JP2018046703A - 永久磁石式回転電機及びその製造方法 - Google Patents

永久磁石式回転電機及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】センタブリッジを非磁性化した回転子コアの寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図ることができる永久磁石式回転電機を提供する。【解決手段】回転子20は、1つの磁極22あたり、並べて配置された複数の磁石スロット23の外側に形成された外周縁部と24、複数の磁石スロットの内側に形成された芯部25と、隣接する磁石スロット間に形成され外周縁部と芯部とを繋ぐ1つ又は複数のセンタブリッジ26を備えている。そして、1つ又は複数のセンタブリッジの一部もしくは全部が非磁性部となっているとともに、センタブリッジに、少なくとも1つのブリッジスロット29が形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、永久磁石式回転電機及びその製造方法に関する。
近年、EV(Electric Vehicle)やHEV(Hybrid Electric Vehicle)の主機として用いられる電動機は、小型で大出力を得るために高速回転領域で使用されることが増えてきている。このような用途で回転電機を用いる場合は、出力密度の高い永久磁石式の回転電機が最も適している。しかし、永久磁石式回転電機を例えば20000rpm程度の高速回転領域で使用する場合、第一に問題となるのが高速回転時の強大な遠心力による回転子の破損である。
例えば、表面磁石型の回転電機の場合、永久磁石は接着剤で回転子コアに貼り付ける方法が一般的であるが、接着剤のみでは到底遠心力に耐えることができず、永久磁石が剥がれてしまう可能性が高い。そこで、磁石外周にバインドを巻き付けるという補強手法が考えられるものの、磁石外周にバインドを巻き付けると磁気回路的なギャップが広がってトルクが低下してしまう。
その一方、埋込磁石型の回転電機の場合、永久磁石は回転子コアの内部に形成された磁石スロット内に配置される。一般的に、埋込磁石型の回転電機の回転子コアには、1極あたり複数の磁石スロットを形成し、各磁石スロット内に永久磁石が配置される。そして、回転子コアは、磁石スロットの外側に形成される外周縁部と、磁石スロットの内側に形成される芯部とを備えている。外周縁部及び芯部は、隣接する磁石スロット間に形成される1つ又は複数のセンタブリッジと、最も端の2つの磁石スロットの、センタブリッジと反対側の縁に形成される2つのサイドブリッジとにより繋がっている。このため、埋込磁石型の回転電機において、磁石スロット内に配置される永久磁石は、センタブリッジとサイドブリッジとにより支えられているので、高速回転領域では埋込磁石型の回転電機の方が表面磁石型の回転電機よりも適しているといえる。
ここで、高速回転かつ大径の回転電機で発生する強大な遠心力に耐えるためには、前述の1極あたり2つのサイドブリッジのみならず、1つ又は複数のセンタブリッジによって遠心力を分散させ、かつ各ブリッジの幅を広くすることで遠心力に耐えられる構造とする必要がある。このようにブリッジの数を増やしたり幅を広げたりすると、各ブリッジを介して永久磁石からの磁束が漏れ、容易に高トルク化を実現することはできない。すなわち、各ブリッジにおける磁束漏れ低減と耐遠心力の向上を両立させることが高速回転の埋込磁石型回転電機の課題の1つである。
なお、永久磁石を使用しないシンクロナスリラクタンス型の回転電機やスイッチトリラクタンス型の回転電機であっても、突極性をもたせるためにセンタブリッジに相当する部位が存在し、強度設計のネックとなっていることが多い。
この課題に対して特許文献1では、レーザ照射等を用いてブリッジを局所的に加熱・急冷し、ブリッジを非磁性化している。
これは、回転子コアとしても用いることが可能な軟磁性状態のマルテンサイト系のステンレス材を加熱・急冷すると、非磁性のオーステナイト相が析出する現象を利用している。
このように、非磁性化させたブリッジの幅を広く取り、遠心力に十分に耐え得るような構造としてもブリッジでの磁束漏れ低減と耐遠心力の向上を両立させることができる。
ここで、「非磁性」の意味は、常磁性、反磁性及び反強磁性のすべてを含む意であり、いわゆる弱磁性をも含む意である。
特開平8−331784号公報
ところで、出力の大きい回転電機では、回転電機さらには回転子のサイズも必然的に大きくなるため、遠心力がさらに増加する。
これに耐え得るようにセンタブリッジの幅を広く取ると、ブリッジを局所的に加熱・急冷した際に発生する歪みによって、回転子コアが変形してしまい、回転子コアの寸法精度、或いは占積率の悪化を引き起こす原因となる。そして、回転子コアの寸法精度の悪化は良品率の低下を招き、占積率の悪化はトルクの低下を招くこととなる。
ちなみに、センタブリッジに歪みが発生するのは、レーザ等を用いた熱処理によって主相がフェライトもしくはマルテンサイトからオーステナイトへと変化し、これらの相の格子定数が異なることで体積が膨張しようとすることに起因している。
以上のように、センタブリッジを非磁性化した回転子コアにおいては、特に回転電機の出力が大きな場合には、寸法精度及び占積率が高い回転子コアを作製する技術が十分ではなく、技術開発が求められていた。
そこで、本発明は、センタブリッジを非磁性化した回転子コアの寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図ることができる永久磁石式回転電機及びその製造方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る永久磁石式回転電機は、内周面が円筒状に形成される円筒状の固定子コア及び固定子コアに設けられた複数のティースの各々に巻回された複数の巻線を備えた固定子と、固定子コアの内周側に所定のギャップを隔てて対向して回転自在に配置される複数の磁極を有する回転子と、を備え、回転子は、複数の磁極毎に設けられた複数の磁石スロット、複数の磁石スロットの外側に形成された外周縁部、複数の磁石スロットの内側に形成された芯部、及び隣接する磁石スロット間に形成された外周縁部と前記芯部とを繋ぐ複数のセンタブリッジ、を備えた回転子コアと、複数の磁石スロット内に配置された複数の第1永久磁石と、回転子コアに固定されたシャフトと、を備え、センタブリッジの少なくとも1つにブリッジスロットが形成されており、ブリッジスロットが形成されていないセンタブリッジにおいては隣接する磁石スロットの間に連通する非磁性部を有し、ブリッジスロットが形成されているセンタブリッジにおいては磁石スロットとブリッジスロットの間に連通する非磁性部を有している。
一方、本発明の一態様に係る永久磁石式回転電機の製造方法は、内周面が円筒状に形成される円筒状の固定子コアを形成する工程と、固定子コアに設けられた複数のティースの各々に複数の巻線を巻回する工程と、外周面が円筒状に形成され、複数の極数を有する回転子コアであって、複数の極数毎に設けられた複数の磁石スロット、複数の磁石スロットの外側に形成された外周縁部、複数の磁石スロットの内側に形成された芯部、及び隣接する磁石スロット間に形成された外周縁部と前記芯部とを繋ぐ複数のセンタブリッジ、を備えた回転子コアを形成する工程と、回転子コアにシャフトを固定する工程と、回転子コアを固定子コアの内周側に回転自在に配置する工程とを備え、回転子コアを形成する工程が、複数の板材を準備する板材準備工程と、複数の板材の各々に対して外周面を円形にするとともに、シャフトが嵌め込まれる孔、複数の磁石スロットが形成される孔及びセンタブリッジの少なくとも1つにブリッジスロットを形成する孔を形成する板材加工工程と、複数の板材の各々のブリッジスロットが形成されていないセンタブリッジにおいては隣接する磁石スロットの間に連通する非磁性部を形成し、ブリッジスロットが形成されているセンタブリッジにおいては磁石スロットとブリッジスロットの間に連通する非磁性部を形成する非磁性化工程と、複数の板材を、シャフトが嵌め込まれる孔、複数の磁石スロットが形成される孔及びブリッジスロットを形成する孔が積層方向に整列するように、積層して固定する板材積層工程と、積層して固定した複数の板材の磁石スロットに第1永久磁石を埋設する永久磁石埋設工程と、を含んでいる。
本発明に係る永久磁石式回転電機及びその製造方法によれば、センタブリッジを非磁性化した回転子コアの寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図ることができる。
本発明に係る第1実施形態の永久磁石式回転電機の概略構成を示す断面図である。 図1に示す第1実施形態の永久磁石式回転電機における回転子の1つの磁極の部分の断面図である。 本発明に係る第2実施形態の永久磁石式回転電機における回転子の1つの磁極の部分の断面図である。 本発明に係る第3実施形態の永久磁石式回転電機における回転子の1つの磁極の部分の断面図である。
次に、図面を参照して、本発明の第1から第3実施形態の永久磁石式回転電機及びその製造方法を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す第1から第3実施形態の永久磁石式回転電機及びその製造方法は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
[第1実施形態の永久磁石式回転電機]
本発明の第1実施形態に係る永久磁石式回転電機は、図1に示されており、永久磁石式回転電機1は、4極24スロットの埋込磁石型同期電動機である。なお、本発明は、磁極の数やスロット数、その他の各部分の寸法などによって何ら制約を受けるものではない。
永久磁石式回転電機1は、図1に示すように、固定子10と、この固定子10の内周側に所定のギャップGを隔てて対向して回転自在に配置された回転子20とを備えている。
固定子10は、円筒状のフレーム2と、フレーム2の内周側に配置された内周面11aが円筒状に形成された円筒状の固定子コア11とを備えている。固定子コア11の内周面11a側には、円周方向に等間隔で形成された24個のスロット12及び24個のティース13が形成される。各ティース13には、スロット12内に巻装された巻線14が巻回されている。
また、回転子20は、積層鉄心で形成され、外周面21aが円筒状に形成された円筒状の回転子コア21と、この回転子コア21に円周方向に等間隔で設けられた4つの磁極22とを備えている。回転子20は、回転子コア21の中心部に嵌挿固定されたシャフト3によって回転する。
図2に示すように、回転子コア21は、1つの磁極22あたり、2つの磁石スロット23と、2つの磁石スロット23の外側に形成された外周縁部24と、2つの磁石スロット23の内側に設けられた芯部25と、隣接する磁石スロット23間に形成され、外周縁部24及び芯部25を繋ぐ1つのセンタブリッジ26とを備えている。
2つの磁石スロット23は、それら2つの磁石スロット23間の中心C2と、回転子コア21(芯部25)の中心C1とを結ぶ線L1に対し、中心C2が線上にある2つの磁石スロット23の幅方向の中心線L2が垂直となるように、並べて配置されている。各磁石スロット23は、回転子コア21の軸方向の両端にまで貫通する幅H1の略矩形状の貫通孔で形成される。
そして、各磁石スロット23内には直方体形状の永久磁石28が配置されて固定されている。ここで、本願の第1永久磁石が、永久磁石28に対応している。
したがって、1つの磁極22あたり、2つの永久磁石28が前述の2つの磁石スロット23の配置形態で並べて配置されている。この2つの永久磁石28の磁極は、隣り合う磁極22における永久磁石28の磁極と異なるように配置される。
なお、第1実施形態では、一つの磁石スロット23内に一つの永久磁石28が配置されているが、一つの磁石スロット23内に2個以上の永久磁石を配置して固定してもよい。
また、回転子コア21において、最も端の2つの磁石スロット23(本実施形態の場合、2つの磁石スロットのみ)を回転子コア21の外周面21aにそれぞれ連通させる2つの連通路27が形成されている。
また、センタブリッジ26の線L1上に、1つのブリッジスロット29が形成されている。このブリッジスロット29は、長辺寸法が磁石スロット23の幅H1と略同一寸法であり、短辺寸法をH2(H2<H1)とした長方形状の貫通孔である。そして、この長方形状のブリッジスロット29は、その長辺方向が回転子コア21の直径方向に延在した状態でセンタブリッジ26に形成されている。
そして、センタブリッジ26の一部もしくは全域が、レーザ照射により非磁性化された非磁性部となっている。これにより、各永久磁石28からセンタブリッジ26を流れて漏れる磁束の量を低減することができる。
なお、非磁性部を規定する「非磁性」の意味は、常磁性、反磁性及び反強磁性のすべてを含む意であり、いわゆる弱磁性をも含む意である。
ここで、レーザ照射されたセンタブリッジ26は、加熱により体積が増大していくが、センタブリッジ26の体積が増大した分だけブリッジスロット29の開口面積が小さくなることで歪みを逃がし、センタブリッジ26の変形を抑制している。このため、回転子コア21における寸法精度及び占積率を高めることができる。
また、1つのブリッジスロット29は、その長辺方向が回転子コア21の直径方向に延在するようにセンタブリッジ26に形成されており、レーザ照射されたセンタブリッジ26の体積増分を逃がすためのブリッジスロット29の短辺方向の幅をさほど大きくする必要がない。したがって、ブリッジスロット29を形成したことによるセンタブリッジ26の強度低下を最小限に抑えることができる。
従って、第1実施形態に係る永久磁石式回転電機1によれば、センタブリッジ26を非磁性化した回転子コア21の寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図った永久磁石式回転電機1を提供することができる。
なお、図1では、回転子コア21の全ての磁極22のセンタブリッジ26に1つのブリッジスロット29を形成したが、特定のセンタブリッジ26のみにブリッジスロット29を形成する構造としてもよい。これは、レーザ照射によるセンタブリッジ26の体積増分を、特定のセンタブリッジ26に形成したブリッジスロット29の開口面積が小さくなることで逃がすことができるからである。
[第2実施形態の回転子コア]
次に、図3は、本発明に係る第2実施形態の回転子コア21の1つの磁極22を示すものである。なお、図2で示した構成と同一構成部分には、同一符号を付してその説明は省略する。
図3の回転子コア21も、センタブリッジ26の一部もしくは全域が、レーザ照射により非磁性化された非磁性部となっており、各永久磁石28からセンタブリッジ26を流れる漏れる磁束の量を低減することができる。
そして、センタブリッジ26には、隣り合う磁石スロット23、23の間に並ぶ位置に(線L1に対して線対称となる位置に)、2つのブリッジスロット30が形成されている。
これら2つのブリッジスロット30は、長辺寸法が磁石スロット23の幅H1と略同一寸法であり、短辺寸法をH3(H3<H1)とした長方形状の貫通孔である。そして、これら長方形状のブリッジスロット29は、その長辺方向が回転子コア21の直径方向に延在した状態でセンタブリッジ26に形成されている。
第2実施形態の回転子コア21によると、レーザ照射されたセンタブリッジ26の体積が増大すると、センタブリッジ26の体積増分だけ2つのブリッジスロット30の開口面積が小さくなることで歪みを逃がし、センタブリッジ26の変形を十分に抑制することができる。このため、回転子コア21における寸法精度及び占積率を高めることができる。
従って、第2本実施形態の回転子コア21を備えた永久磁石式回転電機1によれば、センタブリッジ26を非磁性化した回転子コア21の寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図った永久磁石式回転電機1を提供することができる。
[第3実施形態の回転子コア]
次に、図4は、本発明に係る第3実施形態の回転子コア21の1つの磁極22を示すものである。
図4の回転子コア21は、図2で示した構成と同様に、レーザ照射により非磁性化されたセンタブリッジ26の線L1上に、1つのブリッジスロット29が形成されているとともに、このブリッジスロット29内に永久磁石31が埋設されている。ここで、本願の第2永久磁石が、永久磁石31に対応している。
この永久磁石31は、ブリッジスロット29のレーザ照射後の開口形状と同一形状であってもよいし、ブリッジスロット29の内面との間に隙間が存在するように配置してもよい。
ブリッジスロット29内に埋設した永久磁石31としては、別途製造した焼結磁石やボンド磁石をレーザ照射後にブリッジスロット29内に挿入してもよいし、磁石粉末と必要に応じて添加したバインダとの混合物をレーザ照射後にブリッジスロット29内に挿入した後に熱処理によって固化させてもよい。
第3実施形態の回転子コア21によると、レーザ照射されたセンタブリッジ26の体積が増大すると、センタブリッジ26の体積増分だけブリッジスロット29の開口面積が小さくなることで歪みを逃がし、センタブリッジ26の変形を抑制することができるので、回転子コア21の寸法精度及び占積率を高めることができる。
また、センタブリッジ26を非磁性化したことでセンタブリッジ26の漏れ磁束を低減することができるとともに、ブリッジスロット29に形成した永久磁石31を埋設したことで、回転子コア21で発生する磁束量を増大させることができる。
したがって、第3本実施形態の回転子コア21を備えた永久磁石式回転電機1によれば、センタブリッジ26の漏れ磁束を低減するとともに、回転子コア21で発生する磁束量を増大させることができるので、さらに高トルク化を図った永久磁石式回転電機1を提供することができる。
なお、図示しないが、図3で示した構成のように、レーザ照射により非磁性化されたセンタブリッジ26に2つのブリッジスロット30が形成されているとともに、これらブリッジスロット30内に永久磁石を埋設した回転子コア21を備えた永久磁石式回転電機1としても、センタブリッジ26の漏れ磁束を低減するとともに、回転子コア21で発生する磁束量を増大させることができ、永久磁石式回転電機1の高トルク化を図ることができる。
また、第1実施形態の永久磁石式回転電機1では、1つの磁極22に設けた2つの磁石スロット23を、線L1に対し中心C2が線上にある2つの磁石スロット23の幅方向の中心線L2が垂直となるように並べて配置したが、回転子コア21の中心C1に向かってV字状、或いは、逆V字状に形成した2つの磁石スロット23であってもよい。
[永久磁石式回転電機の製造方法]
次に、図1に示した第1実施形態の永久磁石式回転電機1の製造方法について説明する。
永久磁石式回転電機1の製造に際し、先ず、固定子10を製造する。
固定子10の製造工程は、内周面11aが円筒状に形成される円筒状の固定子コア11を形成する工程(固定子コア形成工程)と、固定子コア11に設けられた複数のティース13の各々に複数の巻線14を巻回する工程(巻線巻回工程)とを含む。
ここで、固定子コア形成工程では、軟磁性材料からなる板材を複数のティース13を形成する部分を有する所定の2次元形状にプレス加工して打ち抜き、これを必要な枚数だけ積層してカシメや溶接によって積層方向に固定する。これにより、固定子コア11は形成される。軟磁性材料からなる板材としては、例えば、無方向性電磁鋼板が挙げられる。固定子コア11の形成に際し、軟磁性フェライト材を所定の3次元形状にプレスし、焼結してもよい。
そして、巻線巻回工程では、巻線14の素材として、導電性を有し、表面が絶縁されているものを準備する。例えば、巻線14の素材として、一般的に使用されるマグネットワイヤが好適である。そして、巻線14の巻線方式は、図1に示す24スロットの場合には、分布巻方式を使用する。
そして、巻線巻回工程の後に、フレーム2によって固定子コア11を固定する。以上により、固定子10は製造される。
次に、回転子20を製造する。
回転子20の製造工程は、回転子コア21を形成する工程(回転子コア形成工程)と、回転子コア21にシャフト3を固定する工程(シャフト固定工程)と、回転子コア21に永久磁石28を埋設する工程(永久磁石埋設工程)とを備えている。
回転子コア形成工程は、外周面21aが円筒状に形成される回転子コア21であって、1つの磁極22あたり、並べて配置された2つの磁石スロット23と、2つの磁石スロット23の外側に形成された外周縁部24と、2つの磁石スロット23の内側に形成された芯部25と、隣接する磁石スロット23間に形成され、外周縁部24と芯部25とを繋ぐ1つのセンタブリッジ26と、センタブリッジ26に形成されたブリッジスロット29と、最も端の2つの磁石スロット23を回転子コア21の外周面21aにそれぞれ連通させる2つの連通路27と、を備えた回転子コア21を形成するものである。
そして、この回転子コア形成工程においては、複数の板材(図示せず)を準備する工程(板材準備工程)と、複数の板材の各々に対して、外周面を円形とするとともに、シャフト3が嵌め込まれる孔、2つの磁石スロット23が形成される孔、ブリッジスロット29が形成される孔及び2つの連通路27を形成する孔を形成する工程(板材加工工程)と、センタブリッジ26の一部もしくは全部に非磁性化を行って複数の非磁性部を形成する工程(非磁性化工程)と、複数の板材を、シャフト3が嵌め込まれる孔、複数(本実施形態にあっては2つ)の磁石スロット23が形成される孔、複数のブリッジスロット29及び2つの連通路27を形成する孔が積層方向に整列するように、積層して固定する工程(板材積層工程)と、を含んでいる。
ここで、板材準備工程では、回転子コア21の素材となるマルテンサイト系ステンレス材からなる板材を複数枚準備する。板材としては、マルテンサイト系のステンレス材の他に珪素鋼板を用いることも可能である。但し、珪素鋼板を用いる場合には、非磁性化処理を行う際に改質物質の使用が必要となる。板材の板厚は、渦電流損を低減するという観点から0.35mm〜0.65mm程度まで薄くすることが好ましい。ステンレス材は、表面に酸化層が存在するため板間の絶縁はある程度取れているものの、渦電流損を確実に低減するために表面に無機もしくは有機物による絶縁コーティングを施してもよい。マルテンサイト系のステンレス材はフェライト相中に炭化物が分散した組織となっている焼きなまし状態で使用すると比較的軟磁気特性が高く、回転電機の高トルク化に寄与することができる。
次に、板材加工工程では、複数の板材の各々に対して、回転子コア21の外周面21aとなる外周面を円形とするとともに、シャフト3が嵌め込まれる孔、2つの磁石スロット23が形成される孔、ブリッジスロット29が形成される孔及び2つの連通路27を形成する孔を形成する。板材の加工は、プレスによる打ち抜きの他にワイヤカットなどを挙げることができる。
次に、非磁性化工程では、前述の加工を行った複数の板材の各々のセンタブリッジ26に対応する部分のうち少なくとも一方の一部もしくは全部に非磁性化を行って複数の非磁性部を形成する。この非磁性化の手法は、簡便性などの観点からレーザ照射が最も好ましいが、局所的に加熱・急冷が可能な手法であれば何でも構わない。以下ではレーザ照射を行う場合について述べる。また、レーザ照射後に磁性が一部残る弱磁性化であっても本発明の効果は得られるが、レーザ照射時間を調整して十分に磁性を消失させる非磁性化を行うことが好ましい。
非磁性化を行う箇所は、各板材においてセンタブリッジ26に対応する部分のうち少なくとも一方の一部もしくは全部である。磁束漏れを回避する観点からは、センタブリッジ26に対応する部分の全部が非磁性部となっていることが好ましいが、各連通路27における磁気抵抗を十分に増やせるのであれば、各板材において、センタブリッジ26の一部もしくは全部に非磁性化を行ってもよい。また、レーザを照射する際は、非磁性化を行う箇所に一度に照射してもよいし、スポットの小さいレーザをスキャンしてもよい。また、レーザ照射後の急冷は、空冷で構わないが、必要に応じ水冷や油冷を行ってもよい。また、珪素鋼板を回転子コア21の板材の素材に用いる場合には、非磁性のオーステナイト相を安定化させるために、CrやCなどの改質物質の付与が必要である。具体的には、これらの物質を板材の表面に塗布してからレーザ照射をすればよい。ただし、この場合、レーザ照射時に改質物質を板材の内部に浸透させるには、少なくともレーザ照射部には絶縁コーティングを施さないほうがよい。
次に、板材積層工程では、前述の非磁性化を行った複数の板材を、シャフト3が嵌め込まれる孔、2つの磁石スロット23が形成される孔、ブリッジスロット29が形成される孔及び2つの連通路27を形成する孔が積層方向に整列するように、積層して固定する。積層した板材同士の結着は、カシメや溶接によって行うことができる。これにより、回転子コア21が製造される。
この後に行うシャフト固定工程では、回転子コア21の、シャフト3が嵌め込まれる孔にシャフト3を固定する。この際に、シャフト3を回転子コア21に焼きばめによって固定する。
また、シャフト3を回転子コア21に固定した後、永久磁石埋設工程では、各磁石スロット23に永久磁石28を挿入し、接着剤により永久磁石28を固定する。そして、永久磁石28の着磁を行う。これにより、回転子20が製造される。
最後に、回転子20が製造されたならば、回転子コア21を図示しない軸受を介して固定子コア11の内側に回転自在に配置する(回転子コア配置工程)。これにより、永久磁石式回転電機1が製造される。
また、図3で示した第2実施形態の回転子コア21を使用した永久磁石式回転電機1を製造する場合には、板材加工工程において、複数の板材の各々に対して、回転子コア21の外周面21aとなる外周面を円形とするとともに、シャフト3が嵌め込まれる孔、2つの磁石スロット23が形成される孔、2つのブリッジスロット30が形成される孔及び2つの連通路27を形成する孔を形成する。また、非磁性化工程において、複数のセンタブリッジ26に対応する部分の一部もしくは全部に非磁性化を行って複数の非磁性部を形成する。それ以外の製造工程は、図1に示す本実施形態に係る永久磁石式回転電機1の製造方法と同様である。
また、図4に示した第3実施形態の回転子コア21を使用した永久磁石式回転電機1を製造する場合には、シャフト固定工程でシャフト3を回転子コア21に焼きばめによって固定した後、永久磁石埋設工程において、各磁石スロット23に永久磁石28を挿入し、接着剤により永久磁石28を固定するとともに、ブリッジスロット29に永久磁石31を挿入して接着剤で固定する。それ以外の製造工程は、図1に示す本実施形態に係る永久磁石式回転電機1の製造方法と同様である。
以上説明したように、第1〜第3実施形態の回転子コア21を使用した永久磁石式回転電機及びそれらの製造方法によれば、センタブリッジ26を非磁性化した回転子コア21の寸法精度及び占積率を高めることで高トルク化を図った永久磁石式回転電機1及びその製造方法を提供できる。
なお、回転子コア21を構成する複数の板材の各々の素材として、マルテンサイト系のステンレス材を用いている。マルテンサイト系のステンレス材は、加熱・急冷するだけでオーステナイト化されるため、比較的容易に磁性を消失もしくは弱めることができる。仮に、前述したように、珪素鋼板などを、回転子コア21を構成する複数の板材の素材として用いた場合には、非磁性化を達成するために、CrやCなどの改質物質を塗布する必要があり、非磁性化工程が複雑になってしまう。なお、マルテンサイト系のステンレス材はCrを多量に含むために電気抵抗が高く、板厚が同等の場合は電磁鋼板と比較して遜色のない渦電流損特性を示すため、回転子コア21の中で非磁性化を行わない部分に求められる特徴をも有している。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、回転子コア21は、1つの磁極22あたり、2つの磁石スロット23を並べて配置しているが、3つ以上の磁石スロット23を並べて配置してもよい。この場合、隣接する磁石スロット23間のセンタブリッジ26は2つ以上となる。
また、1つのセンタブリッジの26の一部もしくは全部が、前述の場合、2つ以上のセンタブリッジ26の一部もしくは全部が非磁性部となっていてもよい。これにより、各永久磁石28からのセンタブリッジ26を介しての磁束漏れを抑制し、より一層の高トルク化を図ることができる。
1 永久磁石式回転電機
2 フレーム
3 シャフト
10 固定子
11 固定子コア
11a 内周面
12スロット
13ティース
14 巻線
20 回転子
21 回転子コア
21a 外周面
22 磁極
23 磁石スロット
24 外周縁部
25 芯部
26 センタブリッジ
27 連通路
28 永久磁石
29 ブリッジスロット
30 ブリッジスロット
31 永久磁石

Claims (7)

  1. 内周面が円筒状に形成される円筒状の固定子コア及び該固定子コアに設けられた複数のティースの各々に巻回された複数の巻線を備えた固定子と、
    前記固定子コアの内周側に所定のギャップを隔てて対向して回転自在に配置される複数の磁極を有する回転子と、を備え、
    前記回転子は、
    前記複数の磁極毎に設けられた複数の磁石スロット、前記複数の磁石スロットの外側に形成された外周縁部、前記複数の磁石スロットの内側に形成された芯部、及び隣接する前記磁石スロット間に形成された前記外周縁部と前記芯部とを繋ぐ複数のセンタブリッジ、を備えた回転子コアと、
    前記複数の磁石スロット内に配置された複数の第1永久磁石と、
    前記回転子コアに固定されたシャフトと、を備え、
    前記センタブリッジの少なくとも1つにブリッジスロットが形成されており、前記ブリッジスロットが形成されていない前記センタブリッジにおいては隣接する前記磁石スロットの間に連通する非磁性部を有し、前記ブリッジスロットが形成されている前記センタブリッジにおいては前記磁石スロットと前記ブリッジスロットの間に連通する前記非磁性部を有することを特徴とする永久磁石式回転電機。
  2. 前記センタブリッジの少なくとも1つに複数の前記ブリッジスロットが形成されていることを特徴とする請求項1記載の永久磁石式回転電機。
  3. 前記ブリッジスロット内に、第2永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の永久磁石式回転電機。
  4. 一つの前記磁石スロット内に、複数の前記第1永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
  5. 前記複数の磁極毎に設けられている前記複数の磁石スロットは、前記回転子コアの回転中心に向かってV字状、或いは、逆V字状に設けられた一対の磁石スリットであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の永久磁石式回転電機。
  6. 内周面が円筒状に形成される円筒状の固定子コアを形成する工程と、
    前記固定子コアに設けられた複数のティースの各々に複数の巻線を巻回する工程と、
    外周面が円筒状に形成され、複数の極数を有する回転子コアであって、前記複数の極数毎に設けられた複数の磁石スロット、前記複数の磁石スロットの外側に形成された外周縁部、前記複数の磁石スロットの内側に形成された芯部、及び隣接する前記磁石スロット間に形成された前記外周縁部と前記芯部とを繋ぐ複数のセンタブリッジ、を備えた回転子コアを形成する工程と、
    前記回転子コアにシャフトを固定する工程と、前記回転子コアを前記固定子コアの内周側に回転自在に配置する工程とを備え、
    前記回転子コアを形成する工程が、
    複数の板材を準備する板材準備工程と、
    前記複数の板材の各々に対して外周面を円形にするとともに、前記シャフトが嵌め込まれる孔、前記複数の磁石スロットが形成される孔及び前記センタブリッジの少なくとも1つにブリッジスロットを形成する孔を形成する板材加工工程と、
    前記複数の板材の各々の前記ブリッジスロットが形成されていない前記センタブリッジにおいては隣接する前記磁石スロットの間に連通する非磁性部を形成し、前記ブリッジスロットが形成されている前記センタブリッジにおいては前記磁石スロットと前記ブリッジスロットの間に連通する前記非磁性部を形成する非磁性化工程と、
    前記複数の板材を、前記シャフトが嵌め込まれる孔、前記複数の磁石スロットが形成される孔及び前記ブリッジスロットを形成する孔が積層方向に整列するように、積層して固定する板材積層工程と、
    積層して固定した前記複数の板材の前記磁石スロットに第1永久磁石を埋設する永久磁石埋設工程と、を含むことを特徴とする永久磁石式回転電機の製造方法。
  7. 前記永久磁石埋設工程において、前記センタブリッジに第2永久磁石を埋設することを特徴とする請求項6記載の永久磁石式回転電機の製造方法。
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