとに更に詳細に説明する。
(原料)
更に本発明におけるポリエチレンテレフタレートの製造方法について詳細に説明する。上記の重縮合触媒を用いて、主にテレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコールとを重縮合させてポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
芳香族ジカルボン酸成分としては、主にテレフタル酸を用いるほか、そのエステル形成性誘導体を用いる事ができる。エステル形成性誘導体とは低級アルキルエステル、低級アリールエステルまたは酸ハライドを表す。なお、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体は、芳香族ジカルボン酸成分100モル%に対して、80モル%以上100モル%以下、好ましくは90モル%以上100モル%以下となるように用いられることが好ましい。エチレングリコールは脂肪族グリコール成分100モル%に対して、80モル%以上100モル%以下、好ましくは90モル%以上100モル%以下となるように用いられることが好ましい。以下、テレフタル酸とエチレングリコールを用いてポリエチレンテレフタレートを製造する例について詳述する。
(原料スラリー調製工程)
まず、ポリエチレンテレフタレートを製造するに際して、テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化させる。具体的には、テレフタル酸と、エチレングリコールとを含むスラリーを調製する。このスラリーにはテレフタル酸1モルに対して、好ましくは1.2〜1.8モル、より好ましくは1.3〜1.6モルのエチレングリコールが含まれる。このスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。そのエチレングリコールには、後述のエステル化反応工程、液相重縮合工程で反応器から留去され、回収されたエチレングリコールを一部に用いても良い。
(エステル化反応工程)
エステル化反応工程は、反応物をエステル化反応器内で自己循環させなから一段で実施する方法、または2つ以上のエステル化反応器を直列に連結し同様に反応物を自己循環させながら実施する方法が好ましい。いずれもエチレングリコールが還流する条件下で、エステル化反応によって生成した水を精留塔でエステル化反応器外に除去しながら行う。反応物を自己循環させながら一段で連続的にエステル化を行うときの反応条件は、通常、反応温度が240〜280℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaの条件下で行われるのが好ましい。エステル化工程の反応温度は、最初はこの範囲内の低温度の領域で行っても良いが、最終のエステル化反応温度は250〜279℃にすることが好ましく、265〜276℃がより好ましく、273〜275℃が最も好ましい。ここで最終のエステル化反応温度とは、エステル化反応工程終了時点での反応温度を表す。
このエステル化反応工程においては、用いるエチレングリコール/テレフタル酸のモル比が1.2〜1.8になるようにすることが好ましく、1.3〜1.6になるように用いる事がより好ましい。連続式で製造するときには上述のように予めエチレングリコールとテレフタル酸を含むスラリーを調整しておき、そのスラリー内のモル比を上記の範囲内に調整しておくことが好ましい。バッチ式で製造するときには、エステル化反応開始当初に反応器内に存在するエチレングリコールとテレフタル酸以外にもエステル化反応の途中で添加するエチレングリコールまたはテレフタル酸を含めて上記のモル比の範囲内にすることが好ましい。このモル比の範囲内でエステル化反応を行うことで、後述する溶融重縮合ポリエチレンテレフタレートの極限粘度の値や末端カルボキシル数の値を所定の範囲内に制御しやすくなる。
このエステル化反応工程において、エステル化反応率が通常90%以上、好ましくは90%以上100%以下、より好ましくは95%以上100%以下、更により好ましくは97%以上100%以下になるまで反応させることが望ましい。このエステル化反応時の反応温度、エチレングリコールの還流比を調整することにより、溶融重縮合反応で得られるポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル数を制御することができる。またこれらの条件範囲を逸脱するとこの後の液相重縮合工程で極限粘度が上がらないことがある。
このエステル化反応工程により、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応物(エチレンテレフタレートオリゴマー)が得られる。このエチレンテレフタレートオリゴマーの重合度は3〜12が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜10が最も好ましい。上記のようなエステル化反応工程で得られたエチレンテレフタレートオリゴマーは、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。エチレンテレフタレートオリゴマーの重合度は上記のエチレングリコール/テレフタル酸のモル比、エステル化反応時間、反応圧力、及び反応時間を適宜調節し、エステル化反応率を調整することにより制御することができる。このエチレンテレフタレートオリゴマーの重合度範囲を逸脱するとこの後の液相重縮合工程で極限粘度が上がらないことがある。
(液相重縮合工程)
次に液相重縮合工程において、上記した重縮合触媒の存在下に、エステル化反応工程で得られたエチレンテレフタレートオリゴマーを、減圧下で且つポリエチレンテレフタレートの融点以上、ポリエチレンテレフタレートの分解温度以下の温度(通常240〜280℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応のエチレングリコール及び重縮合で発生するエチレングリコールを反応器外に留去させながら行われることが望ましい。
液相重縮合工程は、1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば液相重縮合工程が2段階で行われるときには、第1槽目の重縮合反応は、反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、反応圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われる。最終第2槽目での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常1000〜10Paで、好ましくは500〜30Paの条件下で行われる。これらの重縮合反応温度、重縮合反応圧力、重縮合反応時間を適宜調整することにより、得られる溶融重縮合ポリエチレンテレフタレートの極限粘度を下記の範囲になるように制御する。なお重縮合工程の反応時間は重縮合反応槽内の滞留時間で240分以下が好ましく、200分以下がより好ましい。このようにして、上述の重縮合触媒を用いてポリエチレンテレフタレートを製造することができる。
この重縮合工程で得られるポリエチレンテレフタレートは、通常、溶融状態で押出しながら、冷却後、切断して粒状(チップ状)のポリエチレンテレフタレートを得る。得られたポリエチレンテレフタレートの極限粘度IVは0.48〜0.53dL/g、かつ末端カルボキシル数が14〜22mmol/kgの範囲に該当することが好ましい。好ましくは極限粘度が0.48〜0.52dL/g、末端カルボキシル数が17〜22mmol/kgの範囲に該当することである。極限粘度がこの範囲の下限を下回ると、ポリエチレンテレフタレートチップの搬送時や固相重縮合工程でチップの変形、粉体化が起こる問題、または固相重縮合反応の時間が長くなり生産性が低下するなどの問題が生じる。このため、ポリエチレンテレフタレートの極限粘度はできるだけ高い方が好ましい。しかし、極限粘度が上記範囲の上限を超すと、固相重縮合後のポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート成形品中のアセトアルデヒドや環状三量体量が多いという問題が生じる。また末端カルボキシル数が上記範囲の下限を下回ると、ポリエチレンテレフタレート成形品中のアセトアルデヒド含有量が大きくなり、また末端カルボキシル数が上記範囲の上限を上回ると環状三量体含有量が多くなってしまう。
また、重縮合反応では、必要に応じてトリメチルホスフェートなどのリン安定剤をポリエチレンテレフタレート製造における任意の段階で加えても良い。さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤、消泡剤またはその他の添加剤などをポリエチレンテレフタレート中に配合してもよい。さらに、得られるポリエチレンテレフタレートの色相の改善補助をするために、ポリエチレンテレフタレートの製造段階において、アゾ化合物、トリフェニルメタン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物、若しくはフタロシアニン化合物の有機青色顔料、無機青色色素、またはその他の整色剤を反応器に添加することもできる。
(固相重縮合工程)
本発明においては、上記液相重縮合工程で得られるポリエチレンテレフタレートはさらに固相重縮合に供給されることが好ましい。固相重縮合工程に供給される粒状ポリエチレンテレフタレートは、予め、固相重縮合を行う場合の温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給してもよい。
この予備結晶化工程は、粒状ポリエチレンテレフタレートを乾燥状態で、通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度で1分から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状ポリエチレンテレフタレートを水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、水蒸気含有空気雰囲気下、またはこれらの気体の流通下で120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。加熱時間は1分以上20時間以下が好ましく、30分以上10時間以下がより好ましく、1時間以上8時間以下が最も好ましい。
予備結晶化されたポリエチレンテレフタレートは、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。なお、この予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエチレンテレフタレートの固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエチレンテレフタレートの極限粘度は、液相重縮合後のポリエチレンテレフタレートの極限粘度とほぼ同じである。その予備結晶化されたポリエチレンテレフタレートの極限粘度と予備結晶化される前のポリエチレンテレフタレートの極限粘度との差は、通常0.06dL/g以下である。ポリエチレンテレフタレートの結晶化度については、完全結晶状態の密度と、完全非晶状態の密度がそれぞれ1.501g/cm、1.335g/cmとされているので、得られたポリエチレンテレフタレートサンプルの比重を密度勾配管などで測定することによって結晶化度を算出することができる。
固相重縮合工程は、少なくとも1段からなり、反応温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、より好ましくは200〜225℃である。反応圧力は200kPa〜1kPa、好ましくは常圧から10kPaの条件下で、窒素、アルゴン、炭酸ガス、その他の不活性ガス雰囲気下で行われることが酸化分解を抑制する事ができるので好ましい。使用する不活性ガスとしては安価な窒素ガスが望ましい。
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエチレンテレフタレートには、必要に応じて水処理を行ってもよく、この水処理は、粒状ポリエチレンテレフタレートを水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス、または水蒸気含有空気と接触させることにより行われる。
このようにして得られた粒状ポリエチレンテレフタレートの極限粘度IVは、0.70〜0.86dL/gであることが好ましい。更に固相重縮合後のポリエチレンテレフタレートは末端カルボキシル数が15mmol/kg未満であることが好ましい。末端カルボキシル数はより好ましくは0〜15mmol/kg未満、更により好ましくは5〜12mmol/kgである。上記のようなエステル化反応工程、液相重縮合工程、固相重縮合工程を含むポリエチレンテレフタレートの製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。固相重縮合後のポリエチレンテレフタレートの極限粘度が0.70dL/g未満であると、ポリエチレンテレフタレートを溶融成形して得られるポリエチレンテレフタレート成形体の強度が不足すること、ボトル等の透明性が必要な用途のときには外観が白化する場合があり好ましくない。一方極限粘度が0.86dL/gを超えるとポリエチレンテレフタレート成形体の靱性が失われ、脆くなったり結晶化速度が遅くなったりすることがあり好ましくない。また固相重縮合後のポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル数が15mmol/kg以上になると、環状三量体含有量が増えることがあり好ましくない。固相重縮合後のポリエチレンテレフタレートの末端カルボキシル数が15mmol/kg未満とするには、液相重縮合工程において上述した極限粘度、末端カルボキシル数の溶融重縮合ポリエチレンテレフタレートを得て、不活性ガス雰囲気下、上記の温度範囲内、且つ圧力範囲内で行うことが重要である。
尚、ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体含有量(Cy−3)及びアセトアルデヒド含有量は、通常、固相重縮合工程で低減されるため、固相重縮合前の溶融重縮合後の極限粘度(IV)及び固相重縮合の条件などを調整する手法で対応できる。そして本発明の製造方法によれば固相重縮合して得られたポリエチレンテレフタレート中のアセトアルデヒド含有量を15ppm未満であり、環状三量体含有量を0.40重量%以下にすることができる。アセトアルデヒド含有量は好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下である。また環状三量体含有量は好ましくは0.38重量%以下、より好ましくは0.35重量%以下である。ここでのポリエチレンテレフタレートとは上記の金属塩を含む溶液と接触させた直後のポリエチレンテレフタレート、その後射出成形法などの方法により得た場合のそのポリエチレンテレフタレート製成形品も含まれる。
(その他)
よって、本発明の製造方法で得られたポリエチレンテレフタレートは、色相及び透明性に優れ、且つ、アセトアルデヒドの含有量及びCy−3の含有量も少なく、ボトル、その他の飲料用途の成形体材料として有用である。成形体を製造する前には、ポリエチレンテレフタレートを充分乾燥させることが好ましく、120〜180℃の温度で空気雰囲気下、不活性ガス雰囲気下、または不活性ガス流通下で行うのが好ましい。
本発明の製造方法により得られたポリエチレンテレフタレートを適切な金型を用意し、成形温度300℃で成形して外径28mm、内径19mm、長さ136mm、重量56gの試験管状成形体を得ることができる。その詳細な形状は概ね中空の円筒形であり、一方の端がほぼ半球状の形に閉ざされた形状をしている。その試験管状成形体中のアセトアルデヒド含有量が13ppm未満且つ環状三量体含有量が0.40重量%以下にすることもできる。これは従来のゲルマニウム化合物を使用して最適の条件で得られてポリエチレンテレフタレートの同条件での成形体と同じ水準である。
以上の様に本発明によれば、ゲルマニウム化合物より安価で、アンチモン化合物、アルミニウム化合物に比べ衛生性に懸念の無いチタン化合物を触媒として使用し、ポリエチレンテレフタレートを製造する事ができる。そのポリエチレンテレフタレートは、ゲルマニウム化合物を重縮合触媒として使用したポリエチレンテレフタレートと同等の、アセトアルデヒド含有量が少なく、環状三量体含有量が少ない成形体を製造する事ができる。この事実は産業上の意義が大きい。
(チップの分散・配列、チップへの液体噴霧)
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のポリエステルの製造方法においては、有機化合物および/または無機化合物を付与させる工程を含むポリエステルの製造方法であって、ポリエステル重量に対する有機化合物および無機化合物の合計付着重量の(標準偏差値/平均値)が0.01〜1.20になる(試料数30点以上測定の結果による)ことが必要がある。その一態様としてポリエステルチップを分散板に衝突させることにより平坦に配列させた後、有機化合物若しくは無機化合物を溶解・分散等した液体を噴霧することを本発明のポリエステルの製造方法がひとつの特徴としている。本発明の製造方法は、この平坦に配列等させる製造方法に限定されるものではない。
以下、更に詳細に説明する。「平坦に」とは複数のポリエステルチップを厚さを1つのチップサイズ以上10cm以下にすることをいう。完全に平らにすることではなく、後述するように緩やかな曲面体の表面に沿わせる程度のことは含まれるものとする。配列とは、複数のポリエステルチップを板またはシート形態でチップを並ばせることを指し、その並んだ状態が平面状または曲面状であることや、各チップが固定しているまたは各チップが移動しているかを問わない。具体的には、1)静止したシート状物の表面、平板の表面もしくはチップが重力に従って移動しない程度の緩やかな曲面体の表面にチップを拡散させた状態、2)移動する平面状もしくはチップがベルト上を重力により移動しない程度の緩やかな曲面状のベルトコンベヤのベルト上に拡げる手法や、3)チップを垂直下方に落下させる際にそのチップの落下帯を平面状または曲面状に幅広かつ薄くする手法などを挙げることができる。この曲面状とする場合には、十分大きな曲率半径を有していれば円周状であっても良い。ポリエステルチップを重力または空気などの気体のブローにより空間を移動させ、次いで分散板に衝突させて配列させる。ポリエステルチップを重力または空気などの気体のブローにより空間を移動させる際には、スクリューフィーダーなどを用いてポリエステルチップの流量を一定に保つことも好ましく採用することができる。
図1はポリエステルチップを直線平面状に配列させる分散装置の一例を示している。以下、図1〜4において、極太線の矢印はポリエステルチップの流れる方向を示している。ポリエステルチップが導入口1より投入され、まず円錐状分散板4にぶつけられ、ポリエステルチップの流れが円錐状に分散する。次いで本体2を通過する間に平板状分散板5にぶつかり、複数の平板状分散板5にぶつかり落下していく間にポリエステルチップの流れが直線平面状に配列するように分散されるようになる。なお、平板状分散板5には例えば、図2に示すように逆V字型に分散用突起6が何段かにわたって設置されており、この分散用突起6にポリエステルチップが衝突すると、平面状に配列させる分散装置の本体の幅方向に拡散・分散するようになる。ポリエステルチップの種類、重量、流量によって分散装置全体の大きさや、円錐状分散板4の大きさ・円錐の角度、平板状分散板5の枚数、分散用突起6の形状・個数等は適宜適切に設計変更ができることは言うまでもない。
図3はポリエステルチップを円周状に配列させる分散装置の一例を示している。図1と同様にポリエステルチップが導入口1より投入され、まず円錐状分散板4にぶつけられるが、その円錐状分散板4が本体2内部に格納されるにわたる大きな形状を有しており、ここでポリエステルチップが円周状の配列させる分散装置の本体の幅方向に拡散・分散するようになる。その円錐状分散板4には図4に示すように分散用突起が何段かにわたって且つ放射線状に設置されており、この分散用突起6にポリエステルチップが衝突すると、円周状に配列させる分散装置の本体の周囲近傍方向に沿って円周状に拡散・分散するようになる。
図5、図6はそれぞれ図1、図3の分散装置により平坦に配列されたポリエステルチップに対して無機化合物または有機化合物を溶解・分散などさせた液体を噴霧する装置部分(噴霧槽)を表している。図5においては、排出口3から平面状に、具体的には紙面の前方から奥に向かって幅広平面状にポリエステルチップが配列して落下してくるように設計されている。そこで無機化合物または有機化合物を溶解・分散などさせた液体(以下、噴霧液という)が適切に噴霧されるように、適切な温度、粘度、化合物の濃度、pH、表面張力といった物性を整える。その噴霧液をタンク(図示せず)に貯蔵しておき、ポンプ(図示せず)等でスプレーノズル8に導き平坦に配列されたポリエステルチップに対して連続的に噴霧を行う。図5においてはスプレーノズル8は左右1対のみが記載されているが、必要に応じて、落下してくるポリエステルチップ流れの幅方向に対して若しくはポリエステルチップの落下方向に対して複数対あっても良い。噴霧量に応じて一方からのみの噴霧である態様もあり得る。図6においては同様に排出口3を上方から見て円周状にポリエステルチップが落下してくる場合を示している。図5と同様に図6においてもスプレーノズル8は左右1対のみが記載されているが、ポリエステルチップが円周に沿って落下してくるので、噴霧槽7内にスプレーノズル8も円周状に設置されていることが望ましいのは当然の事である。この装置を用いて付与する無機化合物または有機化合物の付与量はそれらの合計で0.05〜100ppmの範囲が好ましい。
次にこの分散装置を用いて噴霧するのに好ましい無機化合物または有機化合物について述べる。当該分散装置、噴霧装置を用いて付与する無機化合物または有機化合物は重縮合工程終了までに添加する事が困難な無機化合物または有機化合物成分であることが好ましい。具体的には、耐熱性の面から重縮合工程までに添加できない化合物、重縮合反応に著しく悪影響を及ぼす化合物、高温下では色相・透明性等のポリエステル物性を著しく損なう化合物が挙げられ、また一部の製造工程におけるポリエステルチップに対して一部少量の銘柄、ロットなどにのみ付与する事が必要となる化合物であってもよい。一部少量の銘柄、ロットにのみ付与する場合には後工程で付与を行う事で銘柄・ロット変更を容易に行うことができ、ポリエステル製造工程全体の生産効率改善に寄与することができる。一部の耐熱性に劣る顔料・染料、バイオ・生物学的な作用に基づく機能を有する化合物、エステル化工程・重縮合工程(固相重合を含めて)の触媒に対して失活能を有する化合物、を挙げることができる。
図1左は本発明を示す分散装置の正面図、図1右はその側面図、図5には本発明を連続重合設備に取り付ける際のイメージとして、前後の設備を含む全体図を示した。なお、本図におけるサイズは、25〜150トン(10kg)/日、好ましくは、50〜100トン/日の連続型設備用のものである。また、使用する樹脂としては、DP=2.5〜3.3のポリエステルチップ、具体的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの使用に好ましい形状をなしている。本設備の材質としては、ポリエステル等のチップが連続的に衝突するに当たり、十分な強度、耐久性、価格を考慮するとSUS等のステンレス合金や、鉄・アルミなどの金属が望ましい。ここでDPとは図7に示すようにポリエステルチップの幅・高さ・奥行きの三方向の長さ(それぞれA,B,Cとする。)の積に更に1.5を掛けた数値の立方根である(下記式参照)。
DP=(1.5×A×B×C)^(1/3)
図1において導入部1は、直線的な多角形状または円筒状をなす。この導入部1の末端において、本体2とフランジにより連結される。導入部1には、本体2との連結側の内部に三角錐状のコーン状分散板4が存在することが望ましい。この円錐状分散板4は、チップ状の樹脂を、本体2に入れる際、適度に広がりをもたせるために必要なものである。本体2は、導入部1から排出口3に向かって、広がりを持たせることが好ましい。排出口3の最終出口における幅については、続く噴霧槽7の大きさや噴霧液の量や噴霧方法、生産量、設備規模により異なるが、例えば1〜800ml/minを1〜10本のノズルから噴霧する場合、噴霧槽7内における樹脂チップが分散しない、分散剤が均一に付着しないなどの問題が生じるため、(排出口3出側の幅/導入部1入側の幅)=2.0〜10.0が望ましい。続く噴霧槽7へ接続にする本体下部である排出口3は、本体の幅より絞りこむことが望ましい。分散装置は、図5の全体図に示したとおり、分散装置から落下するポリエステルチップの流れをスプレーノズルに面するようで取り付ける。分散されたポリエステルチップが、噴霧槽を通過するにあたり、厚みがない方が均一に噴霧液を付着させることができるためである。本体2内部には、平板状分散板5が設けられている。図1においては3枚設けているが、これは、25〜150トン/日、好ましくは、50〜100トン/日の連続型設備用のサイズであり、前後の配管系や、分散させる樹脂の性質や形状などにより調整されるべきである。この平板状分散板5の取り付け角度は、例えば、DP=2.0〜3.3のポリエチレンテレフタレートの場合、水平に対して40度程度に傾いていることが好ましい。40度より著しく低角度であれば、チップが上手く流れなくなる恐れがある。また、40度より著しく高角度であれば、目的の分散能を達成することができない。また、図には示さないが、分散装置の導入部1にポリエステルチップを導入するための設備として、定量性を持たせるため、スクリューフィーダー等を設置することが好ましい。
以上のように、本発明によって、簡単な改造で既存の連続重合設備に設置可能な、分散装置を設けることで、樹脂チップを均一に分散させ、続く噴霧槽に送ることが可能となる。これにより、噴霧液のチップへの付着量を一定に保ちつつ、連続生産が可能となる。以上、本発明の実施態様の一例を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更は適宜なし得るものと理解すべきである。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。各実施例、比較例における分析評価は次のように行った。
(1)極限粘度(IV)
ポリエチレンテレフタレートサンプル0.6gをo−クロロフェノール50cc中に加熱溶解した後、一旦冷却させ、ポリエチレンテレフタレートのo−クロロフェノール溶液を得た。ウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定したその溶液の溶液粘度から極限粘度を算出した。
(2)ポリエチレンテレフタレート中のアルカリ金属原子含有量分析
ポリエチレンテレフタレートサンプルを1重量%のo−クロロフェノール溶液として、その2倍量の0.5モル%塩酸水溶液を加え振とうし、抽出処理した。得られた水相の溶液を日立ハイテクノロジーズ社のZ−2300型原子吸光光度分析計にて分析し定量した。
(3)ポリエチレンテレフタレート中の他の原子含有量分析
ポリエチレンテレフタレート中の他の元素濃度は、粒状のサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業3270E型)にて、定量分析した。
[実施例1]
定法によりエステル化反応、溶融重縮合、固相重縮合反応を行ったポリエチレンテレフタレートチップ(IV=0.76dL/g、DP=2.6)に対して図1,2,5に示した分散装置・噴霧装置を用いて0.3重量%の酢酸ナトリウム水溶液を、ポリエチレンテレフタレートチップに対して酢酸ナトリウムが20ppmになるように噴霧した。乾燥後、得られたポリエチレンテレフタレートチップから約1.0gのチップを1つの試料とし、試料数30の試料サンプルをサンプリングした。抽出した各試料サンプルのナトリウム濃度を測定し、その平均値と標準偏差を求めた。標準偏差値/平均値=0.96(ppm/ppm)であった。
[実施例2]
図3,4,6に示した分散装置・噴霧装置を用いる他は実施例1と同様の操作を行った。標準偏差値/平均値=1.12(ppm/ppm)であった。
[実施例3]
5−スルホイソフタル酸ナトリウムを2mol%、分子量2000のポリエチレングリコールを3mol%共重合したポリヘキサメチレンテレフタレート(IV=0.58dL/g)を定法に基づき製造した。その共重合ポリヘキサメチレンテレフタレートを一旦テトラヒドロフランに溶解した後、溶媒を水に置換し、共重合ポリヘキサメチレンテレフタレート濃度が1.5wt%の水分散体を得た。実施例1において0.3重量%の酢酸ナトリウム水溶液の代わりに、この共重合ポリヘキサメチレンテレフタレート濃度が0.2wt%の水分散体を用いるほかは実施例1と同様に操作を行った。但し、ポリエチレンテレフタレートチップに対して共重合ポリヘキサメチレンテレフタレートが75ppmになるように噴霧した。乾燥後、得られたポリエチレンテレフタレートチップから約10gのチップを1つの試料とし、試料数30の試料サンプルをサンプリングした。抽出した各試料サンプルから上記の様に圧縮プレス機で平面を有する成形体を作成した。その各成形体の硫黄元素濃度を測定する事により、共重合ポリヘキサメチレンテレフタレートの付与濃度を定量した。標準偏差値/平均値=0.72(ppm/ppm)であった。
[比較例1]
実施例1において図に示したような分散装置、噴霧装置を用いずに、固相重縮合反応を行ったポリエチレンテレフタレートチップ一旦溶融し、固体状の酢酸ナトリウムを実施例1と同量の付与量となるように添加して溶融混練を行った。ナトリウム濃度の標準偏差値/平均値=3.68(ppm/ppm)であった。
[比較例2]
実施例3において図に示したような分散装置、噴霧装置を用いずに、固相重縮合反応を行ったポリエチレンテレフタレートチップ一旦溶融し、固体状の共重合ポリヘキサメチレンテレフタレートを実施例3と同量の付与量となるように添加して溶融混練を行った。硫黄元素濃度から算出した共重合ポリヘキサメチレンテレフタレートの濃度の標準偏差値/平均値=1.51(ppm/ppm)であった。
本発明の製造方法により、微量の無機化合物または有機化合物を均一に配合することができ、その産業上の意義は大きい。
1 導入部
2 本体
3 排出口
4 円錐状分散板
5 平板状分散板(3枚)
6 分散用突起
7 噴霧槽
8 スプレーノズル
a ポリエステルチップの幅方向の長さ
b ポリエステルチップの高さ方向の長さ
c ポリエステルチップの奥行き方向の長さ

Claims (3)

  1. 溶融重縮合によって得られたポリエステルチップに有機化合物および/または無機化合物を付与させる工程を含むポリエステルの製造方法であって、ポリエステル重量に対する有機化合物および無機化合物の合計付着重量の(標準偏差値/平均値)が0.01〜1.20になる(試料数30点以上測定の結果による)ことを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. 溶融重縮合によって得られたポリエステルチップを分散板に衝突させることより平坦に配列させた後に有機化合物または無機化合物を希釈、溶解もしくは分散した液体を噴霧することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステルの製造方法。
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