JP2012054670A - スピーカアレーシステム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 音源から入力された音響信号をN個のスピーカ10(1)〜10(N)からなるスピーカアレー11によって再生するスピーカアレーシステム100であって、隣接するスピーカ10間の間隔D(1)〜D(N−1)のうち、スピーカ10(1)とスピーカ10(2)の間隔D(1)およびスピーカ10(N)とスピーカ10(N−1)の間隔D(N−1)が他のスピーカ10の間隔D(2)〜D(N−2)よりも大きく、間隔D(2)〜D(N−1)が等しくなるように、スピーカ10(1)〜10(N)が配置されている。
【選択図】 図1
Description
このスピーカアレーシステムは、高い指向性を有することから、横断歩道を渡る人への案内放送、駅のホームでの通過列車などの案内放送、駐車場出口などでの車注意の案内放送、エスカレータの乗降注意の案内放送、展示場などでの展示物の説明放送、限定された空間での音楽・TV視聴、銀行ATM、券売機、自動販売機等の案内放送、追尾する様に違反者に警告音を発生させるパトカー、臨場感溢れるアミューズメント機器等への応用が考えられ、実用化が望まれているものである。
このようなスピーカアレーシステムとして、例えば、高音質のサラウンド音場を生成することを目的としたスピーカアレーシステムが提案されている(特許文献1)。
ここで、各1次元ディジタルフィルタH1(Z1)〜HN(Z1)は、図12に示すようになっており、同図はN個のうちのn番目の1次元ディジタルフィルタHn(Z1)を示している。同図において、Z1 −1は、Z1=exp(jω1T)なる関係があり(ω1:時間角周波数、T:サンプリング間隔)、遅延回路の一要素を表している。
従って、n番目の1次元ディジタルフィルタは次の様に示される。
このため、2次元ディジタルフィルタ24は次の様に示される。
ここで、Z2、Z2=exp(jω2D)なる関係があり(ω2:空間角周波数、D:スピーカユニット間隔)、図11において、各スピーカと隣接スピーカとの位置の関係を表している。
空間周波数を離散的に評価したものである。
以上に示したスピーカアレーシステムの指向特性および周波数特性を変化させるための手段としては、2次元ディジタルフィルタ24の時間周波数と空間周波数とによって表される2次元周波数平面での振幅特性と位相特性の設計、スピーカの数、間隔、およびアレー長Lが用いられていた。しかしながら、今までは、スピーカ間の間隔Dを全て均等にして検証を行ってきた。すなわち、スピーカ間隔を不均等にした場合に於ける指向特性および周波数特性の変化については未検証であった。
そこで、本発明は、スピーカアレーを構成するスピーカの間隔を改善することにより、スピーカアレーシステムの指向特性および周波数特性を向上させることを目的としている。
請求項1の本発明のスピーカアレーシステムは、音源から入力された音響信号を複数のスピーカからなるスピーカアレーによって再生するスピーカアレーシステムであって、隣接する前記スピーカ間のスピーカ間隔のうち、末端スピーカとそれに隣接するスピーカ間の末端スピーカ間隔がそれ以外のスピーカ間隔よりも大きく、末端スピーカ間隔以外のスピーカ間隔が等しいことを特徴とする。
請求項2の本発明は、請求項1に記載のスピーカアレーシステムにおいて、音源から入力されたディジタル音響信号の指向特性を2次元ディジタルフィルタによって制御するものであって、前記2次元ディジタルフィルタが、仮想音源点Pを中心とする波面形状になるように、位相特性を設定するものであることを特徴とする。
請求項3の本発明は、請求項1または2に記載のスピーカアレーシステムにおいて、前記末端スピーカが低音域のみ増音量されているものであることを特徴とする。
図1は、本発明の実施形態に係るスピーカアレーシステムの構成の概略を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態のスピーカアレーシステム100は、スピーカ10(1)〜10(N)からなるスピーカアレー11および1次元ディジタルフィルタ20(1)〜20(N)からなる2次元ディジタルフィルタ4を備えている。2次元ディジタルフィルタ4は、両端から1つ内側のディジタルフィルタを備えていないという点において図10、図11に示した2次元ディジタルフィルタ24と相違しているが、その他の構成は2次元ディジタルフィルタ24と同じである。
なお、以下では、スピーカ10(1)〜10(N)を区別しないときには、単にスピーカ10と記し、フィルタ20(1)〜20(N)を区別しないときには、単にフィルタ20と記す。
図1に示したスピーカアレー11を構成するスピーカ10は、それぞれ1次元ディジタルフィルタ20に接続されている。そして、外部音源(図示せず)からアナログ信号として供給された音声信号が、A/D変換器(図示せず)によりディジタルデータに変換されて、1次元ディジタルフィルタ20のそれぞれに供給される。
1次元ディジタルフィルタ20は、スピーカアレーシステム100に特徴的な構成要素である遅延要素Z1 −1と各フィルタ係数h(m,n)(図12参照)とが予め設定されており、1次元ディジタルフィルタ20のそれぞれが供給されたディジタルデータに応じたフィルタ処理を行って出力する。このようにして出力される1次元ディジタルフィルタ20からのフィルタ処理後の出力は、D/A変換器(図示せず)により音声信号へと変換されて、スピーカ10に供給される。このように、本実施形態のスピーカアレーシステム100では、スピーカアレー11を構成するスピーカ10に接続されている1次元ディジタルフィルタ20のそれぞれに特徴的なフィルタ係数を予め設定しておくことにより、スピーカアレー11に特徴的な振幅特性を付与することができる。
より具体的には、スピーカアレー11と2次元ディジタルフィルタ4とによって構成されたスピーカアレーシステム100に2次元ディジタルフィルタ4の振幅特性と位相特性とを設定することにより、図4に示すように、スピーカアレー11の中心点0から、スピーカアレー11の正面方向(スピーカアレー11におけるスピーカ10の配列方向と直交する方向)との角度φ0、距離r0の点Pに音響ビームの焦点を仮想音源点Pとして形成することができる。
図2に示すような等間隔Dで直線配置のスピーカアレーから、角度φで放射される音響波のスペクトルは、2次元周波数平面では下記の式で表される直線上に分布する。
ただし、上記の式中f1は時間周波数を示しており、f2は空間周波数を示している。信号の時間サンプリング間隔をT(秒)とし、f1とf2とをそれぞれ、1/Tと1/Dで規格化すると上記の式は、下記の式に書き直される。
ビーム中心をφ=φ0、ビーム広がりをφ=φS+〜φS−とする音響ビームを形成するための2次元ディジタルフィルタ4の目標振幅特性として、図3に示すようなくさび形過渡域の特性を用いる(西川清、大野広祥、唐新華、金森丈郎、直野博之、「広帯域ビーム形成用2次元FIRファンフィルタの2次元フーリエ級数近似による設計法」、電子通信学会論文誌、vol.J83−A、No.12、pp.1357−1367、2000年12月)。
図3(a)は、規格化された時間周波数f1^と規格化された空間周波数f2^による2次元周波数平面での目標振幅特性を示すグラフであり、(b)は(a)中にA-A線で示した部分の音圧レベルを示すグラフである。また、図中において、φS+およびφS−は音響ビームのビーム端角度を、φC+およびφC−は音響ビームの音圧レベルが半分となる半値遮断角度を、φP+およびφP−は音響ビームの音圧レベルがφ=φ0と同じレベルである範囲の両端の角度をそれぞれ示している。なお、φ0=0の場合は、φS+=φS、φS−=−φS、φC+=φC、φC−=−φC、φP+=φP、φP−=−φPとおく。
末端スピーカ間隔である間隔D(1)・D(N−1)を他のスピーカの間隔Dの2倍とする場合、上述した振幅特性および位相特性の設定では、図1において二点鎖線を用いて示したように、末端スピーカ10(1)・10(N)の内側に仮想のスピーカが配置されていると想定して設定すれば良い。
2次元ディジタルフィルタ4による位相特性の設定について、以下に説明する。2次元ディジタルフィルタ4は、図4に細い実線で示したスピーカアレー11の中心点0を中心とする音波を示す円の波面を、より小さい同図中に太い実線で示した仮想音源点Pを中心とする音波を示す円の波面に変形するものである。なお、細い実線で示した円と太い実線で示した円とは、中心点0と仮想音源点Pとを結ぶ直線との交点において接している。具体的には、図4に太い実線で示した仮想音源点Pを中心とする波面形状になるように、下記の式で示される伝搬遅延τ(φ)すなわち角度φ方向の伝搬時間差を設定する(西川清、志村智、横山哲哉、宮岸美貴子、「2次元ディジタルフィルタを用いた音像移動と集束ビーム形成」AES東京コンベンション ’99予稿集、pp.166−169、1999−07)。
また、2次元ディジタルフィルタ4の位相特性θ(ω1,ω2)は、τ(φ)と時間角周波数ω1により、下記の式で表される。
また、ビームの広がりを示すビーム端角度φS+、φS−は、前記の角度φ0、スピーカアレー11を構成するスピーカ10の仮想音源点Pから遠い方の一端のスピーカの中心と仮想音源点Pとを結ぶ直線、およびスピーカアレー11の中心点0と仮想音源点Pとを結ぶ直線により形成される角度φe+、ならびに、スピーカアレー11を構成するスピーカ10の仮想音源点Pに近い方の他端のスピーカの中心と仮想音源点Pとを結ぶ直線、およびスピーカアレー11の中心点0と仮想音源点Pとを結ぶ直線により形成される角度φe−を用いて、下記の式により表される。
φS+=φ0+φe+
φS−=φ0−φe−
焦点位置を遠くに設定する超指向性ビーム形成の場合、低域での位相設定の範囲が狭く、その効果が出にくいことから、低域での位相設定範囲を拡大し、振幅の設定が行われるすべての領域に、すなわちスペクトルの分布する領域だけでなく、スペクトルの分布しない非物理領域にも位相設定することによって、高い指向性を得ることができる。
このような位相設定方法としては、特開2010−28591号公報、「超指向性音響ビーム形成法」(西川清、西川元気、電子情報通信学会技術研究報告、EA2007−101、2008年1月)などに記載の方法を用いることができる。
(実施例)
本発明の実施例として、音源から入力された音響信号を複数のスピーカからなるスピーカアレーによって再生するスピーカアレーシステムであって、隣接する前記スピーカ間のスピーカ間隔のうち、末端スピーカとそれに隣接する末端スピーカ間隔がそれ以外のスピーカ間隔の2倍であり、末端スピーカ間隔以外のスピーカ間隔が等しいスピーカアレーシステムとして、下記の特性を備えたものを設計した。
アレー長(L)=41.6cm(2.6cm×12+5.2cm×2)
ユニット数(N)=15、スピーカ間隔=2.6cm、末端スピーカ間隔=5.2cm
焦点距離(r0)=40[cm]
過渡域幅φps=10度
φ0=0度、φS=27.5度、φC=22.5度、φP=18.6度
フィルタ次数(M,N+1)=(60,16)
サンプリング周波数fs=45[kHz]
帯域上端周波数fH=8949[Hz]
帯域下端周波数fL= 1117[Hz]
焦点先鋭度shp=32.2、ピーク値ph=2.44
(比較例)
また、比較例として、実施例と同じスピーカを用いて、スピーカアレーを構成する隣接するスピーカ間の間隔が全て等しいスピーカアレーシステムであって、スピーカアレー長、ユニット数、焦点距離および過渡域幅において実施例と等しい特性を備えたものを設計した(図11参照)。
アレー長(L)=41.58cm
ユニット数(N)=15、間隔D=2.97cm
焦点距離(r0)=40[cm]
過渡域幅φps=10度
φ0=0度、φS=27.5度、φC=22.5度、φP=18.7度
フィルタ次数(M,N−1)=(60,14)
サンプリング周波数fs=45[kHz]
帯域上端周波数fH=7834[Hz]
帯域下端周波数fL= 1109[Hz]
焦点先鋭度shp=31.3、ピーク値ph=2.39
(周波数特性)
図5は本発明の実施例のスピーカアレーシステムの周波数特性を示すグラフであり、図6は比較例のスピーカアレーシステムの周波数特性を示すグラフである。両グラフの比較により(1)実施例のスピーカアレーシステムの帯域上端周波数が比較例のそれよりも高くなっていること、(2)実施例のスピーカアレーシステムの4kHz以下の低音域における指向特性が向上していることが分かる。
すなわち、(1)実施例のスピーカアレーシステムの帯域上端周波数(fH)は、8949kHzであり、比較例の7834kHzよりも高くなっている。これは、末端スピーカ間隔を他の間隔の2倍とすることにより、他のスピーカ間の間隔を小さくすることができることによるものである。
また、(2)図5と図6の比較により、実施例の結果を示すグラフのほうが比較例の結果を示すグラフよりも、φ=40度(deg)、φ=70度(deg)およびφ=90度(deg)のビーム域外において、振幅(amplitude)が1.5kHzから3.5kHzの間で小さくなっていることが分かる。このように、実施例のスピーカアレーシステムでは、特に人の聴覚に対する影響の大きい4kHz以下の低音域における指向特性が向上している。
図7は本発明の実施例のスピーカアレーシステムの焦点位置における指向特性を示すグラフであり、図8は比較例のスピーカアレーシステムの焦点位置における指向特性を示すグラフである。両グラフでは、いずれも主ビームは周波数に比例してピークレベルが高く、かつ、ビーム幅が狭くなる傾向を示すが、これは音響の焦点としての特徴を示す。両グラフの主ビーム以外の領域を比較すると、実施例のスピーカアレーシステムの4kHz以下の低音域では、比較例よりも音の指向特性が向上していることが分かる。
さらに、f=1.5kHz、f=2.5kHz、f=3.5kHzの指向特性を比較すると、図7に示した実施例のスピーカアレーシステムでは音のレベルが−20dBを下まわっているのに対し、図8に示した比較例のスピーカアレーシステムでは音のレベルが−20dBを超えているところがある。すなわち、実施例のスピーカアレーシステムの4kHz以下の低音域では、音響ビームの主ビーム以外の領域のレベル低下が大きくなっているため、音の指向特性が良いことが分かる。
上記の結果が得られた理由として、実施例のスピーカアレーシステムは、17個のスピーカを等間隔に配置したものから、2つのスピーカを取り除いた15個のスピーカの構成であるものの、2つのスピーカを取り除く前の次数N2=16の性能を保持していることが一因として考えられる。
図9は、アレー長Lの等しいスピーカアレーを示しており、(a)は末端スピーカ間隔がその他のスピーカ間隔の2倍となるように配置された7個のスピーカ10により構成されたスピーカアレー13、(b)は全てのスピーカ間隔が等しくなるように配置された7個のスピーカ10により構成されたスピーカアレー12b、(c)は全てのスピーカ間隔が等しくなるように配置された5個のスピーカ10により構成されたスピーカアレー12cを示している。
図9(a)に示すように、スピーカアレー13を構成するスピーカ10(2)〜10(6)のスピーカ間隔Sは、同図(b)に示すスピーカアレー12bを構成するスピーカ10(1)〜10(7)のスピーカ間隔S’よりも狭くなる。指向特性が同じスピーカアレーシステムの場合、スピーカ間隔と帯域上端周波数の間には互いに反比例の関係があることから、これにより、図9(a)のスピーカアレーシステムの帯域上端周波数を高くすることができる。
なお、スピーカアレー13の中心のスピーカから両側に間隔2Sでスピーカ10を配置した場合に、スピーカアレー13の両端にスピーカ10を位置させるには、図9(a)に示したものから、スピーカ10の数を4個ずつ増やす必要がある。したがって、スピーカ10の数は4n−1(nは2以上の整数)であることが好ましいといえる。
10 スピーカ
10(1)、10(N) 末端スピーカ
D 間隔(スピーカ間隔)
D(1)、D(N−1) 間隔(末端スピーカ間隔)
11、13 スピーカアレー
20 1次元ディジタルフィルタ
100 スピーカアレーシステム
Claims (3)
- 音源から入力された音響信号を複数のスピーカからなるスピーカアレーによって再生するスピーカアレーシステムであって、
隣接する前記スピーカ間のスピーカ間隔のうち、末端スピーカとそれに隣接するスピーカ間の末端スピーカ間隔がそれ以外のスピーカ間隔よりも大きく、末端スピーカ間隔以外のスピーカ間隔が等しいことを特徴とするスピーカアレーシステム。 - 音源から入力されたディジタル音響信号の指向特性を2次元ディジタルフィルタによって制御するものであって、前記2次元ディジタルフィルタが、仮想音源点Pを中心とする波面形状になるように、位相特性を設定するものであることを特徴とする請求項1に記載のスピーカアレーシステム。
- 前記末端スピーカが低音域のみ増音量されているものであることを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカアレーシステム。
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