JP2012050287A - 回転機の製造方法および回転機 - Google Patents

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Abstract

【課題】回転機においてコアの強度を確保しつつ,漏れ磁束が回転機の特性に与える影響を低減させる。
【解決手段】回転子コア2に使用される電磁鋼板30をプレス成形工程で打ち抜く際に、プレス金型における、永久磁石挿入用スロット12を打ち抜く部位のうち、クリアランス調整部20B,20Cのクリアランスを、クリアランス調整部20B,20C以外の部分のクリアランスよりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板10におけるブリッジ部14a,14b,14cの透磁率を選択的に低減させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば埋込磁石型永久磁石式電動機,リラクタンス型電動機電動機などの回転機の製造方法、およびこの製造方法により製造される回転機に関するものである。
(イ)電動機や発電機など回転機では、固定子や回転子のコア(鉄心)にそのコア自体とだけ鎖交する磁束として漏れ磁束が発生する。この漏れ磁束による漏れインダクタンスは、例えば交流機の場合にはリアクタンスとして電圧降下をもたらすことなど、回転機の特性に悪影響を及ぼす。そして、このような漏れ磁束による回転機の特性への影響を考慮し、例えば回転機の固定子や回転子における漏れ磁束が発生する部分のコアの肉厚を減らすことなど、漏れ磁束が回転機に与える影響を軽減するための対策が従来より行なわれている。以下では、従来より行われている回転機の特性改善対策の例として埋込磁石型永久磁石式電動機およびリラクタンス型電動機の場合について説明する。
(ロ)埋込磁石型永久磁石式電動機は、回転子内部に永久磁石を備え、永久磁石から発生する磁束が固定子に備える巻線との鎖交磁束量に応じて発生するマグネットトルクに加えて、回転子コアの磁気抵抗によるリラクタンストルクも利用した電動機であり、小型高出力の電動機として広く用いられている。また、埋込磁石型永久磁石式電動機は、永久磁石を回転子内部に埋め込む構成であるため、高速回転時の遠心力による磁石割れ時の磁石飛散を防止することができる。
このような埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる対策として例えば次のような対策が考えられる
(a)まず、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第1の対策としては、回転子内部に埋め込む永久磁石の量を増加してマグネットトルクを増大させることが考えられる。
(b)また、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第2の対策として、以下のような対策が考えられている。すなわち、回転子コアはプレス機による打ち抜きで成形された電磁鋼板を積層して作製されるが、電磁鋼板を打ち抜くと、図11に示すように、電磁鋼板における「(打ち抜きによる)剪断箇所から離れた部分」と比べて「(打ち抜きによる)剪断箇所の近傍部分」では磁化の立ち上がりが鈍くなり、透磁率が低下してしまう(非特許文献1〜2参照)。このような打ち抜きによる電磁鋼板の透磁率の低下は電動機のトルク特性を低下させてしまうことが多いため、打ち抜きによる劣化の程度が少ない高張力の電磁鋼板が開発され、電動機に使用されている。
(c)さらに、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第3の対策として、以下のような対策が考えられている。
すなわち、埋込磁石型永久磁石式電動機においては、回転子にブリッジが存在することにより、例えば図12に示すようにトルクに寄与しない磁気回路が存在する。
図12は、従来技術による埋込磁石型永久磁石式電動機の回転子の構成例を示す図であって、回転子の平面図を示すものである。図12において、中心部に回転子軸用穴11を備えた回転子1を構成する回転子コア2には、永久磁石挿入用スロット12が1磁極当たり複数形成されるとともに各永久磁石挿入用スロット12に永久磁石13がそれぞれ挿入され、隣接する永久磁石挿入用スロット12の端部同士の間にはブリッジ部14a,14bが形成されているとともに、各永久磁石挿入用スロット12の両端部のうち,より外径側に位置する端部と回転子コア2の外周との間にはブリッジ部14cが形成されている。ここで、隣接する永久磁石挿入用スロット12の端部同士の間に形成されるブリッジ部については、より内径側に位置するブリッジ部をブリッジ部14aとし、より外径側に位置するブリッジ部をブリッジ部14bとしている。また、各永久磁石13には、その極性を示す「N」または「S」の符号を付記している。また、回転子コア2は、複数の回転子コア用電磁鋼板10を厚さ方向(回転子軸方向)に積層して構成されたものである。
回転子コア2の、各永久磁石挿入用スロット12における永久磁石13の磁極方向に対して垂直な方向での両端部の近傍部分、すなわち、ブリッジ部14a,14b,14cおよびこれらの各近傍部には、回転子コア2の漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域が形成されており、図12において楕円状の矢印線で示す不要な磁気回路40a,40b,40cが構成されている。なお、図12において、ブリッジ部14bでは、隣接する各永久磁石挿入用スロット12に挿入された各永久磁石13同士の極性の関係で各永久磁石13からの磁束同士が一部打消し合う状態で漏れ磁束が発生する。
この磁気回路40a,40b,40cを流れる磁束は固定子(ステータ)に鎖交しないため、漏れ磁束となる。ここで、この磁気回路40a,40b,40cを断ち切ることができれば、永久磁石13から発生する磁束をより多く固定子に流すことができ、トルクを増大させることができる。
そして、この点に関する対策として、例えば隣接する永久磁石挿入用スロットの端部同士を共通化するとともに、この共通化した部分に非磁性の充填剤を充填して機械的に補強した構成とすることにより、隣接する永久磁石挿入用スロット同士の間のブリッジ部をなくし、上記のようなトルクに寄与しない不要な磁気回路を断ち切るようにすることが提案されている(特許文献1参照)。
(ハ)次に、リラクタンス型電動機は、回転子内部にフラックスバリアを備え、回転子コアの磁気抵抗によるリラクタンストルクを利用した電動機である。このようなリラクタンス型電動機においても、そのトルクを増大させる上で、上述の埋込磁石型永久磁石式電動機と同様な漏れ磁束の問題が有る。
例えば図13に示されるようなリラクタンス型電動機が知られている(特許文献2参照)。図13は、従来技術によるリラクタンス型電動機の回転子の構成例を示す図であって、回転子の平面図を部分的に示すものである。図13において、中心部に回転子軸用穴111を備えた回転子101を構成する回転子コア102には、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eが1磁極当たり複数層に間隔をおいて配置されるとともに回転子コアの中心方向に凸型をなすように形成され、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eの両端部と回転子コア102の外周との間にはブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eが形成されている。そして、さらに、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112e内には、回転遠心力による半径方向の膨張を拘束するために、半径方向に一列に補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dが形成されている。ここで、回転子コア102は、複数の回転子コア用電磁鋼板110を厚さ方向(回転子軸方向)に積層して構成されたものである。
図13に示されるようなリラクタンス型電動機において、回転子コア102の、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eの両端部の近傍部分、すなわち、ブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eおよびこれらの各近傍部に、回転子コア102の漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域が形成されるとともに、さらには、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dおよびこれらの各近傍部にも漏れ磁束発生領域が形成されており、これらのブリッジ部、さらには補助ブリッジ部に流れる漏れ磁束により、電動機特性が低下することは、ブリッジ漏れ磁束問題として以前から知られている。
そして、リラクタンス型電動機における上記のようなブリッジ漏れ磁束問題の対策としては、例えば、電磁鋼板を厚さ方向に積層してなる回転子コアにおけるブリッジ部を塑性変形加工によりブリッジ部以外の部分の主面よりも陥没させることにより、このブリッジ部を通過することによりトルク発生に寄与しない漏れ磁束を低減させることが提案されている(特許文献3参照)。
P. Baudouin et.al. "The effect of the guillotine clearance on the magnetic properties of electrical steels" Journal of Magnetism and Magnetic Materials 256 (2003) 32-40 柏原義之他、「電磁鋼板の打抜きによる磁気特性劣化量に及ぼす打抜き条件の影響の解析」、電気学会マグネティクス研究会資料、MAG-08-74(2008)
特開平10−136594号公報 特開2001−258222号公報 特開2006−325297号公報
(イ)埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる対策は上述のようにいくつか提案されている。
しかしながら、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第1の対策においては、磁石量の増加により電動機の製造コストが大幅に増加するといった問題が生ずる。
また、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第2の対策においては、高張力の電磁鋼板を使用することにより製造コストが高くなる、という問題が有る。
さらに、埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させる第3の対策においては、上記のように回転子コアを2種類以上の部材(すなわち電磁鋼板および非磁性の充填剤)から構成した場合、回転子コアの強度が低下して破損する可能性が高くなってしまう、という問題が有るとともに、製造工程が増えることにより製造コストが増加してしまう、といい問題も有る。
(ロ)また、リラクタンス型電動機においても、ブリッジ漏れ磁束問題を解決してリラクタンス型電動機のトルクを増大される対策が上述のように提案されている。
しかしながら、リラクタンス型電動機のトルクを増大させる上述の対策においては、電磁鋼板を厚さ方向に積層してなる回転子コアにおけるブリッジ部を塑性変形加工によりブリッジ部以外の部分の主面よりも陥没させる構成であることから、電磁鋼板に対するプレス成形の工程として打ち抜き加工と陥没加工との2つの工程が必要となり、製造コストが増加してしまう、という問題が有る。
(ハ)埋込磁石型永久磁石式電動機やリラクタンス型電動機のトルクを増大させる対策を実施する上での上述のような問題点を考慮すると、コア(鉄心)の強度を確保できるともに製造コストの点でも問題のない漏れ磁束低減対策を提供することが重要と考えられる。なお、このような漏れ磁束低減対策に関する課題は、上述の埋込磁石型永久磁石式電動機やリラクタンス型電動機だけでなく、回転機全般に共通するものである。
(ニ)本発明は、上記課題を解決して、回転機においてコアの強度を確保しつつ,漏れ磁束が回転機の特性に与える影響を低減させることができるようにすること、さらには、埋込磁石型永久磁石式電動機およびリラクタンス型電動機について製造コストと回転子の強度を保ったままトルクを増大させることができるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、回転機の製造方法の構成として、固定子および回転子の少なくとも一方のコアが、その少なくとも一部分が電磁鋼板を積層して構成されるコアである回転機の製造方法において、前記電磁鋼板をプレス成形する際に、プレス金型における、前記コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、前記コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,クリアランス調整部とし、このクリアランス調整部のクリアランスを、前記クリアランス調整部以外の部分のクリアランスよりも大きくする構成とする(請求項1の発明)。
上記請求項1の発明は、漏れ磁束発生領域の透磁率のみを選択的に低減するために、プレス金型による電磁鋼板の打ち抜きにおいてクリアランス長を増加させると打ち抜きによる剪断箇所の近傍部分では透磁率がより低下する、という透磁率のクリアランス長依存性を利用するようにしたものである。すなわち、上記請求項1の発明によれば、固定子および回転子の少なくとも一方のコアに用いる電磁鋼板をプレス成形する際に、プレス金型における、コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,クリアランス調整部とし、クリアランス調整部のクリアランスを、クリアランス調整部以外の部分のクリアランスよりも大きくすることにより、プレス成形された電磁鋼板における漏れ磁束発生領域の少なくとも一部の透磁率を選択的に低減させる。これにより、上記請求項1の発明では、固定子および回転子の少なくとも一方のコアにおける漏れ磁束の量を減らして、漏れ磁束が回転機の特性に与える影響を低減させることができる。
また、上記請求項1の発明によれば、漏れ磁束の量を減らすためにコアにおける漏れ磁束発生領域の(電磁鋼板の厚さ方向での)肉厚や(電磁鋼板の面方向での)幅を低減する必要がないので、コアの機械的強度を確保することができる。
また、上記請求項1の発明によれば、漏れ磁束発生領域に対応してクリアランスを調整したプレス金型を用いることになるが、電磁鋼板に対するプレス成形の工程は従来と同様に打ち抜き工程だけであるので、製造工程が増えることはなく、製造コストの点でも問題のない回転機の製造方法となる。
次に、本発明によれば、回転機の製造方法の構成として、固定子および回転子の少なくとも一方のコアが、その少なくとも一部分が電磁鋼板を積層して構成されるコアである回転機の製造方法において、前記電磁鋼板をプレス成形する際に、プレス金型における、前記コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、前記コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,潤滑剤塗布量調整部とし、この潤滑剤塗布量調整部への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、前記潤滑剤塗布量調整部以外の部分への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きくする構成とする(請求項2の発明)。
上記請求項2の発明は、漏れ磁束発生領域の透磁率のみを選択的に低減するために、プレス金型による電磁鋼板の打ち抜きにおいてプレス金型への単位面積あたりの潤滑剤塗布量を増加させると打ち抜きによる剪断箇所の近傍部分では透磁率がより低下する、という透磁率の潤滑剤塗布量依存性を利用するようにしたものである。すなわち、上記請求項2の発明によれば、固定子および回転子の少なくとも一方のコアに用いる電磁鋼板をプレス成形する際に、プレス金型における、前記コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、前記コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,潤滑剤塗布量調整部とし、潤滑剤塗布量調整部への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、潤滑剤塗布量調整部以外の部分への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きくすることにより、プレス成形された電磁鋼板における漏れ磁束発生領域の少なくとも一部の透磁率を選択的に低減させる。これにより、上記請求項2の発明では、上記請求項1の発明と同様に、固定子および回転子の少なくとも一方のコアにおける漏れ磁束の量を減らして、漏れ磁束が回転機の特性に与える影響を低減させることができる。
また、上記請求項2の発明によれば、上記請求項1の発明と同様に、漏れ磁束の量を減らすためにコアにおける漏れ磁束発生領域の(電磁鋼板の厚さ方向での)肉厚や(電磁鋼板の面方向での)幅を低減する必要がないので、コアの機械的強度を確保することができる。
また、上記請求項2の発明によれば、プレス成形の前処理において漏れ磁束発生領域に対応して単位面積当たりの潤滑剤塗布量を調整することになるが、電磁鋼板に対するプレス成形の工程は従来と同様に打ち抜き工程だけであるので、製造工程が増えることはなく、製造コストの点でも問題のない回転機の製造方法となる。
さらに、本発明によれば、回転機の構成として、固定子コアとコイルとを有する固定子と、電磁鋼板を積層して構成される回転子コアを有する回転子とを備えた回転機であって、上記請求項1または2に記載の回転機の製造方法により製造された構成とする(請求項3の発明)。
また、請求項3に記載の回転機において、前記回転機は、回転子コアに前記開口部よりなる永久磁石挿入用スロットが複数形成されるとともに各永久磁石挿入用スロットに永久磁石がそれぞれ挿入された埋込磁石型永久磁石式電動機である構成とすることができる(請求項4の発明)。
固定子コアとコイルとを有する固定子と、電磁鋼板を積層して構成される回転子コアを有する回転子とを備えた回転機であって、コアの軸方向に貫通した開口部よりなる永久磁石挿入用スロットが複数形成されるとともに各永久磁石挿入用スロットに永久磁石がそれぞれ挿入された埋込磁石型永久磁石式電動機である回転機において、本発明では、プレス成形された電磁鋼板における漏れ磁束発生領域の少なくとも一部の透磁率が選択的に低減されるので、上記漏れ磁束発生領域に構成されるトルクに寄与しない磁気回路に流れる磁束の量を減らして、回転子コアに埋め込まれた永久磁石から発生する磁束をより多く固定子に流すことができ、これにより埋込磁石型永久磁石式電動機である回転機のトルクをより増大させることができる。
また、請求項3に記載の回転機において、前記回転機は、回転子コアに前記開口部よりなるフラックスバリア用スリットが回転子コアの中心方向に凸型をなすように形成されたリラクタンス型電動機である構成とすることができる(請求項5の発明)。
固定子コアとコイルとを有する固定子と、電磁鋼板を積層して構成される回転子コアを有する回転子とを備える回転機であって、コアの軸方向に貫通した開口部よりなるフラックスバリア用スリットが回転子コアの中心方向に凸型をなすように形成されたリラクタンス型電動機である回転機において、本発明では、プレス成形された電磁鋼板における漏れ磁束発生領域の少なくとも一部の透磁率が選択的に低減されるので、上記漏れ磁束発生領域に構成されるトルクに寄与しない磁気回路に流れる磁束の量を減らして、リラクタンス型電動機である回転機のトルクをより増大させることができる。
本発明によれば、回転機においてコアの強度を確保しつつ,漏れ磁束が回転機の特性に与える影響を低減させることができるようになり、さらに、埋込磁石型永久磁石式電動機およびリラクタンス型電動機について製造コストと回転子の強度を保ったままトルクを増大させることができるようになる。
本発明の第1および第2の実施形態による回転機の製造方法の対象となる埋込磁石型永久磁石式電動機の回転子の構成例を示す図である。 図1の回転子における回転子コアを示す図である。 本発明の第1の実施形態におけるクリアランス調整部の例を示す図である。 電磁鋼板の打ち抜きの様子を示す図である。 打ち抜き加工された電磁鋼板における最大比透磁率のクリアランス長依存性を例示する図である。 本発明の第2の実施形態における潤滑剤塗布量調整部の例を示す図である。 本発明の第2の実施形態における潤滑剤塗布量調整部の異なる例を示す図である。 打ち抜き加工された電磁鋼板における最大比透磁率の潤滑剤塗布量依存性を例示する図である。 本発明の第3および第4の実施形態による回転機の製造方法の対象となるリラクタンス型電動機の回転子の構成例を示す図である。 実施例と比較例とにより作製した埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを比較して示す図である。 電磁鋼板をプレス機により打ち抜いた際の各部分の磁化曲線を例示する図である。 従来技術による埋込磁石型永久磁石式電動機の回転子の構成例を示す図である。 従来技術によるリラクタンス型電動機の回転子の構成例を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図1〜図10に示す実施例に基づいて説明する。同一の構成要素については、同一の符号を付け、重複する説明は省略する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。
[本発明の実施形態]
(第1の実施形態)
(a)対象となる回転機の構成:
本発明の第1の実施形態による回転機の製造方法は、埋込磁石型永久磁石式電動機を対象としたものであり、その回転子の構成例を図1に示す。図1において、中心部に回転子軸用穴11を備えた回転子1を構成する回転子コア2には、回転子コア2の軸方向に貫通した開口部である永久磁石挿入用スロット12が1磁極当たり複数形成されるとともに各永久磁石挿入用スロット12に永久磁石13がそれぞれ挿入され、隣接する永久磁石挿入用スロット12の端部同士の間にはブリッジ部14a,14bが形成されているとともに、各永久磁石挿入用スロット12の両端部のうち,より外径側に位置する端部と回転子コア2の外周との間にはブリッジ部14cが形成されている。ここで、隣接する永久磁石挿入用スロット12の端部同士の間に形成されるブリッジ部については、より内径側に位置するブリッジ部をブリッジ部14aとし、より外径側に位置するブリッジ部をブリッジ部14bとしている。
また、回転子コア2は、図2に示されるように、複数の回転子コア用電磁鋼板10を厚さ方向(回転子軸方向)に積層して構成されたものである。すなわち、図2は図1の回転子における回転子コアを示す図であり、図2(a)は回転子コア用電磁鋼板10の平面図を示し、図2(b)は複数の回転子コア用電磁鋼板10が積層されて回転子コア2を構成している様子を示している。
また、埋込磁石型永久磁石式電動機の全体構成としては、回転子1の外径側に、図示されない、固定子コアとコイルとを有する固定子が設けられる。なお、図1には、永久磁石挿入用スロット12が回転子コア2の中心部に向けて略V字形状をなすように配置された構成を示しているが、これは永久磁石挿入用スロットの配置構成の一例であり、本発明の対象となる埋込磁石型永久磁石式電動機における永久磁石挿入用スロットの配置構成は図1の構成に限定されるものではない。また、図1では、永久磁石挿入用スロット12が長方形状の開口部として図示されているが、本発明における永久磁石挿入用スロットの開口部形状は図1の構成に限定されるものではない。
そして、図1において、回転子コア2の、各永久磁石挿入用スロット12における永久磁石13の磁極方向に直交する方向での両端部の近傍部分、すなわち、ブリッジ部14a,14b,14cおよびこれらの各近傍部に、トルクに寄与しない不要な磁気回路を構成する漏れ磁束発生領域が形成されている。
(b)回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策:
上述の非特許文献1によれば、電磁鋼板に対する打ち抜き時のクリアランスを増加させると、打ち抜きによる剪断箇所の近傍部分での透磁率はより低下する。これは、クリアランスを増加させると、打ち抜き時に磁気特性が劣化する部分の領域(幅)が増加するとともに、劣化する部分における比透磁率の低下具合もより顕著になるためとされている。なお、上記のクリアランスとは図4におけるクリアランス33を指す。ここで、図4は電磁鋼板30の打ち抜きの様子を示す図であり、電磁鋼板30が、クリアランス33を設定したプレス機の下側のダイ31と上側のパンチ32とにより打ち抜き加工される途中の様子を模式的に示している。
例えば、打ち抜き速度100mm/secで板厚0.5mmの電磁鋼板を長さ180mm、幅15mmの試験片に打ち抜いた場合の直流BHカーブにおける最大比透磁率のクリアランス長依存性を図5に示す。このようにクリアランス長を増加させることで試験片全体において平均した最大比透磁率は大きく低下している。これは、上述のように、打ち抜き時に磁気特性が劣化する部分の領域(幅)が増加するとともに、劣化する部分における比透磁率の低下具合もより顕著になるためと考えることができる。
一方、上記のクリアランス長は、打ち抜き加工の条件(パラメータ)として、打ち抜く部位ごとに変化させることができる。このため、上述のような透磁率のクリアランス長依存性は電磁鋼板の透磁率を選択的に低減する際に利用することができる。
すなわち、回転子コア2に使用される電磁鋼板30をプレス成形工程で打ち抜く際に、プレス金型における、永久磁石挿入用スロット12を打ち抜く部位のうち、回転子コア2のブリッジ部14a,14b,14cおよびこれらの各近傍部に形成される漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,(図1において楕円状の破線で示される)クリアランス調整部20B,20Cとする。なお、図1において、クリアランス調整部20Bはブリッジ部14b,14cに対応して設定されるものであり、クリアランス調整部20Cはブリッジ部14aに対応して設定されるものである。
そして、クリアランス調整部20B,20Cのクリアランスを、クリアランス調整部20B,20C以外の部分のクリアランスよりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板10における漏れ磁束発生領域の透磁率を選択的に低減させることができ、これにより、漏れ磁束の量を低減して埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させることができる。
ここで、図1において楕円状の破線で示したクリアランス調整部20B,20Cのうち20Bについて更に説明する。図3は、本発明の第1の実施形態におけるクリアランス調整部の例を示す図であって、図4におけるプレス機の下側のダイ31と上側のパンチ32とを上方から見た位置関係を模式的に示す部分平面図であり、打ち抜き対象箇所としては図2(a)(回転子コア用電磁鋼板10の平面図)のA部に対応している。図3において、クリアランス調整部20Bにおけるダイ31とパンチ32との間のクリアランスは、クリアランス調整部20B以外の部分20Aにおけるクリアランス長33Aよりも小さいクリアランス長33Bに調整されている。
なお、図3においてクリアランス調整部20Bを示す破線枠は、クリアランス調整部20Bの設定範囲の例を模式的に示すものであり、図3は、永久磁石挿入用スロット12の長方形の開口形状において、永久磁石13の磁極方向に直交する方向での両端部となる短辺部のみをクリアランス調整部20Bとした構成例を示している。
しかしながら、本発明の第1の実施形態におけるクリアランス調整部20Bの設定範囲は、図3の構成例に限定されるものではなく、実際には、回転子コア用電磁鋼板に形成されるブリッジ部14b,14cの形状に応じて変わる漏れ磁束発生領域の範囲に合せて、漏れ磁束の量を効果的に低減することができるようなクリアランス調整部20Bが設定される。また、図3には図示されていないが、クリアランス調整部20Cもクリアランス調整部20Bと同様であり、回転子コア用電磁鋼板に形成されるブリッジ部14aの形状に応じて変わる漏れ磁束発生領域の範囲に合せて、漏れ磁束の量を効果的に低減することができるようなクリアランス調整部20Cが設定される。
そして、このような実施形態1の製造方法によれば、漏れ磁束の量を減らすために回転子コア2におけるブリッジ部14a,14b,14cの(電磁鋼板の厚さ方向での)肉厚や(電磁鋼板の面方向での)幅を低減する必要がないので、回転子コア2の機械的強度を確保することができる。
また、このような実施形態1の製造方法によれば、ブリッジ部14a,14b,14cに対応してクリアランスを調整したプレス金型を用いることになるが、電磁鋼板30に対するプレス成形の工程は従来と同様に打ち抜き工程だけであるので、製造工程が増えることはなく、製造コストの点でも問題がない。
板厚が0.5mmの無方向性電磁鋼板30を、プレス機により図1(および図2(a))に示すような形状に打ち抜く。この場合、無方向性電磁鋼板30が打ち抜き加工されてなる回転子コア用電磁鋼板10を積層して構成した回転子コア2には、ブリッジ部14a,14b,14cに対応して(図1において楕円状の矢印線で示される)不要な磁気回路40a,40b,40cが形成される。
このため、プレス金型における、永久磁石挿入用スロット12を打ち抜く部位のクリアランスのうち、(図1において楕円状の破線で示される)クリアランス調整部20B,20Cを打ち抜く部位のクリアランスを、クリアランス調整部20B,20C以外の部分を打ち抜く部位のクリアランスよりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板10におけるブリッジ部14a,14b,14cの透磁率を選択的に低減させることができる。
そして、具体的なクリアランス条件としては、プレス金型のクリアランスのうち、クリアランス調整部20B,20Cを打ち抜く部位のクリアランスを25μmとし、クリアランス調整部20B,20C以外の部分を打ち抜く部位のクリアランスを10μmとする。なお、クリアランス調整部20B(および20C)の設定範囲は図3に例示した範囲とする。
また、プレス金型における単位面積当たりの潤滑剤塗布量は全ての部位にわたって0.2g/m2とし、打ち抜き速度は100mm/secとする。
このような条件で打ち抜かれてなる回転子コア用電磁鋼板10を積層して回転子コア2を構成し、回転子軸用穴11に回転子軸を挿入し、さらには永久磁石挿入用スロット12に永久磁石13を挿入することで電動機の回転子1を作製する。このようにして作製された回転子を、固定子コアとコイルを有する固定子と組み合わせることで実施例1の埋込磁石型永久磁石式電動機を作製する。
(第2の実施形態)
(a)対象となる回転機の構成:
本発明の第2の実施形態による回転機の製造方法も、第1の実施形態と同様に、埋込磁石型永久磁石式電動機を対象としたものであり、その回転子の構成は上述の図1〜2で説明した構成と同様である。
(b)回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策:
上述の非特許文献2によれば、プレス金型に塗布する単位面積当たりの潤滑剤の塗布量を増やした場合にも、打ち抜きによる剪断箇所の近傍部分での透磁率はより低下する。これは単位面積当たりの潤滑剤の量を増やすことで摩擦力の減少による切断性能の低下が起き、打ち抜き時に磁気特性が劣化する部分の領域(幅)が増加するとともに、劣化する部分における比透磁率の低下具合もより顕著になるためとされている。
例えば、打ち抜き速度100mm/secで板厚0.5mmの電磁鋼板を長さ180mm、幅15mmの試験片に打ち抜いた場合の直流BHカーブにおける最大比透磁率の潤滑剤塗布量依存性を図7に示す。このように単位面積当たりの潤滑剤塗布量を増加させることで試験片全体において平均した最大比透磁率は大きく低下する。これも、上述のように、打ち抜き時に磁気特性が劣化する部分の領域(幅)が増加するとともに、劣化する部分における比透磁率の低下具合もより顕著になるためと考えることができる。
一方、上記の単位面積当たりの潤滑剤塗布量は、打ち抜き加工の条件(パラメータ)として、打ち抜く部位ごとに変化させることができる。このため、上述のような透磁率の潤滑剤塗布量依存性は電磁鋼板の透磁率を選択的に低減する際に利用することができる。
すなわち、回転子コア2に使用される電磁鋼板30をプレス成形工程で打ち抜く際に、プレス金型における、永久磁石挿入用スロット12を打ち抜く部位のうち、回転子コア2のブリッジ部14a,14b,14cおよびこれらの各近傍部に形成される漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,(図1において楕円状の破線で示される)潤滑剤塗布量調整部21B,21Cとする。なお、図1において、潤滑剤塗布量調整部21Bはブリッジ部14b,14cに対応して設定されるものであり、潤滑剤塗布量調整部21Cはブリッジ部14aに対応して設定されるものである。
そして、潤滑剤塗布量調整部21B,21Cへの単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、潤滑剤塗布量調整部21B,21C以外の部分への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板10における漏れ磁束発生領域の透磁率を選択的に低減させることができ、これにより、漏れ磁束の量を低減して埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを増大させることができる。
ここで、図1において楕円状の破線で示した潤滑剤塗布量調整部21B,21Cのうち21Bについて更に説明する。図6は、本発明の第2の実施形態における潤滑剤塗布量調整部の例を示す図であって、図4におけるプレス機の下側のダイ31と上側のパンチ32とを上方から見た位置関係を模式的に示す部分平面図であり、打ち抜き対象箇所としては図2(a)(回転子コア用電磁鋼板10の平面図)のA部に対応している。図6において、潤滑剤塗布量調整部21Bにおける単位面積当たりの潤滑剤塗布量は、潤滑剤塗布量調整部21B以外の部分21Aにおける単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きい量に調整されている。
なお、図6において潤滑剤塗布量調整部21Bを示す破線枠は、潤滑剤塗布量調整部21Bの設定範囲の例を模式的に示すものであり、図6は、永久磁石挿入用スロット12の長方形の開口形状において、永久磁石13の磁極方向に直交する方向での両端部となる短辺部のみを潤滑剤塗布量調整部21Bとした構成例を示している。
しかしながら、本発明の第2の実施形態における潤滑剤塗布量調整部21Bの設定範囲は、図6の構成例に限定されるものではなく、実際には、回転子コア用電磁鋼板におけるブリッジ部14b,14cの形状に応じて変わる漏れ磁束発生領域の範囲に合せて、漏れ磁束の量を効果的に低減することができるような潤滑剤塗布量調整部20Bが設定される。この点に関し、図7は、本発明の第2の実施形態における潤滑剤塗布量調整部の異なる例を示すものであり、永久磁石挿入用スロット12の長方形の開口形状において、永久磁石13の磁極方向に直交する方向での両端部となる短辺部に加えて長辺部の一部領域も含めて潤滑剤塗布量調整部21Bとした構成例を示している。
また、図6,図7には図示されていないが、潤滑剤塗布量調整部21Cも潤滑剤塗布量調整部21Bと同様であり、回転子コア用電磁鋼板に形成されるブリッジ部14aの形状に応じて変わる漏れ磁束発生領域の範囲に合せて、漏れ磁束の量を効果的に低減することができるような潤滑剤塗布量調整部21Cが設定される。
そして、このような実施形態2の製造方法によれば、実施形態1と同様に、漏れ磁束の量を減らすために回転子コア10におけるブリッジ部14a,14b,14cの(電磁鋼板の厚さ方向での)肉厚や(電磁鋼板の面方向での)幅を低減する必要がないので、回転子コア2の機械的強度を確保することができる。
また、このような実施形態2の製造方法によれば、プレス成形の前処理においてブリッジ部14a,14b,14cに対応して単位面積当たりの潤滑剤塗布量を調整することになるが、電磁鋼板30に対するプレス成形の工程は従来と同様に打ち抜き工程だけであるので、製造工程が増えることはなく、製造コストの点でも問題がない。
板厚が0.5mmの無方向性電磁鋼板30を、プレス機により実施例1と同じく図1(および図2(a))に示すような形状に打ち抜く。この場合、実施例1と同様に、無方向性電磁鋼板30が打ち抜き加工されてなる回転子コア用電磁鋼板10を積層して構成した回転子コア2には、ブリッジ部14a,14b,14cに対応して(図1において楕円状の矢印線で示される)不要な磁気回路40a,40b,40cが形成される。
このため、プレス金型における、永久磁石挿入用スロット12を打ち抜く部位への単位面積当たりの潤滑剤塗布量のうち、(図1において楕円状の破線で示される)潤滑剤塗布量調整部21B,21Cを打ち抜く部位への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、潤滑剤塗布量調整部21B,21C以外の部分を打ち抜く部位への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも多くすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板10におけるブリッジ部14a,14b,14cの透磁率を選択的に低減させることができる。
そして、具体的な潤滑剤塗布量条件としては、プレス金型における、潤滑剤塗布量調整部21B,21Cを打ち抜く部位への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を5g/m2とし、潤滑剤塗布量調整部21B,21C以外の部分を打ち抜く部位への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を0.2g/m2とする。なお、潤滑剤塗布量調整部21B(および21C)の設定範囲は図6に例示した範囲とする。
また、プレス金型におけるクリアランスは全ての部位にわたって10μmとし、打ち抜き速度は100mm/secとする。
このような条件で打ち抜かれてなる回転子コア用電磁鋼板10を積層して回転子コア2を構成し、回転子軸用穴11に回転子軸を挿入し、さらには永久磁石挿入用スロット12に永久磁石13を挿入することで電動機の回転子1を作製する。このようにして作製された回転子を、固定子コアとコイルを有する固定子と組み合わせることで実施例2の埋込磁石型永久磁石式電動機を作製する。
(第3の実施形態)
(a)対象となる回転機の構成:
本発明の第3の実施形態による回転機の製造方法は、リラクタンス型電動機を対象としたものであり、その回転子の構成例を図8に示す。図8において、中心部に回転子軸用穴111を備えた回転子101を構成する回転子コア102には、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eが1磁極当たり複数層に間隔をおいて配置されるとともに回転子コアの中心方向に凸型をなすように形成され、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eの両端部と回転子コア102の外周との間にはブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eが形成されている。そして、さらに、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112e内には、回転遠心力による半径方向の膨張を拘束するために、半径方向に一列に補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dが形成されている。ここで、回転子コア102は、複数の回転子コア用電磁鋼板110を厚さ方向(回転子軸方向)に積層して構成されたものである。また、リラクタンス型電動機の全体構成としては、回転子101の外径側に、図示されない、固定子コアとコイルとを有する固定子が設けられる。なお、本発明の対象となるリラクタンス型電動機におけるフラックスバリア用スリットの配置構成および開口形状は図8の構成に限定されるものではない。
そして、図8において、回転子コア102のうち、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eの両端部の近傍部分、すなわち、ブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eおよびこれらの各近傍部に、トルクに寄与しない不要な磁気回路を構成する漏れ磁束発生領域が形成されるとともに、さらには、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dおよびこれらの各近傍部にも漏れ磁束発生領域が形成されている。
(b)回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策:
本発明の第3の実施形態による回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策の構成は、埋込磁石型永久磁石式電動機を対象として説明した第1の実施形態における漏れ磁束低減対策の構成と同様である。すなわち、ブリッジ部114a,114b,114c,114d,114e、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dの各近傍に位置する(図8において楕円状の破線で示される)クリアランス調整部120B,120Cが、図1におけるクリアランス調整部20B,20Cに相当する。
そして、第1の実施形態(実施例1)と同様に、回転子コア102に使用される電磁鋼板30をプレス成形工程で打ち抜く際に、プレス金型における、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eを打ち抜く部位のうち、回転子コア102のブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eおよびこれらの各近傍部、さらには、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dおよびこれらの各近傍部に形成される漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を、クリアランス調整部120B,120Cとする。
そして、クリアランス調整部120B,120Cのクリアランスを、クリアランス調整部120B,120C以外の部分のクリアランスよりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板110における漏れ磁束発生領域の透磁率を選択的に低減させることができ、これにより、漏れ磁束の量を低減してリラクタンス型電動機のトルクを増大させることができる。
(第4の実施形態)
(a)対象となる回転機の構成:
本発明の第4の実施形態による回転機の製造方法も、第3の実施形態と同様に、リラクタンス型電動機を対象としたものであり、その回転子の構成は上述の図8で説明した構成と同様である。
(b)回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策:
本発明の第4の実施形態による回転機の製造方法における漏れ磁束低減対策の構成は、埋込磁石型永久磁石式電動機を対象として説明した第2の実施形態における漏れ磁束低減対策の構成と同様である。すなわち、ブリッジ部114a,114b,114c,114d,114e、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dの各近傍に位置する(図8において楕円状の破線で示される)潤滑剤塗布量調整部121B,121Cが、図1における潤滑剤塗布量調整部21B,21Cに相当する。
そして、第2の実施形態(実施例2)と同様に、回転子コア102に使用される電磁鋼板30をプレス成形工程で打ち抜く際に、プレス金型における、フラックスバリア用スリット112a,112b,112c,112d,112eを打ち抜く部位のうち、回転子コア102のブリッジ部114a,114b,114c,114d,114eおよびこれらの各近傍部、さらには、補助ブリッジ部115a,115b,115c,115d,115dおよびこれらの各近傍部に形成される漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を、潤滑剤塗布量調整部121B,121Cとする。
そして、潤滑剤塗布量調整部121B,121Cへの単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、潤滑剤塗布量調整部121B,121C以外の部分への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きくすることにより、プレス成形された回転子コア用電磁鋼板110における漏れ磁束発生領域の透磁率を選択的に低減させることができ、これにより、漏れ磁束の量を低減してリラクタンス型電動機のトルクを増大させることができる。
[実施例と比較例との対比]
上記実施例1〜2の製造方法による埋込磁石型永久磁石式電動機の特性と対比するものとして、下記比較例の製造方法による埋込磁石型永久磁石式電動機を作製した。
(比較例)
板厚が0.5mmの無方向性電磁鋼板30を、プレス機により実施例1〜2と同じく図1(および図2(a))に示すような形状に打ち抜く。プレス金型における単位面積当たりの潤滑剤塗布量は全ての部位にわたって0.2g/m2とし、プレス金型におけるクリアランスは全ての部位にわたって10μmとする。また、打ち抜き速度は100mm/secとする。
このような条件で打ち抜かれてなる回転子コア用電磁鋼板10を積層して回転子コア2を構成し、回転子軸用穴11に回転子軸を挿入し、さらには永久磁石挿入用スロット12に永久磁石13を挿入することで電動機の回転子1を作製する。このようにして作製された回転子を、固定子コアとコイルを有する固定子と組み合わせることで比較例の埋込磁石型永久磁石式電動機を作製する。
(試験例)
上記実施例1〜2と比較例との各製造方法により作製した各埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクを比較した結果を図9に示す。図9には、本発明の実施例1および実施例2において作製された各埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクが、いずれも、比較例において作製された埋込磁石型永久磁石式電動機のトルクより大きいことが示されており、これにより、本発明によるトルク増大の効果を確認することができる。
[本発明の適用対象]
以上、本発明の製造方法を埋込磁石型永久磁石式電動機およびリラクタンス型電動機に適用した構成例を説明したが、本発明は、その適用対象が上記各電動機に限定されるものではなく、固定子および回転子の少なくとも一方のコアが、電磁鋼板を積層して構成されるコアであるような回転機全般に適用可能である。
また、回転機の固定子や回転子では、例えば電磁鋼板からなるティース部と軟磁性材からなるヨーク部とを組み合わせた固定子コアなど、電磁鋼板とその他の軟磁性材とを組み合わせて構成する場合があるが、その少なくとも一部分が電磁鋼板を積層して構成されるコアを用いた回転機であれば、本発明は適用可能である。
1:回転子
2:回転子コア
10:回転子コア用電磁鋼板
11:回転子軸用穴
12:永久磁石挿入用スロット
13:永久磁石
14a,14b,14c:ブリッジ部
20B,20C:クリアランス調整部
21B,21C:潤滑剤塗布量調整部
30:電磁鋼板
31:プレス機のダイ
32:プレス機のパンチ
33:クリアランス
40a,40b,40c:不要な磁気回路
101:回転子
102:回転子コア
110:回転子コア用電磁鋼板
111:回転子軸用穴
112a,112b,112c,112d,112e:フラックスバリア用スリット
114a,114b,114c,114d,114e:ブリッジ部
115a,115b,115c,115d,115d:補助ブリッジ部
120B,120C:クリアランス調整部
121B,121C:潤滑剤塗布量調整部

Claims (5)

  1. 固定子および回転子の少なくとも一方のコアが、その少なくとも一部分が電磁鋼板を積層して構成されるコアである回転機の製造方法において、
    前記電磁鋼板をプレス成形する際に、
    プレス金型における、前記コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、前記コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,クリアランス調整部とし、このクリアランス調整部のクリアランスを、前記クリアランス調整部以外の部分のクリアランスよりも大きくする
    ことを特徴とする回転機の製造方法。
  2. 固定子および回転子の少なくとも一方のコアが、その少なくとも一部分が電磁鋼板を積層して構成されるコアである回転機の製造方法において、
    前記電磁鋼板をプレス成形する際に、
    プレス金型における、前記コアの軸方向に貫通した開口部を打ち抜く部位のうち、前記コアの漏れ磁束が発生する漏れ磁束発生領域に含まれる部分の少なくとも一部を打ち抜く部位を,潤滑剤塗布量調整部とし、この潤滑剤塗布量調整部への単位面積当たりの潤滑剤塗布量を、前記潤滑剤塗布量調整部以外の部分への単位面積当たりの潤滑剤塗布量よりも大きくする
    ことを特徴とする回転機の製造方法。
  3. 固定子コアとコイルとを有する固定子と、電磁鋼板を積層して構成される回転子コアを有する回転子とを備えた回転機であって、
    請求項1または2に記載の回転機の製造方法により製造された
    ことを特徴とする回転機。
  4. 請求項3に記載の回転機において、
    前記回転機は、回転子コアに前記開口部よりなる永久磁石挿入用スロットが複数形成されるとともに各永久磁石挿入用スロットに永久磁石がそれぞれ挿入された埋込磁石型永久磁石式電動機である
    ことを特徴とする回転機。
  5. 請求項3に記載の回転機において、
    前記回転機は、回転子コアに前記開口部よりなるフラックスバリア用スリットが回転子コアの中心方向に凸型をなすように形成されたリラクタンス型電動機である
    ことを特徴とする回転機。
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