図1は、本発明を適用する燃料電池システムの実施形態の構成図である。この燃料電池システムは、スタック状の燃料電池1と、この燃料電池のアノード1aに水素を供給する水素タンク2と、カソード1bに空気を供給するコンプレッサ10と、アノード1aから排出された排アノードガスをアノード1aに循環させるバイパス流路6と、このバイパス流路6に設置され、排アノードガスの循環量を制御する循環ポンプ7とを備える。
燃料電池1のアノード1aには高圧の水素を貯蔵した水素タンク2から水素供給流路2aを通じて水素が供給され、カソード1bにはコンプレッサ10の作用により空気が空気供給流路3aを通じて供給される。燃料電池1での発電に供せられた水素あるいは空気はガス放出流路2b及び空気放出流路3bから外部に放出される。ガス放出流路2bから外部に放出される水素を制御するパージ弁8がガス放出流路2bに設置される。
水素供給流路2aには、水素タンク2からの水素の供給を制御する水素タンク元弁3と、水素タンク2からの水素の圧力を所定圧に減じる減圧弁4と、アノード1aへ供給される水素量を制御する水素供給制御弁5とが設置される。さらに、水素供給流路2aの水素供給制御弁5下流側(燃料電池1側)とガス放出流路2bのパージ弁8上流とを、燃料電池1をバイパスして連接するバイパス流路6が形成される。このバイパス流路6には燃料電池1から排出された排アノードガスをアノード1aに循環する循環ポンプ7が設置される。
したがって、ガス放出流路2bに設置されたパージ弁8を閉じた状態で、バイパス流路6の循環ポンプ7が稼動すると、燃料電池1のアノード1aから排出された排アノードガスは、バイパス流路6を通じて再度アノード1aに供給される。一方、空気放出流路3bにはカソード1bの空気圧を調節する空気調圧弁9が設置される。
アノード1aに水素、カソード1bに空気が供給されると燃料電池1で発電が開始され、燃料電池1で発電された電力は、パワーマネージャ13により取り出され、負荷、例えば移動体の駆動源としてのモータに供給される。
この燃料電池システムを統合制御するコントローラ20が設置される。コントローラ20には、アノード入口の水素と排アノードガスの混合ガスの圧力を検出する第1圧力センサ11aの出力と、水素供給制御弁5に流入する水素の圧力を検出する第2圧力センサ11bと、アノード入口での水素濃度を検出する水素濃度センサ12の出力と、燃料電池1の発電量を検出する電圧センサ14の出力とが入力される。
コントローラ20は、これら入力値を用いて、燃料電池1の起動制御、水素タンク元弁3の開閉制御、水素供給制御弁5の流量制御、コンプレッサ10の運転制御、循環ポンプ7の運転制御、パージ弁8の開閉制御、さらに空気調圧弁9の調圧制御等を司る。
コントローラ20には、さらに、燃料電池システムを起動するメインスイッチ15のオンオフ信号と、燃料電池1の負荷状態を検出する負荷スイッチ19のオンオフ信号が入力される。
図2は、コントローラ20の構成を説明するブロック図である。コントローラ20は、メインスイッチのオンオフ信号に基づき燃料電池1の起動要求を判定する起動要求判定部21と、前述の第1、第2圧力センサ11a、11bと濃度センサ12と電圧センサ14の検出値から燃料電池1の運転状態を検出する運転状態検出部22と、燃料電池1の起動要求判定結果及び燃料電池1の運転状態を入力して、これらの入力に基づいて、燃料電池1起動時の運転条件を演算する起動演算部23と、起動演算部23の演算結果に基づいて水素供給制御弁5を制御してアノード1aへの水素供給量を制御する燃料剤供給手段制御部24と、同じく起動演算部23の演算結果に基づいて循環ポンプ7を制御してバイパス流路6を循環する排アノードガス量を制御する燃料剤循環手段制御部25とから構成される。
図3は、コントローラ20が実施する燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内に酸化剤ガス(空気)が存在し、かつ燃料電池1に接続する回路に電流が流れていない無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気等である。したがって、起動時にはアノード1aに空気が存在しているものとして起動時制御を実施する。
まずステップS11で、燃料電池システムの起動要求があるかどうかをメインスイッチ15のオンオフ信号から判断する。オンであれば起動要求があるものと判断してステップS12に進む。なお、この起動時には燃料電池1は無負荷状態を維持するように制御される。ステップS12では、燃料電池1のアノード1aに接続するガス放出流路2bを遮蔽するパージ弁8を閉じる。続くステップS13で水素タンク元弁3を開き、ステップS14で循環ポンプ7を稼動する。これにより、排アノードガスがバイパス流路6を通って、アノード1aに循環する。
このステップS14での循環ポンプは、次ステップS15での水素供給制御弁5の開口により水素タンク2からアノード1aに供給される水素が、水素供給流路2aからバイパス流路6に流入しないように排アノードガスを循環する。
ステップS15では水素供給制御弁5を開き、水素タンク2から水素をアノード1aに供給する。したがって、排アノードガスを循環させる循環ポンプ7を稼動後にアノード1aに水素タンク2から水素を供給することにより、アノード1a内の酸化剤ガスが水素と混合し、ガス放出流路2bからバイパス流路6へ送られる。
続くステップS16では、循環ポンプ7によりアノード1aへの排アノードガスの循環量制御を行う。アノード1aに循環される排アノードガス量は、アノード入口に設置された濃度センサ12により検出される混合ガス中の水素濃度に応じて設定される。具体的には、アノード1aに供給される、水素タンク2とバイパス流路6からの水素の濃度とバイパス流路6からの空気の濃度との目標比が、水素が多い状態、例えば水素7:酸化剤ガス(空気)3となるように循環ポンプ7の運転負荷をフィードバック制御する。
続くステップS17では、ステップS15の水素供給開始からの経過時間が所定時間となったか否かを判定する。所定時間が経過した場合にはステップS18に進み、経過していない場合にはステップS16に戻り、循環ポンプ制御を繰り返す。ここで、所定時間は、アノード1a内の酸素が水素との反応により全て消費するまでに掛かる時間であり、アノード1aに供給される水素量と、アノード1aに供給される水素の濃度と空気の濃度との目標比(例えば7:3)とから酸素量を推定し、推定した酸素量を積分し、積分した酸素量が水素供給流路2aの体積中に存在しうる最大量となるまでの時間を所定時間とする。
そしてステップS18で、所定時間が経過したことによりアノード1a中の酸素が全て消費されたものと判断して、燃料電池1を起動し、ステップS19でパージ弁8を開き、通常運転へ移行する。燃料電池1を起動して初めて負荷と燃料電池1との間に電流が流れる。なお、燃料電池1が起動するステップS18までは、燃料電池システムは図示しない2次電池等を電源として稼動する。
次にアノード1aに供給される混合ガス中の水素濃度と空気濃度との目標比の設定方法について説明する。発明者等は、アノード1aに供給される混合ガス中の水素と空気(酸素)との濃度比とカソード1bのカーボン腐食との関係に着目し、濃度比の異なる混合ガスをアノード1aに流した場合のカソード1bのカーボン腐食の発生状態を実験により確認した。
図4は、アノード1aに水素と空気との濃度比を種々変えた混合ガスを導入したときのカソード1bでのカーボン腐食の発生状態を示す図である。ここで、カーボン腐食は、カーボン腐食時に発生する二酸化炭素量に基づき判断することができる。
まず、水素濃度100%のガスをアノード1aに導入した場合に発生した二酸化炭素は、供給した水素とアノード1a内の空気との境界がアノード1a内を通過した時に一時的に発生したものである。また水素濃度70%+酸素濃度30%の混合ガスをアノード1aに導入した場合には、水素濃度100%を導入した場合と二酸化炭素の発生量に大きな変化は認められなかった。
しかし、水素濃度40%+酸素濃度60%の混合ガスをアノード1aに導入した場合は、二酸化炭素の発生量が水素濃度100%を導入した場合に比して約4倍に上昇した。さらに、水素濃度30%+酸素濃度70%の混合ガスをアノード1aに導入すると、二酸化炭素は連続的に発生することが判明した。なお、図中の点は水素供給開始後3分間の発生量をプロットしたものである。この結果から、アノード1aに供給する混合ガスの組成を水素濃度70%以上とすることでカソード1bのカーボン腐食を抑制できることがわかる。
また、図5は、アノード1aに導入した水素と空気の混合ガスの水素濃度に対してアノード1aから排出された排アノードガスの水素濃度および空気濃度を調査した結果を示している。これによれば、図5にて連続的に二酸化炭素が発生する場合(水素濃度30%+酸素濃度70%の混合ガスの場合)は、排アノードガスに水素が含まれていないことがわかる。すなわち、排アノードガスに水素が含まれるように制御することで、連続的な二酸化炭素の発生、つまり連続的なカーボンの腐食の進行を抑制することができる。一方、混合ガスの水素濃度を30%以上とすることで、排アノードガス中の酸素濃度はほぼ0%となり、アノード1a内の酸素を除去できる。
したがって、本実施形態では、燃料電池システム起動時に、アノード1a内に酸化剤ガスが存在し、燃料電池1に接続する回路に電流が流れていない無負荷状態である場合には、パージ弁8を閉じて循環ポンプ7を起動し、アノード1aから排出される排アノードガスをバイパス流路6に循環させた状態で水素供給制御弁5を開いて水素タンク2からアノード1aに水素を供給する。そして、アノード1aに供給する水素と排アノードガスとの混合ガスの水素濃度を所定値(例えば、70%)以上となるように循環ポンプ7を制御する。
このようにしてアノード1aに供給される混合ガスを構成するガスの組成(濃度)を制御してカソード1bのカーボン腐食を抑制するとともに、起動時にアノード1aから排出される水素を含有する排アノードガスをバイパス流路6を通じてアノード1aに循環させ、水素の無駄な放出が禁止されるため、燃料電池システムの発電効率の低下を抑制できる。また、起動時にパージ弁8を閉じて循環ポンプ7を起動した後、水素供給制御弁5を開くことで、水素タンク2からの水素がバイパス流路6内に逆流することが防止される。なお、アノード1aに供給される混合ガスの水素濃度の制御に循環ポンプ7とともに水素供給制御弁5を用いるようにしてもよい。
図6は、第2の実施形態としてのコントローラ20の制御内容を説明するフローチャートである。第1の実施形態との構成上の相違点は、アノード1aに供給される混合ガス中の水素濃度を検出する水素濃度センサ12に換えて、アノード1aに供給される混合ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサを設けた点であり、他の構成は第1の実施形態と同様である。以下、本実施形態での制御内容の相違を第1の実施形態のフローチャートと比較して説明する。
ステップS11からステップS16までは第1の実施形態と同様の制御内容とする。ステップS16に続くステップS27では、新たに設定した酸素濃度センサから酸素濃度を読み取り、検出した酸素濃度が所定濃度未満かどうかを判定する。ここで所定濃度は、例えばアノード1aに残留していた酸化剤ガスが空気とした場合には6%として設定し、検出した酸素濃度が、6%以上であれば6%未満となるように循環ポンプ7の運転負荷をステップS16で制御する。
酸素濃度が所定濃度未満になった場合には、ステップS28以降に進み、ステップS28では燃料電池1を起動し、ステップS29では、ユーザーの要求に応じた燃料電池1の発電量となるように循環ポンプ8の運転負荷や水素供給制御弁5の開度等を制御する。ステップS30では、パージ弁8を開きアノード1a内の残留窒素を外部に放出する。
この実施形態では、第1の実施形態と同様の効果を備えつつ、ステップS30のパージ制御までの時間を短縮することができる。
なお、第1の実施形態の水素濃度センサ12と第2の実施形態の酸素濃度センサを併設することで、空気中の窒素量や水蒸気量を考慮して水素濃度と酸素濃度との比をより精度よく制御することができる。
また、第1、第2の実施形態では、アノード入口に濃度センサを設置したが、カソード出口に二酸化炭素濃度を検出する濃度センサを設置してもよい。この場合には、図12に示すように、カーボンの劣化により二酸化炭素が生成されるため、この生成された二酸化炭素の濃度からカーボンの劣化を判定し、この二酸化炭素が所定濃度以下となるように循環ポンプ8の運転負荷を制御するようにして、MEAの劣化を防止することができる。
また、アノード出口に酸素濃度を検出する濃度センサを設置してもよい。これは、燃料電池1の停止直後など燃料電池内に空気が外部から進入していないが、バイパス流路6に空気が進入しているような場合に、循環ポンプ7を稼動するとアノード1aには酸素濃度の高い混合ガスがアノード1aに供給される。このようなガスがアノード1aに供給されるとアノード1a内では反応に供しない酸素が生じ、余った酸素はガス放出流路2bに排出される。この排出された酸素の濃度をセンサにより検出し、検出した酸素濃度が所定濃度より低くなるように循環ポンプ7の運転負荷を設定する。
さらに、第1の実施形態の水素濃度センサ12に換えて、電圧センサ14の出力値を用いて循環ポンプ7の運転負荷を制御することができる。酸素濃度の高い酸素リッチの混合ガスがアノード1aに供給されると、燃料電池1の発電電圧が低下する。したがって、燃料電池1を構成する単セルの電圧、または単セルの所定枚数ごとの電圧を電圧センサ14を用いて検出し、電圧の変化量が所定変化量以上の場合には、循環ポンプ7の吐出量を減少させて水素濃度の高い混合ガスを供給するように制御する。
図7は、第3の実施形態の構成図である。この実施形態の特徴的な構成は、バイパス流路6の循環ポンプ7の上流(ガス放出流路2b側)に酸素濃度を検出する酸素濃度センサ16と、循環ポンプ7の下流(水素供給流路2a側)に設置され、バイパス流路の排アノードガスの循環量を制御する循環量制御弁18と、循環ポンプ7と循環量制御弁18との間のバイパス流路設置され、バイパス流路6内の圧力を検出する第3圧力センサ11cとを備えたことである。センサ11c、16の出力はコントローラ20に出力され、循環量制御弁18はコントローラ20によってセンサ11c、16の出力に基づいて制御される。
図8は、コントローラ20が行う本実施形態の制御内容を説明するフローチャートである。ステップS11からステップS13までは第1の実施形態の制御と同様であり、説明を省略する。
ステップS13で水素タンク元弁3を開いた後、続くステップS31でバイパス流路6に設置した循環量制御弁18を閉じる。循環量制御弁18を閉じることで、水素供給流路2aからバイパス流路6へ水素が流入することを防止する。続くステップS32では循環ポンプ7を稼動する。これにより、循環量制御弁18と循環ポンプ7との間のバイパス流路6の圧力が上昇する。このとき、第3圧力センサ11cで検出されるバイパス流路6の圧力は、第1圧力センサ11aで検出される水素供給流路2aの圧力より高くなる。
続くステップS33では、酸素濃度センサ16の検出値を用いて、検出した濃度が所定濃度未満かどうかを判定する。ここで所定濃度は、排アノードガス中の酸素濃度が十分低くなったと判断できる、例えば6%以下の値とする。所定値未満であれば、排アノードガス中の酸素濃度は十分に低いと判断してステップS37に進み、所定値以上であればステップS34に進む。
ステップS34では、水素供給制御弁5を所定量開き、アノード1aへ水素タンク2からの水素供給を開始する。続くステップS35は、再び排アノードガス中の酸素濃度を酸素濃度センサ16を用いて検出し、検出した酸素濃度をステップS33で用いた所定濃度と比較して所定濃度未満かどうかを判定する。検出濃度が所定濃度未満であればステップS37に進み、所定濃度以上であればステップS36に進み、ステップS36で循環量制御弁18を用いて、酸素濃度が所定濃度未満となるように排アノードガスの循環量を制御する。この時、循環ポンプ7は、ステップS32で上昇した循環量制御弁18上流の圧力が低下しないように制御されている。
ステップS37では、アノード1a中の酸素濃度が十分に低くなったとして循環量制御弁18を全開にし、通常運転へ移行するためステップS28に進む。ステップS28からステップS30は第1の実施形態と同様のステップである。
この実施形態の場合には、アノード1a中の酸素濃度が十分低くなるようにバイパス流路6を流通する排アノードガスの循環量を循環量制御弁18で制御するため、アノード1aへの水素供給量の変化が速い場合でも、水素供給量の変化に対応して循環量を迅速に変化させることができる。
また、燃料電池システム起動時の水素を供給する際に、最初はアノード1a内の圧力が低く水素タンク2の元圧(または減圧弁4下流の圧力)との差が大きいため、水素供給量は多いが、水素供給を続けるとアノード1a内の圧力が上昇するため水素供給量が少なくなってくる。一方で、循環ポンプ7の応答性が悪いと、水素供給開始当初は空気の供給が間に合わなくなる。そこで、第3の実施形態では、ステップS34の水素供給前に、循環量制御弁18を閉めておくとともに循環ポンプ7を運転して、循環ポンプ7と循環量制御弁18の間のバイパス流路6内に高圧の空気を溜めておくことにより、水素供給直後にも大量の空気を供給できるため、空気を早く反応させ、消費することができる。
また第3の実施形態では、酸素濃度センサ16を用いて、起動直後の水素供給経路内の空気(酸素)濃度を測定していた(ステップS35)が、前回の燃料電池停止から、ユーザからの起動要求が来るまでの時間を計測して、空気濃度を推定してもよい。水素供給流路2a内に進入する空気の量は自然拡散で進入するため時間に依存するので、空気量を推定することが可能である。ここで燃料電池停止とは、電力取り出しを停止して、パージ弁を開けた状態をいう。
また、空気濃度を循環ポンプ7の消費電力により推定してもよい。起動直後の循環ポンプ回転速度を起動時には常に一定に動かすことにし、そのときの回転数と消費電力の関係を検出し、循環させる排アノードガス中の空気濃度が高ければ、消費電力は大きく、水素濃度が高ければ、消費電力が小さいのでこの傾向を用いて空気濃度の推定を行うことができる。
図9は、第4の実施形態の構成図であり、第1の実施形態の構成と比較して、循環ポンプ7の上下流での圧力差を検出する差圧センサ17と、差圧センサ17の上流に第4の圧力センサ11dを設けたことを特徴とする。これらセンサ17、11dの出力信号は、コントローラ20に送られる。
図10は、本実施形態の制御内容を説明するためのフローチャートである。
ステップS11からステップS15までの内容は、第1の実施形態の制御内容と同様であり、説明は省略する。
続くステップS41では、アノード1aに供給する水素供給量を演算する。水素供給量の演算は、水素供給制御弁5の上流側及び下流側の圧力を検出する第1、第2の圧力センサ11a、11bの検出に基づいて演算される。また、演算された水素供給量に基づいてバイパス流路6からアノード1aに循環する排アノードガスの流量が演算される。この排アノードガスの循環流量は、演算された水素供給量に対して30%以下になるように循環ポンプ7の吐出量により制御される。循環ポンプ7の目標吐出量は、設置された差圧センサ17と第4の圧力センサ11dの検出値と循環ポンプ7の性能とに基づいて決定される。ここで流量は、質量流量を示す。なお、本実施形態では各種センサを用いて制御を行ったが、センサを用いずに燃料電池1や水素が流通する流路の圧損を推定して、循環ポンプ7の目標吐出量を設定してもよい。
水素供給量は、図11に示すように、アノード入口の圧力が上がるほど低下する傾向にあり、この傾向に応じて循環ポンプ7の吐出量を制御する。
この実施形態では、水素供給制御弁5の前後での圧力差から、供給される水素供給量を演算し、演算された水素供給量に応じて、バイパス流路6からアノード1aに循環する排アノードガスの流量を設定することにより、水素や空気等の気体濃度を検出することなく、アノード入口での水素流量や排アノードガス流量を管理してカーボンの腐食を防止することができる。
これまでの実施形態では、バイパス流路6を通じて排アノードガスを循環させるために循環ポンプ7を設置したが、循環ポンプ7の流量可変制御に換えて、バイパス流路6内に水素を供給するイジェクタを備えてもよい。
したがって本実施形態では、外部から水素が供給されるアノード1aから排出される排アノードガスをアノード1aに循環するバイパス流路を備えた燃料電池システムにおいて、前記アノード1aに供給される前記水素と排アノードガスとからなる混合ガスのガス組成を制御するガス組成制御手段と、排アノードガスの外部への排出を制御するガス排出制御手段と、前記ガス組成制御手段と前記ガス排出制御手段を制御するコントローラを備え、前記アノード1a内に酸化剤ガスが存在し、前記燃料電池に接続する回路に電流が流れない無負荷の状態から起動する場合に、前記コントローラは、前記ガス排出制御弁を閉じ、前記アノード1aに供給される前記混合ガスを構成するガスの濃度が所定濃度になるように前記ガス組成制御手段を制御するため、前記起動時に排アノードガスをバイパス流路を通じて循環させることで、水素が外部に放出されることを防止して燃料電池システムの発電効率の低下を抑止できる。また、アノード1aに供給する混合ガスの水素濃度を所定濃度以上となるようにガス組成制御手段を制御するため、カソード1bでの炭素腐食を防止し、燃料電池の劣化を抑制することができる。
図13は、第5の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図1に示す第1の実施形態の構成と比較して、水素濃度センサ12が酸素濃度センサ31に変更されたこと、ガス放出流路2bがパージ弁8の下流で空気放出流路3bの空気調圧弁9上流と合流する構成としたことが異なる。また、水素タンク元弁3、減圧弁4及び第1圧力センサ11aを構成から廃止した。
このような構成で本実施形態では、バイパス流路6を介して循環する排アノードガス流量を安定的に制御しうる最大の循環量でアノードに循環するようにしたことを特徴とする。
図14は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路6に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS51において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。起動判定のトリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定される。トリガーがオンであればステップS52に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS52においてパージ弁8を閉じ、アノードから排出される排アノードガスがバイパス流路6を通じてアノードに循環されるようにする。パージ弁8を閉じることで、後述のステップS57で供給される水素が外部に放出されることがない。続くステップS53にてコンプレッサ10を起動する。コンプレッサ10は、後述するアイドル状態相当の回転数に制御される。
次に、ステップS54で循環ポンプ7を起動する。ここで、循環ポンプ7の回転数は、安定して制御可能な通常運転時の最大回転数に制御する。ステップS55で循環ポンプ7の回転数を図示しない回転数センサ等で検出して、最大回転数に安定的に収束したかどうかを判定する。収束した場合にはステップS56に進み、収束していない場合には収束するまで制御を維持し、判定を繰り返す。ステップS56では空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の昇圧を開始する。続いてステップS57で水素供給制御弁5が開かれ、燃料電池1のアノードへの水素供給が開始される。
次に、ステップS58で水素供給開始後の経過時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。ここで所定時間は、アノードへ水素が行き渡ったと予想される時間を予め実験等により求めておき、得られた所定時間に設定する。所定時間が経過した時にステップS59に進み、燃料電池1より電流の取り出しを開始する。ここでは、アイドル状態相当の微小な負荷電流の取り出しを行う。
続いてS60において、酸素濃度センサ31の出力を読み込み、検出した酸素濃度が所定値(例えば6%)以下に達したかどうかを判定し、6%以下になったらS61に移行する。ここでは6%としたが、後述する劣化実験結果によれば6%以下の濃度であればよい。S61において、循環ポンプ7の回転数をアイドル状態相当の回転数まで低減し、本起動時制御は終了し、通常運転へと移行する。ここでアイドル状態相当の回転数とは、燃料電池システムが発電可能状態にあり、かつ外部負荷等へ電力を供給する電力供給状態にないアイドル状態での回転数である。
尚、本実施形態では循環ポンプ7の最大回転数という表現を使用したが、1つの回転数に限定されるわけではなく、最大回転数近傍の回転数を含むことは言うまでもない。例えば、図15においては循環ポンプ7の実際の最大回転数は12000(rpm)であるが、本実施形態の説明上の最大回転数は、例えば10000〜12000(rpm)という範囲で定義される。
図15にカソード出口で計測された二酸化炭素排出量と循環ポンプ7の回転数との関係を示す。これは、循環ポンプ7の回転数を所定の回転数に安定して制御した状態で、水素供給制御弁5を開いて水素昇圧を開始し、燃料電池1のアノードに水素を供給した場合における、カソードからの二酸化炭素の排出量と循環ポンプ7の回転数との関係を示す。
この結果は、燃料電池1のカソードには一定流量の空気を流し、カソード出口に設けたガス分析器にてカソードから排出された空気中に含まれる二酸化炭素の排出量(空気供給時に含まれていたCO2を除く)を測定したものである。
循環ポンプ7の回転数のみを4000、8000、12000(rpm)と変化させて他の試験条件は同じとした場合、循環ポンプ7の回転数を増すとカソード出口から排出される二酸化炭素量が著しく低減することが分かる。この二酸化炭素の排出は、下式に示されるカソードにおけるカーボン腐食に起因すると考えられる。つまり、循環ポンプ7の回転数を増大することで、空気を含む水素(排アノードガス)の循環量が増加してアノードにおいて残存空気が素早く消費され、カソードにおいて発生する下式で示されるカーボン腐食反応が抑制されるため、二酸化炭素の排出量が減少するのである。
C+2H2O→CO2+4H++4e- (3)
次に、燃料電池1を構成する単セルのカソードに一定流量の空気を供給し、アノードに所定の比率で混合した水素と空気の混合ガスをそれぞれ供給した場合の、カソードから排出される空気(排カソードガス)中の二酸化炭素量を測定した結果を図16に示す。
この結果によれば、アノードに供給される水素/空気濃度比によって、カソードから排出される二酸化炭素量は大きく変化し、水素/空気=10/90%〜70/30%の間で二酸化炭素の排出が確認され、水素濃度70%以上では二酸化炭素の排出がほぼ0になることが分かる。ここで、水素/空気=70/30%の場合は水素/窒素/酸素=70/24/6%に相当するため、上述のステップS60の酸素濃度の所定値6%が設定される。尚、この二酸化炭素発生も上述の(3)式と同じ反応機構であり、カソードの劣化の指標となる。また、本実施形態では酸素濃度を用いて二酸化炭素の排出判定をしたが、酸素濃度に代えて水素濃度を用いて判定するようにしてもよい。
起動時の水素供給前の段階において、燃料電池1のアノード内、水素供給経路としての水素供給流路2a内及びバイパス流路6内には、酸素が含まれている可能性がある。このような状態から、水素を供給すると、アノード内及び水素供給経路2a、6内には水素と酸素が共存した混合ガスが流通することになる。この混合ガスがバイパス流路6を通じて排アノードガスとしてアノードに循環され、カソードの酸化劣化(カーボン担持体の腐食、触媒金属の溶出や粒成長など)が進行する恐れがある。そこで本実施形態では、燃料電池システムで実現可能な最大の循環量で水素をアノードに供給することで、アノードでの燃焼反応により短時間で速やかに残存酸素が消費されるため、代表として(3)式に示されるようなカソードの酸化劣化を最小限に抑制することができる。
また、循環ポンプ7の回転数を安定的に制御可能な範囲内での最大回転数近傍に設定することにより、アノードでの燃焼反応により短時間で速やかに残存酸素が消費されるため、容易な制御でカソードの酸化劣化を抑制することができる。
また、水素導入後、アノード近傍及び水素供給経路内の酸素濃度が0に近い所定濃度以下となった時点で、カソードの酸化劣化反応は抑えられるため、カソードの劣化の観点からは循環量を低減させても問題はない。従って、循環ポンプ7の動力を低減し、消費電力を抑制することができる。
図17は、第6の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図13に示す第5の実施形態の構成と比較して、酸素濃度センサ31が削除された点が異なる。酸素濃度を検出する代わりに、予め酸素濃度が水素の供給開始時から所定の酸素濃度に達するまでの時間を実験等により求めておき、所定時間に達したら起動制御を終え、通常運転へ移行するようにしたものである。
図18は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路6に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS61において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。起動判定トリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定できる。トリガーがオンであればステップS62に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS62においてパージ弁8が閉じ、続くステップS63にてコンプレッサ10を起動する。コンプレッサ10は、前述のアイドル状態相当の回転数に制御される。
次に、ステップS64で循環ポンプ7を起動する。ここで、循環ポンプ7の停止状態から後述する所定の回転数に達するまでの循環ポンプ7の回転数の変化率(増加率)は、制御可能な略最大変化率で制御する。ステップS65では、循環ポンプ7の回転数が安定的に制御可能な通常運転時の最大回転数を超え、所定の回転数に制御されたかどうかを判定する。本実施形態での循環ポンプ7の所定の回転数は、第5の実施形態の安定的に制御可能な通常運転時の最大回転数より大きい回転数とする。このため、本実施形態の水素と酸素からなる混合ガスの循環量は第5の実施形態の循環量より多くできる。
第6の実施形態での循環ポンプ7の運転条件の一例を図19に示す。時刻t1で循環ポンプ7が起動し、最大変化率で回転数を上昇させる。時刻t2で通常運転領域の最大回転数を越え、制御上の不安定領域に入る。ここで通常運転領域は、安定的に回転数を制御できる領域であって、第5の実施形態の最大回転数は、この通常運転領域の最大回転数を意味する。不安定領域に入った循環ポンプ7の回転数は、制御上安定性に欠けるが所定の回転数になるように制御され、この時の循環ポンプ7の吐出量は通常領域の最大吐出量より多くなる。
続くステップS66では、水素供給制御弁5を開き、水素供給流路内の水素の圧力が昇圧してアノードへの水素供給を開始する。さらにステップS67で空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の空気圧力を昇圧させる。このとき、大気圧状態の水素及び空気を所定の圧力まで昇圧させる昇圧時間が最短時間となるように制御される。
次に、ステップS68で水素供給開始後の経過時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。ここで所定時間は、アノードへ水素が行き渡ったと予想される時間に設定する。所定時間が経過した時に、S69に進み、燃料電池1より電流の取り出しを開始する。ここでは、アイドル状態相当の微小な負荷電流の取り出しを行う。
続くステップS70では、ステップS66での水素供給開始からの経過時間がアノード内に残存した酸素が消費されるのに必要な所定時間を越えたかどうかを判定する。ここで、アノード内に残存した酸素の濃度が6%以下になる時間を所定時間とする。経過時間が所定時間を超えた場合にはステップS71に進み、循環ポンプ7の回転数を前述のアイドル状態相当の回転数まで低下させて制御を終了する。
このような起動時制御とすることにより、本実施形態では第5の実施形態と同様に、燃料電池システムで実現可能な循環量で水素(排アノードガス)をアノードに導入することで、アノードでの燃焼反応により短時間で速やかに残存酸素が消費されるため、代表として(3)式に示されるようなカソードの酸化劣化を最小限に抑制することができる。
また、制御上安定的に制御できる通常運転条件の最大回転数よりも高い回転数で循環ポンプ7を運転して水素をアノードに供給することで、容易な制御でより多くの水素をアノードに供給し、アノードでの燃焼反応によりさらに短時間で速やかに残存酸素が消費されるため、(3)式に示されるようなカソードでの酸化劣化を一層抑制することができる。
また、起動時に、循環ポンプ7の回転数を所定の回転数まで上げる際に、その回転数の変化率を制御可能な範囲で略最大変化率に制御することにより、短時間で回転数を所定回転数まで高くすることができる。
更に、水素圧力が所定の圧力に達するまでの昇圧時間を制御可能な最短時間となるように制御することにより、より多くの燃料が短時間に燃料電池1のアノードに供給されるため、残存する酸素と水素がアノードにおいて短時間で速やかに燃焼反応を起こして酸素が消費される。従って、(3)式に示されるようなカソードの酸化劣化を抑制することができる。
また、水素供給開始からの経過時間により酸素濃度が所定低減まで低減したと推定するため、濃度センサを設ける必要がなく、システムの低コスト化を図ることができる。
図20は、第7の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図13に示す第5の実施形態の構成と比較して、酸素濃度センサ31を削除し、カソードから排出されるガス中の二酸化炭素濃度を検出する濃度センサ36を空気放出流路3bに設置し、またバイパス流路6の循環ポンプ7の上流側の一部を迂回する第2バイパス流路32を設けた点が異なる。この第2バイパス流路32には、補助循環ポンプ33と、その上下流に制御弁34、35が設置される。ここで、濃度センサ36の出力はコントローラ20に入力され、補助循環ポンプ33と制御弁34、35はコントローラ20により制御される。本実施形態は、2機の循環ポンプ7、33を協働して循環量を高めることで、カソードの劣化を抑制するものである、
図21は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路6に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS81において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。トリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定できる。起動判定のトリガーがオンであればステップS82に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS82においてパージ弁8が閉じ、続くステップS83にてコンプレッサ10を稼働する。コンプレッサ10は、前述のアイドル状態相当の回転数に制御される。
次に、ステップS84で循環ポンプ7を稼動する。ここで、循環ポンプ7の回転数の変化率(増加率)は、制御可能な略最大変化率で制御する。ステップS85では、循環ポンプ7の回転数が制御可能な最大回転数を超え、所定の回転数に制御されたかどうかを判定する。制御されている場合にはステップS86に進む。本実施形態での循環ポンプ7の所定の回転数は、第6の実施形態と同様に制御され、このため循環ポンプ7の吐出量は、第5の実施形態の吐出量より多くなる。
続くステップS86で、補助循環ポンプ33の上下流に設置した制御弁34、35を開き、ステップS87で補助循環ポンプ33を稼動する。ここで、補助循環ポンプ33の回転数の変化率(増加率)は、循環ポンプ7と同様に、制御可能な略最大変化率で制御する。また、補助循環ポンプ33の回転数も、循環ポンプ7と同様に制御の安定性に欠けるが、安定した制御が可能な最大回転数より大きい所定の回転数になるように制御される。
そして、ステップS88で、補助循環ポンプ33の回転数が制御可能な最大回転数を超え、所定の回転数に制御されたかどうかを判定する。制御されている場合にステップS89に進み、ステップS89では、水素供給制御弁5を開き、水素供給流路内の水素の圧力が昇圧してアノードへの水素供給を開始する。
さらにステップS90で空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の空気圧力を昇圧させる。このとき、大気圧状態の水素及び空気を所定の圧力まで昇圧させる昇圧時間が最短時間となるように制御される。
次に、ステップS91で水素供給開始後の経過時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。ここで所定時間は、アノードへ水素が行き渡ったと予想される時間に設定する。所定時間が経過した時に、S92に進み、燃料電池1より電流の取り出しを開始する。ここでは、アイドル状態相当の微小な負荷電流の取り出しを行う。
続くステップS93では、濃度センサ36の検出値を読み込み、二酸化炭素濃度が所定濃度以下になったかどうかを判定する。所定濃度(例えば1%)以下になた場合には、二酸化炭素濃度が下限まで低減したと判定し、ステップS94に進む。ステップS89でアノードに水素を供給した直後は、カソードのカーボン腐食に伴い二酸化炭素が発生する。その後に、水素供給経路内の酸素を消費したら二酸化炭素濃度は低くなり、空気中の二酸化炭素濃度である約1%に収束する。
ステップS94では、循環ポンプ7の回転数を前述のアイドル状態相当の回転数まで低下させ、ステップS95では、補助循環ポンプ33の運転を停止する。そしてステップS96で制御弁34、35を閉じて制御を終了する。
図22は、水素供給流路2aとバイパス流路6との分岐(以下、A点という。図20を参照)〜燃料電池1〜第1、第2バイパス流路6、32を流れるガスの圧力(静圧)の変化を示す図である。
A点より燃料電池1に向けてガスが流れ、その際に水素供給流路2aを形成する配管で圧力損失が生じ、燃料電池1内ではより大きな圧力損失が生じる。その後、燃料電池1から流出したガスは第2バイパス流路32に流入して、第2バイパス流路32に設置された補助循環ポンプ33の揚程により圧力が上昇する。その後、バイパス流路6、第2バイパス流路32の配管による圧力損失で圧力が低下するが、再び水素循環ポンプ7で昇圧し、配管による圧力損失が発生してA点に戻る。
ここで、仮に補助循環ポンプ33の設置位置を第2バイパス流路32ではなくバイパス流路6の循環ポンプ7近傍の上流側に設置したと想定する。ここで循環ポンプ33の燃料電池1の出口からの距離は、実施形態で説明した位置より想定した仮の位置の方が遠くなるように設置される。この場合の圧力変化を図22の点線で示す。この比較からわかるように、燃料電池1の内部における圧力は、補助循環ポンプ33の位置により変化し、燃料電池1の出口直後に循環ポンプを設けた方が、燃料電池1の内部圧力が低くできる。同じく、循環ポンプ7が燃料電池1の出口直後に配置しても同様の作用が期待される。
しかしながら、一方で通常運転時は循環ポンプ7のみを利用するため、水素圧力が高い方が燃料電池1の出力性能は高くなる。このため、起動時しか利用しない補助循環ポンプ33を燃料電池1の出口直後に配置し、循環ポンプ7は出口から遠い位置に配置することが望ましい。このように、燃料電池1の出口直後に補助循環ポンプ33を設けることで燃料電池1への水素導入がより短時間で行うことができる。
本実施形態では、第6の実施形態に記載した効果に加えて、以下の効果が期待できる。
即ち、通常運転時の循環ポンプ7に加え、起動用の補助循環ポンプ33を設けたことにより、起動時の循環量を増加し、アノードでの燃焼反応によりアノード中の酸素を短時間で消費し、(3)式に示されるようなカソード中の酸化劣化を抑制することができる。
また、酸化劣化としてのカーボン担持体の腐食は、前述の(3)式の反応で生じるため、カソードがら排出されるガス中の二酸化炭素濃度を濃度センサ36で測定することで循環量の低減を判断することができる。
更に、補助循環ポンプ33をバイパス経路6、33の燃料電池1の燃料出口近傍に設けることにより、燃料電池1の入口近傍に設けた場合に比べて、吸引負圧作用により燃料電池1のアノード近傍及び燃料電池1出口近傍の圧力が相対的に低くなる。従って、燃料電池1への水素供給時間が短くできる。
図23は、第8の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図13に示す第5の実施形態の構成と比較して、バイパス流路6の循環ポンプ7を迂回する第3バイパス流路37を設け、この第3バイパス流路37に循環ポンプ7より揚程の大きい補助循環ポンプ38を設けた点が異なる。さらに、この第2バイパス流路32には、補助循環ポンプ33の下流に制御弁39を備えるとともに、バイパス流路6と第3バイパス流路37との上流側分岐に三方弁40を備える。補助循環ポンプ38、制御弁39及び三方弁40はコントローラ20により制御される。
図24は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS101において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。トリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定できる。起動判定のトリガーがオンであればステップS102に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS102においてパージ弁8が閉じ、続くステップS103にてコンプレッサ10を起動する。コンプレッサ10は、前述のアイドル状態相当の回転数に制御される。
次に、ステップS104で第3バイパス流路37に設置した制御弁39を開くとともに、第3バイパス流路37にガスが流通するように三方弁40を制御する。続くステップS105では補助循環ポンプ38を起動する。ここで、補助循環ポンプ38の回転数の変化率(増加率)は、制御可能な略最大変化率で制御する。また、補助循環ポンプ37の回転数も、第7の実施形態と同様に、制御の安定性に欠けるが、安定した制御が可能な回転数より回転数の大きい所定の回転数になるように制御される。さらに前述の通り、補助循環ポンプの揚程能力は循環ポンプ7より大きいため、第5、6の実施形態より循環量が多くなる。
そして、ステップS106で、補助循環ポンプ37の回転数が制御可能な最大回転数を超え、所定の回転数に制御されたかどうかを判定する。制御されている場合にステップS107に進み、ステップS107では、水素供給制御弁5を開き、水素供給流路内の水素の圧力が昇圧してアノードへの水素供給を開始する。さらにステップS108で空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の空気圧力を昇圧させる。このとき、大気圧状態の水素及び空気を所定の圧力まで昇圧させる昇圧時間が最短時間となるように制御される。
続くステップS109では、図示しない電力を消費する外部負荷を固定抵抗と同様の電荷消費手段として利用し、燃料電池1で発生した起電力に応じて流れる電流を取り出す。つまり、外部負荷で取り出したい電力を規定するのではなく、固定抵抗のように燃料電池1の起電力に応じて流れる電流が変化する。
そしてS110に移行し、濃度センサー31で検知する酸素濃度が所定濃度(例えば、6%)以下になったかどうかを判定し、所定濃度以下となったらS111で燃料電池1よりアイドル状態相当の負荷電流を取り出す。
ここでは、パワーマネージャ13を燃料電池1の通常運転時に対応する負荷電流(出力)取り出しモードにて作動させる。S110ではアノード及びカソードにそれぞれ水素と空気が供給されているため、電荷消費機能を使用する際は酸素濃度にて判定することが望ましい。また所定濃度の決め方は、第5の実施形態で説明した通りである。続いてS112にて補助循環ポンプ37を停止し、S113にて制御弁39を閉じ、三方弁40を切り換えてガスをバイパス流路6に流通させるように制御する。最後にS114にて水素循環ポンプ7をアイドル状態相当の回転数で稼働開始し、起動時制御を終了し、通常制御に移行する。
したがって、本実施形態では、第6の実施形態の効果に加えて、起動用の補助循環ポンプ38の揚程能力(=循環力)が通常運転時に使用する循環ポンプ7の揚程能力に比べて大きいため、起動時の循環量を一時的に増加させることが可能になる。従って、アノードでの燃焼反応により短時間で速やかに残存酸素が消費されるため、(3)式に示されるようなカソードの酸化劣化を最小限に抑制することができる。
更に、水素導入後、アノード近傍及び水素供給経路内部の酸素濃度が0に近づいた時点で、カソードの酸化劣化反応は抑えられるため、劣化の観点からは循環量を低減させることができる。
加えて、電荷消費手段を利用することで(3)式の反応を抑制でき、起動時のカソードにおける酸化劣化を著しく低減することができる。
図25は、第9の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図13に示す第5の実施形態の構成と比較して、酸素濃度センサ31に代えて水素供給流路2a内の酸素を除去する燃焼触媒41、気液分離器42を設置した構成としたことが異なる。
図26は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路6に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS121において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。トリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定できる。起動判定のトリガーがオンであればステップS122に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS122においてパージ弁8が閉じ、続くステップS123にてコンプレッサ10を起動する。コンプレッサ10は、前述のアイドル状態の負荷電流相当の回転数に制御される。
次に、ステップS124で循環ポンプ7を起動する。ここで、循環ポンプ7の回転数は、安定して制御可能な範囲の最大回転数に制御する。ステップS125で循環ポンプ7の回転数を検出して、最大回転数に安定的に収束したかどうかを判定する。収束した場合にはステップS126に進み、収束していない場合には収束するまで判定を繰り返す。ステップS126では空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の昇圧を開始する。続いてステップS127で水素供給制御弁5が開かれ、燃料電池1のアノードへの水素供給が開始される。
次に、ステップS128で水素供給開始後の経過時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。ここで所定時間は、アノードへ水素が行き渡ったと予想される時間に設定する。所定時間が経過した時に、S129に進み、燃料電池1より電流の取り出しを開始する。ここでは、アイドル状態相当の微小な負荷電流の取り出しを行う。
続いてS130において、ステップS127での水素供給開始からの経過時間がアノード内に残存した酸素が燃焼触媒41で消費されるのにかかる所定時間を越えたかどうかを判定する。ここで、アノード内残存した酸素の濃度が所定濃度、例えば6%以下になる時間を所定時間とする。経過時間が所定時間を超えた場合にはステップS131に進み、循環ポンプ7の回転数を前述のアイドル状態相当の回転数まで低下させて制御を終了する。
以上の構成を備えた本実施形態では第5の実施形態の効果に加え、以下の効果を奏する。
即ち、燃料電池1の水素入口で水素供給流路2aとバイパス流路6との分岐の下流部に、燃焼触媒(酸素濃度低減手段)41を設けることにより、循環ポンプ7が稼動を始めてすぐに酸素を含む排アノードガスを導入する場合(最初の循環サイクル時)、水素供給流路2a、ガス放出流路2b及びバイパス流路6からなる循環流路系に残存する酸素の濃度が燃焼触媒41により低減される。このため燃料電池1に供給される排アノードガス中の酸素濃度が低くなる。従って、第1の実施形態のアノードでの燃焼反応により残存酸素が消費される時間が短くなるため、カソードの酸化劣化がさらに抑制される。
また、水素などの燃料を燃焼させる触媒燃焼41を設けることで、水素と酸素の燃焼反応が、アノードではなく主に燃焼触媒41で行われる。従って、更に短時間で速やかに酸素濃度を低減できる。
また、バイパス流路6に残存する水分が、排アノードガスと共に燃料電池1のアノードに供給されると、アノードの水分が電解質膜を介してカソードに行き渡りカソード近傍の水分が増す。従って、(3)式に示すようなカソードの酸化劣化を促進する反応が進むことになる。従って、アノードに導かれる水分を予め気液分離器42で除去することにより、カソードの酸化劣化を抑制することができる。また、バイパス流路6に残存する水分を予め除去することで、燃料電池1における各単セルへの燃料配流を向上させることができる。
また、燃焼触媒41では燃焼反応により水が発生するため、燃焼触媒41を気液分離器42の内部またはその上流部に設けることにより、燃焼触媒41において発生した水分を気液分離器42で効果的に除去することができる。
図27は、第10の実施形態の構成図である。
本実施形態は、図13に示す第5の実施形態の構成と比較して、酸素濃度センサ31と燃料電池1との間に第1酸素吸着材51と第1気液分離器52と設置し、さらにバイパス流路6の循環ポンプ7上流にも第2酸素吸着材53と第2気液分離器54を設置した構成とした点が異なる。
図28は、コントローラ20が実施する本実施形態の燃料電池システム起動時の制御内容を説明するフローチャートである。この起動時制御は、アノード1a内、水素供給流路2a内及びバイパス流路6に酸化剤ガス(空気)が存在する無負荷状態からの起動時に実施される制御である。
なお、燃料電池1起動時にアノード1a内に存在する酸化剤ガスは、燃料電池の停止中に外部から進入してきた空気や、カソード1bから電解質膜を介してアノード1aにクロスリークしてきた空気等である。
また、本実施形態の起動時制御を開始する前(つまり、燃料電池システム停止中)の状態は、全ての構成が停止した状態である。また、パージ弁8は開、水素供給制御弁5は閉、空気調圧弁9は開の状態として、以下説明する。
まず、ステップS141において、燃料電池システムの起動を判定するトリガーがオンかどうかを判定する。起動判定のトリガーとしては、例えばメインスイッチ15がオン状態であることが想定できる。トリガーがオンであればステップS142に進み、オフであれば制御を終了する。ステップS142においてパージ弁8が閉じ、続くステップS143にてコンプレッサ10を起動する。コンプレッサ10は、前述のアイドル状態相当の回転数に制御される。
次に、ステップS144で循環ポンプ7を起動する。ここで、循環ポンプ7の回転数は、安定して制御可能な範囲の最大回転数に制御する。ステップS145で循環ポンプ7の回転数を検出して、最大回転数に安定的に収束したかどうかを判定する。収束した場合にはステップS146に進み、収束していない場合には収束するまで判定を繰り返す。ステップS146では空気調圧弁9の開度を絞り、カソード内の昇圧を開始する。続いてステップS147で水素供給制御弁5が開かれ、燃料電池1のアノードへの水素供給が開始される。
次に、ステップS148で水素供給開始後の経過時間が所定時間を経過したかどうかを判定する。ここで所定時間は、アノードへ水素が行き渡ったと予想される時間に設定する。所定時間が経過した時に、S149に進み、ステップS149では、図示しない電力を消費する外部負荷を固定抵抗と同様の電荷消費機能として利用し、燃料電池1で発生した起電力に応じて流れる電流を取り出す。つまり、外部負荷で取り出したい電力を規定するのではなく、固定抵抗のように燃料電池1の起電力に応じて流れる電流が変化する。続くS150に移行し、濃度センサー31で検知する酸素濃度が所定濃度(例えば、6%)以下になったかどうかを判定し、所定濃度以下となったらS151で燃料電池1よりアイドル状態相当の負荷電流を取り出す。ここでは、パワーマネージャ13を通常運転時制御に対応する負荷電流(出力)取り出しモードにて作動させる。S150ではアノード及びカソードにそれぞれ水素と空気が供給されているため、電荷消費機能を使用する際は酸素濃度にて判定することが望ましい。また所定濃度の決め方は、第5の実施形態で説明した通りである。
ステップS151では、燃料電池1より電流の取り出しを開始する。ここでは、アイドル状態相当の微小な負荷電流の取り出しを行い、ステップS152で、循環ポンプ7の回転数を前述のアイドル状態相当まで低下させて制御を終了する。
本実施形態では、第5の実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏することができる。
即ち、水素や残存酸素等が循環する循環流路系に、酸素吸着材(酸素濃度低減手段)51、53を設けることにより、循環流路系を流れるガス中の酸素濃度が低くなるためアノードに導入される酸素濃度が低くなる。従って、アノードでの燃焼反応により残存酸素が消費される時間が短くなるため、(3)式に示されるようなカソードの酸化劣化が著しく抑制される。また、第9の実施形態の燃焼触媒に比べて、触媒金属溶出によるドレン水中のカチオン濃度(コンタミ濃度)上昇に伴う燃料電池システム性能劣化の加速を抑制できる。
また、燃料電池1の入口で水素供給流路2aとバイパス流路6との分岐の下流部(燃料電池1側)に、第1酸素吸着材(酸素濃度低減手段)51を設けることにより、循環ポンプ7が稼動を始めてすぐに水素を導入する場合(最初の循環サイクル時)、循環流路系に残存する酸素と導入される水素が燃料電池1のアノードに導入される前に酸素濃度が低くなる。従って、アノードでの燃焼反応により残存酸素が消費される時間が短くなるため、カソードの酸化劣化がさらに抑制される。
また、水素や残存酸素等が循環する循環流路系に第1、第2気液分離器52、54を設けることで、燃料電池1のアノードに供給される水分が低減される。従って、水分によって影響を受けやすい循環ポンプ7の性能低下を抑制することができる。ここでは第9の実施形態に比べ、循環ポンプ7の直上流に第2気液分離器54を設け、水分を十分に除去することができる。また循環ポンプ7の直上流に第2酸素吸着材53を設け、酸素を十分に除去することができる。
図29に、循環ポンプ7の直上流に第2気液分離器54を設けた場合と設けない場合について、循環ポンプ7を流れる制御電流値の時系列変化を示す。第2気液分離器54がない場合に比べて、ある場合の方が、より目標制御電流に近い状態で精度良く制御されていることがわかる。これは水分量の違いと考えられ、第2気液分離器54がない場合、水分が循環ポンプ7に混入するために過渡電流値が大きくなることがわかる。
更に、循環流路系に残存する水分が、水素と共に燃料電池1のアノードに供給されると、アノードの水分が電解質膜を介してカソードに行き渡りカソード近傍の水分が増す。従って、カソードの酸化劣化を促進する反応が進む(例えば(3)式)。従って、アノードに導かれる水分を予め第1気液分離器52で除去することにより、上記の酸化劣化を抑制することができる。また、循環流路系に残存する水分を予め除去することで、燃料電池1における各単セルへの燃料配流を向上させることができる。
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内でさまざまな変更がなしうることは明白である。
本発明は、外部からの水素を燃料電池のアノードの供給する水素供給流路と、この水素供給流路途中に接続し、前記アノードから排出される排アノードガスをアノードに循環するバイパス流路を備えた燃料電池システムにおいて、少なくとも前記バイパス流路に配置された循環ポンプを備え、前記アノードに供給される前記水素と排アノードガスとからなる混合ガスのガス組成を制御するガス組成制御手段と、排アノードガスの外部への排出を制御するガス排出制御手段と、前記ガス組成制御手段と前記ガス排出制御手段を制御するコントローラを備え、前記アノード内に酸化剤ガスが存在する起動時に、前記コントローラは、前記ガス排出制御弁を閉じ、前記ガス組成制御手段の循環ポンプを制御可能な最大回転数にして前記排アノードガスを前記バイパス流路を通じて前記アノードに循環させ、前記混合ガスを構成するガスの濃度が所定濃度となるように制御する。