実施の形態1.
先ず、比較のために、一般的なリラクタンスモータ1000について、図1乃至図11を参照しながら説明する。
図1乃至図12は比較のために示す図で、図1は一般的なリラクタンスモータ1000の横断面図、図2は一般的なリラクタンスモータ1000の固定子1010の横断面図、図3は一般的なリラクタンスモータ1000の回転子1020の横断面図、図4は図3のA−A断面図、図5は一般的なリラクタンスモータ1000の回転子1020の横断面図、図6は図5のB−B断面図、図7は一般的なリラクタンスモータ1000の磁束線図(d軸磁束)、図8は図7の部分拡大図、図9は一般的なリラクタンスモータ1000の磁束線図(q軸磁束)、図10は図9の部分拡大図、図11は図9の部分拡大図、図12はq軸における磁束の漏れを示す図である。
図1に示す一般的なリラクタンスモータ1000は、円筒状の固定子1010と、この円筒状の固定子1010の内周部に設けられる回転子1020と、を備える。
固定子1010は、回転子に永久磁石を用いる永久磁石型モータもしくは誘導電動機の固定子と同様の構成である。図2に示すように、固定子1010は、円筒状の固定子鉄心1011と、この固定子鉄心1011のスロット1015に絶縁部材(図示せず)を介して挿入される巻線1013と、を備える。
固定子鉄心1011は、外周部が円筒状のコアバック1012で、このコアバック1012から内側にティース1014(歯部)が複数径方向に放射状に形成されている。図2の例は、スロット1015の数が24であり、ティース1014の数も、スロット1015の数と同じ24である。
巻線1013は、例えば、分布巻もしくは集中巻の三相の巻線(例えば、Y結線)である。
固定子1010の内周部に所定の空隙(径方向の寸法が略一定の空間)を介して、回転子1020が配置される。
図3乃至図10を参照しながら、回転子1020について説明する。回転磁界を発生する固定子1010の内周部に所定の空隙を介して配置される回転子1020は、所定の形状に打ち抜かれた電磁鋼板を所定枚数積層して構成される回転子鉄心1021と、この回転子鉄心1021の軸方向両端部に設けられる端板1025(例えば、図4、図6参照)と、回転子鉄心1021及び端板1025に嵌合する回転軸1024と、を備える。
回転子鉄心1021を構成する電磁鋼板には、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cが設けられる。この第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cは、回転軸1024が嵌合する軸孔に頂点を向け、一方のd軸から他方のd軸へ向かう円弧形状(逆円弧形状)で、回転子鉄心1021の外周方向に形成される。かつ、この第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cは、当該極数分(図3では4極)だけ回転子鉄心1021の外周に沿って周方向に所定の間隔で形成されている。
回転子鉄心1021を構成する電磁鋼板は、例えば、カシメ1023により積層される。さらに、カシメ1023により積層された回転子鉄心1021の軸方向両端部に、端板1025が固定される。
複数の第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cは、フラックスバリアとして機能する。そのため、固定子鉄心1011からのq(quadrature)軸磁束(一方のq軸から他方のq軸への磁束)を通りにくくし(q軸磁路が小さい)、一方、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022bの間の磁路は固定子鉄心1011からのd(direct)軸磁束(一方のd軸から他方のd軸への磁束)を通す(d軸磁路が大きい)。
上記のように構成されたリラクタンスモータ1000は、固定子1010の複数の界磁部より、固定子鉄心1011に回転磁界が与えられる。これにより、リラクタンストルクTが発生する。このリラクタンストルクTは次式で表される。
T=Pn(Ld−Lq)id×iq………………………(1)
ここで、Pnは極対数、Ldはd軸インダクタンス、Lqはq軸インダクタンス、idはd軸の電流、iqはq軸の電流である。
上記(1)式より、このモータ(リラクタンスモータ1000)の性能を左右するのは、d軸インダクタンスとq軸インダクタンスの差(Ld−Lq)の大きさであることが分かる。そこで、この差(Ld−Lq)を大きくするために、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022c(フラックスバリア)を設けることにより、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cを横切るq軸方向の磁路に抵抗を与える一方、第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022c間に挟まれたd軸方向の磁路を確保していた。
即ち、図7、図8に示すように、d軸磁束(図7の実線矢印)は、円弧状のスリット(図8の拡大図に示すように、ここでは、1極に6本のスリットが設けられる)の間の磁路を通る。
また、図9〜図11に示すように、q軸磁束(図9の実線矢印)は、円弧状のスリット(図10の拡大図に示すように、ここでは、1極に6本のスリットが設けられる)がフラックスバリアとして存在するため、通りにくい。q軸磁束は、d軸磁束よりも小さいため、図9の実線矢印は、図7の実線矢印よりも細い線で示している。
従って、d軸インダクタンスLdは、q軸インダクタンスLqよりも大きくなり、リラクタンスモータ1000は、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの差に比例したリラクタンストルクを発生する。
しかしながら、一般的なリラクタンスモータ1000では、円弧状のスリットによりフラックスバリアを設けても、回転子鉄心1021外周部とスリットとの間の鉄心部から磁束の漏れが発生するという課題がある。
図12に示すように、q軸において、主たるq軸磁束q1の他に、回転子鉄心1021外周部と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間の鉄心部から漏れる漏れ磁束q2が存在する。この漏れ磁束q2があるため、q軸インダクタンスを小さくするのには限界があった。
回転子鉄心1021外周部と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間の鉄心部の径方向寸法を小さくすれば、図12の漏れ磁束q2を減らすことができるが、以下に示す理由によりそれにも限界がある。
(1)回転子鉄心1021外周部と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間の鉄心部には、回転子1020が回転すると遠心力による応力が発生する。この遠心力による応力に耐えるようにするためには、回転子鉄心1021外周部と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間の鉄心部は所定の径方向寸法が必要となる。
(2)回転子鉄心1021を構成する電磁鋼板は、所定の形状に打ち抜かれる。このとき、回転子鉄心1021外周部と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間の鉄心部の径方向寸法は、電磁鋼板の板厚より小さくすることは難しい。電磁鋼板の板厚は、通常0.3〜0.7mm程度である。
そこで、本実施の形態では、回転子鉄心の中心を通るd軸上で回転子鉄心を分割して、d軸上には鉄心部がなく空間が形成される構成とする。そのように構成することにより、q軸における漏れ磁束q2を抑制する。回転子鉄心の中心を通るd軸上で回転子鉄心を分割するので、回転子鉄心の分割数は、磁極数と同じ数となる。さらに、回転子の分割鉄心には、一方のd軸から他方のd軸に沿って、複数の円弧形状のスリットが設けられる。それにより、q軸インダクタンスLqを小さくすることができる。以下、図面を参照しながら、本実施の形態のリラクタンスモータ100について、説明する。
図13乃至図67は実施の形態1を示す図で、図13はリラクタンスモータ100の横断面図、図14は図13のC−C断面図、図15はリラクタンスモータ100の固定子110の横断面図、図16はリラクタンスモータ100の固定子鉄心111の横断面図、図17は図16のスロット115付近の拡大図、図18はリラクタンスモータ100の回転子120の横断面図、図19は図18のD−D断面図、図20はリラクタンスモータ100の回転子120の横断面図、図21は図20のE−E断面図、図22は第1のコアシート121aの平面図、図23は第2のコアシート121bの平面図、図24は変形例1のリラクタンスモータ200の横断面図、図25は図24の部分拡大図、図26は変形例1のリラクタンスモータ200の回転子220の横断面図、図27は図26のF−F断面図、図28は変形例1の第1のコアシート221aの平面図、図29は変形例1の第2のコアシート221bの平面図、図30は変形例2のリラクタンスモータ300の横断面図、図31は図30の部分拡大図、図32は変形例2のリラクタンスモータ300の回転子320の横断面図、図33は図32のG−G断面図、図34は変形例2の第1のコアシート321aの平面図、図35は変形例2の第2のコアシート321bの平面図、図36は変形例3のリラクタンスモータ400の横断面図、図37は図36の部分拡大図、図38は変形例3のリラクタンスモータ400の回転子420の横断面図、図39は図38のH−H断面図、図40は変形例3の第1のコアシート421aの平面図、図41は変形例3の第2のコアシート321bの平面図、図42は変形例4のリラクタンスモータ1000の横断面図、図43は図42の部分拡大図、図44は変形例4のリラクタンスモータ1000の回転子1020の横断面図、図45は図44のI−I断面図、図46は変形例4の第1のコアシート521aの平面図、図47は変形例4の第2のコアシート521bの平面図、図48は変形例5のリラクタンスモータ600の横断面図、図49は図48の部分拡大図、図50は変形例5のリラクタンスモータ600の回転子620の横断面図、図51は図50のJ−J断面図、図52は変形例5の第1のコアシート621aの平面図、図53は図52の部分拡大図、図54は変形例5の第2のコアシート621bの平面図、図55は変形例6のリラクタンスモータ700の横断面図、図56は図55の部分拡大図、図57は変形例6のリラクタンスモータ700の回転子720の横断面図、図58は図57のK−K断面図、図59は変形例6の第1のコアシート721aの平面図、図60は変形例6の第2のコアシート621bの平面図、図61は補強部材727を挿入のイメージ図、図62は変形例7のリラクタンスモータ800の横断面図、図63は図62の部分拡大図、図64は変形例7のリラクタンスモータ800の回転子820の横断面図、図65は図64のL−L断面図、図66は変形例7の第1のコアシート821aの平面図、図67は変形例7の第2のコアシート821bの平面図である。
図13に示すように、リラクタンスモータ100(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子110と、この円筒状の固定子110の内周に、所定の径方向寸法の空隙116(図14参照)を介して配置される回転子120と、を備える。リラクタンスモータ100は、例えば、4極のモータである。但し、これは一例であって、リラクタンスモータ100の極数は、任意の極数でよい。
空隙116の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ100の固定子110は、図14、図15に示すように、固定子鉄心111と、図示しない絶縁部材を介して固定子鉄心111のスロット115(図15参照)に挿入される巻線113と、を備える。巻線113は、固定子鉄心111の両軸方向端面より軸方向に突出している。この巻線113の固定子鉄心111の両軸方向端面より軸方向に突出している部分を、コイルエンド113aと呼ぶ。
リラクタンスモータ100の固定子鉄心111は、図16に示すように、外周部が円筒状のコアバック112であり、このコアバック112の内側に複数のティース114が放射状に形成されている。そして、隣接するティース114の間の空間をスロット115と呼ぶ。図16に示す例では、24個のスロット115が、コアバック112の内側に周方向に略等間隔に形成される。スロット115の数は、24個に限定されるものではなく、任意でよい。ティース114は、周方向の長さ(幅)が略一定である。そのため、スロット115の周方向の長さ(幅)は、コアバック112側が回転子120側よりも長くなる形状である。
図17の拡大図に示すように、ティース114は、コアバック112から径方向に平行に回転子120側に伸びて形成される。ティース114の先端114aは、周方向の両端が、例えば傘状に周方向に突出している。スロット115は、コアバック112側から回転子120側に向かって、周方向の長さ(幅)が短くなるが、ティース114の先端114aが傘状に周方向に突出しているために、回転子120側の終端において、スロット115内部よりも狭くなっている。スロット115は内周部に開口しているが、この開口部を、例えば、スロット開口部117(スロットオープニング)と呼ぶ。このスロット開口部117から、巻線113が挿入される。
巻線113には、銅線に絶縁が施されたマグネットワイヤが用いられる。巻線113は、例えば、三相(U相、V相及びW相)の分布巻であるが、集中巻でもよい。
スロット115に設けられる絶縁部材(図示せず)には、スロットセルやウエッジが用いられる。
次に、本実施の形態の特徴部分である回転子120について説明する。図18〜図21に示すように、回転子120は、二種類のコアシート(第1のコアシート121a、第2のコアシート121b)を積層した回転子鉄心121と、回転子鉄心121の軸方向両端面に固定される端板125と、回転子鉄心121及び端板125の略中心部に嵌合する回転軸124と、を備える。
詳細は後述するが、第1のコアシート121aは、回転子鉄心121の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心121の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート121aで構成される回転子鉄心121の主たる鉄心部の軸方向両端部に、スリットのない第2のコアシート121bが設けられる。
第1のコアシート121aは、d軸上において分割されているので、例えば、d軸上のD−D断面には存在しない(図18、図19)。また、第1のコアシート121aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート121aは、q軸方向に複数の円弧状のスリットが形成されている(図20、図21)。
回転子鉄心121は、二種類のコアシート(第1のコアシート121a、第2のコアシート121b)を使用している。図22に示すように、第1のコアシート121aは、回転子鉄心121の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心121a−1からなる。
分割鉄心121a−1は、回転子鉄心121の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心121a−1の数は、極数に等しい。本実施の形態のリラクタンスモータ100は、4極であるから、回転子鉄心121は4個の分割鉄心121a−1で構成される。
図22において、仮想内周円は、回転軸124が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心121a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
第1のコアシート121a、第2のコアシート121bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ123で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心121a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心121の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)が形成されている。
分割鉄心121a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心121a−1は、それぞれ三箇所のカシメ123で固定されて積層される。カシメ123が一箇所だと位置決めが難しいので、カシメ123は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心121a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部122aと第2のスリット部122bとの間の鉄心部、第2のスリット部122bと第3のスリット部122cとの間の鉄心部、第3のスリット部122cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心121a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート121aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート121aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心121a−1のスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心121の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート121aの分割鉄心121a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図19、図21に示すように、回転子鉄心121は、第1のコアシート121aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート121bで挟持している。第1のコアシート121aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心111の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい(図14参照)。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート121bについて説明する。第2のコアシート121bは第1のコアシート121aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート121bは、図23に示すように、略中心部に軸孔126を有する円板である。第2のコアシート121bは、主に、分割された分割鉄心121a−1で構成される第1のコアシート121aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。カシメ123で積層した4個の分割鉄心121a−1は、ばらばらの状態であり、円板状の第2のコアシート121bにカシメ123で固定することにより、はじめて一体化される。但し、第2のコアシート121bは、円板状であるからq軸磁束を通す(q軸方向に磁路が構成され、q軸インダクタンスLqが大きくなる)。従って、第1のコアシート121aの4個の分割鉄心121a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート121bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心111の軸方向端面から外側に位置する方が好ましい(図14を参照)。
第2のコアシート121bには、第1のコアシート121aと連結するカシメ123が、q軸上に全部で12箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心121は、回転子鉄心121の両端を端板125で挟まれ、回転軸124に圧入、焼嵌等で固定される。
次に動作について説明する。上記のように構成された回転子120は、回転子鉄心121の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心121a−1に分割し、且つそれぞれの分割鉄心121a−1にq軸磁束を通りにくくするスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)を設けることで、d軸方向には磁束が通りやすく、q軸方向には磁束が通りにくくすることができる。
比較例の一般的な回転子1020では、回転子鉄心1021外周と第1のスリット部1022a、第2のスリット部1022b、第3のスリット部1022cとの間に鉄心部があるため、この外周鉄心部を通る漏れ磁束q2(図12)がありq軸インダクタンスLqの低減に限界があった。本実施の形態の回転子120は、隣接する分割鉄心121a−1の間のd軸上に鉄心部が存在しないため、回転子鉄心121外周とスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)との間をq軸磁束が流れる(漏れる)ようなことがなく、q軸インダクタンスを、一般的な回転子1020よりも小さくできる。
第2のコアシート121bには、q軸方向の磁路が形成されてしまうため、固定子110からの鎖交磁束が回転子鉄心121の第1のコアシート121aを主に流れるよう、回転子鉄心121の軸方向の長さ(コア幅)を固定子鉄心111の軸方向の長さ(コア幅)よりも大きく構成し、特に第1のコアシート121aが構成する鉄心部の軸方向の長さが、固定子鉄心111の軸方向の長さ(コア幅)よりも大きくなるように構成すると好ましい。また、第2のコアシート121bは、固定子鉄心111の軸方向端面よりも外側に位置するのが好ましい。そうすることで、第2のコアシート121bにq軸磁束が通りにくくなる。
以上のように、本実施の形態の回転子120は、回転子鉄心121を、第1のコアシート121aと第2のコアシート121bとで構成し、第1のコアシート121aは、d軸上で分割された4個の分割鉄心121a−1からなり、且つそれぞれの分割鉄心121a−1にq軸磁束を通りにくくするスリット(第1のスリット部122a、第2のスリット部122b、第3のスリット部122c)を設けるとともに、第1のコアシート121aを積層して構成される鉄心部の軸方向の長さを、固定子110の軸方向の長さ(コア幅)よりも長くすることにより、q軸磁束が第1のコアシート121aで構成される主たる鉄心部を通りにくくなり、q軸インダクタンスLqを小さくすることができる。特に、第1のコアシート121aで構成される鉄心部には、鉄心外周部がd軸上で分断されているため、一般的なリラクタンスモータ1000よりもd軸インダクタンスLdと、q軸インダクタンスLqとの差を大きくすることができ、少ない電流で大きなトルクを発生することができる。電流が小さいことで、巻線113で発生する銅損が低減し、且つ、巻線113の発熱を抑制し、高効率で信頼性の高いリラクタンスモータ100が得られる。
第1のコアシート121aは、d軸上で4個の分割鉄心121a−1に分割されていてばらばらであるが、軸方向両端の円板状の第2のコアシート121bに、4個の分割鉄心121a−1が、所定の個数のカシメ123(一つの分割鉄心121a−1に対して3個)により固定されるので、強度的にも優れた一体化された回転子鉄心121が得られる。
また、4個の分割鉄心121a−1に分割された第1のコアシート121aを、第2のコアシート121b上に位置決めを行いながら積層し、カシメ123により固定するため、プレスの歯を、第1のコアシート121aと第2のコアシート121bで切り替えるだけで、作業性良く容易に回転子鉄心121を構成することができる。
以上の説明では、回転子鉄心121が、第1のコアシート121aの軸方向両端に第2のコアシート121bを設ける例を説明したが、第1のコアシート121aの間にも第2のコアシート121bを設けるようにしてもよい。
次に、図24乃至図29を参照しながら、変形例1のリラクタンスモータ200について説明する。変形例1のリラクタンスモータ200は、回転子220の構成がリラクタンスモータ100と異なる。リラクタンスモータ100の回転子120は、第1のコアシート121aと第2のコアシート121bとをカシメ123により積層固定していたが、変形例1のリラクタンスモータ200の回転子220は、リベットを用いて第1のコアシート221aと第2のコアシート221bとを積層固定する。
図24に示すように、リラクタンスモータ200(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子210と、この円筒状の固定子210の内周に、所定の径方向寸法の空隙216(図25参照)を介して配置される回転子220と、を備える。リラクタンスモータ200は、例えば、4極のモータである。
空隙216の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ200の固定子210は、図14、図15に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図26に示すように、回転子220は、二種類のコアシート(第1のコアシート221a、第2のコアシート221b)を積層した回転子鉄心221と、回転子鉄心221の軸方向両端面に固定される端板225(図27参照)と、回転子鉄心221及び端板225の略中心部に嵌合する回転軸224と、を備える。
図26、図27に示すように、回転子220は、二種類のコアシート(第1のコアシート221a、第2のコアシート221b)を積層した回転子鉄心221と、回転子鉄心221の軸方向両端面に固定される端板225と、回転子鉄心221及び端板225の略中心部に嵌合する回転軸224と、を備える。
第1のコアシート221aは、回転子鉄心221の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心221の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート221aで構成される回転子鉄心221の主たる鉄心部の軸方向両端部に、スリットのない第2のコアシート121bが設けられる。
第1のコアシート221aは、d軸上において分割されているので、例えば、d軸上には鉄心部が存在しない(図26)。また、第1のコアシート221aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート221aは、q軸方向に複数の円弧状のスリットが形成されている(図28)。
回転子鉄心221は、二種類のコアシート(第1のコアシート221a、第2のコアシート221b)を使用している。図28に示すように、第1のコアシート221aは、回転子鉄心221の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心221a−1からなる。
分割鉄心221a−1は、回転子鉄心221の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心221a−1の数は、極数に等しい。リラクタンスモータ200は、4極であるから、回転子鉄心221は4個の分割鉄心221a−1で構成される。
図28において、仮想内周円は、回転軸224が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心221a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
第1のコアシート221a、第2のコアシート221bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き積層して、リベット孔223にリベット(図示せず)を通して固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心221a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心221の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)が形成されている。
分割鉄心221a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心221a−1は、それぞれ三箇所のリベット孔223にリベット(図示せず)を通して固定されて積層される。リベット孔223一箇所だと位置決めが難しいので、リベット孔223は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心221a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部222aと第2のスリット部222bとの間の鉄心部、第2のスリット部222bと第3のスリット部222cとの間の鉄心部、第3のスリット部222cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心221a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート221aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート221aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心221a−1のスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心221の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート221aの分割鉄心221a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部222a、第2のスリット部222b、第3のスリット部222c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図27に示すように、回転子鉄心221は、第1のコアシート221aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート221bで挟持している。第1のコアシート221aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心211の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート221bについて説明する。第2のコアシート221bは第1のコアシート221aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート221bは、図29に示すように、略中心部に軸孔226を有する円板である。第2のコアシート221bは、主に、分割された分割鉄心221a−1で構成される第1のコアシート221aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。4個の分割鉄心221a−1は、ばらばらの状態であり、円板状の第2のコアシート221bとともに、リベット孔223にリベット(図示せず)を通して固定することにより、はじめて一体化される。
第2のコアシート221bは、円板状であるからq軸磁束を通す(q軸方向に磁路が構成され、q軸インダクタンスLqが大きくなる)。従って、第1のコアシート221aの4個の分割鉄心221a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート221bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心211の軸方向端面から外側に位置する方が好ましい。
第2のコアシート221bには、第1のコアシート121aと連結するリベット孔223が、q軸方向に全部で12箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心221は、回転子鉄心221の両端を端板225で挟まれ、回転軸224に圧入、焼嵌等で固定される。
以上の説明では、回転子鉄心221が、第1のコアシート221aの軸方向両端に第2のコアシート221bを設ける例を説明したが、第1のコアシート221aの間にも第2のコアシート221bを設けるようにしてもよい。
次に、図30乃至図35を参照しながら、変形例2のリラクタンスモータ300について説明する。変形例2のリラクタンスモータ300は、回転子320の構成がリラクタンスモータ100と異なる。リラクタンスモータ100の回転子120は、第2のコアシート121bが、スリットのない円板で構成されていたが、変形例2のリラクタンスモータ300では、第2のコアシート321bにも、第1のコアシート321aに対応して、スリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が形成される。
図30に示すように、リラクタンスモータ300(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子310と、この円筒状の固定子310の内周に、所定の径方向寸法の空隙316(図31参照)を介して配置される回転子320と、を備える。リラクタンスモータ300は、例えば、4極のモータである。
空隙316の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ300の固定子310は、図14、図15に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図32、図33に示すように、回転子320は、二種類のコアシート(第1のコアシート321a、第2のコアシート321b)を積層した回転子鉄心321と、回転子鉄心321の軸方向両端面に固定される端板325と、回転子鉄心321及び端板325の略中心部に嵌合する回転軸324と、を備える。
第1のコアシート321aは、回転子鉄心321の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心321の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート321aで構成される回転子鉄心321の主たる鉄心部の軸方向両端部に、分割はされていないが、第1のコアシート321aに対応するスリットを有する第2のコアシート321bが設けられる。
第1のコアシート321aは、d軸上において分割されているので、例えば、d軸上に鉄心部は存在しない(図34)。また、第1のコアシート321aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート321aは、q軸方向に複数の円弧状のスリットが形成されている(図34)。
回転子鉄心321は、二種類のコアシート(第1のコアシート321a、第2のコアシート321b)を使用している。図34に示すように、第1のコアシート321aは、回転子鉄心321の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心321a−1からなる。
分割鉄心321a−1は、回転子鉄心321の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心321a−1の数は、極数に等しい。リラクタンスモータ300は、4極であるから、回転子鉄心321は4個の分割鉄心321a−1で構成される。
図34において、仮想内周円は、回転軸324が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心321a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
第1のコアシート321a、第2のコアシート321bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ323で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心321a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心321の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が形成されている。
分割鉄心321a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心321a−1は、それぞれ三箇所のカシメ323で固定されて積層される。カシメ323が一箇所だと位置決めが難しいので、カシメ323は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心321a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部322aと第2のスリット部322bとの間の鉄心部、第2のスリット部322bと第3のスリット部322cとの間の鉄心部、第3のスリット部322cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心321a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート321aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート321aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心321a−1のスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心321の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート321aの分割鉄心321a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図33に示すように、回転子鉄心321は、第1のコアシート321aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート321bで挟持している。第1のコアシート321aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心311の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート321bについて説明する。第2のコアシート321bは第1のコアシート321aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート321bは、図35に示すように、略中心部に軸孔326を有するとともに、第1のコアシート321aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が形成されている。但し、第2のコアシート321bは、外周部とスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)との間に、外周鉄心部があり、分割されていない。図5に示した一般的なリラクタンスモータ1000の回転子鉄心1021のコアシートと同じような構成である。
第2のコアシート321bは、分割された4個の分割鉄心321a−1で構成される第1のコアシート321aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。4個の分割鉄心321a−1は、ばらばらの状態であり、分割されていない一体形状の第2のコアシート321bとともにカシメ323で固定することにより、はじめて一体化される。
また、第2のコアシート321bには、第1のコアシート321aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)が形成されているので、回転子120の第2のコアシート121b、回転子220の第2のコアシート221bに比べ、q軸磁束が通りにくい利点がある。
但し、第2のコアシート321bは、外周部と空気層であるスリット(第1のスリット部322a、第2のスリット部322b、第3のスリット部322c)との間に外周鉄心部があり、この外周鉄心部をq軸磁束が漏れて流れるので、第1のコアシート321aの分割鉄心321a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート321bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心311の軸方向端面から外側に位置するのが好ましい。
第2のコアシート321bには、第1のコアシート321aと連結するカシメ323が、q軸方向に全部で12箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心321は、回転子鉄心321の両端を端板325(図33参照)で挟まれ、回転軸324に圧入、焼嵌等で固定される。
以上の説明では、回転子鉄心321が、第1のコアシート321aの軸方向両端に第2のコアシート321bを設ける例を説明したが、第1のコアシート321aの間にも第2のコアシート321bを設けるようにしてもよい。
次に、図36乃至図41を参照しながら、変形例3のリラクタンスモータ400について説明する。変形例3のリラクタンスモータ400は、回転子320の構成が変形例2のリラクタンスモータ300と異なる。変形例2のリラクタンスモータ300の回転子320は、コアシートの積層にカシメ323を用いたが、変形例3のリラクタンスモータ400は、リベットを用いてコアシートの積層を行う。
図36に示すように、リラクタンスモータ400(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子410と、この円筒状の固定子410の内周に、所定の径方向寸法の空隙416(図37参照)を介して配置される回転子420と、を備える。リラクタンスモータ400は、例えば、4極のモータである。
空隙416の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ400の固定子310は、図14、図15に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図38、図39に示すように、回転子420は、二種類のコアシート(第1のコアシート421a、第2のコアシート421b)を積層した回転子鉄心421と、回転子鉄心421の軸方向両端面に固定される端板425と、回転子鉄心421及び端板425の略中心部に嵌合する回転軸424と、を備える。
第1のコアシート421aは、回転子鉄心421の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心421の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート421aで構成される回転子鉄心421の主たる鉄心部の軸方向両端部に、分割はされていないが、第1のコアシート421aに対応するスリットを有する第2のコアシート421bが設けられる。
第1のコアシート421aは、d軸上において分割されているので、例えば、d軸上に鉄心部は存在しない(図40)。また、第1のコアシート421aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート421aは、q軸方向に複数の円弧状のスリットが形成されている(図40)。
回転子鉄心421は、二種類のコアシート(第1のコアシート421a、第2のコアシート421b)を使用している。図40に示すように、第1のコアシート421aは、回転子鉄心421の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心421a−1からなる。
分割鉄心421a−1は、回転子鉄心421の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心421a−1の数は、極数に等しい。リラクタンスモータ400は、4極であるから、回転子鉄心421は4個の分割鉄心421a−1で構成される。
図40において、仮想内周円は、回転軸424が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心421a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
第1のコアシート421a、第2のコアシート421bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層して、リベット孔423にリベット(図示せず)を通して固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心421a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心421の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が形成されている。
分割鉄心421a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心421a−1は、それぞれ三箇所のリベット孔423にリベット(図示せず)を通して固定されて積層される。リベット孔423一箇所だと位置決めが難しいので、リベット孔423は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心421a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部422aと第2のスリット部422bとの間の鉄心部、第2のスリット部422bと第3のスリット部422cとの間の鉄心部、第3のスリット部422cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心421a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート421aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート421aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心421a−1のスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心421の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート421aの分割鉄心421a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図39に示すように、回転子鉄心421は、第1のコアシート421aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート421bで挟持している。第1のコアシート421aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心411の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート421bについて説明する。第2のコアシート421bは第1のコアシート421aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート421bは、図41に示すように、略中心部に軸孔426を有するとともに、第1のコアシート421aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が形成されている。但し、第2のコアシート421bは、外周部とスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)との間に、外周鉄心部があり、分割されていない。図5に示した一般的なリラクタンスモータ1000の回転子鉄心1021のコアシートと同じような構成である。
第2のコアシート421bは、分割された4個の分割鉄心421a−1で構成される第1のコアシート421aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。4個の分割鉄心421a−1は、ばらばらの状態であり、分割されていない一体形状の第2のコアシート421bとともに、リベット孔423にリベット(図示せず)を通して固定することにより、はじめて一体化される。
また、第2のコアシート421bには、第1のコアシート421aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)が形成されているので、回転子120の第2のコアシート121b、回転子220の第2のコアシート221bに比べ、q軸磁束が通りにくい利点がある。
但し、第2のコアシート421bは、外周部と空気層であるスリット(第1のスリット部422a、第2のスリット部422b、第3のスリット部422c)との間に外周鉄心部があり、この外周鉄心部をq軸磁束が漏れて流れるので、第1のコアシート421aの分割鉄心421a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート421bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心411の軸方向端面から外側に位置するのが好ましい。
第2のコアシート421bには、第1のコアシート421aと連結するリベット孔423が、q軸方向に全部で12箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心421は、回転子鉄心421の両端を端板425(図39参照)で挟まれ、回転軸424に圧入、焼嵌等で固定される。
以上の説明では、回転子鉄心421が、第1のコアシート421aの軸方向両端に第2のコアシート421bを設ける例を説明したが、第1のコアシート421aの間にも第2のコアシート421bを設けるようにしてもよい。
次に、図42乃至図47を参照しながら、変形例4のリラクタンスモータ500について説明する。変形例4のリラクタンスモータ500は、回転子520の構成がリラクタンスモータ100と異なる。リラクタンスモータ100の回転子120は、第1のコアシート121aが、分割された、ばらばらな分割鉄心121a−1で構成されていたが、変形例4のリラクタンスモータ500の回転子520は、第1のコアシート521aの分割鉄心521a−1が互いに連結している。第1のコアシート121aの第2のコアシート121bへの位置決めが容易になるとともに、回転子鉄心521の強度が回転子120の回転子鉄心121の強度に比べて増す。
図42に示すように、リラクタンスモータ500(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子510と、この円筒状の固定子510の内周に、所定の径方向寸法の空隙516(図43参照)を介して配置される回転子520と、を備える。リラクタンスモータ500は、例えば、4極のモータである。
空隙516の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ500の固定子510は、図14、図15に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図42、図43に示すように、回転子520は、二種類のコアシート(第1のコアシート521a、第2のコアシート521b)を積層した回転子鉄心521と、回転子鉄心521の軸方向両端面に固定される端板525と、回転子鉄心521及び端板525の略中心部に嵌合する回転軸524と、を備える。
第1のコアシート521aは、回転子鉄心521の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心521の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート521aで構成される回転子鉄心521の主たる鉄心部の軸方向両端部に、スリットのない円板状の第2のコアシート521bが設けられる。
第1のコアシート521aは、d軸上において分割された4個の分割鉄心521a−1からなるが、回転子鉄心521の中心近傍で、4個の分割鉄心521a−1は連結部521a−2(略d軸上に形成される)で連結している。そして、第1のコアシート521aには、略中心部に回転軸524が嵌合する軸孔526が形成されている。
第1のコアシート521aは、連結部521a−2を除いて、d軸上に鉄心部は存在しない(図46)。4個の分割鉄心521a−1は、連結部521a−2を除いてd軸上に鉄心部は存在しないので、外周部とスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)との間の外周鉄心部は、隣接する分割鉄心521a−1の間が分断されている。従って、外周鉄心部を漏れるq軸磁束は発生しない。
また、第1のコアシート521aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート521aの分割鉄心521a−1には、q軸方向に複数の円弧状のスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)が形成されている(図46)。従って、q軸方向には磁束が通りにくく、q軸インダクタンスLqを小さくできる。
連結部521a−2で連結された分割鉄心521a−1は、回転子鉄心521の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心521a−1の数は、極数に等しい。リラクタンスモータ500は、4極であるから、回転子鉄心521は4個の分割鉄心521a−1で構成される。
第1のコアシート521a、第2のコアシート521bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ523で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心521a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心521の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)が形成されている。
分割鉄心521a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心521a−1は、それぞれ二箇所のカシメ523で固定されて積層される。分割鉄心521a−1が連結部521a−2で連結されているので、位置決めが容易であり、回転子120〜420よりもカシメ523の数を減らしてもよい。
分割鉄心521a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部522aと第2のスリット部522bとの間の鉄心部、第2のスリット部522bと第3のスリット部522cとの間の鉄心部、第3のスリット部522cと軸孔526との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心521a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート521aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート521aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心521a−1のスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心521の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート521aの分割鉄心521a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部522a、第2のスリット部522b、第3のスリット部522c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図45に示すように、回転子鉄心521は、第1のコアシート521aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート521bで挟持している。第1のコアシート521aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心511の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート521bについて説明する。第2のコアシート521bは第1のコアシート521aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート521bは、図47に示すように、略中心部に軸孔526を有する円板である。第2のコアシート521bは、連結部521a−2で連結された4個の分割鉄心521a−1で構成される第1のコアシート521aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。カシメ523で積層した第1のコアシート521aは、連結部521a−2で連結されているのでばらばらの状態ではない。しかし、8箇所のカシメ523で積層した第1のコアシート521aの強度は、十分とは言えない。8箇所のカシメ523で積層した第1のコアシート521aを、円板状の第2のコアシート521bにカシメ523で固定することにより、はじめて一体化される。但し、第2のコアシート521bは、円板状であるからq軸磁束を通す(q軸方向に磁路が構成され、q軸インダクタンスLqが大きくなる)。従って、第1のコアシート521aを固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート521bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心511の軸方向端面から外側に位置する方が好ましい。
第2のコアシート521bには、第1のコアシート521aと連結するカシメ523が、q軸方向に全部で8箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心521は、回転子鉄心521の両端を端板525(図45参照)で挟まれ、回転軸524に圧入、焼嵌等で固定される。
以上の説明では、回転子鉄心521が、第1のコアシート521aの軸方向両端に第2のコアシート521bを設ける例を説明したが、第1のコアシート521aの間にも第2のコアシート521bを設けるようにしてもよい。
上記変形例4のリラクタンスモータ500の回転子520は、コアシートをカシメにより積層したが、リベットを用いて積層してもよい。
また、変形例4のリラクタンスモータ500の回転子520の第2のコアシート521bに、スリットのない円板状のものを用いたが、第1のコアシート521aと同様のスリットを設けたものでもよい。
次に、図48乃至図54を参照しながら、変形例5のリラクタンスモータ600について説明する。変形例5のリラクタンスモータ600は、回転子620の構成がリラクタンスモータ100と異なる。例えば、リラクタンスモータ100の回転子120は、回転子鉄心121を第1のコアシート121aと第2のコアシート121bとを積層してカシメ123で固定し、端板125で挟みこんで構成したが、それだけでは、第1のコアシート121aの分割鉄心121a−1の機械的強度が不十分な場合がある。そこで、変形例5のリラクタンスモータ600の回転子620は、第1のコアシート621aのd軸上の分割部に窪みを設けるとともに、第2のコアシート621bに、第1のコアシート621aの窪みに対向する開口部を設ける。第1のコアシート621aと第2のコアシート621bとを積層した後に、第2のコアシート621bの開口部に非磁性体(補強部材)を嵌め合わせることで、分割された分割鉄心121a−1の機械的強度を大幅に向上することができる。
図48に示すように、リラクタンスモータ600(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子610と、この円筒状の固定子610の内周に、所定の径方向寸法の空隙616(図49参照)を介して配置される回転子620と、を備える。リラクタンスモータ600は、例えば、4極のモータである。
空隙616の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ600の固定子610は、図14、図15に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図50、図51に示すように、回転子620は、二種類のコアシート(第1のコアシート621a、第2のコアシート621b)を積層した回転子鉄心621と、回転子鉄心621の軸方向両端面に固定される端板625と、回転子鉄心621及び端板625の略中心部に嵌合する回転軸324と、第1のコアシート621aの補強用の補強部材629(非磁性体)と、を備える。
第1のコアシート621aは、回転子鉄心621の主たる鉄心部を構成し、回転子鉄心621の軸方向の中央部に位置する。第1のコアシート621aで構成される回転子鉄心621の主たる鉄心部の軸方向両端部に、分割はされていないが、第1のコアシート621aに対応するスリットを有する第2のコアシート621bが設けられる。
第1のコアシート621aは、d軸上において分割されているので、例えば、d軸上に鉄心部は存在しない(図52)。また、第1のコアシート621aは、q軸方向には分割されていない。そして、第1のコアシート621aは、q軸方向に複数の円弧状のスリットが形成されている(図52)。
回転子鉄心621は、二種類のコアシート(第1のコアシート621a、第2のコアシート621b)を使用している。図52に示すように、第1のコアシート621aは、回転子鉄心621の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心621a−1からなる。
分割鉄心621a−1は、回転子鉄心621の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心621a−1の数は、極数に等しい。リラクタンスモータ600は、4極であるから、回転子鉄心621は4個の分割鉄心621a−1で構成される。
図52において、仮想内周円は、回転軸624が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心621a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
それぞれの分割鉄心621a−1は、d軸上の分割部の仮想内周円の近傍に断面が長方形の窪み627を備える(図53参照)。一つの分割鉄心621a−1は、d軸上の分割部が二つあるので、二箇所の窪み627を備える。
第1のコアシート621a、第2のコアシート621bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ623で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心621a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心621の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が形成されている。
分割鉄心621a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心621a−1は、それぞれ三箇所のカシメ623で固定されて積層される。カシメ623が一箇所だと位置決めが難しいので、カシメ623は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心621a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部622aと第2のスリット部622bとの間の鉄心部、第2のスリット部622bと第3のスリット部622cとの間の鉄心部、第3のスリット部622cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心621a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート621aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート621aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心621a−1のスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心621の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート621aの分割鉄心621a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図51に示すように、回転子鉄心621は、第1のコアシート621aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート621bで挟持している。第1のコアシート621aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心611の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート621bについて説明する。第2のコアシート621bは第1のコアシート621aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート621bは、図54に示すように、略中心部に軸孔626を有するとともに、第1のコアシート621aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が形成されている。但し、第2のコアシート621bは、外周部とスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)との間に、外周鉄心部があり、分割されていない。図5に示した一般的なリラクタンスモータ1000の回転子鉄心1021のコアシートと同じような構成である。
第2のコアシート621bは、図54に示すように、第1のコアシート621aの窪み627に対応する位置に断面が長方形の開口部628を4個備える。この開口部628は、第1のコアシート621aと第2のコアシート621bとを積層したときに、隣接する分割鉄心621a−1の窪み627で形成される長方形に略一致するように設けられる。
第1のコアシート621aと第2のコアシート621bとを積層すると、第2のコアシート621bの開口部628と、第1のコアシート621aの窪み627とで、軸方向に貫通する貫通孔が形成される。第1のコアシート621aと第2のコアシート621bとを積層後、この貫通孔に補強部材629(非磁性体)を嵌める。この補強部材629(非磁性体)により、第1のコアシート621aの強度は飛躍的に向上する。
第2のコアシート621bは、分割された4個の分割鉄心621a−1で構成される第1のコアシート621aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。4個の分割鉄心621a−1は、ばらばらの状態であり、分割されていない一体形状の第2のコアシート621bとともにカシメ623で固定することにより、はじめて一体化される。
また、第2のコアシート621bには、第1のコアシート621aと同様に、空気層であるスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)が形成されているので、回転子120の第2のコアシート121b、回転子220の第2のコアシート221bに比べ、q軸磁束が通りにくい利点がある。
但し、第2のコアシート621bは、外周部と空気層であるスリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)との間に外周鉄心部があり、この外周鉄心部をq軸磁束が漏れて流れるので、第1のコアシート621aの分割鉄心621a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート621bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心611の軸方向端面から外側に位置するのが好ましい。
第2のコアシート621bには、第1のコアシート621aと連結するカシメ623が、q軸方向に全部で12箇所に設けられる。
このように構成された回転子鉄心621は、回転子鉄心621の両端を端板625(図51参照)で挟まれ、回転軸624に圧入、焼嵌等で固定される。
以上の説明では、回転子鉄心621が、第1のコアシート621aの軸方向両端に第2のコアシート621bを設ける例を説明したが、第1のコアシート621aの間にも第2のコアシート621bを設けるようにしてもよい。
また、第2のコアシート621bは、スリット(第1のスリット部622a、第2のスリット部622b、第3のスリット部622c)がない円板でもよい。
また、回転子鉄心621は、カシメ623の代わりに、リベットで積層固定してもよい。
次に、図55乃至図61を参照しながら、変形例6のリラクタンスモータ700について説明する。変形例6のリラクタンスモータ700は、スリットに挿入される補強部材727により回転子720の強度をさらに上げる。
図55に示すように、リラクタンスモータ700(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子710と、この円筒状の固定子710の内周に、所定の径方向寸法の空隙716(図56参照)を介して配置される回転子720と、を備える。リラクタンスモータ700は、例えば、4極のモータである。
空隙716の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ700の固定子710は、図13、図14に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図57、図58に示すように、回転子720は、二種類のコアシート(第1のコアシート721a、第2のコアシート721b)を積層した回転子鉄心721と、回転子鉄心721の軸方向両端面に挿入固定される補強部材727と、回転子鉄心721及び補強部材727の略中心部に嵌合する回転軸724と、を備える。
回転子鉄心721は、二種類のコアシート(第1のコアシート721a、第2のコアシート721b)を使用している。図59に示すように、第1のコアシート721aは、回転子鉄心721の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心721a−1からなる。
分割鉄心721a−1は、回転子鉄心721の中心を通るd軸上で分割されているので、分割鉄心721a−1の数は、極数に等しい。本実施の形態のリラクタンスモータ700は、4極であるから、回転子鉄心721は4個の分割鉄心721a−1で構成される。
図59において、仮想内周円は、回転軸724が嵌合する軸孔に相当する。仮想内周円と仮想外周円との間は、空間であり、4個の分割鉄心721a−1は、この空間で分割されて、ばらばらになっている。
第1のコアシート721a、第2のコアシート721bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ723で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心721a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心721の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が形成されている。
分割鉄心721a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心721a−1は、それぞれ三箇所のカシメ723で固定されて積層される。カシメ723が一箇所だと位置決めが難しいので、カシメ723は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心721a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部722aと第2のスリット部722bとの間の鉄心部、第2のスリット部722bと第3のスリット部722cとの間の鉄心部、第3のスリット部722cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心721a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート721aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート721aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心721a−1のスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心721の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート721aの分割鉄心721a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図58に示すように、回転子鉄心721は、第1のコアシート721aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート721bで挟持している。さらに、回転子鉄心721の軸方向両端部に、補強部材727(非磁性体)が挿入固定される。補強部材727は、円板状の端板部727a(図61参照)から、スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)と略同形状の挿入部727b(図61参照)が立設している。補強部材727の挿入部727bが、回転子鉄心721(第1のコアシート721a、第2のコアシート721b)のスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)に挿入固定される。補強部材727の円板状の端板部727a(図61参照)は、例えば、回転子120の端板125と略同等の機能を有する。
第1のコアシート721aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心711の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート721bについて説明する。第2のコアシート721bは第1のコアシート721aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート721bは、図60に示すように、略中心部に軸孔726を有するとともに、第1のコアシート721aと同様に、スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が形成されている。但し、第2のコアシート721bは、外周部とスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)との間に、外周鉄心部があり、分割されていない。図5に示した一般的なリラクタンスモータ1000の回転子鉄心1021のコアシートと同じような構成である。
第2のコアシート721bは、主に、分割された分割鉄心721a−1で構成される第1のコアシート721aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。分割鉄心721a−1は、ばらばらの状態であり、分割されていない一体形状の第2のコアシート721bとともにカシメ723で固定することにより、はじめて一体化される。
また、第2のコアシート721bには、第1のコアシート721aと同様に、スリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)が形成されているので、回転子120の第2のコアシート121b、回転子220の第2のコアシート221bに比べ、q軸磁束が通りにくい利点がある。
但し、第2のコアシート721bは、外周部とスリット(第1のスリット部722a、第2のスリット部722b、第3のスリット部722c)との間に外周鉄心部があり、この外周鉄心部をq軸磁束が漏れて流れるので、第1のコアシート721aの分割鉄心721a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート721bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。且つ、q軸磁束が通りにくいように、固定子鉄心711の軸方向端面から外側に位置するのが好ましい。
第2のコアシート721bには、第1のコアシート721aと連結するカシメ723が、全部で12箇所に設けられる。
回転子鉄心721は、回転子鉄心721の軸方向両端に補強部材727が挿入固定されるとともに、回転軸724が圧入、焼嵌等で固定される。回転子鉄心721の軸方向両端に補強部材727が挿入固定されることにより、回転子鉄心721の強度が大幅に向上する。
尚、変形例6のリラクタンスモータ700においても、コアシートの積層に、リベットを用いてもよいことは言うまでもない。
以上の説明では、回転子鉄心721が、第1のコアシート721aの軸方向両端に第2のコアシート721bを設ける例を説明したが、第1のコアシート721aの間にも第2のコアシート721bを設けるようにしてもよい。
次に、図62乃至図67を参照しながら、変形例7のリラクタンスモータ800について説明する。変形例6のリラクタンスモータ700は、補強部材727により回転子720の強度を向上させたが、変形例7のリラクタンスモータ800は、モールド樹脂により一体成形するものである。
図62に示すように、リラクタンスモータ800(以下、単にモータと呼ぶ場合もある)は、円筒状の固定子810と、この円筒状の固定子810の内周に、所定の径方向寸法の空隙816(図63参照)を介して配置される回転子820と、を備える。リラクタンスモータ800は、例えば、4極のモータである。
空隙816の径方向の長さは、例えば、0.5mm(0.2〜1mm)程度である。
リラクタンスモータ800の固定子810は、図13、図14に示す固定子110と同様の構成であるので、説明は省略する。
図64、図65に示すように、回転子820は、二種類のコアシート(第1のコアシート821a、第2のコアシート821b)を積層した回転子鉄心821と、回転子鉄心821を一体成形するモールド樹脂828と、回転子鉄心821の略中心部に嵌合する回転軸824と、を備える。
回転子鉄心821は、二種類のコアシート(第1のコアシート821a、第2のコアシート821b)を使用している。図66に示すように、第1のコアシート821aは、回転子鉄心821の中心を通るd軸上で分割された4個の分割鉄心821a−1からなる。
第1のコアシート821a、第2のコアシート821bは、高透磁率を有する厚さt=0.5mm(0.1〜1mm)程度の電磁鋼板を所定の形状にプレスで打ち抜き、積層してカシメ823で固定している。加工はレーザーカットでもよい。
分割鉄心821a−1には、外周円とは逆向きの円弧形状をなし、円弧の頂点が回転子鉄心821の中心に向いている複数のスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)が形成されている。
分割鉄心821a−1の周方向の中心は、略q軸に略一致する。スリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)が、q軸磁束の流れの抵抗になり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
4個の分割鉄心821a−1は、それぞれ三箇所のカシメ823で固定されて積層される。カシメ823が一箇所だと位置決めが難しいので、カシメ823は二箇所以上が好ましい。
分割鉄心821a−1は、鉄心外周部とスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)との間の外周鉄心部、第1のスリット部822aと第2のスリット部822bとの間の鉄心部、第2のスリット部822bと第3のスリット部822cとの間の鉄心部、第3のスリット部822cとd軸上の空間(分割部)及び仮想内周円との間の鉄心部とが、d軸磁束の磁路になっている。
分割鉄心821a−1には、基本的にq軸磁束の磁路は形成されていない。スリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)及びd軸上の空間が、q軸磁束の流れの抵抗となり、q軸インダクタンスLqを小さくしている。
第1のコアシート821aの構成について別の表現をすると、第1のコアシート821aは、q軸方向の磁束の流れを妨げるように、一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って、スリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)が形成されている。
ここでは、分割鉄心821a−1のスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)が3個の例を示したが、外周円とは逆向きの円弧形状をなして形成されるとともに、円弧の頂点が回転子鉄心821の中心に向いている複数の略同心円の円弧形状のスリットであれば、その数は任意でよい。
第1のコアシート821aの分割鉄心821a−1の、空気層であるスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)は、磁束の流れる方向を考慮すると、上記のように一方のd軸から他方のd軸への磁路に沿って円弧状とするのが好ましいが、V字型やU字型の形状としてもよい。
図65に示すように、回転子鉄心821は、第1のコアシート821aで積層される主たる鉄心部が中央に位置し、その両端部(軸方向両端部)を第2のコアシート821bで挟持している。さらに、回転子鉄心821は、回転軸824とともに、モールド樹脂828で一体成形される。モールド樹脂828は、第1のコアシート821aのスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)及び第2のコアシート821bの樹脂注入孔829a,829b,829c、第1のコアシート821aの分割鉄心821a−1の間の空間に充填され、且つ回転子鉄心821の軸方向両端面を覆う。回転軸824とともにモールド樹脂828で一体成形されるので、回転子鉄心821の強度が、格段に向上する。
第1のコアシート821aで積層される主たる鉄心部の軸方向の長さを、固定子鉄心811の軸方向の長さよりも長くなるように構成するのが好ましい。q軸インダクタンスLqを小さくするためである。
次に、第2のコアシート821bについて説明する。第2のコアシート821bは第1のコアシート821aの位置決めを行い、且つ固定するともに、支える土台のような役割をもつ。
第2のコアシート821bは、図67に示すように、略中心部に軸孔826を有するとともに、樹脂注入孔829a,829b,829cを備える。樹脂注入孔829a,829b,829cは、第1のコアシート821aのスリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)に対応する。
第2のコアシート821bは、主に、分割された分割鉄心821a−1で構成される第1のコアシート821aで積層される主たる鉄心部を固定するために設けられる。第1のコアシート821aの分割鉄心821a−1は、ばらばらの状態であり、分割されていない一体形状の第2のコアシート821bとともにカシメ823で固定することにより、はじめて一体化される。
第2のコアシート821bは、樹脂注入孔829a,829b,829cを有する円板状であるから、q軸磁束が流れやすいので、第1のコアシート821aの分割鉄心821a−1を固定するのに必要な強度を保てる範囲で、第2のコアシート821bの枚数はできるだけ少ない方が好ましい。
第2のコアシート821bには、第1のコアシート821aと連結するカシメ823が、全部で12箇所に設けられる。
回転子鉄心821は、回転軸824とともにモールド樹脂828で一体成形されるので、回転子鉄心821の強度が、格段に向上する。
尚、変形例7のリラクタンスモータ800においても、コアシートの積層に、リベットを用いてもよいことは言うまでもない。
また、変形例4のリラクタンスモータ500の回転子520のように、第1のコアシート821aの分割鉄心821a−1が互いに連結しているものでもよい。
また、第2のコアシート821bは、樹脂注入孔829a,829b,829cの代わりに、スリット(第1のスリット部822a、第2のスリット部822b、第3のスリット部822c)を設けてもよい。
以上の説明では、回転子鉄心821が、第1のコアシート821aの軸方向両端に第2のコアシート821bを設ける例を説明したが、第1のコアシート821aの間にも第2のコアシート821bを設けるようにしてもよい。