JP2012055921A - 浸炭ロウ付け法 - Google Patents

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Abstract

【課題】クロム系ステンレス鋼からなるスラブ搬送装置の掴み爪を最大930℃の高温域で浸炭焼き入れする工程において、浸炭焼き入れと同時に掴み爪にステライト丸棒を銀ロウ付けするためには少なくとも930℃の高温域で安定して銀ロウ付け状態が維持できることが必要であった。
【解決手段】100%フッ化物の液体フラックスと銀ロウの組み合わせにて、浸炭温度の930℃までフッ素が出続けることでロウ材とロウ付け面のシール作用、清浄作用、表面張力除去作用が可能となり信頼性の高い浸炭ロウ付けが可能になった。
【選択図】図1

Description

本発明は鋼部材に対して浸炭とロウ付けを同時に行う鋼部材の浸炭ロウ付け法に関する。また、浸炭ロウ付け法の応用として、スラブ搬送クレーンなどに装備されている吊りトングの先端部のトング爪(トング爪の挟持部もしくは丸型回転爪)の浸炭ロウ付けに関する。特開昭57−1186号広報や特開2009−132532号広報に示すようにトング爪を球状に形成するとともにその回転軸を中心にして表面に輪状突出歯(多重リング爪)を複数輪段設けたトング爪に耐摩耗材を浸炭ロウ付けする方法に関するものである。
通常鋼部材の浸炭処理は900℃前後の温度にて一定時間保持される。900℃前後で使用可能なロウ材は銀ロウ、黄銅ロウ、銅マンガンロウ、青銅ロウなどが考えられる。銀ロウは高価であるがフラックスの工夫によりアルミニウムやマグネシウム以外の鉄、非鉄金属のロウ付けに広く使用されている。黄銅ロウ、銅マンガンロウ、青銅ロウはそれぞれ問題がある。(1)黄銅ロウは成分としての亜鉛の蒸気圧が高いため容易に気化して浸炭処理の雰囲気にとって有害である。(2)銅マンガンロウはマンガンが極めて酸化しやすいためロウ付けした製品の品質が不安定となる。(3)青銅ロウはスズの含有量が15wt%以下のため融点が900℃以上と高く浸炭ロウ付けを同時に行うことができない。融点を下げるためにスズ含有量を15wt%以上にすることも考えられるが金属間化合物が析出して素材が脆くなり加工性が損なわれ線材に加工できない問題がある。昭58−161772号広報には、鋼部材のロウ付けと浸炭とを同時に行う方法において銅を主成分とする材料とスズを主成分とする材料を近接してロウ付けする方法が提案されている。
特開平1−237096号広報には、浸炭とロウ付けを同時に行うために銅を主成分としてスズ5〜10wt%、銀20〜30wt%のロウ材が提案されている。
特開2001−276998号広報には、当接された金属部材の加熱と並行して行われるロウ付けに使用されるロウ付け用フラックスであって、ホウ酸、ホウ酸塩、フッ化物を含有し、さらに0.2〜3.0wt%の金属ホウ素を含有することを特徴とするロウ付け用フラックスが提案されている。銅マンガンロウ付け用のフラックス中に金属ホウ素(B)を入れて、金属ホウ素を炉中の未燃焼酸素と反応させて酸化ホウ素とすることでフラックス機能を持たせるようにしたものである。この反応式は、4B+3O2→2B2O3(酸化ホウ素)として表わされる。金属ホウ素を添加したフラックスはホウ酸塩が餅のように熱膨張して体積が増大する問題があり、非貫通穴に耐摩耗材を挿入してロウ付けする場合は耐磨耗材が浮き上がってしまう問題があった。
一般的にスラブ搬送クレーンは熱間スラブと冷間スラブを搬送するように対応している。850〜1000℃の熱間スラブと冷間スラブを混在して搬送する場合、輪状突出歯の先端は入熱と放熱が繰り返され約625±50℃で平衡する。特開昭57−1186号広報において本発明者は輪状突出歯を有するトング爪と輪状突出歯の肉盛方法について発明したが、輪状突出歯の先端が高温で座屈しやすいことから形状修復のため短周期で旋盤加工せざるを得ない。従来の輪状突出歯の材料である13クロム系の肉盛が座屈に耐えるのは最大700℃までである。16Cr−16Mnのオーステナイト系の肉盛は比較的熱間スラブに強いが加工硬化するため再生する際の旋盤加工が難しい問題がある。ステライト肉盛は13クロム系の5倍以上の長寿命であるが疲労するとクラックがはいり、輪状突出歯がスラブに喰い込んだ際にクラックの一部がスラブに食い込んで残留するため後工程のロールを傷めたり製品に圧延疵を形成したりする問題があった。また加工硬化した肉盛材はクラックが母材近くまで進行している場合が多く肉盛再生は不可能であり廃棄せざるをえずコスト高になっていた。特開2009−132532号広報の発明による丸型回転歯(トング爪)は輪状突出歯の再生加工のために特開昭57−1186号広報の丸型回転歯(トング爪)の交換を容易にしたものである。
トング爪の輪状突出歯の表面に複数の穴を形成し、この穴にステライトなどの耐摩耗材を圧入し銅マンガンロウ付けする方法が考えられるが、耐摩耗材を銅マンガンロウ付けする際の温度は800〜850℃の高温であり、従来多用されている硬ロウ付け用フラックスは高温酸化雰囲気では使用できない問題があった。
特開昭57−1186号広報 「回転爪と肉盛」 特開2009−132531号広報 「丸型爪を収納する顎」 特開昭58−161772号広報 「浸炭ロウ付けのロウ材」 特開平1−237096号広報 「浸炭ロウ付けのロウ材」 特開2001−276998号広報 「浸炭ロウ付けのフラックス」 特開2009−090368号広報 「ガス切断用気化フラックス」 特開2009−297782号広報 「液体フラックスと製造装置」 特開2010−100441号広報 「液体フラックスと製造装置」 特開2009−255105号広報 「気化装置」 特願2010−165565号広報 「液体フラックス」
浸炭焼き入れと並行してロウ付けを可能にするために、ロウ材及びロウ付け用フラックス及びロウ付け方法を具現化する。このロウ付け方法を採用してスラブ搬送クレーンのトングトング爪の輪状突出歯の寿命を延長する。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、鋼母材の浸炭処理と前記鋼母材と金属材のロウ付けを同時に行う浸炭ロウ付け法において、前記鋼母材に穿孔し、該孔に前記金属棒を挿入するとともにロウ材と液体フラックスを充填して浸炭炉に入れて加熱して前記鋼母材の浸炭と前記金属材のロウ付けを同時に行う浸炭ロウ付け法である。
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記液体フラックスは、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックスである浸炭ロウ付け法である。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、前記調合フッ化物は、フッ化水素(HF)、酸性フッ化カリ(KHF2)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、四フッ化ケイ素(SiF4)、フッ化カリウム(KF)、カリ氷晶石(K3AlF6)、フッ化アルミニウム(AlF3)、ホウフッ化カリウム(KBF4)である浸炭ロウ付け法である。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記ロウ材は銀ロウである浸炭ロウ付け法である。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記鋼母材はスラブ搬送クレーンのトング爪であり、該トング爪の材質は13クロム系ステンレスであり、前記金属棒はステライトである浸炭ロウ付け法である。
本発明による効果は、(1)浸炭と並行してロウ付けができる、(2)フラックスから生じるフッ化水素、フッ化カリウムなどのガスにより鋼母材の孔内面や金属棒表面の酸化膜や不動態膜を確実に除去できる、(3)スラブ搬送クレーンのトング爪の寿命を延長できるのでクレーンの稼働率を向上できることである。
浸炭前に鋼母材に金属棒を埋め込んだ横断面図 トング爪の横断面図 トング爪の平面図
本発明の実施形態を図1、図2、図3に基づいて説明する。
第1の解決手段は特許請求項1に示すように、鋼母材10の浸炭処理と前記鋼母材10と金属材20のロウ付けを同時に行う浸炭ロウ付け法において、前記鋼母材10に穿孔し、該孔11に前記金属棒20を挿入するとともにロウ材30と液体フラックス40を充填して浸炭炉に入れて加熱して前記鋼母材10の浸炭と前記金属材20のロウ付けを同時に行う浸炭ロウ付け法である。
金属棒30を挿入するために鋼母材10に穿孔する。この孔11の最奥には120°の皿もみ空間が錐のすくい角として形成される。この皿もみ空間に60〜120メッシュランダムのパウダー状ロウ材30を一孔につき0.1〜1.0gずつ小さじなどで投入する。さらに液体フラックス40を注射器やスポイトなどで0.1〜1.0cc入れてから金属棒20を挿入する。液体フラックス40は65〜70%がアルコールやアセトンの揮発性溶媒のため蒸発する。蒸発を助けるため金属棒20にはエア抜き用のV溝21を設けてもよい。液体フラックス40の溶媒が蒸発した後には液体フラックス40の含有成分である複数のフッ化物が孔11の底面に粉体状に残留する。この複数の粉体フッ化物は浸炭炉が常温から950℃程度に温度上昇する間に、それぞれの固有の温度領域でフッ素ガスを発生させ酸化防止すると同時に金属棒20や鋼母材10の不動態膜を除去する。不動態膜は鋼母材10と金属棒20のギャップや金属棒20のV溝21からフッ化水素(HF)ガスとともに孔11から排出される。ロウ材30は所定の溶融温度に達すると瞬時に鋼母材10と金属棒20の隙間に浸透してロウ付けが完了する。浸炭炉に入れる前に再度V溝21に注射針やスポイトなどにて液体フラックス40を0.1cc程度注入することでフッ化物を補助的に添加できるのでシールを完全にすることができる。液体フラックス40であるためこのような追加注入が可能である。
液体フラックス40は特開2009−090368号広報、特開2009−297782号広報、特開2010−100441号広報にて製造できる。
鋼母材10は13クロム系ステンレスや炭素鋼などが使用できる。金属棒20はステンレス、炭素鋼、超硬、ステライトなどが使用できる。
ロウ材30は銀ロウや銅マンガンロウなどが使用できる。
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記液体フラックス40は、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックス40である浸炭ロウ付け法である。
従来100%フッ化物だけから構成される液体フラックス40は無かったが、本発明者は特願2010−165565号広報の発明で具現化した。
フッ化物の最大の特長はアルカリ金属及びアルカリ土類元素と結合することで還元元素と清浄作用と表面張力除去が同時にできることである。液体フラックスの溶媒が蒸発した後の残留フッ化物からフッ化ガスが100〜930℃まで連続して出ることで、浸炭炉中の一酸化炭素や酸素からロウ材やロウ付け部表面を保護できるので酸化の問題はなく800℃近辺で一瞬にしてロウ付け完了する。ホウ酸塩の最大の特長は耐熱、酸化防止であるが、今回のように99%は孔11の中に隠れたロウ付けであれば酸化対策はほとんど必要ないことからホウ酸塩は不要である。
特開2001−276998号広報の発明は鋼母材10の浸炭処理と並行的に行われるロウ付けにおいて、ロウ材30としては20〜45wt%のマンガンと残部が銅から成っている銅マンガンロウ材、フラックスとしてはホウ酸、ホウ酸塩、フッ化物、0.2〜3.0%の金属ホウ素を含有するフラックスを使用したものである。しかしながら、マンガン含有量が30wt%よりも多くなると通常ロウ材30として採用されているような線材の形にすることは困難でありさらに粉末にすることはマンガンの酸化が激しいため一層困難である。金属ホウ素の融点は2300℃であり非常に高く浸炭炉温度930℃ではまず溶解しない。金属ホウ素の含有範囲を0.2〜3%の範囲で抑えているが現実的には上限値は3%ではなくせいぜい0.8%〜1%というところである。浸炭炉で2〜3時間加熱されることで炉中の未燃焼酸素と金属ホウ素が反応してホウ酸ガラスになることで好結果を出していると推定される。浸炭ガス中の酸化防止対策のため金属ホウ素を入れることは高温化におけるフラックスの耐熱性を向上させることになる。浸炭炉が能力的に100%還元燃焼したら100%のCO2ガスであり金属ホウ素は全く反応せずホウ酸ガラスが生成することもないので金属ホウ素を入れることは無駄である。金属ホウ素を生かすには浸炭炉に過剰酸素を流すなどの工夫が必要である。本発明のように、金属棒20を孔11に挿入するようなロウ付けの場合は、炉中ガスにさらされる面積が少ないので高価な金属ホウ素を使用するのは無駄である。むしろ金属ホウ素の餅状膨らみにより金属棒20が孔11から浮き上がる現象が生じる。銅やマンガンは単独元素では安価であるが銅マンガンロウ材となると銀ロウ並みの価格となり高コストであるため無理に銀ロウに対抗して使うほどの効果は無い
特開2001−276998号広報おけるフラックスは、還元ガスとしての水素ガス発生量が1.74%と低いことは母材に対する還元力としては不足している。またフッ素ガスの17.97%は清浄作用と表面張力除去作用としては不足である。銅マンガンロウのロウ付け温度は最大900℃であるが浸炭炉温度はさらに930℃まで上昇する。従来の硬ロウフラックスはこの高熱、酸化雰囲気の中でロウ付け面をシールするために最大50%のホウ酸塩元素で酸化物を還元し結果として生成するホウ酸ガラスなどのスラグによって、二次的に表面をシールして酸化を防ぐという考え方に基づくものである。むしろ浸炭炉の中で必要なのは(1)炉内ガス中でも常に活性化すること、(2)ロウの流動性を保持すること、(3)スラグが表面に浮き上がりロウ付け部の二次的シール性が生まれること、(4)ロウ付け過程で生成するスラグが簡単に除去できることである。このためには、常温から930℃まで次第に温度が上昇する過程で連続してシール性を発揮するフラックスであることが最重要である。フッ化物の最大の特長はアルカリ金属及びアルカリ土類元素と結合することで還元元素と清浄作用と表面張力除去が同時にできることである。ホウ酸塩の最大の特長は耐熱、酸化防止である。今回のように鋼母材10の孔11の中に挿入した金属棒20のロウ付けであれば酸化対策はほとんど必要ないし耐熱性は最大930℃以内である。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、前記調合フッ化物は、フッ化水素(HF)、酸性フッ化カリ(KHF2)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、四フッ化ケイ素(SiF4)、フッ化カリウム(KF)、カリ氷晶石(K3AlF6)、フッ化アルミニウム(AlF3)、ホウフッ化カリウム(KBF4)である浸炭ロウ付け法である。
フッ化物でも1000℃以上に耐えるフッ化アルミニウム(K3AlF6)はKF(859.5℃)+AlF3(1040℃)の形に分解し、ケイフッ化カリウム(K2SiF4)はKF(859.5℃)+SiF4(−95.7℃)の形で分解する。KHF2は融点225℃で270℃にてフッ化水素(HF)に分解する。このような反応をうまく組み合わせることで高温域でのロウ付けをフッ化物の組み合わせで可能にした。KBF4は融点200℃、沸点500℃である。KFは融点859.5℃、沸点は1505℃である。液体フラックス40はこのようなフッ化物だけで構成されておりしかも全くホウ酸塩が含まれていないためホウ酸塩の膨張により金属棒20が孔11から浮き上がることは無い。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、前記ロウ材30は銀ロウである浸炭ロウ付け法である。
銀ロウは硬ロウの1種で銅、亜鉛、カドミウムなどの合金である。ロウ付け温度は710〜900℃の温度範囲である。アルミニウムやマグネシウム以外の鉄、非鉄金属のロウ付けに広く使用されている。銀ロウはBAG−8を使用するのが望ましい。BAG−8(銀71〜73%、銅残部)は固相線温度779℃、液相線温度779℃のためロウ付けは785±3℃近辺で一瞬に完了する。2元共晶合金のためロウ付け隙間が狭いほど効果が大である。BAG−8のような2元共晶合金は隙間の狭い物体のロウ付けで還元炉や真空炉溶接専用として開発されたロウ材である。銀含有量が高いため高価であるが熱伝導率は銀ロウ中最高であり、2元合金ロウの最大の特長として液相と固相温度が同じのため一回溶解したものは779℃以上でないと溶解しない。このため779℃以下で使用するロウ材として多く採用されている。100〜1000℃の各温度領域でフッ化物が分解するように配合することでホウ酸塩を使う必要はない。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、前記鋼母材10はスラブ搬送クレーンのトング爪50であり、該トング爪50の材質は13クロム系ステンレスであり、前記金属棒20はステライト棒20である浸炭ロウ付け法である。
トング爪50の材料は13クロム系を採用するのが望ましい。金属棒20はステライト棒20を選択するのが望ましい。トング爪50の表面には球面状に輪状突出歯12を設けている。トング爪50の形状は特開昭57−1186号広報に示されているように表面に輪状突出歯12を設けた回転式のトング爪50が望ましい。
ステライト丸棒Φ4.8の先端部に約10°のテーパを形成し、このステライト丸棒20を挿入するためのΦ4.9の錐孔11をUS403などの13クロム系に形成する。この錐孔11の最奥には120°の皿もみ空間が錐のすくい角として形成される。この皿もみ空間にBAG−8のパウダー60〜120メッシュランダムを一孔につき0.3g小さじにて投入し、さらに液体フラックス40を注射器やスポイトなどで0.2cc入れてΦ4.8×長さ26mmのステライト丸棒20をハンマーにて打ち込みステライト丸棒20を挿入する。液体フラックス40は65〜70%がメチルアルコールのため1〜2日程度でエア抜き用のピッチ6mm、深さ0,3mmのV溝より100%蒸発する。トング爪50の孔底には溶媒が蒸発した後に3〜4種類のフッ化物が150〜300メッシュのパウダー状に底面に残留する。この粉体フッ化物が常温から950℃程度に温度上昇する間に、各温度にて蒸発するフッ化物の中のフッ素ガスが出ることで酸化防止すると同時にステライト丸棒20の不動態膜を除去する。除去された不動態膜や酸化膜はギャップ0.05mmよりフッ化水素(HF)ガスにてエア抜きのV溝を伝って孔11表面に運び出される。このようなメカニズムで孔11内面やステライト丸棒20の表面は清浄化されるので、BAG−8の2元銀ロウが799℃に達した際に瞬時に銀ロウ完了する。浸炭炉に入る前に念のため、0.3mmのV溝21に注射針にて再度液体フラックス40を0.1cc程度注入することでピッチ6のV字溝21全部を液体フラックス40が埋めることで100%シールすることができる。液体フラックス40のためこのような追加注入が可能である。
浸炭キャリアガスのメタンガス、ブタンガス中のCO2、CO、O2ガスがロウ付け部に浸入するのを防ぐには孔11の内圧を正圧に維持する必要がある。液体フラックスの残留成分であるフッ化物はフッ化水素などのガスを発生させて孔11の中を正圧に保つ。フッ化水素ガス(HF)がHとFに高温分解する過程でステライト丸棒20表面の不動態膜及び13クロム系の鋼母材10の酸化クロム膜を除去する。BAG−8の二元銀ロウを流すための表面張力除去を最大3時間キープすることである。液体フラックス40中のアルコール蒸発後に残留する超微粒子のフッ化物が孔11底部及び孔11とステライト棒20の隙間0.05mmの間に残ることが重要である。そのためにもアルコールの蒸発後再度液体フラックスを空気抜きのV溝に沿って注射針などで注入する。浸炭とロウ付けを同時に並行して施工する分2回の液体フラックス40注入作業が必要である。
銀ロウ材30としてはBAG−8(銀71〜73%、銅残部)望ましい。BAG−8は固相線温度779℃、液相線温度779℃のためロウ付けは785±3℃近辺で一瞬に完了する。2元共晶合金のためロウ付け隙間が狭いほど効果が大である。そのため13クロム系の回転式のトング爪50にΦ4.9の孔11を穿孔して、Φ4.8ステライト丸棒20を挿入する。孔とステライト丸棒の隙間は片側0.05mmであり、この隙間をフッ化ガスが100〜930℃まで連続して出ることで炉中に一酸化炭素や酸素があっても800℃近辺で一瞬にしてロウ付け完了するため酸化防止の必要もない。
銀ロウのBAG−8のような2元共晶合金は隙間の狭い物体のロウ付けで還元炉や真空炉溶接専用として開発された銀ロウで銀含有量が高いため高価であるが、液相と固相温度が同じのため一回溶解したものは779℃以上でないと溶解しない。トング爪50で高温スラブと低温スラブを無作為に搬送する場合でもトング爪50の輪状突出歯12は627℃で入熱と放熱が釣り合うためステライト丸棒20の抜け落ちは無い。
トング爪50の場合の浸炭処理は930℃で2時間浸炭、拡散2.5〜3時間、850℃にて油焼き入れ後150〜180℃にて2時間の焼き戻しをする。キャリアガスはメタン(C4H10)2Nm3+(O2)3〜4Nm3であり浸炭とロウ付けを同時にするためには十分な熱量と保持時間である。2元合金の銀ロウ材30であるBAG−8が779〜800℃のところで一瞬に溶解しロウ付けするためにはロウ付け部隙間にキャリアガスが入らぬよう液体フラックス40の残留フッ化物が内圧保持することである。液体フラックス40の主成分がフッ化物のため発生ガスはフッ素ガスであり、13クロム系の孔とステライト丸棒の表面の酸化膜を破る。
ステライト丸棒20はモールドダイス押し出し法で製造するため、表面には不動態膜としてクロム、コバルト、モリブデンなどの酸化膜(CrO2、CoO2、MoO2など)が薄く張り付いている。これを除去するには強力な酸が必要であり、最適なのはフッ化水素(HF)である。酸性フッ化カリは270℃にて、KHF2→KF+HFとなる。フッ化水素(HF)は融点−84、沸点19.54℃である。フッ化カリウム(KF)の融点は859.5℃、沸点は1505℃である。ケイフッ化カリウムは、K2SiF6→2KF+SiF4となる。四フッ化ケイ素(SiF4)の融点は−86℃、沸点は−95.5℃である。カリ氷晶石(K3AlF6)は、K3AlF6→3KF+AlF3となる。AlF3の融点は1040℃、沸点は1260℃である。この組み立てにて各温度レベルで連続的に発生するフッ素ガスやHF、KF、SiF4の働きにてステライト棒20表面の不動態膜を除去する。従来の硬ロウフラックスにはホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na2B4O7)などのホウ酸塩が45〜55%含まれていた。代表的な硬ロウの例として、フッカカリウム(KF)20wt%、酸性フッ化カリウム(KHF2)20wt%、ホウフッ化カリウム(KBF4)10wt%、ホウ砂(Na2B4O7)10wt%、ホウ酸(H3BO3)40wt%の配合割合の物がある。このような代表的な硬ロウでも50%のホウ酸塩にて構成されている。むしロウ浸炭炉の中で必要なのは(1)炉内ガス中でも常に活性化すること、(2)ロウの流動性を保持すること、(3)スラグが表面に浮き上がりロウ付け部の二次的シール性が生まれること、(4)ロウ付け過程で生成するスラグが簡単に除去できることである。このためには、常温から930℃まで次第に温度が上昇する約3時間の過程で連続してシール性を発揮するフラックスであることが最重要である。
表1は上段が特開2001−276998号広報の固体フラックスの成分例を示し、下段は本発明による液体フラックス40の成分例を示す。
Figure 2012055921
本発明の液体フラックス40は、酸性フッ化カリウム(KHF4)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、フッ化カリウム(KF)、ケイフッ化ナトリウム(Na2SiF6)、氷晶石(Na3AlF6)を溶媒に溶解したものである。還元作用の元素はK、Na、B、H、Al、Siであり42.51%含有している。清浄作用と表面張力除去作用の元素はFであり47.49%含有している。比較例と本発明ではフッ素で約3.2倍、還元元素で1.07倍多くなっている。浸炭炉中ロウ付けの清浄効果とステライト丸棒20の酸化膜除去を目的とするためである。特開2001−276998号広報の還元ガスとしての水素ガス発生量が1.74%と低いことは鋼母材10に対する還元力としては不足している。またフッ素ガスの17.97%は清浄作用と表面張力除去作用としては不足である。銅マンガンロウのロウ付け温度は最大900℃であるが浸炭炉温度はさらに930℃まで上昇する。従来の硬ロウフラックスはこの高熱、酸化雰囲気の中でロウ付け面をシールドするために最大50%のホウ酸塩元素で酸化物を還元し結果として生成するホウ酸ガラスなどのスラグによって、二次的に表面をシールして酸化を防ぐという考え方に基づくものである。
スラブ搬送クレーンは機械的な緩みや走行レール及びランウェイガーターの劣化により年数がたつほど揺れが大きくなる。レール振動吸収のゴムパットやレール押さえのスプリング構造及び皿バネ押さえと起重機側もそれなりの対策をとっても振動は抑えきれずスラブの落下の危険性は増す。まして無人運転が多くなるためスラブ山搬送中の落下はスラブ積載山の荷崩れに繋がるため選別スラブのコンピュータの処理搬送のため一回積層崩れを起こすとシステム復旧に多大の手間を要する。運転マンの乗ったクレーンは経験的に輪状突出歯12の摩耗や座屈によるスラブの滑りを判断できるため適正なタイミングにおける輪状突出歯12の交換が可能であるが、コンピュータによる自動運転クレーンは一回荷崩れを起こすとシステム復旧に手間がかかる。従ってトング爪50の輪状突出歯12の摩耗対策は極めて重要である。
スラブ搬送クレーンの最大のネックはトング爪50である。金属は500℃を境として急激に硬度降下するので、常時627±50℃近辺で使用されるトング爪50の輪状突出歯12は通常2週間に一回取り外して旋盤加工して再生する。輪状突出歯12は回転歯のため旋盤加工が容易であるため従来の直歯に代わって採用されている。直歯は剪断力とスラブ曲がりによるモーメントを受けるため約300mmの直線歯が欠ける事故も頻発するので、そのたびにトング一台につき1セット4個交換するのに2〜3名で半日を要していた。旋回可能な輪状突出歯12とすることで直歯に比べ寿命が長くなりしかも運転マン一人で30分以内に交換が可能である。近年省エネのために連鋳機より加熱炉まで800〜1000℃でスラブを流す生産様式が採用されることが多くなり、スラブ搬送クレーンのトング爪50の輪状突出歯12はその分使用条件が厳しくなっており再生加工や交換周期が短くなっている。
13クロム系を採用した場合輪状突出歯12の硬度とステライト丸棒20の硬度はどちらもHs65±2とほぼ同じであるが、13クロム系の輪状突出歯12は500℃を境として急激な硬度低下の傾向があるが、ステライト丸棒20の硬度低下量は小さいためスラブに表面に確実に食い込んでスラブを掴むことができる。回転式のトング爪50の最大の特長はスラブ搬送クレーンがレールの上を走る時の上下、左右の振動に対しても輪状突出歯12がスラブに食い込んだまま回転して衝撃的な剪断力やモーメントを逃がすことが可能でありスラブが落下することはないことである。13クロム系の熱膨張係数は10.4×10E−6であり、ステライト丸棒の熱膨張係数は13.8〜14.9×10E−6であることからステライト丸棒20が孔11から抜け落ちることはない。かつ銀ロウ30の熱膨張係数は15.5×10E−6であり略ステライト丸棒20と同等のためステライト丸棒20は長期にわたり安定的にロウ付け状態が維持される。
輪状突出歯12に埋め込まれたステライト丸棒20を輪状突出歯12の中心軸側に対して5〜10°傾斜することで歯先が0.42〜0.84mm傾斜して突き出ているためスラブに食い込んだステライト丸棒が偏心している角度だけ回転力を生む。スラブキャッチの際の強制的回転力に生まれ変わりスラブに喰い込むため均一な摩耗となる。微速回転のため一回につき2〜3mmであるが結果的に360°回転する。スラグ表面の酸化膜は内側から順にFeO、Fe2O3、Fe3O4と酸化膜は成長している。傾斜歯先のΦ4.8のステライト丸棒傾斜歯がこれら酸化膜に点当たりして食い込むため酸化スケールが集中応力を受けた状態となりスラブ表面酸化スケールにクラックが入りスケールが脱落しやすくなる。ステライト丸棒20は0.4〜0.8mm出た分常にスラブに食い込むが硬度は低下しない。一方、13クロム輪状突出歯12の表面は硬度が低下するため磨耗が早いので結果的にステライト丸棒20は輪状突出歯12表面から常に0.42mmは飛び出すことになりサメの歯のように常に適正な食い込み形状が維持される。
10:鋼母材
11:孔
12:輪状突出歯
20:金属棒
21:V溝
30:ロウ材
40:液体フラックス
50:トング爪

Claims (5)

  1. 鋼母材の浸炭処理と前記鋼母材と金属材のロウ付けを同時に行う浸炭ロウ付け法において、前記鋼母材に穿孔し、該孔に前記金属棒を挿入するとともにロウ材と液体フラックスを充填して浸炭炉に入れて加熱して前記鋼母材の浸炭と前記金属材のロウ付けを同時に行うことを特徴とする浸炭ロウ付け法。
  2. 前記液体フラックスは、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(AL)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種または2種以上のフッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンなどの溶媒に溶解した液体フラックスあることを特徴とする請求項1記載の浸炭ロウ付け法。
  3. 前記調合フッ化物は、フッ化水素(HF)、酸性フッ化カリ(KHF2)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、四フッ化ケイ素(SiF4)、フッ化カリウム(KF)、カリ氷晶石(K3AlF6)、フッ化アルミニウム(AlF3)、ホウフッ化カリウム(KBF4)である浸炭ロウ付け法である。
  4. 前記ロウ材は銀ロウであることを特徴とする請求項1及び請求項2及び請求項3記載の浸炭ロウ付け法。
  5. 前記鋼母材はスラブ搬送クレーンのトング爪であり、該トング爪の材質は13クロム系ステンレスであり、前記金属棒はステライトであることを特徴とする請求項1及び請求項2及び請求項3及び請求項4記載の浸炭ロウ付け法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021127273A (ja) * 2020-02-14 2021-09-02 セントラル硝子株式会社 六フッ化モリブデンの製造方法及びモリブデンの表面の酸化被膜の除去方法

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